フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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2022年01月

こんにちは。更新が2週間空いてしまいました。
今回はカビ布団さんの「そしてパンになる」の紹介となります。

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ジャンル:パン作りに燃える部活&恋愛ノベルゲーム…と思いきや…
プレイ時間:1ルート3時間/フルコンプまで8時間程度
分岐:メインはヒロインごとに1つで3ルート+おまけ(真)ルート、実質バッドエンドあり
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2021/4 (R15版ver1)、2021/12(R18版)
備考:ノベコレ版は15禁、エロゲと饗版は18禁。今回は18禁版でプレイ


さて、本作については私がプレイする前からノベコレ版の評判を耳にしておりました。ほかに例を見ないような衝撃的な内容だと。
尖ったものが出しやすいのがフリーゲームの魅力の一つだというのはブログ開設当初にも述べてきた私ですが、ここまで驚きの展開というのを売りにされてしまうと私としてはプレイしないわけにはいかないかなと思っていたところ、たまたま18禁版のリリースを知りその場でダウンロード。どんな意味で衝撃的なのか、というのを確かめるような心持ちでプレイを開始しました。


本作の舞台はパン作りが主要産業で皆パン大好きな八紘町(はっこうちょう。パン作りに欠かせない"発酵"からの命名でしょうか)。主人公の波良嶋亮は御多分に漏れず大のパン好きで、どうしたらおいしいパンが作れるか日々研究を重ねています。幼馴染の八千代心音とともに部員を集めてベーカリー研究同好会を立ち上げ、部活としてもパン作りに取り掛かっていきます。部員になってくれたのは亮と心音のほかには学友会(生徒会のようなもの)も兼任するまじめな小頭(おず)さん、メロンパンの髪留めが目を引く帆那(はんな)さん、一風変わった味のパンを作る粕田(かすた)さんの3人。ギャルゲーらしく、本作はそれぞれのヒロインごとにルート分岐があります。


作者さんがお勧めする攻略順があるようなので、私はそれに従ってプレイしました。まずは帆那さんです。本作の中では最も王道系と言えるルートでしょう。パン作りに熱心な帆那さんとどうやらそれをよく思っていないらしい帆那さんの父親。父親をどう説得して帆那さんにはどんなサポートをするのか、といったあたりが見どころで、本作の中で亮が最も強かな感じがするルートともいえるでしょう。
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問題は次の心音ルートです。ここにきて本作の"衝撃的"の部分が徐々に明らかになっていきます。帆那さんルートでもほんの少しふれられた"八紘町の都市伝説"の話や、亮や心音の両親たちがそれにかかわっていそうなことが次第に明らかになります。このあたりをプレイしているときは、正直に言うと
「フリーゲーム史上類を見ないとまで言うほどか…? 確かに規模が大きいし亮にとって驚愕の事実というのは確かだけど誇大広告では?」
といった感想でした。しかしこの感想は心音ルート終盤で改められることになります。さすがにあの展開は想像できませんでした。その結末を前に亮と同様に呆然とすること3分。ようやく私も状況を飲み込みました。そして様々なことを理解するわけです。都市伝説について誰に聞いても歯切れの悪い答えしか返ってこなかった理由。パン大好きだった兄が突然パン嫌いになってしまった理由。
そして黒幕への怒りに震えるだけの私と違い、亮はもう一つ大切なことに気付いていました。"世界一おいしいパンとは何か"。作内で散々出てくるこの言い回しですが、ここにきてただの部活の目標とかの域を超えて別の意味を帯びてきます。いや、意味というより、もはや呪いでしょうか。
真実を知ることで苦しむという展開を含む作品はたびたび目にします。しかし本作では、そうした苦悩とはまた性質を異にしています。心音ルート最後の選択肢で、片方を選ぶと亮は完全にパン作りへの情熱を失い抜け殻になってしまいます。この展開、私結構好きなんですよね。極めてしまったゆえの絶望と諦観。このあたりが逆に亮の職人魂みたいなものを感じさせてくれました。

