フリーゲームの森

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2024年06月

こんにちは。前回の予告通りタイムアタックをやっていこうと思います。
対象の作品は、Shadow's Silhouetteさんの「勇者はG○○gle翻訳で世界を救うことにした。」です。
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ゲームの内容は前回細かく紹介したので軽く触れるだけにします。
言葉の通じない異世界に勇者として召喚された主人公の鈴木は、スマホのG〇〇gle翻訳を駆使して人々の依頼を解決しお金を得ていきます。スマホのバッテリーは1秒ごとに減少し、充電にはお金がかかるためなるべく素早い探索と依頼解決が必要になります。十分お金を貯めてレベルアップし装備を整えたら勇者としての役目を全うするため最後のボス戦イベントに行くことになりますが、はっきり言ってこれはおまけみたいなもの。本作のメインはやや不自然な言葉から元の内容を推測して依頼を達成したり、適切な行動順を発見して最速で依頼達成を目指したりといった部分でしょう。

単にクリアするだけならタイムアタックを極めるまでやる必要はないのですが、私は全依頼達成にかかるまでのタイムをどこまで短縮できるかに興味を持ってしまいました。1回の探索で受けることができる依頼は全部で70個。「ありすえすけーぷ」を作者さんに「人間やめてるレベル」と評されるまでやりこんだ私の好奇心は本作についても発揮されました。


レビューでは触れませんでしたが、本作ではいくつかの手法で「秘宝」を手に入れることができます。移動速度を3段階で調整できたり、一度行った地点を記録してそこへワープできるようにしたりといった機能が使えますが、当然ゲーム開始時点では使うことはできません。そこで今回私は2つのレギュレーションでタイムアタックに挑むことにしました。
  1. 秘宝禁止縛り
    初期状態と同じく移動速度は普通、ワープは不可という縛りです。タイムアタック中にメニュー画面を開くと時間の計測が止まるのですが、今回はそれも使用不可ということにしました。
  2. 秘宝解禁
    秘宝の使用ができるレギュレーションです。探索開始前に移動速度を調整しておくのも良しとします。探索中のセーブとロードは使用不可という、一発勝負でその他の縛りなしのルールです。


先に結論を書いておくと、私の記録は①10分29秒、②3分55秒です。
以下ではそれに至るまでの私の研究と手順を書いていこうと思います。言うまでもないですがネタバレ多数なので自力で挑みたい方は注意です。






