こんにちは。今回はBlu Lunettaさんの「チェックメイト」のレビューをお送りします。

ジャンル:童話絵本風ダークメルヘンサウンドノベル(公式サイトより引用)
プレイ時間:45分
分岐:なし
ツール:Light.vn
リリース:2017/9
上のスクリーンショットやタイトルからお分かりと思いますが、今回ご紹介する「チェックメイト」はチェスがモチーフになっている作品です。白黒メインで描かれたタイトル画面の雰囲気は作中全体を通して続き、童話風、寓話風の印象を強く残してくる作品となっています。
また、本作はside:whiteとside:blackの2本の短編からなるオムニバス形式となっています。
2本の短編は完全に独立しているのでどちらから読んでもいいですが、私はside:whiteから読み始めました。
whiteは白の国と黒の国の間で続いていた戦争のお話です。白の国は真実と平等の国。嘘をつくことは重い罪と見なされます。黒の国は嘘と力の国。強いものが支配し、人々は自由に己の力を競っていました。
仲の悪い2つの国はずっと戦争を続けています。終わらない戦渦にしびれを切らした白の国のクイーンは、直接黒の国に出向いて黒のキングに直談判を企てます。しかし彼女が黒の国へ実際に行ってみると、戦いが好きで常に争っているというイメージとは全く違う姿が広がっていたのです。パレードでにぎわう大通りは、人々の笑顔と音楽であふれています。黒の国の人々に話を聞くと、戦争を終わらせてくれないのはむしろ白の国のキングの方だと口を揃えて言っています。
白のキングから聞いていた話と自分の目で見た姿が一致していないことにクイーンは戸惑いを隠せません。白と黒、真実と嘘つき。言葉を聞いたら普通は白の方がよいと思うでしょう。しかし白の国が白のままでいられたのは、嘘をつくこと自体が重い罪となるというある種の恐怖政治の結果だったのです。
この展開が大変に寓話的で良かったです。絵本風のイラストや手書き風フォントも雰囲気づくりに貢献していますね。クイーンと白の国の行く末も白と黒というイメージを活かした結末だと思うのでぜひ皆さんで確かめてみてください。5分から10分くらいの掌編です。
ではside:blackの話に移りましょう。舞台はガラッと変わってチェスの腕がすべてをいう国になります。ある平民の家に大変美しい少年がいました。彼はとある子爵に見初められて養子となります。しかしその子爵が若くして病に倒れ、少年はわずか13歳で子爵の家を継ぐことになります。
しかし少年に当主の立場は荷が重く、ほとんどのことを秘書に任せて気ままな生活を続けるのでした。

そんなある日伯爵家の令嬢が屋敷を訪れ、爵位継承祝いの夜会に誘われます。平民出身で貴族の付き合いや権力争いに巻き込まれたくなかった少年は一度は断るのですが、結局は出席せざるを得なくなります。
実はこの夜会出席までの間で少年と秘書の間でひと悶着あるのですが、その描き方が結構良かったです。ただの平民であった少年がいきなり子爵の跡継ぎとなったことについて、良く思わない人がいるのではないかという懸念は自然なものです。しかしそのために揺らいだ秘書への信頼を回復するために本作の重要な設定である"チェスの腕ですべてが決まる"という世界観が生きています。
しかしその夜会において令嬢は少年に何か意味深な忠告を残し、その後何と射殺されてしまいます。その時の秘書の様子や後日訪ねてきた伯爵家の執事の話を総合すると、再び秘書が味方であるかどうか疑わしいと言わざるを得ない状況となってしまいます。
このように誰が味方で誰が敵か、信用できるものが何かが目まぐるしい速度で入れ替わっていくのが本作の特徴と言えるでしょう。side:whiteでもそうでした。なるほどチェスの白と黒という色からの連想として理解できます。この後さらに皇太子とのやり取りで少年は心を揺さぶられることになるのですが、それはぜひ皆さんの目で確かめてください。
side:blackにおいてはさらに時折スチルが挟み込まれます。普段は黒ともう1色程度で表現されたシンプルな背景と影絵だったのが、重要なシーンでカラーのスチルになると大変印象に残ります。効果的な演出法だったように感じました。
