フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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2023年04月

こんにちは。今回はんんんんほりごたつさんの「つきのさきで きみときす!」のレビューをお送りします。

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オススメ!
ジャンル:ほのぼの日常系推理ノベルゲーム
プレイ時間:1周目20分、フルコンプまで2時間程度
分岐:エンディング2種
ツール:吉里吉里
リリース:2020/3



本作の存在はしばらく前から知っていてDL済みでもあったのですが、プレイするのが遅くなってました。
実際にプレイしてみたところ、予想を大きく上回るいい作品だったので今回ご紹介しようと思います。


主人公の月下羽衣(つきした・はごろも、下の名前のみ変更可)は中学2年生。同級生で幼馴染の灯木洩日(あかし・こもれび)は何と中学生にして祖父の代から続く探偵業を継いで立派に活躍しています。羽衣はそんな木洩日のことが大好きな様子。(勝手に?)助手を名乗って事務所に入り浸っています。
そんな羽衣、どうやら木洩日が隠し事をしている気配を感じ取ったようです。調査の名目で木洩日と一緒に色々なところを探索していく羽衣。隠し事の正体を見抜いて名探偵助手としての地位を確立することはできるのか…?


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本作をプレイしてまず目についたのは素敵なイラストでした。
淡い色で描かれた2人の立ち絵はとてもかわいらしいですし、加工写真風の背景にも溶け込んでいます。メッセージウィンドウやUIなんかも統一感のある配色や雰囲気になっていてとてもいいと思います。終盤の一枚絵に入る流れもスムーズですね。


さて、本作の主人公である羽衣は頭が切れる探偵キャラというよりは、ちょっぴり天然だけれど愛想がよくて世話焼きなタイプのキャラクターです。したがって私は本作を1周プレイした辺りでは、(言い方は悪いですが)ほのぼの日常系でラブコメ要素を楽しみつつ進める、推理とは名ばかりの雰囲気ゲーだと思っていたのです。もちろんそうした作品が悪いわけではなく、何となく雰囲気が好きという作品は私もいくつかありますが、本作ではそれだけではありませんでした。推理をする部分についても、また彼らの過去や現在の状況についてもしっかりと筋の通った作品だったのです。そうした意外性という意味でも私を驚かせてくれた作品でした。



木洩日くんの"カクシゴト"を見つけ出すために捜査に乗り出す羽衣は、(なぜか)木洩日を引き連れて事務所や家、町内の様々な場所を回ります。例えば事務所の応接室を調べると、どうも写真に違和感があるということに気付きます。これらのヒントは各調査場所に1つずつあり、調査で必ず手に入れることができます。この際の2人の会話がまたほほえましい内容でいいですね。ちょっと登場するだけのサブキャラにも立ち絵が用意されていてすごいです。

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過去に調査したことがある地点は右の虫眼鏡をクリックでどんなヒントが手に入るか分かったり、現状の持ち物も確認可能、攻略のヒントだって見られるという親切設計。ヒントは3段階になっていて、最終的には完全な答えまで見ることができます。ちなみに私はヒントなしプレイで3周目におおよその仕組みに気付いて(ヒント1段階目の内容)、それ以降は多少の試行錯誤でほぼ迷わずトゥルーエンドまで行けました。

1日の終わりにはこれまでの調査で得たヒントを元にカクシゴトの正体を指摘するパートがあります。使用するヒントを選んで決定ボタンを押すのですが、外れの場合でも選んだヒントに応じた展開が用意されていて芸が細かいです。かなりたくさんあるようなので私も未回収の会話があるかもしれません。
ここで正解すると、ヒントに応じたイベントを見ることができます。私の意図(?)どおり推理してくれて嬉しいルートもあれば、それ推理関係ある?という可愛いイベントもあります。イベントごとに鍵が1つ入手でき、それらを5つ集めたとき、トゥルーエンドへの道が開けます。


このトゥルーエンドですが、木洩日くんが本当に羽衣のことを思って行動していてくれたんだなというのが分かってとても心温まる内容となっています。調査パートではちょっと羽衣のことをバカにしているようなシーンがあったりもしますが、それらが2人の間でしっかりとした信頼関係が存在していたからこそであるのが理解できます。木洩日のお父さんはなぜいなくなったのかを含め、5つの鍵を入手するまでの段階での情報もしっかり最後に生きてくる構成。そして木洩日くん自身の口から好きだよと言ってもらえるのが嬉しいですね。いや、調査パート見ていれば羽衣だけでなく木洩日も羽衣のことを大切に思っているのは分かるんですが、直接聞くのとは違いますからね。そして告白に至るまでに彼らが抱えていた背景も明らかになりますから、そのパワーは強力です。

