こんにちは。
前回の「クリーチャーと恋しよっ!」シリーズのレビューで登場した人物名を覚えているでしょうか。
九重こころ、一之瀬一太郎、七月奈々美に二階堂界斗、十文字淳也などなど、全員苗字と名前に同じ文字の繰り返しが入っているのが特徴的ですね。こうした登場人物のネーミングは作者さんのセンスが出るところの1つだと思います。多くの作品では実際にもある普通の名前ですが、たまに名前だけで笑ってしまうようなネタ系のネーミングだったり、作品の世界観を表現していたりといったものもあり、印象に残るポイントの一つです。
という訳で今回は、私の印象に残っているネタ系の人物名をご紹介しましょう。作品名と作者/サークル名(敬称略)でご紹介します。

特定のテーマに沿った名前を集めたもの

勇者と普通の黒板(Dominion's Rest)

Flashゲームのしりとりクエストシリーズの外伝の1つです。Flashゆえに現在ではプレイ不能なのですが、このキャラクターの名前にネタが含まれているのに気づいたのがうれしかったのでよく覚えています。
本作は論理パズルとなっており、与えられたヒントからラジオのゲストになっている5人の職業と収録曜日、年齢を当てるという内容です。5人はアイドル歌手、本格派歌手、アイドル俳優、本格派俳優、お笑い芸人なのですが、名前が「井川さくら」「ZEZE」「近江舞子」「くっちゃん」「ハッサム」なのです。初見の時は全然気づかなかったのですが、数年後にたまたま"人名みたいな駅名"の記事を見たときに「井川さくら」「近江舞子」が載っていたのです。どこかで見たことある気がするなあ~と考え、本作のことを思い出しました。するとくっちゃん(倶知安)は北海道の地名であることに気付き、ZEZE(膳所)は滋賀県の地名であることも気付きました。ハッサム(発寒)は知らなかったのですが、調べてみるとこちらも北海道の地名ということで、気付けて気持ち良かったです。

女子トイレの殺人(劇団kolme)

以前レビューで紹介した作品ですね。レビュー内でも触れましたが、主人公の名前は助士怜人(女子トイレのアナグラム)、その他の容疑者の名前は奥竹葵(ブルーレット置くだけ?)、梨木かおる(消臭力?)、流川乙姫(水音を出すやつ?)というネーミングの徹底さは、彼らのキャラクターの濃さとぴったり結びついて強烈に印象に残っています。やっぱり笑える作品は好きです。

めるてぃんぐ♥あいすくりぃむ(Shadow's Silhouette)

こちらは主人公の大福雪美(おおふく・ゆきみ、デフォルト名。名前変更可)が先輩の六手爽(ろくて・さわ)に告白されて困惑しているところに、さらに爽のライバルの三十壱(みとお・いち)が現れて邪魔しにかかるという、"攻略され系"百合ノベルです。タイトルもあるので主人公が雪見だいふくなのは分かりやすい。六手爽は雪見だいふくと同じくロッテのアイス、爽ですね。これらの市販のアイスたちが仲良くしようとしているところにサーティーワンが登場していろいろ言ってくるのですから、なかなかネタ度が高いです。 現在は公開していないのが残念。

泡沫の花が散る(ベルカゲ)

こちらも以前レビューで取り上げました。別荘の立派な温室の花園で起きる事件の真相を暴くミステリーです。本作では登場人物の名前は花の名前がモチーフになっています。花蓮、向日葵、あやめなど一般的に人名としても見慣れたものから、朝顔、竜胆などの変わった名前まで登場しますが、各キャラクターの髪の色が名前の花の色と対応するキャラクターデザインとなっているのが気持ちよかった作品です。

その他、単純に変な名前/言葉遊びなど

風雲相討学園フラット(相討ちネガティブギャング)