①秘宝禁止縛り


本作のマップは大きく城内、北の街、南の街の3つに分けられます。このマップの端から端まで移動するには移動速度標準で15秒以上かかるため、なるべくエリア移動が少なくなるようにめぐっていく必要があります。厄介なのは「名画を探して」「鶏のかくれんぼ」の依頼2つです。「名画を探して」では最終的に城と名画の間を5往復する必要があります。「鶏のかくれんぼ」は3つの依頼に分かれていてそれぞれマップ上の様々な場所を順番にめぐる必要があり、その数は驚異の合計14か所です。終盤ではエリアをまたいだ移動が必要となるので、いかにほかの依頼を片付けるついでに回るかが時間短縮の鍵となります。名画依頼では城→南の街→城→北の街→城→北の街→城→南の街→城→北の街→城という順に指定された地点を訪れる必要があり、かくれんぼ依頼では北の街×4→南の街×4→城→南の街→北の街→南の街→北の街→南の街という順序になります。この最低限必要なエリア移動のほかには極力エリア移動しなくて済むように依頼をこなす順番を組み立てていきます。
最終的に私がたどり着いたチャートはこんな感じ。
北の街墓参り受諾、蝶5匹集めて受諾、掃除して受諾・完了、手紙を渡して受諾、眠気覚まし受諾、同僚のサボり受諾、お酒を運んで受諾・完了、落とし物受諾、ポスティングして受諾、蝶、ポスティング1、悪霊を退治して受諾、巨大花を摘んできて受諾、蝶、手紙を渡して完了、落とし物拾う、ポスティング2、商品を届けて受諾、鶏のかくれんぼ1受諾、犬を捕まえて受諾、ポスティング3、花を摘む、体を探して受諾、蝶2、犬、墓参り、犬捕まえる、かくれんぼ1、墓参り完了、ポスティングして完了、落とし物完了、かくれんぼ2まずは拠点から出てすぐの北の街を探索。町の南東から時計回りに回っていくイメージで進めると二度手間になりにくいです。北の街から出ずに解決できる依頼はたったの7個ですが、すでに15個も依頼を受けています。
鶏のかくれんぼ1完了、モンスター討伐1~5、蝶、お札もらう、書類を届けて受諾、名画を探して受諾レベル3以上で進める城エリア。アクション要素の強いモンスター討伐依頼があり、ここでうまくいかなかったらリセットしてしまうのも手でしょう。「名画を探して」依頼も厄介で、計5個の絵画を探しその都度王子に届ける必要があります。
北の街猫から鍵奪う、悪霊倒す、服を選んで受諾・完了、悪霊を退治して完了、巨大花を摘んできて完了北西の民家にある用事をここで全て済ませておきます。これを済ませないと武器屋の商品が手に入らない。
南の街野菜を買ってきて受諾、回覧板を届けて1受諾、鶏のかくれんぼ2受諾、ハーブを探して受諾、伝説のレシピ受諾、カフェオレ求む受諾、コーヒー回収、配膳を手伝って1~5完了、貴婦人の絵画回収、盗品を取り返して受諾、旦那の浮気調査受諾、体を回収、聖剣を抜いてくれ受諾、蔵書を探して受諾、ピエロさんのクイズ1~4完了、かくれんぼ1、ダンサー回収、浮気調査実行、牛乳回収、客の探し物は?受諾・完了、好みの服装は?受諾・完了、人参たべたい受諾、回覧板を届けて1完了、2受諾、忍ぶ者の捜索受諾南の街へはレベル10ないと入れません。町の入り口から時計回りに依頼を受けていきます。図書館の奥へは他の依頼のついでに入りたいので今回は行きません。
北の街仲間を3人集めて受諾、忍ぶ者の捜索完了、翻訳を頼む1~3完了、体を探して完了、ラブレターを渡して受諾、仲間1基本的に1つの用事をするためだけに建物に入るのは避けます。今回でいうとギルドには仲間を集める依頼を受ける・忍者を発見する・曲のタイトルを翻訳するという3つの用事を一気に済ませています。残りの3つはすべて墓地の用事です。
書類を届けて完了、注文書を届けて受諾、仲間2、名画を探して1完了、2受諾、料理の味見完了、レシピを聞く城2階の裏側へ回る用事は今回で全て終わらせます。
北の街注文書を届けて完了、防具を届けて受諾、武器を回収、犬を捕まえて完了、聖剣回収、野菜を買う、蝶5匹集めて完了、王様の絵画回収北の街の南側あたりの用事を集中的に済ませます。聖剣の回収が忘れやすいので注意。
南の街野菜を買ってきて完了、回覧板を届けて2完了、3受諾、かくれんぼ2、本回収、回覧板を届けて3完了、4受諾、人参回収、人参たべたい完了、ハーブ回収、鶏のかくれんぼ2完了、宝石回収、仲間3南の街2回目。今回は回覧板依頼を順にこなしていき、同時にかくれんぼ2を終了させます。
北の街ここで初めて素通り
商品を届けて完了、防具を届けて完了、指輪を届けて受諾、名画を探して2完了、3受諾、鶏のかくれんぼ3受諾ここでかくれんぼ3の依頼を受けておくのが大事。以降のエリア移動はかくれんぼに行かせるかどうかを最優先で判断。
北の街仲間を3人集めて完了、指輪を届けて完了、王に手紙を受諾、俺を見てくれ!完了、眠気覚まし完了、同僚のサボり完了、花の絵画回収これで北の街の用事もほとんど完了となります。
王に手紙を完了、王妃にワインを受諾、名画を探して3完了、4受諾これで城には名画を渡しに来る以外の用事がなくなりました。
南の街かくれんぼ1、伝説のレシピ完了、ハーブを探して完了、カフェオレ求む完了、山の絵画回収、ラブレター渡そうとする絵画の回収が主目的。同時に喫茶店内の用事もすべてこなせるように事前に準備しておきます。
北の街再び素通り。
名画を探して4完了、5受諾
北の街王妃にワインを完了、かくれんぼ2、ラブレターを渡して完了、海岸の絵画回収ここで墓地に行ってラブレター依頼の結果報告をするのを忘れがちなので注意。最後に漏れているのに気づいて泣くのを3回くらいやりました。
名画を探して5完了城の用事が完全に終了
北の街素通りの回数はなるべく減らしたいですが私のチャートだと3回必要になっています。
南の街旦那の浮気調査完了、盗品を取り返して完了、聖剣を抜いてくれ完了、蔵書を探して完了、回覧板を届けて4完了、かくれんぼ3、何の本か教えて1~3完了宝飾品店から図書館の奥場へ行くルートを有効活用し、かくれんぼと本のタイトルの翻訳の依頼を片付ける。
北の街かくれんぼ4北の街の用事終了
南の街鶏のかくれんぼ3完了、受け取ってくれ完了これで全依頼達成。お疲れさまでした。

