こんにちは。今回はtales&Vividさんの「コーヒーって、甘いですか?」のレビューとなります。

★favo
ジャンル:喫茶店をめぐる日常系ノベルゲーム
プレイ時間:40分
分岐:なし
ツール:Artemis Engine
リリース:2024/8
こちらの作品は昨年行われた第4回crAsM.Mビジュアルノベルオンリーで知って注目していた作品でした。当時はまだ体験版の扱いで2話までしかプレイできなかったのですがとても印象深い作品で、完成版の公開をずっと楽しみにしていました。できればフリゲ2023に投票したいなと思っていましたが結局間に合わず。
しかしつい先週、本作が正式に公開されましたので完成版でプレイしなおし満を持してのレビュー執筆となります。
郷土資料館の職員を務める主人公の溝手は喫茶店でコーヒーを飲んだり自分で淹れたりするのが趣味。仕事帰りに寄れる近所の店や、休日にお出かけした先で知っている店などいくつもの喫茶店を知っています。そんな溝手がコーヒーを飲みまくるのが本作の内容なわけです。
そんな本作の良さはなんといってもおいしそうな描写が上手いところでしょう。
ゲームファイルを起動して1話を読み始め、主人公が昼休みに職場近くの喫茶店に入るシーン。

コーヒーカップが大きく写された写真の上に透過率高めなメッセージウィンドウ。しっかりと本作のウリであるコーヒーが印象に残る構図になっています。
そして主人公溝手による食レポもしっかりと入ります。店ごとに、豆ごとに、淹れ方の違いで、コーヒーの味わいがどんな風に変わるのかを体験談のような形式で読んでいくことができ、コーヒーの奥深さ、嗜好品たる所以を感じ取ることができます。
料理や食べ物がテーマとして扱われる作品はたびたび見かけます。本ブログで取り扱った中でいうと、「そしてパンになる」や「お菓子の国のガトー・ソルシエ」が該当しますが、料理そのものというよりはパンを作ったりお菓子を作ったりしていく中で恋愛方面の出来事があったり、トラウマを乗り越えたりといった方向に物語が進んでいきます。それに対し本作はコーヒーを味わう事そのものがテーマとなっているため食レポの深さが段違いになるのです。

それに加えて私が驚いたのは2話の自宅でコーヒーを淹れるシーン。豆を挽いて熱湯を注ぎ、抽出したコーヒーをマグカップに移す。そんな一連の流れがなんと動画で楽しめます。スクリーンショットでは伝わらないのでぜひプレイして確かめてほしい。Spaceキーでメッセージウィンドウを隠せばお湯から立ち上る湯気までばっちり、まるでコーヒーの匂いまでしてくるようです。ノベルゲームの背景に動画を映す、こんな使い方があるのかと思ったのをよく覚えています。動きのあるシーンはシステム的に苦手なノベルゲームに動画を挿入しちゃおうという試みは見たことがありますが、本作はその手法における一つの到達点と言えるのではないでしょうか。メッセージウィンドウの表示タイミングやシーンの切り替わる位置もよく調整されていて、画面越しに自分が淹れているような感じさえします。
そうして出来上がったコーヒーを美味しそうに飲む溝手。これがまた嬉しい。やっぱり登場人物、特に主人公が幸せそうにしていると読んでいる側も幸せになれますよね。
そんなコーヒー大好きな主人公の溝手ですが、昔からそうだったわけではありませんでした。大学生のころにバイト先であまりのコーヒーを飲んでみたらめちゃくちゃまずかった、なんてちょっと笑えるエピソードもあります。私は普段コーヒーを飲まないのでこういった点は親しみやすかったです。
今では毎日のように飲んでいる溝手もコーヒーを極めたという状態ではない様子。コーヒーの味わいを表現するのによく使われる「苦味」「酸味」そして「甘み」。今はまだ「甘い」と表現される味がどんなものなのかわからないけれども、いくつもの喫茶店で様々な豆や淹れ方のものを試していくうちに、それらの言葉が意味するものをつかんでいく、そんな描写もあり、コーヒーという趣味の楽しいところを門外漢の私に教えてくれました。

このシーン、読んでいてうんうんと頷きながらマウスを持つ手を進めていたんです。インスタントコーヒーを飲むことがある、という程度の私にはあの苦いコーヒーに「甘い」と言われる部分があるなんて想像もつきません。そんなコーヒー素人にも読んでいて楽しい作品になっていると思います。
そういえばコーヒー以外にも、例えば日本酒だったりワインだったりの嗜好品にも独特な用語が使われるように感じます。「甘口」「辛口」と言われる日本酒がどんな味に対応するのか私は分からないのですが、これらにもきっと深い趣味の世界があるのでしょう。

本作は全6話構成。1話あたりじっくり読んでも10分かからないと思います。
最終話ではにぎわう喫茶店内で恐る恐るコーヒーに口をつける中高生たちに出会います。タイトルにある「コーヒーの甘さとは?」という問いに自分なりの答えを見つけた溝手は、コーヒーに不慣れな若者たちにコーヒーの魅力を伝えることができるのでしょうか。
そして店を出てエンディングテーマがかかってからスタッフロールに入るまでの流れもスムーズでいいですね。ボーカル入りのエンディングテーマはYouTubeでも聴けるので是非こちらもどうぞ。
というわけで今回は「コーヒーって、甘いですか?」でした。
ノベルゲームを通じてほかの趣味を体験できるようなこの感触はプレイしてみないとわからないでしょう。ぜひ皆さんもご自分の手でプレイしてみてください。全くの素人だった私でも興味がわいてくるような体験ができました。
それでは。

