こんにちは。今回はTetraScopeさんの「私のリアルは充実しすぎている」です。

オススメ!
ジャンル:学園もの乙女ゲーム
プレイ時間:フルコンプまで6時間程度
分岐:攻略対象3人、それぞれ若干の分岐あり
ツール:NScripter
リリース:2014/1
備考:スマートフォンアプリ版あり。今回はPC版でプレイ
2か月ほど前にフルボイスでスマホアプリ化したのが記憶に新しい作品ですね。以前から存在は知っていたのですがプレイする機会がなく、アプリ化のニュースを見て思い出したのでプレイしてみることにしました。
話題になるだけのことはある力作で、こんなの見せられたらオススメしておく以外ないだろうという内容でした。シナリオにしてもイラストにしても音楽にしてもシステム周りにしても、どこをとってもレベルが高いです。しかし本作、私が読み始めてから読み終わるまで、ものすごく時間がかかったんですよね。その理由とかに触れながらレビューに入りたいと思います。
主人公は才色兼備な高校2年生の姉崎希美(下の名前のみ変更可)。生徒会の副会長として活躍するほか、クラスでも中心人物。まさに"リアルが充実しすぎている"状態。しかしそんな彼女には、弟の隼しか知らない秘密がありました。それは、重度のオタクだということ。中学時代はラノベを読み漁り、最近は乙女ゲームにはまっています。”わたしのプリンスさまっ☆”という作品の"ヴァルト様"に熱を上げており、お気に入りのシーンは何度も読み返しては興奮のあまり床をゴロゴロと転がる毎日。

ところでこの”床ローリング”、オタクによくあるやつなんですかね? 私は机をたたいたりはしちゃうことがありますが、さすがに床で転がったことはないです…。むきりょくかん。の吉村さんがよく”みのりんごろごろ”してたのを思い浮かべます。
(と、ここまで書いてから、私がゲームやってるのは椅子に座ってPCに向かってるときなので物理的に床ローリングへ移行しづらいなと気付きました。希美みたいにベッドに寝ころびながら携帯ゲーム機でプレイしてたら私もやってたかも)
高校生にして乙女ゲーム200本読破とは、私の数倍のペースです。しかもこれ多分全部商業ものなんですよね…学年トップクラスの成績を維持しながら副会長として生徒会の仕事もこなし、いったいどうやってそのお金とプレイ時間を捻出してるんでしょうか…?
と、重度なオタクの希美ですが、学校ではその趣味は完全に封印しています。才色兼備でリア充な姉崎希美を演じているのです。この点がどのルートにおいても非常に重要な役割を果たします。この設定を自然にシナリオに取り込んで深掘りするのが上手かったですね。
では攻略対象の紹介へとまいりましょう。
最初に希美の一つ下の弟、隼(しゅん)です。

弟と言っても血のつながりはなく、中学生の時の親同士の再婚によってできた義理の弟です。ゲーム開始時点でこそ良好な関係を築けている二人ですが、兄弟となった当初は折り合いがつかずお互いに相当な不満をため込んでいたよう。それがどうやってお互いを受け入れ、そして好きになっていったのか。現在の出来事とそれに合わせて回想される中学生時代の記憶。この描き方が気持ちよく、私は本作ではこのルートが一番好きだと思います。
ただ、あの中学生の時の出来事を見ると、ただの不仲というよりはもはや険悪ともいえる関係であったことは確か。そこからあのきっかけ一つでこんなに仲良くなってお互いのことを理解していけるのか、という部分が若干疑問ですが、関係改善の兆しが見えてからはもう完璧です。オタクは時間の経過演出に弱いのです(私だけか?)。あの時のこの出来事が現在の心境にこんな影響を及ぼして恋仲になっているんだ! というのが好きな人はこのルートをお勧めしておきます。
あとは、毎日学校に行く前に繰り返される、「私可愛い?」「はいはい、可愛い可愛い」のやり取り。隼の抱えていた単に”鬱陶しい”だけではない感情とは? ここも理由付けがしっかりしていて納得できるポイントでした。
そうそう、このルートでは隼の中学からの友人の押井有も大きな役割を果たします。彼の抱える悩みと秘密は重すぎて若干物語の本筋から逸れてないかとも感じましたが、特に隼にとってなくてはならない存在なのは確かです。

