こんにちは。今回はOperation:Noveltyさんの「AlexiA~アレクシア~」をご紹介します。

ジャンル:電波障害ノベルADV(ReadMeより引用)
プレイ時間:5時間
分岐:大きく2つ
ツール:Light.vn
リリース:2019/8
今回ご紹介する作品はまた一風変わった作品となります。どういうことか順を追って説明していきましょう。
ReadMeにもある通り、本作はA,B,Cパートの3つのパートに分かれています。はじめからをクリックすればAパートから物語は開始します。主人公は上條游雅(かみじょう・ゆうが)。訳あって一人暮らし中の高校生です。隣に住んでいる幼馴染の東雲穂多留(しののめ・ほたる)は毎日游雅を起こしに来てくれる世話焼きさん。まだ早いし寝ていたいなどと悪態をつくも結局は一緒に登校している仲良しです。(本作の登場人物はみんな漢字が難しいですね。游という字は游ゴシック等のフォント名以外で初めて見ました)
始業よりも早めに教室に着き、なんと穂多留の作った朝ごはん(サンドウィッチ)を一緒に食べます。「いつもと違うところはどこでしょう?」なんて言うオーソドックスな難問にうろたえたり、食事を用意してくれることに感謝を述べたり、そういった幸せな日常が繰り返されていきます。

ここまで読んでくると、いや典型的なギャルゲーじゃねえか、と感じると思いますが、本作の正体が露わになるのはこの後です。
いわゆるギャルゲーであるならどんな形であれ恋愛に関係したイベントがどこかで起こるはずです。しかし本作においてはそのようなイベントが起きる雰囲気が感じられません。游雅はどう見ても草食系で今以上の親密な関係を望んでいるようには見えませんし、穂多留の方もどちらかというと世話焼きなお姉さん風。お互いに好意はあるんだなというのは分かりますが、毎日一緒に登下校する以外の描写が一切ありません。
つまりギャルゲーにしてはあまりに単調でシナリオに山がなく、つまらなすぎるのです。
そんな中で本作を読み進めていくと、徐々に違和感が浮かび上がってくるはずです。
私が最初に明確に引っかかったのはテスト対策のシーン。游雅の教科書は開いたことすらないほど新品同様。そういえばこれまで勉強をするシーンは一切ありませんでした。どうも勉強に拒否感があるらしい游雅ですが、穂多留に促されて教科書を読めばさらりと理解できる。そのことに何より游雅自身が驚いています。
教科書を読めば一発で理解できるような頭脳を持っていながら、まるでこれまで勉強なんてしたことがないというような游雅の発言。ギャルゲーなんだからそんなの日常茶飯事だろうと受け流すこともできましたが、私にこの違和感を決定的に意識づけたのはテスト返しのシーンでした。
游雅のテストの結果は全教科で満点。いくらギャルゲーであってもよほどの天才キャラでなければ取れない点数を、数日前からテスト勉強をしただけの游雅があっさりとってしまうのはやはり不自然。
そして何より、画面に一瞬映る游雅の答案です。
名前の記入欄には、「上じょうゆうが」と書かれています。
そして一番上に見えている答案は数学の物ですが、そこに書かれた解答はどう見ても中学校レベルです。
高校生にもなって自分の名前が漢字で書けないのか。テストの内容はなぜ中学校レベルなのか。本作をこれまで読んでくれば、その理由は容易に想像がつきます。いま游雅が生きている世界は妄想の世界だからです。
テストの返却が終わった後またいつもの楽しい日常が始まり、この何の変哲もない楽しい日常こそが高校生上條游雅が生きる道なのだ、という妙に確信めいたモノローグが語られた直後にエンディングを迎えてしまいます。そこで流れる異様といえるエンドロールがショッキングです。
本作はこの平和なギャルゲーの皮をかぶった異様なループのAパートから抜け出さない限り真のエンディングにはたどり着くことができません。ループから抜け出すための鍵となるのは、穂多留と下校途中に寄ったゲームセンターでした。
