今回はHappy Bad Endさんの「私の名前を呼びなさい!」のご紹介となります。

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★favo
ジャンル:脱出アドベンチャー
プレイ時間:1時間~1時間半程度
分岐:5つ
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2021/8
備考:15推、残虐な描写あり


さて、「そしてパンになる」(R18版)以来となる年齢制限ありの作品のご紹介です。とはいっても本作において制限がある理由はエロ方面ではないです。主人公のシエラちゃんがとにかく酷い目に遭わされる。つまり暴力や残虐描写が制限の主因です。殴打や流血なんて甘い甘い。そんな感じなので、タイトルとスクリーンショットから、「俺様系彼氏とのラブコメっぽい話かな?」みたいなテンションで話を進めると痛い目に遭います。これはガチの警告なので、プレイされる方は十分な覚悟をもってStartボタンを押していただくようお願いします。
ReadMeでは15歳以上推奨となっていますが、正直15禁の「まい、ルーム」よりもずっとキツいと感じます。プレイして最初の感想が、「ノベコレってこれ掲載できるんだ…」となる程度には人を選ぶ作品です。


と、十分警告したので作品の中身のお話に移りましょう。
本作の目的は「ヤンデレマッドサイエンティストのリエルに監禁された主人公のシエラが、何とか隙をついて脱走する」と一文で説明できます。毎日12時から17時までの間が探索可能な時間です。その間に何とか必要な情報と玄関の鍵を手に入れ、脱出しなくてはなりません。この探索の緊張感を高めているのは、(入っちゃダメと言われた場所で)リエルに見つかると"お仕置き"されることでしょう。"様子を窺う"でうまくリエルとの距離を探りながら、時にはセーブ&ロードを駆使して監視の目をかいくぐらなくてはなりません。
逆に言うと、アイテム探しや謎解き自体は難しくありません。クリックポイント探しなどはないですし、マップ移動も選択肢でできます。暗証番号入力なんかがちょっとあるくらい。その分、よりリエルとのエンカウントが怖いんです。実際に誰か知らない人に監禁されたとして、出口を見つけるよりは犯人の監視をかわす方がずっと大変でしょうからね、ホラーっぽさの感じられる部分でした。

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このシステムの面を見ても、よく作りこまれているなと感じました。作者さんの公開作を見るとふりーむにもノベコレにも本作を含めて2作だけ。2作目にしてこの快適なユーザビリティーを実現したのなら、ゲーム制作においてセンスのある作者さんなのでしょう。
探索時、常時現在地が表示され、"見つかってはいけない"エリアなのかがすぐにわかるよう色分けされている、"状態"をクリックすることで現在のシエラの状態と特殊効果を確かめることができる、"考える"機能(実質ヒント機能)が利用可能で分かりやすい位置にあるなど、相当親切なつくりになっています。要望があるとしたら、マップ上ですでに入ったことのある部屋には名前がついてほしい、ということくらいでしょうか。


さて、システムを説明したところでシナリオの話に移ろうと思うのですが、今回は私の初見プレイ時に脱出成功するまでの心境を中継する形式で書きますね。重要なネタバレがある部分は文字色を透明にしていますので、読むときは反転してください。

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チュートリアル完了

(なるほど、相手はヤンデレストーカーが悪化して似た他人を誘拐監禁するに至ったのか。何としても脱出させてあげなくては)

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1日目探索中

(これやたら緊張感あるな…入っちゃいけない部屋で鉢合わせするのがすごく怖い。"周囲を窺う"で時間経過しないのありがたいな)

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2日目探索中

(よし、棚のねじ外しに成功。次は暗証番号か…まだ東の方に入ってない部屋あるし明日はそこ探索かな)

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3日目資料室探索中

(あ、この感じ、多分調査強行したらなんか物音立てちゃってバレるやつだ! どうしよう。まあでも説明見る感じやらかしても1発アウトにはならなそうだしセーブ分けたしやっちゃうか!)

バレる。お仕置き部屋へ連れていかれる

(えっっボイスあるの? パートボイスってやつかあ。 お仕置きはう~ん、首輪はめられた…。まあでもこれくらいなら耐えてくれシエラちゃん! 気丈な感じの声だし頑張れ。探索が強制的に終了になっちゃうの痛いな)

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4日目資料室探索中

(昨日ノートは手に入れといたから今日は音を出さずに調べられるな…なるほどもう少し資料が必要なのね)

物置探索中

(あ、2日目くらいに調べようとしたら後回しにしよって言われたのお仕置き部屋の入口だったのね…それはそれとしてこれで暗証番号分かったぞ!)