この結果どんなプレイングになるかを動画にしました。
今受けている依頼の一覧を常に表示するなど編集も頑張ってみたので是非ご覧ください。


②秘宝解禁


基本的なことは秘宝禁止縛りの時と同じで、なるべく移動にかかる時間を減らすために一か所で同時にたくさんの用事をこなすことを心がけます。①と大きく違うのは、ワープが解禁されているためよく立ち寄る場所を登録しておくことでそこへの移動時間が0になることです。具体的には、城2階の謁見の間を登録しておくことで、①の時はそれを中心にチャートを考慮せざるを得なかった名画回収依頼の負担が大幅に軽減します。かくれんぼ依頼については同じ場所を訪ねさせるわけではないので①の時とそれほど状況は変わりません。
そのほかメニュー画面を開くことによってできるテクニックがいくつかあるのでそれを紹介します。
まずは魔物討伐依頼の攻略法が大きく変わります。唯一目的地が動くこの依頼では、メニュー表示中はタイムが進まないことを利用してメニュー画面を小刻みに開き、自分と魔物の位置関係を0秒で把握するというテクニックが有効になります。文章では何を言っているのかわからないと思いますのでこちらの動画をご覧ください。

この動画の1:45~3:35までが該当部分です。実時間では110秒かかっていますが、メニュー画面を開いていない間のみタイム計測が進むためたったの34秒で5つのモンスター討伐依頼をクリアしています。

これと似たテクニックとして、罠だらけの市場で野菜を買う依頼においてアイテム使用中は罠は移動するがタイム計測は行われないという仕様を利用するものがあります。上の動画で6:40~7:01がその実演となります。実時間で21秒ですがゲーム内時間では5秒で終わっています。

これに加え、移動速度は「速め」を使うことになるためキーボード捌きの正確性の要求水準が格段に上がっています。ここは練習あるのみです。


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いかがだったでしょうか。皆さんの挑戦をお待ちしています。3分55秒を切ったら是非教えてくださいね。

それでは。

こんにちは。今回は以前から紹介しようと思っていた作品、Shadow's Silhouetteさんの「勇者はG○○gle翻訳で世界を救うことにした。」のレビューをしていきたいと思います。

(6/30追記:タイムアタックの記事を書きました。動画付き解説記事となります)

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ジャンル:再翻訳おつかいタイムアタックRPG(ReadMeより引用)
プレイ時間:1プレイ3分~、完全初見からエンディングまで5時間くらい
分岐:なし
ツール:RPGツクール
リリース:2020/4初公開


私は以前からShadow's Silhouetteさんの作品はかなり好きで、本作も非常にやりこんだのですが最近は公開停止となっており、今更レビューを書くのもなあ…となっていました。しかし先日再公開されたので迷いなくレビューを書くことができます!


本作の導入はよくある異世界転移ものそのものです。主人公(デフォルト名は鈴木)は突然異世界に勇者として召喚されてしまいます。ここで何か特殊能力が手に入って無双する…というのがお決まりのパターンですが本作は違います。そもそも異世界の言葉を理解することができなかったのです。
そこで役に立つのが機械翻訳。なんと異世界語でも翻訳できてしまうようです。しかし機械翻訳は完璧ではありません。日本語としてこなれていない文面や誤訳なども含まれています。それを何とかプレイヤーの力で元の文章を補完することで召喚者たちと意思疎通したり町の人々から依頼を受けてクエストをこなしていったりするのです。
異世界でレベルアップした主人公が最終的に目指すのは魔王の討伐。このラスボスは主人公が召喚された拠点から直接行けるので、やろうと思えばゲーム開始直後から挑むことができます(当然負けますが)。このシステム、「隣の部屋にラスボスがいる。」を思い出します。ただし本作はラスボスを討伐するというRPG的な要素よりも、道中のADV的要素がメインとなっています。


本作は翻訳部分を除いてしまうと、多数のサブクエストのある短編RPGということができるでしょう。町には多数の住人がおり、その多くが何かしらに困っているようです。彼らに話しかけて依頼を受け、達成することでお金を手に入れてレベルアップや装備購入の原資にすることができます。
人によっては”お使い”と呼ばれてRPGの本筋に関係ない蛇足の部分とみなされる要素こそが本作のメインとなっているわけですが、そんな中途半端ともいえる要素を1つのゲームとして楽しめるような工夫を2つ感じ取りました。