またside:blackの方はside:whiteよりかなり長く、30分程度のボリュームがあります。どちらもその尺の中で良くまとまったシナリオになっていると思います。担当されたライターさんが異なるようですが、そうは見えない統一性というかまとまりが感じられたのも良かったです。
本作をプレイしていて少し気になったのはフォントです。手書き風で絵本チックな世界観の演出には一役買っていて、実際side:whiteを読んだときにはいいなあと思っていたのですが、side:blackくらいの尺があるとやや読みにくいなという気持ちになってしまいました。またblackくらいの尺になってくると全ての登場人物が肩書で呼ばれ、名前が一切登場しないのは少し寂しいでしょう。
あとは動作の安定性がやや低いところでしょうか。素早くクリックするとたまにソフト自体が落ちてしまいます。Light.vnはやや珍しいツールかと思いますので、デフォルトの操作に慣れるまではすこし大変でした(マウスホイール操作でログに入れない、SKIP/AUTO解除には右クリックしなくてはいけないなど)。
本作にはwhite、blackともにボイスが付いているのですが、クレジット等を拝見するになんと全て一人の方が担当されているということで驚きました。男性の役も女性の役もあるのですが、きちんと演じ分けられていてすごいですね。すべて聞くとプレイ時間はかなり長くなると思います。
ちなみに本作の中でたまにチェスに関する用語などが登場しますが、特にチェスを知らない方が読んでも問題なく楽しめるはずです。一応知識があるとより分かりやすい箇所もありますので少しだけご紹介。
全体として出来上がった世界観が素敵な作品ですのでぜひプレイしてみてください。
それでは。

ジャンル:童話絵本風ダークメルヘンサウンドノベル(公式サイトより引用)
プレイ時間:45分
分岐:なし
ツール:Light.vn
リリース:2017/9
上のスクリーンショットやタイトルからお分かりと思いますが、今回ご紹介する「チェックメイト」はチェスがモチーフになっている作品です。白黒メインで描かれたタイトル画面の雰囲気は作中全体を通して続き、童話風、寓話風の印象を強く残してくる作品となっています。
また、本作はside:whiteとside:blackの2本の短編からなるオムニバス形式となっています。
2本の短編は完全に独立しているのでどちらから読んでもいいですが、私はside:whiteから読み始めました。
whiteは白の国と黒の国の間で続いていた戦争のお話です。白の国は真実と平等の国。嘘をつくことは重い罪と見なされます。黒の国は嘘と力の国。強いものが支配し、人々は自由に己の力を競っていました。
仲の悪い2つの国はずっと戦争を続けています。終わらない戦渦にしびれを切らした白の国のクイーンは、直接黒の国に出向いて黒のキングに直談判を企てます。しかし彼女が黒の国へ実際に行ってみると、戦いが好きで常に争っているというイメージとは全く違う姿が広がっていたのです。パレードでにぎわう大通りは、人々の笑顔と音楽であふれています。黒の国の人々に話を聞くと、戦争を終わらせてくれないのはむしろ白の国のキングの方だと口を揃えて言っています。
白のキングから聞いていた話と自分の目で見た姿が一致していないことにクイーンは戸惑いを隠せません。白と黒、真実と嘘つき。言葉を聞いたら普通は白の方がよいと思うでしょう。しかし白の国が白のままでいられたのは、嘘をつくこと自体が重い罪となるというある種の恐怖政治の結果だったのです。
この展開が大変に寓話的で良かったです。絵本風のイラストや手書き風フォントも雰囲気づくりに貢献していますね。クイーンと白の国の行く末も白と黒というイメージを活かした結末だと思うのでぜひ皆さんで確かめてみてください。5分から10分くらいの掌編です。
ではside:blackの話に移りましょう。舞台はガラッと変わってチェスの腕がすべてをいう国になります。ある平民の家に大変美しい少年がいました。彼はとある子爵に見初められて養子となります。しかしその子爵が若くして病に倒れ、少年はわずか13歳で子爵の家を継ぐことになります。
