フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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2026年06月

こんにちは。今回はころぱふさんの「君のうさミミを鍋にしてたべたい!」のレビューをしていきたいと思います。

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ジャンル:うさミミ学園SFミステリー(説明文より引用)
プレイ時間:2時間
分岐:基本1本道
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2024/7


ここ数回アドベンチャー・謎解き系の作品が続きましたが、今回はノベルゲームとなります。
みなさんはこの「君のうさミミを鍋にしてたべたい!」というタイトルを見ていったいどんな物語を思い浮かべるでしょうか。私は、一発ネタ系のギャグ作品で妙なフェチを特色にしているタイプのお色気要素の強い作品を想像しました。果たして序盤の展開についてはそれに近かったものの物語が結末に近づくにつれて思いもよらなかった方向に進んでいく凄い作品でしたので記事にしていこうと思います。


まずはいつも通りあらすじの紹介から。
主人公の八十木真冬はアルバイトに精を出す高校1年生。ある日登校中に泣いている同級生の弥上美卯を不審に思って事情を尋ねてみると、夜中に怪しいウサギの着ぐるみに誘拐され、朝起きたら頭から直接うさミミが生えていたというのだ! その場に居合わせた大國命子とともに事情を聴いていると、突然そのうさミミを食べたいという衝動が爆発。美卯のウサギ化と八十木の食欲に対処するためにも、弥上を襲った着ぐるみ集団を追うことにするのだった。

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こんなところでしょうか。
この序盤の展開だけ見るとどう見てもおバカな設定の学園ギャルゲーで、ウサギ化についてもなんだかんだ流れで解決してヒロインと結ばれる…みたいなストーリーを思い浮かべます。実際物語序盤のうちは突飛な設定のギャルゲーっぽく進行していきます。

うさミミが生えてきてしまった美卯をたまたま目撃するのはもちろんのこと、協力関係になった大國はギャルゲー定番の委員長キャラ。基本的には真面目で成績のいいキャラクターでありつつそこにオカルトマニアという個性を追加。外見がかわいいだけでなくちゃんとキャラが立っていてギャルゲーのヒロインを張れる感じに思えます。
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しかし本作はそんな2人と恋愛関係になって結ばれるといった甘~い作品ではないのでした。ではどんなところが違ったのか。私がおっと思ったポイントを順にご説明しましょう。


まず、導入部で明らかになる設定が完全にバカゲーの空気であるのに対して、妙にインテリっぽいというか、練られて考えられている感があるんですよ。例えば謎のウサギ着ぐるみ集団は「星来会議」という組織なのですが、彼らが残すメッセージカードには暗号じみた文章が。ラテン語のヒントであったりビデオメッセージに登場するフランス語だったりといった頭良い感じが出ていて意外な感じがしました。
その暗号を解いていくという要素などが、ジャンルに”ミステリー”が含まれている所以だと思うのですが、これもギャグ作品っぽいというよりかっちりとした内容になっています。ギャルゲーなどの謎解きを主題にしない作品ではひらめき一発だったりただのダジャレだったりすることが多いと思うのですが、本作ではヒントをもとに暗号文に手を加えたりといった手法が使われておりきちんとミステリーしているなという感想が持てました。シリアスでないタイプの作品なら謎解きが雑でも許せる感じがありますが、本作にようにしっかりしているならそれに越したことはないですよね。

また、暗号に関する言葉の使い方なんかも初見の印象より非常にしっかりしているように思えます。「暗号文」「暗号鍵」が区別されたりするのですが、多分このあたりの言葉ってコンピューター関連のセキュリティーとか暗号理論を勉強したことがある人じゃないと区別されないんじゃないかなと思うのですよね(私はたまたまそれに隣接する分野にいるので知っていましたが)。「暗号鍵」の内容が歴史的に有名なものなことも含めて、実はめっちゃ勉強できる作者さんなんじゃないかって気がしてきます。

