こんにちは。今回はTwitterでもツイートしました(と書いているうちにXとかいう識別性の低すぎる名前になってしまった)、「未来エイゴウ昔のことは」とその元となった「七月革命」をまとめてご紹介しようと思います。
どちらもこのブログでは最多タイの3度目の登場となる晴好雨奇一丁目(静本はる)さんの作品で、「七月革命」は2014年公開です。その後2016年に前日談として「未来エイゴウ昔のことは」が公開されたということですが、当時私はそれを知らず、私が晴好雨奇一丁目さんを知った時にはすでに非公開となっていました。今回それが再公開となったのでプレイしてみたところ、とても良かったのでレビューを書いていこうと思います。
まずは「七月革命」です。

ジャンル:掌編学園コメディ
プレイ時間:5分
分岐:なし
ツール:吉里吉里
リリース:2014/7
こちらは夏らしく爽やかな短編コメディです。同じ作者さんの「MY HOBBY IS 短編版」も以前レビューした作品で短編のコメディでしたが、本作はあれほどぶっ飛んだギャグなどは出てきません。
教室にエアコンが付いていないことに業を煮やしたミライ川(すごい名前)は、ムカシ田に向かって革命を起こすと宣言。いつの間にか大量の同志を引き連れて職員室へと直訴に向かいます。

こうやって書いてしまうと話の筋は本当にシンプルなんですが、この作者さんのすごいところは演出法ですね。その他の作品でもそうだったのですが、とにかく軽快に見せる手腕に優れていて、革命を起こそうと燃えるミライ川のエネルギーやそれと対比して冷静なムカシ田の様子が非常に際立っています。
大勢の生徒を引き連れたカットインなどもミライ川の動きとともに右へ左へ動き回ります。こうした見た目の楽しさとお約束のようなギャグがぴったりとかみ合って、笑える作品となっています。
タイトル画面やメッセージウィンドウ右下で回転する扇風機の羽も涼しげでいい感じ。
冷めた目で見ているようなムカシ田も、完全に見捨てているわけじゃなくて最後にちゃんとフォローしてあげる関係性なのも爽やか。
続いて「未来エイゴウ昔のことは」です。
(9/10追記:現在本作品は再度非公開となっています)

ジャンル:ノスタルジック短編青春物語
プレイ時間:20分
分岐:なし
ツール:吉里吉里
リリース:初公開2016/8、一時非公開後2023/7に再公開
こちらが今週再公開された作品で、私が今回の記事を書くきっかけにもなりました。
主な登場人物は七月革命で出てきたミライ川とムカシ田。それにミライ川のおばあちゃんです。
ミライ川の快活なキャラクターは変わらないのでこちらもコメディなのかと思いきや、本作はノスタルジックでしんみりとした展開が多く含まれています。舞台は2年さかのぼって2人が高校1年の夏休み。
七月革命では全く出てきませんでしたが、ムカシ田は実は野鳥の観察が趣味。オミルリという珍しい青い鳥がミライ川のおばあちゃんの家の近くにいるということで、ミライ川に半ば無理やりおばあちゃんの家に連れてこられます。
北の山にきれいなオミルリがたくさんいると聞いて必死に探すムカシ田。案内をしつつ自分の興味の赴くままに山で遊ぶミライ川。当時はほぼ交友の無かったはずの2人がどのようにしてお互いを理解し、七月革命の時のような確かな信頼を得ていったのかが分かるような描写がうまい。

そして本作においてもう一人登場する重要な人物がミライ川のおばあちゃんです。
両親不在のミライ川にとっておばあちゃんは唯一の心許せる肉親。しかし村でのおばあちゃんの立場はそんなに良くありません。このあたりは田舎独特の風習がそれっぽく描かれ、単に元気なだけじゃない別の雰囲気を本作に与えてくれます。
このおばあちゃんとのやり取りや関係性を通してミライ川の行動原理や主義が見えてくるのがまた気持ちいい。作中で起こる出来事は決してほほえましいだけではありませんが、後味良好なのはミライ川の明るい性格を行動原理まできっちりと書ききっているからでしょう。

また、本作は背景が加工なしの写真になっています。「ほしのの。」「かえりみち」や、晴好雨奇一丁目さんの最新作である「永遠と長閑」(現在は体験版のみ)などでも写真背景を使用していますし、田舎である設定を活かした作品って写真が多い気がします。
それでいて本作では晴好雨奇一丁目さんらしい演出も生きています。背景の動かし方や音楽の切り替えなど、すごくノスタルジックな感情を刺激してくるんですよね。短編における演出手法について、この人の右に出る者はいないと感じています。
最後にオチがあって締めくくられる本作ですが、そのオチもまた使い方が上手いです。今度は釣りに興味を持ったムカシ田。そこでタイトル画面に戻ってきて、とても綺麗なまとめ方です。
エンドロールがないのがちょっとだけ寂しいかな。
テキストファイルで後書きも同梱されているのでプレイ後にはぜひ読んでみてくださいね。
というわけで今回は「七月革命」「未来エイゴウ昔のことは」でした。
合計しても30分で読み終わり、すっきりと爽やかな気分になれますよ。この時期にぴったり。
それでは。
どちらもこのブログでは最多タイの3度目の登場となる晴好雨奇一丁目(静本はる)さんの作品で、「七月革命」は2014年公開です。その後2016年に前日談として「未来エイゴウ昔のことは」が公開されたということですが、当時私はそれを知らず、私が晴好雨奇一丁目さんを知った時にはすでに非公開となっていました。今回それが再公開となったのでプレイしてみたところ、とても良かったのでレビューを書いていこうと思います。
まずは「七月革命」です。

