フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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こんにちは。今回は緑茶弐捌號さんの「今日はヴァレンティヌスが処刑された日だよっ!」のレビューとなります。

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ジャンル:バレンタインラブコメノベルゲーム
プレイ時間:フルコンプまで30分程度
分岐:3ルート+α
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2025/2


前回に引き続き、東京ゲームダンジョンで知った作品です。緑茶弐捌號(りょくちゃにーはちごう)さんのブースの前を通りかかって、なんか可愛い女の子が表情豊かに動き回っているなあと眺めていると、代表ののりやきさんに声をかけていただきゲームの内容やサークルの説明なんかをお聞きすることができました。そして受け取ったチラシには、"前身となるサークル"の作品紹介として6page.さんの「バス停の先輩」「僕と君とのソリロキー」が載っていてびっくり。どちらも以前フリーゲーム夢現で知っていた作品で、公開年のうちにプレイしてとても良かったので次回作も期待していたのですが、僕と君とのソリロキーver.2以降更新の気配もなく、ReadMeやフリーゲーム夢現に記載のリンクもドメインごと失効している状態だったので新作はあまり期待できないかなあと残念に思っていたのでした。
しかし今回まさかの別のサークルとして活動を続けられているという事が明らかとなりかなりテンションが上がりました。DLしてプレイしてみると期待にたがわず良い作品だったのでブログで扱いたいと思います。


いつも通り簡単にあらすじを説明するとこんな感じ。
主人公の明は高校2年生。バレンタインチョコを貰えるかソワソワしながら学校に行くと、なんと予定外にも都合3個のチョコレートを貰って大満足。しかし、いい気分で帰ろうとしたところにトラックが突っ込んできてなすすべなく死亡してしまいます。
そんな明の目の前に現れたのがバレンタインの天使を名乗る謎の人物、チョコリエル。チョコの貰い過ぎにより愛のエネルギーがオーバーフローして死に繋がったというのです。そんなチョコリエルの力で時間を戻って2月14日をやり直すことになった明は、死を避けるためにせっかく立てた女の子とのフラグを本命を除いて折らないといけなくなってしまったのです! 果たして明は無事にバレンタインデーを乗り切ることができるのでしょうか。そして女の子とのフラグを進められるのか?



タイトルのノリとか上の説明でも感じられたかと思いますが、本作はバレンタインフラグへし折り系のコメディです。ちょっと、というか大分無理がある設定にも思えますが笑顔のチョコリエルの圧の前にそんな違和感は些細なもの。
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有無を言わさず2度目のバレンタインデーが始まることになります。

そんなコメディの雰囲気通り、シナリオはサクサクっとテンポよく進んでいきます。幼馴染の湖池メイ、憧れの先輩井村赤城、謎の中二病後輩江永莉子の3人(全員製菓会社の名前をもじった感じですね)からのチョコイベントがどんどん進行していきます。チョコリエルを含め彼女らの立ち絵が良く動くこと動くこと、台詞に合わせて口や表情も変わっていくものですから、まるで喋っているときの空気圧まで感じられるような臨場感になっています。チョコレート色の制服も可愛らしいですね。

しかし生き残るためには3つのうち2つのチョコレートは断らなくてはならない明。苦渋の決断を迫られます。
受け取れば分かりやすくヒロインたちに喜んでもらえますし、逆にフラグを折るとショックを受けたモーションが入ってプレイヤーである私自身もなにか申し訳ない気持ちになっちゃいます。
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コメディ作品らしく攻略は簡単。狙いの女の子からのチョコだけを貰って他を断ればそのヒロインとのエンディングが見られます。私は莉子ルートが好きですね。相手のどんなところも受け入れてあげる姿勢が素敵だなと感じました。関係性の前進という意味でも彼女のルートが一番ですしね。

私の全てが、中二病莉子がふっと我に返って頬を赤らめるこの瞬間を見るためにあるんだろうな(大げさ)
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逆に言うと、チョコの受け渡し以外にはほとんどヒロインの出番もなくサクッとエンディングまで到達してしまうので、シナリオの深みとかを求める方には物足りなさがあるかもしれません。しかし本作はチョコを受け取ったり断ったり(チョコリエルと喧嘩したり)のラブコメ要素とエンディングの少しだけ心が温まるやり取りだけで十分まとまっていると思いますので、短編で手軽に楽しみたいという需要にぴったりだと思います。

あとは細かいですが、タイトル画面に戻るたびにランダムで表示されるデフォルメキャラも可愛くていいですね。タイトルコールと対応しているようで小技が効いています。この辺りは「僕と君とのソリロキー」でも感じられたセンスが生かされていますね。


