フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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こんにちは。今回はうみのはっぱさんの「クレーマー家業も楽じゃない!」のレビューをお送りします。

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★favo
ジャンル:トンデモギャグ系ラブコメ
プレイ時間:フルコンプまで40分程度
分岐:エンディング6種
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2025/9


先週に引き続き、こちらもティラノゲームフェス10でプレイした作品となります。ぶっ飛んだ展開ばかりでわけわかんねーとゲラゲラ笑っていたところ、いつの間にか可愛らしいヒロインに心奪われてしまったので、ぜひ皆さんもこの感覚を味わってみてください。


主人公の九条ユウト(名前変更可)は高校1年生。先祖代々クレーマーとして名をはせた家系に生まれ、一人前のクレーマーになるための修行をすることに。気乗りしないユウトではあったが初めて実戦練習のために店舗に出向いてクレームをつけることになるのだった…

クレーマーがなぜか立派な職業として成立している世界観がまず狂っているのですが、ユウトの感性に関しては普通寄り(と言っても彼の将来の夢はおかしいですが…)のため、イヤイヤクレームを付けさせられるというなかなか見ない状況となっておりそのミスマッチ感がおかしいですね。

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しかしこの時点では私はまだこの作品のボケパワーをなめていたのです。この世界で狂っているのはユウトの家系だけではなかった!
台風ではなくドリアンの接近を警告する天気予報、なぜ持てているか不明なほど巨大なポロシャツ、謎のクイズ出題トナカイ、クリームソーダに浮かぶ樹脂粘土製バニラアイスなどなど、私の常識にはないアンビリバボーな展開の数々がスピーディーに押し寄せ、私の脳内もトルネードスピン、じゃなかった、スペーススピン! まるでテンポの良いコントを見ているかのような感覚で物語が進んでいきます。(といっても、「ドキドキかかとフレンズ」ほど意味不明ではないですよ)

そんなスピード感でクレームの餌食となる店舗へ到着すると、本作のヒロインでもあるバイト店員が独特なテンションで応対してくれます。
アパレルショップで店員をしているのは同級生で赤べこ狂いの福島ヒカリ。ユウトが練りに練ったクレームの設定を聞いても一切動じずにラッキー☆彡と変換してしまえるハイパーポジティブ少女です。
喫茶店に出向いたユウトを出迎えるのは中学の後輩の飯田ツキ。クレーム歓迎というツキはユウトに流れるクレーマーの血をもってしてもツッコめない謎の危険商品を提供してきます。相手がクレーマーじゃなくてもクレーム必至!
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そんな個性的な2人のヒロインですが、私が好きなのはツキのルートでした。ユウトがクレーマーの家系であることを気にしないどころかむしろプラスに捉え、変わり者である自分を受け入れて正面から意見を言ってくれる人という唯一の価値を見出してくれるのです。
ハッピーエンドルートまでストレートで来れば5分程度とかなり短い作品でありながら、ツキがユウトのことを好きである理由、そしてクレーマーにならなくてはいけないというプレッシャーといった要素がしっかりと回収されて気持ちいいエンディングでした。


エンディングは2ルートにそれぞれ3つで計6個。分岐要素も少なめですし、ゲーム内ヒントを読めば完全攻略も書いてあります。バッドエンド時には直前の選択肢に戻るなどの機能もあって大変親切。短編ですしぜひコンプリートまでプレイしていただきたいです。
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と、普通はここで終わるのですが、本作はエンディングを迎えてからが本番と言えるくらいここからが充実しているのです!
まずはエンディングムービー。普通はクレジット表記を流しながら作内の立ち絵やスチルを回想していく…という感じになると思うのですが、本作ではボーカル入りEDテーマにオリジナルのイラスト、そしてED後のちょっとしたショートストーリーが組み込まれており大変豪華。何回も見たくなるエンディングムービーってすごく珍しいんじゃないでしょうか。

それだけに留まらず、本作はおまけ要素が多岐にわたっており本当に見応えがあります。
ヒロインごとにちょっとした前日談やおまけイラストにショートストーリー、ランダム会話、そしてコンプリート後にはエンディング振り返りお疲れさま会。本編に匹敵するくらいのボリュームです。これらはハッピーエンド後の時空になっているので、小ボケを挟みつつラブコメメインで展開する気持ち良さ。本編中に進展した2人との仲を見守っていられるのは幸せです。

おまけ要素が多すぎて、どこにあるのか分からなかったり見逃したりもすると思うので、ここにおまけ要素一覧を書いておきます。
  • タイトル画面>説明書
    • 個別おまけの台詞一覧
    • 左下小ネタ(はじめからで指示通りにすることで6通りのシナリオが読める)
  • タイトル画面>実績
    • ヒロインごとのバッジ取得
    • 右ページおつかれさま会
  • タイトル画面>おまけ
    • エンディング回収ヒント
    • エンディングリスト
    • クレジット表記
    • 各ヒロインごとおまけ
      • ランダム会話
      • 回想ショートストーリー
      • EDムービー再生
      • プロフィール画面
      • ギャラリー(一部のイラストは会話付き)
      • ギャラリー>画面左下ヒロインからの手紙
  • タイトル画面>右上ドリアンケート
  • 画面遷移中ドリアンTips
  • (DL版の場合)フォルダ内同梱おまけに没シナリオ
いや、何だこの物量。恐れ入りました。
1つ1つは軽い感じの内容なので、本編の空気感が気に入ったらぜひこれらも見てみてください。いつの間にかコンプリートしちゃってると思います。

というわけで今回は「クレーマー家業も楽じゃない!」でした。
クレーマーが仕事になる理屈はいまだにわかってませんが、そんなのお構いなしに楽しめる素晴らしい作品です。ぜひプレイしてみてください。

