フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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2024年02月

こんにちは。

先日Twitterを眺めていたら、MusMusさんの「子供部屋の夢」というフリー音楽素材の説明文が感動的、という趣旨の投稿が流れてきました。

原文にサイト名もリンク先もなかったので、紹介する意味を込めてリンクをつけて引用したところ、私がこれまで書いたどのブログ記事やツイートよりも拡散される事態に。


というわけで2年半ぶりに私が好きなフリー音楽素材について語っていこうと思います(以前の記事はこちら。特定の仕方編/ボーカル付き編/オルゴール曲編)。今回は素材のタイトルや説明文が良いもの、私が出会ったゲーム内での場面とぴったりマッチしているものをチョイスしています。



おそろい(もっぴーさうんど)

これまでもブログに何回か登場していますが、説明文がよかった曲としてまずはこの曲が浮かびます。
私がこの曲に出会ったのはまゆげさんの「まい、ルーム」のエンディングです。詳細はレビュー記事に譲りますが、この作品ではとにかく双子のマイとメルの悲しい絆が魅力的です。そして最後にとっても優しくてかつ寂しげなオルゴール曲が流れてきて大変印象的だったため調べたところ、この曲にたどり着きました。そこにあった説明文はこんな感じ。
そばに居てくれることの喜び。一緒に居ることの幸せ。
たったこの1行ですが、ゲームをプレイした感動、印象的な音楽とともに私の胸に深く刻み込まれたのです。その後「乙女ゲームのヒロインになったのに親友が邪魔すぎて攻略ができません!」(Shadow's Silhouette)や「つばさヘブン」(cream△)などの作品でも耳にすることになり、大好きな曲の1つとなりました。

さよならさんぽ(居月ナオ)

この曲は以前、「お地球見の丘より。」というサイトにて公開されていました。残念ながら現在は閉鎖されていますが、現在作曲者さんはYouTubeに活動の場を移しており、本楽曲もYouTube上で公開されています。動画を見ると、本楽曲は亡くなってしまった愛犬のカレンくんとの別れを偲んで作曲されたものと分かります。散歩が好きだったカレンくんは、亡くなる直前の体調が悪い時期も散歩をしたがって顔を出してきた。一度くらい首輪も外して自由に駆け回らせてあげたかったなあ、という内容で、これだけでも十分心動かされる曲です。
さて、私がこの曲に出会ったのは、むきりょくかん。さんの「Normalize Human Communication」(原作Flash版)でした。骨髄移植手術のために明後日から無菌室に入ることが決まっている鈴乃。手術が失敗すればもう病院の外を歩く機会は永遠にないであろう彼女は、ささやかな反抗として深夜の院外散歩に出ます。そのシーンでかかる楽曲がこの「さよならさんぽ」なのです。まさにぴったりとしか言いようがありません。私が本当に好きなシーンであり、楽曲であり、ゲームです。

窓の外の雪(audioAtelier)

私がこの曲に出会ったのは、水無月恵さんの「君とサクラを」です。基本的には脱出サスペンスで緊張感の漂うシーンの多い作品ですが、この曲がかかるとゆったり落ち着いた気持ちになれました。窓のない閉鎖病棟から、少しでも外を想像しているのかなあと感じられ、曲想も好きだったのでDLして良く聞いていました。
そして次に出会ったのがmint wingsさんの「クリスマス*フラワー」です。タイトル通りクリスマスのお話で、ラブラブな2人のデートの様子を眺める幸せな短編です。最後に雪が降ってくる場面でちょうど本楽曲が流れてきて、「お~この曲知ってる!! タイトルもロマンティックな雰囲気もピッタリだよね~」と思っていました。なお途中のシーンで流れるTAMさんの「聖夜」もピッタリで良く印象に残っています。

届かなかった願い(ポケットサウンド)

この曲は、★Blue Cometさんの「クロノスの箱庭」のタイトル画面で使われている曲です。こちらも以前レビュー記事を書きました。何度ループを繰り返しても親友である日奈太が死んでしまう。彼の願いは届くのか…という内容にピッタリのタイトルとなっています。
実はこの曲に関しては私が自分で気付いたのではなく、レビュー記事を読んだ作者の深嶺ユミアさんが直接コメントで教えてくれました。自分で気付きたかったなあと少しだけ悔しい気持ちがありつつも、該当記事のみならず過去の音楽素材関連の記事なども見ていただいたうえで私が興味を持ちそうな情報としてわざわざ教えていただいたことを大変うれしく思います。