この後に粕田さんルートを読むと大変平和ですね。最もギャルゲーらしく、バランスも良いルートと言えるでしょう。帆那さんルートなどでもそうでしたが、パン作りのための課題は技術的な内容よりも粕田さん自身が自分の力量に自信をもつという精神的な面に帰着します。このあたりが上手かったですね。もしパン作りをする上での壁と打開策が技術的なものだったとしたら、おそらく私には専門的過ぎて理解できなかったでしょう。しかし主眼をメンタルの方に置くことによって、パン作りの経験などなくても理解できるし、そのうえでベーカリー研究同好会という設定がないがしろにされているとも感じないようになっていると思います。さらに、部活での関係を自然に恋愛につなげるのにぴったりです。
気になる点としては、食レポの方はもうちょっと具体的にしてほしいかなと感じたところでしょうか。「私の作ったパンおいしい?」「うん、おいしいよ」といったやり取りばかりになってしまうと、部活とか関係なしにただイチャイチャしてるだけじゃねーか、と思えてしまいます。まあ、ここを専門的で難しい指摘ばかりにしても先ほどと同じ問題がありますから、バランスが大事といったところでしょうか。


さて、これらのルートをすべて読むと、おまけルートに入ることができます。……という情報をもとにプレイしていたら、全然おまけなんかじゃないシナリオの量と内容でした。ここまで読み終えないと本作をプレイしたとは言えないでしょう。私は小頭さんルートと呼んでます。
このルートでは、部員で立ち絵もあるのになぜか攻略できないと思っていた小頭さんとの関係を進めることができ、事件についても心音ルート以上に真実に迫ることになります。というわけで、心音ルートを読んだ方はこのルートまですべて読むことを強く推奨します。


この作品をプレイするうえで気になる点も多かったので少し挙げます。
まずは、部活としての導入だったのにそれが物語後半で完全に忘れ去られていると感じた点です。例えば、小頭さんルートではちょっとだけ触れられますが、学園祭関連の描写が審査会以降全くないところなどは違和感がありました。普通学園祭本番がメインイベントであって、出展団体の審査を行う部分はあくまで通過点、中間目標でしかないでしょう。しかし本作では審査会終了後「目標がなくなってしまった」という空気になるのが理解できませんでした。学園祭の模擬店を成功させることを目標に設定したうえで、各人が技術向上に励む中で課題を見つける(あるいは、事件に迫る必要性を感じる)という展開で良かったのでは?
あとは、シーンごとの繋がりがわかりにくいと感じる回数も多かったです。寝たら日付が翌日に飛んだり、1週間後に飛んだりするので作内の時間がつかみにくかったり、あるいは登校したと思ったのに次のシーンではいつの間にか学園が終わっていたりといった混乱は、回数が重なると確実に読み手の没入感を阻害します。
長編ということを鑑みても誤字が非常に多いところや、バッドエンドはともかく正規のエンディングまでがあまりにも素っ気ないのも気になるところです。


といろいろ書いてきましたが、R15版公開からR18版・R15版ver2の公開までに立ち絵の追加のみならずシステム面の改善などもされているようで、今後に期待できる作者さんかなと思っています。旧verで書かれた他の方のレビューを見ると、文字表示速度の変更ができないといった記述がありましたが、私がDLしたバージョンではできるようになっていました。

最後にどうでもいいことを一つ。
"学園"はエロゲのお約束なんですかね? 商業作だと18歳未満は出せないから高校という名称は使えず、代わりに学園と呼ぶのがお約束といううわさを聞いたことがあるのですが、商業作をやらない私には分かりませんでした。私がいくつかプレイしたR18フリーゲームでは普通に高校生が出てきたような記憶があります。誰か詳しい方いたら教えてください……
本作ではR15版でも学園のようです。


私は以前、衝撃的なシナリオを持つ作品として「まい、ルーム」をレビューしました。本作にはあの時の衝撃とはまた違った驚きが詰まっています。さらにはこのテーマでしか語りえないメッセージ性を含む作品となっているので、気になった方はぜひプレイしてください。
それでは。