こんにちは。
先週の日曜日に行われた東京ゲームダンジョン12に行ってきたので遊んだ作品の紹介などしようと思います。
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今回は時間目いっぱい滞在するつもりで11時からの先行入場チケットを予め購入してあったので11時に会場である東京都立産業貿易センター浜松町館に到着しました。しかしその時にはすでに入場口が大行列になっており、3階からの列が4階のテラスに伸びていたりしてどこに並んでいいのか分からないくらいの状態でした。警備員さんが「○○の方はこちらです」と絶えず声を出していらっしゃったので何とか正しい列に並んで入場受付し会場入りしました。


入ってチラシなどをざーっと見てから、上の階から回ろうと思って3階の出口に向かうと、運営の席に座っていらっしゃったコンマさんに声をかけていただきびっくり。以前はCreative Blossomsさんとして出展者側で参加されていたので、まさか運営に回っているとは思わず私は全く気付かなかったのですが、コンマさんの方が顔を覚えてくださっていたようでお声掛けいただき嬉しかったです。今回イベント参加にあたりレビュワーとしての名刺を用意していたので、初めて交換します。これまで名乗るときはTwitterのプロフィール画面を見せるくらいしかできていなかったので、形のあるものを渡せて少しだけ界隈の仲間入りしたような気がしました。

以下会場で試遊した作品たちです。結構な数をやったのでここに挙げきれていないものがあるかもしれません、すみません。

弾幕病の特効薬(ToAge)

以前のゲームダンジョンで「To my forever Love」を展示していた方の新作で、被弾回数をうまく管理して敵にダメージを与えていくちょっと変わったシューティングゲームです。自発攻撃がなく敵の攻撃を反射しなければ倒せないので、弾を避けるモードと自ら当たりに行くモードを脳内で切り替える必要があってなかなか新鮮でした。ステージが進むにつれて時間制限を意識しなくてはならなくなり難しめ。画面が込み入りがちなシューティングですが、サウンド方面でのUIが気持ち良くていい感じ。
帰宅後にSteamからデモ版をDLしてプレイしてみましたが、なんとかデモ版の最終面までクリアできました。スコアを考えなければクリア自体はできるなあというくらいですが、今後どうなっていくのか。

ナントレ(Eiji Moriyama) iOS版/Android版
マス目の上で数字を線でつなぐシンプルなパズルゲーム。タイミングがなく会場試遊はできませんでしたが気になったので帰宅後プレイしました。盤面のサイズが小さいときは簡単なものの、7×7くらいのサイズからは考えることが多くなってきて、9×9以上はどれも3分以上はかかったと思いますが無課金問題は全クリまで行きました。スワイプによる操作がスムーズでシンプルな効果音も良い感じです。格子状のマス目以外の変形マス目の問題もありますがこちらはおまけ程度。広告が多めと感じました。

種も仕掛けも思い出も(地下れんじゃく)
トランプゲームのフリーセルを利用した脱出アドベンチャーゲームです。トランプのカードの中に閉じ込められてしまったキャラクターたちが会話しながら物語が進み、フリーセルの要領でカードを開いていって新しい手掛かりを得ます。まだ序盤のみといった印象ですが、トランプのスートごとに人格が異なるという仕掛けだったりイラストが可愛かったりで今後が気になります。

不見不聞の大罪(nonoko)
障害者雇用に関する問題を描いた社会派ノベルゲーム。ティラノゲームフェス10の参加作のようで、フェス作品をあれだけプレイしていたのに目に入っていませんでした。悔しい。
身体障害に比べて目に見えにくい精神障害は世間の理解も進んでおらず、就職に高い壁があるという現実。普段健常者が見て見ぬふりをしがちな領域に踏み込んだ重い作品ですが、最近思ったよりも簡単に人は障害を負いうるなと感じたので他人事と思えませんでした。プレイ時間長めと聞いているのでゆっくりプレイします。

捜し屋キセン(常磐ほそみ)
有名な時計師であった主人公の兄の不自然な死の真相を探るため、彼が仕事した町で"捜し屋"を営む探偵もののノベルゲーム。試遊最初の段階で懐中時計が喋りだして「何???」となったがファンタジー的要素はさほど濃くなくサスペンス系といった印象。12年前に起きたと言われるいくつかの事件や、色々な事情を抱えていそうな依頼者の相談内容がどう収束していくのだろうかと気になりました。

STICK MAN(日本工学院八王子専門学校)
シンプルな2Dアクションゲームですが、自機(棒人間)が貧弱ですぐに"バラバラ"になってしまうのが特徴的です。普通に床を歩いているだけなら形を保てますが、数段の段差を飛び降りたりトゲに当たったり、何かにぶら下がって力を入れていたりするとバラバラゲージが上昇していき、棒人間のパーツが外れてしまいます。その状態だと移動速度やジャンプ力が落ちるけれども細かい場所に入りやすくなるなど、ギミック的な要素と関連していて難しめですが面白かったです。ちょっと聞いたところ公開されてはなさそうなのが残念。

犯人はメイド(ななにのん)
本ブログで扱った「立ち絵が変なポーズの恋愛アドベンチャー あるいはオリジナリティの無い卒業までの日々」の作者さんの作品。相変わらず思い切りのよいコメディー作品で、タイトル通り犯人で主人公のメイドが恨みを持つ人物を洋館に集めて殺人事件を計画するという内容。いかにもまじめですといった感じのボイスからとんでもない内容の招待状を書かされる導入部でもうそのノリが分かります。ゲーム内のボイスにわざわざ怪しげなボイスチェンジャーを使用した作品は本作が初では?
一体その計画の全貌はどんなものなのか、完全版の公開が待たれます。