続いて中学時代のオタク友達、歩です。希美が通う笹寺院高校へは転校という形で入ってきます。
希美は中学校まではオタクであることを周囲に隠しもせず、見た目も気にせず、そして学校にはなじめずにいました。その中で唯一歩とだけはラノベの話で盛り上がることができた、大切な友人でした。彼は高校生になっても中学の時と変わらない様子ですが、希美は違いました。”リア充”になるために美容とファッションを研究し、先生やクラスメイトのご機嫌を伺い、自らのオタク趣味は隠しているのでした。そんな彼女が歩と同じクラスになったらどうなるのか……。
このルートはねえ、本当に読むのがしんどかったです。クラスメイトの反応が冷たすぎるのは置いておくとして、希美の反応も大概ひどい。明らかにバレてるのに別人ということにするなど、今の立場を大切にするにしてもそれはないんじゃないのという行動が続きます。まあ私も高校の時はどっちかというと優等生キャラでやってきたので気持ちが分からなくはないですが、あそこまで直接的に人を傷つける言動は私には取れないですね…。
しかし希美も人を傷つけて平気というわけではありません。歩に対して酷い言動をとったことを家で毎日後悔しています。ヤンデレものでもない乙女ゲームでこんなに暗いことある?ってくらい。1シーン読むごとに休憩しないと辛くて進めませんでした。ところで家に帰ってからの隼の頼りがいが素晴らしい。この状況で学校生活が破綻しなかったのは隼のおかげなのでは?
という感じのルートになっていますが、現実にありえそうと感じられるルートでもあるんですよね。流石にここまで露骨にオタク趣味が軽蔑される学校というのは現在では珍しいと思いますが、広い意味で希美のように、ある程度本来の自分を偽って社会生活を送っていて息苦しさを感じるという人ならばかなり多くいるでしょう。ハッピーエンドにたどり着けて本当に良かった。…しかし私はノーマルエンドの歩君の方がカッコよくない?と思ったりも。

そして残るは穂積ルートなのですが、これはなかなか特殊なルートでしたね。まずルートに入ってからもしばらくは正体が明らかになりません。正体がはっきりした後も、関係は良好とは言い難いし希美は完全に他の人に恋しています。しかしその分、お互いのことを好きになる過程が一番描かれているのもこのルートだと感じました。当初はお互いのことを嫌ってさえいた2人がどうやって惹かれ合うのかに注目です。希美が学校でリア充を”演じている”のと同様に、穂積についてもあのキャラクターを演じているんですよね。この辺の事情は最終盤で明らかになります。このルート関してはあまり事前情報なしでプレイした方が良い気がしますので、この辺にしておきます。
ちなみにこのルートでは隼はほぼギャグ要員になっています。なんでお前がヴァルト様のプロフィールを詠唱できるようになってるんだよ(笑)

と、このように方向性の違う3人のルートに分かれ、さらにそれぞれにクリア後おまけストーリーあり。スチル/立ち絵閲覧モードやBGM鑑賞モードも付属。音楽に関してもすべて自作のようで、その力の入れように脱帽です。私が好きな曲は「Hurry up!」と、穂積のテーマの別アレンジです。
シーン回想用のツリーもあり、おまけの内容も充実しておりいうことがありません。しいて言うならフルコンプ後の反省会へ行くアイコンはもっと主張しても良かったかも。しばらく見逃してました。
文章表示速度やスキップ設定なども可能でシステム面も十分。前/次の選択肢へ進むなどの便利機能も搭載。もはやフリーゲームらしからぬ仕上がりと言っていいでしょう。幅広い層に薦められる作品です。
それでは。

