フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
初めての方は、ぜひごあいさつをご覧ください。評価の基準については、レビューについてに記してあります。
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YouTube始めました。フリーゲーム攻略動画などを投稿してます。

こんにちは。今回は伽那ノ光さんの二酸化テルルをご紹介します。

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ジャンル:現代乙女ゲーム
プレイ時間:1周20分、フルコンプまでで2時間以内
分岐:4種類
ツール:吉里吉里
リリース:2013/7
備考:第9回ふりーむ!ゲームコンテスト女性向けゲーム部門銀賞受賞作


こんにちは。今回ご紹介するのは現代舞台の乙女ゲームですがちょっと変わった雰囲気の作品です。中学校が舞台だけど普通の学園ものとは違う。そう、本作は生徒である天音セレンと理科教師仁志輝流(にし・きりゅう)の間の物語なのです。禁断の恋という感じでフォーカスされているわけではないのでそこを求める方には物足りないかもしれませんが、生徒と先生、コドモとオトナの対等でない関係の間でどう展開するのかは見どころの一つでしょう。


さて、本作が変わっているのは生徒と先生という関係性だけではありません。タイトルを見てお気付きになるかと思いますが、本作には化学物質の名前がタイトルとして与えられています。そこからもわかる通り、化学が本作のストーリーを支える大切な要素になっています。とはいっても難しい話は出てこないので大丈夫。主人公天音セレンは中学3年生なので、中学校の範囲の内容しか出てきませんし、シナリオ中では適宜出てきた用語などについての解説が入ります。ちなみにこの解説は、仁志先生がさらっと格好よくしてくれるパターンと、シナリオを中断して注釈が入るような形で解説してくれるパターンがあります。出てくる用語自体は義務教育の範囲内ですが、付随するうんちくなんかも語ってくれたりするので理系の方も退屈しないと思いますよ。作者の伽那ノ光さんは医師とのことで、専門性を生かしたシナリオになっています。
逆に、科学的な(理屈っぽい)語り口などにアレルギーがある方だと本作を楽しむのは難しいかもしれませんね。昔習ったことを忘れてしまったという程度ならセレンと一緒にプレイヤーも生徒側に回ればいいのですが、酸素を作るとか電気分解するとかいった話題自体が苦手なら本作はお勧めしません。


そんなことを言っていると、本作は理屈をこねて難しい話を続けるようなゲームかと思われるかもしれませんが、それは違います。主人公セレンがとる選択肢は必ず科学的・空想的という対になっていてどちらも選ぶことができます。そしてどちらを選んだ回数が多いかによってエンディングが分岐するのです。理科の先生が攻略対象だからと言って、科学しまくれば良いエンディングにたどり着けるのかというとそうではありません。科学エンド、空想エンド、そして中間にあたる中道エンドのどれもがそれぞれ少しずつ違って優劣のない結末を見せてくれます。科学を押し付けることがないようなこの態度はなかなか好感が持てます。
そうした作品の構成だけでなく、文章表現でも詩的で素敵だなあと思える魅力もあったりします。私は「職員室にナッツのようなカラメルのような香りが広がる。たちまち、灰色だった部屋に赤みがさしこんだ。」「先生のほほえみは、準備室に広がったクリームの香りのように甘かった。わたしはその笑顔に、どきりとした。」などが気が利いていて好きだなあと思いました。


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さて、上の画像を見るとわかりますが、本作のイラストは非常にきれいです。セレンも仁志先生も描きこみが細かくて美しいですね。教師という立場でクールに振る舞いますが、笑顔も見たくなる。そして3つのエンディングではそれぞれ専用スチルもあるのでぜひ集めてみましょう。ちなみに残り1つのエンディングは実質ゲームオーバーなのでスチルはありません。
もう一つ上の画像で特徴的だと思うのは、会話ウィンドウの配置です。普通のノベルゲームでは画面下部にウィンドウが1つあり、地の文も会話文もそこに表示されると思うのですが、本作では会話文は通常のテキストウィンドウとは別に立ち絵から吹き出しが出て表示されるのです。大変独特で慣れるまでは読みにくいかもしれません。しかしシステム面はしっかりと作りこまれているのでシステムに由来するプレイしにくさはかなり少ないですよ。ちなみにメニューバーの操作説明ボタンを押すと、作者さんの過去作せつなゆ魂のキャラクターが本作の操作法を解説してくれます。


