こんにちは。もうハロウィンは1か月前に終わってしまったので若干時期遅れな気もしますが、今回は灰色さんの「10月32日のハロウィン」のご紹介となります。ちなみにタイトルのわりにハロウィン要素は薄めとなっています。

ジャンル:シリアス系ファンタジーノベルゲーム
プレイ時間:20分程度
分岐:なし
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2019/2
まずは本作のあらすじを軽くご紹介しましょう。
主人公は独特な喋り方をするキュルビスという子供。記憶を失い迷い込んだ”タマシイ”に過去の行いを思い出させ、”テンゴク”か”ジゴク”に送り届けるのが仕事です。いつも通り魂の記憶に触れると、なぜかこれまでに感じたことのないほど自分の感情に動きが現れたのです。魂の正体とは、キュルビスの行う仕事の意味とは…?
本作の文章は3人称視点で紡がれ、キュルビスだったり魂たちだったりの心情が本人から直接描写されることがありません。ノベルゲームではやや珍しいかなと思いますが、本作のシナリオに施された仕掛けにピッタリの表現方法になっていると思います。キュルビスはどうも感情が自由そうな感じがしません。果たしてそれはどういった由来があるのか、人間らしい感情はあるのか。こういった謎が不自然に感じない範囲で主張してきます。
さて、話を読み進めていきましょう。
少し進めば、魂の持つ記憶が悲しいものであることが分かってきます。最初は微笑ましく見えたやり取りも、ここまでくると害悪としか言いようがありません。生前の彼女は弱すぎました。そして相手は傲慢でした。

キュルビスが魂の記憶を開放していくお話のため、シナリオのメインは魂だけとなった彼女がどんな過去を過ごしたかという内容なのかと思っていました。しかし話が進むにつれ、この物語は自然にキュルビスと魂のお話になっていきます。ここが面白かったですね。
しかしだからと言って幸せな方向に進むわけではありません。この物語に救いのある結末は結局最後まで提示されずに終わってしまいます。それでも私は美しいなと感じました。こんな悲しい家族愛があるかと。キュルビスが、あるいは魂が、もう少し強かったら、もう少し知恵を持っていたら、と思わずにはいられません。
本編を読み終わると、男の視点からの話を読むことができます。これはかなりひどい内容ですのでそれなりの覚悟を持って読んだ方が良いかもしれません。
さて、本作の雰囲気を演出するうえで、ビジュアル面での出来も良かったなと感じました。
ファンタジックな街並みやキュルビスの様子は明るく。回想シーンにおける線画では悲しい感情が自然に湧き出る書き方。あるいは背景にうっすらと描かれた植物もいい雰囲気を出しています。
逆に少し気になったのが動作の安定性です。BGMがループ時にぶちっと切れたり、クリア後のタイトル画面の挙動(数秒後に画面が変わる)などはあまりプレイヤーに優しくないように感じます。しかし本作は短編ですから、プレイに支障があるという感じでもないでしょう。
今回は短めですがここまでとなります。
劇的な展開の話ばかりだと疲れますし、”いい話”なタイプを続けて読んでいても飽きるので、本作のようなほんのりとダークなお話を楽しんでみてはいかがでしょう。

ジャンル:シリアス系ファンタジーノベルゲーム
プレイ時間:20分程度
分岐:なし
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2019/2
まずは本作のあらすじを軽くご紹介しましょう。
主人公は独特な喋り方をするキュルビスという子供。記憶を失い迷い込んだ”タマシイ”に過去の行いを思い出させ、”テンゴク”か”ジゴク”に送り届けるのが仕事です。いつも通り魂の記憶に触れると、なぜかこれまでに感じたことのないほど自分の感情に動きが現れたのです。魂の正体とは、キュルビスの行う仕事の意味とは…?
本作の文章は3人称視点で紡がれ、キュルビスだったり魂たちだったりの心情が本人から直接描写されることがありません。ノベルゲームではやや珍しいかなと思いますが、本作のシナリオに施された仕掛けにピッタリの表現方法になっていると思います。キュルビスはどうも感情が自由そうな感じがしません。果たしてそれはどういった由来があるのか、人間らしい感情はあるのか。こういった謎が不自然に感じない範囲で主張してきます。
さて、話を読み進めていきましょう。
少し進めば、魂の持つ記憶が悲しいものであることが分かってきます。最初は微笑ましく見えたやり取りも、ここまでくると害悪としか言いようがありません。生前の彼女は弱すぎました。そして相手は傲慢でした。

キュルビスが魂の記憶を開放していくお話のため、シナリオのメインは魂だけとなった彼女がどんな過去を過ごしたかという内容なのかと思っていました。しかし話が進むにつれ、この物語は自然にキュルビスと魂のお話になっていきます。ここが面白かったですね。
しかしだからと言って幸せな方向に進むわけではありません。この物語に救いのある結末は結局最後まで提示されずに終わってしまいます。それでも私は美しいなと感じました。こんな悲しい家族愛があるかと。キュルビスが、あるいは魂が、もう少し強かったら、もう少し知恵を持っていたら、と思わずにはいられません。
本編を読み終わると、男の視点からの話を読むことができます。これはかなりひどい内容ですのでそれなりの覚悟を持って読んだ方が良いかもしれません。
さて、本作の雰囲気を演出するうえで、ビジュアル面での出来も良かったなと感じました。
ファンタジックな街並みやキュルビスの様子は明るく。回想シーンにおける線画では悲しい感情が自然に湧き出る書き方。あるいは背景にうっすらと描かれた植物もいい雰囲気を出しています。
逆に少し気になったのが動作の安定性です。BGMがループ時にぶちっと切れたり、クリア後のタイトル画面の挙動(数秒後に画面が変わる)などはあまりプレイヤーに優しくないように感じます。しかし本作は短編ですから、プレイに支障があるという感じでもないでしょう。
今回は短めですがここまでとなります。
劇的な展開の話ばかりだと疲れますし、”いい話”なタイプを続けて読んでいても飽きるので、本作のようなほんのりとダークなお話を楽しんでみてはいかがでしょう。