フリーゲームの森

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2021年10月

こんにちは。最近コロナがちょっと収まってきて、遠出の予定ができるなどして更新がしばらく空いてしまいました。そんな感じで久々となりましたが今回のレビュー記事は4th clusterさんの「Campus Notes vol.2」です。今回の記事は長めになっています。


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ジャンル:大学生のSF青春恋愛ノベルゲーム
プレイ時間:10時間
分岐:3ルート(後述)
ツール:吉里吉里
リリース:2015/4


本ブログでこれまで取り上げた中では最長のプレイ時間となる長編ノベルゲームですね。あらすじを簡単に紹介しましょう。

主人公桐葉悠太は高専を卒業し筑波大に3年次編入した新入生。入学式で同じ経歴の風馬と友人になり、何かしらの打ち込めるサークルに入ろうとポスターを見ていると、成り行きで個性的な軽音サークルに入ることに。そこで出会った3人の女の子と次第に仲を深めていく悠太。しかし彼女らはそれぞれなかなかの秘密を抱えているようだった……。


プレイする前から分かる本作の特徴として、具体的な舞台が明言されているというのがあります。ズバリ茨城県の筑波大学です。モデルになった学校などがあるんだろうなと感じられる作品は他にもありますが、本作ではがっつり大学の名前が出るし、周辺の地名などもいろいろ出てきます。そして本作を作った4th clusterさんは筑波大の卒業生によって構成されたサークルのようです。背景写真などもおそらく作者さん自身で撮影したキャンパスの写真なのでしょう。その分登場人物たちにもリアルさを感じさせる生き生きとした描写が多く、いい青春だなあと感じさせてくれます。

そして実際にプレイしようとexeファイルを起動すると、いきなり豪華なPVが始まって驚かされます。もうこの時点で本作のクオリティーがとても高いことを感じられました。音楽も自身で作成しているようですし、UIの作りこみもあって大変プレイしやすくなっており、かなり長いシナリオなのですがその長さを感じさせないような気持ちよさがあります。


話の中身に移りましょう。悠太たちが入ることになった軽音サークルでは5人のメンバーでバンドを組むことになりました。ギターのうまい先輩のアイカさんが中心となりますが、他のメンバーは悠太含め楽器経験すらなかったりなんとカラオケで歌ったこともなかったりとそう簡単にはいきません。読み始めた序盤のうちは、どうやってここから音楽を作り上げていくのかなあと思っていましたが、本作の中心はバンド活動ではありませんでした。

上の書き方ではなんかネガティブに感じるかもしれませんが、バンド活動は本作の幹の部分という感じがしたんです。しっかりとそこに話の軸や土台があって、そこから各攻略対象の3人のルートにあたる枝が元気に伸びて葉を茂らせているイメージです。スタート地点はバンド活動であっても、ルートに入ると悠太と女の子の問題とか秘密みたいなところに焦点が行くんですね。なのでプレイ前に思っていたよりは本作はギャルゲー要素が濃いなあと感じました。もちろん話が進んでもバンド活動は続けていますし、そこから繋がっている秘密だったりするので、軸が忘れ去られてしまうわけではありません。しっかり幹からの流れを汲んだ枝が伸びています。この辺のバランスがうまいなと思うところです。


個別ルートのことをちょっと書きましょう。選択肢はそこそこありますが、本作の分岐は簡単です。まず四駆の告白を断るか否か。断ったら、誰が好きと告げるか。初見でも簡単に狙ったルートに入れるでしょう(ちなみにルートに入った後は選択によりゲームオーバーもあります)。それぞれのルートはこんな感じ。

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まずはポスターを見ていたらいきなり悠太に抱き着いてきた不思議ちゃんの雪丸四駆(ゆきまるよんく。すごい名前ですね)。彼女には重大な秘密があることが、序盤のうちから明らかになります。彼女はなんと筑波大の研究のために作られたロボットだったのです。記事冒頭のジャンルのところにSFと加えておいたのはそういうことです。ロボットである彼女は知能は十分ですが、まだまだ人間社会の常識とか感情が十分に備わっているとは言えません。そんな彼女が悠太と恋仲になって人間として成長し、音楽表現の幅を広げるというのはなるほどです。おそらく本作のメインルートでしょう。クライマックスのアクションシーンも見どころです。

