フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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2023年11月

こんにちは。今回はサカモトトマトさんの「ぺ使いペペロ」のご紹介になります。

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ジャンル:簡単操作アクションゲーム
プレイ時間:1プレイ10分以内
ツール:WOLF RPGエディター
リリース:2022/2


サカモトトマトさんと言えば、昨年このブログで「ジュエ☆スタ!」を扱いました。ジュエ☆スタ!はパズルゲームでしたが、今回はアクションゲーム。どちらも単純なルールかつ簡単な操作ながらやり込みがいのある作品となっています。


本作の目的は簡単。聖なる「ぺ」(画像で赤いのが自機です)を操作して、邪悪な「ぺ」(青いやつ)を回収していきます。ぺが重なるようにマウスを移動させたらOK。
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邪悪なぺは左から右へと次々に流れていくので、テンポよく聖なるぺを重ねて回収していきましょう。
回収ごとにスコア倍率が上がり、倍率は一定速度で下がっていくのでなるべく素早く消すといいスコアを狙えます。

最初のうちはカーソル移動だけで回収できましたが、ゲームが進んでくると「ぺ」の向きを回転させなければいけなかったり、当たると自機が壊れてしまう敵が出現したりとギミックが増えていきます。
ゲームオーバーはなく、救済措置もあるためクリアするだけなら簡単ですが、なるべくいいタイムで、高い得点を取ろうとすると結構なやり込みが必要になってきます。
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本作のゲーム性以外のところでは、News!によるフレーバーテキストの多彩さに触れておきましょう。
上のスクリーンショットでは、ちょうど300個の「ぺ」を消したタイミングだったようで、関連したニュースが流れています。そういったタイミング以外では、ペペロンチーノが人気だとか、「スマッぺ」が解散したとか、ぺに関するニュースが流れてきます。流れてくるニュースのシュールさもあって、Cookie Clickerにある同様の機能を思い出しました。

そんなちょっとした笑いを提供してくれるNews!ですが、一つ重要な情報が出ることがあります。上級モードへの入り方です。通常モードでは物足りないと感じたあなたはぜひNews!をよく見たうえで上級モードを試してみてください。ギミック自体は変わりませんが、ぺの数や速度が上がったり、敵の数も増えたりしていてかなり難しくなっています。これでSランク取れたらすごいです。
さらに上級をクリアすると裏面への行き方も……
ちなみにsetting.txtをいじることでさらに高難易度にすることもできるようです。狂人御用達ですね。


そんな本作には一応ストーリーがあります。
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邪悪な「ぺ」は一体誰の仕業なのか、聖なる「ぺ」とは。裏面までクリアすると、そのちょっぴり意外な答えが明らかになるでしょう。
このストーリーモードですが、一度見たら再度見ることはできないっぽくてやや残念。あとはタイトル画面がないのも少し寂しいでしょうか。



さて、私は上級モードはやり込むには難しいと思ったので、通常モードでハイスコアを狙ってみることにしました。同梱の攻略書によると、なるべく素早く、取りこぼしがないように回収すればいいということなので頑張ってノーミスでの回収を目指します。
まずはぺの角度調整を素早くできるようになる必要がありました。マウス右ボタン押下で時計回り、左で反時計回りに回転するので、どちらの方向から回すのが照準合わせに最適なのかを瞬時に判断し、その通りに操作していきます。「愛と勇気とかしわもち」をやり込んだ経験がこんなところに活きるとは!
慣れると「ペクトのどうくつ」の落石がある地点より左側ですべてのぺを回収できるくらいになります。

そして敵が出てくる時間になったら画面全体を広い目で見渡します。各ステージで敵の出現位置は固定なので暗記したうえで対処。「ペテン・ぺぺ遺跡」ステージで登場する羽が厄介で、射出角度が定まっていないため出現したらすぐに角度を確認して避けるようにします。射出速度が一定でないのが嫌らしいところで、まだ大丈夫だろうと思っていたら高速で飛んできて衝突、なんてことが多発します。

あとは邪悪なぺの取り逃しがないように頑張るのですが、その際出現順(画面右から)にこだわらない方が良かったです。障害物に囲まれて取りに行けないものがあったら角度だけ確認したうえでいったんスルーして、取りやすいぺを回収後に向かうと成功率が高かったです。

あとはぺや敵の出現パターンが変わるときにBGMも切り替わるので、サウンドはしっかり聞きながらプレイするのをお勧めします。

そんな私のやり込みの成果はこんな感じ。
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Twitter検索した感じ、「ぺぢから」9800台の報告は見かけなかったのでこれはかなりいいスコアなんじゃないでしょうか。