オススメ!
ジャンル:学園もの乙女ゲーム
プレイ時間:フルコンプまで6時間程度
分岐:攻略対象3人、それぞれ若干の分岐あり
ツール:NScripter
リリース:2014/1
備考:スマートフォンアプリ版あり。今回はPC版でプレイ
2か月ほど前にフルボイスでスマホアプリ化したのが記憶に新しい作品ですね。以前から存在は知っていたのですがプレイする機会がなく、アプリ化のニュースを見て思い出したのでプレイしてみることにしました。
話題になるだけのことはある力作で、こんなの見せられたらオススメしておく以外ないだろうという内容でした。シナリオにしてもイラストにしても音楽にしてもシステム周りにしても、どこをとってもレベルが高いです。しかし本作、私が読み始めてから読み終わるまで、ものすごく時間がかかったんですよね。その理由とかに触れながらレビューに入りたいと思います。
主人公は才色兼備な高校2年生の姉崎希美(下の名前のみ変更可)。生徒会の副会長として活躍するほか、クラスでも中心人物。まさに"リアルが充実しすぎている"状態。しかしそんな彼女には、弟の隼しか知らない秘密がありました。それは、重度のオタクだということ。中学時代はラノベを読み漁り、最近は乙女ゲームにはまっています。”わたしのプリンスさまっ☆”という作品の"ヴァルト様"に熱を上げており、お気に入りのシーンは何度も読み返しては興奮のあまり床をゴロゴロと転がる毎日。

ところでこの”床ローリング”、オタクによくあるやつなんですかね? 私は机をたたいたりはしちゃうことがありますが、さすがに床で転がったことはないです…。むきりょくかん。の吉村さんがよく”みのりんごろごろ”してたのを思い浮かべます。
(と、ここまで書いてから、私がゲームやってるのは椅子に座ってPCに向かってるときなので物理的に床ローリングへ移行しづらいなと気付きました。希美みたいにベッドに寝ころびながら携帯ゲーム機でプレイしてたら私もやってたかも)
高校生にして乙女ゲーム200本読破とは、私の数倍のペースです。しかもこれ多分全部商業ものなんですよね…学年トップクラスの成績を維持しながら副会長として生徒会の仕事もこなし、いったいどうやってそのお金とプレイ時間を捻出してるんでしょうか…?
と、重度なオタクの希美ですが、学校ではその趣味は完全に封印しています。才色兼備でリア充な姉崎希美を演じているのです。この点がどのルートにおいても非常に重要な役割を果たします。この設定を自然にシナリオに取り込んで深掘りするのが上手かったですね。
では攻略対象の紹介へとまいりましょう。
最初に希美の一つ下の弟、隼(しゅん)です。

弟と言っても血のつながりはなく、中学生の時の親同士の再婚によってできた義理の弟です。ゲーム開始時点でこそ良好な関係を築けている二人ですが、兄弟となった当初は折り合いがつかずお互いに相当な不満をため込んでいたよう。それがどうやってお互いを受け入れ、そして好きになっていったのか。現在の出来事とそれに合わせて回想される中学生時代の記憶。この描き方が気持ちよく、私は本作ではこのルートが一番好きだと思います。
ただ、あの中学生の時の出来事を見ると、ただの不仲というよりはもはや険悪ともいえる関係であったことは確か。そこからあのきっかけ一つでこんなに仲良くなってお互いのことを理解していけるのか、という部分が若干疑問ですが、関係改善の兆しが見えてからはもう完璧です。オタクは時間の経過演出に弱いのです(私だけか?)。あの時のこの出来事が現在の心境にこんな影響を及ぼして恋仲になっているんだ! というのが好きな人はこのルートをお勧めしておきます。
あとは、毎日学校に行く前に繰り返される、「私可愛い?」「はいはい、可愛い可愛い」のやり取り。隼の抱えていた単に”鬱陶しい”だけではない感情とは? ここも理由付けがしっかりしていて納得できるポイントでした。
そうそう、このルートでは隼の中学からの友人の押井有も大きな役割を果たします。彼の抱える悩みと秘密は重すぎて若干物語の本筋から逸れてないかとも感じましたが、特に隼にとってなくてはならない存在なのは確かです。

