こんにちは。最近コロナがちょっと収まってきて、遠出の予定ができるなどして更新がしばらく空いてしまいました。そんな感じで久々となりましたが今回のレビュー記事は4th clusterさんの「Campus Notes vol.2」です。今回の記事は長めになっています。

ジャンル:大学生のSF青春恋愛ノベルゲーム
プレイ時間:10時間
分岐:3ルート(後述)
ツール:吉里吉里
リリース:2015/4
本ブログでこれまで取り上げた中では最長のプレイ時間となる長編ノベルゲームですね。あらすじを簡単に紹介しましょう。
主人公桐葉悠太は高専を卒業し筑波大に3年次編入した新入生。入学式で同じ経歴の風馬と友人になり、何かしらの打ち込めるサークルに入ろうとポスターを見ていると、成り行きで個性的な軽音サークルに入ることに。そこで出会った3人の女の子と次第に仲を深めていく悠太。しかし彼女らはそれぞれなかなかの秘密を抱えているようだった……。
プレイする前から分かる本作の特徴として、具体的な舞台が明言されているというのがあります。ズバリ茨城県の筑波大学です。モデルになった学校などがあるんだろうなと感じられる作品は他にもありますが、本作ではがっつり大学の名前が出るし、周辺の地名などもいろいろ出てきます。そして本作を作った4th clusterさんは筑波大の卒業生によって構成されたサークルのようです。背景写真などもおそらく作者さん自身で撮影したキャンパスの写真なのでしょう。その分登場人物たちにもリアルさを感じさせる生き生きとした描写が多く、いい青春だなあと感じさせてくれます。
そして実際にプレイしようとexeファイルを起動すると、いきなり豪華なPVが始まって驚かされます。もうこの時点で本作のクオリティーがとても高いことを感じられました。音楽も自身で作成しているようですし、UIの作りこみもあって大変プレイしやすくなっており、かなり長いシナリオなのですがその長さを感じさせないような気持ちよさがあります。
話の中身に移りましょう。悠太たちが入ることになった軽音サークルでは5人のメンバーでバンドを組むことになりました。ギターのうまい先輩のアイカさんが中心となりますが、他のメンバーは悠太含め楽器経験すらなかったりなんとカラオケで歌ったこともなかったりとそう簡単にはいきません。読み始めた序盤のうちは、どうやってここから音楽を作り上げていくのかなあと思っていましたが、本作の中心はバンド活動ではありませんでした。
上の書き方ではなんかネガティブに感じるかもしれませんが、バンド活動は本作の幹の部分という感じがしたんです。しっかりとそこに話の軸や土台があって、そこから各攻略対象の3人のルートにあたる枝が元気に伸びて葉を茂らせているイメージです。スタート地点はバンド活動であっても、ルートに入ると悠太と女の子の問題とか秘密みたいなところに焦点が行くんですね。なのでプレイ前に思っていたよりは本作はギャルゲー要素が濃いなあと感じました。もちろん話が進んでもバンド活動は続けていますし、そこから繋がっている秘密だったりするので、軸が忘れ去られてしまうわけではありません。しっかり幹からの流れを汲んだ枝が伸びています。この辺のバランスがうまいなと思うところです。
個別ルートのことをちょっと書きましょう。選択肢はそこそこありますが、本作の分岐は簡単です。まず四駆の告白を断るか否か。断ったら、誰が好きと告げるか。初見でも簡単に狙ったルートに入れるでしょう(ちなみにルートに入った後は選択によりゲームオーバーもあります)。それぞれのルートはこんな感じ。

まずはポスターを見ていたらいきなり悠太に抱き着いてきた不思議ちゃんの雪丸四駆(ゆきまるよんく。すごい名前ですね)。彼女には重大な秘密があることが、序盤のうちから明らかになります。彼女はなんと筑波大の研究のために作られたロボットだったのです。記事冒頭のジャンルのところにSFと加えておいたのはそういうことです。ロボットである彼女は知能は十分ですが、まだまだ人間社会の常識とか感情が十分に備わっているとは言えません。そんな彼女が悠太と恋仲になって人間として成長し、音楽表現の幅を広げるというのはなるほどです。おそらく本作のメインルートでしょう。クライマックスのアクションシーンも見どころです。