5分間のメイド(おんねんちゃんねる)
5分間で最初にループしてしまう記憶喪失の主人公が、なんとか真実を見つけてループを抜け出すアドベンチャーゲーム。前回のループで得た情報のうち何を引き継いで次のループに臨むかを毎回選択できるので、新情報をもとにさらなる新情報を得て進んでいく、徐々に行動範囲が広がっていくタイプのループものです。引き継げる情報量は上限があるようで、試遊版の段階では選べそうな情報が少なく宣言の影響がなかったもののゲームが進むにつれて必要な情報を厳選する能力が必要になりそうで難しそうな印象を受けました。どんな真相が待ち受けているのか、楽しみです。

Slime Ten Puzzle(Next2D)
4つの数字と四則演算で10を作るテンパズルと呼ばれる古典的なゲームを、スライムのキャラクター化してポップにした感じの作品です。(私の作品と方向性が近い?)
本作についてはゲーム内容うんぬんよりも、ゲーム説明をしてくれた出展者の方がインパクトがありました。小学校高学年くらいに見える子供が操作法など説明してくれたのです! 試遊後に同じブース内にいた夫婦っぽい大人の男女に聞いてみるとやはりご家族でのイベント出展とのことで、素敵なことだなあと思いました。

夜の名前(ヨアケラボ)
高校時代の思い出を振り返る形で語られる、2000年代のアーケード音ゲーのあれこれを聞きながら緩い雰囲気で進むノベルゲーム。私はあまりゲームセンターに行ったりしていなかったので共感できるジャンルというわけではないのですが、PCやスマホでやる音ゲーとはそんな違いがあるのか~とか、何より2人の関係性が良くてどんどん読み進めました。イラストもセピア調のイメージが続いて印象的で可愛らしい。試遊版の最後で発せられる問いが衝撃的なので、ぜひ最後まで見届けたいなと思いました。

まだあるとは思いますが大体こんなところで。
フリーゲーム界隈や以前のイベントでご挨拶したななにのんさんや星空照美さん、カンナさんなどと名刺交換できたのも良かったですね。薙沢ムニンさんには「LivingDead*Magic」の感想とかも伝えられたり。ToAgeの山本さんには以前ブログで書いた病気のことを気遣っていただけたりと優しさが身に沁みます。

そんな東京ゲームダンジョンは次回8/8(土)の開催がすでに決定しているようです。私はちょうどピッタリその日に用事があって行けない見込みなのですが、興味のある方はぜひ行って会場でこの熱量を体感してみてください。

それでは。

こんにちは。前回の予告通り、今回は星くずのお茶会さんの「Lived happily, ever after」のレビューとなります。
実はおよそ1年前にプレイ済みだった作品なのですが、ティラノゲームフェス10の機会に読み返してみたところどんどん好きになりましたのでご紹介します。

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ジャンル:シリアスファンタジー乙女ゲーム
プレイ時間:2時間半
分岐:なし
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2025/3
備考:15推


久々のレビュー記事で若干書き方を忘れてますが、まずはあらすじを簡単にまとめておきましょう。
舞台となるのは魔王や吸血鬼が存在する洋風ファンタジー世界。主人公のメーベルはその生まれ持っての黒い髪の毛が魔王を思わせるという事で幼いころから理不尽な仕打ちに耐えてきました。町はずれにある吸血鬼の屋敷への給仕に向かわされることとなり、そこで出会うのが吸血鬼のシオンです。確かに普通の人間とは違う性質のある彼ですが世間一般に思われているような恐ろしい雰囲気は一切感じさせない親切な彼にメーベルは惹かれていきます。しかし人間と吸血鬼の恋愛が簡単に成就するはずはなく、世間からの差別も強烈です。そのような中で2人は少しずつ絆を深め、味方を増やして愛をはぐくんでいくのでした…


本作の世界観は洋風の童話そのものです。童話の世界ってシンデレラにしても白雪姫にしても非常に不憫な環境だったりしますが、本作も例にもれずメーベルの扱いは散々なものです。ただ髪が黒いだけでいわれのない罵倒を受け、まともな職にも就けず腫れもの扱いされる日々。屋敷での給仕というのも実質的には「吸血鬼のいけにえになって来い」という命令です。
とこのようにシビアな状況なわけですが、本作が童話と違うのは、このひどい扱いが意地悪な継母や嫉妬深い魔女によるものではなく、一般大衆が悪意なく抱えている偏見や差別心によるものだということです。現実世界でも個別には悪意と呼ぶほどでもないものが集積した結果、特定の人物に致命的なダメージを与える現象はたびたび起こります。「指先で世界を見る(tales&Vivid)」などの作品が思い浮かびます。一人の悪者を成敗すれば解決、と行かないところは童話よりも大人向けのシナリオと言えるでしょう。

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そんなメーベルが出会う吸血鬼のシオンは、吸血鬼という恐ろしいイメージとはかけ離れた優しい人物でした。吸血鬼であるという事自体は間違いではないのですが、人を襲う事のないように人里離れた屋敷に住み、動物の血で渇きをしのいで過ごし、メーベルやシオンを差別する人たちよりよほど温かい心を持っているのです。
世間から厄介者扱いされていた彼らはお互いの境遇に共感し、惹かれ合うようになります。これだけの扱いを受けていた中での出会いなら運命的なものに感じられるだろうな、という納得感があります。

このまま2人がデートを重ねて結ばれるストーリーなら、いわゆる「理解のある彼くん」が突然現れて幸せになる話とも分類できそうですが、本作がすごいのはここからです。
他人に迷惑をかけるわけでもなく静かに暮らしている2人ですが、その平穏すら許してくれません。もともとは普通の人間であったシオンが吸血鬼となったのは、両親の魔王討伐の失敗に起因するものでした。討伐自体はあきらめなんとか封印を施すことには成功したのですが、その際にシオンが呪いを受けてしまったのです。そんなシオンにとって、人の血を飲みたい衝動を抑えるのは大変な困難を伴うものでした。