本編中では仁志先生はあくまで先生であり、セレンがいくらアプローチしても大人の対応で、セレンは仁志先生のトクベツ課題を受けていることをうれしく思いながらも、いち生徒としてしか見られていないんじゃないかと寂しく感じたりします。このあたりの描写って、乙女ゲームとしてのすごくいいところだと思ってます。しかしそれだけでは物足りなく感じてしまうのも事実。結局セレンの恋は実らないのかと思うと残念だったりもしてしまいます。ですが心配は無用。2人の甘々っぷりはエンディングとエピローグでたっぷりと味わえます。特に恋する理科ノートの話では、セレンの脳みそが沸騰したところで私の脳みそも沸騰しそうでした。表情の変化も細かくていいですね。注文を付けるとしたら、エンディングでなぜ仁志先生がこれまでの態度を翻してセレンの気持ちに応えてくれたのか、の部分を読んでみたかったというところでしょう。エピローグは本編から時間が経っての話ですし、話のつながりのようなものよりは1つのシーンの魅力が大事だと思うのでセレンと仁志がラブラブになっていてもいいと思うんですが、本編エンディングではその部分が少し気になりました。

最後にどうでもいい蛇足なんですが、美術室に行ったときの回想で、セレンが課題で「わたしがいる風景」を描くために悩んでいるとき、仁志先生がキイロイトリの絵を描いたというシーンがありました。偶然だとは思うんですが、この題材が、三善晃作曲の混声合唱とギターのための組曲「クレーの絵本 第1集」の終曲「黄色い鳥のいる風景」を連想させてちょっとびっくりしました(元になった詩は谷川俊太郎のものです)。

さて、今日は少し変わった乙女ゲームのご紹介でした。大変クオリティの高い作品で、実は隠しイベントもあったりするので気になった方はぜひプレイしてみてください。隠しイベントのヒントは、周期表(タイトル画面に表示されている、元素をその性質をもとに並べた表)です。2人の名前の由来や作内に登場した科学知識の補足、セレンの過去などの話が聞けます。特にこのセリフ。

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作内の登場人物がしっかり背景を伴って生き生きと描かれているのって大事な要素ですよね。
本イベントへの入り方の答えはここには書きませんので、頑張って探してみてください。

それでは。

今回はEYEZMAZEさんのGROWキューブのご紹介です。

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★favo
ジャンル:試行錯誤を楽しむパズルゲーム
プレイ時間:1プレイ3分以内
分岐:正解ルートは一つ。その他にも無数の結末あり
ツール:HTML5(ブラウザゲーム、スマホ可)、スマホアプリ版あり
リリース:2014/9(HTML5版)


今回は久々にパズルゲームのご紹介となります。
本作のルールはいたってシンプルです。10個のアイテムがあるのでそれらを順にクリックしていきます。クリックするごとに、画面中央にある立方体にそのアイテムが投入され、その時の立方体の状態に応じて各アイテムがレベルアップしていきます。最終的に正しい順番を導き出すと、すべてのアイテムがレベルMAXとなるのでそれを目指すというものです。

それだけで何が楽しいのかというのは、私がここでどうこう説明するよりも、実際にプレイしてみていただくのが一番早いと思います。
というだけでは全くレビューにならないので、私なりに説明を試みましょう。

まずはアイテムの成長にちょっとしたストーリーがあって、それによってキューブが発展して姿を変えていくのを見守るのが面白いという所です。正しい順序を選べた時、ああそうか、このアイテムがすでにこの状態になっているとこっちが成長できるのか、といった気付きにもつながります。キューブを能動的に発展させていくのはもちろん人ですので、人のパネルは早めに選んでおきましょう。
また、そのアイテムの成長にちょっとした意外性があるのも気持ちいいところです。パイプがどんな風に伸びるかとか、土器を使って何を作るのかとか、植物の活用法とか(右上のこんぺいとうのようなパネルは植物の種です)。
そして最も重要なのは、不正解ルートです。順番が間違っていても、単にアイテムのレベルアップが途中で止まるだけでなく、不正解独自の変化を遂げるパターンが大量に用意されています。中には、成長途中の他のアイテムと絡み合って、正解ルートとは全く違った方向への成長をするパターンもあります。何回も試してみても、順番をちょっと変える度に異なる成長を見せてくれるので、見ていて飽きません。そしてその成長の仕方がどれもこれもほっこりするような愛らしさなのです。