1つは先ほどから出ている再翻訳要素です。いかにG〇〇gle翻訳優秀といえど完璧ではありません。異世界語を日本語に翻訳するときにどうしても脱落してしまうニュアンスがあったり単純な誤訳と思しき語句があったり。そんな微妙な訳文から本来の依頼がどんなものであったかを推測してクエストをこなしていく必要があるのです。
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例えばこちらの依頼。「蝶が欲しい-約5」
語順などが不自然ですが意味は伝わるなあといった依頼文です。しかし次の場合はどうでしょう。
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「同僚がスキップしています。少しscられますか」
はっきり言って意味不明です。この文章から依頼を推測して達成方法を見つけて実行するには試行錯誤が不可欠でしょう。他にも「女性の傑作が見たい!」「友達になる3人について学びましょう!」などの元の依頼からかけ離れた訳文が多数登場し、さながら謎解きゲームのようです。

エンディング到達後の2周目モードでは謎のこんにゃく(どう考えてもドラえもんに出てくる翻訳こんにゃく)を食べることでゲームを原文でプレイすることができるようになります。このモードでは時間制限などもないためゆっくりと町を回りながら住人たちと会話していくことができます。こいつらこんな口調でしゃべってたのかとか、意外と時限会話が豊富に用意されているんだなとかいろいろな気付きに出会えると思いますよ。


さて、工夫の2点目はタイムアタック要素です。G〇〇gle翻訳には主人公の持っているスマホアプリを使用しているのですがなんとバッテリー残量が初期状態で3分しかありません。依頼で得たお金で消耗品の魔法石を買うことによって充電することができるため、探索の1秒1秒にお金が消費されるのと同じ状態なのです。
初見の状態では3分間で依頼を1つか2つこなすのが精一杯でしょう。何度も探索に出ることで次第に効率的な周回ルートを開拓し金策の効率アップを目指しましょう。バッテリー残量に余裕が出てきたら経験値を購入することで主人公をレベルアップし、探索範囲を広げることができます。そしてまた新規の依頼を開拓して依頼文の解読をして…。こうした拡大再生産に似た楽しみも本作のゲーム性の1つでしょう。

本作を普通にクリアするうえではタイムアタックを極める必要まではありません。ゆっくりでも周回を繰り返すことで十分にお金を貯めることができるでしょう。しかし私はそれだけでは満足しませんでした。一体どのような順番で依頼を受け、どんなルートでこなしていくことで最速で依頼コンプリートができるのかを追求します。私のタイムアタックの結果については次回の記事で詳しくご紹介したいと思います。


さて、システム面において工夫されていてプレイしやすいと感じた点がいくつかあるので紹介しましょう。
本作では合計70もの依頼が存在するのですが、この依頼を受けるためには別のこの依頼を片付けていないといけない、というような条件が多数存在します。そうすると同じマップの中でも”今話しかけられる人”と、”フラグ不足で依頼が進行しない人”が混在することになります。多数の依頼を同時進行していると混乱しやすいのですが、本作ではシステム的にこの2種類の人が区別されていて、フラグを進行できる人だけ歩行グラフィックになっているのです。つまり最速でクリアしたいときは歩いている人だけに話しかければよいし、逆にフレーバーテキストを楽しみたい場合は立ち止まっている人に話しかけてみればよいでしょう。
さらに依頼が終了するとその人は透明化してすり抜けられるようになります。これはタイムアタックの意味でも結構大きな変化だったりします。

また、依頼一覧画面もうれしいですね。私はもう全依頼を暗記するほどやりこんでしまったのですが、初見の時は重宝しました。
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さて、これらの仕組みを活用しながら周回して十分お金を稼いだら、レベルアップと装備購入に使ってボス戦に挑みます。一応異世界に召喚された目的がこのボス撃破で最終目標でもあるのですが、これに関しては正直おまけ感が強いです。本作をRPGとして考えるとこの戦闘には物足りなさとか単調さを感じてしまうと思います。
しかし本作の肝(と私が考えるの)は「再翻訳おつかいタイムアタック」の部分です。機械翻訳で遊んだことがあったり、RPGのサブクエストを埋めていくことに喜びを感じる方なら本作もたっぷり楽しめるでしょう。タイムアタックのためのルート構築頑張るぜ!という方はぜひチャレンジしてみてください。私の記録はそう簡単には破れないと思います。次回の記事で挑戦お待ちしています。


それでは。

こんにちは。今回はちかげさんの「みちゃダメ! パンチラは絶対阻止せよ」のレビューです。

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ジャンル:女装BLアドベンチャー(ほんのりサスペンス)(※readmeより引用)
プレイ時間:1時間弱
分岐:ED2種+ゲームオーバーあり
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2023/8



