フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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2022年08月

こんにちは。今回はアコックソフトさんの「だびぽん」をレビューしていきます。

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ジャンル:デジタルオカルトホラーADV
プレイ時間:1周2時間、フルコンプまで6時間程度
分岐:大きく2つ、1周目ルート制限あり
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2016/10
備考:15推


前回レビューの「絶望の螺旋」に引き続きオカルト系の作品となります。穏やか目ではありますが一応ホラー表現があるので苦手な方は注意。


さて、いつも通り大まかにあらすじを説明しましょう。
主人公継見(つぐみ)ヒロキは大学生。友人の茅野凛太郎(かやの・りんたろう)はオカルトマニアかつコンピュータの技術もあり、大学のある禎尾(さだび)町にある心霊スポットをテーマにしたオンラインゲーム「SADABI怪談オンライン」をほぼ一人で開発している。ヒロキはテストプレイヤーとして開発チームに参加しているところだったが、なんと最終マップのモチーフとなる「禎尾森放送局」へと取材に行った茅野が消息不明に。放送局まで彼を探しに行ったヒロキは頭から血を流して地面に横たわる茅野を発見。幸い息はあるようだったが、少し目を離した隙に茅野の姿を見失ってしまった。自力で遠くに逃げるなど到底不可能そうに見えた茅野はなぜ消えたのか。直後に姿を現し、何か知っていそうな発言をした女子高生の正体は? 禎尾森放送局のマスコットキャラクター、だびぽんに関するオカルトめいた噂との関係は? 誰が味方なのかもわからない中、同じく開発メンバーの橘三鷹(たちばな・みたか)とともに茅野の捜索を続けるヒロキの努力は報われるのか……

といったところでしょう。

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本作におけるオカルトの特徴として、"デジタル"が挙げられるでしょう。だびぽんの持つ力は、携帯電話やパソコンなどを通して現実世界に発現します。オンラインゲームの製作などを行っていた茅野らはまさにいい餌食です。
しかし電子機器に触れたものが全員呪われるわけではありません。いったい何がトリガーとなっているのか、だれがどんな目的で力を行使しているのか、といったあたりの情報は隠されていて、終盤にならないと明らかになりません。この辺の情報の隠し方、提示の仕方が上手い作品だなと感じました。

だびぽんの謎については、かなり複雑な真相になっていると言えます。1周では真実にたどり着くことはできないでしょう。というかシステム上できません。本作のルートはメニュー内のフローチャートに示される通り大きく分けてA,Bの2つ。それぞれにさらに2~3のエンディングと多数の一発ゲームオーバーがありますが、初回ではBルートへの選択肢は出現しません。AのNormalエンドを見ることによって解放されます。若干メタ的な内容も含むので、変則ループものともいえるかもしれません。

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茅野の捜索、そして呪いの解消のためにはノベル形式の選択肢だけでなく、探索や謎解きを成功させなくてはなりません。上の画像のように、部屋内の調査をしてパスワードの手がかりを探してみたり、あるいはほかの開発メンバーとSADABI怪談オンライン上でイベントを進行させたりといった内容があるのですが、難易度的には高くありません。クリックできる範囲でくまなく調査すればヒントはすべて手に入りますし、そこからパスワードを導き出すのも簡単でしょう。壁を調べると出てくる落書きの中にもヒントが隠されていて親切です。
むしろ本作において難しいのはノベルパートで適切な選択肢を選ぶことです。すぐにそれとわかる一発ゲームオーバー選択肢以外にも、どっちが正解か分かりにくいものや、そもそも今後の分岐に影響するようには見えないけれども正解は一つしかない選択肢などもあり、一発で正規のエンディングに行くのすらだいぶ難しいでしょう。また、本作は序章~第9章までの章ごとの構成となっているのですが、分岐は章内だけでなく、過去の章での選択の影響もうけます。第6章あたりでゲームオーバーになっちゃうな~と思ったら、直前ではなくもっと前のセーブデータからやり直してみるとよいでしょう。

TRUEエンドへの道はさらに厳しいものとなります。ゲームオーバー選択肢は当然すべて回避したうえで、全員生存させるための各キャラクターの行動を考えなくてはなりません。正直エンディング回収後も何が必要なフラグだったのかつかめていない状態だったので、もう少しやさしくするなり攻略情報をどこかに書いておくなりしてくれたら親切だったなと思いました。
しかしこれだけ苦労した甲斐あって、気持ちの良いエンディングが見られます。まあ、そんな簡単に許せるん? と思わなくはないですが、このくらいなら十分ありでしょう。