GROWはシリーズとして本作以外にもいくつものゲームが公開されているので、本作を楽しいと感じた方は、ぜひシリーズの他の作品にも触れてみてください。そのどれもが本作のような豊かな想像力に支えられた可愛らしい作品となっています。画面の隅で起こる出来事一つ一つまで丁寧なアニメーションがあり、いつまででも見ていられますよ。

最後に、どうしてもわからない方向けの攻略ヒントを載せておきたいと思います。必要なところをクリックして読んでください。

全体的な方針 キューブを発展させるためにまずは能動的に動けるアイテム、つまり人が大切です。人は早い段階で設置しましょう。
また、アイテムには設置するとほぼ無条件でその後数ターンにわたってレベルアップするものと、特定の条件を満たさないとレベルアップしないものがあります。通常各アイテムは1ターンに1回しかレベルアップしないため、前者については最大で何レベルなのかを考えて、すべてのアイテムを設置するときにちょうどレベルアップが完了するように調整しましょう。後者についてはなるべく早い段階でその条件を満たすようにします。また、キューブの外に落ちてしまうとそれ以上レベルアップしません。そうならないように状況を見て選びましょう。

特定の条件について詳しく
  • 人が活動を行うためには水源が必要不可欠です。
  • また、土地を発展させるには緑化が大切です。
  • 土器は火にかけて使いますが、火力の調整が必要です。火がレベルアップするころには土器が完成するように計算しましょう。
  • パイプはどんどん伸びていきますが、伸びる先に邪魔なものがあると伸びていけません。具体的には、土器を移動させるとパイプが通る穴が掘られます。
もう答えを見せて (人、水)、種、土器、パイプ、火、皿、骨、(バネ、ボール)
の順番でクリックするとクリアできます。括弧内のものはそれぞれ順番を入れ替えてもよいです。

こんにちは。
以前Twitterで、フリーゲームのBGMに使われている素材の探し方みたいなことをつぶやいたら思ったより反響があったので、今回はBGMについて思いついたことをつらつらと書いていこうと思います。
始めに書いておきますが、今回はかなり長いです。素材特定のコツだけ教えろよ!という方はこちらからどうぞ。

私は小学校から高校に通っている間ピアノを習っており、大学では合唱団に所属して合唱にも取り組みました。そんな私が聴く音楽は主にクラシックのピアノ曲か合唱曲でした。すごく熱心にやっていたというほどではないですが、どちらもそれなりに楽しくて続けています。ちなみに演奏経験のある好きな曲はR.シューマンの「子供の情景」より13曲目「詩人は語る」や、高田三郎の混声合唱組曲「水のいのち」より1曲目「雨」、G.マーラーの交響曲第8番(通称「千人の交響曲」)などです。自分では難しすぎて絶対弾けないけどあこがれるのはF.ショパンの「英雄ポロネーズ」、弾きたいしそのうち練習しようと思いつつ全然練習に取り掛かれてないのは同じくショパンの「華麗なる大円舞曲」です。

そんな私がその他の音楽を聴くようになったきっかけは間違いなくむきりょくかん。さんの「ほしのの。」との出会いでした。「ほしのの。」については今度じっくり記事を書くとして、今触れたいのは使われていた音楽です。この作品(原作Flash版のほう)は2007年公開と古い作品なのですがエンディングテーマがボーカル付きです。fokaさんの「あたりまえ かわりばえ」という曲でして、この曲の歌詞とメロディーがとにかくシナリオの雰囲気とぴったりマッチしていることに感動してしまったのです。作品クレジットからfokaさんの楽曲であることを知るとすぐさまサイトに飛び、速攻でダウンロードしてずっと聴いていたのを覚えています。それ以来、プレイしたフリーゲーム内で気に入ったBGMがあると素材を探し出して鑑賞するのが一つの趣味となりました。そんな感じなので、クリア後に音楽鑑賞モードのある作品はそれだけで私の中の評価レベルが1段階上がります(笑)
最近のフリーゲームはかなり力を入れて作る方も多く、BGMも素材は使わずに作曲してオリジナルを使っているものもありますが(もちろんそうした作品も凄いと思いますし、音楽のクオリティーもとても高いことが多いです)、素材を使った作品だとプレイ後にBGMを収集してきて鑑賞するといったことがしやすいですし、「これはあの作品にも使われていた曲だ!」みたいににやにやすることもできるわけです。