美卯の”ウサギ化”が萌えアニメ的な感じで進むのではなくガチな感じというのもなかなか特徴的にではないでしょうか。ウサギの耳が生えてくるだけならまあそういう擬人化/ケモノ系の作品もあるよな~となるのですが、五感がウサギに近くなって視力が弱る代わりに嗅覚が鋭くなっていったり、性格が少し臆病になったりといった描写があり、もはやこれは萌えでは済まされない事態というのが伝わってきます。だからこそこれは解決しなければならない事件でありミステリーなのです。


そんな風に星来会議との対決が進んでいくと、物語のテーマは美卯の抱える不安や3人の間で芽生えた友情といった方向にシフトしていきます。中盤で出てくる「……委員長はいいですね、帰るべきところがあるみたいで。」という台詞は象徴的でしょう。美卯にとって家庭はあまりのびのびできる場所ではないようです。寮で一人暮らしである八十木にとっても自宅は誰かに温かく迎え入れてもらえる場所ではないようで、こういったうさミミ以外の面からも彼らは共鳴するところがあるようです。
委員長にとっても今まで周囲に堂々と言えなかったオカルト趣味の対象が目の前に現れて、そういった話をしてもドン引きされない大切な仲間という意識がついてきます。こうして物語はシリアスな雰囲気を帯びてくるのです。


驚いた点の最後として、数多くの伏線が張られて物語中で回収されるという点を挙げておきましょう。
犯人がうっかり口を滑らせた何気ない発言だったり、さらっと登場したウサギに関する知識だったり、意味深に登場する台詞の意図だったりといった様々な部分で感じられます。発言の振り返りに関してはいちいちリプレイが入るのが鬱陶しいよ! というレベルだったりするくらいで、相当に計算したうえで作られたのでしょう。

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そんな風に謎が解決していき最後には黒幕との対決が待っています。黒幕や組織の正体はかなり意外なものと言っていいでしょう。というかむしろこれは反則では? と思えたりもするのですが、本作では選択肢を間違えてもゲームオーバーになったりはしないので細かく気にすることでもないでしょうか。
この最後の対決についてもこれまでに登場した美卯の悩みであったり3人の関係性であったりが行動につながっておりいかに前半の日常シーンが無駄なく組まれていたかがわかります。
アクションシーンではまたも前半に出てきたあの情報が役に立っておりうならされました。


対決シーンを乗り越え無事エンディング…へと向かうのですが、すっきり解決してめでたしめでたしという感じとも少し違うのは微妙にもやっとする気もします。問題は解消しているんですが主人公である八十木の思い切りがよくないというかどっちつかずというか…。「ひとかた」の主人公に対して感じた気持ちにちょっと似ているでしょうか。まあ現実の人間はそんなに簡単に割り切れないものですからそういった意味ではリアリティがあるかもしれませんね。
八十木に迷いが生まれる理由についてきちんと描かれているところは素晴らしく納得感もあるのでバランスですかね…。


最後に本作の選択肢について。先に軽く触れたとおり本作ではどの選択肢を選んでもゲームオーバーにはなりません。直後の展開が少し変わるくらいで、間違えても選択をやり直せます。謎解きの解答シーンでも、分からなければヒントを要求できますし間違えても大丈夫。本格ミステリーではないのでこの難易度調整は正解でしょう。



ちょっぴり不満も書いちゃいましたが全体的によくできていてワクワクするストーリー展開とギャルゲーのヒロイン的魅力のあるキャラクター達、意外なほど手の込んだ謎や伏線など見所十分な作品だと思いますのでぜひプレイしてみてください。軽めのミステリーが好きな方、萌えギャルゲーが好きな方、どちらでも満足できると思いますよ。

それでは。

こんにちは。今回はすしわかめさんの「おばけのロッソ」のレビューをお送りしたいと思います。

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オススメ!
ジャンル:シリアス寄り謎解きアドベンチャーゲーム
プレイ時間:8時間
分岐:エンディング3種
ツール:WOLF RPGエディター
リリース:2024/10