こんにちは。今回は毛色を変えて、私がこれまでプレイしたフリーの音楽ゲームの中で大変に革新的・独特と感じた作品がいくつかあったので、3つ選んでご紹介するという記事にしたいと思います。
…と思って昔プレイした作品を調べていたら、3つのうち2つはすでにプレイ不可のようでした…すみません。


Pop'nTube

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まずはPolygon Gmenさんの「Pop'nTube」です。該当サイトはすでに消滅していたのでリンクなしです。画像はフリーゲーム夢現から。

ゲーム性としては、曲に合わせて降ってくるノーツが下の判定ラインに重なるタイミングで対応するキーを押すという極めてオーソドックスな作品です。本作の驚くべきところは、タイトルにTubeとある通り、YouTubeの動画埋め込みに合わせてゲームをするという点です。上のスクリーンショットで左側はノーツが降ってくるゲーム画面ですが、右側にある画像はYouTubeの動画なのです。
サイトの側でYouTubeと包括契約を結んでいたように記憶しており、曲に関する著作権関連の問題から選曲の幅が制限されがちなフリー音ゲーの問題点をクリアしているこの発想に大変驚きました。JASRAC管理楽曲の音ゲーを合法的にプレイできるフリーゲームは、本作以外には存在しないでしょう。さらにはユーザーによるステージ投稿が可能。プレイしたい楽曲がない場合は(YouTubeに上がっている限り)自分でステージを作ればよいのです。数十程度の公式譜面のほかに、千を超えるユーザー投稿譜面が選択でき、選曲の幅に関しても本作を超える作品はなかったのではないでしょうか。
難易度に関しては、上のスクリーンショットから分かる☆表記のほかに、使用するキー数ごとにページが分かれており初心者向けの4Keys、中級者向け7Keys、上級者向け9Keysがありました。9Keysはプレイしていてすぐ混乱してしまったので、私は4か7でプレイしていました。



サリング(Cirring)

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続いてご紹介するのは、D4Uさんの「サリング」です。ページ自体はまだ生きてますがflash終了に伴いこちらもプレイはできなくなっているようです。画像は公式サイトからです。
通常音ゲーと言ったら、PCなら曲に合わせてキーを押したりマウスをクリックしたり、スマホならタップしたりフリックしたりという操作をするものですが、本作ではそれらの操作は必要ありません。それではどのように遊ぶかというと、曲に合わせて出現する円の中にマウスポインタを移動するのです。だんだん大きくなる円が最大になるタイミングで円内にポインタがあれば成功です。この独特の操作法の面白い作品でした。本作もプレイヤーによって譜面作成と公開が可能になっています。
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よくあるシステムのように上からノーツが降ってくるわけではないので、判定ポイントを画面内の好きなところに2次元的に配置できます。そのために画面上に描かれる図形が面白い形になったりするんです。うまい譜面は音ゲーとして気持ちいいだけでなく、見た目にもきれいだったりします。
また、タイミングがあった時の効果音がタンバリン、拍手、無音の3種類あり、ノーツごとに設定されているのでその辺もうまかったりします。私が本作に興味を持ったきっかけはfokaさんの楽曲「あたりまえ かわりばえ」が入っていたことで、この曲には後半に手拍子の音が入っているのですが、それとゲームの効果音が合致していて気持ちいいなと思った覚えがあります(この曲については音楽素材についての記事で語ってます)。

