こんにちは。今回は裏束さんの「SHADOW」のレビューをしていこうと思います。

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★favo
ジャンル:学園サスペンスアドベンチャー
プレイ時間:5時間
分岐:なし(ゲームオーバーあり)
ツール:RPGツクール
リリース:2020/3
備考:15禁、暴力描写あり


ティラノゲームフェスの期間中はノベルゲームのプレイがメインだったので、最近は他のジャンルということでアドベンチャーゲームが多めになっています。3回前から連続でホラー作品を扱ってきました。今回ご紹介する「SHADOW」もアドベンチャーゲームではありますが、ホラー要素はありません。ただしストーリーはかなりブラックな面を含むので、人間社会の闇の部分やダークなストーリーは嫌という方は向かないかもしれません。しかし、そんなストーリーだからこその結末とか推理要素がしっかりしているのでドロドロのサスペンスものがお好きという方にはかなり刺さるんじゃないでしょうか。

まずは簡単に作品全体の解説から行きましょう。
主人公の来栖恭也は高校2年生。訳あって転校してきた影峰高校のクラスでは目に見えていじめがあって一般生徒がおびえていたり、セクハラ教師がいたりと問題多数。転校生であろうと容赦なく降りかかってくる災難に来栖はどう立ち向かうのか。普通の「いじめ撃退もの」とは一線を画すダーティな策略と推理力が見もののダーク系世直しストーリーとなっています。

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来栖に降りかかってくる問題は暴力だったり陰湿だったり脅迫だったりと様々で、プレイヤーはうまく来栖の選択を通じてこれらの問題を解決しなくてはなりません。いじめを解消するストーリーの多くは、より強い暴力による権力を得たりうまく周囲の協力を得て道徳的に諭したりといった方向に行きがちです。これらを正攻法というならば本作で来栖がとる道は邪道もいいところです。なるべく自分に火の粉が飛び掛からないようにはどう動くべきか、クラスメートや先生を利用して事態を好転させられないか、といった計略に長けた来栖は、クラスや学校自体を裏から支配して問題に対処していくのです。普通はなかなか見られないこの切り口は本作の大きな魅力といっていいと思います。

クラス内の数人が関与しているにとどまるいじめ問題を、このように大きなスケールから包み込んでしまうように解消するのもまた新鮮でした。普通なら関係者に対して直接働きかけたり立ち向かったりするものですが、本作で周囲の環境ごと誘導して解決につなげる様子はまるで孫悟空が三蔵法師の手のひらで踊らされているのを眺めるような感じすらしました。

こんな斬新な手法でひたすら突き進んでいく主人公の来栖は当然頭が切れるのですが、単に頭がいいというだけでない芯の強さが感じられます。私がいくら頭がよくなって周囲の状況を適切に判断できて度胸もついたとしても、そもそもそんな発想に至らないだろうという気がするのです。
来栖がこのような人物になったのにはもちろん理由があり、それは彼の家庭だったり前の学校だったりといった環境にあるのです。こうしたバックグラウンドが語られることによって、普通考えられない発想から事件に立ち向かう来栖はただのサイコパスではなく個性と行動原理のある主人公として受け止めることができるのでしょう。自分(プレイヤー)と思考が違いすぎる主人公だと物語に入り込めないということがたまにありますが、本作ではその問題は感じられませんでした。


さて、来栖が最初の事件を大きなスケールで解決してしまうと、それに呼応するようにさらに大きな事件が発生していきます。本作はChapter1からChapter4までの4章構成となっておりそれぞれの章で1つ事件が発生するという構造になっているのですが、章が進むにつれて事件のスケールも大きなものになっていきます。最初は普通にいじめと言って想像できる内容のものから、いじめをネタにした脅迫や監禁に移行。クラス全体を巻き込んで不信感を植え付けるような事件が起こったと思えば、最終的には学校全体を巻き込んだとんでもない大事件に。Chapter2の時点でさすがにこれは刑事事件になるだろうという程度だったのですが、最終的に非ファンタジーの学園ものとは思えない規模になってきます。よくこんな話を思いついたものだなと思います。


