フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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2022年12月

こんにちは。今回は★Blue Cometさんの「カルマの願い箱」のレビューです。

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★favo
ジャンル:現代ファンタジーノベル
プレイ時間:コンプまで1時間半~2時間程度
分岐:ED6種
ツール:NScripter
リリース:2022/12

はい、crAsM.Mビジュアルノベルオンリーの記事でちょっとだけ触れた作品です。レビューの形でちゃんと扱っておきたいと思います。
いつも通りあらすじを簡単に紹介するとこんな感じ。

主人公の如月零音(きさらぎ・れいん)は音楽一家の長男で高校2年生。ピアノの天才と言われコンクールの優勝歴もありますが、フルート奏者だった父の影響もあり高校では吹奏楽部に所属。「親友」の日向晴夫(ひゅうが・はるお)とともに楽しい学校生活を送りながら、夜にはピアノの練習に励んでいます。
ある日零音が帰宅中に迷い込んだ不思議な街で、謎の人物ミレーから”3つの願いが叶う”というアンティークな箱を受け取ります。そんな怪しい力に頼ることはないと箱をしまい込むが、目の前で晴夫が車にはねられるのを目撃した零音は箱に願いをかける。願いはどのような形で叶うのか。その代償は何だったのか。彼らがまた笑顔で音楽に取り組むことはできるのか…


まず主人公の名前が変わっていますよね。零音と書いてれいんと読む。英語で雨を意味するこのネーミングは、彼が生まれたときに雨が降っていたことも由来の1つだそうです。雨を好む零音はなぜ雨が好きになったのか。その答えは彼がピアノの才能を持ち合わせていたことにありました。

幼いころからピアニストとしての才能をあらわにしていた彼は、周囲の”普通の子供”と一緒に遊ぶことができなかったのです。万一転んで手にけがをさせたら困る、と周りの子供たちも遊びに誘うのを遠慮してしまいます。悲しいのはそれが本人の希望と一致していなかったことです。彼は自分のことをピアニストとして見られてしまうのがあまり好きではなかった。一人の人間として友達と遊んだり漫画を読んだりしたかった。しかしそれが叶わなかった彼は、周りで遊ぶ子供たちの声が聞こえない雨の日が好きなのでした。

以前紹介した「夏ゆめ彼方」も主人公朝川桂一は才能ある少年でした。彼の場合は将棋でしたが、将来を期待される天才だったという点では一緒です。しかし桂一と零音では才能に対する考え方は真逆でした。周りとは違うんだ、自分は選ばれし人間なんだという意識の強かった桂一に対し、周りと一緒に遊びたかった零音。結果的に彼らの考え方は違ってもどちらもそれに至る思考の過程が描かれるので、読んでいて物語をスッと受け入れやすいんですね。

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そんな主人公零音は高校に入って初めて自分をピアノの天才という色眼鏡を通さずに見てくれる人物、晴夫に出会います。ようやく自分という人間を見てくれる人物と出会えた彼は本当にうれしそうですし、彼らの交流は私の心も軽くしてくれました。雨と晴れのように対比が効いた性格なのも分かりやすいですね。


さて、ここまでは物語の前提であって、本作のストーリーはミレーから願い箱をもらうところからが本編です。最初ははなから信じてもいないし使うつもりもなかった零音ですが、晴夫が交通事故に遭うのを目撃しては箱を使わないわけにはいきません。ここでどんな願いをかけるかで物語は分岐していくわけです。

しかしこんな怪しい箱が簡単に思い通りに願いをかなえてくれるわけはありません。確かに願った通りではあるけれどもそういう事じゃない。零音はままならなさに悩んでいくことになります。
晴夫のために苦悩している姿がきちんと描かれるので、プレイヤーである私も頑張って良い結末を目指そう! と思えるような内容でした。


