フリーゲームの森

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2022年09月

こんにちは。今回はしゅんてさん・青木ととさんによるパズルゲーム「Squirrel Board」のレビューをします。リンク先で即プレイ可能なブラウザゲームです。音量注意。
記事後半に攻略情報あります。

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ジャンル:ボードゲーム
プレイ時間:1プレイ3分程度
ツール:Unity(ブラウザゲーム)
リリース:2022/9


今回の作品はたまたまTwitterで流れてきて知りました。サクッとプレイできそうだったのでちょっとやってみるか~と思ってリンク先に飛んでみると、想定以上の楽しさでした。



本作のルールは難しくありません。主人公のリスは冬に備えるため、盤面上の木になっているどんぐりを回収していきます。1ターンの間に動けるマスはサイコロを振って決められます。初期状態では4が出れば4マス、6が出れば6マス進めます。どんぐりは木の生えているところに4ターンごとに再び落ちてきます。
そうして盤面を移動していくとパワーを使います。1ターンごとにげんきが1減少し、0の時に帰宅できないと今貯めていたどんぐりを全ロストしてしまいます。げんきの残りに気を配って、欲張りすぎずに家に帰りましょう。

またターンの間には今ほおぶくろにしまっているどんぐりを食べることができます。種類によって食べることで特殊効果を発揮するものがあるのと、次に述べるスピードを上げるために身軽にする効果があります。

そしてもう一つ重要な概念がスピードです。リスくんはどんぐりを回収していくたびにその重さのためにスピードが低下します。1個回収するたびにスピードは0.1低下し、これは動けるマスの範囲に影響してきます。1ターンで動けるマスは((スピードの基礎値) - (今もっているどんぐりの数) ÷ 10) × (サイコロの目)で表されます。この仕様のため、げんきが余っているからと言って1周で欲張ってたくさん回収しようとすると、スピードが低下して身動きが不自由になってしまいます。やはり定期的に家に帰って蓄えたどんぐりをしまっておき、体の方は身軽にしましょう。

スピードの基礎値は特殊効果のあるどんぐりを食べる、または一定数のどんぐりを蓄えたときのレベルアップボーナスによって上げることができます。これが大きくなると1ターンでマップの端まで移動できたりして行動範囲は広がります。

30ターン経過で冬がやってきます。それまでにできるだけたくさんのどんぐりを回収し、家に蓄えておきましょう。どんぐりのレア度に応じて点数が加算されます。文章で説明するとややこしいですが、チュートリアルが丁寧なのでルールの理解は難しくないでしょう。チュートリアルのスキップはQキーで可能です。

1つ操作性の上での要望があって、マウスのみorキーボードのみで操作が完結するようにしてほしかったです。現状でも右手でマウス、左手でwasdキーでスムーズに操作することはできますが、若干違和感が。マウス移動なども実装されたら片手でも遊べますしね。


さて、ルールを理解したところでプレイしていきましょう。
私の初回プレイは40~50点くらいでした。終了後の評価では、まあちょっと少なめだけど冬を越すのに問題はないかな~みたいな意味のコメントがあったような記憶があります。
しかしやり込んでいくうちにどんどん点数を伸ばせて達成感がありました。運要素が大きい本作、射幸性をあおるのも成功してますね。しかし運だけでは点数にも限界があります。ある程度のセオリーはしっかり押さえた状態で運のいい配置・出目を待つ必要があります。
その後数時間やり込んだところ、昨日なんと614点というハイスコアを達成しランキング1位を獲ったので、攻略情報についても記しておきたいと思います。自力で頑張るという方はここでブラウザバックでお願いします! 見る方は画面下スクロールで!