事件の規模が大きいというだけでなく、主人公の来栖だけでなく犯人だったり被害者までもが非常に癖が強い人物であるというのも特徴的かと思います。癖が強いということはつまり一般的な感覚からはかけ離れた言動をとるため共感しにくいという面もありますが、キャラクターとしての芯がしっかりしているというプラスの要素もあります。本作はこの要素を積極的に生かした作品だなと思うのです。
思考の様式や行動原理がはっきりしたキャラクターならある程度行動が読めたりする、それを予測して先手を打って対抗したり、相手のプライドを突いた挑発や説得で都合のいいように扱っていったりといった手段が可能なのは、本作の登場人物のキャラが立っているからでしょう。
4つもの事件が起こるのもあり登場人物数としては相当多い部類に入る作品だと思いますが(先生を含めたら15人以上)、ちゃんとキャラとして死ぬことなく全員活躍するのがすごい。全員に立ち絵もついています。


本作のゲーム要素についてです。
各章で導入と事件の発生後に解決のための行動フェーズがあります。数日間の時間制限があり、その間に解決のための現状調査や作戦立案をしたり、具体的な行動や根回しだったりをしていく必要があります。自分で調査する場合もあれば、信頼できる人を見つけて調査や事前工作を依頼しなければならない場合もあります。
前述のとおり来栖はかなりひねくれた手法でアプローチしていきますので、事前の情報調査部分はともかく推理パートや仲間に適切な依頼をする部分は結構難しいと思います。しかしほとんどの場合は1回間違えたらアウトではなく時間制限(3日~5日程度)の間は何回も試せるシステムになっているので、冴えている人なら初見クリアも可能かといった程度でしょう。選択が間違えていると作中の日付が進みます。またギミックによっては一つの結果を得るために最低2日かかる場合もあります。

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事件解決のためにはイベント発生時の選択肢を正しく選ぶだけでなく、メニュー内の「メモ」から正しい考察をすることを要求される場合があります。間違えても一発アウトにはならないので場合によっては何個かの選択肢を試しつつじっくり考えましょう。正しい考察をすることでストーリーが進んだり、フラグが立ったりします。ここが最も推理っぽいポイントでしょうか。

システム系の話をもう一つしておくと、Altキーで会話の過去ログが読めるのが助かります。プレイしなおしているときにWキーで会話スキップなどをしていると直前の話題を見逃すことがあり、ログ機能は重宝しました。初見時の推理のヒントにも使えるでしょう。


エンディングについてですが、Chapter4で起きる事件がもはや校内で起きる事件というレベルではない大事件なのもありスパッと解決!とはいかない感じになります。この来栖に爪痕を残してくる感じが犯人の執念であり、本作の雰囲気を決定づけている要因の一つともいえるでしょう。ここまでよく裏と先を読んで周到な計画を立てたものだなあと素直に感心してしまいます。
このまま胸糞悪い感じで終わるのかなと思ったところで、エピローグがとても感動的だったのでそこも良かったです。Chapter3までで登場した事件の直接の被害者だけでなく、クラス内の雰囲気による間接的な被害者であったり加害者までもが来栖の推理力や参謀としての能力を認めて団結する展開が気持ちいい。最終章にふさわしい熱い展開だったかなと思います。


今まで散々書いてきたように本作全体を通しては非常にブラックな風味なのですが、章間にはおまけシナリオがいくつか用意されており、ふっと笑って一息つけるような話が入っていたりします。あんな陰湿な事件を起こしていながら恋愛のあれこれでキャッキャしていたり、意外な弱点が明らかになったりとシンプルながらインパクトがあって、暗い気持ちで終わりにならないような工夫なのかなと思います。


また、本作には続編「SHADOWS」があります。こちらはSHADOWのストーリーが前提であるだけでなく、作者さんの他作品(村雨)についても関連しています。一応SHADOWさえプレイ済みなら分かるように適宜解説が入っているので必須ではありませんが、プレイ済みだとより楽しめるかと思います。
「SHADOWS」では来栖たちの編入先となった武蔵道高校でさらなる事件に巻き込まれます。こちらも4章構成となっていますが、Chapter2までがSHADOWの雰囲気に近い校内事件の発生と解決となっており、Chapter3,4については修学旅行からさらにスケールの大きな事件が発生し、物語全体のクライマックスへ向かう部分となります。シリーズ合わせて合計30人は登場人物がいますが、ちゃんと全員役割を果たしているのが驚異的。また、最終章でエンディングが2つに分かれます。初見ではまずANOTHER ENDになると思います。もやもやが残る結末を不満に思ったら、ぜひもう一つのエンディングを探してみてください。難しいですが終盤のフラグを細かく確認すれば道が開けるはずです。過去のエピソードまで回収された納得のエンディングが見られるはずです。



というわけで「SHADOW」のご紹介でした。
一風変わった学園サスペンス、ダークな主人公がお好きな方はプレイして損はありません。

それでは。