本作をプレイしていて少し気になったのは、時々挿入されるミニゲームです。主人公たちがオンラインゲームの開発とプレイをしていて、それが本筋の謎にかかわってくるからゲームという世界観を表現しておきたいというような意図は分かるのですが、突然謎のすごろくが始まったり終盤の重要なイベントが結局運ゲーだったりすると、これはなんのゲームだったっけ? となってしまった感は否めません。だびぽんが勝手にオンラインゲーム上でのイベントを開いて、ヒロキたちで対処という仕掛けはいいと思うので、そこだけちょっと惜しいかなと思います。
あとは、分岐多数で難易度が高いので、既読スキップは欲しかったというところでしょう(スキップはあるが既読も未読も全部飛ばされてしまう)。



というわけで今回はだびぽんのご紹介でした。
誰が味方かもわからない中、目まぐるしく入れ替わる状況とホラーならではの緊張感。そうしたものが好きな方ならきっと本作を十分楽しめるでしょう。ボイスもついてますよ。
それでは。

こんにちは。

しばらく前にBrass Restorationのレビューを書いた時、ギャルゲーの主人公は高校生にして一人暮らしというのはお約束だと書きました。その時から少し気になっていたのです。本当にギャルゲーの主人公は一人暮らしなのか???

meta
↑主人公に超メタツッコミをさせていくスタイル


というわけで今回は、私がこれまでにプレイしたフリーゲームのうち現代日本が舞台の恋愛要素を含む作品について調べてみました。ギャルゲーだけでなく乙女ゲーやBL、百合も含みます。(私基準で)この条件に当てはまると判断した作品は130作。いわゆるギャルゲーだけでなく、恋愛がメインとは言えない作品まで含めた結果、調べるのがかなり大変な量になってしまいました。果たして”お約束”どおり一人暮らしをしている高校生はどれくらいいるのでしょうか。


まずは主人公の年齢帯をまとめました。
age
やはり恋愛ものと言えば高校生! 圧倒的に多く、全体の過半数を占めました。
続いて大学生(大学院生含む)、社会人、その他、中学生という結果になりました。

記事冒頭で例に出した「Brass Restoration」の主人公はもちろん高校生。最近取り上げた「私のリアルは充実しすぎている」「高対称のi」も高校生ですし、記事にはしていないですが「ひとかた」「風雲相討学園フラット」などの有名作も枚挙に暇がありません。
それに対して非常に少なかったのが中学生。本ブログでレビューしたのは「二酸化テルル」だけでした。その他に「箱庭のうた」「恋をする生き物だから」などが挙げられます。
そして大学生は意外と多い。私がレビュー済みの作品で「Strange meeting!(15推)」「Campus Notes vol.2」「お兄ちゃんの世話を焼くのは妹の特権です」「ギワク★ラヴァーズ」と4作もありました。「アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ」は非常に珍しい大学院生が主人公の作品です。

学生ではなく社会人が主人公となる作品もあります。「いちごみるくとあそぼうよ(15禁)」「ごがつのそら。」「君と再会した日」などが当てはまります。その他にも「ハッピーエンドに花を添えて」「ハーバーランドでつかまえて」「奥様は惨殺少女」などの有名作もたくさん。

その他に分類したのは、物語途中で学校を卒業したり入学したりするものか、明らかに学生だが中学生か高校生か判別できないような作品です。「ほしのの。」では主人公は物語中で中学校から高校へと進学。「19℃」ではルートによって大学在学中か就職後かが変わります。「バス停の先輩」などは主人公が中学生か高校生か判断できません。「Summer Girl ―夏の少女とボク―」は(おそらく)小学生が主人公。恋愛ものに入るか微妙ですが、今回はその他としてカウントに入れています。「サクとマツリの赤道儀」も小学生が主人公ですね。



さて、ここからが本題。中高生90人のうち一人暮らしなのは何人でしょうか??
①一人暮らし
②親と同居(両親/父のみ/母のみと同居を含む)
③その他の親族と同居
④不明
⑤その他
に分類しています。その結果はこちら。

family


一人暮らしなのは8人。全体の1割弱でした。
ちなみに一人暮らしの理由はいくつかあって、
Brass Restoration」両親とは死別
ビューティフルパフォーマー」両親は海外出張
かたわ少女(18禁)」「めるてぃんぐ♥あいすくりぃむ」全寮制のため寮生活
などです。