というわけで今回は「ぺ使いペペロ」でした。
慣れれば1プレイ6分以内ですが、私は3時間くらいはやり込んだでしょう。そして右手人差し指が痛くなりました(「ジュエ☆スタ!」の頃から成長してない…)。私の記録を超えたらぜひ教えてくださいね。

それでは。

こんにちは。今回は妹れっぐぅおーまーさんの「Be alive ~What is your precious~」のレビューをしていこうと思います。
私は好きですが、本作はかなり人を選ぶ作品であることは間違いないので、注意書きなどをよく読んだうえで納得された方のみプレイしてください。

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★favo
ジャンル:王道学園ものエロゲ
プレイ時間:1ルート2~3時間。フルコンプまで5~6時間程度
分岐:攻略対象3人。計8エンド
ツール:NScripter
リリース:2006/12
備考:18禁。特定ルートで凌辱シーンあり。見たくない場合回避パッチを当てる事(後述)


さて、2年半ほど前にこのブログを開設し、週一弱のペースでレビューを書き続けてきましたが、今回で記念すべき100本目となります(コラム等があるため総記事数は128本となっています)。何か思い入れのある作品を取り上げたいなと思って考えていたのですが、私が初めてやり込んだフリーゲーム(カサハラン.COMさんの「漢字迷路三国志」です)はFlash製で既にプレイできなくなっていますし、ノベルゲームとの出会いのきっかけとなったむきりょくかん。さんの「ほしのの。」については過去に取り上げました。他に私に大きな影響を与えた作品と言えば、私が将棋を始めるきっかけとなったペットボトルココアさんの「夏ゆめ彼方」がありますがこれも以前にレビューしています。
色々考えた結果、今回は私が初めてプレイしたアダルトゲームであって大変印象に残っている本作を取り上げることにしました。というわけで1月にTetraScopeさんの「桜哉」の記事を書いた時以来の18禁作品となります。通常のレビューに比べて私の思い出話みたいなものも長くなるかもしれません。


本作は2006年のコミケが初出とかなり古く、現在公式ページのダウンロードリンクはミラーを含めすべて無効になっているため今からの入手はちょっと大変かもしれません。一応Wayback Machineでアーカイブをたどれば今でもダウンロードできることは確認しています。公開当時はエロゲと饗はおろかBOOTH(pixiv)すらなかったので配布場所は相当限られていたはずで、しょうがない面もあるとは思いますが昔の作品がプレイできなくなってしまうのは寂しいですね。


さて、では本作のあらすじ紹介に参りましょう。
主人公の藤原伸一は高校2年生。両親が海外出張中(お約束)のため、同じ高校に通う1年生の妹、千佳と一緒に家事を切り盛りして生活しています。学校では幼馴染の坂野恵理、悪友の北沢明と一緒になんだかんだ上手くやっています。最近では委員長キャラの榊原奏とも親しくなって、5人で楽しく高校生活を送っていました。期末試験のために勉強を教えてもらったり、試験終わりにゲームセンターで遊んだり。しかし時期はもう高校2年生の冬。受験勉強や卒業後のことを考えるとみんなで遊んでいられる時間もそれほど長くはありません。彼女らとの関係を一歩進めることはできるのでしょうか…。


と、こんな感じで基本的な設定を説明すると非常にオーソドックスな内容になっていると思います。
しかしこれまで文字通り健全なゲームしかプレイしていなかった私には、これがエロゲのノリなのか! と思った個所がいくつかありました。(もちろん、エロゲは全部そうだというわけではないのは今は知っているわけですが)

まず画面がピンク色!
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タイトル画面の色味もそうですし、この学校の制服はなぜか男女問わずピンク色のようで、立ち絵やスチルが自然とその色になっていきます。別に肌の露出が多かったりするわけではないのですが、なんか独特だなと思ってました。


そしてなぜか同性の悪友キャラ(明)がキモい。コイツ、何なんだ? というか公式サイトの攻略ページの中で作者にネタにされてるし…
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また、何でもないシーンでのサービスカット(?)が多い。最初の学食でのシーンからモブの女の子が普通にパンチラしているなど、そういった要素のあるスチルが多めです。

正直に言うとプレイしていた時には、これらの要素は良く分からないな、こういうノリなのかなと思って流していました。別にえっちなゲームじゃなくていいかと感じていたのです。しかし最後までプレイしてみると、私に強烈な印象と感動を残していったすごい作品だったのでした。それに関しては後述します。