先週の「SHADOW」は非常にダークな展開と手法が魅力的な作品でした。本作「おばけのロッソ」は同じく謎解き系のアドベンチャーゲームでありながら真逆ともいえる、まっすぐできれいな真相や結末が多くの方にお勧めできる作品だと思いましたので記事にしてみました。こちらも道中に悲しかったり腹立たしかったりする事件が起こりますが、そこからこうも感動的な結末へとつなげられるものかという点に良さがあると思います。


ではいつものようにあらすじの紹介から。
不慮の事故で亡くなってしまった主人公は生前の記憶も失い、気付くと真っ白な部屋の中で”神さま”を自称する怪しげな人物に出会ってロッソという名前をもらいます。亡くなる運命にある人たちの”本当の願い”を一つ叶えることで悔いのないようにあの世へ送り出すという神さまの”仕事”を手伝うことになったロッソは、先輩であるマリネ、ペスの2人とともに対象者が本当に願うことを引き出すという役割を担うことになります。
”ゴースト”と呼ばれる存在となったロッソたちは、対象者の本当の願いを見つけるという任務の傍ら、自身の死因も生前の人生も思い出せないロッソが成仏できるようにその正体や抱えていた後悔を探ることにします。愛する娘に先立たれたおじいちゃんから孤児院でけなげに生きる子供まで様々な対象者を調べていく中で生前のロッソが巻き込まれた事件が徐々に明らかとなり、ゴーストという存在、神さまの仕事の意味などの真相にも近づきます。果たしてロッソは真実を明らかにして無事に成仏することができるのでしょうか…

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こんなところでしょうか。
”本当の願い”を見つける仕事は毎回3つのステップに分かれています。まずは対象者の自宅などかかわりの深い場所を調査して、どのような環境にあったのかや直近の生活の様子などを明らかにします。次に、”ココロの部屋”と呼ばれる重要な部屋に入り、願いの核心となる証拠を手に入れます。最後に対象者と直接対峙し、自身が死にゆく運命であることを納得させたうえで願いを素直に口に出せるように手助けをします。

最初のステップは通常の謎解き系のアドベンチャーゲームと同じシステムです。部屋の中に散らばるアイテムや謎の手がかりを見つけていって、日記や手紙といった資料を探し当てます。それぞれの謎解きの難易度は難しくなく、ある程度慣れているプレイヤーならストレートに考えた結果がそのまま答えになるといってよいでしょう。
出てくる謎は暗証番号を推測する系のものが多いのが特徴的でしょうか。特定のものを数えたり、数字につながるヒントを見つけたり、比喩になっている部分を紐解いたり、シンプルに論理パズルや数学パズルっぽい問題になっていたり様々なパターンがあります。上級者でも飽きることなく解き進めていけるでしょう。

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難しい要素としては、行動範囲がやや広めかつ入手できるヒントとそれによって解けるギミックが離れた場所にあったりするので、紙にせよデジタルにせよメモはほぼ必須という点があるでしょう。これは作品紹介などにも明記されています。私はスクリーンショットなどでの記録で対処しました。
どこのギミックに対応するヒントなのかがわからないこともあるでしょう。この辺りはプレイヤーの経験と勘が重要かもしれません。

次の”ココロの部屋”の探索ステップでは、前段階で入手したヒントをもとに対象者が最も思い入れのある部屋を調査して核心につながる資料を入手します。このステップには時間制限があるのが特徴的でしょう。その長さは毎回異なりますが、大体3分前後で対象者の身の回りに起こった出来事や現在望んでいることを把握する必要があります。そのためにはギミック解明に時間をかける余裕はありません。前段階で入手したヒントを頭の中もしくはメモに入れておき、ギミックはスムーズに解く、その上で重要資料を読んで状況を理解する必要があります。
謎解き要素自体は最初のステップと同じような内容で特別難しくはありませんが、ココロの部屋に入ってからでは入手できないヒントもあったりするのでメモはしっかり残しましょう。