葉桜になっても(TAM Music Factory)

mint wingsさんの「ココロ、そらいろ。」で出会った曲です。この作品もレビューを書いているのでゲームの詳しい内容はそちらに譲ります。
保健室登校で得た仲間たちに力をもらい、前向きになった主人公のいつき。彼は中学校の入学式で、周囲の孤立していそうな子にも気をかけられる程にまで成長していたわけですが、そのシーンでかかる曲がこの「葉桜になっても」です。入学シーズンに咲く桜が、花の時期を過ぎて葉桜になっても一緒に前向きでいられるような、そんな想像をさせてくれる素晴らしい曲とタイトルでした。背景写真などの演出も込めて好きなシーンです。

番外編・歪んだ想い(Studio神無月)

ここまでに出てきた曲は全て無料素材でしたが、本楽曲については有料素材になります。DLsiteにて販売中の素材集、著作権フリー素材集 Vol.26 和風・神秘的系ADV素材 BGM20曲 WAV+ループOGGの11曲目です。私がこの曲を初めて聴いたのは、ペットボトルココアさんの「かげろうに咲く花」のタイトル画面です。以下、若干のネタバレがあります。
クリックで展開 ゲームを起動するとすぐこの曲を聴くことになるのですが、同時に表示される女の子の絵がとても可愛らしいんですよ。ゲームの内容も、車にひかれたはずの妹の陽菜が復活して帰って来た! 失った時間を取り戻すように楽しく遊んでるぜ! のようなほのぼの系のシナリオ。タイトル画面で抱いた妙な違和感なんてすぐに忘れてしまいます。
しかし物語がエンディングを迎えてタイトル画面に戻ってきたとき、この楽曲とタイトルがいかに本作の内容を示唆していたかを思い知ることになるのです。イラストの構図もBGM選曲も完璧。曲想がピッタリなのはすぐに感じましたが、素材となっている本楽曲を見つけて「歪んだ想い」というタイトルを見たとき、作者さんには本当にしてやられたなと深く印象に残りました。
10分程度の短い作品なので、ぜひプレイしてほしいなと思います。


今回はこんなところです。
楽曲そのものが好き、と言うのに加えてゲーム内での使われ方だったりタイトルや説明文であったり、そういった周辺情報があると記憶への残り方が本当に違います。物語性が生まれるとただの点だったのが線になって面になって、より強固に脳みそに刻まれる感じがします。
他にもこんな素敵な楽曲あるよ! という情報提供もお待ちしてます。皆さんの好きな曲を教えてください。


それでは。
次回は通常のレビュー記事となる予定です。

こんにちは。今回はりっとさんの「スノードームは夢を見るか?」のレビューです。

snow1

ジャンル:ファンタジーノベルゲーム
プレイ時間:2時間
分岐:なし
ツール:Live Maker
リリース:2015/3


本作は実は同作者の前作「snow date」の続編となっているので、前作を先にプレイするのが推奨されています。「snow date」は10分から15分程度の短い作品なので手軽に読めるでしょう。

「snow date」では、「この世界はスノードームの中なのよ」という印象的だけれども単体で意味の分からない台詞が出てきます。本作は同じ世界観の中で、この台詞がどういう意味だったのかが次第に明らかとなっていくお話と言えるでしょう。


さて、本作の主人公の少女は非常に癖の強い人物です。ある雪の日、町でこれまた素直じゃなくてややこしい男の子とぶつかり転んでしまいます。お互いに罵り合ってその日は別れた2人でしたが、翌日同じところでまた顔を合わせることに。気まずい沈黙かと思いきやまたも口げんかが始まるのでした。
お互いにうっとおしいと思いながらも先に立ち去るのはなんか負けた気がして意地でもどかない2人。何時間経っても雪が降り積もっても寒さに耐えながら絶対に動かない2人、もはやツンデレとかいう域を超えてバカというか仲良しというかなんというか…

物語の序盤はこんな感じで素直とは正反対の2人がお互いをバカにしたりいたずらしたりしながらも、次第になくてはならない存在へと変化していく様子がじっくりと描かれます。不本意そうにしながらもお礼を言うことを覚えたシーンなんかは偉いね~とほめてあげたくなります。ラブコメのような状態で見ていて楽しいのですが、これは本作の導入部分にすぎません。

snow2

クリスマスの前の日、どうせ一人ぼっちで寂しいんだろなどといつものように突っかかっていく二人。話し相手くらいにならなってやらないこともない、と何とも遠回しに明日も会う約束をします。
そんな翌日、女の子はいつものようにベンチで待っているのですが、男の子はいつになっても現れません。その日は妙な胸騒ぎがするまま帰宅することにしますがやはり不安。翌日、森の方で見たという目撃証言をもとに探しに行くことにします。しかし結局見つけることは叶わず、彼の家に帰った痕跡もなく、完全に行方不明となってしまうのです。