自作曲の場合はサウンドトラックまで用意されているような作品もあり、その場合はかならずチェックします。必ず買うとは限らないのですが、BGMから場面が思い起こせるような印象的なものがあったら買うようにしています。ちなみにサウンドトラックまで無料で提供されている作品も数は少ないですがありました。私がプレイした中で知っている範囲では、妹れっぐぅおーまーさんの「風のように、花のように。」(ただし現在ではサウンドトラック配信は終了している模様? ニコニコ動画で試聴は可能。作品自体はまだ公開されているがダウンロードリンクがリンク切れになっているところも多い。また、作品は全年齢だがサイトは18禁作品を含むので注意)とFour Leaf Studiosさんの「かたわ少女」(注:18禁)です。みやのさんは、ニコニコ動画でBGM集を投稿されていますね。

さて、プレイした作品内の素材BGMすべてを収集しているわけでは当然ないのですが、それでもこれまでに集めた素材は100曲を優に超え、曲を集める際のコツみたいなものも少し掴んできました。この、フリーゲーム内に使われているBGM素材を探すコツについては需要がありそうな感じがしたので、いくつか書いてみますね。
  • 当然ですが、まずは作品ReadMeやクレジット表記を読む。曲名まで書いてあれば特定は簡単。
  • クレジットに楽曲提供者や配布サイト名のみしか書いていない場合
    • 探したい曲を分かる範囲で良く調べます。
    • 楽曲の長さは有効な絞り込みの条件になることが多いです。作品内でそのBGMがかかる場面でプレイの手を止め、ストップウォッチで大体何分何秒の長さがあるか調べましょう。ループ素材の場合はどこまでが1周なのかわかりにくい場合がありますが、何週かすれば大体分かります。ゲーム作者によって素材の一部をカットするなどの加工がされ、素材楽曲の長さとゲーム内で計測される時間が異なる場合もあることに注意。
      • DOVA-SYNDROMEなどの膨大な数の曲が登録されていて、曲の長さによる検索機能が充実しているサイトで特に有効。
      • 他のサイトでは、Senses Circuitなどでも時間による絞り込み機能あり。甘茶の音楽工房では、演奏時間順ソート機能あり。
    • 曲に使われている楽器や、拍子などを聴き取る。
    • 曲の雰囲気を表すのに使われそうな単語をイメージする。楽しい、幻想的、壮大、和風など。音楽素材サイトでは色や季節によって雰囲気ごとに曲を探せる機能があることも多いので、あてはまりそうな分類を重点的に探す。
  • 配布サイト名表記すらない場合
    • 特定はかなり困難です。素材配布サイトのうち規約でクレジット表記を必須にしているサイトは除いて考えられるくらいでしょうか。
      • ただしoo39ドットコムのように、クレジット表記しなくてもよいライセンスを販売しているサイトもある。
    • 同じ作者の他の作品にはクレジット表記がある/何の曲かわかる場合には、同じ方の曲を使っている可能性が高いので重点的に調べるといいでしょう。
  • その他のテクニック
    • 当然ながら、作品の公開日より後に公開された素材は利用されていない。配布サイトで公開年月日が分かる場合は絞り込むことができる。そうでない場合でもたいていの場合は公開日順に並んでいるので参考にはなる。
    • 作者が自身のサイトやSNSでBGMに関する話をしていないかチェックする。
いま思いついたのはこんな感じです。また、古い作品の方が探すのは苦労します。サイト移転などによりクレジット表記がリンク切れになっていたり、楽曲製作者がサイトを閉鎖していたりする確率も上がってしまいます。サイトが閉鎖されていた場合は入手は絶望的なので、欲しい素材がある場合はすぐに調べるに限ります。

