こんにちは。今回はTeam囲碁RPGさんの「囲碁RPG」のご紹介です。

★favo
ジャンル:オーソドックスなターン制RPG+詰碁問題集
プレイ時間:ラスボス撃破までで10時間程度
分岐:なし
ツール:RPGツクール
リリース:2023/7(ふりーむへのDL版掲載日)
注意:囲碁の棋力が10級以上の方推奨
本作「囲碁RPG」はタイトルから分かる通り、囲碁がテーマとなっているRPGです。単にシナリオに囲碁が使われているというだけでなく、詰碁(部分的な石の死活を問う問題。詰将棋に対応するもの)を解いて進むギミックも多数用意されているなどかなり凝っています。
このギミックのため囲碁未経験者ではクリアはほぼ不可能でしょう。公式の説明欄にもありますが、10級程度の棋力は最低限欲しいところです。私の棋力は碁会所で三段程度、ネット碁では囲碁クエスト(Android版/iOS版)で四段、野狐囲碁で二段程度です。有段者なら本作の囲碁に関するギミックで困ることはないでしょう。
囲碁に関するギミックで詰まってしまう場合、「囲碁RPG 入門編」があるのでそちらのプレイをお勧めします。
本作の世界観では、囲碁の技術である”棋術”(聞いたことがないので本作の造語でしょう)がそのまま(物理的な)戦闘の技術になっています。碁の強い者が通常のRPGの意味でも強いのです。戦闘では打撃(通常物理攻撃)のほかに棋術(魔法攻撃に相当)を使って敵を打ち倒していきます。
そんな本作は主人公の星宙かやが囲碁の養成所を卒業するシーンで始まります。卒業試験をパスしたかやは養成所からのプレゼントとして最新の棋術を教わるため、棋術習得用カプセルに入ります。ところがその棋術習得の最中に”幻庵”と名乗る人物が乱入。養成所は荒らされ、同級生の安否も分からない中かやは何とか魔法陣を起動してワープし見知らぬ村、”アキスミ村”で目を覚まします。どうやら”秘密結社INOUE”が何かを企んで悪さをしている模様。かやは同級生を助けるため、秘密結社INOUEに挑むべく旅を始めるのだった…
本作のオープニングはこんな感じなのですが、これまでですでに囲碁にまつわるネタが3つも含まれています。
まず、幻庵というのは戦国時代の武将、北条幻庵のことのようです。今回調べて知ったのですが、幻庵は囲碁にまつわる逸話のある武将ということです。そしてアキスミ村。アキスミというのは文字通り空いている、つまりまだ石が全く置かれていない(碁盤の)隅のことで、たいていの場合初手で着手される地点になります。すなわち”はじまりの村”みたいな意味合いですね。
そして秘密結社INOUEというのは囲碁の家元四家のうちの一つ、井上家のことでしょう。江戸時代、徳川将軍の前で行われた対局、御城碁で争った四家が家元四家で、本因坊家、井上家、安井家、林家の4つです。本因坊だけが実力制となって現代のタイトル戦に名を残していますね。

このように、本作内において非常に濃い密度で囲碁に関する分かると面白いネタがちりばめられています。しかもネタの分野が広いです。
例えば主人公かやの仲間になる最初の人物は”秀策”ですが、これは本因坊秀策のことです。ヒカルの碁にも出てきたのでご存じの方も多いかもしれませんね。続いて仲間になるのは”算知”ですが、これは同じく江戸時代の棋士である安井算知のこと。天地明察に登場したことで知っている方もいるかもしれません。
4人パーティーの最後の一人は”リーラ”と名乗ります。これはフリーのコンピュータ囲碁ソフトLeelaのことでしょう。さっきまで江戸時代の話だったのに急に現代のAIの話が出てきてちょっとびっくりしましたが、これも囲碁が分かる人ならではのネタでしょう。

他にも、敵のキャラクターは全て囲碁用語だったり、囲碁周辺の元ネタがあったりします。
例えばこちらの”アキサンカク”ですが、これは漢字で書けば”空き三角”。自分の石が三角形の形につながった状態のことで、働きの乏しい愚形の代表例です。

