こんにちは。今回はころぱふさんの「君のうさミミを鍋にしてたべたい!」のレビューをしていきたいと思います。

ジャンル:うさミミ学園SFミステリー(説明文より引用)
プレイ時間:2時間
分岐:基本1本道
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2024/7
ここ数回アドベンチャー・謎解き系の作品が続きましたが、今回はノベルゲームとなります。
みなさんはこの「君のうさミミを鍋にしてたべたい!」というタイトルを見ていったいどんな物語を思い浮かべるでしょうか。私は、一発ネタ系のギャグ作品で妙なフェチを特色にしているタイプのお色気要素の強い作品を想像しました。果たして序盤の展開についてはそれに近かったものの物語が結末に近づくにつれて思いもよらなかった方向に進んでいく凄い作品でしたので記事にしていこうと思います。
まずはいつも通りあらすじの紹介から。
主人公の八十木真冬はアルバイトに精を出す高校1年生。ある日登校中に泣いている同級生の弥上美卯を不審に思って事情を尋ねてみると、夜中に怪しいウサギの着ぐるみに誘拐され、朝起きたら頭から直接うさミミが生えていたというのだ! その場に居合わせた大國命子とともに事情を聴いていると、突然そのうさミミを食べたいという衝動が爆発。美卯のウサギ化と八十木の食欲に対処するためにも、弥上を襲った着ぐるみ集団を追うことにするのだった。

こんなところでしょうか。
この序盤の展開だけ見るとどう見てもおバカな設定の学園ギャルゲーで、ウサギ化についてもなんだかんだ流れで解決してヒロインと結ばれる…みたいなストーリーを思い浮かべます。実際物語序盤のうちは突飛な設定のギャルゲーっぽく進行していきます。
うさミミが生えてきてしまった美卯をたまたま目撃するのはもちろんのこと、協力関係になった大國はギャルゲー定番の委員長キャラ。基本的には真面目で成績のいいキャラクターでありつつそこにオカルトマニアという個性を追加。外見がかわいいだけでなくちゃんとキャラが立っていてギャルゲーのヒロインを張れる感じに思えます。

しかし本作はそんな2人と恋愛関係になって結ばれるといった甘~い作品ではないのでした。ではどんなところが違ったのか。私がおっと思ったポイントを順にご説明しましょう。
まず、導入部で明らかになる設定が完全にバカゲーの空気であるのに対して、妙にインテリっぽいというか、練られて考えられている感があるんですよ。例えば謎のウサギ着ぐるみ集団は「星来会議」という組織なのですが、彼らが残すメッセージカードには暗号じみた文章が。ラテン語のヒントであったりビデオメッセージに登場するフランス語だったりといった頭良い感じが出ていて意外な感じがしました。
その暗号を解いていくという要素などが、ジャンルに”ミステリー”が含まれている所以だと思うのですが、これもギャグ作品っぽいというよりかっちりとした内容になっています。ギャルゲーなどの謎解きを主題にしない作品ではひらめき一発だったりただのダジャレだったりすることが多いと思うのですが、本作ではヒントをもとに暗号文に手を加えたりといった手法が使われておりきちんとミステリーしているなという感想が持てました。シリアスでないタイプの作品なら謎解きが雑でも許せる感じがありますが、本作にようにしっかりしているならそれに越したことはないですよね。
また、暗号に関する言葉の使い方なんかも初見の印象より非常にしっかりしているように思えます。「暗号文」「暗号鍵」が区別されたりするのですが、多分このあたりの言葉ってコンピューター関連のセキュリティーとか暗号理論を勉強したことがある人じゃないと区別されないんじゃないかなと思うのですよね(私はたまたまそれに隣接する分野にいるので知っていましたが)。「暗号鍵」の内容が歴史的に有名なものなことも含めて、実はめっちゃ勉強できる作者さんなんじゃないかって気がしてきます。
美卯の”ウサギ化”が萌えアニメ的な感じで進むのではなくガチな感じというのもなかなか特徴的にではないでしょうか。ウサギの耳が生えてくるだけならまあそういう擬人化/ケモノ系の作品もあるよな~となるのですが、五感がウサギに近くなって視力が弱る代わりに嗅覚が鋭くなっていったり、性格が少し臆病になったりといった描写があり、もはやこれは萌えでは済まされない事態というのが伝わってきます。だからこそこれは解決しなければならない事件でありミステリーなのです。
そんな風に星来会議との対決が進んでいくと、物語のテーマは美卯の抱える不安や3人の間で芽生えた友情といった方向にシフトしていきます。中盤で出てくる「……委員長はいいですね、帰るべきところがあるみたいで。」という台詞は象徴的でしょう。美卯にとって家庭はあまりのびのびできる場所ではないようです。寮で一人暮らしである八十木にとっても自宅は誰かに温かく迎え入れてもらえる場所ではないようで、こういったうさミミ以外の面からも彼らは共鳴するところがあるようです。
委員長にとっても今まで周囲に堂々と言えなかったオカルト趣味の対象が目の前に現れて、そういった話をしてもドン引きされない大切な仲間という意識がついてきます。こうして物語はシリアスな雰囲気を帯びてくるのです。
驚いた点の最後として、数多くの伏線が張られて物語中で回収されるという点を挙げておきましょう。
犯人がうっかり口を滑らせた何気ない発言だったり、さらっと登場したウサギに関する知識だったり、意味深に登場する台詞の意図だったりといった様々な部分で感じられます。発言の振り返りに関してはいちいちリプレイが入るのが鬱陶しいよ! というレベルだったりするくらいで、相当に計算したうえで作られたのでしょう。