零音の人間関係は晴夫だけではありません。吹奏楽部の仲間であったり、クラスメイトであったりも登場して零音と晴夫に影響していくことになります。交通事故についてひと段落した後は今度は人間関係に悩まされるようになるのです。うっすらBLの匂いも。
しかし常に天才という目で見られており対等なコミュニケーションの経験に乏しい零音は少し感覚がずれているんですよね。対する晴夫が良い人過ぎて一時は見てられないくらいの状態になりますが、真ルートでのこの解決の仕方がよかった。脇役のセツナちゃんもいい人過ぎて泣けます(彼女はそれ以外のルートでは別にいい人って感じでもないんですが、晴夫は常に聖人のようです)。周囲に恵まれた零音は幸せですね。
ただ恋愛がらみについては唐突な印象が拭えないですね。このままでも不自然とは言いませんが、物語前半で何か予兆みたいなものがあると嬉しいかなと思いました。

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もう一人主要人物として、雪村奏(ゆきむら・かなで)がいます。彼は零音が優勝したピアノコンクールで2位だったライバル。高校で吹奏楽部に入ってフルートを吹いたりしている零音に対して「ピアノはどうしたんだよ」というような態度をとります。この件については願い箱とあまり関わりがないというか、他の問題と断絶されている感じを受けました。とはいえ真ルートでのあのまとめ方は綺麗だったのでこれはこれでありだと感じました。ここでも晴夫の活躍ぶりがすごかった!(サブストーリー5を読んでいると奏の反省も理解できると思います)

シナリオに関してもう一つ気になったのは、結局願いを3つ叶えたときに起きる”何か”がはっきりしていないかなという点です。


さて、本作は音楽がテーマになっていることもあり、ショパンのピアノ曲がBGMとして使われています。零音のテーマともいえるのが名前ともかかわる「雨だれのプレリュード Op.28-15」で、本編開始後すぐに耳にすることでしょう。その直後には「ワルツイ短調(遺作)」。実はこの曲は私が初めて弾いたショパンの曲で個人的な思い入れもあって嬉しかったです。同じく使用されている「木枯らしのエチュード」「別れの曲」などより知名度が低い曲なので、よくこの曲の素材あったな~などと謎の感心をしていました。これらの曲を含め使用されているBGMはおまけから聞くことができます。「木枯らし」は本編内で使用されているときは冒頭がカットされていますが、おまけ内では通して聴けます。



本作のシステムはやや変わっています。通常のノベルゲームのように任意の場所でセーブ、ロードすることができません。代わりにシナリオが細かく章に分かれていて、章ごとにプレイできる形になっています。以前紹介した作品でいうと「RADIANT*SIGN」に似ています。しかし一本道だったRADIANT*SIGNと違い本作は選択肢も複数あり分岐も複雑です。正直このシステムは分岐がないか、あるにしても単純なものにしか向かないんじゃないかと疑問でした。選んだ選択肢によって2つに分岐する程度ならともかく、複数の選択肢の組み合わせで分岐したり、あるいは合流したりといった仕掛けはかなりやりにくいと思います。しかし本作は入念にデバッグされておりかつ章区切りも計算されているらしく、繋がりがおかしいと感じられるようなことはありませんでした。さらに新章解放時のエフェクトなども凝っています。なぜ開発の手間もかかるだろうにこのシステムを採用したのか考えるに、私が思ったのはサブストーリーの演出効果でした。本作は本編を読み進めるうちにサブストーリーも解放されていきます。おおよそ時系列順に解放されるため、メインストーリーを進めつつサブストーリーは解放され次第読んでいくというプレイスタイルが本作を味わうのにちょうどいいのかなと感じます。そのため区切りの多いこのシステムを採用し、メインストーリーとサブストーリーを往復させようという狙いだったのではないでしょうか。確かにサブストーリーの内容を全部本編に組み込んで自然に分岐させるのはかなり難しいように思えるので、なるほど効果的かもしれないと思いました。


もう一つ作者さんの本作にかける執念のようなものを感じた話をしましょう。
私がおまけ内の登場人物紹介を読んでいた時です。そこでちょっと私の常識にはなかった文を目にします。

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「※本編には登場していません」
だと?!