さて、私はフリーゲームのBGMを集めることは何度もやってきたわけですが、それらの経験の中でも印象的だった時のことをいくつかお話します。

Ramineさんの「southern cross」

これは、むきりょくかん。さんの「ごがつのそら。(Nscripter版)」のおまけシナリオ終盤で、2人が洞窟を抜け"はちがつのゆき"の地点に到着した時に流れるBGMでした。このソフトで穏やかな曲調なのに壮大な感じがするような曲が大好きで、DLしてじっくり鑑賞したい!となったのですがそう簡単にはいきませんでした。作内の音楽鑑賞モードでほとんどのBGMはクレジット付きで鑑賞できるのですが、なんとこの曲だけはリストになかったのです(作者さんのミス?)。それでもあきらめられない私。いろいろさがしましたが結局分かりませんでした。そんな私が何の曲か突き止めるきっかけになったのはなんと本作の英語版「May Sky」をプレイした時のことでした。なんとDLしたフォルダの中に暗号化されていないNScripterのスクリプトファイルの一部が紛れ込んでいたのです。本来見えちゃいけない情報だろうなあと思いつつ中身を確認すると、BGMを指定するタグなども記入されていることを発見。該当部分を探し出し、曲名が”southerncross"(あるいはそれに類する名前)らしい、というところまでたどり着きました。しかしsouthern crossは一般名詞(南十字星)なので正確な曲名や作曲者を特定するには至らず。そこで当時存在していたインディーズ音楽配信サイト「muzie」で検索して2ページ目くらいに出てきたのがこの曲でした。見つけるのに相当苦労したのでこの時の喜びはかなり大きかったです。ちなみに、このときmuzie検索でトップだった403さんの「Southern Cross」も後にSparebeatというゲームで再会し好きになることになります。arika-projectさんの「こころのアリカ」(Flash作品のため現在はプレイ困難)でも使われていた曲だと気付くのもまだ先の話です。

DOVA-SYNDROME/yukiさんの「いちごホイップ

この記事を書くきっかけにもなったツイートでも例に出した曲です。私がこの曲に出会ったのは、SNさんの「僕が魔法使いに捕まって女の子にされたワケ」のタイトル画面です。この作品は私のツボにドはまりしまして、とにかく爆笑しました。お色気要素の程度もちょうどよく、さらにはキャラクターの設定がしっかりしていてギャグだけでなくシリアスな展開もあり最高だったのですが、残念ながら現在は公開停止になっています。本作をプレイし終わった私は、大満足し、タイトル画面で使われていた可愛らしい曲を探すことにしました。しかし本作のReadMeには配布サイトの名前しかありません。曲名が分からないため探すのに苦労しました。2つ書かれていた配布サイトの中ではDOVA-SYNDROMEが配信曲数で圧倒的に多いため、ここの可能性が高いだろうと踏んでとにかく探しました。ここで役に立ったのがツイートでも紹介した曲の再生時間による絞り込み検索です。タイトル画面でストップウォッチをもって計測し、約1分だったため30秒~1分と1分~1分30秒の2つで検索。さらに、楽しい、可愛い、4拍子、シンセなど条件を変えていろいろ絞り込みます。膨大な数の候補がありましたが、公開年の2016年3月の曲から気合でさかのぼって調べ、およそ2時間かけてyukiさんの「いちごホイップ」にたどり着きました。この時の興奮はなかなかでした。ちなみに、この曲は後にmisosioさんの「お前のスパチャで世界を救え」などの作品にも使われることになるほか、広告動画やYouTuberもよく使う楽曲であるとは当時の私は知りませんでした。

DOVA-SYNDROME/田中芳典さんの「Catharina(カタリナ)/Agnus Dei~Kyrie

この曲は、CHARONさんの「ほろびのゆりかご」という作品をプレイしていて出会った曲です。一日が終わった場面で暗転し、夢の中に入るような感じでこの曲が始まるのですが、合唱経験者の私は即座にこの曲の歌詞が「Agnus Dei. Gloria. Kyrie.」だということに気付きました(ほとんど子音が無いようなコーラスのみなので、そのまま発音してはいないです)。Agnus Dei(アニュス・デイと読みます)というのはラテン語で神の子羊、つまりキリストを指す言葉です(キリスト教徒でもないのに何でこんなこと知っているかというと、合唱の題材として扱われることが多いからです。声楽は教会音楽から発展してきた面が大きいですが、Agnus Deiはまさに教会で歌われるミサの讃歌(平和の讃歌)です。西洋音楽に大きく影響を与えているので合唱経験者はミサ曲について知っている人が多いです)。いきなり神秘的な音色でかつ宗教色が出てきたので、プレイ中の私は「ああ、さっきの選択肢を間違えてこれは主人公が死ぬバッドエンドなんだな」というのを、テキストを送る前に悟りました。
大変印象的だったのでプレイした後、クレジットにDOVA-SYNDROMEの名前があるのを見て「Agnus Dei」で検索すると一発でこの曲が出てきました。ちなみに、Kyrie、Gloriaもそれぞれ日本語では憐れみの讃歌、栄光の讃歌と言われ、ミサ曲を構成する要素です。