ジャンル:掌編学園コメディ
プレイ時間:5分
分岐:なし
ツール:吉里吉里
リリース:2014/7
こちらは夏らしく爽やかな短編コメディです。同じ作者さんの「MY HOBBY IS 短編版」も以前レビューした作品で短編のコメディでしたが、本作はあれほどぶっ飛んだギャグなどは出てきません。
教室にエアコンが付いていないことに業を煮やしたミライ川(すごい名前)は、ムカシ田に向かって革命を起こすと宣言。いつの間にか大量の同志を引き連れて職員室へと直訴に向かいます。

こうやって書いてしまうと話の筋は本当にシンプルなんですが、この作者さんのすごいところは演出法ですね。その他の作品でもそうだったのですが、とにかく軽快に見せる手腕に優れていて、革命を起こそうと燃えるミライ川のエネルギーやそれと対比して冷静なムカシ田の様子が非常に際立っています。
大勢の生徒を引き連れたカットインなどもミライ川の動きとともに右へ左へ動き回ります。こうした見た目の楽しさとお約束のようなギャグがぴったりとかみ合って、笑える作品となっています。
タイトル画面やメッセージウィンドウ右下で回転する扇風機の羽も涼しげでいい感じ。
冷めた目で見ているようなムカシ田も、完全に見捨てているわけじゃなくて最後にちゃんとフォローしてあげる関係性なのも爽やか。
続いて「未来エイゴウ昔のことは」です。
(9/10追記:現在本作品は再度非公開となっています)

ジャンル:ノスタルジック短編青春物語
プレイ時間:20分
分岐:なし
ツール:吉里吉里
リリース:初公開2016/8、一時非公開後2023/7に再公開
こちらが今週再公開された作品で、私が今回の記事を書くきっかけにもなりました。
主な登場人物は七月革命で出てきたミライ川とムカシ田。それにミライ川のおばあちゃんです。
ミライ川の快活なキャラクターは変わらないのでこちらもコメディなのかと思いきや、本作はノスタルジックでしんみりとした展開が多く含まれています。舞台は2年さかのぼって2人が高校1年の夏休み。
七月革命では全く出てきませんでしたが、ムカシ田は実は野鳥の観察が趣味。オミルリという珍しい青い鳥がミライ川のおばあちゃんの家の近くにいるということで、ミライ川に半ば無理やりおばあちゃんの家に連れてこられます。
北の山にきれいなオミルリがたくさんいると聞いて必死に探すムカシ田。案内をしつつ自分の興味の赴くままに山で遊ぶミライ川。当時はほぼ交友の無かったはずの2人がどのようにしてお互いを理解し、七月革命の時のような確かな信頼を得ていったのかが分かるような描写がうまい。

そして本作においてもう一人登場する重要な人物がミライ川のおばあちゃんです。
両親不在のミライ川にとっておばあちゃんは唯一の心許せる肉親。しかし村でのおばあちゃんの立場はそんなに良くありません。このあたりは田舎独特の風習がそれっぽく描かれ、単に元気なだけじゃない別の雰囲気を本作に与えてくれます。
このおばあちゃんとのやり取りや関係性を通してミライ川の行動原理や主義が見えてくるのがまた気持ちいい。作中で起こる出来事は決してほほえましいだけではありませんが、後味良好なのはミライ川の明るい性格を行動原理まできっちりと書ききっているからでしょう。

また、本作は背景が加工なしの写真になっています。「ほしのの。」「かえりみち」や、晴好雨奇一丁目さんの最新作である「永遠と長閑」(現在は体験版のみ)などでも写真背景を使用していますし、田舎である設定を活かした作品って写真が多い気がします。
それでいて本作では晴好雨奇一丁目さんらしい演出も生きています。背景の動かし方や音楽の切り替えなど、すごくノスタルジックな感情を刺激してくるんですよね。短編における演出手法について、この人の右に出る者はいないと感じています。
最後にオチがあって締めくくられる本作ですが、そのオチもまた使い方が上手いです。今度は釣りに興味を持ったムカシ田。そこでタイトル画面に戻ってきて、とても綺麗なまとめ方です。
エンドロールがないのがちょっとだけ寂しいかな。
テキストファイルで後書きも同梱されているのでプレイ後にはぜひ読んでみてくださいね。
というわけで今回は「七月革命」「未来エイゴウ昔のことは」でした。
合計しても30分で読み終わり、すっきりと爽やかな気分になれますよ。この時期にぴったり。
それでは。