こんにちは。今回は虹猫さんの「RトR」をレビューしていきたいと思います。

ジャンル:百合サスペンスノベルゲーム
プレイ時間:3時間
分岐:なし
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2025/4
注意:15禁
先週ノベコレの作品を漁っていて、「グリーンベルの花言葉」という怪作に出会いました。普通のツンデレ百合ものかと思いきやいきなり谷底まで突き落とされ、いや違う、ここは常識の異なる異世界なのでは?となったり宇宙遊泳のようなふわふわ感が漂ったりと、わけわからないジェットコースターに乗せられた気分になる作品でした。
面白かったは面白かったのでコメント書きつつ作者さんの他の作品を見てみると、あの有名な「1人殺すのも2人殺すのも同じことだと思うから」の作者さんであることにようやく気付きました(まだプレイしてはいないのですが)。
そんな流れで本作を見つけてプレイし始めたのですが、やはり一筋縄ではいかない百合を描いた作品で面白かったのでブログでご紹介します。
主人公の桜小町(さくら・こまち)はキリスト教系の女子高に通う高校2年生。家庭の事情があり、学校へは寮から通っています。所属する漫画・アニメ部では、同級生の紅葉楓(もみじ・かえで)、先輩の瑠璃茉莉(るり・まつり)、そして後輩の八雲アリスと楽しく過ごしています。
そんな彼女の悩みは、女の子に異様にモテること。進級して1か月経ち落ち着いた4月30日には親友だと思っていた楓にキスされてしまいます。寮の自室で困っていた時、なんと楓が刺されてしまったという知らせを受けます。失意の中で迎えた翌朝、彼女の身にはさらなる衝撃の事実が明らかになります。今日も4月30日だというのです!

というわけで本作はループものになっています。時計と鎖に絡めとられたタイトル画面から察した方もいるかもしれません。本ブログでは「スノードームは夢を見るか?」以来およそ2年ぶりです。ループものというと大抵、なぜ(何の力によって)ループするのか、ループを抜け出すにはどうしたらいいのか、といった要素に焦点が当たります。しかし本作においてはポイントとなる要素は少し違っています。まず「何をトリガーとしてループが発生するのか」すら分からないのです。
本ブログでこれまでに扱ったループものは4つありました。「スノードームは夢を見るか?」でも「クロノスの箱庭」でも、「決戦前のヒトリ」でも「黄昏が落ちてくる街に」でも、ループの発生は主人公や重要人物の死によって発生しているのが明らかでした。しかし本作においては、単純に人が死んだら日付が戻るわけではありません。しかも毎回同じ日に戻るわけではなく、何事もなく日付が進んだかと思いきや2日戻ったり、突然4日も戻ったり。まずこの不可解な仕掛けがかなり珍しく、私の心を釘付けにしました。