さて、このマニアックな記事をここまで読んでくださった方にお勧めの遊びがあります。まずDOVA-SYNDROMEのYouTube公式チャンネルに行って、先月の再生数トップ100などの適当な再生リストをランダム再生します。するとたまに聞き覚えのある曲が流れてくると思いますので、それが一体どのフリーゲームに使われていた曲なのかを当てるという遊びです。YouTubeで上がっているだけあって、フリーゲームよりはYouTuberによる使用例などのほうが多いようで、知っている曲の割合は低かったですが、たまにわかる曲に出会うとテンションが上がります。私の場合、稿屋隆さんの「so sweet」を聞いた瞬間に頭の中がおばけさんの「コメット☆キャンディ」になりました。
ほかの音楽素材配布サイトでもこんな遊びができたらいいんですが、ランダム再生機能があるサイトは全然ないんですよね……。フリーゲームによく使われている印象のあるサイトでこの機能あったらたぶん1日中聴いていられる気がします。


かなり長くなったので今回はこの辺にしておきます。いろいろと語り散らしましたが、まだまだ思い出の曲などあるので、気が向いたら第2弾の記事も書くかもしれません。この記事内で名前を出した作品もそのうち紹介したいですね。

それでは。

こんにちは。今回は、九州壇氏さんの君と再会した日をご紹介します。

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★favo
ジャンル:同窓会でしんみり系ノベルゲーム
プレイ時間:40分
分岐:なし
ツール:NScripter
リリース:2011/12


本作は15年前に卒業した小学校の思い出と同窓会での出来事を描いたノベルゲームです。立ち絵はなく、背景は基本モノクロ写真と大変シンプル。本作の画面を見た方の多くは、地味だなと感じるでしょう。しかしこの作品には、地味だからこその良さが詰まっています。丁寧に、素朴に描かれた主人公のモノローグがすんなりとプレイヤーに受け止められるのは、シナリオだけでない作品全体の雰囲気が落ち着いているからでしょう。


主人公日野村健太は人づきあいが苦手な子供だった。クラスの輪にはなかなかなじめずにいたが、クラス替えで同じクラスになった宮田さんも自分と同じように人づきあいが得意でない雰囲気を感じ取り、うれしくなって彼女とも少しずつ親しくなっていった。しかし小学校を卒業してからは何度か手紙のやり取りをしたものの次第に疎遠になり、今となっては連絡先も分からない。宮田さんに会えるかもしれない同窓会という機会に期待しながらもどこか感傷的になる主人公。このあたりの描写がすごくいいです。本作では星空を見上げるシーンが思い出深く重要な役割を担っていますが、この一人で空を見上げるという行為と過去を振り返ってモノローグを語らせるのって相性がいいですよね。人は考え事をするときに無意識に上を向いてしまうなどとも言いますし、現在の時間と回想シーンの思い出をうまくつなぐ架け橋みたいな感じがします。
また、変に飾られていない分、自分に置き換えて読んだりすることが容易です。最初はぎこちないやり取りだったけど、ちょっとしたきっかけで会話のタネができればどんどん距離が縮んでいったとか、同窓会で出会ったクラスメートが大きく変わっていて、うれしいような切ないような気持ちになるとか、自分のことと思いやすいですよね。別に作品になるようなロマンチックだったりドラマチックな子供時代を送っていなくても、大人ならほとんどの人が同窓会に行った経験はあるはずです。私は大体どんな物語でも主人公になり切って読むタイプなので、本作ではそれがしやすく私の胸の中にスーッと入ってきました。
文章は丁寧というだけでなく、ちょっと気の利いた表現なんかもあって、ゲームというより小説に近い文体かもしれません。「顔を上げると、そこにはオリオン座。昔と少しも変わることのないその姿が、今は憎らしく思えた。」とか、変わってしまった宮田さんとの対比が好きですし、「それはまるで、湖に沈殿していた泥がゆっくりと巻き上げられるような感覚。」なんかも、日野村の受けたショックと暗い気持ちがすごく伝わってくる感じがします。この文はラストシーンにもまた似た表現が出てきて、気付くとにやりとできます。

