こんにちは。今回はしろ∽うささんの「ねじまきマキナ」のレビューをお送りします。

ジャンル:ファンタジーノベルゲーム
プレイ時間:エンディングまで1時間程度。フルコンプまで2~3時間
分岐:ED3種
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2023/8
本作は3部作の完結編として銘打たれている作品となります。同作者の「飛びたいの」「私を人間にしてください」のキャラクターが登場するので、先にこれらの作品をプレイしておくと本作のプレイ中ににやりとできる箇所があるでしょう。どちらもエンディング回収1時間以内の短編です。
本作単体でもストーリーは問題なく楽しめますので、時間がない方やグロテスクなシーンは苦手な方(「私を人間にしてください」はR15相当の描写があります)は本作からプレイしてみるのがいいでしょう。本作単体は全年齢対象となっています。
そんな完結編である本作は、過去作のキャラクターとは全く関係のないシーンから始まります。間抜け面ともいえるような”ポンコツロボ”の様子を喜劇調に描きます。感情(らしきもの)を持つロボットのマキナは、現代の視点から見ると高性能ロボといえそうです。しかし人間のように汎用的な仕事・物理的な仕事をさせようとするとまだまだのようです。マキナを作った科学者がその無能ぶりに頭を抱えるところでこのシーンは終わります。

一旦タイトル画面に戻ると、今度は大けがを負って地上に墜ちていた天使とそれを拾った人間の話になります。その哀れな姿を見て放っておけない人間ですが、天使には何かやり残した大切な用事がある様子。その目的は果たされるのでしょうか…。
こんな感じで1シーン3~5分くらいの短い話が、毎回登場人物が切り替わりながら進んでいくのです。舞台となるのは3つの世界。最初に登場した、ロボット工学の技術は進んでいるが同時にその技術は軍事転用もされ、悲惨な戦争が延々と続くディストピア世界。次に登場する、人間界に墜ちてきた満身創痍の天使と善意の人間が交流するファンタジー世界。もう一つは、一緒に天界に行った天使と少年の、「飛びたいの」に登場した世界です。

最初のうちはこれらの話の関連性が見えてこず、単体の話としては面白いんだけれどどういう意図なのだろうと疑問でした。しかし中盤以降これらの世界のかかわりが見えてくると、一気に視界が開けてくる快感があります。
あまり詳しくしゃべってしまってもネタバレで興がそがれると思いますので、1つだけ。
3つの世界を横断して最も重要な存在となるのは、タイトルにもあるマキナです。家事・看護用ロボットとして博士の手で生み出された彼女。人間に近い見た目を持ちながら、機能や動力、寿命も大きく異なるロボット。作内でしきりに引用されるアシモフのロボット工学三原則に縛られる存在であり、クラウドコンピューティングの普及によって見た目の個体と論理的な個体が一致しなくなった存在。これらの設定が融合してあの結末にたどり着くのがうまいですね。
マキナに使われている技術が普及するほど科学の発展した世界で、それが軍事に転用されたうえで世界大戦なんて起こってしまった日には、人類の滅亡まで一直線かもしれません。そんな滅亡世界と死を前にして人間は何を望むのか。輪廻転生があったとしたら死者の魂はどう裁かれてどう生まれ変わるのか(この辺りの設定は「私を人間にしてください」プレイ済みだと分かりやすいと思います)。天使は天界でどのような仕事をしているのか。こういったSF要素とファンタジー要素がミックスされ、本作はかなり壮大なテーマに挑んでいるといっていいでしょう。
さて、物語のテーマから離れて演出方面の話をしましょう。
上の説明からも読み取れるかと思いますが、本作は結構重めの問題提起をはらんでいます。しかし全体の雰囲気としては深刻な感じは薄めで楽しく読める調整となっています。これはまずボイスの貢献があるでしょう。フルボイスではなく文章の冒頭や間投詞などが音声付きになる程度ですが、マキナの能天気な声色は、各シーンのコメディ的要素を引き出して場の雰囲気を明るくしてくれます。天使たちの困った声、博士の冷静な声などメリハリが効いて読みやすさの向上にもつながっているように思います。音声は短めなのでプレイヤーの読む速度に縛られないという意味で、これはむしろフルボイスでないからこそかもしれませんね。