さて、複数ヒロインである本作は当然、共通ルートと個別ルートに分かれています。クリスマス前までが共通ルート、それ以降が個別ルートとなっていますが、本作の特徴として共通ルートの比重が重めということが言えるでしょう。分岐直前まで5人で集まって遊んでいたりするので、複数ヒロインものでありがちな「後半で他のヒロインの存在感がなくなる」ような流れになりません。ヒロイン同士の掛け合いも描かれるなど、ただの賑やかし要員になっておらず丁寧に作られているんだなと感じられます。
個別ルートに入ってからも、きちんと友人同士の付き合いであった今までの関係性を踏まえた展開になっており好感を持てます。各ルートで恋人エンドと友人エンドにさらに分岐するわけですが、これはどちらに行っても言えるでしょう。

逆に言うと、恋愛ものとして見たときのどきどき感みたいなものはやや物足りないと感じるかもしれません。共通ルートの間の単なる友人としての関係が長く、その間は異性としての意識などは描かれないため終盤で突然恋愛ものになってしまう印象はぬぐえません。
その面で一番良くできていたと感じたのが委員長キャラである榊原ルートでした。幼馴染である恵理や妹である千佳とは違って、榊原だけはゲーム開始時点ではほとんどしゃべったことのない相手です。その状態から、何となく相手のことが気になるとか、少しずつ態度が軟化していくとかいった変化がほかのルートよりも濃く描かれていたように思います。このルートだけヒロイン視点が描かれているのも私の好みに合致するようでした。ご両親が良い人で良かったですね。
そしてルートの最後で18禁シーンがあります。初めて読んだ私は、なるほどそんなもんか(良く分からん)なんて思っていました。

千佳ルートについてはどちらのエンディングに行っても微笑ましい内容となっており、実の兄弟での近親相姦的な展開はありません。途中何回も伸一のことをシスコン扱いしたネタがありますが、このルートを読むとむしろ千佳の方が重度のブラコンでは? なんて思ったりします。

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ここまででも「良くできた作品」であると思いますが、これだけだとおそらく私にここまで強い印象を与えなかったでしょうし、正直わざわざ18禁の作品をやらなくても良かったかなと感じたでしょう。しかし本作は幼馴染の恵理ルートで本性を現します。

ヒロインが3人いて恵理ルートだけ1周目ルート制限がかかっています。1回目では強制的に友人エンドに。2周目で初めて「ホテルに入る」という選択肢が登場します。当然そこで恵理と行為に及ぶわけですが、問題はその後です。ずっとほのぼのとしていたこの作品の雰囲気はここで一気に反転します。

念のため再度警告しますが、このルートの先ではかなりショッキングな展開が続きます。具体的な暴行が行われるシーンはパッチ適用により飛ばす選択肢を有効化できますが、このルートの主題は事件によって深い心理的なダメージを受けた人物たちがその後どのように生きていくかです。鬱ゲーは受け付けないという方のプレイもお勧めしません。
気にしないという方もシナリオの加筆が若干あるためパッチ適用をお勧めします。公式サイトからver1.01パッチをDL・解凍し、作品フォルダのnscript.datを上書きしてください。パッチ適用後も該当のシーンを飛ばさずに読むこともできます。



このルートでは、伸一と恵理を追っていた千佳が暴漢に襲われてしまいます。それに感付いて現場に向かった伸一も犯人の手にかかって意識不明の大けがをさせられることになります。
幸いにも命に別状はなかった2人ですが、同時に負ったであろう精神的ショックの深さは計り知れません。そんな中で行われる千佳と恵理のあの会話シーン。愛し合っていたからこその行動だったのに、友達を大切に感じていたからこその気遣いだったのに、どうしてこう現実は悪い方向に進んでしまうのでしょうか。あの時こうしていればよかった、自分のせいでこんなことになってしまったという後悔が絶え間なくあふれ出てきて、優しさがあるからこその悲しみを際立たせるシーンです。しかし恵理の悲鳴交じりの決死の説得も届かないほど、千佳の心はずたずたに壊されてしまっていたのです。

