フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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こんにちは。今回は揚げ鶏々さんの「探偵助手ガリウムのろじうら探検記」をレビューしていきたいと思います。

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ジャンル:元素擬人化SFミステリー
プレイ時間:1時間
分岐:基本1本道
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2025/5
備考:書籍を中心とするコンテンツ「元素楽章」の外伝に位置づけられるゲーム作品


少し更新に間が空いてしまいました。今回はティラノゲームフェス10で縁のあった作品を持ってきました。
本作は成り立ちが特殊で、まずは作者の揚げ鶏々さんの元素擬人化ファンタジー書籍「元素楽章」が2024年に発売となっていました。普通に書店に並んでいる人気の本なのですが私はこのことを知らず、昨年のティラノゲームフェス10でゲームである本作に出会います。なかなか面白い作品だったのでノベコレにレビューを書いたり関連作を調べている中で元素楽章シリーズを知り、本作がその外伝的扱いとなっていることを知りました。先日書籍も購入して読んでみたので、その内容にも少し触れながらフリーゲームである本作の紹介をしていけたらと思います。


まずは本作のあらすじ紹介から行きましょう。

舞台となっているのは人型になった元素たちが気ままに交流する世界、アスティオン大陸です。ここでは本作の主人公であるガリウムやアルミニウムのほかに、炭素やケイ素、臭素といった元素たちのほのぼのとした日常が営まれています。
探偵助手であるガリウムは師匠のアルミのお使いをするなど平和な日常が続いていましたが、ある日金属性の元素たちが集団失踪しているという噂を耳にします。調査のために姿を消したアルミ先生を追って自らも事件の調査を進めるガリウム。果たして事件の謎を解き明かすことはできるのでしょうか…


こんな感じでしょう。
本作の前半は世界観や設定の紹介を兼ねた日常パートとなっています。一般的な学園ものなどだと半分を設定の説明に使うのは尺を取りすぎだと思いますが、本作は元素たちが暮らす大陸というかなり独自色の強い作品となっていますので、丁寧な導入になっているなという感じがします。
ただ順番に設定を説明するだけでは単調で、読者にとって覚えにくくて暇なパートになりがちですが、本作では少しずつ新キャラ(新元素?)が登場して化学にまつわる小ネタを挟んでいったり、ファンタジー感あふれる立ち絵や背景イラストが目を引いて楽しく読めるようになっているなと思います。

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例えばこちらのシーンで登場するナトリウム(画面右)は周期表で左端に位置するアルカリ金属(第1族元素)。右から2番目に位置するハロゲン(第17族元素)とは電気陰性度など様々な性質で対をなすため、そのあたりのことを知っていると元ネタが分かった気持ちよさを味わうことができます。

私は化学は詳しくない分野なので元ネタが分からなかったり、そもそもその設定の由来となる科学的事実があることを知らなかったりすることも多々ありましたが、シーンの切り替え時などに簡潔な解説カットインが入ったりするので問題なく楽しめましたし少しだけ勉強にもなりました。


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さて、本作はファンタジー世界ではあるものの探偵ものでもあるため物語後半には推理・真相解明パートがあります。2日間の探索で得た情報を整理したうえで推理していくのですが、難易度は簡単と言っていいでしょう。探索パート、推理パートのいずれでもいくつか選択肢がありますが、どれも間違えてもペナルティはありませんし、ガリウムの考えをちゃんと聞いていれば迷うこともないでしょう。
この真相もちゃんと化学ネタとして筋が通っているのも良いですね。本作が単に元素を擬人化して可愛くしました!にとどまらない魅力を持っているのは、一つの物語として楽しめるストーリーや推理ギミックがきちんとあって、そこに化学要素が乗って融合しているからではないでしょうか。設定と物語が分離していると気が散ってしまうことがありますが、本作ではそのような問題は感じませんでした。


主人公のガリウムとその師匠であるアルミニウムの間の関係とか、背景となっている元素の知識なんかが順に挿入されながらラストの事件解決に至るので、単に当座の問題が解消したというだけでなく、過去からの2人の関係性に肩入れしながら物語を味わうことができてその点でもよかったです。元ネタ知識の活かし方でいうと、過去にご紹介した「高対称のi」に近いかもしれません。こちらも、元ネタなしでもメインのシナリオを楽しめるという点でよくできている作品でした。