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最後のステップでは対象者と直接会話することによって、”最後の審判”を行います。素直に願いを口に出せなかったり、自分自身でも願いを分かっていなかったりする本人に一つ一つ事実を確認していくことによって、最終的に願いの内容を明らかにしていきましょう。途中いくつか選択肢が出てきますが、先ほどまでの探索で明らかになった事実から正解が1つに定まるようになっています。3回間違えると失敗となってしまうので気を付けましょう。途中の章からは、1回間違えただけでゲームオーバーになってしまう赤い選択肢も登場するので少し難易度が上がります。

このステップでは対象者の願いを本人が認めるのが目的となるため、探索ステップでの謎解きの進行状況は直接はフラグにならないのが特徴的だと思います。一部解けていない謎や開けられていない鍵があったとしても、対象者の状況を正しく把握し願いを言い当てることができれば成功扱いとなってストーリーは進んでいきます。


さて、本作ではそれぞれの章で一人の対象者の調査を行っていくわけですが、対象者は年齢も抱える事情も様々です。最初の章では愛する娘に先立たれ、山小屋でつつましく暮らす優しいおじいさんが対象者となります。もうすぐ寿命を迎えることはすでに察している様子ですが一つだけ心残りがあるようです。その心残りとはどんなものなのでしょうか……。それを解き明かした後には、神さまの手によって願いが叶えられた様子が見られます。最初のストーリーにふさわしいストレートに感動的なシーンとなっていると思います。

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続いて制作活動に行き詰ってしまった同人作曲家や、孤児院でトラブルに耐えながらも親と仲良く過ごすことを夢見る少女などが登場。一部胸糞悪いエピソードもありますが概ね優しい心を持つ対象者と健気な願いに、寂しいながらも希望を感じさせるような内容となっています。

4章からは後半戦。ロッソ自身にまつわる事実やゴーストとは何かといった根本的な事柄について次第に明らかになっていきます。6章では神さまの目的が明かされ、最終7章ではロッソの身に起こった事件に関する決着をつけることになります。7章の探索や審判の結果によってエンディングはABCの3つに分岐します。Aがいわゆるトゥルーエンドというべきエンディングとなっており、作中で登場した様々な断片的な事実や設定が1本の線にまとまって感動的なエンディングと言えるでしょう。このエンディングだけエンドロールにスチルがついています。これまでの章で出てきた対象者のその後が明らかになったりと細かいながらも技ありのエンディングと思いますのでぜひこれを目指して頑張ってほしいなと思います。
BCについてはほぼバッドエンドと言っていいと思います。Bは途中まではいい感じなのですが最終的にはかなり後味悪い感じに。対象者を救えなかった悲しい末路となっています。

エンディング分岐は最終章で起きるので、序盤からセーブを分けておく必要はありません。探索ですべての暗号や鍵を解除して審判でも正しい選択肢を選べばエンドAに到達することができます。最初のステップで登場する謎が一部はココロの部屋での手がかりを用いないと解けないものがあり、この点はこれまでの章より難易度が上昇しているかと思います。
どうしてもエンドAに到達できない場合、同梱のファイル内に攻略ヒントが用意されていますのでそちらを見れば安心です。

本作の良かった点として、メインのストーリーと章ごとのストーリーがどちらもしっかりしていて、相互に作用しながら進んでいく点を挙げておきたいと思います。章ごとのストーリーでは対象者は複雑な事情を抱えていたり、周囲の人間に恵まれなかったりしていますが、彼の本当の願いを明らかにすれば概ね美談に近い話になっています。「SHADOW」と対照的と書いたのはこの意味が大きいです。
しかしながらこうした美談でも繰り返すうちに意義に疑問を感じるようになっていきます。3章の終わりにはロッソの先輩であるマリネはこの疑問に関して極論に走ってしまい、ロッソや神さまの仕事に対しての常識を疑うような展開となっていきます。4章でマリネの説得に成功してからはより強固になったロッソたちの結束をもとにこの仕事のもたらす影響を考え、メインストーリーの目的であるロッソにまつわる真実の解明へのモチベーションへとつながっていくのです。
こうした重要なシーンで専用のスチルがついている場合もあり、なかなか印象的ですね。