MusicBook

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最後に、まだプレイ可能なミスターつるぴかくんさんの「MusicBook」です。本作が独創的なのはスクリーンショットで明らかでしょう。ふりーむからダウンロードしてきたzipを解凍しても、.exeファイルは入っていません。代わりに.xlsmファイル(マクロ付きExcelファイル)がゲーム本体になっているのです。
ゲーム性としては、カーソル(36行に表示されている黄色と赤のセル)をマウスで操作し、上から降ってくる緑色のノーツに同期させるというものでそれ自体は特筆すべき点はありませんが、Excel上で作ったという個性が強すぎますよね。本来は表計算ソフトであるExcelでここまでできるのかと衝撃を受け、見つけて即ダウンロードした覚えがあります。実は私も昔Excelでパズルゲームを作ったことがあるのですが、せいぜい身内にプレイしてもらうのが精いっぱいでした。しかし本作は十分フリーゲームとして公開するに堪える出来になっており尊敬するところです。
ちなみに作者さんは他にもSuperDrumMasterという作品を出しており、こちらもExcel上で動く音ゲーです。タイミングを合わせてキーを押す王道系なのですが、私の環境ではキー押下ごとに一瞬のフリーズが入ってプレイに支障がある感じでした。私のExcelのバージョンが公開当時のものより新しすぎてダメなのか、単純にPCのスペックが足りてないのか分かりませんが(CPUは2.5GHz以上を推奨しているので、フリーゲームにしては相当高いスペックを要求しているのは確かです)、少し残念です。
自分のPCにExcelが入っているという方は、Excel上でゲームが遊べるという不思議な感覚を味わってみてはいかがでしょう。プレイする場合、ファイル起動時に編集の許可と、マクロ実行の許可を忘れないようにしてください。



というわけで今回は3つの作品をご紹介しました。昔遊んだ作品がプレイできなくなるのは寂しいものですね。

それでは。


2022年になりましたね。あけましておめでとうございます。

昨年は東京オリンピックなどもありましたが、やはりコロナ禍2年目という印象が強い年でした。今年こそこの騒ぎが収束に向かうことを願っています。stay homeという名目でゲームをプレイするには逆にちょうど良い年でもありましたが、やはり自粛の空気というのはあまり気持ちいいものではないなと思っています。

さて、このブログを振り返ってみます。昨年の3月に開設し、だいたい土日のどちらかに更新という形で10か月ほど続け、レビュー記事は33本、総記事数は44本となっています。開設当初に週一程度の更新を目指すとしましたが、このペースは大体維持できたんじゃないでしょうか。
レビュー記事については、自分で思っていたよりもノベルゲーム寄りになったなあと感じています。全体の半分弱くらいかなと思っていたのですが、実際には3分の2がノベルゲームの記事になりました。もう少しほかのジャンルの作品についても書こうかなと思います。(しかしフォロワーの割合的にノベルゲーム記事の方が多くの方に見ていただいている模様なので微妙か?)

ちなみに去年で一番閲覧者が多かったレビュー記事は「ありすえすけーぷ」でした。人気作はやはり見る方が多いですね。アツマール版公開後のRTA記事も反響をいただきました。今ランキングを確認したところ、SSランクは抜かされていますがその他のランクではまだ私が1位のようです。
他の作品だと、「MY HOBBY IS 短編版」「冒険の時間!」も閲覧数が多かったです。作者さんによってRTされると強いということでしょう。
レビュー以外の記事では、音楽素材特定の仕方についての記事に多くの反応をいただきうれしい限りです。ここ数年は(自分が演奏したクラシックや合唱曲をのぞいては)ほとんどフリー素材しか聴かないような生活だったので、自分の中の熱を詰め込めた記事だと思っています。「ごがつのそら。」の聖地巡礼で神明神社を訪ねた記事も、公開からかなり経っているのによくアクセスされているようでうれしいです。こうしたコラム的な記事も定期的に書いていけたらなと思っています。


さて、年も明けたし何か新しいことをとも思ったのですが特に思いつかなかったので、本ブログの記事にジャンルとは別にタグをつけてみることにします。ノベルゲーム、RPGといった分類以外に、コメディ、ファンタジー、恋愛などのテーマの分類や、プレイ時間などでタグをつけていくので、記事探しの参考にしていただけたらと思います。


短めですが、今は実家にいるので今回はこの辺で。
今年もよろしくお願いします。

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