しかし少年に当主の立場は荷が重く、ほとんどのことを秘書に任せて気ままな生活を続けるのでした。

そんなある日伯爵家の令嬢が屋敷を訪れ、爵位継承祝いの夜会に誘われます。平民出身で貴族の付き合いや権力争いに巻き込まれたくなかった少年は一度は断るのですが、結局は出席せざるを得なくなります。
実はこの夜会出席までの間で少年と秘書の間でひと悶着あるのですが、その描き方が結構良かったです。ただの平民であった少年がいきなり子爵の跡継ぎとなったことについて、良く思わない人がいるのではないかという懸念は自然なものです。しかしそのために揺らいだ秘書への信頼を回復するために本作の重要な設定である"チェスの腕ですべてが決まる"という世界観が生きています。
しかしその夜会において令嬢は少年に何か意味深な忠告を残し、その後何と射殺されてしまいます。その時の秘書の様子や後日訪ねてきた伯爵家の執事の話を総合すると、再び秘書が味方であるかどうか疑わしいと言わざるを得ない状況となってしまいます。
このように誰が味方で誰が敵か、信用できるものが何かが目まぐるしい速度で入れ替わっていくのが本作の特徴と言えるでしょう。side:whiteでもそうでした。なるほどチェスの白と黒という色からの連想として理解できます。この後さらに皇太子とのやり取りで少年は心を揺さぶられることになるのですが、それはぜひ皆さんの目で確かめてください。
side:blackにおいてはさらに時折スチルが挟み込まれます。普段は黒ともう1色程度で表現されたシンプルな背景と影絵だったのが、重要なシーンでカラーのスチルになると大変印象に残ります。効果的な演出法だったように感じました。
またside:blackの方はside:whiteよりかなり長く、30分程度のボリュームがあります。どちらもその尺の中で良くまとまったシナリオになっていると思います。担当されたライターさんが異なるようですが、そうは見えない統一性というかまとまりが感じられたのも良かったです。
本作をプレイしていて少し気になったのはフォントです。手書き風で絵本チックな世界観の演出には一役買っていて、実際side:whiteを読んだときにはいいなあと思っていたのですが、side:blackくらいの尺があるとやや読みにくいなという気持ちになってしまいました。またblackくらいの尺になってくると全ての登場人物が肩書で呼ばれ、名前が一切登場しないのは少し寂しいでしょう。
あとは動作の安定性がやや低いところでしょうか。素早くクリックするとたまにソフト自体が落ちてしまいます。Light.vnはやや珍しいツールかと思いますので、デフォルトの操作に慣れるまではすこし大変でした(マウスホイール操作でログに入れない、SKIP/AUTO解除には右クリックしなくてはいけないなど)。
本作にはwhite、blackともにボイスが付いているのですが、クレジット等を拝見するになんと全て一人の方が担当されているということで驚きました。男性の役も女性の役もあるのですが、きちんと演じ分けられていてすごいですね。すべて聞くとプレイ時間はかなり長くなると思います。
ちなみに本作の中でたまにチェスに関する用語などが登場しますが、特にチェスを知らない方が読んでも問題なく楽しめるはずです。一応知識があるとより分かりやすい箇所もありますので少しだけご紹介。
- ポーン
前に1マスだけ進める最も弱い駒。将棋でいう歩兵に相当。実際には特殊なルールが多くてもう少し複雑ですが、本作を読むうえではこれで十分です。 - アイソレーテッドポーン
文字通りポーンが1つだけ孤立している状態。ポーンは斜めにつながっていると前列のポーンを後列のポーンが守ることができ効率がいい(ポーンチェーン)と言われているが、孤立してしまうと守ってくれるポーンがいなくなってしまう。 - プロモーション
ポーンは敵陣最奥に進むと好きな駒に変化することができる。将棋でいう成りに相当。最強の駒であるクイーンにすら成れるので非常に強力 - 先手・後手
チェスにおいては白を持ったプレイヤーが初手を着手する。囲碁やオセロや五目並べ(連珠)では黒が先番なのとは逆である。
全体として出来上がった世界観が素敵な作品ですのでぜひプレイしてみてください。
それでは。