見かねたメーベルが自分の血なら吸ってもらっても構わないからと身を差し出すシーンはなかなか印象的です。まだ物語前半の出来事なのですが、この時点では既にメーベルはシオンと運命を共にする覚悟を決めています。シオンはシオンで血を飲み干してしまいたい欲望にあらがって数滴に留め、メーベルを気遣います。これだけお互いのことを思いながら嘘もなく生活しているなら、普通の乙女ゲームならもうゴールと言っていいでしょう。しかし本作はその先。2人の愛と絆を試すかのように差別や呪い、政治的思惑などが彼らを襲う、そうしたシビアな状況の中でどのように幸せを見出していくかという物語なのです。

具体的にどのような困難が彼らを待ち受けているのかはここでは語りませんが、どれもかなり絶望的なものです。それも、過去に魔王がもたらした呪いだったり、近くに吸血鬼が住んでいることに対する政治的判断だったりと本人にはどうしようもないものばかりです。普通の恋愛ものにおいて恋愛成就のハードルになりがちな2人の間のすれ違いだったり身の回りの人間の説得だったりといった事象とは質的に異なるのが特徴的で、もしかしたら受け入れがたく感じる方もいるかもしれません。このひどい運命が物語中で前触れなく明らかになるのも唐突感があるようにも思います。


何度も述べてきたように本作におけるメーベルやシオンの置かれた環境は大変厳しいものですが、登場人物たちはみな優しい心をもちと自分の信念を貫く素敵な人物であることは特筆すべきでしょう。吸血鬼の討伐を目的にやってきたシエラでさえ2人に害をなすことに固執することなく、状況と自らの使命とを照らし合わせながら人道的な判断を下しています。物語後半となり味方が増えてくると、避けがたい巨大な運命を相手にどうやって幸せになるかを協力して考えている感がありなかなか感動的です。

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物語のエンディングでは魔王の呪いを解くために代償をささげるかを決断することになります。大切な人や物を守るために自身の何かしらをささげるという構造はよく見るものですが、本作においてはその結果二人が人類の平和を願うという方向へ決着するのが印象的。幾度とない差別にも平和的な解決を望んできた二人の"らしさ"がよく出ているなと思うのです。そんな"優しい人"である彼らが重い代償を伴う決断をしなくてはならないというのは皮肉的ではあるのですが、だからこそ二人の間で築かれた確固たる愛を強調しているようにも感じられます。


本作はシナリオやイラストだけでなく音楽も自作のようで、特にエンディングテーマは作中の世界で使われている設定の架空言語による歌詞がついている凝りようです。一度エンディングを迎えた後はおまけ画面から日本語版も選択できるようになりますので、ぜひ聴いてみてください。この日本語版はJOYSOUNDでの配信もされていますので、カラオケに行ったら歌えます! フリーゲームで自作主題歌がカラオケ配信されているという例はかなり珍しいでしょう。

さて、実は本作は同作者によるファンタジーRPG作品「canvasぷろじぇくと」のスピンオフとして制作されたノベルゲームとのことです。残念ながら本編はまだ体験版のみの公開のようですが、興味を持たれた方はぜひこちらもチェックしてみてください。

というわけで今回は「Lived happily, ever after」のレビューでした。
とにかく二人に厳しい運命が襲い掛かるシナリオは多少人を選ぶかもしれませんが、この困難を乗り越え無邪気な愛をひたすらに描き続ける物語を見届けたあなたは間違いなく愛という希望を信じて前向きに生きる力をもらえるはずです。

それでは。

先日、ティラノゲームフェス10が閉幕となりました。毎年恒例のイベントになっていましたが、私が作品を出したのが初めてなのもあり新たな気持ちで参加することができました。ブログ開設以降ノベコレへのコメント投稿もしていなかったので、2021年のフェス以来となります。その間にレビューのスタイルとか思想が固まってきたのもあるので昔のコメントとはちょっと温度感が違うかもしれません。

プレイヤーとしては期間中にレビューコメントを50本執筆・投稿しました。ノベコレはコメントにはポジティブな内容を書くことを強く推奨していますので、ブログでのレビューよりさらに甘めの内容になっていると思います。明らかにバグっぽい所など以外はネガティブな内容は含んでいないはずです。
とはいえ私はプレイした作品全部を絶賛しているわけではなく、面白いと感じた作品をある程度選んだ中で全肯定レビューの執筆をしている感じです。実際プレイした作品数は100を超えています。面白かった作品を広めるためにレビューを書いているためほとんどの記事やコメントが好意的なものになってしまい、コイツクソゲーでも何でも褒めるなと思われてないか若干心配ですが、私が褒めている作品はちゃんと平均以上の良作と思っているので是非皆さんプレイしていただければと思います。
そういう意味もあって作品への拍手ボタンもコメントを投稿する作品にしかしていないのですが、フェスのページからは分類の中の作品プレイ済みが拍手ボタン押下済みかどうかで判定されているのはちょっと不満でした。来年以降外に見えないフラグを追加する機能とかできないかな。