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書籍版の「元素楽章」にも少し触れておきましょう。
ゲームと同じくきれいなイラストが全編に散りばめられて目を引きます。登場する元素の数はゲームの数倍のボリュームがあり、キャラクターイラストの解説や化学的な元ネタの記述も多めです。元素の暮らすアスティオン大陸の話という設定を展開しながら、元素やその化合物の性質を盛り込んでおり作者さんの気概を感じます。
特定の元素を含む食材や料理といった話題や家庭でできる実験に関するページ、科学史の方面の記述もあるなど広く書かれていて、科学読み物として楽しい本かなと思います。
反面、小説ではないので物語性はなく擬人化設定資料集&元ネタ解説といった方が近く、ストーリーを求める方にはおすすめできないかもしれません。そういった方は1本の物語としてまとまっているゲーム版を手に取ってみてください。


というわけで今回は「探偵助手ガリウムのろじうら探検記」でした。
化学のネタを除いても可愛いキャラクターがいっぱいですのでぜひプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。大変今更ではありますが、今回はステージななさんの「Narcissu」について書いていこうと思います。いつも以上に個人的な話が多くなるかもしれませんがお付き合いいただけると幸いです。

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ジャンル:シリアス系ノベルゲーム
プレイ時間:無印読了まで2時間、SIDE 2ndは3時間程度
分岐:なし
ツール:NScripter
リリース:2005/8(無印Web版公開)
備考:2作が同梱された状態で配布中。Steam版もあり。3rd -Die Dritte Welt-以降は有償

今回扱う作品「Narcissu」はWikipediaに記事があるほどの有名作で、今から20年以上前に公開された古典的作品でもあります。このブログを見に来られる方はご存じの方が多いと思います。このような既に評価が確立された名作であり、私が最近新たにプレイしたわけでもない本作を今ブログで扱っておきたいと思ったのは、こちらの記事で書いた私自身の病気の件が一端であることは間違いありません。このことについては後述するとして、まずはいつも通り作品のあらすじ紹介をしていきましょう。
前回の記事で扱った「Robot Hospice」とはホスピスが舞台という共通の設定こそあれど全く違う雰囲気。心温まるSF、優しい世界であったRobot Hospiceに対し本作Narcissuはどうしようもない現実、厳しい世界です。


Narcissu(以下、無印と表記)

主人公は難病に冒され完治の見込みがないとして、"7F"にやってきた。そこはいわゆるホスピス、緩和ケア病棟であり、これまでの入院生活とは全く違う世界だった。そこで出会う少女のように若く見える女性セツミと語りながら自身の最期について考えた主人公は、セツミとともに病院を脱走、病棟に飾られていたナルキッソス(スイセン)の花の本物を見るべく淡路島へと向かうのだった…

Narcissu SIDE 2nd(以下、2ndと表記)

無印よりも前の時間軸。セツミが7Fに入る前、まだ完治を目指していたころの物語。外来で病院を訪れた際、7Fの住人の証拠である白いリストバンドを付けた入院患者、姫子に友達と認定され彼女の"死ぬまでにやりたい10のこと"の残り3つを見届ける役を務める。他愛もない願いを着々と叶えていくなか、"エセカトリック"である姫子の最後に残された願いとは何だったのか…

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こんなところでしょう。
この作品の普通のレビューは散々書かれつくしていると思いますので最初に軽く触れるくらいにしようと思います。
本作は基本的には立ち絵の無い文章だけの硬派なノベルゲームであり、非常にシンプルと言えます。要素が少ない分、文章、ストーリー、そして音楽という根幹の部分が厳しくジャッジされてしまうスタイルでしょう。そして既に多くの場所で高評価を獲得している通り、それらのいずれも高水準であるように感じます。まず文章についてはとても読みやすいです。ゲームっぽいノリの文章ではなく小説と言っていい雰囲気です。感情の動きであったりその場の空気感であったりをしっかりと読者に伝えるのが重要なこの作品において、直接的な表現ばかりではなく情景描写による間接的な雰囲気づくりを多用。どっしりと腰を据えて読むのに向いた作品と言えるでしょう。
ストーリーと音楽については後でも触れますがどちらも非常に印象的。ホスピスの物語、登場人物は救いのないままに死んでいく、それぞれの死生観が描かれるといった重すぎるテーマがこの作品の幹として強固に根付き、読者の涙を誘います。