そんなシーンの後、無音で始まるモノローグ。そこで事件がもたらした影響の大きさを再度実感させられることになります。伸一・千佳のみならず恵理や明、榊原を巻き込んで、事件から立ち直るための必死のリハビリが始まるのです。
確かに恵理は伸一とちょっと特別な関係になることを望みました。しかしそれは5人の友情を壊してまで望むものではありません。実際恵理は事件の前にも、これからもいつも通りで、と伸一に告げています。ところがそんな希望は事件によって完全に破壊され、悲痛な運命を甘んじて受け入れるしかなくなります。
生半可な友情だったらここで終わりになってしまうかもしれません。私だったらすべてをあきらめて自分の心も壊れてしまうかもしれません。しかし5人の友情はそうではありませんでした。恵理は自分にとって何が一番大事だったかに気付いたのです。まさに本作の副題にあるWhat is your preciousとは5人で遊んで楽しく過ごした日々、皆を思う友情であったのです。ほのぼの系の作品だったら何となく受け流してしまうであろう友情描写であったとしても、どうしようもなく悲しいこの状況だからこそ、こうも心に深く刻まれるものなのか、というのを強く感じたのを覚えています。
序盤のシーンではただの同級生でしかなかった榊原も、彼女がいないことに悪態をついてばっかりだった明も、こうも献身的に恵理や伸一を支えてくれます。こんな健気な友情だからこそ、全員を全力で応援しながら物語を読み進める手は止まりません。

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その後の学校のシーンなどは、今になって冷静に考えてみれば現実的ではないでしょう。しかしそんなことがどうでもよくなるほど私はこの作品に夢中になっていました。愛を越えた先にあるものをこんな形で描くことができるのかということに。そしてこの展開は同人の18禁作品でしか許されないだろうとも感じていました。

最後にクリスマスの日の会話などが伏線となって真実に気付くあの展開も良く作られています。私が最初に読んだときはこれが後で効いてくるなどとは全く思っていなかった何気ないシーンなのですが、そこまで計算されていたことに気付いてまた深く驚くのです。これも、伸一が恵理や千佳を大切に思っていて、しっかり観察していたゆえでしょう。

ラストシーンにはver1.01で加筆されたシナリオが出てきます。やや説明的過ぎるかなという感じもしますが、ここにきてようやくひと段落したと安心できる内容になっていて、全ルートの総まとめとしての終止感をしっかりと纏ったエンディングです。このエンドロールだけ振り返り的にこれまでのスチルがついていたりもしますしね。1つ注文を付けるとしたら、最後に全員で笑っているスチルとかあったらより感動的だな、というところでしょうか。
若干ネタバレ(クリックで展開) まさかタイトル画面の時点で盛大にあの展開を示していたとはね…全然気づきませんでした。

ちなみに本作の攻略は簡単です。攻略したいヒロインの選択肢を選び続ければよいです。優柔不断な選択をしているとノーマルエンドに行きます。


というわけで今回は「Be alive ~What is your precious~」でした。
本作が私にとって初めての18禁ゲームだったからこそ、単にえっちなシーンがあるだけでなく話のテーマに大きくかかわってくるような内容を含む作品が好きになったのかもしれません。この辺のことは「桜哉」で語りましたね。
あのルートを受け入れられる人はそう多くはないかもしれませんが、私を深く感動させたのもあのルートであることに間違いありません。鬱展開に耐性がある方、ぜひプレイしてみてください。このルートに出会ったからこそ、私はエロゲにもシナリオの良さやテーマ性を求めているといっても良いでしょう。

それでは。

こんにちは。今回はmisosioさんの「じごくのインターネッツ」をご紹介します。

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ジャンル:インターネットオカルトノベルゲーム
プレイ時間:45分
分岐:ED3種
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2021/6


さて、misosioさんといえば2020年のティラノゲームフェスでグランプリを獲得した「お前のスパチャで世界を救え」が有名ですね。私もフェス期間中にプレイした覚えがあります。そんなmisosioさんの2作目である本作については存在は知っていながら長らくプレイしていませんでした。今週ようやくプレイしまして、前作にもまして面白い切り口から楽しませてくれる作品だなと思いましたのでレビューという形にしておこうと思います。
ところでReadMeにあった作者サイトに行ったらWordPressのサンプルページのままなのはさすがに何とかしていただきたい…リンクは貼らないでおきます



本作の主人公は、就職活動をしながらも副業としてブログを書いているフリーター。きくらげというハンドルネームでいわゆるいかがでしたか系の記事を量産しています。
ある日怪談系の記事を書き終えた後散歩に出かけると、謎の声に導かれ、「奈落ちゃんの出張占い室」にたどり着きます。奈落ちゃん曰く、明日は雨が降り槍も降り最悪の一日になるでしょうとのこと。特に信じてもいなかったきくらげですが、翌日スマホに妙な通知が。注文してもいないウーマーイーツの配達がやってきて、顔のない配達員に襲われてしまう……、自分が書いた根も葉もない記事にそっくりの状況に怖くなり、奈落ちゃんに助けを求めます。無事に配達員を追い払って平穏な日常を取り戻すことができるのでしょうか…