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さて、本作の魅力は心情描写だけではありません。あまり細かく書くとネタバレになってしまいますが、本作には前半からちょっとした伏線が張られています。その張り方が特殊で面白いんです。普通物語の伏線と言ったら、さりげない記述が実は後から判明する事実によって別の意味を持ってくるとか、そういった形が多いと思うのですが、本作の伏線はさりげないという感じはしません。もちろんあからさまというわけではなく、出てきた当時は別の意味でしっかり必要性のある描写になっており、構造が二重になっているのです。それが明らかになったときは結構びっくりしました。計算されたシナリオ構成だったのだなあと感じました。ただ、井上さんとの会話で真実が明らかになるシーンにはなんというか、やきもきしました。そんなに宮田さんのこと好きだったならもっと早く気づけよ! と。実際には、日野村は全然気付かないで思いにふけっているので、プレイヤーが事実に気付いた後にも主人公がわからないなあと頭をひねっているじれったいような時間が続いてしまっています。
本作にもう一つ注文を付けるとしたらサウンド面でしょう。BGMの選曲は割と私の好みなんですが、音周りの細かい部分に手が届いていない感じがするのです。具体的には、冒頭で本作は音楽ないのかなと思ったくらいのところで曲が突然始まるなど、無音の時間が目立つ感じがします。音楽のあるなしによる対比で印象的なシーンを演出するという作戦はあると思いますが、本作ではあまり力を発揮していない気がします。音楽のあるシーンとないシーンを作るにしても、その境目には多少のフェードを入れるなどすればシーンのぶつ切り感みたいなものは生まれなかったのではないかと思います。また、駅や電車内のシーンなどでは効果音もあるといいかなという気がします。そんなサウンド周りの細かい点が改善されれば、本作はさらに素晴らしい作品になったんじゃないでしょうか。

全体的に暗い雰囲気の漂うシナリオですが、読後感はむしろすっきりして希望を感じられるような作品ですので、ぜひ宮田さんの真実を見届けてください。

それでは。

今回は、ENTRANCE SOFTさんのおみコン!をご紹介します。タイトルで検索すると、お見合い関連のサービスばっかり出てきますが、本作の"おみ”はお見合いではなくてお見舞いの意味ですね。

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★favo
ジャンル:病院コメディ系(?)ノベルゲーム
プレイ時間:3時間半
分岐:なし
ツール:吉里吉里
リリース:2011/9


本作は、簡単に言うと個性的なキャラクターたちの掛け合いが楽しめる長編コメディです。
主人公の宮下圭吾はこれからの高校生活に夢を膨らませる新入生。しかし下校中になぜか気絶してしまった圭吾は"妹のようなもの"の由菜に「変態だから入院させる」というトンデモな理由で強制的に入院させられ、実質監禁状態になってしまいます。そこで毎日診察(?)に来る医師の希沙やお見舞い(?)に来る由菜たちとの嚙み合わないやりとりや、なんとか脱出しようと画策する圭吾の様子を眺めて楽しむ典型的なコメディになっています。