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次に、悪に憧れタバコの代わりにココアシガレットをいつもくわえてるギターのアイカさん。そう、悪に憧れているけど悪になり切れないんです。だってタバコは体に悪いし……。そんな感じなので、最年長なのに周りにいじられたりしているキャラですが、私は結構好きでした。「いい人ですね」と言われるのを嫌う彼女がなんでそうなったのか。正義より悪を目指すのが単に、カッコいいから、ではなくきちんとした理由があったのがよかった。そんな一筋縄ではいかない先輩の心を悠太がどのようにつかむのか、見届けてください。

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最後に運動神経抜群で熱血キャラの天辻陽。大変な負けず嫌いで、悠太のことは出会った当初ライバル視どころか「嫌いです」と宣言するくらい。剣道部にも所属し、高校時代に相当な成績を残したという話ですが、どうやら最近はうまくいっていない様子。体力では全く及ばない悠太ですが、陽のメンタル的な部分でサポートしていきます。また、陽は風馬とは幼馴染で兄妹のような関係。いつも彼女欲しいぜ~みたいなことばかり言ってる風馬が、兄としてかっこよいところを見せるのもこのルートなので、期待してください。


攻略対象3人を紹介しましたが、本作にはほかに脇役が2人います。悠太の姉で完璧超人の理奈と、とにかく主人公らに敵意むき出しの謎の人物、三全音三弦(さんぜのんみつる。これは読めない)。この脇役たちも結構魅力的なんです。特に三弦の方は話の根幹にかかわってきます。なぜそこまでの悪意を秘めているのか。その理由は四駆ルートで明らかになるので、これを最後に読むのが読了後のおさまりがよいのではないでしょうか。最初のシーンが帰ってくる物語の構成となっており、私がこれを大好きなのもあります。
(私は事前情報なしプレイだったので四駆ルートは最初に読みました。だってあんな目で見られたら断れないじゃんっ)



さて、本作全体の特徴として、コメディシーンの中であっても結構インテリというかうんちくが挟まれることが多いのも挙げられると思います。アイカさんの正義の話であったり、ロボットと人間の区別であったり。言い回しもややインテリぶったところがあると感じられるかもしれません。レビュー執筆のために冒頭を読み返して気付いたのですが、アイカさんの四駆への「お前第一条はどこへやった!」は、ロボット三原則のことですね(第二条の方が場面に合っている気もしますが)。こうした話を楽しめる読者なら、本作はさらに面白いものになると思います。
それとは別にことわざをもじったネタも多かったりします。たまに風馬の軽い下ネタも。世間知らずの四駆が、ピロートークは修学旅行でするものと勘違いするあたりとか結構笑いました。


全体的に非常にクオリティーの高い作品だと思うのですが(オススメにしようか迷いました)、気になることも少しだけ。まずは誤字の類がだいぶ多いことです。間隔→感覚や接地→設置などの単純な変換ミスは分かるのですが、「奥面もなく」などは自然に誤変換しないと思いますしどうなっているんでしょう。うんちく系のネタも多い本作ではかなり気になった点です。英語の絡むネタでteachの過去形がtoughtになっていたのも目についてしまいます(正しくはtaught)。
もう一つは投げっぱなしの謎が多かったところです。陽のルートでの三弦の行動の動機とかはフォローしてほしかった感じがします。エンディングのまとまりが微妙なんですよね。私が四駆ルートを最初に読んじゃったせいでしょうか。


最後に、本作の最初の選択肢についての話をしましょう。入学式後に風馬とどうしようかという話になったところで、サークル選びの3択選択肢が出ます。しかし本作では2番目の軽音サークルしか選べないのです。最初にプレイしたときは、これはエンディングを見るごとに選択肢が解放されていくタイプかなと思ったんですがそうではなく、どうあがいても軽音しか選べません。後から調べて知ったのですが、本作は3部作の2作目だったんですね(タイトルにvol.2とあるのも納得)。1作目と3作目がそれぞれ残りの選択肢に対応するようです。3作目についてはSteamで1222円で販売中です。本作に体験版が同梱されているので気になる方はそれを読んでからでもいいでしょう。ちなみに11/2までハロウィンセール中で733円で買えます。私もそれで買いました。無料でサウンドトラックがついてくるのもうれしい。
作者さんがすでに解散しているため、1作目についてはおそらくもう入手手段がないようです。残念。3作は独立したつくりになっているため単独で楽しめ、本作や3作目プレイの妨げにはなりません。


というわけで、今回はCampus Notes vol.2のご紹介でした。生き生きとした大学生の青春を感じられる良作です。ぜひプレイしてください。シリーズの3作目、Campus Notes : forget me not.の購入を検討される方は割引期間がもう少しで終わるのでお急ぎください。