さて、これまでにこの記事では意図的に触れるのを避けてきましたが、本作のエンディングはヒロイン3人のみではありません。もう一つだけ特殊エンドがあるのです。
そのルートへの入り方は難しくはないのでぜひこれかな、と思った方法を皆さんで試してみてください。きっとすぐに見つかるでしょう。そして私はこのルートが一番好きです。爽やか青春もので終わったノーマルルートとの対比であのオチには笑いました。ぽっ、じゃねえよ! 最後は日常系コメディ定番のアレが待ってます。やっぱ最高だよ。


というわけで今回は「今日はヴァレンティヌスが処刑された日だよっ!」でした。
バレンタインの時期は大幅に過ぎてしまいましたが、そんなのお構いなしにチョコを貰いに行きましょう!あるいはチョコを断りましょう!
どんなルートに進んでも愉快な展開が待っていること間違いなしです。

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あとここのチョコリエルのいたずらっぽい表情好きです。

それでは。

こんにちは。今回は作っちゃうおじさんの「行方不明の彼女を探しています」をご紹介していきたいと思います。

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ジャンル:カードゲーム+謎解き
プレイ時間:1ゲーム5~10分、エンディングまで2時間程度
分岐:フリー版はなし(後述)
ツール:JavaScript(ブラウザゲーム)
リリース:2025/4


本作は先週の東京ゲームダンジョン8にて作っちゃうおじさんご本人にお会いしてお話しした際に自信作と紹介された作品になります。帰宅後にプレイしてみたところ、ひらめきに頼らない謎解き要素といくつかのカードゲームをクリアしていくことでゲーム本編が進行する仕組みが珍しく、それでいて、ウェブサイト内を回ることでシナリオが進むという形式がまるで20年前の個人サイトに置かれていたゲームのようで懐かしさも感じるような作品だなと思いましたのでご紹介します。


本作の最終目的はタイトルからも分かる通り、行方をくらませてしまったゲーム制作者の彼女の居場所を突き止めて連れ帰ることです。一体どこへ姿を消してしまったのか、過去の思い出から手掛かりを探るために一緒に制作したゲームをクリアしていきます。

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まず最初にプレイすることになるのは、サイコロを振ってお金を増やしていくゲームです。最初はただの運ゲーでプレイヤーの介入の余地がないですが、次第に得たお金を使ってボーナスを得たりサイコロの目を操作したり、ボーナスを選んだりしていくことで効率的に稼ぐことができるようになっていきます。単にゲーム内のシナリオを読んでいるという流れだけでなく、実際にプレイすることになるので作者さんがゲームを開発したり新作の構想を練る流れはこんな感じなんだろうなというのが感じられました。

このミニゲーム自体はさほど難しくなく、有効そうなボーナスが出現したら適宜取得していくくらいでもクリアできるでしょう。
しかしこの次あたりからミニゲームが少しずつ難しくなっていきます。失踪のきっかけを思い出した主人公は、彼女の制作ブログにあった4つのゲームから行き先の手がかりを得る必要があるのです。

この4つのゲームはいずれもカードゲームとなっていて、ある程度の慣れがなければなかなかクリアできないと思います。

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例えばこちらはその4つのゲームのうちの一つで、海難事故で漂流してしまった猫がなんとか本州まで帰ってくるというストーリーのゲームです。毎ターン手札を一枚使用し、満腹度を回復したりいかだを漕ぎ進めたりといったアクションを繰り返すことで飢える前に帰ってこれればクリアとなります。
先ほどのサイコロのゲームもそうでしたが、非常にシンプルなところから初めて少し味付けしたという感じのミニゲームとなっており、正直これ自体に爆発的な中毒性があるというタイプのゲームではないのですが、なめてかかったらクリアできない悔しさに加えてこれが本編のストーリーを進めるためのキーとなっているという点もあって攻略のモチベーションは高かったです。

そのほか、「武装猫ちゃんのモンスター討伐ゲーム」「ゴシック猫ちゃんと宝石の塔ゲーム」「勇者ネコのデッキダンジョンゲーム」があります。デッキを成長させながら目標を達成するという大枠としては同じシステムでありながら、コストの仕組みを変えたり管理リソースを増やしてみたりすることで違った攻略感になっているのが面白いところです。私が好きなのは武装猫ちゃんのモンスター討伐ゲームですね。育成に成功すると一撃で500ダメージ与えたりHPが4桁に乗ったりします。