普通に本作をほめるのはこの辺にしておきます。
私が本作を初めてプレイしたのはおよそ10年前だったと思います。その時は、確かに良い作品だとは思いつつハマる感じではありませんでした。やはりどうしても地味なんです。一枚絵が数枚あるとはいえ基本的に人物のイラストはなし、そして最後にセツミや姫子は死ぬというのは本作を読み始める前から明かされておりそこに意外な結末はありません。私が大ファンであるむきりょくかん。さんの「Normalize Human Communication」と重なる部分があって、闘病ものはまだお腹いっぱいだったというのもあるかもしれません。
しかし作品の印象はよく残っており、数年後にもう一度読みました。その時は前よりも少しだけ好きになった気がします。そして今年の冬、自分が白い医療用リストバンドをつけることになった時、本作の記憶が一瞬でよみがえってきました。それだけ私の記憶に深く刻まれていたのです。いてもたってもいられなくなり、入院中でPCもない中なんとか話を確認しようとYouTubeで実況動画を探してスマホとイヤホンでこっそり視聴しました。そうしてみると、初めてプレイしたときとは明らかに異なる密度で本作の良さが伝わってくるのです。どんな作品でもそうですが、本作は特にプレイヤーのそれまでの人生経験に感想が左右されがちなのかなと感じました。

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そして今、Steam版で再読してレビューを書いています。シナリオやイラストに変更はなく、言語選択ができるようになっています。

本作の主要人物であるセツミは、無印の開始時点で既にその死が運命づけられています。無印は、彼女の自身の命や人生に対する考え方を追っていく作品と言っていいでしょう。同じ7Fの入院患者である主人公は存在していますが、私には彼はセツミの観察者であるように思えました。10年に及ぶ闘病を経験しているセツミは既に将来の一切をあきらめてしまっていますが、7Fに入って間もない主人公はまだそこまで吹っ切れておらず、その意味ではプレイヤーと同じ側の人間です。

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物語中盤で、セツミは主人公に問います。
「最初に…死ぬって聞かされた時……泣いた?」
「じゃあ、どうして自分だけって…運命を呪った?」
彼女自身はどちらもしなかったそうです。その理由がこちら。
最初から諦めていれば、落胆することもない。
後ろ向きでいれば楽しくもないけど、辛いこともない。
文面で見ると、なんと寂しくて夢の無い考え方だと感じます。実際主人公もそう言います。しかしこれも人間の防衛本能からくる自然な考えになりうるのではないかと私は感じました。ホスピスの入院患者とは状況が違いますが、私が今年救急車で運ばれて入院したときも割と似た思考だったように思います。自分の人生、ついてないなあ…とは思いますが運命を呪うっていうほどでもない。死ぬかもなあとは思いつつも取り乱すほどではない。なんというか、思考のリソースを積極的に割くことをしない、ただ時間が過ぎるのを待つ。そんな感じだった気がします。

今のは一例ですが、このように物語の所々でリアリティーを感じてしまうようになりました。入院生活のつまらなさ、健康だったころのようには動かない体、それでもじっとしているだけでは耐えられない心理状態、などなど……
本作のようなシリアスな雰囲気の作品において、作内の描写にリアリティーがあるというのは非常に大事な要素だと思います。これは必ずしも真実のみを描いているという意味ではありません。特に自身の死を目前にして何を思うかなんて、人それぞれで正解はないでしょう。しかしそれでもセツミがそのような人物であるということにある種の迫力のようなものを感じるのです。彼女がそうした考え方であったり、知識、趣味をもつにいたる経緯が説得力を補強し、どうにもならないというやるせなさを強烈にします。