それでは。

こんにちは。今回は時雨屋さんの「1000文字勇者」のご紹介です。

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ジャンル:メタネタ多めのコメディADV
プレイ時間:クリアまで30分程度
分岐:ゲームオーバーあり
ツール:RPGツクール
リリース:2016/12


今回紹介する「1000文字勇者」は、RPGの形式をとりながらRPGのお約束を逆手に取った挑戦的なシステムで謎解きゲームのようなプレイ感を生み出した、RPGと見せかけたADVのような意欲作です。

本作のシナリオというかコンセプトは単純明快。ふりーむに載っている3行の説明で十分です。

この勇者は千文字読むと爆発します。
がんばって魔王を倒しましょう。
千文字喫茶参加中。


通常私たちがRPGをプレイするとき、町で出会った人にはとりあえず話しかけることが多いはずですし、それがセオリーでもあります。ただの村人からでも、戦闘のアドバイスとか、隠しアイテムのありかのヒントとか、イベント進行フラグとかの情報が得られたりしますよね。「装備品はメニューから装備しないと効果を発揮しないよ」と教えてくれる人とかはどのゲームを見ても最初のほうの町に住んでいる気がします。
ところが本作はなんと主人公が1000文字読む(メッセージウィンドウに表示される)と爆発する呪いがかかっていて、強制的にゲームオーバーになってしまいます。当然、全部の村人に話しかけている余裕なんてありません。とりあえず初回プレイでは手当たり次第に話しかけていくしかありませんが、これではクリアできるわけはありません。話しかけて得られた反応からイベント進行に必須な人を判別し、極力無駄を排して話を進める必要がある、まるで謎解きゲームのような内容になっています。


本作はRPGでもあるので、戦闘シーンもあります。しかしまともに戦っては容易に文字数制限をオーバーしてしまうので、なんと勇者はどんな敵でもワンパンで倒せる能力を持っているのです! その代償の呪いは大変きついものですが…
戦闘において厳しいのは、戦闘前に無駄なことばっかり喋ってくるいやがらせのような敵。何とか回避する方法を見出さなくてはいけません。こうした敵に笑わされたり、無駄な文字にイライラしたり、なんとか回避して進めないか探索してみたりと、試行錯誤できるのが面白いですね。
ちなみに厄介なのは敵だけではありません。
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こういった面倒くさい奴をどう処理するか、必須なイベントやフラグをしっかりと見定める必要があります。1000文字という制限には多少の余裕はあるものの、100文字を超えるような長話はしっかりとスキップしていかないとクリアできないバランスです。フラグが立つ箇所を見つけてはセーブ時点に戻りストレートにフラグへ向かう、そんなプレイングが求められるでしょう。必須イベントだけを起こして進んでいけばクリアまで5分程度というシナリオですが、その正解ルートを見つけるために村人に聞き込みをする、怪しい場所を調べる、そうした作業を楽しめる方にはぴったりです。シナリオ進行にかかわる情報は、台詞内で目立つようにオレンジ色に着色されているので、ゲームの難易度としては高くありません。

ちなみに私が考えたところでは、魔王討伐後に姫に会う場面で216文字残しが最高値かなと思うのですがどうでしょうか。まだ削れる文字数があるよっていう方は教えてください。


さて、本作では呪いを解いて文字数制限を撤廃したモードで思う存分人に話しかけることもできます。このモードへの入り方は、一回通常モードでクリアするとわかるので頑張ってクリア目指してください。2回話しかけると台詞が変わっている人も結構います。彼らが何をしゃべるかは、クリア後のお楽しみですね。
また、最後のシーンがちょっと変わる程度ではありますが、本作は一応マルチエンディングになっています。どこで分岐するのかは比較的わかりやすいと思うので、ぜひ全パターン試してみてください。


今回は「1000文字勇者」のご紹介でした。お約束を逆手に取ったメタな話に笑える方、RPGのフラグ管理がいつも気になってしまう方、ダンジョンでは外れの方の分かれ道まで全て探索してしまう方にお勧めです。最後にこのゲームの本質を伝えるスクリーンショットをお見せしますね。
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…ということです。それでは。

こんにちは。
以前思い出のフリー音楽素材(ボーカル入り編)という記事で、私の印象に残っている音楽素材と、それの使われていたゲーム内の場面についてお話ししました。その時予告した通り、また違う曲について書いていきたいと思います。今回はオルゴール曲編です。楽器の音色からしても優しい感じの曲が多いですが、これが私の好みに合うんですよね。


fokaさんの「someday we find colorful world」

この曲はむきりょくかん。さんの「ほしのの。」のエピローグで使われていた曲ですね。この曲についてはこちらの記事で十分触れたので、またかよと思うかもしれませんが、それだけ好きなんだという風に思っておいてください。