コメントは大体600~800字以内くらいに収まるように意識していました。スマホから1画面で読める文字数がそれくらいだったからです。あまりノベコレ上で特定の作品を贔屓するのも微妙かなと思ったのもあるので極端なばらつきが出たり2~3行だけのコメントになったりしないようにしています。
あとはコメントのネタバレ部分を伏せる機能もありますが、あれはなるべく使わないようにしました。やはり未プレイの方に作品の魅力を伝えられる文章にしたいので。ノベコレのコメントって、ゲーム制作者のコメントはほとんどレビューというより作者へのファンレターになっていて、ネタバレ部分に作者さんへの個人的なメッセージを込めているものをよく見かけますが私が書きたいのはそういうものではないなと思っています(もちろんそういうコメントを貰ったら貰ったで作者としては嬉しいですけどね。また一部の制作者さんはレビュー寄りのコメントを投稿していらっしゃいますね)。あの機能を使うのは作内の小さな要素を拾ってきてコメント書くときや作品のテーマから私が考えた内容などに限られていると思います。

さて、ノベコレへのコメント投稿基準はブログの記事化の基準よりゆるいのですが、今の所コメント投稿だけになっている作品の中にもいくつか素晴らしい作品があってぜひ記事にしたいなと思っているものがあるので紹介しておきましょう。前回の記事にも書きましたがフェス期間中のうち半分くらいは入院生活でPC触れなかったのでね…。鍵カッコ内が作品名で丸カッコは作者名です。

アイドルと○○しちゃダメですか?」(ミキマキ)
aidame

ラブコメ系短編乙女ゲーム。ずっとテンションが高くて、ちょっぴり変人な担当アイドル達とのハイスピードラブストーリーからの週刊誌にすっぱ抜かれて崩壊! 乙女ゲーム的ハッピーエンドに転んでもバッドエンドに転んでも楽しく読めます。フルボイスなので感情むき出しな担当達のボイスが色々聞けますよ。おまけも凝っていてボリューム感あります。

Lived happily, ever after」(くーにゃん)
livedhappily

超シリアス系長編乙女ゲーム。恵まれない環境で育ったメーベルが心から信頼を寄せることができた彼は吸血鬼。世間との対立、非道な運命に2人で抗うたくましさ。童話の世界観ってたまに恐ろしいほどシビアなことがありますが、そんな世界の中で輝く2人の愛の結晶、そんなお話になっています。エンディングテーマはJOYSOUNDで配信されているから一緒に歌おう!

探偵助手ガリウムのろじうら探検記」(揚げ鶏々)
gallium

元素擬人化ファンタジー。元素楽章というあらゆる元素を擬人化して多様なメディアに展開しているコンテンツの一つです。作者さんが化学系の出身の方という事で、作内に登場する元素たちの豆知識なんかもはさみつつ、事件にはしっかり科学的な元ネタやトリックがあります。ただ擬人化した元素たちがワイワイしているだけでなくちゃんと物語としてまとまっているので多くの方が楽しめると思います。

クレーマー家業も楽じゃない!」(うみのはっぱ)
claimer

ナンセンスギャグ系短編ギャルゲー。クレーマー一家に育った主人公はほんとは店にクレームなんかつけたくないのに修行のために無理やり難癖付けに行きます。そこで出会うバイト店員2人が個性豊かなヒロインたち。私の好みはツンデレ後輩キャラのほうでした。あり得ないけど全く意味が分からないほどでもない狂い方。こちらもおまけ要素が豊富でむしろエンディングコンプからが本番? EDムービーも良いぞ!


退院してからプレイしたものですが、「国立天使研究センターの記録」(ヅッキーニ)もすごく良かったですね。これから壮大なSFが始まる気配がしました。長編続編出ないですかね…?
短すぎてこれ一本で記事にするのはきついですが、「他人の靴で踊る」(よなき)も個性的ですごい作品でした。ノベルゲームの新たな可能性を求める方にぜひ。


今回のフェスではゲーム作者側としても参加していて、あの拍手ボタンが押されるたびに作者側に通知があるのを初めて知りました。ありがたいことに自作へのコメントも多数いただけて、ノベルゲームコレクションという名前のサイトなのにほかのジャンルのゲームをプレイしてくれる人もたくさんいるんだなと思いました。レビュー活動を細々ともう5年も続けてきて、私のことをレビュワーとしてご存じの方がいらっしゃったり、他の作品に関するお話だったりイベントだったりで付き合いのある方もいらっしゃったりで、続けてきてよかったなと思います。反面やはりノベコレは身内の内輪感があるなあとも思いました。プレイ専の人ももっと気軽に来て欲しい。私が頑なにファンレターでなくレビューを書くのはそういった気持ちもあるかもしれません。

そんな自作「咲希ちゃんと○×ゲーム」のイラストを描いていただいた深嶺ユミアさんにアイコン用のイラストを描いていただいたのでこれからはこちらで行きたいと思います。よろしく!
冬瓜さんアイコン_transparent

一応今年もゲーム作るならという事で2つほど候補があって、デモ版がこんな感じです。 どっちが面白そう!とかこういう風にしてよ!とかあったら検討するのでリプなりDMなりコメントなりで教えてください。今はCPUの思考ルーチンの実装をしようかというところなので、前作難しすぎ!とかありましたら考慮します。

次回の記事は上のいずれかの作品のレビューになるかと思います。もうなんだかんだ4か月近くレビュー記事書いていない…
それでは。

こんにちは。3か月も更新が空いてしまいました。
その間なんですけど、タイトルにも書いたように急病で倒れて入院していました。診断はなんと脳梗塞です。今は何とか回復して自宅に戻っているので、入院していた間のこととか、そんな状況でもフリーゲームが頭の中から離れなかったとかそんな話をしていきたいと思います。以下の内容は若干のフェイクは含みますがおおよそ私の身に起こったことそのままです。みなさんぜひお体には気を付けてください。

現在は無事退院しまして、完全に回復したとは言わないものの問題なく日常生活を送れている状態になります。退院がちょうど桜の時期だったので見に行ったりもしました。
sakura