(10/3追記:現在の記録は1715点です。ついに4桁の大台を突破。9/19にゲームが更新され、リセットボタンなど再チャレンジしやすい環境が整ったためハイスコアチャレンジもより効率的にできるようになりました)
squirrel boardランキング1位


















チュートリアルで明らかにされない仕様について


どんぐりの種類と特殊効果・得点

本作では5種類のどんぐりが出現します。レア度の低いものから順に
  • 茶色…1点。食べても特殊効果なし
  • 水色…2点。食べるとげんきを1回復
  • 緑色…3点。食べるとスピード0.1上昇
  • 赤色…4点。食べるとスピード0.2上昇
  • 虹色…5点。食べると制限時間を2ターン延長
となっています。

おうちレベルアップ時のボーナス


一定のどんぐりを集めるとボーナスがもらえる。拾ったタイミングではなく、家に備蓄したタイミングでカウント。必要などんぐりの数は以下(レア度は問わない。多少のずれはあるかも)。Lv2,4になるタイミングで盤面が1段階広くなる。
  • Lv1→2…3個
  • Lv2→3…8個
  • Lv3→4…16個
  • Lv4→5…26個
  • Lv5→6(MAX)…41個

ボーナスは以下のうち3つの選択肢が出現。1つだけ選べる。ただし同じグループから複数の選択肢は同時に登場しない。
  • スピードアップ系
    • 駆け足…ベース値0.1アップ
    • 俊足…ベース値0.2アップ
    • 電光石火…ベース値0.3アップ
  • 最大げんきアップ系
    • 元気もりもり…最大げんき1アップ
    • 頑強…最大げんき2アップ
  • マップ強化系
    • 芽吹く木々…マップに木を2本追加
    • 自然豊か…マップに木を3本追加
  • 時空の超越…制限時間3ターン延長
  • 頑丈ほっぺ…1度だけげんき0になった時のアイテムロストを無効に
  • 恵みの雨…すべての木にどんぐりが即時になる

30ターン経過後の行動について

冬が到来し、それ以上木にどんぐりがならなくなる。すでになっているものを回収するのは可。
一度おうちに帰るとそこでゲーム終了になる。にじどんぐりの時間巻き戻し効果も無効。おとなしく持ち帰って5点にしよう。

なるどんぐりのレア度について

明らかに家からの距離が遠い木ほどレア度の高いどんぐりがなる確率が高い。Lv3以下の盤面だと赤・虹どんぐりはほとんど期待できない。
Lv4以降の盤面の右下・左下のマスに木が生えれば7~8割くらいの確率で虹、そうでなくても赤どんぐりがなるので非常に有利。

移動できるマス数の計算

前述のとおり
(ベース値 - ほおぶくろにあるどんぐりの数÷10) × サイコロの出目
で計算できる。小数点以下は四捨五入。サイコロの出目は4~6で均等だと思われる。

具体的な戦略について

最初の2~3ターンのうちにLv2に上げる。2ターンでできるのが理想。ボーナスはげんきアップ系を選ぶ。これ以降げんきアップ系のボーナスは必要ない(それを選ぶよりもスピードアップの方が恩恵が大きい)。
序盤のうちはスピードが低くどんぐりの重さの影響を受けやすい。目標とするどんぐりを定め、それ以外のどんぐりを避けながら進み、家に帰る途中で行きに避けてきたどんぐりを回収できると理想的。
Lv4に上がるまではレベルアップを優先したい。遠くの水どんぐりを回収するより近くの茶どんぐりをたくさん回収して備蓄しレベルアップしよう。緑は効果が大きいので回収に行って良い。レベルアップボーナスはスピードアップ系かマップ強化系。マップ強化系で新たに生えた木が家から遠いと前述の仕様によりレアなどんぐりができやすく有利。ここは完全に運。

Lv4以降はなるべく家から遠くの赤・虹どんぐりを真っ先に回収してその場で即食べることを繰り返す。4ターンごとになるのでなったターンですぐに採取するのが理想。スピードは2.5~3.0くらいまで上げたら十分なのであとは食べずに備蓄に回す。虹どんぐりはなるべく食べる。この時他の必要ないどんぐりを食べなくていいように回収順に気を付ける。どんぐりがなるまであと1ターンのマスに止まると、その瞬間にどんぐりがなって問答無用で回収してしまうので次に虹・赤を回収するつもりの場合は気を付ける。
ボーナスは時空の超越(3ターン延長)か自然豊か(木が3本生える)を選びたい。特に遠くに木が生えた状態でなるべく長くターンを回すのがハイスコアへの王道。右下、左下の両方のマスに木が生えているような状態では高確率で4ターンで2個の虹どんぐりを回収でき、実質ターン経過しないような状態を作り出すことができる。

squirrel board途中経過
↑私が600点overの記録を出したときの盤面です。虹どんぐり出現の可能性の高いところに木が3本も生えているので時間制限を延長しまくります。