TAM Music Factoryの「花夢」

この曲は私が気付いて収集した中で最も多くのフリーゲーム(作者ばらばらの4つ)に使用されている曲です。とりあえず列挙しましょう。
どの作品でも、登場人物に大きな心の動きがある大事な場面で使用されている印象があります。やっぱりTAMさんの曲ってすごく安心感がありますよね。かなり昔から続いている配布サイトですし、聴いてきた回数もかなり多いですからね。2000年代のフリーゲームだと、ほとんど全部TAM Music FactoryのBGMだな~なんて思える作品もあります。

もっぴーさうんどさんの「おそろい

この曲は、本ブログでも紹介したまゆげさんの「まい、ルーム」のエンディングコンプ後タイトル画面で使われている曲ですね。あんまり語るとシナリオのネタバレになりかねないのですが、やはり物語の結末、読後感との相性が抜群でした。ちなみにこの曲の印象は強くて、私が「まい、ルーム」をプレイした3年後にプレイしたShadow's Silhouetteさんの「乙女ゲームのヒロインになったのに親友が邪魔すぎて攻略ができません!」でも同じくエンディング回収後のタイトル画面で使われているのにすぐに気づき、驚くとともに再度の感動に包まれました(ただし現在は公開停止。残念)。
DOVA-SYNDROMEでのこの曲の紹介文「そばに居てくれることの喜び。一緒に居ることの幸せ。」、この文章が本当に良い! 両作品の世界にぴったりでめちゃくちゃ好きです。

音楽の卵の「ミルクティー(オルゴール)」

この曲については、どこで初めて聴いたか思い出せないんですよね…。でも好きなので載せてみました。私が覚えている限りでは、POPODOTさんの「雨色ビスケット」と、じゅげさんの「St.ChocolateDay」で使われていました。どちらもタイトル画面ですね。多分他にもいろいろなところで聞いた気がするんですが……思い出せません…
音楽の卵のtakaiさんの曲はどれも結構好きなんですが、この曲は聞く機会も多かったのもあってか特に好きですね。ピアノ版のページには楽譜も公開されているので、絶賛練習中です。ちなみに連弾とかではないのに五線が3つからなる楽譜になってます。なるほど曲後半のベースラインになっている持続音が他より1オクターブ低いので左手の16分音符の伴奏と譜表を分けたんですね。以前とある合唱曲の伴奏をした際に最大で五線が5つもある部分があったので、3つではビビらなくなってきました。あと出だしの1拍がアウフタクトではなく1拍だけの小節になっているのもなんか合唱の楽譜っぽさを感じたりしました。

魔王魂の「オルゴール06

この曲は、Dominion's Restの「しりとりクエスト」シリーズでたびたび使われていました。この作品では試行錯誤の結果に伴う多様なエンディングと、その回収具合によってだんだん開いていくおまけ要素が楽しめました。寸劇やキャラ設定などに並んでよく登場したおまけに「勇者歌謡」があり、そこで主人公の勇者くんがこの曲で歌っていたのが印象に残っています。ほかの曲もいろいろ使ってたはずなのに、なぜかこの曲を使った大根踊りの回だけ覚えてる…

番外編

ranaさんの「風花のテーマ-orgel ver-」

この曲は、妹れっぐぅおーまーさんの「風のように、花のように」のタイトル画面で使われている曲ですね。主人公の風花をイメージした元気な曲の、オルゴール編曲版です。原曲とすっかり変わってしっとりした雰囲気があります。この曲も結構好きでよく聴きます。 さて、この曲は作品オリジナルであり、フリー素材として配布されているわけではないので番外編扱いにしています。しかしサウンドトラックが無料で配布されていたので、他の素材と同じ感覚でダウンロードし、音楽プレーヤーに入っています。現在ではサウンドトラックのほうは配信終了しているようで残念です。ゲーム内の音楽鑑賞モードかニコニコ動画での試聴で満足しておきましょう。


さて、今回はこんなところにしておきます。
ちなみに余談なのですが、前回音楽の話をしたときに、oo39ドットコムのys067という曲が耳から離れなくてヤバいという話をしましたが、最近ys201というさらに中毒性の高い曲が追加されているのに気が付きました。ずっと聞いてると変になりそうですが、ys067が好きな方にはおすすめです。

それでは。

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