このAパートを抜けてBパートに行く部分はかなり難しいですが、ここを抜けないと本作の真価にたどり着けないのでぜひ頑張ってください。選択肢ごとの細かい展開の違いを追って行けば抜け出せるはずです。どうしてもわからなかった場合、作者さんサイトにヒントがあるのでそれを参考にしてください。
さて、Bパートに入ると雰囲気はガラッと変わり、游雅は中学生であること、そして勉強の苦手ないじめられっ子であることが明らかになります。別にさぼっているわけでもないのにできない勉強。クラスメイトにはバカにされ続け、親も先生も味方にはなってくれません。

非常に悲しい展開ですが、私には游雅が勉強を苦手とする理由がすぐに分かりました。
答案に書かれたへたくそな文字。心象風景に現れる異世界の文字のような呪文のような図形たち。そして本作の副題「電波障害ノベルADV」。これだけのヒントがあれば正解を導くのは容易でした。游雅は読字障害を抱えていたのです。
それさえ分かればAパートにおいて私が保留にした違和感も解決します。教科書を読むという行為自体に拒否反応まで見えた高校生の游雅ですが、それは現実における中学生の游雅が読字障害を抱えていて教科書を読めなかったから。テストの内容が中学生レベルだったのは、実際には中学生である游雅は妄想の中であっても高校レベルの内容を想起することができないから。
しかしそうしたことがプレイヤーである私に分かっても、游雅が救われるわけではありません。勉強をしても結果が伴わない。どちらにせよ怒られるなら勉強なんかしないで怒られた方がまし、という思考に至ってしまうのは悲しいですが、この状況下では仕方のないことでしょう。
学校にも家庭にも味方がいない游雅が心のよりどころとして見つけたのは、ゲームセンターにあるコインゲームと、一緒に遊んでくれる高校生のお姉さん、車窓眞那彌(しゃそう・まなみ)でした。(またしても漢字が難しい)
勉強も運動も、いままでに成功するという体験をしたことがない游雅がコインゲームに手を出し、たまたまとはいえ上手くいって大量のコインが排出されたときの高揚感が動画で表現され、非常に説得力のあるものになっています。游雅がコインゲームにハマり、まなみさんにある種依存していく心理を追体験しているようです。
学校や家になるべく居たくない游雅は毎日ゲームセンターへ通うようになります。そこでしばらくまなみさんと交流を重ねたのち、まなみさんにディスレクシア(知的能力は正常であるにもかかわらず文字の読み書きが困難となる障害。日本語で識字障害、読字障害などと言われる)の可能性を指摘されます。
勉強ができないのが自分の努力不足のせいではない可能性に気付き、一筋の希望を見出した游雅は早速親や先生に相談します。障害について理解されて以前よりも良い方向に進んでいくと思われましたが、それは長続きしませんでした。文字の読み書きに困難を抱えている状況が変わるわけではなく、また一般の中学校で一人一人の生徒に対してできるサポートにも限界があります。
結局游雅が本当の意味で心を開けたのはまなみさんだけでしたが、その彼女も問題を抱えているらしいことが次第にわかってきます。こちらについて詳述することは避けますが、游雅の件とはまた違う方向ながら福祉の面で何とかならなかったかなあと思える状況でした。
そしてCパートにたどり着いたら、游雅が前を向いて歩いていけるかどうかを見守ってあげてください。
本作全体の特徴として、演出面における独特な表現が挙げられるでしょう。
ReadMeにはこう書いてあります。
なかなか一筋縄ではいかないショッキングな作品ではありますが、この作品が持つただのギャルゲーではない側面に気付けばきっと物語にのめり込めるはずです。游雅を応援してあげてください。
それでは。

ジャンル:電波障害ノベルADV(ReadMeより引用)
プレイ時間:5時間
分岐:大きく2つ
ツール:Light.vn
リリース:2019/8
今回ご紹介する作品はまた一風変わった作品となります。どういうことか順を追って説明していきましょう。