★favo
ジャンル:喫茶店をめぐる日常系ノベルゲーム
プレイ時間:40分
分岐:なし
ツール:Artemis Engine
リリース:2024/8
こちらの作品は昨年行われた第4回crAsM.Mビジュアルノベルオンリーで知って注目していた作品でした。当時はまだ体験版の扱いで2話までしかプレイできなかったのですがとても印象深い作品で、完成版の公開をずっと楽しみにしていました。できればフリゲ2023に投票したいなと思っていましたが結局間に合わず。
しかしつい先週、本作が正式に公開されましたので完成版でプレイしなおし満を持してのレビュー執筆となります。
郷土資料館の職員を務める主人公の溝手は喫茶店でコーヒーを飲んだり自分で淹れたりするのが趣味。仕事帰りに寄れる近所の店や、休日にお出かけした先で知っている店などいくつもの喫茶店を知っています。そんな溝手がコーヒーを飲みまくるのが本作の内容なわけです。
そんな本作の良さはなんといってもおいしそうな描写が上手いところでしょう。
ゲームファイルを起動して1話を読み始め、主人公が昼休みに職場近くの喫茶店に入るシーン。

コーヒーカップが大きく写された写真の上に透過率高めなメッセージウィンドウ。しっかりと本作のウリであるコーヒーが印象に残る構図になっています。
そして主人公溝手による食レポもしっかりと入ります。店ごとに、豆ごとに、淹れ方の違いで、コーヒーの味わいがどんな風に変わるのかを体験談のような形式で読んでいくことができ、コーヒーの奥深さ、嗜好品たる所以を感じ取ることができます。
料理や食べ物がテーマとして扱われる作品はたびたび見かけます。本ブログで取り扱った中でいうと、「そしてパンになる」や「お菓子の国のガトー・ソルシエ」が該当しますが、料理そのものというよりはパンを作ったりお菓子を作ったりしていく中で恋愛方面の出来事があったり、トラウマを乗り越えたりといった方向に物語が進んでいきます。それに対し本作はコーヒーを味わう事そのものがテーマとなっているため食レポの深さが段違いになるのです。

それに加えて私が驚いたのは2話の自宅でコーヒーを淹れるシーン。豆を挽いて熱湯を注ぎ、抽出したコーヒーをマグカップに移す。そんな一連の流れがなんと動画で楽しめます。スクリーンショットでは伝わらないのでぜひプレイして確かめてほしい。Spaceキーでメッセージウィンドウを隠せばお湯から立ち上る湯気までばっちり、まるでコーヒーの匂いまでしてくるようです。ノベルゲームの背景に動画を映す、こんな使い方があるのかと思ったのをよく覚えています。動きのあるシーンはシステム的に苦手なノベルゲームに動画を挿入しちゃおうという試みは見たことがありますが、本作はその手法における一つの到達点と言えるのではないでしょうか。メッセージウィンドウの表示タイミングやシーンの切り替わる位置もよく調整されていて、画面越しに自分が淹れているような感じさえします。
そうして出来上がったコーヒーを美味しそうに飲む溝手。これがまた嬉しい。やっぱり登場人物、特に主人公が幸せそうにしていると読んでいる側も幸せになれますよね。
そんなコーヒー大好きな主人公の溝手ですが、昔からそうだったわけではありませんでした。大学生のころにバイト先であまりのコーヒーを飲んでみたらめちゃくちゃまずかった、なんてちょっと笑えるエピソードもあります。私は普段コーヒーを飲まないのでこういった点は親しみやすかったです。
今では毎日のように飲んでいる溝手もコーヒーを極めたという状態ではない様子。コーヒーの味わいを表現するのによく使われる「苦味」「酸味」そして「甘み」。今はまだ「甘い」と表現される味がどんなものなのかわからないけれども、いくつもの喫茶店で様々な豆や淹れ方のものを試していくうちに、それらの言葉が意味するものをつかんでいく、そんな描写もあり、コーヒーという趣味の楽しいところを門外漢の私に教えてくれました。

このシーン、読んでいてうんうんと頷きながらマウスを持つ手を進めていたんです。インスタントコーヒーを飲むことがある、という程度の私にはあの苦いコーヒーに「甘い」と言われる部分があるなんて想像もつきません。そんなコーヒー素人にも読んでいて楽しい作品になっていると思います。
そういえばコーヒー以外にも、例えば日本酒だったりワインだったりの嗜好品にも独特な用語が使われるように感じます。「甘口」「辛口」と言われる日本酒がどんな味に対応するのか私は分からないのですが、これらにもきっと深い趣味の世界があるのでしょう。

本作は全6話構成。1話あたりじっくり読んでも10分かからないと思います。
最終話ではにぎわう喫茶店内で恐る恐るコーヒーに口をつける中高生たちに出会います。タイトルにある「コーヒーの甘さとは?」という問いに自分なりの答えを見つけた溝手は、コーヒーに不慣れな若者たちにコーヒーの魅力を伝えることができるのでしょうか。
そして店を出てエンディングテーマがかかってからスタッフロールに入るまでの流れもスムーズでいいですね。ボーカル入りのエンディングテーマはYouTubeでも聴けるので是非こちらもどうぞ。
というわけで今回は「コーヒーって、甘いですか?」でした。
ノベルゲームを通じてほかの趣味を体験できるようなこの感触はプレイしてみないとわからないでしょう。ぜひ皆さんもご自分の手でプレイしてみてください。全くの素人だった私でも興味がわいてくるような体験ができました。
それでは。
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