相当な幸運だったと思うので、この記録はなかなか破られないんじゃないでしょうか。
ランキング抜いたぜって方はぜひ教えてください。それでは。

こんにちは。今回は禁飼育さんの「スレガル」のご紹介です。

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ジャンル:ファンタジー乙女ゲーム
プレイ時間:4時間
分岐:フリー版はなし(後述)
ツール:NScripter
リリース:2016/7(フリー版)
注意:18禁、(性)暴力、流血、非倫理的描写あり



はい、半年以上ぶりの18禁作品です。1月にご紹介した「そしてパンになる」(18禁)以来ですね。「そしてパンになる」では、終盤衝撃の展開があるとはいえ普通の学園生活を送る普通のギャルゲーで、ヒロインと十分親密になってからエッチなシーンがあります。純愛ものですね。
しかし本作「スレガル」では全く違う展開を覚悟しなくてはなりません。以前紹介した「私の名前を呼びなさい!」(15推)に近い方向性の覚悟です。つまり本作においても主人公は大変に酷い、理不尽な、凄惨と言える展開に見舞われます。本作ではそれに加え、性的暴行があります。セクハラなんてもんじゃありません。そういった展開に拒否感を覚える方は絶対にプレイしないでください。
そして本作の怖いところは、それ以外の所にも。むしろほかの所の方がきついとさえ感じられました。この辺のことは後で詳しく述べます。




それでは本作の内容を紹介していきましょう。
主人公コノリ・モチヅキは魔法使いになることを夢見て魔法学園の回復魔法専攻科に通う女子生徒。日本風の名前ですが、本作の舞台はヨーロッパ風(おそらくドイツ)です。かつて交通事故に遭って亡くなってしまった両親のような人を一人でも助けるべく回復魔法の習得に努めていますが、学園での成績は最下位レベル。回復科教員のジドノ先生には卒業すら危ういと言われてしまう始末。そこでジドノ先生に1か月間特訓をしてもらうことになります。落ちこぼれのコノリにも優しく適切に教えてくれるジドノ先生。勉強の甲斐もあり試験での成績も向上。次第にジドノ先生へ好意を持つようになるコノリであったが……

といったところでしょう。この、コノリがジドノ先生のことを好きになっていく過程。この描写は文句なく純愛乙女ゲーなんですよね。まあ生徒とそこそこ歳いってると思われる教師の関係というところから普通ではないんですが、お互いを思いやる気持ちとか喜んでもらいたいという気持ちとか、そういうのはしっかり感じられます。
主人公はだいぶアホの子なのでギャグ路線多めですが、落ちこぼれの自分に優しく教えてくれ、成功体験をくれた、クラスメートに妙なからかい方をされたときにちゃんとかばってくれた、意外にも甘いものが好きで、ドーナツの話で盛り上がれる……となると、ジドノ先生に惹かれていく描写に説得力があります。

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そんな中でクリスマスの休暇中に普段過ごしている寮から実家に帰省することになったコノリ。しかし駅で電車を待っているところ突然の体調不良によって倒れて意識を失ってしまいます。彼女を学校まで運び様子を見ていてくれたのは学園の校長先生。彼もまた常に仮面を着用していたりと変わった人物ですが優しそう。
友人のキドと妖精たちが帰省ができなくなったコノリを気遣って、数日遅れでクリスマスパーティーを開いてくれたりと彼女の周りにはやさしさがあふれており、体調の方も問題なく回復します。しかしこのあたりから物語は不穏な雰囲気を増していくのです。


たびたび突発的な体の痛みを感じるようになるコノリ。そして校長先生は、「ジドノはやめておけ」と言ってくる。悪い人には見えないけれど……。
そして事件は起こります。体調が悪くジドノ先生の部屋で休んでいたコノリ。しかしトイレに行くために部屋を出たとき、何かをたたきつけるような謎の音が聞こえてきます。妖精さんにそそのかされて様子を見に行くと、蛇のような謎の生物に襲われてしまいます。