無印のほとんどは主人公の視点で語られますが、章の変わり目などでセツミのモノローグが挿入されることがあります。モノローグ内で物語冒頭から一貫して諦観が支配している様子でしたが、終盤に一瞬その思考が揺らぐ場面が描かれ、私はそこが非常に印象的に感じました。亡くなる直前まで幸せに生きて欲しいと願うのはごく自然な発想だと思います。そんなささやかな願いがやっと通じたような気がしたのです。

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2ndではセツミがかつて姫子と過ごした時間が描かれ、2nd単体でも完結しているだけでなく無印の疑問を補完するような内容にもなっていると思います。やたらと車や道に詳しかったセツミが誰から影響を受けていたのか。仮退院の迎えに来た母親と7Fについて過去にどんな話をしていたのか。そんな情報があれば序盤のちょっとしたシーンにも少し違った見方が可能になるんじゃないでしょうか。

そして2ndはエピローグが素晴らしい。無印の主人公はその後どうしていたのかという疑問がありましたが、それがすべて解決とはいかないけれど物語として非常に収まりのいいエンディングと感じます。
数少ないイラストをここぞと一瞬だけ出す演出もまた上品な感じがします。視覚で察する余地があるというのは小説などのフォーマットにはないゲームの利点だなとまた感じさせるような一瞬でした。

音楽について触れ忘れていたので最後に少しだけ。
本作はBGMについてもオリジナルとなっており、本作のシリアスな雰囲気を邪魔しないながらもしっかりと耳に残ります。挿入歌も複数あり豪華。作内にBGM鑑賞モードもあるのがうれしいですね。同じタイトルを冠した「ナルキッソス」も好きですが、私は「終末の過ごし方より」が頭から離れないです。上述したセツミのモノローグでよく使われる印象で、悲しすぎず幻想的な雰囲気をまとったこの曲のおかげで全体的に暗くなりすぎていないのではないかと思ったりします。
細かいですがエピローグを読み終えてタイトル画面に戻ってきた後、BGMがそのまま残っているのも余韻があって良いですね。
Steam版にはサウンドトラックのDLCがあるので気に入った方はぜひそちらもチェックしてみてください。


最初から最後まで重い雰囲気のため人を選ぶタイプの作品だとは思いますが、それでも長年評価されてきているのも納得の名作だと思います。最後にほんのささやかに救われる感触をぜひ皆さんの目で確かめてみてください。

それでは。

こんにちは。今回はどこかしらどこさんの「Robot Hospice」です。

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オススメ!
ジャンル:SF探索アドベンチャー
プレイ時間:2時間
分岐:基本1本道
ツール:RPGツクール
リリース:2026/6


今回ご紹介する「Robot Hospice」は私は昨年の東京ゲームダンジョンで知った作品になります。そのあともたびたび目にしては気にしていたのですが、ついに先日正式版が公開されたとのことでプレイしてみました。初めて見た時の期待を裏切らない、心温まる良い作品と思いましたのでレビューしていこうと思います。



本作の舞台はロボットの技術が現代よりも進み、多くの種類のロボットが開発されるとともにロボットの権利について現代よりも進歩的な考え方が浸透した世界となります。
作内に登場する愛玩用ロボットや家事用ロボットなどにも”心”があると認められるようになり、彼らの最期についてもかなり人に近い扱いとなっています。すなわち、修理が困難になったり持ち主が手放さざるを得なくなったりして役割を終えたロボットたちが穏やかに最後の時を迎えられるようにするための施設、ロボットホスピスが運営されているのです。主人公であるミドリはその新人職員として、ロボットたちのカウンセリング等を担当していくことになります。

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上のシーンでチェス盤を挟んで対局をしているのはニィニィとツゥツゥの2人。どうやらいつもチェスではなくチェッカーというゲームで対局するものの毎回引き分けになって決着がつかないそうです(どちらも対局にチェス盤を使う)。私はチェッカーについては良く知らないため今回調べてみたのですが、どうやらすでに両対局者が最善を尽くすと引き分けになることが理論的に明らかになっているそうです。ということはおそらく2人の腕前は理論上最強に達しているのでしょう。ゲームの勝ち負けに固執して仲がいいのかいがみ合っているのか分からない様子はまるで子供のようですが、そんな様子でもチェッカーの腕前は大人どころか最強、というのがAIらしいところですね。