登場してない人物を紹介する必要があるのか???
crAsM.Mビジュアルノベルオンリーで作者の深嶺ユミアさんと話す機会があったので直接聞いてみました。すると非常に筋の通った答えが返ってきてびっくり。

本編で零音たち吹奏楽部が練習している曲は「般若」という実在の難曲。私は吹奏楽は素人なので全く知らない曲でしたがかなり難しいらしいです。このこと自体は本編中やReadMe内で記述があるので気付いていました。
そしてこの曲を演奏するのに必要なパーカッションの人数が4人ということで、晴夫、パートリーダー(雨村理子)、後輩(安雲竜)、そして問題の人物(雪峯さくら)を割り当てていたが、結局物語の都合上さくら以外の3人しか本編での登場機会がなかったというのです!
しかしせっかく用意した設定だからおまけに入れちゃうという判断をしたということでした。
登場機会がなかったさくらちゃんが不憫なのか、作者に忘れられていなくて幸せなのかは分かりませんが、実在の曲からここまで設定を固めて作られた作品なのだなあということで感心しました。

この「般若」はYouTubeで聴けるので気になる方は聴いてみてください。ReadMe内にもURLがあります。私も聴いてみましたが、変わった曲で確かに難しそうだなと思いました。

そうそう、本作はTRUE END到達が難しめだと思うので、困ってしまったらReadMeをしっかり読んでみてくださいね。ちゃんとヒントが書かれてます。


3つの願いが叶う不思議な力というある種使い古されたネタでありながら(この辺は作内でもメタ的に言及されていますね。無人島のジョークは私も知っていましたし、猿の手は多分高校のときに課題で英語で読まされました。内容忘れたけど)、独自の調理法でおいしく出来上がった作品だと思います。ぜひプレイしてみてくださいね。

それでは。

こんにちは。久しぶりの非レビュー回となります。


昨日(10日)、crAsmの倉下さん、M.Mさんが主催の第3回 crAsM.M ビジュアルノベルオンリーというオンラインイベントがあり、そちらに一般参加という形で行ってきました。

倉下さんといえばゲーム制作活動もされながら(Ren'Pyに強い人というイメージです)レビュー記事も書かれている方で、M.Mさんはシェア/コンシューマ含めビジュアルノベルのレビューを数百本単位で書かれている方ですね。
Twitterを見ていたらイベントの宣伝が流れてきたので、せっかくだから行ってみるか~と思いpictSQUAREという会場に行ってきました。


会場に着いてみるとノベルゲームの製作サークルさんなどが計33個のブースを出していたので順番に回ってみることに。私が知っているサークルは大体半分くらいでしたね。数百本はプレイしていると思いますが、まだまだ知らないサークルがたくさんあるなあといった気持ちです。
ちなみに私がブログでレビューした作品の作者さんは3人(★Blue Cometさん(クロノスの箱庭)、晴好雨奇一丁目さん(MY HOBBY ISカッテナキミヘ)、Chloroさん(西暦2236年の秘書))いらっしゃいました。

オンラインでもオフラインでもこれまでイベントに行ったことがなかったので距離感の掴み方が分からずびくびくしながらもまず入り口近くにいた★Blue Cometの深嶺ユミアさんにチャットで会話を試みます。快く対応してくださってありがとうございます!
頒布されていた新作「カルマの願い箱」をDLして他のブースを回ります。ペーパーを直接DLできたり、気になった作品はその場でDL、あるいはふりーむ等に飛んでみたり。いろいろDLしていると主催の倉下さんのブースがあったのでTwitterで案内いただいたお礼などかねてご挨拶してきました。イベントの見方のアドバイスなどもいただきありがとうございました。
またイベント会場を回り続け、Chloroさんのブースを見つけたのですが誰もいない様子だったのでとりあえず「超クロロ紙」をDLして他のブースへ。BLUE AZALEAの義弓くーさんがいらっしゃったのでショート・ショート・ショート100の感想等お話ししました。ショート100企画の代表をされていた方ということで名前は覚えていたんですが、実は個人の作品をプレイしたことなかったんですよね。とりあえず「青薔薇の花子さん(体験版)」をDLしてみました。お互いイベントのチャットシステムに慣れずたまに伝わらなかったりしましたが、楽しくお話しできました。ありがとうございます。


一通り会場を回った後でDLしたものを確認するととんでもない量に(汗)
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ただでさえ積みゲー溜まってるのにどうやって消化するんだよ……



さて、いったん会場を離れてDLした作品を解凍してペーパーに目を通したりしていきます。
まずはTwitterで制作過程を拝見していた「カルマの願い箱」をプレイし始めました。