ジドノ先生はそんな場面に駆け付け、コノリと妖精を助けてくれます。部屋から出るなという言いつけを守らなかったうえに先生に助けてもらったという負い目から、今後は先生のいうことに従おうと誓うコノリ。しかしその後、ジドノ先生は蛇にかまれた部分の診察と治療を行うと言います。気付けば接触呪術による痣がコノリの全身に広がっています。恥ずかしいのを我慢して先生に診断と治療を任せることにするのですが、、、、、

私はこのあたりで察します。ああ、ついに禁飼育作品特有のきつい18禁シーンが来るなと。このサークルさんの年齢制限のある作品は「おじさん(15禁版)」「処女失格」(18禁)の2作しか読んでいない私ですが、どちらも非常にショッキングな展開を含むし、男は実は言いようもない悪人であるというパターンは完全に学習済みです。
果たしてその後の治療シーンは私の想像通りでした。治療、解呪と言いながら描写はいやらしく、コノリは恥ずかしさに何とか耐えながらジドノ先生の思うままに身を任せています。
「なんだろう、先生は私を助けてくれている筈なのに、どこか違う、何かちがうのだ。」
とコノリ自身感じつつ、先生のことを心から信用しているからこそ、真面目な除去魔法でえっちな気分になっている自分に嫌悪を覚えます。

おかしいと思いつつも受け入れてしまう。あまつさえ悪いのは自分だと暗示をかけてしまう。これは恋は盲目ってやつでしょうか。それとも、ジドノがあまりに狡猾で、邪悪で、対するコノリが純粋すぎるからでしょうか。



……しかし本作を読了した今から思えば、この時はまだ”幸せな物語”だったのです。ジドノ先生がコノリに借りていたハンカチと、黒猫のぬいぐるみを返したとき、物語は急展開を迎えます。
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以降、さらに輪をかけて胸糞悪く、そして凄惨な展開と、核心に関わるネタバレがあります。一度折りたたみますので、かまわないよという方はクリックして読んでください。
クリックで展開 ここまで読み進めると、現在の物語は暗い影を残した状態で終了となりタイトル画面に戻されます。再度Startボタンをクリックすると、章選択が可能となっています。いかにもな赤字で示されたタイトル"バウルサク"を選択すると、時間をさかのぼってコノリがまだ幼かったころ、魔法にも出会う前の両親と暮らしていたころの物語が始まります。

そこでは、かつて平和に暮らしていた思い出、そして家族で遊園地に遊びに行った帰りに両親が交通事故で亡くなってしまったことなどが語られます。
身寄りをなくしたコノリ。親がいなければ訴える者もいないという自分勝手な考えを持った奴隷商人に誘拐されてしまいます。他の誘拐被害者とともに商品として見世物にされ続ける毎日。そんなコノリに目を付けたのがジドノだったのです。年端もいかないコノリに対して容赦ない性的暴力を振るうだけでなく、助けなんてこないんだ、周りの人間なんて誰も自分のことを気にとめたりしてくれないんだというトラウマを同時に植え付けます。

明日にはコノリを奴隷として買い取ることを契約したジドノ。コノリたち子供はその夜のうちに監禁されていた檻からの脱走を敢行します。
ここまで読んでようやく私は気付きました。タイトルの"スレガル"はslave girl、奴隷の少女を意味しているのだと。
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生意気な様子のコノリを気に入ったジドノは脱走されたからと言ってあきらめたりはしません。魔法を使って脱走した子供たちの居場所を突き止めてしまいます。そしてあっさりと脱走を先導した少年とコノリの目の前にたどり着き、そして少年の脱走行為の効果を完全に否定し、彼を発狂させてしまいます。
そう、物理的な暴力、性的な暴力のみならず言葉の暴力も半端ではありません。この凶悪さ、救われなさが禁飼育作品の真骨頂と言っていいんじゃないでしょうか。