これ以上詳しく語るのはネタバレになるのでやめておきましょう。ぜひあなたの目でこの感動を確かめてください。
そしてエンディングを迎えた後のタイトル画面への戻り方もうまい。なるほどそういう意味が込められていたんですね。


というわけで今回は「つきのさきで きみときす!」でした。
ほのぼのとした雰囲気だがそれだけじゃない、この作品の魅力をぜひ味わってみてください。プレイし終わって優しい気持ちになれる事間違いありません。BGMもまた穏やかで気持ちいい統一感があって素敵です。久しぶりにDOVA-SYNDROMEに行ってタイトル画面BGMを探す旅をやりました。

それでは。

こんにちは。今回はどこかの箱庭さんの「螢火の庭」のレビューをお送りします。

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ジャンル:和風ホラーアドベンチャー
プレイ時間:初回3時間程度/フルコンプまで5時間程度
分岐:ED4種
ツール:Wolf RPGエディター
リリース:2017/8
備考:第13回ふりーむゲームコンテスト​探索アドベンチャー部門銀賞受賞作



本作は、主人公の秋月ほたるが盗まれた祖父の遺品を取り返すために彼岸を探索して回る和風のホラーアドベンチャーゲームとなっています。

いきなりですが、ホラーゲームの主人公ってだいたいかわいそうな運命を背負っていたりします。作内で物語を進めているうちにそうした境遇が分かってくるタイプのものが多いように感じるのですが、本作では作品の導入段階でほたるの不遇さが明らかになります。

両親は家族の反対を押し切って結婚し、娘のほたるも誕生し幸せに暮らしていたのですが、交通事故に遭い2人とも亡くなってしまいます。結局結婚に反対していた家族たちに引き取られて生活するようになるのですが、祖父以外の叔父や叔母には疎ましく思われています。
しかし唯一の見方であった祖父の晴臣もその後他界。それまで家族で揃って行っていたお祭りの螢火流しも留守番しているようにと言われてしまいます。そんな留守番中、お祭りに乗じて彼岸からやってきた妖怪たちに大切な祖父の遺品を盗まれ、ほたる自身もさらわれてしまいます。妖怪の手から逃れ、おじいちゃんの遺品を回収して此岸に帰ってくることはできるのでしょうか…。


このような導入になっているので、私は本作をプレイし始めてから早い段階でほたるを応援しながらゲームを進めることができました。別に主人公には酷い目に遭っていて欲しいというわけではないのですが、ほたるがおじいちゃんの思い出の品と約束を守って健気に進んでいくさまを見るとやはり私も前向きな気持ちになることができます。
立ち絵やマップ上のドットも可愛らしいですしね。
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他の登場人物たちも和服を着てますし、マップ上の雰囲気も含めて和風ホラーの演出が上手いなと感じます。

そんな他の人物たちも少し紹介しましょう。
まずはほたるが此岸に帰れるように全体を通して協力してくれる朽名(くちな)さん。なぜか常にお面をかぶっています。人間の子をしっかりと此岸まで送り届けるのが仕事だと言ってほたるを送ってくれるだけでなく、祖父の遺品”螢火のおくりもの”探しも手伝ってくれます。彼の素顔は一体どんなものでしょうか。
異国の薔薇貴族もなかなかインパクトがあります。紳士的だが女好きがひどすぎて周りから距離を置かれるようになり、いまでは屋敷で引きこもっているそうです。彼もまた胸の内に隠した思いがあるようですが一体何なのか、それは物語の後半で明らかになります。
その他にも姉妹の温泉宿の女将さんとか、なぜか動いて喋る人形とかお面とか、いろいろな人物(?)が登場しますが、みな可愛らしくて良いですね。


本作のエンディングはゲームオーバーを除いて4つあります。終焉4については序盤のうちに分岐します。せっかく此岸に帰ってくることができてもこれではあまりにも浮かばれないだろうという結果。ぜひ大切な品は回収してから帰りましょう。
その他のエンディングについては中盤以降に分岐します。初見だとそこで分岐するとは分からない箇所もあると思いますので、セーブはいくつかに分けておくといいでしょう。回収できなければ同梱のヒントが役に立ちます。
終焉2と4についてはほとんど同じ展開になりますが、最後の最後で結末が変わってきます。分岐したシーンは時間にして30秒とかそれくらいだと思いますが、このシーンの有無で後味が全然違いました。やはり物語の締めって大事だなあと思わされます。ぜひベストな結末を目指して探索してください。