なかなか面白い作品で、個人的にハマるポイントもあったので作者さんにお伝えしようかな~と思ったらイベント会場にまだいらっしゃったので、しばらくチャットで作品のことや題材になっている音楽についてのお話などしてきました。かなり長い間居座っちゃいましたが最後まで楽しい受け答えをしてくださって感謝です。
作品の詳しい内容とか感想は次回以降の記事に譲ることにします。


プレイした作品の作者さんとか、同じ作品のファンの方とTwitterでリプをかわしたりということはこれまでもありましたが、イベント会場のチャットというリアルタイム性のあるやり取りをしたのは初めてで、やや緊張しましたが楽しく過ごせました。文字の表示時間が短くて慣れないと難しいですが、pictSQUAREにログ閲覧機能があるのに気づいてからは割とやりやすくなりました。

いつの間にかイベント終了時刻(22時)になっていたのでそのまま会場中央でフィナーレに参加しました。とはいってもアナウンスがあったりスクショタイムがあったりといったくらいの感じでしたが、イベントの雰囲気が味わえてよかったです。
やはり交流しようと思うとTwitterだけだと厳しいですね。リアルイベントとかも行ってみたいですが、コロナとの兼ね合いとかがあって難しいところです。今回お話しできた方、ありがとうございました。主催の倉下さんとM.Mさんもお疲れ様です。またイベントがあれば行ってみようという気持ちになりました。それまでにお話しできるサークルさんを増やすために作品プレイしたりしてお話のタネを持っておかないとですね。

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↑フィナーレの様子。見たことある作者さんがいっぱい!


ちなみに今回からこのイベントではレビュワー枠も設置され、私は一応サークル参加条件を満たしているようですが今のところサークル参加は考えていません。

ところで記事書いていて晴好雨奇一丁目の静本はるさんにご挨拶するの忘れてたことに気付きました…次こそは!

それでは。

こんにちは。今回のレビューはハルノサクラさんの「空の果てからこんにちは」となります。

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ジャンル:ファンタジー風ギャルゲー
プレイ時間:1時間半
分岐:3つ+真ルート(後述)
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2020/8


現在はティラノゲームフェス2022の真っ最中ですが、本作は2020年のフェス参加作ですね。ではいつものようにあらすじ紹介から行きましょう。

主人公のアオモリヒロサキはリンゴ農家の一人息子。特にこれといった目標もなく、将来はこのリンゴ畑をなんとなく継ぐのかな~と思っています。田舎にいるため近所で歳が近いのはキノコ採りを家業にしている家の娘リコのみ。そんな中突然この町に現れた女の子メイラはなんと重力が反対向きにはたらく逆さ人間だった!
天井に立つメイラに困惑しながらも徐々に距離を縮めていくヒロサキ。それに対してリコはちょっぴり複雑な思いを抱くのだった…。

とまあこんな感じでしょう。男主人公に対してヒロイン2人の典型的ラブコメとなっています。



本作に関しては事前情報ほぼなしでプレイしたのですが、メイラの初登場シーンはなかなか衝撃的でした。
それまでの感じから、「ああ、ヒロインが主人公にベタベタな感じで主人公は小馬鹿にしたような態度をとるよくあるラブコメかなあ」と思っていたら、突如逆さま人間が登場するわけですから驚きます。というか最初は???状態でした。なんかこの背景おかしくない?と。しかしメイラが逆向きに立っているビジュアルが明らかになって、なるほどなとなりました。しかもこのシーンの背景はセーブ画面の背景に使われてますね。最初に見たときわけが分からなかったのですが、ようやく合点しました。

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その後はしばらくほのぼの系ラブコメが続きます。「あなたのお嫁さんだよ☆」などと妄言(?)を吐くリコと冷たい系のヒロサキ、それに泣き虫天然系のメイラとラブコメのキャラクターとして王道かつバランスの良い設定でしょう。
そしてふだんあんなことを恥ずかしげもなく言っているリコが、ヒロサキがちょっと乗ってきただけで恥ずかしくて赤くなっちゃうのが良いですね。いつもみたいにかわされると思ったのにそういう雰囲気になったら途端に恥ずかしくなっちゃうんですよね。


…ところでヒロサキ君、君は登場する作品を間違えたんじゃないかい?
絶対にエロゲに出たかったのに間違えて全年齢の本作に出ちゃったでしょ!!
ヒロインの告白(?)を華麗にかわしておいてあんなセクハラ言動が許されるのはエロゲだけですよ!!
もっと健全な作品の主人公らしく過ごしなさいよ!