ロボットホスピスの入居者(人ではないですが今回はこう表記しておきます)は合わせて5体。現代でも普及している形の掃除ロボットや人型の家事代行ロボット、犬型の愛玩用ロボットに、上述の子供の遊び相手となる玩具的なロボットの双子(これも人間でいうところの双子とは異なりますが)です。彼らはいずれも何らかの事情があって元の持ち主の手を離れたロボットたちなわけですが、ロボットホスピスに来るまでの経緯だったり生まれ持って・経験に基づく性格などは様々です。この個性あるロボットを見ていると、中身は工業製品であろうとも人っぽさを感じられ、ロボットホスピスという施設の存在も自然なものに思えてきます。これは人類がそのうち必ず真剣に議論すべき課題になってくるはずです。


現代では、ロボットに人権やそれに類する権利を認める立場をとる方はほとんどいないと思います。生成AIの技術が発展し、ChatGPTに友達感覚で会話したりチャットしたりといった利用も一般的なものになってきましたが、AIの電源を切ったり初期化したりすることを殺人と非難されることはないでしょう。
しかし例えばドラえもんが実現したとして、まだ動く、あるいは多少の不具合がある程度のドラえもんをスクラップにしたとすれば一定の非難を浴びることは免れないでしょう。現代の掃除ロボットや猫型の配膳ロボット、あるいはLLMとは何が違うのでしょうか。本作はプレイヤーにふんわりとそんな疑問を投げかけてきます。


主人公のミドリは入居者であるロボットたちを一貫して人と同じように扱っているように思えます。ミドリと入居者たちの違いはあくまで職員と利用者の関係であり、人とロボットではないのです。
この立場に立って考えたとき、ロボットホスピスの職員として、直接入居者とカウンセリングを重ねていくという仕事は大変な覚悟を必要とするはずです。立派な人物だと思います。

このように本作のテーマとするところはかなりシリアスなわけですが、プレイ中の雰囲気という面では可愛らしく柔らかいイメージを受けます。主人公のミドリをはじめ、登場キャラクターたちがみな”いい人”であるのがあるでしょう。ロボットたちに真摯に向き合うミドリの姿勢はもちろん、入居者であるロボットたちもかつて自分の持ち主であった人との思い出だったりそこからくる現在の行動だったりが基本的に心温まる方向へと統一されています。もちろん各個体の性格は様々で、冷たい対応をされることもあるのですが、和解への道がしっかりと残されています。

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本作のグラフィックは全編ドット絵で構成されており、アニメーション等がかなり作りこまれているのもこの雰囲気づくりに貢献しているように感じます。こちらのシーンは犬型ロボットのファイボと縄跳びをして遊んでいるシーンなのですが、縄を回して一緒にジャンプして、といった動作が可愛らしく描かれていてイベントで体験版をプレイしたときにおっと思った覚えがあります。
花や蝶といった(おそらく)本筋とは無関係のちょっとしたイベントだったり、ミドリに仕事を教えてくれる存在であるゼクスさんとの雑談であったりも本作のプレイ体験に癒しを添えてくれるでしょう。



そんなほのぼのとした空気感でストーリーは進行していきますが、当然ロボットたちには終わりの時が来ます。ロボットたちを人間に限りなく近い存在と見たとき、その死には重い意味があります。ここがホスピスである以上、修理の可能性はなくミドリは彼らの寿命を永らえさせるという意味では完全に無力です。ミドリにできるのは最後までロボットに寄り添い心穏やかに過ごせるようにするだけ。そのための行動選択を迫られることも何度かあります。なかなか考えさせられるシーンです。

ミドリの選択によっては入居者たちは異なる最期を迎える場合があります。どのような寄り添い方をするの良いかに簡単な答えはないと思うのですが、本作ではどの選択肢を選んでも最終的に和解したり願いが叶ったりという風に良い方向に決着するのが特徴的。プレイヤーが自身の選択のせいで最後の後悔を残してしまった…ということにならないので深いテーマながら安心してプレイすることができるでしょう。こういった展開をすることができるのかという点で私は驚きました。