こちらの”モクサン”は目算。自分と相手の陣地の数を脳内で数えることです。これが正確にできるのは高段者でしょう(私はできません)。
その他、装備品名や村人のセリフなどにも大量の囲碁用語が登場。分かる方にはとても納得できる使われ方だと思います。
鉄柱、亀の甲羅、一間高などの囲碁用語のついた装備品。玄玄碁経、官子譜、發陽論などの古典的書物。秀策、算知をはじめ赤星因徹や本因坊丈和などの江戸時代の棋士である登場人物。ノギツネ城(野狐囲碁という中国のネット対局サイト)、絶芸(野狐で対局しているAI)、AyaXbot(囲碁クエストというアプリ内で常駐しているAI)など、現代の囲碁界に関するものまで本当に幅広いです。
ラスボス戦が対AIになるの熱い展開で良いですね。

(ところで「魔王のメガネ」の魔王って井山裕太さんのことですよね?)
それに加え、先に書いたように本作では詰碁を解いて進んでいくギミックが数多く含まれています。

上のスクリーンショットのように、いごまるという小さな生き物(タイトル画面の左側にいるやつ)が道をふさいでいる場面にたびたび出合います。近くには詰碁の問題があるので、これに正解すると道を開けてもらえたり、アイテムやお金がもらえたりギミックが進行したりするのです。
ゲームの進行上必須でない隠し要素については詰碁の問題が難しかったりします(とはいえ最難関でも上級程度です。有段レベルの問題はないと思います)
さらにこれらの詰碁を解くと、アイテムの「いごまる詰碁帳」に解いた問題が登録され、何度でも復習可能になります。全部で140問以上あり、解くたびにお金が少しもらえます。たまに「星屑の欠片」という錬金素材アイテムももらえるので積極的に解いていきましょう。(星もれっきとした囲碁用語です)
少し易しめの問題を一目で解けるようになるまで習熟度を上げるというのは囲碁の上達にもかなり役立つ勉強の仕方になると思います。その意味でも詰碁帳を周回するのはおすすめです。
さて、囲碁から離れて本作のRPGとしての部分を見ていきましょう。
戦闘は非常にオーソドックスなターン制でコマンド選択式。癖がなくてなじみやすいシステムと言えるでしょう。毎回戦闘終了後にMPが一定量回復するのでMP節約にあまり気を回さなくて済むのが助かります。
戦闘のバランスとしては、状態異常が強めでしょう。パラメータ的には余裕でも状態異常を食らうだけで一気にピンチになったりするので、装備で対策したり回復アイテムを買い込んだりしておくとよいでしょう。(状態異常の名前が囲碁用語になっていて少しわかりにくいので注意です。”味悪”は毒、”長考”・”駄目詰”は麻痺、”頓死”は即死のことです。その他は囲碁を知らない人でも名前からイメージできる効果だと思います)
状態異常以外においても装備の重要性は高いので、新しいダンジョンに挑む際はぜひいい装備を入手してからにしてください。
本作には錬金システムがあり、詰碁を解くと時々もらえる「星屑の欠片」を使って固有武器を強化したり、その他の装備品を作ったりすることができます。固有武器をMAXまで強化するのはかなり手間がかかりますが、強力なことは間違いありません。私はリーラの銃を真っ先に強化して攻撃力の上がる装飾を持たせ、リーラをアタッカーとして運用しました。2回攻撃はやはり強い。
いったことがある街へのワープができるシステムがないので移動がやや面倒ですが、ダンジョンは一度クリアすれば出口まで即移動できるのでそこまで大変ではないでしょう。
なかなか珍しいと思ったシステムは、「IG→経験値変換」です。IG(イゴールド)というのは本作の通貨単位です。つまり余ったお金を経験値に変換できるのです。
通常のザコ敵で経験値を稼いでレベルアップしていくのも良いのですが、本作はザコ戦で得られるIGが少ないのでこの方法ではお金不足になりやすいです。そこで「いごまる詰碁帳」を解くことで大量のIGと星屑の欠片を稼ぎ、余ったIGを経験値に変換するという方法の方が効率がよさそうです。
というわけで今回は「囲碁RPG」でした。
10級の方だとクリアに結構苦労しそうですが、5級~1級くらいの上級者の方は特に詰碁の復習もできて楽しい作品なんじゃないでしょうか。囲碁の歴史についてもちょっとだけ学べます。
囲碁やったことないよという方は入門編のほうをぜひ。
それでは。