ホラーや探索アドベンチャーとして見たときの謎解きやアクション要素の難易度は高くはないといったところでしょう。全体を探索していればきちんとヒントとなるものが出てきますし、理不尽な初見殺し要素などもありません。ただし謎解きに関しては公式でヒントが用意されていないので詰まると大変かも。エンディング分岐についてはすぐ上で書いたようにホームページや同梱のテキストに詳しく記載されているので、迷ったら読んでみるとよいでしょう。
ホラー具合についてもゆるめで、ホラーがやや苦手な私でも問題なく最後までプレイできる程度でした。突然怖い画像が表示されるとか大きい音が出るとか、何かに追いかけられるとかはないです。暗いマップを探索したり、予告があっての追いかけられ要素だったり、物が落ちる・窓が割れる程度の表現などはあります。


というわけで今回は「螢火の庭」でした。ホラー要素というよりは雰囲気重視系の作品なので、よっぽど苦手な方じゃなければプレイしやすいと思います。ぜひほたるの物探しを手伝ってあげてください。泣ける!というタイプのシナリオではないですが、じんと心が温かくなるような結末があなたを待っています。

それでは。

こんにちは。今回は、九州壇氏さんの眠れない夜にをご紹介します。


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ジャンル:ちょっと大人向けな幼馴染み系ノベルゲーム
プレイ時間:1時間15分
分岐:なし
ツール:NScripter
リリース:2016/12
備考:第12回ふりーむ!ゲームコンテスト健闘賞受賞作


私は以前、【検証】ギャルゲー主人公の両親、海外出張しがち説という記事で(現代日本が舞台の)恋愛系ノベルゲームでは主人公の年齢設定は高校生が最も多いと書きました。特別な設定なしでも毎日学校でヒロインと顔を合わせるし、体育祭や文化祭といったイベントで話を盛り上げることも、定期テストや受験といった分かりやすい壁を提示することもできる。私がプレイした範囲では、過半数が高校生が主人公のものでした。しかし大学生やそれ以上の年齢帯になっている作品も面白いものは数多くあります。本作はそれらのちょうど中間にある特殊な作品といえるのではないでしょうか。高校はすでに卒業しているけれども高校時代の思い出が大きな比重を占めるようなシナリオで、現在の状態は過去の出来事が連なった結果なんだなあという物語の説得力のようなものがしっかりしている作品です。

本作の主人公は木野下淳。およそ半年前に高校を卒業して大学生になったばかり。ヒロインの木野田茜も同学年です。彼らは小学校に上がる前からの幼馴染で、高校時代から付き合うことになります。しかし本作のメインの時間軸は、大学生になった淳と茜が何気ない夜のドライブをしているところから始まります。物語開始時点で二人はすでに恋人の距離なわけですが、ここに至る過程もしっかり描写されています。そう、本作は回想シーンを多用しているのです。これがなかなかうまいですね。回想では背景がセピア調になるのでいつの話をしているか混乱することはないですし、現在と過去のシーンの間にぶつ切り感がありません。子供時代のこんな経験や、中学生の時のあの出来事が現在の淳の感情をこんな風に動かしている、というところが丁寧に描き出されるので、これが上述の説得力につながっているのではないでしょうか。この丁寧かつ素朴な描写が作者さんの持ち味ですね。最小限の演出と写真背景はその素朴さを邪魔しません。見た目の華やかさがないという言い方もできるかもしれませんが、私はとてもフリーゲームらしくて魅力的なんじゃないかなと思っています。

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そんな穏やかな雰囲気のドライブから始まるストーリーですが、物語前半の割と早い時間帯で茜を襲った悲劇が明らかになります。突然病気で倒れ、運よく一命をとりとめたはいいものの記憶の一部が失われてしまったのです。普通ならこんなシーンは鬱々とした空気が流れ、読者に負担を感じさせることもあるでしょう。しかし本作ではこれは1か月前の出来事として淳も茜もすでに受け入れているので、その暗い雰囲気をかなり軽減しているのです。