失意の中帰宅した女の子のもとへ、突然「願いを叶えてやってもいいんだぜ」などと言う怪しい男が現れます。怪しいとは思いつつも藁にも縋る思いで彼を返して欲しいと望んだ少女は、クリスマスの2日前、彼と喋っているところに戻ってきます。そう、本作はループものであったことがここで明らかになるのです。



ループものに慣れた皆さんなら大体予想がつくでしょう。何度ループを繰り返そうと、簡単に彼を救うことはできません。森へ行かないよう忠告したり、見張ったりもしますがことごとく失敗してしまいます。そんな彼女がたどり着く真相とは一体どんなものなのでしょうか。


ループという形式をとる作品は他にも多くあります。当然ながら同じ時間を何度も繰り返すことになるため、中にはその繰り返しの描写が単調でダレてきてしまう作品もあるのですが、本作は本筋に必須な描写だけに絞ってテンポよく進んでいくのが長所の1つかなと感じました。

2周目の段階では森へ行くなと忠告し、それ以外はいつものように彼とじゃれ合っていたところまで書かれていますが、再度救出に失敗して以降はもう各周回ごとの様子が細かく出てくることはありません。その分女の子の頭の中には彼を救出することだけしかない様子がプレイヤーにも伝わってくるのです。

その後もメインのストーリーに絡んでくるシーンだけが細かく描写されるので本筋が掴みやすく、また途中で飽きたりすることなく読み進められるのです。
本質でない部分が省かれている分密度が高く、プレイ時間のわりに大作をプレイした気分にもなれます。


そんな感じで結構な分量のある作品なのですが、この間ずっと登場人物に名前がないのはさすがに寂しいなと感じました。レビューでも男の子とか女の子としか書けませんし、作内でも常にお互いのことを「あいつ」「おまえ」のように呼んでいます。15分の短編とかならそれでも十分かもしれませんが、2時間ほどそのままだと名前がないのがかわいそうな気もします。あとはたまにどっちのセリフか分かりにくくて一瞬考えないといけなかったりといった場面も出てきます。

snow3


さて、本作をプレイしていいと感じたところの1つとして、優しい雰囲気を挙げておきましょう。
先述したようにこの物語に出てくる人物はきつい性格をしているわけですが、そんな2人の交流からこんなに優しいというか微笑ましい空気感になるとは驚きでした。表面上の冷たい態度だけでなく、内心の友情や良心みたいなところがしっかりと描写されているおかげだと思います。子供って変なところで意地を張ることがあるよね~、と温かく見守りながらプレイしていくことができます。ツンデレ系の恋愛ものなどとはここが決定的に読み心地が異なるかなと感じました。

また、世界観もそれに合わせて優しく、程よくファンタジックに作られています。私は以前、同じ作者さんの作品で「わたしの愛する、壊れたせかい」や「空っぽたまごは泥を見る」などをプレイしているのですが、本作もこれらに近い雰囲気で進行します。本作には悪役っぽい人物(?)も登場するわけですが、それ以外の町の人なんかは皆優しく良識のある大人たちといった感じで安心して読み進められますね。童話風の世界観とスノードームというアイテムの相性もばっちりだと思います。


逆に少し気になる点は、結局この世界で2人がどうなるのか、謎の男の正体は何なのか、といったところにはっきりした答えが与えられないまま終わってしまうところでしょうか。意味深なセリフによってプレイヤーの興味を引いたり、「男の言う対価とは何だろう」みたいな疑問を引っ張って物語の推進力にしたりといったあたりは上手いなあと感じるのですが、最終的に疑問の解消に向かわない印象を受けました。
私はどちらかというと「プレイヤーの想像にお任せします」タイプの作品よりははっきりした結論が提示されるものの方が好きなんですよね。

ついでにもう一つ、序盤の特定のBGMがひどい音割れを起こしているのはさすがに気になりました。テストプレイしたら気付かないはずはないだろうというレベルだったのでもしかしたら私の環境の問題なんでしょうか?
選曲などの意味では雰囲気に合っているなと思ったので少しもったいなく感じました。

ちなみに本作には立ち絵はありません。しかし大変想像力をかき立ててくれる文章ですので寂しさを感じたりすることもなく、物語に合っているように思います。


こんなところでしょうか。強情ツンデレ少年少女が心を開いていくさまを見たければ本作以上の適任はいないと思います。おまけで男の子視点の方も読める仕掛けも良いですよ! ぜひプレイしてください。

それでは。

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