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これらのミニゲームを攻略したのち、ようやく行方不明の彼女のもとにたどり着くことになりますが、そこでもまた最終決着をつけるためにサイコロゲームをすることになります。
これが最初のものとルールは同じながら達成目標が大幅に厳しくなっており攻略に苦労しました。行き当たりばったりではなくある程度計画的にボーナスを取得していく必要があると思います。
その分狙った形にはまって一気に稼げた時の気持ちよさも倍増していますので、ぜひ皆さんは自分の力で攻略し、彼女を救ってあげてください。

以下は攻略情報になります。


攻略のヒント(クリックで展開) あくまで私がノーマルモードを攻略したときの指針であり、最適な考え方であるかの保証はありませんのでそこはよろしくお願いします。
カードゲーム攻略のヒント 4種のゲームともにデッキ内のカードを使用していきその効果を発動させ目標達成を目指すゲームです。カード使用の制限はゲームごとに異なりますが(例えば漂流猫ちゃんの場合、1ターンに1枚だけ、勇者猫の場合は行動コストの合計が最大エネルギー以下)、いずれも一度使用したカードは基本的にはデッキに残り続け、その後のゲームに永久に影響を及ぼす点は共通です。私は初見で注意書きのないカードの数値アップ系のものは使い捨てかと思っていたのですがどうもそうではないようです。
となるとこれは完全にデッキ構築系カードゲームの攻略法が通用します。同じ作者さんの作品なら「黄泉からの帰還」など、有名どころでいえばドミニオンなどのカードゲームの経験者ならご存じだと思いますが、「弱いカードをデッキから除外する」が非常に重要な行動になってきます。基本的にデッキ総枚数ま少なければ少ないほど強いです。特に漂流猫や武装猫の場合、1ターンに1枚しかカードを使えないため、弱いカードに交じってたまに強いカードが入っているデッキよりはカード枚数が少なくて弱いカードがないデッキの方が圧倒的に強いです。そのため序盤の体力や満腹度に余裕があるうちは弱いカードの廃棄を進めましょう。具体的には2枚のカードの合成を行う行動がめちゃくちゃ強いです。これで漂流猫はクリアできるはずです。武装猫の場合は合成カード自体にカード強化を使えるので、1~2回強化しておくといちいち宝箱をとらずに済みます。慣れないうちは宝箱は必ず取るのが強いと思いがちですが、余計なカードをデッキに増やすのはむしろマイナスなので、デッキの圧縮とカードの強化に必要な分だけ取りましょう。

ゴシック猫はコストの仕組みが異なるため全く同じようには行きませんが、不要なカードを廃棄することの重要性は変わりません。報酬にカードの廃棄が可能なカードが出た場合最優先で取得しましょう。廃棄時に体力全回復のおまけもあるので使わない手はありません。また、使用時に即座に宝石を取得するカードも強いので是非とっていきましょう。これを有効活用するために、戦闘開始時に金塊を得るボーナスもあると心強いです。

勇者猫の場合、いくつかの特殊攻撃カードがあるのでどの種類を採用するかをあらかじめ決めておくと良いです。コンボ系、杖系、暗黒系、強化系などです。私の場合は杖をひたすら強化するルートを採用しました。うまく行くと杖攻撃一回で20ダメージほど入るので、カード廃棄カードを使って不要なカードを捨てていき1ターンに1回使えるレベルまで圧縮すればらくらくクリアできます。
サイコロゲーム攻略のヒント 1回目は普通にサイコロの目を大きくしてゾロ目や連番の倍率をあげていって…とプレイすればクリアできます。
2回目は1回目より目標金額が高いうえにターン数が少なくなるので、より効率的に稼いでいく必要があります。最終ラウンドの20ターンで20000Gは鬼門です。
このゲーム内では、作った役(ボーナス発生条件のことを便宜上そう呼びます)の倍率がすべて掛け算されることに注目し、なるべく多くの役を作る方向でサイコロの目を育てるのが良いです。例えば目が33445の時、2ゾロが2回、3連番が1回発生するのでそれまでの強化状況によっては倍率が合計100倍以上となり、5000Gなどの膨大な額を一気に稼ぐことも可能になります。最序盤はサイコロの数が少なくそこまで考慮することができないので、2ゾロ強化や出ている目を5や6にする強化を使って稼いでいきますが、ラウンド3あたりからはサンサン強化(3の目が丁度3つ出た場合すべてのゾロ目のボーナス倍率を恒久的に上昇する)や4連番強化(4つ連続する目を出したら連番系ボーナス倍率を恒久的に上昇する)を取得したうえで、すべての目を-1したり出ている目を3にしたりして条件達成を待つのが良いでしょう。
また、追加点系や特定の目の強化(偶数が出たら+2Gなど)はその後のボーナス倍率も乗るので見た目以上に強いです。適宜とっていきましょう。