というわけで今回は「おばけのロッソ」のレビューをお送りしました。
感動ものが好きな方、色々な謎をサクッと解いて気持ちよくなりたい方、ぜひプレイしてみてください。ボリュームも私の初見プレイでコンプリートまで8時間ほどとかなりありますのでたっぷり楽しめると思います。

それでは。

こんにちは。今回は裏束さんの「SHADOW」のレビューをしていこうと思います。

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★favo
ジャンル:学園サスペンスアドベンチャー
プレイ時間:5時間
分岐:なし(ゲームオーバーあり)
ツール:RPGツクール
リリース:2020/3
備考:15禁、暴力描写あり


ティラノゲームフェスの期間中はノベルゲームのプレイがメインだったので、最近は他のジャンルということでアドベンチャーゲームが多めになっています。3回前から連続でホラー作品を扱ってきました。今回ご紹介する「SHADOW」もアドベンチャーゲームではありますが、ホラー要素はありません。ただしストーリーはかなりブラックな面を含むので、人間社会の闇の部分やダークなストーリーは嫌という方は向かないかもしれません。しかし、そんなストーリーだからこその結末とか推理要素がしっかりしているのでドロドロのサスペンスものがお好きという方にはかなり刺さるんじゃないでしょうか。

まずは簡単に作品全体の解説から行きましょう。
主人公の来栖恭也は高校2年生。訳あって転校してきた影峰高校のクラスでは目に見えていじめがあって一般生徒がおびえていたり、セクハラ教師がいたりと問題多数。転校生であろうと容赦なく降りかかってくる災難に来栖はどう立ち向かうのか。普通の「いじめ撃退もの」とは一線を画すダーティな策略と推理力が見もののダーク系世直しストーリーとなっています。

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来栖に降りかかってくる問題は暴力だったり陰湿だったり脅迫だったりと様々で、プレイヤーはうまく来栖の選択を通じてこれらの問題を解決しなくてはなりません。いじめを解消するストーリーの多くは、より強い暴力による権力を得たりうまく周囲の協力を得て道徳的に諭したりといった方向に行きがちです。これらを正攻法というならば本作で来栖がとる道は邪道もいいところです。なるべく自分に火の粉が飛び掛からないようにはどう動くべきか、クラスメートや先生を利用して事態を好転させられないか、といった計略に長けた来栖は、クラスや学校自体を裏から支配して問題に対処していくのです。普通はなかなか見られないこの切り口は本作の大きな魅力といっていいと思います。

クラス内の数人が関与しているにとどまるいじめ問題を、このように大きなスケールから包み込んでしまうように解消するのもまた新鮮でした。普通なら関係者に対して直接働きかけたり立ち向かったりするものですが、本作で周囲の環境ごと誘導して解決につなげる様子はまるで孫悟空が三蔵法師の手のひらで踊らされているのを眺めるような感じすらしました。

こんな斬新な手法でひたすら突き進んでいく主人公の来栖は当然頭が切れるのですが、単に頭がいいというだけでない芯の強さが感じられます。私がいくら頭がよくなって周囲の状況を適切に判断できて度胸もついたとしても、そもそもそんな発想に至らないだろうという気がするのです。
来栖がこのような人物になったのにはもちろん理由があり、それは彼の家庭だったり前の学校だったりといった環境にあるのです。こうしたバックグラウンドが語られることによって、普通考えられない発想から事件に立ち向かう来栖はただのサイコパスではなく個性と行動原理のある主人公として受け止めることができるのでしょう。自分(プレイヤー)と思考が違いすぎる主人公だと物語に入り込めないということがたまにありますが、本作ではその問題は感じられませんでした。


さて、来栖が最初の事件を大きなスケールで解決してしまうと、それに呼応するようにさらに大きな事件が発生していきます。本作はChapter1からChapter4までの4章構成となっておりそれぞれの章で1つ事件が発生するという構造になっているのですが、章が進むにつれて事件のスケールも大きなものになっていきます。最初は普通にいじめと言って想像できる内容のものから、いじめをネタにした脅迫や監禁に移行。クラス全体を巻き込んで不信感を植え付けるような事件が起こったと思えば、最終的には学校全体を巻き込んだとんでもない大事件に。Chapter2の時点でさすがにこれは刑事事件になるだろうという程度だったのですが、最終的に非ファンタジーの学園ものとは思えない規模になってきます。よくこんな話を思いついたものだなと思います。