そして時は現在に戻り、コノリはぬいぐるみのマートをトリガーにしてすべての記憶を取り戻します。かつて奴隷市場で自分を買い、犯し、自らのよりどころでもあったマートを無情にも奪い取って絶望させたジドノに、あろうことか恋してしまった。もう私にはコノリの気持ちを想像できません。こんなに不条理で、理不尽で、自身の何もかもを否定されるような壮絶な体験が他にあるでしょうか。


そんな言葉で言い表せないほど惨い人物ジドノですが、より高度な魔法使いである校長先生にはかなわないらしい。ついに年貢の納め時がやってきます。
ところが彼はいつ何時でも冷酷で執念深く、そして狡猾なのでした。物語は全く救われない方向で結末を迎えてしまいます。



私は本作を読了し、もう怒りに震えることしかできませんでした。ここまで負の感情のエネルギーを活用した作品にはなかなか巡り合えるものじゃありません。強烈でした…。


…と、ここまでは”フリー版”のお話。フリー版をプレイし終えた私は”おにロリver”にハッピーエンドがあると聞いて救いを求めるように購入しました。DLsiteにて販売中です。フリー版の内容も含んだうえで、コノリが脱走する前にジドノと暮らすことになったifバージョンへの分岐が追加されています。プレイ時間はフリー版含めて7時間くらいでしょうか。

フリーゲームではないのでここでは軽く感想を述べる程度にとどめます。
確かに完全にダークなエンディングだったフリー版に比べると相当マイルドかつ感動的展開となっています。しかしジドノが成敗されるエンディングはないのでそれを求めている方は残念ながらすっきりはしません。それをのぞけばおにロリverではほとんどの人がフリー版よりも幸せな結末を得ることができます。コノリとジドノが長い間を一緒に過ごす描写があるので、信頼関係を持つようになる理由もしっかりあります。
フリー版をプレイして興味が出たらぜひ購入してみてください。


今回は広く勧めるには全く向かない作品ですが、その分独特の魅力というか中毒性があります。禁飼育作品っていつもこうなんだよなあ。1作読んだらしばらくはお腹いっぱいになるんですが、そのうちまたプレイしたくなってきます。
18歳以上で注意書きの内容に同意できるという方はプレイしてみてください。あなたの脳裏に強烈に焼き付くことは間違いありません。

それでは。

こんにちは。今回のレビューはゆきはなさんの「虚ろ町ののばら」です。

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ジャンル:異界探索ホラーゲーム(ReadMeより引用)
プレイ時間:1周3時間/フルコンプまで6時間程度
分岐:ED4種、その他ゲームオーバーあり
ツール:RPGツクール
リリース:2018/10
備考:12推


本作は和と洋の雰囲気の混ざった不思議な異世界からの帰還を描いた作品です。
主人公の境のばらはおばあちゃん大好きな少女。今日もおばあちゃんに会いに行くためにバス停でバスを待っていたのですが……気付いたらバスは壊れているし異常に汚いし、人の形をした亡霊のようなものが出口をふさいでいる始末。この不気味な世界”虚ろ町”で出会った少年、守崎十夜(もりさき・とおや)とともに元の世界への帰還を目指します。


この作品の魅力の1つはそう、圧倒的なビジュアルです。スクリーンショットを見ていただければお分かりでしょう。スチル・立ち絵のみにとどまらず、背景、マップやUI部品に至るまでかわいいというよりは美しいと言える作りこみ。もう何枚かスクリーンショットを貼るのでその美しさを味わってください。
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やっぱり見た目がきれいだと、ゲームを進める原動力にもなりますし、こうして魅力もお伝えしやすいですね。ホラーゲームである以上美しい景色だけでなく、抜け落ちた床や積みあがったゴミ、さびた電車なども登場しますが、それらも単に気持ち悪いだけでなく、どこか綺麗に描かれているのがすごいところです。