入居者たち全員を看取ったあと、残されたミドリとゼクスには最後の仕事があります。これについてはご自身の手でプレイして確かめていただければと思います。
先ほどまで述べてきたほのぼのとした雰囲気でゲームが進む中、たまにちょっとドキッとするイベントがあるのですが(ホラー展開はなし)、その疑問を含めて解消する大団円と言ってよいでしょう。

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このシーン、決してホラーではないのですが強く印象に残っています。なぜミドリが目を押さえているのか、それはぜひ皆さんの目で直接ご覧ください。

というわけで今回は「Robot Hospice」のレビューでした。
難しい問いを含みながらも可愛らしくエンタメの形として昇華した素晴らしい作品だと思います。ぜひプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。今回はヅッキーニさんの「国立天使研究センターの記録」のレビューをしていきたいと思います。

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オススメ!
ジャンル:SFノベルゲーム
プレイ時間:1時間
分岐:なし
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2025/2


こちらの作品はティラノゲームフェス10の参加作です。最近ノベルゲーム以外を扱うことが多かったので久しぶりですね。以前の記事で少しだけ触れたとおり、ノベコレ内だけでとどめるにはもったいない良作でしたので今回ブログで扱うことにしました。


本作の舞台となっている世界では人間に近い姿をして言語による意思疎通も可能な天使という生命が普通に存在しています。スクリーンショットで右側が研究員である人間、左が天使ですね。頭の上に輪が浮いているのと背中に小さな羽が生えている以外はほぼ人間と区別がつかない見た目をしています。
アディソピアという国では科学技術が発達しており天使族に関する国立の研究施設が運営されていて、本作はそこでの物語になります。

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全4章構成の最初の章では、研究員であるジキルが目を覚ましたばかりの天使ナナの検査を進めていく様子が描かれます。ジキルの説明によれば天使は数こそ少ないものの人間よりも丈夫で様々な能力が高いため、保護やそのための研究が進められ大切に扱われているといいます。物語を読み進めていると、実際形式的な扱いは丁寧な印象を受けますが、どうも違和感を覚えるようなシーンがあります。一番典型的なのは個々の天使に名前がないことです。人間と対等あるいはそれ以上に尊重しているようなことを言いながら無機質な識別番号しか与えられず、ナナというのは名前のなかったナナ本人が考えた通称です。 
ナナに与えられる食事についても、「味はあまりこだわってないらしい」とはジキルの談。完食せずに残してしまうような食事を淡々と与え続けるのも人間相手ではやや考えづらい。
そして検査以外の場面でのジキルの態度もそうです。「相手のプライベートには踏み込まない」みたいな配慮とは違った無関心のような対応に見えます。これらのちょっとした違和感はこの章の最後で決定的な事実へとつながってきます。

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この内容については一応物語前半4分の1で明らかになる範囲なのでここに書いてしまおうと思いますが、もしネタバレを気にする場合は以下は読まずに上のリンクから直接作品をプレイしてみてください。終盤の展開についてのネタバレはありません。

続き(ややネタバレ含む) CHAPTER1の最後、すべての検査を終えたナナは睡眠薬で眠らされたのちに薬剤注射によって殺処分されてしまいます。この研究センターは天使の優秀なクローンを作るための研究所。2日にわたって行われてきた知能検査の結果が一定水準に達していないと判断された個体はデータを取ったのちにすべて殺処分となってしまいます。

このシーン、イラストのかわいらしさに似合わずなかなかショッキングです。羽と輪っかという少しの違いがあるだけで、ほとんど人間の子供のように見えた天使。最初のうちは少しおびえた様子を見せながらも次第にジキルに心を許していったように見える彼女がただの用済みの被験体として処分されてしまうというのはあまりに残酷だし、現代の倫理観では許されることではないでしょう。本作はただのSFではなくディストピアSFに近い作品だったのです。