事件の規模が大きいというだけでなく、主人公の来栖だけでなく犯人だったり被害者までもが非常に癖が強い人物であるというのも特徴的かと思います。癖が強いということはつまり一般的な感覚からはかけ離れた言動をとるため共感しにくいという面もありますが、キャラクターとしての芯がしっかりしているというプラスの要素もあります。本作はこの要素を積極的に生かした作品だなと思うのです。
思考の様式や行動原理がはっきりしたキャラクターならある程度行動が読めたりする、それを予測して先手を打って対抗したり、相手のプライドを突いた挑発や説得で都合のいいように扱っていったりといった手段が可能なのは、本作の登場人物のキャラが立っているからでしょう。
4つもの事件が起こるのもあり登場人物数としては相当多い部類に入る作品だと思いますが(先生を含めたら15人以上)、ちゃんとキャラとして死ぬことなく全員活躍するのがすごい。全員に立ち絵もついています。


本作のゲーム要素についてです。
各章で導入と事件の発生後に解決のための行動フェーズがあります。数日間の時間制限があり、その間に解決のための現状調査や作戦立案をしたり、具体的な行動や根回しだったりをしていく必要があります。自分で調査する場合もあれば、信頼できる人を見つけて調査や事前工作を依頼しなければならない場合もあります。
前述のとおり来栖はかなりひねくれた手法でアプローチしていきますので、事前の情報調査部分はともかく推理パートや仲間に適切な依頼をする部分は結構難しいと思います。しかしほとんどの場合は1回間違えたらアウトではなく時間制限(3日~5日程度)の間は何回も試せるシステムになっているので、冴えている人なら初見クリアも可能かといった程度でしょう。選択が間違えていると作中の日付が進みます。またギミックによっては一つの結果を得るために最低2日かかる場合もあります。

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事件解決のためにはイベント発生時の選択肢を正しく選ぶだけでなく、メニュー内の「メモ」から正しい考察をすることを要求される場合があります。間違えても一発アウトにはならないので場合によっては何個かの選択肢を試しつつじっくり考えましょう。正しい考察をすることでストーリーが進んだり、フラグが立ったりします。ここが最も推理っぽいポイントでしょうか。

システム系の話をもう一つしておくと、Altキーで会話の過去ログが読めるのが助かります。プレイしなおしているときにWキーで会話スキップなどをしていると直前の話題を見逃すことがあり、ログ機能は重宝しました。初見時の推理のヒントにも使えるでしょう。


エンディングについてですが、Chapter4で起きる事件がもはや校内で起きる事件というレベルではない大事件なのもありスパッと解決!とはいかない感じになります。この来栖に爪痕を残してくる感じが犯人の執念であり、本作の雰囲気を決定づけている要因の一つともいえるでしょう。ここまでよく裏と先を読んで周到な計画を立てたものだなあと素直に感心してしまいます。
このまま胸糞悪い感じで終わるのかなと思ったところで、エピローグがとても感動的だったのでそこも良かったです。Chapter3までで登場した事件の直接の被害者だけでなく、クラス内の雰囲気による間接的な被害者であったり加害者までもが来栖の推理力や参謀としての能力を認めて団結する展開が気持ちいい。最終章にふさわしい熱い展開だったかなと思います。


今まで散々書いてきたように本作全体を通しては非常にブラックな風味なのですが、章間にはおまけシナリオがいくつか用意されており、ふっと笑って一息つけるような話が入っていたりします。あんな陰湿な事件を起こしていながら恋愛のあれこれでキャッキャしていたり、意外な弱点が明らかになったりとシンプルながらインパクトがあって、暗い気持ちで終わりにならないような工夫なのかなと思います。