また、タイトルに含まれる通り、本作にはネジをモチーフにした部分が多数見受けられます。タイトル画面にあるロゴもそうですし、文章送り待ちで表示されるアイコンなど細かい部分もあります。物語中盤で、単にロボットに関係した話であるという以外の意味が語られ、なるほどと思いました。
キャラクターの立ち絵についてはやや独特な画風と感じますが、戦争の絶えない人間世界でもファンタジー世界でも、異種族交流をしている感が出ていて良いですね。人によっては一部イラストがグロテスクと感じられそうなので注意が必要かもしれません(先述した通り年齢制限がかかるほどではありません)。
逆に気になる点としてはフラグ管理が甘そうな点が挙げられるでしょう。一つのシーンを読み終わると次のシーンが解放されるという仕組みですが、その解放状況がロードされないのかゲーム起動直後は必ず初期状態になってしまいます。先の章のセーブデータを読み込めば一気にそこまで進むことはできるのですが不便です。また、過去の章をプレイし直した際も次の章にまたNEWマークが出てしまう場合があるので若干の違和感があります。新規に読めるようになったシーンに印をつけておくというのは親切な仕組みだと思うのですがあと一歩という印象。
本作のエンディングは3種類。終盤の選択肢とアクションシーンの結果でEND1とEND2に分岐します。
END3はフラグが特殊なので回収に苦労しました。END1と2の結末を受けての大団円といった内容ですが、私が好きなのはEND2でした。主人公たる人物が報われてる感じがするんですよね。マキナにとっても私の倫理観ではこちらの方が幸せそうに感じます。逆にEND1は無力感に襲われるというか振出しに戻るというか、そんな感じがしてしまいます。
このエンディング分岐は少し変わっていて、END1とEND2に至るルートが複数あるのです。1つの選択肢だけでなく、この方法を試してみたけどやっぱダメだったとか、逆に負けそうなときにそんな手があるのか!みたいなルートもあったりして、それぞれでエンディングに至る過程が少し違うため、エンディングの読み味も辿ったルートによって少し変わってくるかもしれません。
というわけで今回は「ねじまきマキナ」のレビューでした。
バラバラな点から始まったそれぞれの物語が交差し、1本の筋になっていく様子はそれこそねじ止めすることで組み立て作業が完了し製品として完成するような気持ちよさです。あなたは最後の最後、どのような形で物語を組み上げるでしょうか。ぜひご自分の目で確かめていただきたいなと思います。
それでは。

ジャンル:ファンタジーノベルゲーム
プレイ時間:エンディングまで1時間程度。フルコンプまで2~3時間
分岐:ED3種
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2023/8
本作は3部作の完結編として銘打たれている作品となります。同作者の「飛びたいの」「私を人間にしてください」のキャラクターが登場するので、先にこれらの作品をプレイしておくと本作のプレイ中ににやりとできる箇所があるでしょう。どちらもエンディング回収1時間以内の短編です。
本作単体でもストーリーは問題なく楽しめますので、時間がない方やグロテスクなシーンは苦手な方(「私を人間にしてください」はR15相当の描写があります)は本作からプレイしてみるのがいいでしょう。本作単体は全年齢対象となっています。
そんな完結編である本作は、過去作のキャラクターとは全く関係のないシーンから始まります。間抜け面ともいえるような”ポンコツロボ”の様子を喜劇調に描きます。感情(らしきもの)を持つロボットのマキナは、現代の視点から見ると高性能ロボといえそうです。しかし人間のように汎用的な仕事・物理的な仕事をさせようとするとまだまだのようです。マキナを作った科学者がその無能ぶりに頭を抱えるところでこのシーンは終わります。

一旦タイトル画面に戻ると、今度は大けがを負って地上に墜ちていた天使とそれを拾った人間の話になります。その哀れな姿を見て放っておけない人間ですが、天使には何かやり残した大切な用事がある様子。その目的は果たされるのでしょうか…。
こんな感じで1シーン3~5分くらいの短い話が、毎回登場人物が切り替わりながら進んでいくのです。舞台となるのは3つの世界。最初に登場した、ロボット工学の技術は進んでいるが同時にその技術は軍事転用もされ、悲惨な戦争が延々と続くディストピア世界。次に登場する、人間界に墜ちてきた満身創痍の天使と善意の人間が交流するファンタジー世界。もう一つは、一緒に天界に行った天使と少年の、「飛びたいの」に登場した世界です。