さて、それではシナリオの話に入りましょう。
のばらたちが虚ろ町で出会った影のような生物たちはみな、何かに執着している様子。彼らの様子を観察したり、話の通じる者たちにたずねたりしているうちに、どうやらこの”虚ろ町”は現世に心残りのある死者たちのさまよう、彼岸と此岸の境目にある町らしいことが分かってきます。この町を治める”虚ろ様”の所に行って、何とか現世に帰れないかと助けを請うのばらと十夜。
子守唄をねだる子供たちの霊を鎮めるなどの役目をこなして現世への帰り道を教えてもらった2人だったが、虚ろ様によればのばらが無事に帰れるかどうかは微妙なところだという。その原因は現世でののばらの境遇と本人の性格にあった…。

プレイ時間の短くない本作ですが、綺麗なマップを探索していると自然とストーリーが進んで頭に入っていき、長さを感じさせません。そして虚ろ町の探索をする合間に、のばらが現世へと帰れるかの鍵となる過去回想がはいるのが上手いところです。そしてこの過去回想がねぇ、切ないんですよ。「しっかりなんて……できないよ!!」本当にその通りです。本人の性格もあるとはいえ小学生にはつらい境遇でしょう。
その分、ED4での十夜との再会と帰還、そして現世で一歩踏み出したラストシーンは感慨深いものになっているでしょう。


物語冒頭で説明される通り、本作にはいくつかのエンディングがあり、青と赤のエフェクトの数が重要になってきます。虚ろ町の住人に寄り添ってその心残りを解消してあげれば物語はいい方向へ。最低限の探索でストーリーを進めたり、住人を傷つければ悪い方向へ進みます。しかしED3やED4を見るためにはそれに加えて特定のイベントをこなしてフラグを立てねばならず、難易度は高いです。というか初見で(特にED4)到達は無理でしょう。これは、まずはバッドエンドを見て欲しいという作者さんの意向なんじゃないかと勘ぐってしまいます。実際、私も先にED1や2を見ていたからこそのばらちゃんの成長に感動できたところがある気がします。
バッドエンドを見たときには悔しい、歯がゆい思いをすると思いますが、その分気持ちの良いハッピーエンドもありますので、ぜひ安心してプレイしてください。

そうそう、攻略情報についてはおまけルーム内や同梱テキストファイルに細かく記載されているので、詰まってしまう心配もありません。親切ですね。


では一応気になった点も書いておきましょう。
1つはコメディ要素が微妙かなという点です。不気味な街の探索だったり、現世の出来事を受け止めたりと基本的にはシリアスなシーンが続く本作ですが、たまに軽い感じのギャグっぽい展開があったりします。のばらと十夜の交流や距離感を描くという意味では良いのかなという気はしつつ、突然そのBGMでギャグ始まったらホラーの雰囲気ぶっ飛んじゃわない? と思う回数の方が私は多かったです。ホラー色の薄い街でのイベント(楽譜が挟まった本のタイトルとか)ならあまり気にならないんですけどね。

もう一つ、本作の操作はマウスを前提にしているとのことですが、ツクールMVのマウスでのマップ移動って使いにくいと思うんですよね……。特に終盤の影をかわしながら進む場面などでは、マウス操作では移動経路が指定できないのが致命的。結局私はセーブ・ロード以外はほぼすべてキーボード操作でプレイしました。


さて、本作のキャラクターには一部ボイスがついています。フルボイスではなく、キャラクターへの呼びかけとか、感嘆詞とか、一部の台詞をしゃべるだけですがキャラクターのイメージに合っていてちょうどいいんじゃないかなと思います。全部に声がついていると聞くのに時間がかかってテンポが悪くなるという面もありますからね。
ちなみにおまけ部屋から何でも許せる方用と称したギャグ一直線のおまけシナリオを見ることができます。私はこのおまけシナリオ冒頭の
「良い子のみんな~~!  本編、はじまるよ~~~~!」
の声を聞いて、脳内には瞬時に「その恋、保留につき、」シリーズの姪浜さんが浮かんでしまいました。のばらと同じ声優さんだったのね…。本編中で思い浮かぶこと全然なかったのに…。そのくらい本編と違った温度感になっていますので、バッドエンドで気が滅入ったぜ、という方はぜひやってみてください。POPOさんがコメディ極振りで作品作ったらこんな感じになりそう。

それでは。

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