鍵を手に入れ玄関へ…リエルに捕まる。お仕置き2回目
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(割と早めに脱出の方法が分かった気がするが、隠れながら玄関に行くの難しいな…もしかしたら鍵入手後にまた何らかのイベントを起こさない限り玄関で鉢合わせしちゃうようになってるのか?)
(ああ、お仕置き2回目痛そう…これは…)

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5日目再度鍵を手に入れ玄関へ…捕まる

(あ、これやっぱり鍵をとって玄関直行しちゃいけないパターンかな?)
(今回のお仕置きは…跡は残らなそうだし前回よりマシ、なのか? もうここまで来たらいっそ先にバッドエンド回収しようか。お仕置きは何回目まであるんだろう)

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6日目、先にバッドエンドを見ることに。お仕置き4回目。
シエラの左腕を切断する旨を伝えられる

(ええええっ!!! 酷い!! なんで! シエラちゃん謝って!
そう、気弱になるのは分かる。もう変なことしないってア"ア"ア"ア"
まじかまじかえ~!! ちょっと待ってまじかこれ辛い うっわ
うそでしょこの展開はR18でしか見たことない…
声優さんの演技凄すぎる。なんでこんなシーンの台詞がこんなにも真に迫ってるんだ!)

(このシチュエーションは、フェチとしては私にはあまりにレベルが高すぎる…)

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7日目、【左腕の無い】立ち絵を見る

(つらい…しかも探索めちゃくちゃ不利な条件になってるし…。でもここまで来たらバッドエンドを避けるわけにはいかない。ごめんねシエラちゃん…許せ…)

お仕置き5回目

(やっぱりそうなるか……。私だったら発狂間違いなしだな…。)

ここで選択肢

(ここで分岐するのは明らかだなあ。まずはとことんバッドエンドな方を見てみるか。…………
時間を巻き戻して脱出させてあげるぜ。絶対に。)

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4日目のデータをロード。再度脱出を試みる

(よし、鍵の回収に成功。あとは廊下を通って玄関に向かうだけ)

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玄関前で待ち伏せされる。再度お仕置き2回目

(何回かタイミング測ったけど捕まるなあ。今回はまだ日数に余裕があるけどどうすれば逃げられるんだろう。あ、北側の部屋に鍵かかってて入れなかったところあったなあ。今鍵束持ってるわけだしそこで何かしらのイベントを起こせば脱出できるのかな)

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5日目、リエルの日記を読む。脱出成功

(ようやく脱出できた! 素敵な笑顔ありがとうシエラちゃん! しかし鍵を持って移動するとき見つからないか緊張したなあ。さて、エンディング回収しますか)

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はい、というわけで探索中にはホラーゲーム並みの緊張感、お仕置き中にはグロ展開への恐怖感とシエラへの憐憫を味わうことができる内容になっております。

しかしここまでの内容のみでは終わらないのが本作。エンディングのコンプリートを目指します。
上のプレイ内容で回収できたエンドは1と5の2つ。お仕置き5回目の時の選択肢でもう一つ、時間切れでもう一つ見られるだろうことは容易に推測できたのでエンド2,4に関しても難なく回収できました。

さて問題はエンド3です。いろいろ思いつくことを試してみてもなかなかたどり着けません。その過程でエンド1や2のスチルにはお仕置きの回数による差分が存在していることに気付くなど、細かい部分の整合性まで感じ取ることができました。

30分くらいは試行錯誤してもダメだったので、同梱の攻略情報を見ることに。
ああ~なるほど。その発想は一応あったけど、先に自分の部屋で調べてないとダメなのね! では回収に行きますか!

そしてエンド3を見た私はこの作品の魔力に取り付かれてしまいました。
ダントツでこのエンディングが好きですね。あの強気で希望を持っていたシエラの姿は遠い過去のものに。このダークさが私のツボにはまったようです。物理的には可哀そうなことになってないしね!

それにしても本作の声優さんがすごすぎてびっくりしました。特にエンド3とお仕置き4の演技が本当に迫力と説得力を持って本作の物語の悲惨さを伝えてきます。冒頭では気丈な態度を見せていたシエラが見る影もなくなるくらいのボイス、それと対照的に作中通してずっと気だるそうな喋りを続けるリエル。気になったのでクレジットにある声優さんの名前を検索してみると、シエラのCV担当の方は完全にエロ方面で活躍している方のようで、なんだか納得。リエル担当の方もフリーのナレーター業の方ということで、上手いのも頷けます。
(念のため繰り返しますが、本作には性交シーンなどはありませんし、それを連想させる要素もありません)

ちなみに同梱の攻略情報はめちゃくちゃ親切、逆に言えば完全に答えが載っているので、自力で頑張りたいという方は見ない方がいいかもしれません。
これによると私が1周目に脱出できなかったのは単に運が悪かっただけで、日記を読むのは脱出に無関係だった模様


とても万人に薦めるわけにはいかない本作ですが、可哀そうな目に遭う女の子にグッとくるという方にとってはドはまりするでしょう。逆にそういう状況は悲しくなっちゃうという方は大やけどする前に退散してください。


それでは。