さて、本作は私がなんとなくおバカで下品なコメディをやりたい気分の時にちょうど見つけた作品です。タイトルだけ見て大体の内容が分かるこの潔さ。しかしちょっと意外な展開もあったりして予想外に面白かった作品でもあるので今回取り上げることにしました。



大まかな内容はこんな感じ。

主人公の白井ユキトはごく普通の男子高校生。ある日ひょんなことから人気若手シンガーソングライター、若王子柊(わかおうじ・しゅう)のMV撮影に雪の妖精役として出演することになります。女性の役と聞いていなかったユキトは大慌て。衣装とメイクで可愛い女の子の見た目になったユキトでしたが、恥ずかしいから他の人に自分が男であることは隠そうと誓います。ところが下着だけは自分の私物の男物を身に着けたままなことに気づいたユキト。撮影中のあらゆるパンチラの危機を乗り越えて、男であることを隠し通せ!



女の子役だと聞いて困惑しながらもセッティングしてもらったユキトの様子がこれです。
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全体的に男の子に見えない可愛らしさと背景のキラキラ演出がすごい。
肌の色もかなり白いですし雪の妖精をイメージした衣装と言われたら確かにと納得できますね。

スクリーンショットを見ていただければわかると思いますが、本作の立ち絵はすべて3Dモデルとなっています。以前レビューした「おもいをつたえるプログラム」と同じ手法ですね。本作もこの3Dモデルを活かして登場人物たちの様々なポーズを多様なアングルから見ることができるようになっています。スチル鑑賞モードもあるのでぜひプレイ後に見ていただきたいのですが、1時間に満たないプレイ時間に対して5ページにも及ぶスチルのバリエーションがあります。これは3Dモデルを使ったメリットを大いに活かしているといえるでしょう。


さて、本作のメイン攻略され対象(そんな言葉あるか?)の若王子さんはイケメン芸能人でありながらユキトの女装姿に一目ぼれの様子。こんなかわいい子が自分のMVに出てくれるなんて! となるばかりかプライベートでも近づきたいとユキトとの距離を詰めようと必死です。片やユキトは自分が男であることがばれないか常にひやひや。わかりやすいBLコメディといった感じが続きます。

風でスカートがめくれそうになったり椅子が倒れて転びそうになったりと、なぜか何度も迫るパンチラの危機。ただ笑っていればいいのかと思えば突如として意外な展開が現れました。

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全身黒塗りの謎の人物が休憩室に仕掛けをしています。そういえば本作のジャンルは「女装BLアドベンチャー(ほんのりサスペンス)」でした。ここから”ほんのりサスペンス”の部分が意味を持ってきます。

本格的なミステリーのような内容ではありませんが、ユキトを襲うハプニングには犯人の意図や動機があることがしっかり描かれるので意外に思うと同時に感心しました。よくあるラブコメネタとして流していた部分がこういう風にあとから別の意味で回収される展開、好きなんですよね。


この事件(?)の謎に迫るところでは犯人指摘パートがありますが、選択画面でよく観察すればだれが犯人なのかはすぐわかりますし、間違えてもゲームオーバーにはならないので安心です。しかし犯人の身勝手な言い分にはちょっとした怖さを感じました。ユキトたちの身に何もなくてよかったです。

これ以外にも本作では選択肢がいくつかありますが、基本的に間違えると即ゲームオーバー行きになります。コメディはこうでなくちゃ!というシステムですね。本作はさらにゲームオーバー後に直前の選択肢に戻ることができるのでセーブを分けておく必要すらありません。親切ですね。

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さて、本作のBL部分ですが、片方が常に女装姿かつ若王子さんもユキトのことを完全に女の子だと思い込んでるんですがこれはBLにカウントされるんですかね…? 普段そんなにはBLをやらないのでその辺の空気感が分かりませんでした。
また、タイトルこそ下世話な内容を想像させる本作ですが、実際にパンツが見えてしまうようなシーンはありませんし、若干の下心は見えつつも登場人物たちは基本的にみな紳士だったので下品さはほとんど感じませんでした。若王子さんがユキトの女装姿にタジタジになっている様子はなかなか笑えますが、初めての撮影に困惑するユキトをしっかりエスコートしているのでいい人なんだなあと思えて応援したくなりました。いや、ユキト側から見たらそういう目で見られるのはごめんなのかもしれませんが…


というわけで今回は「みちゃダメ! パンチラは絶対阻止せよ」でした。
意外なところで伏線が張られていたりして、ただの一発ネタBLコメディ以上の面白さを感じられた作品なので、ぜひプレイしてみてください。

それでは。

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