と、ヒロサキへのお説教が済んだところで物語を読み進めていきましょう。中盤くらいまで読んだところで、ラブコメなのはいいとして私の頭にはこの作品の世界観について疑問がわいてきました。
主人公の名前(漢字で書けば、青森・弘前ですよね)からすると物語の舞台は現代日本だろうな~と思っていました。しかしそれにしては背景画像が微妙だし、会話や町の様子も現代っぽさがないなあという違和感を抱えていたところ、メイラを連れて外出したシーンで事件が起こります。なるほど本作はファンタジーだったんですね。

このあたりの、作品の舞台になっている世界の説明はもう少し早い段階でしてくれた方が良いんじゃないかと思いました。人さらいの登場とか、端岬とかのあたりはどうも唐突すぎる印象を受けました。


さて、本作はプレイヤーの選択によりリコルートとメイラルートに分岐します。分岐の仕方は分かりやすいので初見で狙った方に行けるでしょう。私はリコルートから読みました(というかあのシーンでメイラ選択したらヒロサキに人間の心なくない?)。
こちらはサブルートであることがリコ本人の口から語られていますので(!)さらっと読み進めましょう。先ほどの事件はリコルートでのものですが、それが解決した後は物語は何事もなく平和なまま終わりを迎えてしまいます…と思いきや最後に衝撃の事実が。え??? これはメイラルートも読めば意味が分かるやつですか? というわけで張り切ってメイラルートに向かいましょう。

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こちらのルートにはさらに2つの分岐があります。片方は平和なまま、もう片方は別れを伴う形でこれも終了。え? どういうこと、ヒロサキの選択の理由も説得力あるわけじゃないし終わり方も中途半端だし良く分からんな~
実際、本作がこれで終わりだったら私はレビューで取り上げなかったでしょう。
これらのルートをすべて読み終えると、タイトル画面に変化が現れます。この世界をメイラの目から見たように逆さま。これはコンプリート後の演出なのか? としばし迷いましたが、いやこのままだと微妙すぎる、新しい分岐が出現してたりするかも、という期待の元再度STARTボタンをクリックする私。
あれ、冒頭部分こんな感じだったっけ? と思いながら読み進めると、期待通りこれまでと違うルートに入ったようでした。


この真ルートについては詳細は述べませんが、メイラ視点の話が読めて面白かったです。やっぱりヒロイン視点って見たいじゃないですか。本編であんな別れ方をしちゃったメイラがどう思っているのか。逆さまの世界では何が起こっているのかについてもちょっと理屈っぽいですが解説してくれます。ファンタジーというかSFでした。
そしてそれを受けてのラストシーンの収まりがよい。まあ教師の”仮説”については若干力業というか、アナロジー成立してないのではと思わないこともないですが、基本ラブコメ寄りの本作では気にせず流してしまえる範囲でしょう。


その他気になった点としては、投げっぱなしな伏線が目立つことが挙げられます。この世界の秘密について父がヒロサキに隠していた理由、リコルートで明らかになる彼女の秘密(特にこのままではメイラ登場シーンの反応も不自然では?)などが結局解決していないように見えます。2時間以内の尺としてはちょっと設定を盛りすぎかなという印象はぬぐえません。

あとは、無音の時間が長めでやや寂しかったかなという気はします。演出としての無音と理解できる部分以外でしばらく待ってもBGMもないと、なんかバグったかなと不安になってしまいました。映像面(ビジュアル面)についてはよく考えられているなと感じたのでやや惜しい。


ちなみに割とどうでもいいことですが、本作はreadme.txtでだいぶふざけていて面白かったです。
こんな自由な感じのreadme読んだのはいつ以来だったかな~
プレイしたけど見てないって方はぜひ見てください。


今回のレビューはここまでとなります。若干難点の指摘が長くなりましたが、ラストシーンの気持ちよさが魅力的ですのでぜひメイラちゃんを迎えに行ってあげてください。

それでは。

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