発症

1月上旬のある日に突然異変が起こりました。最初に気付いたのは若干の頭痛です。ちょっと痛いけどすごくつらいほどではなくて、このくらいならたびたびあるという程度だったのでそのまま少し休んでいました。しかし喉が渇いたと思って水を取りに行こうとすると、まっすぐ歩けなくなっていることに気付きます。歩いていてちょっとふらつくことなら誰でも経験したことがあると思いますがそのような感じではなく、普通に歩こうとすると必ず右側にふらついて転んでしまうという状態になっており、ここで身の危険を感じました。さすがに病院は行かなければまずいとは思っていたのですが救急車を呼ぶレベルなのか分からず、初めて救急相談ダイヤルへと電話します。結果救急搬送となります。この時点では、耳や三半規管がおかしくなったのかと思っていました。

病院についてからも少しずつ悪化し、嘔吐、発熱といった症状が出ます。意識に異常はなかったのでぎりぎり入院の書類にサインしてベッドで寝て過ごします。この時点で歩くことはおろか立つのも壁によりかからなければ不可能になっていました。
さらに物が飲み込めなくなっていることに気付きこれはかなり怖かったです。風邪やインフルエンザのような、のどが痛くて食べ物が食べられない、といったものとは異なり、まるで飲み込み方を忘れてしまったかのようにのどが動かない状態でした。この時は気持ち悪くて口の中にたまった唾液すら飲み込むことができず、吐瀉物と一緒に全て吐き出していました。

最初の3日ほどはほぼ寝たまま過ごし、食事はできないので栄養は点滴、排泄も自力では困難なので都度ナースコールで看護師さんを呼び、なんとか車いすでトイレまで運んでもらって用を足していました。

この時期を過ぎると支えありで座ったり、ゼリー状の食事をとることができるようになりましたが自力での移動は困難なため車いすでトイレまで運んでもらうのは相変わらず。吐き気は収まり日中は目を開けて過ごすことができるようになりましたが、この辺りで視覚にも異常が現れていることに気付きます。もともと近視ではあったのですが、普段とは違う感じで遠くが見えない。目を細めて見ようとしても気持ち悪くなってしまう。さらには物が2重に見える状態でした。片目で見ると正常に近かったので、視力の低下とかではなく両眼視ができなくなっているんだろうなと思っていました。めまいのような症状もあり振り返ったり首をひねったりすると乗り物酔いのような状態になってしまいます。ここまでくると、もう脳に異常があるのだろうと思っていましたが、この時点ではまだ原因は分かっていませんでした。

身体に現れる症状が多岐にわたっており自力ではほぼ何もできない状態でしたが幸い意識や認知機能への影響はなく、変に冷静でした。これ全然死ぬ可能性あるよなあとか、回復したとして目がまずきついなあ眼帯すれば何とか生活できるかなあとか、本当に死ぬとなったら家族に何と言おうかとか、このブログの存在を教えておこうかとか考えてました。「あなたの命の価値」のレビューとか、実質私の家族や両親に感謝を述べていたりしますからね。
幸いその必要はなくなり、恥ずかしいのでまだ家族や友人らに明かしたりはしていないです。

診断確定

1週間ほど経って受けた造影MRI検査で原因が明らかとなり、延髄梗塞と診断されました。延髄は大脳・小脳や間脳とともに脳を構成する部位で、要は脳梗塞の一種です。
内心そんな気はしていたのですがショックではありました。私は20代なのですが、この歳で患う病気ではないと思っていたのが正直なところです。

悪化する可能性もあるので定期的にMRIを撮って備える、再発を防ぐ投薬を行う、後遺症が残る可能性が高い、といった話を聞きます。特に後遺症が残る可能性が高いというのはショックな告知なわけですが、この時にはすでに薄々そう感じていたのかすごく気持ちが沈むようなことはありませんでした。
仮に今の状態で症状が固定化したら障害者手帳は貰えるのだろうかとか、何級になるんだろうかとか考えてました。

この頃にはやわらかい食事を自力で摂ることが可能になっていたり、歩行は相変わらず困難なものの車いすでの移動は自力で出来るようになっていたりといった点でも、確実に発症直後より良くなっているという実感が生まれていたのも大きかったかもしれません。視覚の異常も、手元でスマートフォンを見る程度なら少しずつできるようになってきました。長時間見るのはまだ無理で、動体視力も相当低下していたと思います。めまいの症状も継続しており、集中を続けると気持ち悪くなりやすかったです。

その後の入院生活とリハビリ

その後もしばらくは安静にした状態で入院していましたが、歩けない・目がおかしい・飲み込みがしづらい以外の症状はほぼ解消しました。入院生活も慣れてきた2週間後くらいからリハビリを行いました。専門職の理学療法士・作業療法士の方に見てもらいながら体を動かしたりします。フリゲレビュワーの大先輩であるNaGISAさんは理学療法士であることを表にしていらっしゃいますが、正直何をしているのかイメージがついていませんでした。今回とてもお世話になって感謝の気持ちでいっぱいです。

病変の場所が脳なので、一応という事で高次脳機能検査も受けました。注意機能検査というやつとか記憶力検査、知能検査というやつです。幸いこれはどこも影響なしとのことで安心しました。病院でちゃんとした知能検査を受ける人(保険適用で)ってあまり多くないと思っていて、知的障害でも発達障害でも認知症でもなくてこういう検査を受けることあるんだなと思いました。いわゆるIQテストみたいなものと同じような検査もあったのが少し意外な感じがしました(インチキIQテストみたいなアプリとかサイト、広告って結構あると思うのですが、あれが流行るのは社会に悪影響ありそうと思っている派です)。