また、本作には続編「SHADOWS」があります。こちらはSHADOWのストーリーが前提であるだけでなく、作者さんの他作品(村雨)についても関連しています。一応SHADOWさえプレイ済みなら分かるように適宜解説が入っているので必須ではありませんが、プレイ済みだとより楽しめるかと思います。
「SHADOWS」では来栖たちの編入先となった武蔵道高校でさらなる事件に巻き込まれます。こちらも4章構成となっていますが、Chapter2までがSHADOWの雰囲気に近い校内事件の発生と解決となっており、Chapter3,4については修学旅行からさらにスケールの大きな事件が発生し、物語全体のクライマックスへ向かう部分となります。シリーズ合わせて合計30人は登場人物がいますが、ちゃんと全員役割を果たしているのが驚異的。また、最終章でエンディングが2つに分かれます。初見ではまずANOTHER ENDになると思います。もやもやが残る結末を不満に思ったら、ぜひもう一つのエンディングを探してみてください。難しいですが終盤のフラグを細かく確認すれば道が開けるはずです。過去のエピソードまで回収された納得のエンディングが見られるはずです。



というわけで「SHADOW」のご紹介でした。
一風変わった学園サスペンス、ダークな主人公がお好きな方はプレイして損はありません。

それでは。

こんにちは。今回はRimさんのミガカミカガミ -reviver-のレビューとなります。

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オススメ!
ジャンル:ホラー脱出アドベンチャー
プレイ時間:本編エンディングまで4時間程度、フルコンプまで6時間程度
分岐:エンディング2種
ツール:RPGツクール
リリース:2025/8
備考:暴力的、残酷な表現あり


本作は2015年公開の「ミガカミカガミ」のリメイク版となっています。原作は第11回ふりーむ!ゲームコンテストの脱出アドベンチャー部門で金賞を受賞するなどの人気作となっており、ご存じの方も多いでしょう。私も一度はプレイを試みたのですが、ホラー表現が怖すぎて割と序盤早々にクリアを断念した覚えがあります。その後なんとか結末を知るために実況動画を見たのですが、意外で心温まる結末がなかなか印象的でした。普段実況動画を見ない私が動画を見た作品という意味でも記憶に残っています。

そんな原作が10年の時を経て新しくなって帰ってきました。システムの調整や立ち絵の刷新などかなりプレイしやすくなってきたのが嬉しい所です。本編クリア後のおまけシナリオもかなりボリュームがあります(後述)。まずはあらすじ紹介からいきましょう。

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奈恵とみかは歳は離れているものの仲良しの幼馴染です。二人がバスでお出かけをしようとしたところ事故に遭ってしまい、みかが入院中の奈恵のお見舞いに行くところから物語が始まります。神隠しをするという言い伝えのある”ミガカミ様”の部屋を訪れてから次第におかしくなる院内の様子、いつの間にか周囲にいる恐ろしい化け物のような何か。二人はこの恐怖の空間から逃げ延びることはできるのでしょうか…?


とまあ、大まかなストーリーはこんなところでしょう。さて、本作がホラーであることは先述の通りですが、ひとくちにホラーゲームと言ってもその恐怖の煽り方にはいくつかのパターンがあるでしょう。本作はその中でも、驚かせ方とアクション性に特徴があると思います。ゲーム性としては探索アドベンチャーなので病院内やその先の様々な部屋を調べていく必要があるのですが、特定のものを調べたりフラグを立てたりするといきなりグロい敵が出てくるのがとにかく怖い。「このキャラクター怒ってるだろうなあ…」のような、予測できるタイプの恐怖と、普通にフラグを進行させただけのつもりだったのに逆切れされたりといった身構える暇のないタイプの恐怖が混ざっていて、ホラー耐性がある程度ない人だとクリアは困難だと思います。
実際私は原作の方は途中でリタイアしたのですが、リメイク版である本作は最後まで自力でクリアできました。その理由として、システム面での親切さが増したという点が一つ挙げられると思います。ゲーム開始時点で難易度を2つから選べたり、オートセーブの要否を選べたりといったシステムはプレイしやすさに貢献していると思います。単純に楽になるというだけでなく、何度も怖いシーンを通らなくて済むという心理的な面もあって私も最後までプレイできました。あとは原作のプレイ動画を見ていたことによって驚かせ方のパターンは学習済みだったこともあったでしょうか。