ReadMeにもある通り、本作はA,B,Cパートの3つのパートに分かれています。はじめからをクリックすればAパートから物語は開始します。主人公は上條游雅(かみじょう・ゆうが)。訳あって一人暮らし中の高校生です。隣に住んでいる幼馴染の東雲穂多留(しののめ・ほたる)は毎日游雅を起こしに来てくれる世話焼きさん。まだ早いし寝ていたいなどと悪態をつくも結局は一緒に登校している仲良しです。(本作の登場人物はみんな漢字が難しいですね。游という字は游ゴシック等のフォント名以外で初めて見ました)
始業よりも早めに教室に着き、なんと穂多留の作った朝ごはん(サンドウィッチ)を一緒に食べます。「いつもと違うところはどこでしょう?」なんて言うオーソドックスな難問にうろたえたり、食事を用意してくれることに感謝を述べたり、そういった幸せな日常が繰り返されていきます。

ここまで読んでくると、いや典型的なギャルゲーじゃねえか、と感じると思いますが、本作の正体が露わになるのはこの後です。
いわゆるギャルゲーであるならどんな形であれ恋愛に関係したイベントがどこかで起こるはずです。しかし本作においてはそのようなイベントが起きる雰囲気が感じられません。游雅はどう見ても草食系で今以上の親密な関係を望んでいるようには見えませんし、穂多留の方もどちらかというと世話焼きなお姉さん風。お互いに好意はあるんだなというのは分かりますが、毎日一緒に登下校する以外の描写が一切ありません。
つまりギャルゲーにしてはあまりに単調でシナリオに山がなく、つまらなすぎるのです。
そんな中で本作を読み進めていくと、徐々に違和感が浮かび上がってくるはずです。
私が最初に明確に引っかかったのはテスト対策のシーン。游雅の教科書は開いたことすらないほど新品同様。そういえばこれまで勉強をするシーンは一切ありませんでした。どうも勉強に拒否感があるらしい游雅ですが、穂多留に促されて教科書を読めばさらりと理解できる。そのことに何より游雅自身が驚いています。
教科書を読めば一発で理解できるような頭脳を持っていながら、まるでこれまで勉強なんてしたことがないというような游雅の発言。ギャルゲーなんだからそんなの日常茶飯事だろうと受け流すこともできましたが、私にこの違和感を決定的に意識づけたのはテスト返しのシーンでした。
游雅のテストの結果は全教科で満点。いくらギャルゲーであってもよほどの天才キャラでなければ取れない点数を、数日前からテスト勉強をしただけの游雅があっさりとってしまうのはやはり不自然。
そして何より、画面に一瞬映る游雅の答案です。
名前の記入欄には、「上じょうゆうが」と書かれています。
そして一番上に見えている答案は数学の物ですが、そこに書かれた解答はどう見ても中学校レベルです。
高校生にもなって自分の名前が漢字で書けないのか。テストの内容はなぜ中学校レベルなのか。本作をこれまで読んでくれば、その理由は容易に想像がつきます。いま游雅が生きている世界は妄想の世界だからです。
テストの返却が終わった後またいつもの楽しい日常が始まり、この何の変哲もない楽しい日常こそが高校生上條游雅が生きる道なのだ、という妙に確信めいたモノローグが語られた直後にエンディングを迎えてしまいます。そこで流れる異様といえるエンドロールがショッキングです。
本作はこの平和なギャルゲーの皮をかぶった異様なループのAパートから抜け出さない限り真のエンディングにはたどり着くことができません。ループから抜け出すための鍵となるのは、穂多留と下校途中に寄ったゲームセンターでした。
このAパートを抜けてBパートに行く部分はかなり難しいですが、ここを抜けないと本作の真価にたどり着けないのでぜひ頑張ってください。選択肢ごとの細かい展開の違いを追って行けば抜け出せるはずです。どうしてもわからなかった場合、作者さんサイトにヒントがあるのでそれを参考にしてください。