★favo
ジャンル:オーソドックスなターン制RPG+詰碁問題集
プレイ時間:ラスボス撃破までで10時間程度
分岐:なし
ツール:RPGツクール
リリース:2023/7(ふりーむへのDL版掲載日)
注意:囲碁の棋力が10級以上の方推奨
本作「囲碁RPG」はタイトルから分かる通り、囲碁がテーマとなっているRPGです。単にシナリオに囲碁が使われているというだけでなく、詰碁(部分的な石の死活を問う問題。詰将棋に対応するもの)を解いて進むギミックも多数用意されているなどかなり凝っています。
このギミックのため囲碁未経験者ではクリアはほぼ不可能でしょう。公式の説明欄にもありますが、10級程度の棋力は最低限欲しいところです。私の棋力は碁会所で三段程度、ネット碁では囲碁クエスト(Android版/iOS版)で四段、野狐囲碁で二段程度です。有段者なら本作の囲碁に関するギミックで困ることはないでしょう。
囲碁に関するギミックで詰まってしまう場合、「囲碁RPG 入門編」があるのでそちらのプレイをお勧めします。
本作の世界観では、囲碁の技術である”棋術”(聞いたことがないので本作の造語でしょう)がそのまま(物理的な)戦闘の技術になっています。碁の強い者が通常のRPGの意味でも強いのです。戦闘では打撃(通常物理攻撃)のほかに棋術(魔法攻撃に相当)を使って敵を打ち倒していきます。
そんな本作は主人公の星宙かやが囲碁の養成所を卒業するシーンで始まります。卒業試験をパスしたかやは養成所からのプレゼントとして最新の棋術を教わるため、棋術習得用カプセルに入ります。ところがその棋術習得の最中に”幻庵”と名乗る人物が乱入。養成所は荒らされ、同級生の安否も分からない中かやは何とか魔法陣を起動してワープし見知らぬ村、”アキスミ村”で目を覚まします。どうやら”秘密結社INOUE”が何かを企んで悪さをしている模様。かやは同級生を助けるため、秘密結社INOUEに挑むべく旅を始めるのだった…
本作のオープニングはこんな感じなのですが、これまでですでに囲碁にまつわるネタが3つも含まれています。
まず、幻庵というのは戦国時代の武将、北条幻庵のことのようです。今回調べて知ったのですが、幻庵は囲碁にまつわる逸話のある武将ということです。そしてアキスミ村。アキスミというのは文字通り空いている、つまりまだ石が全く置かれていない(碁盤の)隅のことで、たいていの場合初手で着手される地点になります。すなわち”はじまりの村”みたいな意味合いですね。
そして秘密結社INOUEというのは囲碁の家元四家のうちの一つ、井上家のことでしょう。江戸時代、徳川将軍の前で行われた対局、御城碁で争った四家が家元四家で、本因坊家、井上家、安井家、林家の4つです。本因坊だけが実力制となって現代のタイトル戦に名を残していますね。

このように、本作内において非常に濃い密度で囲碁に関する分かると面白いネタがちりばめられています。しかもネタの分野が広いです。
例えば主人公かやの仲間になる最初の人物は”秀策”ですが、これは本因坊秀策のことです。ヒカルの碁にも出てきたのでご存じの方も多いかもしれませんね。続いて仲間になるのは”算知”ですが、これは同じく江戸時代の棋士である安井算知のこと。天地明察に登場したことで知っている方もいるかもしれません。
4人パーティーの最後の一人は”リーラ”と名乗ります。これはフリーのコンピュータ囲碁ソフトLeelaのことでしょう。さっきまで江戸時代の話だったのに急に現代のAIの話が出てきてちょっとびっくりしましたが、これも囲碁が分かる人ならではのネタでしょう。

他にも、敵のキャラクターは全て囲碁用語だったり、囲碁周辺の元ネタがあったりします。
例えばこちらの”アキサンカク”ですが、これは漢字で書けば”空き三角”。自分の石が三角形の形につながった状態のことで、働きの乏しい愚形の代表例です。