次に、悪に憧れタバコの代わりにココアシガレットをいつもくわえてるギターのアイカさん。そう、悪に憧れているけど悪になり切れないんです。だってタバコは体に悪いし……。そんな感じなので、最年長なのに周りにいじられたりしているキャラですが、私は結構好きでした。「いい人ですね」と言われるのを嫌う彼女がなんでそうなったのか。正義より悪を目指すのが単に、カッコいいから、ではなくきちんとした理由があったのがよかった。そんな一筋縄ではいかない先輩の心を悠太がどのようにつかむのか、見届けてください。

最後に運動神経抜群で熱血キャラの天辻陽。大変な負けず嫌いで、悠太のことは出会った当初ライバル視どころか「嫌いです」と宣言するくらい。剣道部にも所属し、高校時代に相当な成績を残したという話ですが、どうやら最近はうまくいっていない様子。体力では全く及ばない悠太ですが、陽のメンタル的な部分でサポートしていきます。また、陽は風馬とは幼馴染で兄妹のような関係。いつも彼女欲しいぜ~みたいなことばかり言ってる風馬が、兄としてかっこよいところを見せるのもこのルートなので、期待してください。
攻略対象3人を紹介しましたが、本作にはほかに脇役が2人います。悠太の姉で完璧超人の理奈と、とにかく主人公らに敵意むき出しの謎の人物、三全音三弦(さんぜのんみつる。これは読めない)。この脇役たちも結構魅力的なんです。特に三弦の方は話の根幹にかかわってきます。なぜそこまでの悪意を秘めているのか。その理由は四駆ルートで明らかになるので、これを最後に読むのが読了後のおさまりがよいのではないでしょうか。最初のシーンが帰ってくる物語の構成となっており、私がこれを大好きなのもあります。
(私は事前情報なしプレイだったので四駆ルートは最初に読みました。だってあんな目で見られたら断れないじゃんっ)
さて、本作全体の特徴として、コメディシーンの中であっても結構インテリというかうんちくが挟まれることが多いのも挙げられると思います。アイカさんの正義の話であったり、ロボットと人間の区別であったり。言い回しもややインテリぶったところがあると感じられるかもしれません。レビュー執筆のために冒頭を読み返して気付いたのですが、アイカさんの四駆への「お前第一条はどこへやった!」は、ロボット三原則のことですね(第二条の方が場面に合っている気もしますが)。こうした話を楽しめる読者なら、本作はさらに面白いものになると思います。
それとは別にことわざをもじったネタも多かったりします。たまに風馬の軽い下ネタも。世間知らずの四駆が、ピロートークは修学旅行でするものと勘違いするあたりとか結構笑いました。
全体的に非常にクオリティーの高い作品だと思うのですが(オススメにしようか迷いました)、気になることも少しだけ。まずは誤字の類がだいぶ多いことです。間隔→感覚や接地→設置などの単純な変換ミスは分かるのですが、「奥面もなく」などは自然に誤変換しないと思いますしどうなっているんでしょう。うんちく系のネタも多い本作ではかなり気になった点です。英語の絡むネタでteachの過去形がtoughtになっていたのも目についてしまいます(正しくはtaught)。
もう一つは投げっぱなしの謎が多かったところです。陽のルートでの三弦の行動の動機とかはフォローしてほしかった感じがします。エンディングのまとまりが微妙なんですよね。私が四駆ルートを最初に読んじゃったせいでしょうか。
最後に、本作の最初の選択肢についての話をしましょう。入学式後に風馬とどうしようかという話になったところで、サークル選びの3択選択肢が出ます。しかし本作では2番目の軽音サークルしか選べないのです。最初にプレイしたときは、これはエンディングを見るごとに選択肢が解放されていくタイプかなと思ったんですがそうではなく、どうあがいても軽音しか選べません。後から調べて知ったのですが、本作は3部作の2作目だったんですね(タイトルにvol.2とあるのも納得)。1作目と3作目がそれぞれ残りの選択肢に対応するようです。3作目についてはSteamで1222円で販売中です。本作に体験版が同梱されているので気になる方はそれを読んでからでもいいでしょう。ちなみに11/2までハロウィンセール中で733円で買えます。私もそれで買いました。無料でサウンドトラックがついてくるのもうれしい。
作者さんがすでに解散しているため、1作目についてはおそらくもう入手手段がないようです。残念。3作は独立したつくりになっているため単独で楽しめ、本作や3作目プレイの妨げにはなりません。
というわけで、今回はCampus Notes vol.2のご紹介でした。生き生きとした大学生の青春を感じられる良作です。ぜひプレイしてください。シリーズの3作目、Campus Notes : forget me not.の購入を検討される方は割引期間がもう少しで終わるのでお急ぎください。
それでは。