そんな悲しみを抱えながらも、ゲームセンターで遊んだり、思い出の場所で語り合ったりしてほのぼのとした展開が続くのかな……と思っていると物語は急展開を迎えます。トイレに行くと言って席を外した茜が戻ってこないのです。必死に茜を探す淳。そんな中、茜の妹の香澄から電話がかかってきます。そこからの展開はなかなか衝撃的でした。このほのぼの系幼馴染ものに計算された伏線が張られているとは思っていなかったのです。うまいですね。淳が受けた衝撃と悲しみをプレイヤーにも直接的に与えてくる感じがしました。
しかしこの伏線、間違った解釈から急展開後の正しい解釈まですべて主人公がモノローグで語ってしまうんですね。ここは、「そうだったのか!」と読者に一回思わせた後は細かい解説はせず(するとしても会話文の中で自然に行う程度で)、プレイヤー自身に該当箇所を探してもらう、2周目をプレイしてもらうよう仕向けたほうがより印象に残った気がします。なんというか、余韻みたいなものが失われてしまう感じがしました。「君と再会した日」の時も似たことを書いた気がしますので、これは作者さんの特徴かもしれませんね。逆に、その後淳が正気を失っているシーンなどは、より分量を割いて描写しても良かったんじゃないでしょうか。明らかになった事実に驚きはしたものの、プレイヤーにとっては淳も茜も物語の登場人物に過ぎないので、淳の混乱の程度までは(少なくとも私は)感じ取れなかったのです。ここで、茜が病気で倒れてから浜辺で再会するまでの1か月弱を回想する描写があった方が、淳がいろいろと思い詰めてしまったことに対してぐっと説得力が増すと思うのです。茜と約束するシーンが淳の決心とラストシーンにうまくつながっていて綺麗な展開だったと感じるので、尚更納得感が欲しいところではありました。


いろいろと書きましたが、子供時代のなれそめや甘酸っぱい思い出を楽しみつつ、よくある恋愛ものよりちょっとだけ落ち着いた雰囲気と同時に驚きの展開を味わえる素敵な作品です。夜明けを迎えてエンドロールに入るのがとても気持ちいいのでぜひ読んでみてください。

それでは。

こんにちは。今回はアザラシの寝言さんの「その後の世界」のレビューをお送りします。

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ジャンル:ファンタジーRPG
プレイ時間:4~5時間程度
分岐:なし
ツール:RPGツクール
リリース:2020/6
(9/16追記:本作のスマートフォンアプリ版が公開されました。Android版/iOS版)

本作「その後の世界」は、記憶をなくして地面に倒れていた主人公(名前任意)とどうやら同じ境遇らしい少女リトが、自分たちが何者なのか、この世界は何なのかを求めて冒険していくファンタジーRPGとなっています。


まずはシステムについて説明していきましょう。
主人公とリトは一緒に冒険し、敵モンスターと戦闘していくことになるのですが、プレイヤーが操作できるのは主人公だけになります。リトはランダムで敵に攻撃行動をしてくれます。そして敵からの攻撃も受けることもないため、パーティーメンバーというより支援キャラという方が近いかもしれません。
ただしリトについても装備は自由につけ外しすることができます。物理攻撃特化もよし、魔法攻撃特化もよしです。攻撃を受けないため防御系は無意味なことに気を付けましょう。私のお勧めはMPを気にする必要がないためリトを魔法攻撃担当に、主人公を物理攻撃担当にすることです。


マップ上では常に右上に縮小マップが表示されていて、探索の手助けになります。見たことのある範囲は明るく、まだ見たことのない範囲は暗く表示されるうえ、回復ポイントやマップ移動ポイント、話しかけられる対象なども示されるのでかなり探索がしやすくなります。マップは総じて広い(特にアダチ平原などは非常に広大)なため、Shiftダッシュと並んでこの機能には大変お世話になります。


もう一つ本作の特徴的なシステムとして、クエストが挙げられます。QUESTマークがついた対象に話しかけると、ちょっとした依頼を受けることができます。特定のボスの討伐だったり、アイテムの収集だったりと様々ですが、どれも達成すると強めの報酬がもらえます。依頼は同時にいくつでも受けられますし、時間制限などもないので見つけたらとりあえず話を聞いて受けちゃいましょう。
全体攻撃魔法だったり強力な装備だったりと、実質クリアに必須級の報酬も多いうえ、最大HPやMPが少しアップするという効果もあるのでどしどし解決していきましょう。
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時々このクエスト系の要素がだるい作品もありますが、本作では報酬が豪華・クエスト中に世界観への理解につながるイベントがあるなどのため、やらされている感がなく最後まで楽しめました。
経験値稼ぎにもちょうどいいです。クエストを受けるおおよその場所が開示されているのも親切ですね。