さて、リハビリをする時期になって初めて発覚した症状があって、それは触覚の異常でした。左半身で痛みや熱さ、冷たさを感じなくなっていたのです。左手に物が触れていること自体やその場所、硬さなどについては正常な感覚が残っていたため自力で気付けず、作業療法士の方に指摘されて初めて気づきました。確かに右手で触ったらひんやりするものに左手で触っても何も感じません。この時の衝撃はこれまでの人生で受けた驚きの中でも指折りかもしれません。
思えば、数日前に点滴の針を左腕に刺し替えてもらったことがあり、その際血管が出にくくて腕を温めてもらったのですが、温かいと言って渡されたおしぼり冷めちゃってて全然温かくないな~と感じたことがありました。あれは本当に温かいものを渡されていたのにそれが分からなかったのだなと気付きました。
病院内で生活する分には危険はほぼ排除されているわけですが、それでも食事の際に左手で持ったお茶碗などの温かさが分からず、おかずは食べてみるまで温かいものか冷たいものかが分からなかったり、シャワーの温度が分からなかったりという状態で、結構影響範囲あるなと感じます。

リハビリではバランス練習だったり歩行訓練だったり、体幹トレーニングをしたりしていました。担当の理学療法士の方に筋肉の状態を触って確かめてもらったりもするのですが、左右で明らかに違いがあってびっくりしました。右利きなのに右側の筋力が段違いに落ちていたり、柔軟性も右の方に顕著に問題があったり。ストレッチのような感じで脚の筋肉を押してもらっていた時、右側だけすごく痛くて左右で同じ力を入れていると言われても信じられないくらいでした。だんだん歩けるようになってきても右足に先に疲れを感じたり、右だけ遠足の翌日みたいな感じになっていたりと不思議なものです。他にも眼球運動の練習や手指の細かい動作、手足で複数の動作を並行して行ったり、階段の昇降や家事動作、PC操作の練習なども行っています。
これらはリハビリを重ねるうちに次第に解消し、今ではほぼ問題ない状態になっています。

その他入院生活について

イメージ通りではありますが入院患者ってほとんど高齢者ですね。それもほぼ全員後期高齢者と見受けられるかたばかりで、私の年齢は明らかに異色でした。私の場合両親が見舞いに来てくれたりしたのですが、他の患者さんは息子や娘が来るといった場合がほとんど(しかも息子が私の父より年上に見えたりする)。さすがに物理的な若さが全く違うので、リハビリでの回復速度は一般的な患者さんよりかなり速かったらしく、理学療法士の方には「リハビリをやればやるほど良くなっていくから診ていて楽しい」というようなことを言われました。回復が速いという事自体は嬉しいのですが、そもそもこんな年で脳梗塞とかなるかよという気持ちもあるので微妙なところです。
病棟の看護師さんにもやたら可愛がってもらった気がします。規模が小さい病院だったので、(久しぶりに自分より若い/同年代の患者さん来た~)みたいな雰囲気を若干感じました。

認知症のためかほとんど何も分からなくなってしまっていると思しき患者さんも多く、無実の罪で公安警察に追われているから助けてくれという妄想を語り続けるおじいちゃんとか、脱抑制という症状なのか完全に幼児と同じダダのこね方をするおばあちゃんもいました。奇声を発してうるさい患者さんも多く、仕方ないとは思いつつ、不自由な点以上に入院生活のストレス源となったのは他の患者さんかもしれません。


お見舞いについて。私の家族は他県に住んでおり片道2時間以上はかかると思うのですが、入院の翌日(しかも平日)には父が来てくれました。もう何年も前に親元を離れ就職もしているのですが、いくつになっても大切な子供なのだなあと感じました。子供のころからのこうした経験は間違いなく自分の自己肯定感の源泉になっていますし、だからこそ「あなたの命の価値」のレビューのようなことを書いたのです。母や兄弟もたびたび来てくれてありがたい限りです。

入院中はかなり自由に制限があるわけですが、私の場合間食に制限などはなかったので見舞いに来てくれた家族がお菓子やお茶をたくさん差し入れしてくれ、それを食べたりするのを楽しみにしていました。もっと回復してからはパズル雑誌を差し入れてもらったのでそれを解いたりもしていました。

それでも入院生活は暇ではあるので、毎日日記をつけていました。今もそれを参照しながら記事を書いています。これまで日記をつける習慣はなかったのですが、1日にキャンパスノート1ページ分もの量を書いていました。私はゴリゴリの理系タイプなのですが、文章を書くのは好きなのかもしれません。

暇な入院生活の少ない楽しみの一つが食事ですが、一緒に食べる相手もいないと一瞬で終わってしまいます。よく病院食はまずいと言われたりしますが、私はそこまでには感じませんでした。ただ、その食生活を数か月単位で続けていると物足りなさを感じるのも事実でした。量という意味でも味付けの面でもそうです。栄養面は厳密に管理されているはずですが、その分主菜枠が豆腐だと物足りないというか、肉や魚が食べたいなあと思いました。
このように、私自身は食事にそこまで文句はなかったのですが、同室の患者さん2人が仲良くなったのか「病院の食事がまずくてかなわない」「退院したら味噌ラーメンを食べに行くんだ」みたいな話をずっとしていて(多分認知症のため同じ話をしたことを覚えていない)、そういう話をされると本当に食事がまずくなるからやめてくれ、と内心思っていましたが言えませんでした。
病院の食事で辛い物が出るイメージが全然なかったのですが、意外と辛い物も出てきました。それも単に唐辛子だけでなく、コショウやワサビ、マスタードなど様々な香辛料が使われている印象があり、塩分量が厳しく制限された中で美味しく食べられる料理を作ろうという工夫なのかなと思いました。