というわけで今回は「行方不明の彼女を探しています」でした。シンプルながらちゃんと考えないと詰む戦略バランスとなっており攻略のし甲斐があると思います。また本筋は謎解きでありながら謎要素をすべてミニゲームとしたために閃き不要となっており、普通の謎解き系ゲームが苦手な方でもプレイしやすい作品になっているのではないかと思います。
ちなみに本作には有料版があります。追加エンディングとより高い難易度のゲームが解放されるとのことです。私はまだプレイしていませんが、もう少し無料版で戦略を洗練させたら挑戦してみようかなと思っています。ランキングとか実装されたらアツいですね!

それでは。

こんにちは。

先日、JavaScriptでシンプルな3目並べを作った記事を書きました。今回はそこに1つルールを加えて引き分けの起こらないゲームにしてみようと思います。

加えたルールはシンプル。マス目に数字が書いてあるので、普通の3目並べのルールで全部のマスが埋まっても決着がつかなかった場合には自分のマークのあるマスに書かれた数字の合計が大きい方が勝ちです。
COM戦の難易度は4段階。バグがなければ最強モードは常に最善手を打ってくるので一度でもミスると絶対に負けます。

もう少し丁寧なゲーム説明(クリックで展開) 基本は前回の3目並べと同じです。oとxを交互に空いているマスに書いていき、縦横斜めいずれかに自分のマークを3つ並べたほうが勝ちです。
ただしこれだけだと決着がつかないことがあるので、最後まで決着がつかなかった場合のみoの書かれたマスとxの書かれたマスの数字の合計を計算し、大きい方の勝ちとなります。ゲーム画面上では点数の合計がリアルタイムで表示されますが、これが勝ち負けにかかわるのはすべてのマスが埋まっても3つのマークが並ばなかった場合のみです。
また、書かれた数字の合計は必ず奇数になるようにしているので、引き分けは発生しません。
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例えばこの状態の場合、普通の3目並べでは引き分けになりますが、追加ルールの計算を行うとoの書かれたマスの数字の合計は20、xは23となるため、xの勝ちとなります。


対戦タイプ
難易度

得点 o: 0 x: 0


ちなみにこのゲームは私のオリジナルではなく、AtCoderというサイトで出題された問題をほぼそのままゲームの形にしたものです。

こんにちは。最近あまりフリーゲームをプレイできていないのですが、個人的に初めてJavaScriptに触れてみたのでごく簡単なゲームを作ってみました。いわゆるマルバツゲームとか3目並べというやつです。
先手のプレイヤーがマル、後手のプレイヤーがバツを順に3×3のマス目に書いていって、縦横斜めいずれかに3つ自分のマークを並べたら勝ちです。COM対戦モードと2人対戦モードを用意し、さらにCOMの強さも3段階用意しました。私の書いたコードが正しければ”難しい”モードには絶対に勝てないはずです。
ゲーム中に難易度やタイプをいじったり、ページをリロードするとバグることがあるようなので、その時は難易度選択などをやり直したうえで「最初から」ボタンをクリックしてみてください。



対戦タイプ
難易度




ティラノスクリプトって、中身はJavaScriptとCSSという話を聞いたことあるような気もするのですが、こういったゲームも簡単に作れるようになったりするんでしょうか?

こんにちは。今回は禁飼育さんの「家畜おじさん」のレビューをしていきたいと思います。

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ジャンル:道端でおじさんを拾うガールミーツボーイ系(?)ノベルゲーム
プレイ時間:2時間弱
分岐:基本一本道。ゲームオーバーあり
ツール:NScripter
リリース:2012/1
注意:暴力的な描写あり


禁飼育さんの作品と言えば、以前本ブログで「スレガル」(18禁)を扱いました。尋常でないねちっこさの偏愛とその裏返しの悪意、直接的な性暴力描写など非常に刺激的で取扱注意な作品でした。本作はその禁飼育らしさは失われることなく全年齢相当のマイルドな表現となった作品でなかなか唸らされましたのでぜひご紹介しようと思います。

ただしReadMeにも
【対象年齢】みんなプレイできるけど、不安ならプレイしない方がよいぜ
【ジャンル】まったりほのぼのはんざいぎりぎりあうつさくひん
と書かれる程度には人を選ぶと思いますので、その点承知の上プレイしてみてください。(禁飼育作品の中で随一のマイルドさであることは間違いありません)