続くCHAPTER2では天使の脱走事件というイベント発生により、処分されてしまう側である天使の絶望感がより直接的に描かれます。しかしそんな状況の中で、ジキルがただ冷酷なだけの研究者というわけではないことも分かってきます。上司であるフラスタに状況を改善するよう進言してみたり、後輩の久田に愚痴をこぼしてみたり。こうした、"管理者"側の葛藤や思想が見えてくることは本作をただ天使にとって理不尽な物語ではなく血の通った物語にすることに間違いなく貢献していますし、希望と絶望を両方見せることによって読者を先に導くエネルギーにもなっています。

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最終章であるCHAPTER4はジキルの独白と回想で構成され、最後に短いエピローグのようなシーンが挿入されるつくりとなっています。この最後のシーンが物語全体の印象を決定づけるような素晴らしいシーンとなっているように思います。優秀な天使のクローンをまるで工業製品のように量産したり廃棄したりといった冷酷な面と、そこに従事する人間にも良心との葛藤や過去の経験から培われた倫理観といったものが存在しているという人間味のある面が1つの結末へと収束していく様子が大変気持ち良いです。閉塞感のある世界の中で見つけた一筋の光の美しさみたいなものを思わせます。


というわけで今回は「国立天使研究センターの記録」でした。
読後に残る余韻が素晴らしく、大変印象に残る作品です。最終的に本作全体が超大作SFの序章であるかのような、そんな可能性も感じさせる内容だったと思います。ぜひプレイしてみてください。きっとこの物語の続きを想像したくなること間違いなしです。

それでは。

こんにちは。今回はかげろうさんの「クラスメイズ」のレビューをしていきたいと思います。

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ジャンル:学園ホラーローグライクRPG
プレイ時間:クリアまで2時間、エンディングコンプリートまで10時間~
分岐:エンディング3種、ゲームオーバーあり
ツール:RPGツクール
リリース:2019/12


久しぶりのRPGレビューとなります。フラグの立て方によるエンディングの分岐、ゲーム内時間や隊列編成といった独自のシステムなど見所のある作品でしたのでご紹介します。


まず本作のプレイを開始すると舞台となる学校の名前を入力する必要があります。特に単語になっていたりする必要はないので適当に入力しましょう。本当に何でもいいなら「適当」ボタンを使うとランダムな名前を付けられます。そしてその名前に応じてダンジョン化した学校の構造が決まります。つまりランダム生成的な意味合いがあるのです。
ただし同じ学校名を付ければ同じ構造のダンジョンとなるため、完全にランダムになるわけではありません。高評価でクリアしようと思えば事前に構造を熟知していることが前提となったりするため、この仕様をフル活用していくことになるのです。

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他にも独自のシステムが多数あるので順にご紹介しましょう。
行動可能になってすぐ気付く点に、常に画面右上に時計が表示されていることでしょう。マップ上を歩いたり戦闘中のターン経過で作内時間も過ぎていきます。本作では作内時間が攻略に重要な意味を持っており、レベルや体力といったRPGおなじみのリソースと同等以上の存在感があります。
では時間がどのようにゲームに影響してくるかです。まず分かりやすいものに時限イベントがあります。ゲーム開始が午後9時、そこから午前5時に夜が明けるまでにクリアしなくてはなりません。それだけでなく、特定の時刻までにイベントを発生させると分岐があったり、ボスが移動したり仲間候補が死んでしまったりといった重要な要素を担っています。さらに時間が経過するほどザコ敵が強くなるので攻略のためにはいかに無駄なく行動していくかが大切になってきます。

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仲間は最大6人なのですが固定された主人公は存在せず、ゲーム開始時に1人を選択して初期メンバーとするシステムになっています。キャラごとに異なる特殊能力があるので攻略感も若干変わってくるでしょう。主人公を選んだら順に残りのメンバーを仲間に加えていって戦力増強とイベントのクリアを狙っていくわけですが、既に仲間になっているメンバーや時刻によって特定の仲間を見つける条件が変わったり不可能になったりするのも重要です。加入の有無によって発生する会話イベントが変わったりという部分もよく作りこまれています。