ジャンル:大学生のSF青春恋愛ノベルゲーム
プレイ時間:10時間
分岐:3ルート(後述)
ツール:吉里吉里
リリース:2015/4
本ブログでこれまで取り上げた中では最長のプレイ時間となる長編ノベルゲームですね。あらすじを簡単に紹介しましょう。
主人公桐葉悠太は高専を卒業し筑波大に3年次編入した新入生。入学式で同じ経歴の風馬と友人になり、何かしらの打ち込めるサークルに入ろうとポスターを見ていると、成り行きで個性的な軽音サークルに入ることに。そこで出会った3人の女の子と次第に仲を深めていく悠太。しかし彼女らはそれぞれなかなかの秘密を抱えているようだった……。
プレイする前から分かる本作の特徴として、具体的な舞台が明言されているというのがあります。ズバリ茨城県の筑波大学です。モデルになった学校などがあるんだろうなと感じられる作品は他にもありますが、本作ではがっつり大学の名前が出るし、周辺の地名などもいろいろ出てきます。そして本作を作った4th clusterさんは筑波大の卒業生によって構成されたサークルのようです。背景写真などもおそらく作者さん自身で撮影したキャンパスの写真なのでしょう。その分登場人物たちにもリアルさを感じさせる生き生きとした描写が多く、いい青春だなあと感じさせてくれます。
そして実際にプレイしようとexeファイルを起動すると、いきなり豪華なPVが始まって驚かされます。もうこの時点で本作のクオリティーがとても高いことを感じられました。音楽も自身で作成しているようですし、UIの作りこみもあって大変プレイしやすくなっており、かなり長いシナリオなのですがその長さを感じさせないような気持ちよさがあります。
話の中身に移りましょう。悠太たちが入ることになった軽音サークルでは5人のメンバーでバンドを組むことになりました。ギターのうまい先輩のアイカさんが中心となりますが、他のメンバーは悠太含め楽器経験すらなかったりなんとカラオケで歌ったこともなかったりとそう簡単にはいきません。読み始めた序盤のうちは、どうやってここから音楽を作り上げていくのかなあと思っていましたが、本作の中心はバンド活動ではありませんでした。
上の書き方ではなんかネガティブに感じるかもしれませんが、バンド活動は本作の幹の部分という感じがしたんです。しっかりとそこに話の軸や土台があって、そこから各攻略対象の3人のルートにあたる枝が元気に伸びて葉を茂らせているイメージです。スタート地点はバンド活動であっても、ルートに入ると悠太と女の子の問題とか秘密みたいなところに焦点が行くんですね。なのでプレイ前に思っていたよりは本作はギャルゲー要素が濃いなあと感じました。もちろん話が進んでもバンド活動は続けていますし、そこから繋がっている秘密だったりするので、軸が忘れ去られてしまうわけではありません。しっかり幹からの流れを汲んだ枝が伸びています。この辺のバランスがうまいなと思うところです。
個別ルートのことをちょっと書きましょう。選択肢はそこそこありますが、本作の分岐は簡単です。まず四駆の告白を断るか否か。断ったら、誰が好きと告げるか。初見でも簡単に狙ったルートに入れるでしょう(ちなみにルートに入った後は選択によりゲームオーバーもあります)。それぞれのルートはこんな感じ。

まずはポスターを見ていたらいきなり悠太に抱き着いてきた不思議ちゃんの雪丸四駆(ゆきまるよんく。すごい名前ですね)。彼女には重大な秘密があることが、序盤のうちから明らかになります。彼女はなんと筑波大の研究のために作られたロボットだったのです。記事冒頭のジャンルのところにSFと加えておいたのはそういうことです。ロボットである彼女は知能は十分ですが、まだまだ人間社会の常識とか感情が十分に備わっているとは言えません。そんな彼女が悠太と恋仲になって人間として成長し、音楽表現の幅を広げるというのはなるほどです。おそらく本作のメインルートでしょう。クライマックスのアクションシーンも見どころです。

次に、悪に憧れタバコの代わりにココアシガレットをいつもくわえてるギターのアイカさん。そう、悪に憧れているけど悪になり切れないんです。だってタバコは体に悪いし……。そんな感じなので、最年長なのに周りにいじられたりしているキャラですが、私は結構好きでした。「いい人ですね」と言われるのを嫌う彼女がなんでそうなったのか。正義より悪を目指すのが単に、カッコいいから、ではなくきちんとした理由があったのがよかった。そんな一筋縄ではいかない先輩の心を悠太がどのようにつかむのか、見届けてください。