本作でまず特徴的なのは、登場人物たちのキャラの濃さです。やっぱりインパクトがある人物だと、その日常も楽しくなりますね。主人公の圭吾はかわいそうなツッコミ役(この手のシナリオの作品では主人公がツッコミになるのはお約束ですね)。そして変態(と由菜に宣言される)。由菜は圭吾の"妹のようなもの"で、同居もしている。最初は意味が分かりませんでしたが、途中で挿入される回想でその経緯が明らかになります。こういう演出、いいですよね。圭吾を身体的に拘束して入院させることからも分かる通りいわゆるジコチューな性格。メイドの伊織は極度の人見知り。しかし明らかに圭吾へ好意を持っていて、ラブコメ的展開もあります。友人の凛は中二病で不登校。だが成績は良い。学校には行きたがらないが健気なところがあり、圭吾のことは「お兄ちゃん」と慕っている。医師の希沙は自身のことを「天才美人女医」と称する自信満々な人物。その割にティーバッグの使い方を知らないなど、常識に偏りがあるが自信は全く崩れない。
そして先輩にあたる千晶ですが、彼女だけちょっと浮いているというか、周りの濃さに比べてちょっとキャラが薄いかなと感じました。もちろん、漫才が好きで自分でもネタを考えるなど挑戦している(けど下手くそ)など、特徴はあるのですが、中盤まであまり登場しないせいもあってやはり影の薄さは否定できないかなと感じます。その中盤の登場シーンでも若干唐突感があったので、なんとか前半部分でも絡みが欲しかったかなと思います。後半で登場することで物語の重要なカギを握る人物でもあるので、前半に出てこない理由があると言えばあるのですが、圭吾のモノローグで時々思い出すなどがあったら良かったかなとは思います。また、比較的常識人キャラとして圭吾と若干キャラがかぶっているのもその原因でしょうか。圭吾とほかの人物との会話もコントじみたところがあるので、漫才が千晶の特徴づけとして弱いということもあるかもしれませんね。

さて、本作はプロローグ、1~7章、エピローグからなっています。2章までは導入に近いです。3章では凛、4章では伊織にクローズアップして、彼女らとのコントのような会話を楽しみながら、抱えている問題を解決していき距離を縮めていきます。ただ笑えるだけではなく、きちんと彼女らの抱える問題を解決するという目的があって、その過程で彼女らとの距離が縮まっていくというのがとても気持ちよく感じました。1つ1つのエピソードが良くできているんですよね。一応ネタバレにならないようにぼかしますが、特に凛がただ中二病な妄想に浸っているだけでなく、しっかりと圭吾との関係を築いているんだなと感じさせるエピソードが好きです。

omikon2

人物へのクローズアップが続いたので、5章もそうかなと思っていたら、5章以降は思いもよらなかった展開を見せます。ずっと圭吾が準備していた脱出作戦が成功するのです。ここから一転、物語はシリアスな展開を迎えます。由菜による監禁の真意、圭吾の過去などが次々と明らかになっていきます。この、笑える展開でキャラクターへの理解を深めてからのシリアス転換は私の大好物ではあるのですが、本作ではこの転換がいささか突然すぎるように思えました。前半部分で伏線を張っておくなりしたらまた印象は違ったでしょうか。シリアスな展開でありながら、会話は今まで通りのコント風だったり、由菜のわがまま全開なのも違和感の原因かもしれません。コメディの雰囲気なら多少無茶な展開でも気にせずに笑えるし、現実にこんなことはできないだろうなどと考えたりはしないのですが、やはりシリアスな話になるとそこは大切ですからね。ご都合主義だなあと一歩引いた感想が出てきてしまいました。具体的には7章で由菜がわがままを通したところが感動的に演出されるのは、ちょっと違うんじゃないかと感じました。単純に清二がとばっちりを食らっただけでかわいそうというのもありますね。

それでもコメディとして見たら十分面白いし、意外性があるという点では効果を上げているように思います。先述しましたが、圭吾とほかの人物との会話が本当に漫才やコントのように勢いがあり、ギャグも高密度で織り込まれていて、会話を眺めているだけでたくさん笑えるんですよ。アニメネタが多いので、よくアニメを見る方ならより楽しめるんじゃないでしょうか(私はアニメには明るくないので、私が気付いていないネタもあるかもしれません)。あとは、この各シーンで笑えるだけでなく、シリアスな展開まで含めて物語のつながりが良くできていれば完璧だったように思います。

細かいですがあと一つ気になったのは、立ち絵の統一感がないことです。担当された方が違ったのでしょうか。
エンドロールは大変珍しい形式で、印象に残りました。面白い試みで、とてもいいと思います。


いろいろと偉そうなことも書いてしまいましたが、favoの印をつけた通り私としてはとても楽しめた作品でした。わりと高頻度で出てくる変態ネタを楽しめる方なら、プレイして損をしない作品だと思います(とはいっても、全年齢対象だしガチの下ネタはないですよ!)。まずは作者さんサイトの作品紹介ページにあるQ&Aを読んでみてください。各キャラクターの紹介を兼ねながら小ネタもぶち込んでくる秀逸な内容だと思います。本編も大体このノリなので、ここで笑えた方なら本作にはドハマりするでしょう。

それでは。

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