戦闘面においては、「隊列」機能が特徴的です。前衛と後衛それぞれ3人割り振ることができ、後衛は通常攻撃ができない代わりに敵に直接攻撃もされないといった縛りがあります。物理キャラを前衛、遠距離攻撃手段を持つキャラを後衛に置くのが基本になるでしょう。さらにこの隊列によってパーティーの行動順が変わったり回復技の効果範囲が限られたりするため、この隊列も戦略の重要な要素となります。


これまでの説明やスクリーンショットでもある程度察したかもしれませんが本作の雰囲気はかなりシビアです。突然ダンジョン化した学校に閉じ込められた生徒たち、厳しい時限イベントを乗り越えなければ死亡してしまう仲間だったり、襲い掛かってくる謎の怪物などなど。そんな環境の中で主人公たち6人がちゃんと中学生らしいキャラクター性や会話イベントをしているのを見ると対比でなんかほのぼのとして感じられます。

謎の大クモだったり理科室の人体模型だったりが襲ってくるホラー全開の世界観の中で、このように和むイベントが挟まれていくのは作者さんによるうまい調整のように感じています。私はホラー耐性があまり高くないのでずっとホラーが続くと疲れちゃうんですよね。そんな中で主人公が等身大の中学生であるように感じられると頑張れって気持ちになるし、探索やレベル上げのモチベーションもわいてきます。
この部分は非常に凝っているようで、最初に選択した主人公ごとにエンディング後のイベントがあったりクリア実績が得られたりといったコンプ欲を掻き立てるシステムも導入されています。さらにはTrueエンド到達時カップリングイベントもあり。総計で実績数は44もありコンプリートしようとすると相当大変だと思います(私もコンプはまだです)。

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本作の難易度についてですが、全体的に高いといってよいでしょう。まったく構造の壊れた学校内を探索することになり、初見の状態では理不尽な実質即死トラップを踏む可能性も高いので最初のうちはゲームに慣れることを目的にするぐらいでちょうどいいでしょう。
高難易度の代わりに本作はヒント機能が充実しており、実績の解除数に応じてタイトル画面のExtraからヒントを閲覧することができるようになります。初心者向けの内容、Trueエンドを目指す人向けの内容、クリアした人向けの内容など細かく分かれており親切。あとがきや裏話的な内容や音楽モードもあったりとおまけ要素のかなりしっかりとした作品になっていると感じます。

そんなヒントを見ていけばひとまずノーマルエンド(Exit no.3)到達は達成できるようになるでしょう。問題なのはそこから先です。Trueエンド(Exit no.1)に行くためにはシビアな時間制限を乗り越え追加でボスを倒して謎解きする必要があるのです。完全自力攻略はかなり難しいと思いますので、本編中の謎解きに詰まったらどんどんヒントを聞きに行くのをお勧めします。私は7つの追加ボス中2個の謎解きがわからずヒントを見ました。そして最後にもうひとひねりあって舞台がこの中学校である意味が明らかになります。ストーリー的にも決着がついてめでたしめでたしという内容になっているのでぜひここまでプレイしてほしいですね。このストーリーの内容についてはネタバレのため細かく触れませんが、なぜ閉じ込められてしまったのかやノーマルエンドの結末を踏まえた内容となっていてすっきりできる内容になっていると思います。

普通ここで終わりかと思うのですが、本作ではさらにその先、裏エンド(Exit no.2)が存在しています。これはめちゃくちゃ難しいです。到達条件は私はすんなり発見できたのですが、それに至る戦闘が非常に難しい。何度も試行錯誤して適切な隊列や装備を見つけたうえで最適な戦略をとっていく必要があります。裏ボス専用のギミックも用意されておりその解明も必要です。私はこれのクリアに丸1日かけました。
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裏ボス完全撃破すると「卒業」の称号がもらえるらしいです。大変だったよ…


というわけで今回は「クラスメイズ」のご紹介でした。
いくつもの凝ったシステムや豊富な会話イベントなど見所たっぷりですのでぜひプレイしてみてください。実績埋めや高評価クリアなどやりこもうと思ったらめちゃくちゃボリュームがあります。オリジナルのサウンドやその解説もうれしいですね。

それでは。

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