古い有名作ですね。主人公の名前は境不可止(さかい・ふかし)。これだけだとちょっと変わった名前だなというくらいですが、ヒロインたちの名前が個性的過ぎる。多いので全員はあげませんが、辻斬とす(つじぎり)、犬飼よしこまちこなどなど。本作はかなりぶっ飛んだシナリオになっていて良く分からないまま本編が終わってしまったのですが、ヒロイン攻略後に読める"番長シナリオ"はなかなか良かった。周りが美少女ばかりというギャルゲーあるあるの設定に理由付けを与えた作品は本作以外に知りません。そうそう、番長シナリオで重要人物となる"番長"嘉村獲狩手(かむら・えかりて)や背久原(せくはら)学園長もすごい名前ですね。
本作の中で唯一普通の名前なのは黒岩葵でしょう。ちなみに私は彼女のルートが一番好きです。現実にあんな極端なツンデレがいたら関わり合いになりたくないですが。

ヒ常識ムラ(タクティカルシンパシー)

本作の主人公は、何に関しても無気力でその日暮らしを続けている若者、その名も翌無新斗(あすなし・にいと)。この名前はひどい……。山で木の実やきのこなどの採集をして食料を得る生活をしていた彼は、ある日下山時に道に迷ってものすごく非常識な村にたどり着いてしまいます。選択肢を間違えるとその日のうちにバッドエンド行きのため、どんな"非常識"がその村の常識なのかを探りながら進むノベルゲーム版死に覚えゲーと言えるでしょう。ちなみに村長の名前もソン・チョーというだいぶふざけた名前でした。

ハイニョー!!(ミッドナイト★ONIGIRI)

すみません、下ネタです。本作の主人公の名前は棒紅炎(ぼう・こうえん)。排尿するたびに記憶を失うというとんでもない呪いにかかっています。いや、この名前は…。ちなみにヒロインの名前は雪隠鎮子(ゆきがくれ・しずこ)。雪隠って、読み方変えてるけどせっちん、結局トイレのことじゃねえか! なお、親友ポジションの男性の名前は、小野下子(おのの・しもこ)。そういえば飛鳥時代の小野妹子って名前の字面に反して男だ、という話があったなあ。中学生以来くらいに思い出しました。

魔王は村人に恋してる!(とまと)

タイトルの村人はモブと読みます。ストーリーの導入もほぼタイトルの通り。魔王である主人公の悪野まおこは意を決して憧れの先輩である村人栄(むらびと・えい)に告白するも「悪野さんと自分では 立場が違う」と断られてしまいます。この2人の名前が魔王とモブを体現していて面白いですね。 不貞腐れてSNSを眺めていたまおこの目に留まったのは、「モテすぎて体が足りないwwww 分身したいwwww」という勇者のモテアピールツイート。イラついたまおこが勇者を倒しに行くというゆるふわコメディ系のRPGとなっています。

四宮怪異譚(Wheat)

名前にネタが仕込みやすいのは主にファーストネームの方かと思いますが、本作では登場人物4人には苗字の方で仕掛けが入っています。大学の民俗学のレポートを書くためにフィールドワークをしている彼らの苗字は一宮、奥宮、里宮、初宮。つまり4つの宮がそろって四宮と呼ばれているという訳です。 単純にそれだけならふ~んそういう設定ねと思うところでしたが、本作では終盤にこの設定の意味が明らかとなりなるほどと思わされました。

TRUE REMEMBRANCE-remake-(里見 しば)

最後に超有名作を持ってきました。精神疾患"セツナ病"の治療のために、患者に原因となる"錆色の記憶"を忘れさせる"記憶封士"という仕事をしている主人公、黒目。物語冒頭で彼が出会う重症の少女の名前は"ラ"。日本語の名前ではないとはいえ、あまりにも短くて不自然ではないかという直感は働きます。この謎が、彼女の抱えてきた忘れ去ることのできない真実の記憶、そして黒目自身の過去と結びついて解消されていく様は圧巻です。さすが、これだけ有名になり商業化もされた作品という内容になっています。




というわけで、一気にざーっと10作も紹介してしまいました。
単純に名前が変わっているというだけでなく、シナリオや作品のテーマとの関連性があって印象深いものを中心に選んでいるので、気になったらぜひプレイしてみてください。