さて、Bパートに入ると雰囲気はガラッと変わり、游雅は中学生であること、そして勉強の苦手ないじめられっ子であることが明らかになります。別にさぼっているわけでもないのにできない勉強。クラスメイトにはバカにされ続け、親も先生も味方にはなってくれません。

非常に悲しい展開ですが、私には游雅が勉強を苦手とする理由がすぐに分かりました。
答案に書かれたへたくそな文字。心象風景に現れる異世界の文字のような呪文のような図形たち。そして本作の副題「電波障害ノベルADV」。これだけのヒントがあれば正解を導くのは容易でした。游雅は読字障害を抱えていたのです。
それさえ分かればAパートにおいて私が保留にした違和感も解決します。教科書を読むという行為自体に拒否反応まで見えた高校生の游雅ですが、それは現実における中学生の游雅が読字障害を抱えていて教科書を読めなかったから。テストの内容が中学生レベルだったのは、実際には中学生である游雅は妄想の中であっても高校レベルの内容を想起することができないから。
しかしそうしたことがプレイヤーである私に分かっても、游雅が救われるわけではありません。勉強をしても結果が伴わない。どちらにせよ怒られるなら勉強なんかしないで怒られた方がまし、という思考に至ってしまうのは悲しいですが、この状況下では仕方のないことでしょう。
学校にも家庭にも味方がいない游雅が心のよりどころとして見つけたのは、ゲームセンターにあるコインゲームと、一緒に遊んでくれる高校生のお姉さん、車窓眞那彌(しゃそう・まなみ)でした。(またしても漢字が難しい)
勉強も運動も、いままでに成功するという体験をしたことがない游雅がコインゲームに手を出し、たまたまとはいえ上手くいって大量のコインが排出されたときの高揚感が動画で表現され、非常に説得力のあるものになっています。游雅がコインゲームにハマり、まなみさんにある種依存していく心理を追体験しているようです。
学校や家になるべく居たくない游雅は毎日ゲームセンターへ通うようになります。そこでしばらくまなみさんと交流を重ねたのち、まなみさんにディスレクシア(知的能力は正常であるにもかかわらず文字の読み書きが困難となる障害。日本語で識字障害、読字障害などと言われる)の可能性を指摘されます。
勉強ができないのが自分の努力不足のせいではない可能性に気付き、一筋の希望を見出した游雅は早速親や先生に相談します。障害について理解されて以前よりも良い方向に進んでいくと思われましたが、それは長続きしませんでした。文字の読み書きに困難を抱えている状況が変わるわけではなく、また一般の中学校で一人一人の生徒に対してできるサポートにも限界があります。
結局游雅が本当の意味で心を開けたのはまなみさんだけでしたが、その彼女も問題を抱えているらしいことが次第にわかってきます。こちらについて詳述することは避けますが、游雅の件とはまた違う方向ながら福祉の面で何とかならなかったかなあと思える状況でした。
そしてCパートにたどり着いたら、游雅が前を向いて歩いていけるかどうかを見守ってあげてください。
本作全体の特徴として、演出面における独特な表現が挙げられるでしょう。
ReadMeにはこう書いてあります。
また、本作品は心情描写、伏線、背景描写、動作描写の大部分をCGと音に依存しています。先述したメダルゲームにのめり込むきっかけとなったシーンだけでなく、学校でのシーンにも、穂多留を説得するシーンにおいても動画が多用され、微笑ましいようでありながら不気味にも感じるような本作の独特な世界観が築き上げられています。特にBパート以降ではボイスもその表現に貢献しているでしょう。ぜひサウンド・ボイスONでプレイしてみてください。
なかなか一筋縄ではいかないショッキングな作品ではありますが、この作品が持つただのギャルゲーではない側面に気付けばきっと物語にのめり込めるはずです。游雅を応援してあげてください。
それでは。
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