最初のうちはこれらの話の関連性が見えてこず、単体の話としては面白いんだけれどどういう意図なのだろうと疑問でした。しかし中盤以降これらの世界のかかわりが見えてくると、一気に視界が開けてくる快感があります。
あまり詳しくしゃべってしまってもネタバレで興がそがれると思いますので、1つだけ。
3つの世界を横断して最も重要な存在となるのは、タイトルにもあるマキナです。家事・看護用ロボットとして博士の手で生み出された彼女。人間に近い見た目を持ちながら、機能や動力、寿命も大きく異なるロボット。作内でしきりに引用されるアシモフのロボット工学三原則に縛られる存在であり、クラウドコンピューティングの普及によって見た目の個体と論理的な個体が一致しなくなった存在。これらの設定が融合してあの結末にたどり着くのがうまいですね。
マキナに使われている技術が普及するほど科学の発展した世界で、それが軍事に転用されたうえで世界大戦なんて起こってしまった日には、人類の滅亡まで一直線かもしれません。そんな滅亡世界と死を前にして人間は何を望むのか。輪廻転生があったとしたら死者の魂はどう裁かれてどう生まれ変わるのか(この辺りの設定は「私を人間にしてください」プレイ済みだと分かりやすいと思います)。天使は天界でどのような仕事をしているのか。こういったSF要素とファンタジー要素がミックスされ、本作はかなり壮大なテーマに挑んでいるといっていいでしょう。
さて、物語のテーマから離れて演出方面の話をしましょう。
上の説明からも読み取れるかと思いますが、本作は結構重めの問題提起をはらんでいます。しかし全体の雰囲気としては深刻な感じは薄めで楽しく読める調整となっています。これはまずボイスの貢献があるでしょう。フルボイスではなく文章の冒頭や間投詞などが音声付きになる程度ですが、マキナの能天気な声色は、各シーンのコメディ的要素を引き出して場の雰囲気を明るくしてくれます。天使たちの困った声、博士の冷静な声などメリハリが効いて読みやすさの向上にもつながっているように思います。音声は短めなのでプレイヤーの読む速度に縛られないという意味で、これはむしろフルボイスでないからこそかもしれませんね。

また、タイトルに含まれる通り、本作にはネジをモチーフにした部分が多数見受けられます。タイトル画面にあるロゴもそうですし、文章送り待ちで表示されるアイコンなど細かい部分もあります。物語中盤で、単にロボットに関係した話であるという以外の意味が語られ、なるほどと思いました。
キャラクターの立ち絵についてはやや独特な画風と感じますが、戦争の絶えない人間世界でもファンタジー世界でも、異種族交流をしている感が出ていて良いですね。人によっては一部イラストがグロテスクと感じられそうなので注意が必要かもしれません(先述した通り年齢制限がかかるほどではありません)。
逆に気になる点としてはフラグ管理が甘そうな点が挙げられるでしょう。一つのシーンを読み終わると次のシーンが解放されるという仕組みですが、その解放状況がロードされないのかゲーム起動直後は必ず初期状態になってしまいます。先の章のセーブデータを読み込めば一気にそこまで進むことはできるのですが不便です。また、過去の章をプレイし直した際も次の章にまたNEWマークが出てしまう場合があるので若干の違和感があります。新規に読めるようになったシーンに印をつけておくというのは親切な仕組みだと思うのですがあと一歩という印象。
本作のエンディングは3種類。終盤の選択肢とアクションシーンの結果でEND1とEND2に分岐します。
END3はフラグが特殊なので回収に苦労しました。END1と2の結末を受けての大団円といった内容ですが、私が好きなのはEND2でした。主人公たる人物が報われてる感じがするんですよね。マキナにとっても私の倫理観ではこちらの方が幸せそうに感じます。逆にEND1は無力感に襲われるというか振出しに戻るというか、そんな感じがしてしまいます。
このエンディング分岐は少し変わっていて、END1とEND2に至るルートが複数あるのです。1つの選択肢だけでなく、この方法を試してみたけどやっぱダメだったとか、逆に負けそうなときにそんな手があるのか!みたいなルートもあったりして、それぞれでエンディングに至る過程が少し違うため、エンディングの読み味も辿ったルートによって少し変わってくるかもしれません。
というわけで今回は「ねじまきマキナ」のレビューでした。
バラバラな点から始まったそれぞれの物語が交差し、1本の筋になっていく様子はそれこそねじ止めすることで組み立て作業が完了し製品として完成するような気持ちよさです。あなたは最後の最後、どのような形で物語を組み上げるでしょうか。ぜひご自分の目で確かめていただきたいなと思います。
それでは。