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怖さのもう一つ、アクション要素についてですが、本作では追いかけっこが幾度となく発生しこれの難易度がかなり高いです。突然現れる怪物から逃げる必要があるので初見突破はまず困難。逃走ルートも直前のマップとは変わっている場合が多く、何度も死にながら経路を覚える必要があり、スムーズに移動できるような慣れも必須です。ギミックによっては追いかけっこ開始時点の距離的余裕がかなり短い場面もあり、常にShiftキー(走るボタン)を押した状態にしている必要があります。
追いかけてくる敵のグラフィックが怖いのもまた心理的な難易度を上昇させているように感じます。特に一番最後のシーンでは専用のゲームオーバー画面も用意されておりまた怖いこと怖いこと……
初見殺しポイントもかなり多いため、オートセーブアイテムを使用しない場合こまめに鏡を調べてセーブしてください。セーブスロットがオートセーブを除いて1つだけなのはやや不便でしょうか(レビューを書くために良い感じの場所のスクリーンショットを撮ろうとしていると特に…)。

奈恵やみかの立ち絵を含めてグラフィックも新しく可愛くなっているのですが、それとの対比でまたグロ系の絵にビビらされます。

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反面謎解き要素自体の難易度はさほど高くないように感じます。リメイクするにあたってギミックを一新しているとのことで、うまく調整されたのではないでしょうか。謎解きのヒントが複数の部屋に散らばっている点は難しいですがヒントから連想されるものに理不尽な点はなく、考えればきちんと解けるようになっています。ギミックを解いている途中に怖がらされることが少なかったのもプレイしやすさに繋がっているでしょう。

ストーリーに沿った内容になっているという点についても良くできたギミックだなと感じました。ミガカミ様の神隠しに関連した5人にまつわるステージを順に進んでいくという構成になっているのですが、それがかつて犠牲になった富田くんや菜雪ちゃんといった人物のトラウマだったり心の傷を反映したマップやギミックとなっているのです。病院に運ばれる経緯だったり、彼らを取り巻く家庭環境であったりといった点を追体験しながらゲームを進行させていくことになるため、単に探索ホラーというだけでなく物語を楽しめる作品になっていると言えるでしょう。

特に富田くんに関してはエンディングにもかかわってくることになります。ステージを進んでいきミガカミ様に関する情報が集まってくると、奈恵の心にはある疑念が深まっていくことになります。そのショッキングな事実を受け入れるのか、否定するのか。その選択によって真逆のエンディングへと到達します。正解の選択肢を選べば、道中の高難易度で意地悪なギミックからは別物かのような気持ち良いエンディングに繋がりますのでぜひハッピーエンド目指して頑張ってみてください。

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ハッピーエンド到達後はExtraシナリオが解放されます。
ミガカミ様の神隠しは過去に何度もあったことが本編中に明かされるわけですが、Extraでは過去の事件からミガカミ様に恨みを持つ水戸ヒトミの世界に入っていくことになります。本編よりさらにストーリー重視のないようになっているように感じました。
運悪く病魔に侵されたヒトミ、ミガカミ様に傾倒していくヒトミの母、狂っていく家庭といった事実が明らかになっていく度に悲しい気持ちになります。5年前と現在を行き来するギミックなどもあるため本編中のキャラクターのエピソードよりボリューム感もあり単におまけというだけに収まらない濃い体験が得られるでしょう。


以上「ミガカミカガミ -reviver-」のご紹介でした。
今回はホラーの中でもかなり怖めで残酷なシーンも多数あり、そういった意味では人を選ぶ作品であることは間違いありませんが、ホラー好きなら決してプレイして損はないのも確かだと思います。原作プレイ済みの方でも楽しめる要素までたっぷりとありますので、ぜひプレイしてみてください。

それでは。

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