最後に運動神経抜群で熱血キャラの天辻陽。大変な負けず嫌いで、悠太のことは出会った当初ライバル視どころか「嫌いです」と宣言するくらい。剣道部にも所属し、高校時代に相当な成績を残したという話ですが、どうやら最近はうまくいっていない様子。体力では全く及ばない悠太ですが、陽のメンタル的な部分でサポートしていきます。また、陽は風馬とは幼馴染で兄妹のような関係。いつも彼女欲しいぜ~みたいなことばかり言ってる風馬が、兄としてかっこよいところを見せるのもこのルートなので、期待してください。
攻略対象3人を紹介しましたが、本作にはほかに脇役が2人います。悠太の姉で完璧超人の理奈と、とにかく主人公らに敵意むき出しの謎の人物、三全音三弦(さんぜのんみつる。これは読めない)。この脇役たちも結構魅力的なんです。特に三弦の方は話の根幹にかかわってきます。なぜそこまでの悪意を秘めているのか。その理由は四駆ルートで明らかになるので、これを最後に読むのが読了後のおさまりがよいのではないでしょうか。最初のシーンが帰ってくる物語の構成となっており、私がこれを大好きなのもあります。
(私は事前情報なしプレイだったので四駆ルートは最初に読みました。だってあんな目で見られたら断れないじゃんっ)
さて、本作全体の特徴として、コメディシーンの中であっても結構インテリというかうんちくが挟まれることが多いのも挙げられると思います。アイカさんの正義の話であったり、ロボットと人間の区別であったり。言い回しもややインテリぶったところがあると感じられるかもしれません。レビュー執筆のために冒頭を読み返して気付いたのですが、アイカさんの四駆への「お前第一条はどこへやった!」は、ロボット三原則のことですね(第二条の方が場面に合っている気もしますが)。こうした話を楽しめる読者なら、本作はさらに面白いものになると思います。
それとは別にことわざをもじったネタも多かったりします。たまに風馬の軽い下ネタも。世間知らずの四駆が、ピロートークは修学旅行でするものと勘違いするあたりとか結構笑いました。
全体的に非常にクオリティーの高い作品だと思うのですが(オススメにしようか迷いました)、気になることも少しだけ。まずは誤字の類がだいぶ多いことです。間隔→感覚や接地→設置などの単純な変換ミスは分かるのですが、「奥面もなく」などは自然に誤変換しないと思いますしどうなっているんでしょう。うんちく系のネタも多い本作ではかなり気になった点です。英語の絡むネタでteachの過去形がtoughtになっていたのも目についてしまいます(正しくはtaught)。
もう一つは投げっぱなしの謎が多かったところです。陽のルートでの三弦の行動の動機とかはフォローしてほしかった感じがします。エンディングのまとまりが微妙なんですよね。私が四駆ルートを最初に読んじゃったせいでしょうか。
最後に、本作の最初の選択肢についての話をしましょう。入学式後に風馬とどうしようかという話になったところで、サークル選びの3択選択肢が出ます。しかし本作では2番目の軽音サークルしか選べないのです。最初にプレイしたときは、これはエンディングを見るごとに選択肢が解放されていくタイプかなと思ったんですがそうではなく、どうあがいても軽音しか選べません。後から調べて知ったのですが、本作は3部作の2作目だったんですね(タイトルにvol.2とあるのも納得)。1作目と3作目がそれぞれ残りの選択肢に対応するようです。3作目についてはSteamで1222円で販売中です。本作に体験版が同梱されているので気になる方はそれを読んでからでもいいでしょう。ちなみに11/2までハロウィンセール中で733円で買えます。私もそれで買いました。無料でサウンドトラックがついてくるのもうれしい。
作者さんがすでに解散しているため、1作目についてはおそらくもう入手手段がないようです。残念。3作は独立したつくりになっているため単独で楽しめ、本作や3作目プレイの妨げにはなりません。
というわけで、今回はCampus Notes vol.2のご紹介でした。生き生きとした大学生の青春を感じられる良作です。ぜひプレイしてください。シリーズの3作目、Campus Notes : forget me not.の購入を検討される方は割引期間がもう少しで終わるのでお急ぎください。
それでは。