戦闘バランス的な面でいうと、本作は回復が自由にできないため細かなセーブなどが要求されてくるタイプだと思います。回復は焚き火の地点でしかできませんが、セーブはマップ上どこでも可能なのでこまめにやりましょう。ショップで回復アイテムを買いためておくのも重要です。
また、魔法は全6種類覚えられますが、強力な魔法などはなく全て属性・攻撃範囲違いのものなので、戦闘中の行動戦略よりは装備・ステータスの方が重要になってきます。武器・指輪・お札の相性をしっかり考えて装備していくとよいです。その分戦闘自体は単調かなあという印象を受けました。
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さて、本作のシナリオですが、ボスを倒していくのはもちろん、様々なところに散らばっている"記憶石の欠片"を拾うことで進んでいったりもします。この世界に生きた誰かの記憶をのぞき見することで、過去に何があったのか、魔王の正体は何だったのかなどについて知っていくことができます。
この作りが上手くて、記憶石を集めるために探索したりボスに挑んでいくモチベーションにもなりました。上述した戦闘システムになっている理由付けもシナリオの中にきっちりあって納得感もあります。
ただ記憶を1回見ると石が飛び散ってしまうため再度見ることができないのは何とかならないかなと思いました。続けてみるなら覚えているかもしれませんが、本作ではマップ探索中に断片的な情報が手に入るというシステムなので全部覚えておくのは不可能に近いんじゃないかなと思います。記憶回想モードが切実に欲しいところです。

このシナリオの内容はほのぼのとした全体の雰囲気に比してショッキングというか、暗めの内容になっています。世界が壊れてしまったいきさつなどもなかなか悲しいですが、後味悪い系の展開ではないのでそこはご安心ください。ラスボス倒した後の最後のシーンもこれまでの要素を活かした上手い作りになっていて感動的になっていると思います。



そんな本作には続編がありまして、「かえりみち~続・その後の世界」というタイトルになっています。基本システムは本作と同じですが、主人公たちがケモノ少女になっています。前作の主人公たちも登場し、舞台となる場所も重複していますが一体その後何があったのか、またしても記憶の無い主人公たちが帰るべき場所を見つけられるのかに注目です。メッセージウィンドウが追加されるなどの進化も見られますよ。
ちなみに、前作の知識がないと話が分からないと思うので、おとなしく順番にプレイしてください。プレイ時間は5時間前後、2作合わせて10時間といったところでしょう。
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というわけで「その後の世界」のご紹介でした。
自作の音楽によるBGMも魅力的で、細やかな配慮が嬉しい作品です。ぜひプレイしてみてください。

こんにちは。今回は五目さんの「たまごがえり」のレビューをお送りします。

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ジャンル:ほのぼの系SRPG
プレイ時間:第1部で4時間弱、総計10時間くらい
分岐:なし
ツール:SRPG Studio
リリース:2019/2~(記事執筆時点で最終更新は2023/2)



今回紹介する「たまごがえり」はかなり多くの要素がある作りこまれたシミュレーションRPGとなっています。
まず本作のシナリオについてですが、「ハンプティ編」と「たまごがえり編」の2本から構成されています。どちらからでも開始できますが、チュートリアルが丁寧で物語も完結しているハンプティ編から始めることをお勧めします。


ハンプティ編は計13章からなる完結した物語で、自分に自信がなかった主人公のハンプティが”勇気のたまご”を手に入れるために冒険しながら成長していくというストーリーになっています。

作品タイトルにもなっている「たまごがえり」とは、この地域に伝わるお祭りの名前です。地域の子供たちが”愛のたまご”や"知恵のたまご"などの感情のもとになるたまごを集めて大人になっていく、という通過儀礼のような意味があるそうです。

しかしお祭りのために用意されていた”勇気のたまご”が山賊に盗まれてしまいます。村長である父親に「お前には勇気が足りない」と言われているのを気にしていたハンプティは、メイドのリーベの助言もあって山賊に奪われた勇気のたまごを取り戻す旅に出るのでした。
子供のころの出来事から自分は臆病者だと思い込んでいて、父親から村長を継ぐのに必要な決断力も持ち合わせていなかったハンプティがリーベの助言を受けながら成長し、自らの意思で村を守り無法者には制裁を行うと判断していくのは気持ちいいところですね。