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タイトルを見ればわかる通り、本作はインターネットでのあるあるをオカルト風のネタにした内容となっています。フリーゲームを遊ぶ人というのは大抵ネットからゲームをダウンロード、あるいはブラウザからプレイするわけで、なかなか相性のいいテーマだなと感じます。よく見るインターネットスラングやネット上の流行が元ネタになっていると分かるシーンも多数出てきて、ほとんどのフリーゲーマーには伝わるネタになっていると思います。

本作は大きく4つの章に分かれており、第1章では上述の顔のない配達員事件が発生します。
主人公が勝手にでっち上げたオカルト記事が現実になってしまい大変なことに、という内容ですが、実際我々が見るインターネットの世界でも無責任で情報量の無い記事に戸惑うことも多々あるわけで、あるある~とうなずきながら読み進めることができます。
最近だとTwitter(X)で収益配分が始まってから、青バッジ付きアカウントがインプレッション稼ぎのために無意味なコピペツイートでリプ欄やトレンドを汚染しているのを見ると本当にどうにかしてほしいと思いますよね。見かけるたびにブロックしてるんですが全然減りません…。以前は公式の証であったマークが今やbotの目印みたいになっちゃってます。

話をゲームに戻しまして、主人公は自分が広げてしまった偽情報に対抗するために、世間が偽情報への関心を失うまで出前アプリのレビューを延々と続けて正しい情報を広めなくてはならなくなってしまいます。この展開、現実のインターネットと同じで面白いですね(現実においては対抗しなくてはならないのは偽情報を流した本人ではないことが多いのが難しいところですが…)。過去の自分が調子に乗ってやったことに苦しめられるというのは、ある意味のび太が毎回ひみつ道具でやらかしてしまうドラえもんのお約束に通じるなあと感じました。そういった古典的王道展開を現代風にアレンジしてフリーゲームの世界になじませた手腕は見事だと言えるでしょう。

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こんな感じで2章、3章と物語は進んでいきます。それぞれ宇宙猫とちいかわが元ネタと思われます。毎日インターネットに触れている方ならまず見たことがあるでしょう。それにしてもどちらも長いこと人気を集め続けてますよね。本作に関係ないですが宇宙猫にWikipedia記事があってびっくりしました。

この章でも主人公の過去のやらかしなどに奈落ちゃんと一緒に対処していくのですが、ブログでいい加減なことを書きなぐっていたことは反省したようで、一件一件地道に処理していきます。こうした対応を見ていくと、インターネットの世界って本当に大変だよなあと思えます。一回広まったものは完全に消し去るのはほぼ不可能ですし、どんないい加減な事でも言ったもの勝ちみたいな側面だってあります。この辺までくると主人公のことはのび太とバカにできないし、いつ自分が当事者になってもおかしくないよなあという気分で読み進めることができます。


4章で最終章に入る本作。そこで主人公はある選択を迫られることになります。
願いが叶う力があると言われるトンネルに取材に行くことにした主人公。奈落ちゃんと話しながらこれまでのやらかしを振り返り、インターネットなんて最悪だよと悪態をついてしまいます。もっとましな世界はないのかなと思いながらトンネルを抜けた先にあったのは、美しいインターネットの世界でした。
悪意のあるコメントはなく、アフィリエイト狙いの量産型記事に悩まされることもない。コツコツとブログ投稿を続けた甲斐があってメディアから寄稿の依頼や面接の誘いまで。理想的な世界に見えますがどこか違和感があります。このままこの美しい世界に住むことにするのか、それとも奈落ちゃんと事件を解決したあの世界に戻るのか。
ここでの選択によってエンディングが分岐しますが、どれを選んでもBAD ENDということはなく、それなりに幸せな結末が待っています。くだらないことばっかりで嘘だってたくさんあるし問題も多いインターネットの世界だけれど、だからこそ面白いものに出会える。笑顔でそう言える奈落ちゃんが素敵です。私もインターネットの中に面白いものがあると思っているからこそ、フリーゲームを探してプレイしたり、こうしてレビューを書いたりしているわけですからね。この記事が作内でいわれているようなスカスカのクソ記事でないことを祈ります。

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というわけで、今回は「じごくのインターネッツ」でした。
わざわざフリーゲームに関するブログを読んでくれる方にはうなずいてもらえる内容が多数あると思います。インターネットの面倒くさいところ、楽しいところを含めて受け止められる方、プレイして損はないですよ。

では。

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