そうしてもう一つ、本作における百合という要素も本筋に大きくかかわってくることになります。ところがこれも王道となる要素からずらしているのです。過去にレビューした「PaintPain ~少女はメイドの手をとって~」「泡沫の花が散る」ではどちらの百合も、お互いにそう望んだ結果でした。しかし本作における主人公の小町は女の子に恋愛的な意味での興味はなく、次々と告白してくる友人たちや部活の仲間に困惑しているのです。
さらにはこの女の子に異常に好かれやすいという小町の”体質”は先述した家庭の問題ともつながってきます。直接の原因である母親の入院、そして妹である吹雪との不仲の原因までもこの体質に求めることができます。
初見だとこの吹雪は小町に対してやたら敵対的で嫌なキャラなのですが、読み進めていくうちに彼女の気持ちも分かってくるし守ってあげたくなるんですよね。なんといっても彼女の言っていることは正しいのですから。
ストーリーを読み進めていくと、時折小町以外の人物の視点で語られる部分があります。瑠璃先輩だったり、楓や吹雪だったり、そしてアリスだったり。彼女らの主観が描かれることによって、小町がこのループの世界に閉じ込められたのは必然であったというのが徐々に明らかになっていくのです。ここがまたうまいところで、特殊な体質を持つ小町を中心としてみなが次第に狂気に蝕まれていったことに合点が行きます。小町の主観では被害者でしかないわけですが、全体を見ていくとむしろ発端ともいえる。そんな展開となっています。
これまでも何度か言ってきましたが、こうした明らかな悪人がいるわけではない中で皆が狂っていったために起きた悲劇というのは私の好きな展開でもあります。あえて一番悪いのが誰か、と聞かれたら、私は瑠璃先輩と答えるでしょうか。
それでも私は、小町が好きだし一番応援してあげたくなるんです。なぜなら、私と似ていると感じるからです。
以下、核心に繋がるネタバレがあります。OKな方は展開して読んでください。
本作におけるループのトリガーとなるのは、小町が嘘をつくこと。終盤でそれが明らかになった時、私は文字通り震えました。こんな怖いことがあるかと。
小町がつく嘘はどれも悪意に基づくものではありません。誰かを守ろうとしたり、事態をややこしくしないためであったり。人が良好な社会生活を送るためには、こうした適切な使い方での嘘は必須でしょう。
謎が解けてから改めて前半部分をプレイし直すと、小町が嘘をついた場面がプレイヤーにもしっかりと提示されていたことが分かります。私でもそこは嘘でごまかすだろうというシーンばかりなので本当につらい。
小町は結局このループの謎を解くことができず、4月の間の日付をうろうろしながらただ心を弱らせていくばかりです。弱った心を守るためにも嘘で武装しなくてはならなくなったのでしょう。
バッドエンドのループものは何気に初めて見たかもしれません。あのシュタインズゲートでさえハッピーエンドがあるのに! いや、これはタイトル画面の生気を失った小町のイラストから察するべきだったかもしれません。他の作品を含めて、全く油断ならない作者さんです。
ループ、そして百合。どちらも題材としてはよくあるものでありながら、王道とは少し離れたところを狙っている本作。斬新すぎない程度に目新しさのある良作ですのでぜひプレイしてみてください。
一筋縄ではいかない物語ですので、くれぐれもご用心の上お楽しみください。
それでは。

ジャンル:百合サスペンスノベルゲーム
プレイ時間:3時間
分岐:なし
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2025/4
注意:15禁
先週ノベコレの作品を漁っていて、「グリーンベルの花言葉」という怪作に出会いました。普通のツンデレ百合ものかと思いきやいきなり谷底まで突き落とされ、いや違う、ここは常識の異なる異世界なのでは?となったり宇宙遊泳のようなふわふわ感が漂ったりと、わけわからないジェットコースターに乗せられた気分になる作品でした。
面白かったは面白かったのでコメント書きつつ作者さんの他の作品を見てみると、あの有名な「1人殺すのも2人殺すのも同じことだと思うから」の作者さんであることにようやく気付きました(まだプレイしてはいないのですが)。
そんな流れで本作を見つけてプレイし始めたのですが、やはり一筋縄ではいかない百合を描いた作品で面白かったのでブログでご紹介します。
主人公の桜小町(さくら・こまち)はキリスト教系の女子高に通う高校2年生。家庭の事情があり、学校へは寮から通っています。所属する漫画・アニメ部では、同級生の紅葉楓(もみじ・かえで)、先輩の瑠璃茉莉(るり・まつり)、そして後輩の八雲アリスと楽しく過ごしています。
そんな彼女の悩みは、女の子に異様にモテること。進級して1か月経ち落ち着いた4月30日には親友だと思っていた楓にキスされてしまいます。寮の自室で困っていた時、なんと楓が刺されてしまったという知らせを受けます。失意の中で迎えた翌朝、彼女の身にはさらなる衝撃の事実が明らかになります。今日も4月30日だというのです!

というわけで本作はループものになっています。時計と鎖に絡めとられたタイトル画面から察した方もいるかもしれません。本ブログでは「スノードームは夢を見るか?」以来およそ2年ぶりです。ループものというと大抵、なぜ(何の力によって)ループするのか、ループを抜け出すにはどうしたらいいのか、といった要素に焦点が当たります。しかし本作においてはポイントとなる要素は少し違っています。まず「何をトリガーとしてループが発生するのか」すら分からないのです。
本ブログでこれまでに扱ったループものは4つありました。「スノードームは夢を見るか?」でも「クロノスの箱庭」でも、「決戦前のヒトリ」でも「黄昏が落ちてくる街に」でも、ループの発生は主人公や重要人物の死によって発生しているのが明らかでした。しかし本作においては、単純に人が死んだら日付が戻るわけではありません。しかも毎回同じ日に戻るわけではなく、何事もなく日付が進んだかと思いきや2日戻ったり、突然4日も戻ったり。まずこの不可解な仕掛けがかなり珍しく、私の心を釘付けにしました。