やはり多いのは親と同居しているパターン。41人がこれに該当しました。
しかしその中でも家で親と会話しているシーンがあって同居していることがはっきりわかるパターンと、「早く帰ってこい」のような電話があるなど、同居していると推測されるだけで親は一切登場しないパターンとがありました。確実に親と同居していることが分かるのはこのうち30人。残り11人は推測の範囲内です。
さらに確実に親と同居している30人のうち5人については、「親は仕事で忙しく家を空けがち」などの事情が作内で明言されており、実質一人暮らしだったりします。「××と過ごすクリスマス。」「美少年の下僕(?)になりました」などが該当します。
がっつり親と会話しているシーンのある作品でいうと、「白陽祭-体育の部-」「彼女の嘘の止まった世界」「ヒトナツの夢」などが挙げられるでしょう。

その他の親族と同居しているのは7人。うち4人が兄弟のみと同居、3人が祖父母と同居です。
兄弟と同居しているのは
私のリアルは充実しすぎている」「be alive(18禁)」両親は海外出張
クリーチャーと恋しよっ! ーここのえこころ―」両親は海外旅行
うるさあに!(15禁)」両親とは死別
の4作。
祖父母と同居しているのは
ほしのの。」両親とは死別
私とあなたといた世界」「unknown(無意確認生命体)」両親とはトラブルあり
の3作です。

”不明”と分類したのは32人。家に帰ってからの描写が一切ないなどの理由で誰と一緒に暮らしているか判断不能な作品です。親に「夕食は食べてくる」などの断りを入れる電話をするシーンなど、間接的に同居が分かるシーンすらないものです。
とはいえ100作以上を全て丁寧に読み返したわけではないので、もしかしたらこの32人の中に世帯が明言されるシーンが含まれるものもあるかも。
家のシーンが全くないような作品の例としては、「風雲相討学園フラット」「ツルゲーネフによろしく」「深夜12時学校で(15推)」などが挙げられます。「Merry X'mas you, for your closed world, and you...」は、意図的に家のシーンを省いている(主人公が学校から出られない・・・・・・・・・)非常に特殊な作品でしょう。

”その他”は2人。
ひとかた」の南護は旅館暮らし。そして「おみコン!」の宮下圭吾は攻略対象(?)と同居しています。この2作については事情が非常に込み入っているので、ぜひ該当作をプレイして確かめていただきたいと強く思います。

また、中高生90人のうち、両親が海外出張or仕事が忙しいなどほとんど家にいないと明言されているのは9人でした。



では最後に、大学生/社会人編です。
①一人暮らし
②親/親族と同居
③不明
④その他
で分類しました。大学生以上41人の調査結果は以下の通り。

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大学生以上となると一人暮らしが過半数を占めました。22/41の割合です。
一人暮らしの大学生の例としては「Campus Notes vol.2」「もよりの駅子さん」「クリスマス*フラワー」などが挙げられます。ちなみにクリスマス*フラワーについては作内では一人暮らしであることが確定しませんが、この作品が「私は今日ここで死にます。」(恋愛ゲームではないと判断してカウントに入れていません)の前日談であることを踏まえるとさすがに一人暮らしでなければ不自然になります。
ゆめいろの空へ」では物語開始時点では一人暮らしですが、すぐにヒロイン(天使)と同居することになります。一応一人暮らしにカウントしています。
社会人で一人暮らしの例としては、「ごがつのそら。」「世界で一番悲しい笑顔」「いちごみるくとあそぼうよ(15禁)」などが挙げられます。


家族と同居していたのは7人。
マッチングアプリで出会い厨してみた」「ふゆあかり(18禁)」などが該当。この2作は親と同居していますが、「お兄ちゃんの世話を焼くのは妹の特権です」では妹と同居。「世界線ハーレムの未来革命」では親と同居しているものの親は海外出張中のため実質一人暮らし。
臨界天のアズラーイール(前半)」は(物語開始からしばらくの間のみですが)唯一社会人で親と暮らしています。

不明が9人。
ギワク★ラヴァーズ」の2人、「メイドさんと繋がりたい」などが該当します。

その他は3人。
奥様は惨殺少女」では中学生の妻・・・・・と同居。
完全バッドエンド(15推)」ではエンディングによって変わるなど分類不能。
処女失格(18禁)」ではそもそも主人公が人形で、同居している”ごかくさん”との関係も(少なくとも物語前半では)不明です。


……ふぅ、ここまで調べ上げるのめちゃくちゃ疲れました。でもやっぱり気になったことは最後まで調べたい!


結論

恋愛ゲーム主人公の中高生のうち、親が仕事でほとんど帰ってこないのは1割。一人暮らしは1割弱
確かに親に存在感がある作品は少ないが、海外出張がお約束と言えるほど高い割合ではなかった。

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