いつも通りまずはあらすじ紹介から。
本作の主人公は(多分)小学生の晴々くもり(はればれ・くもり。この作者さんの登場人物は変わった名前が定番ですね)。2か月前に交通事故で両親を亡くしてしまったため、現在はほぼ一人暮らし。お金の管理や食べ物の用意は近所に住む伯父さん(おっちゃん)にやってもらっていますがあまり仲が良くないためほとんど必要最低限の事務的な会話しかしていません。ちょっと帰りが遅くなっただけで怒ってくるし、自分の言い分を聞いてもくれないおっちゃんにイライラする毎日。そんなくもりはある雨の日、家の前の塀に見知らぬおじさんがぐったりともたれかかっているのを目にします。帰るところもないというおじさんを放っておけないと感じたくもりはとりあえず家で雨宿りしつつ一泊してもらうことに。こっちの言う事を聞く気もないおっちゃんと違い、遠慮がちにもお礼を言ってくれたし意思疎通もできたおじさんに少しだけ心を許したくもり。おじさんの正体は何者なのか、おっちゃんとの関係は改善できるのか。くもり自身は大人と触れ合うことを通して成長していくことができるのでしょうか……

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本作の良かったところとしてまず、家族愛というテーマがしっかり描かれていて感動的なエンディングにつながっているところをあげたいと思います。あらすじのところでも書いたように、くもりは実の両親を亡くし、親権者であるおっちゃんとはうまく行っていません。だから必要な時以外は別れて暮らしているけれど、寂しさは埋まることはない。その状況でおじさんを拾って家に上げ、何気ない会話(おじさんは喋れないので筆談だけれど)や家事のやり取りをする中で、家に家族がいて誰かのためにご飯を用意したり、ちょっとした出来事を報告したりといったささやかな幸せの良さを再発見していく流れがいい。さっき知り合ったばかりのおじさんだからこそ日ごろの不満を吐き出したり、ちょっと素直にしゃべってみたりができたんですね。
それに、おっちゃんだってくもりに意地悪をしようとしているわけではありません。あんまり懐いてくれないくもりとの距離感がうまくつかめなくてすれ違いを起こしちゃってるだけなんですよね。おじさんを最初は敵視していたおっちゃんも、町内会のやり取りなどをしていく中でくもりとの関係を見つめなおす機会をおじさんにもらうことになる。この化学反応が気持ちいいんです。


本作はそんな心温まるシーンだけでなく、禁飼育作品らしいどす黒い感情やややこしい出来事もあったりします。その担当が学校で出会うがびょう先生と、明らかに変な宗教か怪しいオカルトチックな格好に身を包んだきもいおっさんです。がびょう先生は初登場時は爽やかな感じだけれどふたを開けてみればどうしようもないロリコン。「スレガル」のジドノ先生ほどとは言いませんが危険な男です。
きもいおっさんは(本当に作内でそうとしか呼ばれない。ちょっとかわいそう)いかにも怪しい風貌ですが、くもりに注意喚起と数珠をくれます。この辺少しごちゃごちゃしてるんですが、それぞれのキャラが立っていて読むのに退屈しません。

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そして最終的にそのごちゃごちゃした人物たちや出来事が収束してあのエンディングに向かうのはびっくりです。途中がびょう先生のあたりで不穏な雰囲気が強まったりはしたけど、万事解決のこのラストシーンは読後感もよく、心からよかったねと言えるような内容でした。
しかもそれらが、きちんと家族愛の形というテーマに結び付いているんですよね。おじさんは結局何者だったのかとか、きもいおっさんの警告は何だったのかとか、途中で出てきてただのギャグ要因だと思っていた変な猫までがごまかされずに一つの真実に収斂していく様は見ていて気持ちのいいものでした。


またタイトル画面にもちょっとした仕掛けがあります。物語の進行に応じて変化するタイトル画面でキャラクターをクリックすると、その時点でのキャラ紹介が読めるのです。どのタイミングでどう変化するのかまで私は全部追えていないので、その辺を注意しながらプレイしてみるのも楽しいと思います。

攻略について、単純にやると引っかかるかもしれないのでそこは注意です。詰まったらReadMeをちゃんと読めばヒントがあります。

不穏なシーンだけでなく、独特なギャグセンスなどももしかしたら人を選ぶかもしれませんが、エンディングの綺麗さ、家族っていいものだよなと思わせてくれる温かいテーマはきっと多くの方に刺さると思いますので、作品紹介を見て面白そうと思った方はぜひプレイしてみてください。

それでは。

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