そんな風に謎が解決していき最後には黒幕との対決が待っています。黒幕や組織の正体はかなり意外なものと言っていいでしょう。というかむしろこれは反則では? と思えたりもするのですが、本作では選択肢を間違えてもゲームオーバーになったりはしないので細かく気にすることでもないでしょうか。
この最後の対決についてもこれまでに登場した美卯の悩みであったり3人の関係性であったりが行動につながっておりいかに前半の日常シーンが無駄なく組まれていたかがわかります。
アクションシーンではまたも前半に出てきたあの情報が役に立っておりうならされました。
対決シーンを乗り越え無事エンディング…へと向かうのですが、すっきり解決してめでたしめでたしという感じとも少し違うのは微妙にもやっとする気もします。問題は解消しているんですが主人公である八十木の思い切りがよくないというかどっちつかずというか…。「ひとかた」の主人公に対して感じた気持ちにちょっと似ているでしょうか。まあ現実の人間はそんなに簡単に割り切れないものですからそういった意味ではリアリティがあるかもしれませんね。
八十木に迷いが生まれる理由についてきちんと描かれているところは素晴らしく納得感もあるのでバランスですかね…。
最後に本作の選択肢について。先に軽く触れたとおり本作ではどの選択肢を選んでもゲームオーバーにはなりません。直後の展開が少し変わるくらいで、間違えても選択をやり直せます。謎解きの解答シーンでも、分からなければヒントを要求できますし間違えても大丈夫。本格ミステリーではないのでこの難易度調整は正解でしょう。
ちょっぴり不満も書いちゃいましたが全体的によくできていてワクワクするストーリー展開とギャルゲーのヒロイン的魅力のあるキャラクター達、意外なほど手の込んだ謎や伏線など見所十分な作品だと思いますのでぜひプレイしてみてください。軽めのミステリーが好きな方、萌えギャルゲーが好きな方、どちらでも満足できると思いますよ。
それでは。

ジャンル:うさミミ学園SFミステリー(説明文より引用)
プレイ時間:2時間
分岐:基本1本道
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2024/7
ここ数回アドベンチャー・謎解き系の作品が続きましたが、今回はノベルゲームとなります。
みなさんはこの「君のうさミミを鍋にしてたべたい!」というタイトルを見ていったいどんな物語を思い浮かべるでしょうか。私は、一発ネタ系のギャグ作品で妙なフェチを特色にしているタイプのお色気要素の強い作品を想像しました。果たして序盤の展開についてはそれに近かったものの物語が結末に近づくにつれて思いもよらなかった方向に進んでいく凄い作品でしたので記事にしていこうと思います。
まずはいつも通りあらすじの紹介から。
主人公の八十木真冬はアルバイトに精を出す高校1年生。ある日登校中に泣いている同級生の弥上美卯を不審に思って事情を尋ねてみると、夜中に怪しいウサギの着ぐるみに誘拐され、朝起きたら頭から直接うさミミが生えていたというのだ! その場に居合わせた大國命子とともに事情を聴いていると、突然そのうさミミを食べたいという衝動が爆発。美卯のウサギ化と八十木の食欲に対処するためにも、弥上を襲った着ぐるみ集団を追うことにするのだった。

こんなところでしょうか。
この序盤の展開だけ見るとどう見てもおバカな設定の学園ギャルゲーで、ウサギ化についてもなんだかんだ流れで解決してヒロインと結ばれる…みたいなストーリーを思い浮かべます。実際物語序盤のうちは突飛な設定のギャルゲーっぽく進行していきます。
うさミミが生えてきてしまった美卯をたまたま目撃するのはもちろんのこと、協力関係になった大國はギャルゲー定番の委員長キャラ。基本的には真面目で成績のいいキャラクターでありつつそこにオカルトマニアという個性を追加。外見がかわいいだけでなくちゃんとキャラが立っていてギャルゲーのヒロインを張れる感じに思えます。