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「たまごがえり編」では、ハンプティ編では概要しか触れられなかったお祭り、”たまごがえり”について、参加する子供たちの立場で物語を進めていくことになります。主人公のリナは両親にたまごがえりに行ってくるように言われ、友達のパピー・ルーシーとともに武器を持って冒険に出かけます。
アルジャンテ先生のいう通り、しっかりとたまごを集めていく良い子たちだった彼女らですが、次第にお祭りそのものの意義について疑問を持つようになります。通過儀礼のためのもの、というふんわりした理解だけで進むには危険が多すぎる旅だったのです。なにやら知っている風の怪しげな少女ソウラスの謎の忠告も手伝い、リナはアルジャンテ先生にたまごがえりの真の目的を尋ねます。帰ってきた答えは大変にショッキングなものでした…

以降、物語はリナだけのものからソウラスやその母親、たまごがえりに関する宗教などかなり大きな内容となってきますが、このシナリオは現在更新中となっていてまだ完結していません。今年2月の最新版では21章までプレイできます。リナとソウラスが再会する感動的な部分ですが、この先が気になりますね。全てのたまごが揃ったので物語は最終盤なのは確かですが、あとはアルジャンテ先生との関係がどうなるのか、更新を待ちたいところです。


戦闘部分を見ていきましょう。
基本的なシステムは一般的なSRPGと一緒で、ユニットに武器を装備させてマップ上で敵ユニットと戦っていきます。敵ユニットに接近し、武器固有の間合いまで詰めたら攻撃できます。本作は遠距離攻撃が少ないのが特徴的ですね。物理武器はほぼ射程1、投てき可能だったり弓矢だと射程1~2になります。魔法武器もほぼ全て射程1~2で、極まれにそれ以上の遠距離攻撃が可能な魔法があります。
射程が短い攻撃ばかりだとマップ上の移動に時間がかかってじれったいことがありますが、本作では移動力が高めの設定なのでそこは気にならないでしょう。

この基本的な要素以外にも本作はかなり多くの要素が詰め込まれています。
例えば武器の相性。剣・斧・槍はいわゆる3すくみとなっており、弱点を突くと攻撃力や命中率にボーナスが乗ります。ボーナス値は小さめなので、特に序盤で気にするべき要素でしょう。

武器の種類はかなり豊富です。剣だけとっても最弱のショートソードから鋼の剣、金の剣のような特殊効果を持たないものだけで数種類。特定の属性の相手に特効があったり、2回攻撃だったり投てき可能だったりと軽く10を超える種類があります。レベルアップによるステータス上昇より武器の能力値の方が大きいバランスとなっているため、強い武器を手に入れたら忘れずに装備しておきましょう。
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戦闘アニメーションもきちんと武器ごとに変わるなど、相当手が込んでいると感じられます。

各ユニットは5つまでしかアイテムを所持できません。あふれたものはストックに送ることになります。SRPGでは割と一般的な所持数かと思いますが、本作では武器の耐久力の概念があるため所持枠のやりくりにやや苦労しました。

また、マップ上で隣り合うユニットとアイテムを交換できるシステムはなかなか面白いでしょう。
宝箱から出てきたけど装備できない武器を、それを使える人に渡すなどの行動が可能になります。


本作の難しいところの1つに、面をクリアしたら自動的に次の章に進んでしまうため、既にクリアしたステージで経験値稼ぎをすることができない点があります。なるべく効率的に経験値を取得できるように敵を残さず倒しながら進めていくと、後々が楽になります。
勝利条件や敗北条件が特殊なステージもあるので、その辺も確認しながら進めていきましょう。


マップ上の各地点で特殊効果がある場合があるのも面白いですね。チュートリアルで触れられていなかったので気付くのに時間がかかりましたが、例えば森林地帯では回避率に20ポイント、高山では30ポイントの補正がかかります。むやみに進軍せず敵より有利なポジションで戦闘するなどの戦略が選択肢に入ります。

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戦闘バランスにおいて一つ不満があるのはクリティカルヒットの仕様です。何と本作のクリティカルは通常の3倍ダメージと非常に強力。自分が出す分にはいいのですが、敵から食らう時も容赦なく3倍ダメージになるため、運悪くクリティカルを食らって主要ユニットが1撃KOなんてことが多発します。1.5~2倍くらいが適正じゃないですかね。
武器によってクリティカル率にも補正があるのは差別化のために良い要素だと思います。



というわけで、本ブログでは初のSRPGレビューとなりました。
是非プレイして、細かいグラフィックや戦闘アニメーションまでの作り込みようを感じてください。そしてたまごがえり編の完結を待ちましょう。

それでは。

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