こちらの”モクサン”は目算。自分と相手の陣地の数を脳内で数えることです。これが正確にできるのは高段者でしょう(私はできません)。
その他、装備品名や村人のセリフなどにも大量の囲碁用語が登場。分かる方にはとても納得できる使われ方だと思います。
鉄柱、亀の甲羅、一間高などの囲碁用語のついた装備品。玄玄碁経、官子譜、發陽論などの古典的書物。秀策、算知をはじめ赤星因徹や本因坊丈和などの江戸時代の棋士である登場人物。ノギツネ城(野狐囲碁という中国のネット対局サイト)、絶芸(野狐で対局しているAI)、AyaXbot(囲碁クエストというアプリ内で常駐しているAI)など、現代の囲碁界に関するものまで本当に幅広いです。
ラスボス戦が対AIになるの熱い展開で良いですね。

(ところで「魔王のメガネ」の魔王って井山裕太さんのことですよね?)
それに加え、先に書いたように本作では詰碁を解いて進んでいくギミックが数多く含まれています。

上のスクリーンショットのように、いごまるという小さな生き物(タイトル画面の左側にいるやつ)が道をふさいでいる場面にたびたび出合います。近くには詰碁の問題があるので、これに正解すると道を開けてもらえたり、アイテムやお金がもらえたりギミックが進行したりするのです。
ゲームの進行上必須でない隠し要素については詰碁の問題が難しかったりします(とはいえ最難関でも上級程度です。有段レベルの問題はないと思います)
さらにこれらの詰碁を解くと、アイテムの「いごまる詰碁帳」に解いた問題が登録され、何度でも復習可能になります。全部で140問以上あり、解くたびにお金が少しもらえます。たまに「星屑の欠片」という錬金素材アイテムももらえるので積極的に解いていきましょう。(星もれっきとした囲碁用語です)
少し易しめの問題を一目で解けるようになるまで習熟度を上げるというのは囲碁の上達にもかなり役立つ勉強の仕方になると思います。その意味でも詰碁帳を周回するのはおすすめです。
さて、囲碁から離れて本作のRPGとしての部分を見ていきましょう。
戦闘は非常にオーソドックスなターン制でコマンド選択式。癖がなくてなじみやすいシステムと言えるでしょう。毎回戦闘終了後にMPが一定量回復するのでMP節約にあまり気を回さなくて済むのが助かります。
戦闘のバランスとしては、状態異常が強めでしょう。パラメータ的には余裕でも状態異常を食らうだけで一気にピンチになったりするので、装備で対策したり回復アイテムを買い込んだりしておくとよいでしょう。(状態異常の名前が囲碁用語になっていて少しわかりにくいので注意です。”味悪”は毒、”長考”・”駄目詰”は麻痺、”頓死”は即死のことです。その他は囲碁を知らない人でも名前からイメージできる効果だと思います)
状態異常以外においても装備の重要性は高いので、新しいダンジョンに挑む際はぜひいい装備を入手してからにしてください。
本作には錬金システムがあり、詰碁を解くと時々もらえる「星屑の欠片」を使って固有武器を強化したり、その他の装備品を作ったりすることができます。固有武器をMAXまで強化するのはかなり手間がかかりますが、強力なことは間違いありません。私はリーラの銃を真っ先に強化して攻撃力の上がる装飾を持たせ、リーラをアタッカーとして運用しました。2回攻撃はやはり強い。
いったことがある街へのワープができるシステムがないので移動がやや面倒ですが、ダンジョンは一度クリアすれば出口まで即移動できるのでそこまで大変ではないでしょう。
なかなか珍しいと思ったシステムは、「IG→経験値変換」です。IG(イゴールド)というのは本作の通貨単位です。つまり余ったお金を経験値に変換できるのです。
通常のザコ敵で経験値を稼いでレベルアップしていくのも良いのですが、本作はザコ戦で得られるIGが少ないのでこの方法ではお金不足になりやすいです。そこで「いごまる詰碁帳」を解くことで大量のIGと星屑の欠片を稼ぎ、余ったIGを経験値に変換するという方法の方が効率がよさそうです。
というわけで今回は「囲碁RPG」でした。
10級の方だとクリアに結構苦労しそうですが、5級~1級くらいの上級者の方は特に詰碁の復習もできて楽しい作品なんじゃないでしょうか。囲碁の歴史についてもちょっとだけ学べます。
囲碁やったことないよという方は入門編のほうをぜひ。
それでは。
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