様々な症状が出ていたのですが、症状の現れるタイミングや回復の速度が違っていて不思議でした。
経験した各症状の強さをグラフにしてみたのですがこんな感じでした。縦軸は症状の程度を0~10で表して、0は普段通り、10はこれ以上ないくらいにしんどい状態というイメージです。異なる症状を比べられるものでもないのであくまでイメージという事と、横軸は目盛りが等間隔でないことに気を付けてください。
graph

最初に現れたのが頭痛と運動障害、次に嚥下障害で、他は発症翌日以降に現れたように記憶しています。どの症状も発症翌日がピークで次第に回復していくのですが、なぜか熱は安定せず、1週間後には40度に達して解熱剤を打ってもらわなくては寝られないほどでした。回復速度もばらばらで、嘔吐は3日もする頃にはほぼなくなっています。次いで嚥下障害と運動障害の回復が速く、感覚の異常は今も少し残っているという感じです。これらの症状が0に戻るときがあるのか、祈るのみです。

入院生活とフリーゲーム

入院から2週間も経つ頃には症状もかなり落ち着いて、手元のスマートフォンを見て短時間操作することはできるくらいになっていたので、ノベコレで短編のフェス参加作を探してプレイするようになりました。認知機能と指先の細かい運動機能がほぼ無事だったのが大きいですね。ずっと見ているのはしんどかったので最初のうちは短編のみで、レビューコメントは頭の中で考えて少しずつメモ帳アプリに書いて、最後に作品ページにコピペしていました。今までゲームはWindowsPCにダウンロードしてプレイすることがほとんどだったのですが、入院中はスマホしか触ることができず、ノベコレのマルチプラットフォーム対応が今回は本当にありがたかったです。
また、ありがたいことに自作「咲希ちゃんと○×ゲーム」にたびたびコメントやダイア玉ブーストを頂いていたので、コメント返信なんかもしています。
ティラノゲームフェス10については、閉幕が迫っていますがもう少しだけコメントを書くつもりです。閉幕後にはプレイした作品のまとめとかも書きたいですね。


ツイートもしましたが、こんな状況下にあってもフリーゲームのことが頭の中から離れないんですよね。医療用リストバンドという個人識別用の道具を腕につけますが、数か月単位でつけっぱなしでも耐えられそうな丈夫さかつ軽い素材、そして白い色から「ナルキッソス」を連想してしまいました。1作目の主人公やセツミ、姫子さんがつけていたものと同じ色ですね。本当に入院しているときにホスピスの物語(しかも患者は助からない状況にある)を思い浮かべるなんて縁起でもない、という気もしますが院内でその話をしたわけではないので許してください。これ本当に丈夫で、おそらく20回くらいはつけたまま入浴したと思うのですがふやけたり文字がかすれたりすることもなく、着けていて異物感や重さを感じることもほぼありませんでした。
「ナルキッソス」は最初にプレイしたときはそれほど刺さったという感じでもなかったのですが、今になって見返してみるとやはりすごい作品だなと思います。そのうち本ブログでも扱いたいです。
作中に、入浴は週2回といった表現が出てきますが、これはマジでした。検温の時間が決まっている風の描写もありますが、私が入院していたところではその日の状況によってさまざまだったので違うところもあったり。外出も相当なことがないとできないはずです(衆議院選挙に行きたかったがダメと言われてしまった)。

リハビリをするようになると、リハビリ計画書という書類を作ってもらってそこにサインしたりします。その書類の中には現在の状況やリハビリの目標が書かれているわけです。自力で食事や排泄ができるか、歩行や階段はどうか、知的能力はどうかとかですね。その中に心理状態に関する項目があり、障害受容度合いが否認期、ショック期、恨み怒り期などと分類されているのを見た私は、「Normalize Human Communication」で登場したキューブラー=ロスの死の受容のプロセスを連想してしまいました。これまた本当に縁起でもないし、後遺障害の受容に関する心理プロセスがそれを踏襲しているわけでもないだろうとは思うのですが、受け入れがたい事実に直面したときにまずショックを受け否認する時期があって、怒りや抑うつ、そして受容といった段階があると考えられているのは似ているなとも思います。
私は自分自身を割と楽観的なタイプで、多くの物事に対してかなり許容範囲の広い性格だと思っているのですが、今回病気を発症して、思っていたよりさらに許せる範囲が広いのだろうかと感じました。診断確定の時点では既に受容の段階に向かっており、早くリハビリを開始したいという思いがあったのです。どれだけ回復するかは分からないけどある程度は時間が解決してくれるだろうし、入院中他にやることもないからどんどんリハビリして少しでも良くなるようにしようというような思考です。

退院後

現在は既に退院し、ほぼ以前と変わらない日常生活を送れるようになっています。まだ病院外での生活に慣れるフェーズのため休職中ではありますが、近いうちに復帰できればと思っています。
運動機能についてはリハビリの甲斐もあり9割以上はもとの能力を取り戻したと思うのですが、感覚機能についてはそこまでは良くなっていません。もちろん発症当初よりマシにはなっているのですが…

退院前にまたMRI撮影を行って画像について説明してもらったのですが、発症時に撮った画像では途切れている血管が今では繋がって写っているのが素人目にも分かり、本当に生命の力強さに感動するような気持ちでした。

体についてはそんな感じで、残りは時間をかけて少しずつ良くなる、あるいは慣れていくと信じています。積極的にできる治療やリハビリもほぼなさそうなので、今はとりあえず閉幕間際のティラノゲームフェス10をやっていこうと思います。PCを触れるようになったのでこうしてブログを書いたり、ブラウザ非対応のゲームをプレイできるようになったのが嬉しい。
閉幕後にまた振り返り記事を書くと思いますので次回お会いしましょう。

なにか思い出したら追記するかもしれません。
それでは。

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