しかし本作はそんな2人と恋愛関係になって結ばれるといった甘~い作品ではないのでした。ではどんなところが違ったのか。私がおっと思ったポイントを順にご説明しましょう。
まず、導入部で明らかになる設定が完全にバカゲーの空気であるのに対して、妙にインテリっぽいというか、練られて考えられている感があるんですよ。例えば謎のウサギ着ぐるみ集団は「星来会議」という組織なのですが、彼らが残すメッセージカードには暗号じみた文章が。ラテン語のヒントであったりビデオメッセージに登場するフランス語だったりといった頭良い感じが出ていて意外な感じがしました。
その暗号を解いていくという要素などが、ジャンルに”ミステリー”が含まれている所以だと思うのですが、これもギャグ作品っぽいというよりかっちりとした内容になっています。ギャルゲーなどの謎解きを主題にしない作品ではひらめき一発だったりただのダジャレだったりすることが多いと思うのですが、本作ではヒントをもとに暗号文に手を加えたりといった手法が使われておりきちんとミステリーしているなという感想が持てました。シリアスでないタイプの作品なら謎解きが雑でも許せる感じがありますが、本作にようにしっかりしているならそれに越したことはないですよね。
また、暗号に関する言葉の使い方なんかも初見の印象より非常にしっかりしているように思えます。「暗号文」「暗号鍵」が区別されたりするのですが、多分このあたりの言葉ってコンピューター関連のセキュリティーとか暗号理論を勉強したことがある人じゃないと区別されないんじゃないかなと思うのですよね(私はたまたまそれに隣接する分野にいるので知っていましたが)。「暗号鍵」の内容が歴史的に有名なものなことも含めて、実はめっちゃ勉強できる作者さんなんじゃないかって気がしてきます。
美卯の”ウサギ化”が萌えアニメ的な感じで進むのではなくガチな感じというのもなかなか特徴的にではないでしょうか。ウサギの耳が生えてくるだけならまあそういう擬人化/ケモノ系の作品もあるよな~となるのですが、五感がウサギに近くなって視力が弱る代わりに嗅覚が鋭くなっていったり、性格が少し臆病になったりといった描写があり、もはやこれは萌えでは済まされない事態というのが伝わってきます。だからこそこれは解決しなければならない事件でありミステリーなのです。
そんな風に星来会議との対決が進んでいくと、物語のテーマは美卯の抱える不安や3人の間で芽生えた友情といった方向にシフトしていきます。中盤で出てくる「……委員長はいいですね、帰るべきところがあるみたいで。」という台詞は象徴的でしょう。美卯にとって家庭はあまりのびのびできる場所ではないようです。寮で一人暮らしである八十木にとっても自宅は誰かに温かく迎え入れてもらえる場所ではないようで、こういったうさミミ以外の面からも彼らは共鳴するところがあるようです。
委員長にとっても今まで周囲に堂々と言えなかったオカルト趣味の対象が目の前に現れて、そういった話をしてもドン引きされない大切な仲間という意識がついてきます。こうして物語はシリアスな雰囲気を帯びてくるのです。
驚いた点の最後として、数多くの伏線が張られて物語中で回収されるという点を挙げておきましょう。
犯人がうっかり口を滑らせた何気ない発言だったり、さらっと登場したウサギに関する知識だったり、意味深に登場する台詞の意図だったりといった様々な部分で感じられます。発言の振り返りに関してはいちいちリプレイが入るのが鬱陶しいよ! というレベルだったりするくらいで、相当に計算したうえで作られたのでしょう。

そんな風に謎が解決していき最後には黒幕との対決が待っています。黒幕や組織の正体はかなり意外なものと言っていいでしょう。というかむしろこれは反則では? と思えたりもするのですが、本作では選択肢を間違えてもゲームオーバーになったりはしないので細かく気にすることでもないでしょうか。
この最後の対決についてもこれまでに登場した美卯の悩みであったり3人の関係性であったりが行動につながっておりいかに前半の日常シーンが無駄なく組まれていたかがわかります。
アクションシーンではまたも前半に出てきたあの情報が役に立っておりうならされました。
対決シーンを乗り越え無事エンディング…へと向かうのですが、すっきり解決してめでたしめでたしという感じとも少し違うのは微妙にもやっとする気もします。問題は解消しているんですが主人公である八十木の思い切りがよくないというかどっちつかずというか…。「ひとかた」の主人公に対して感じた気持ちにちょっと似ているでしょうか。まあ現実の人間はそんなに簡単に割り切れないものですからそういった意味ではリアリティがあるかもしれませんね。
八十木に迷いが生まれる理由についてきちんと描かれているところは素晴らしく納得感もあるのでバランスですかね…。
最後に本作の選択肢について。先に軽く触れたとおり本作ではどの選択肢を選んでもゲームオーバーにはなりません。直後の展開が少し変わるくらいで、間違えても選択をやり直せます。謎解きの解答シーンでも、分からなければヒントを要求できますし間違えても大丈夫。本格ミステリーではないのでこの難易度調整は正解でしょう。
ちょっぴり不満も書いちゃいましたが全体的によくできていてワクワクするストーリー展開とギャルゲーのヒロイン的魅力のあるキャラクター達、意外なほど手の込んだ謎や伏線など見所十分な作品だと思いますのでぜひプレイしてみてください。軽めのミステリーが好きな方、萌えギャルゲーが好きな方、どちらでも満足できると思いますよ。
それでは。
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