そうしてもう一つ、本作における百合という要素も本筋に大きくかかわってくることになります。ところがこれも王道となる要素からずらしているのです。過去にレビューした「PaintPain ~少女はメイドの手をとって~」「泡沫の花が散る」ではどちらの百合も、お互いにそう望んだ結果でした。しかし本作における主人公の小町は女の子に恋愛的な意味での興味はなく、次々と告白してくる友人たちや部活の仲間に困惑しているのです。
さらにはこの女の子に異常に好かれやすいという小町の”体質”は先述した家庭の問題ともつながってきます。直接の原因である母親の入院、そして妹である吹雪との不仲の原因までもこの体質に求めることができます。
初見だとこの吹雪は小町に対してやたら敵対的で嫌なキャラなのですが、読み進めていくうちに彼女の気持ちも分かってくるし守ってあげたくなるんですよね。なんといっても彼女の言っていることは正しいのですから。
ストーリーを読み進めていくと、時折小町以外の人物の視点で語られる部分があります。瑠璃先輩だったり、楓や吹雪だったり、そしてアリスだったり。彼女らの主観が描かれることによって、小町がこのループの世界に閉じ込められたのは必然であったというのが徐々に明らかになっていくのです。ここがまたうまいところで、特殊な体質を持つ小町を中心としてみなが次第に狂気に蝕まれていったことに合点が行きます。小町の主観では被害者でしかないわけですが、全体を見ていくとむしろ発端ともいえる。そんな展開となっています。
これまでも何度か言ってきましたが、こうした明らかな悪人がいるわけではない中で皆が狂っていったために起きた悲劇というのは私の好きな展開でもあります。あえて一番悪いのが誰か、と聞かれたら、私は瑠璃先輩と答えるでしょうか。
それでも私は、小町が好きだし一番応援してあげたくなるんです。なぜなら、私と似ていると感じるからです。
以下、核心に繋がるネタバレがあります。OKな方は展開して読んでください。
ネタバレあり(クリックして展開)
吹雪は小町を評してこう言いました。「お姉ちゃんのいい所は優しい所かもしれない。誰にでも優しくて、温かくて。でもね、私はそれが悪いところだとも思ってる」。そう、小町は間違いなく”いい子”であってむやみに人を傷つけることはしないし、よほどのことがなければ人に否定的な言葉をかけることもありません。そんないい子は高い確率で”優しい嘘”という病に侵されているんですね。本作におけるループのトリガーとなるのは、小町が嘘をつくこと。終盤でそれが明らかになった時、私は文字通り震えました。こんな怖いことがあるかと。
小町がつく嘘はどれも悪意に基づくものではありません。誰かを守ろうとしたり、事態をややこしくしないためであったり。人が良好な社会生活を送るためには、こうした適切な使い方での嘘は必須でしょう。
謎が解けてから改めて前半部分をプレイし直すと、小町が嘘をついた場面がプレイヤーにもしっかりと提示されていたことが分かります。私でもそこは嘘でごまかすだろうというシーンばかりなので本当につらい。
小町は結局このループの謎を解くことができず、4月の間の日付をうろうろしながらただ心を弱らせていくばかりです。弱った心を守るためにも嘘で武装しなくてはならなくなったのでしょう。
バッドエンドのループものは何気に初めて見たかもしれません。あのシュタインズゲートでさえハッピーエンドがあるのに! いや、これはタイトル画面の生気を失った小町のイラストから察するべきだったかもしれません。他の作品を含めて、全く油断ならない作者さんです。
ループ、そして百合。どちらも題材としてはよくあるものでありながら、王道とは少し離れたところを狙っている本作。斬新すぎない程度に目新しさのある良作ですのでぜひプレイしてみてください。
一筋縄ではいかない物語ですので、くれぐれもご用心の上お楽しみください。
それでは。
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