続いて中学時代のオタク友達、歩です。希美が通う笹寺院高校へは転校という形で入ってきます。
希美は中学校まではオタクであることを周囲に隠しもせず、見た目も気にせず、そして学校にはなじめずにいました。その中で唯一歩とだけはラノベの話で盛り上がることができた、大切な友人でした。彼は高校生になっても中学の時と変わらない様子ですが、希美は違いました。”リア充”になるために美容とファッションを研究し、先生やクラスメイトのご機嫌を伺い、自らのオタク趣味は隠しているのでした。そんな彼女が歩と同じクラスになったらどうなるのか……。
このルートはねえ、本当に読むのがしんどかったです。クラスメイトの反応が冷たすぎるのは置いておくとして、希美の反応も大概ひどい。明らかにバレてるのに別人ということにするなど、今の立場を大切にするにしてもそれはないんじゃないのという行動が続きます。まあ私も高校の時はどっちかというと優等生キャラでやってきたので気持ちが分からなくはないですが、あそこまで直接的に人を傷つける言動は私には取れないですね…。
しかし希美も人を傷つけて平気というわけではありません。歩に対して酷い言動をとったことを家で毎日後悔しています。ヤンデレものでもない乙女ゲームでこんなに暗いことある?ってくらい。1シーン読むごとに休憩しないと辛くて進めませんでした。ところで家に帰ってからの隼の頼りがいが素晴らしい。この状況で学校生活が破綻しなかったのは隼のおかげなのでは?
という感じのルートになっていますが、現実にありえそうと感じられるルートでもあるんですよね。流石にここまで露骨にオタク趣味が軽蔑される学校というのは現在では珍しいと思いますが、広い意味で希美のように、ある程度本来の自分を偽って社会生活を送っていて息苦しさを感じるという人ならばかなり多くいるでしょう。ハッピーエンドにたどり着けて本当に良かった。…しかし私はノーマルエンドの歩君の方がカッコよくない?と思ったりも。

そして残るは穂積ルートなのですが、これはなかなか特殊なルートでしたね。まずルートに入ってからもしばらくは正体が明らかになりません。正体がはっきりした後も、関係は良好とは言い難いし希美は完全に他の人に恋しています。しかしその分、お互いのことを好きになる過程が一番描かれているのもこのルートだと感じました。当初はお互いのことを嫌ってさえいた2人がどうやって惹かれ合うのかに注目です。希美が学校でリア充を”演じている”のと同様に、穂積についてもあのキャラクターを演じているんですよね。この辺の事情は最終盤で明らかになります。このルート関してはあまり事前情報なしでプレイした方が良い気がしますので、この辺にしておきます。
ちなみにこのルートでは隼はほぼギャグ要員になっています。なんでお前がヴァルト様のプロフィールを詠唱できるようになってるんだよ(笑)

と、このように方向性の違う3人のルートに分かれ、さらにそれぞれにクリア後おまけストーリーあり。スチル/立ち絵閲覧モードやBGM鑑賞モードも付属。音楽に関してもすべて自作のようで、その力の入れように脱帽です。私が好きな曲は「Hurry up!」と、穂積のテーマの別アレンジです。
シーン回想用のツリーもあり、おまけの内容も充実しておりいうことがありません。しいて言うならフルコンプ後の反省会へ行くアイコンはもっと主張しても良かったかも。しばらく見逃してました。
文章表示速度やスキップ設定なども可能でシステム面も十分。前/次の選択肢へ進むなどの便利機能も搭載。もはやフリーゲームらしからぬ仕上がりと言っていいでしょう。幅広い層に薦められる作品です。
それでは。
コメント