こんにちは。
以前Twitterで、フリーゲームのBGMに使われている素材の探し方みたいなことをつぶやいたら思ったより反響があったので、今回はBGMについて思いついたことをつらつらと書いていこうと思います。
始めに書いておきますが、今回はかなり長いです。素材特定のコツだけ教えろよ!という方はこちらからどうぞ。

私は小学校から高校に通っている間ピアノを習っており、大学では合唱団に所属して合唱にも取り組みました。そんな私が聴く音楽は主にクラシックのピアノ曲か合唱曲でした。すごく熱心にやっていたというほどではないですが、どちらもそれなりに楽しくて続けています。ちなみに演奏経験のある好きな曲はR.シューマンの「子供の情景」より13曲目「詩人は語る」や、高田三郎の混声合唱組曲「水のいのち」より1曲目「雨」、G.マーラーの交響曲第8番(通称「千人の交響曲」)などです。自分では難しすぎて絶対弾けないけどあこがれるのはF.ショパンの「英雄ポロネーズ」、弾きたいしそのうち練習しようと思いつつ全然練習に取り掛かれてないのは同じくショパンの「華麗なる大円舞曲」です。

そんな私がその他の音楽を聴くようになったきっかけは間違いなくむきりょくかん。さんの「ほしのの。」との出会いでした。「ほしのの。」については今度じっくり記事を書くとして、今触れたいのは使われていた音楽です。この作品(原作Flash版のほう)は2007年公開と古い作品なのですがエンディングテーマがボーカル付きです。fokaさんの「あたりまえ かわりばえ」という曲でして、この曲の歌詞とメロディーがとにかくシナリオの雰囲気とぴったりマッチしていることに感動してしまったのです。作品クレジットからfokaさんの楽曲であることを知るとすぐさまサイトに飛び、速攻でダウンロードしてずっと聴いていたのを覚えています。それ以来、プレイしたフリーゲーム内で気に入ったBGMがあると素材を探し出して鑑賞するのが一つの趣味となりました。そんな感じなので、クリア後に音楽鑑賞モードのある作品はそれだけで私の中の評価レベルが1段階上がります(笑)
最近のフリーゲームはかなり力を入れて作る方も多く、BGMも素材は使わずに作曲してオリジナルを使っているものもありますが(もちろんそうした作品も凄いと思いますし、音楽のクオリティーもとても高いことが多いです)、素材を使った作品だとプレイ後にBGMを収集してきて鑑賞するといったことがしやすいですし、「これはあの作品にも使われていた曲だ!」みたいににやにやすることもできるわけです。

自作曲の場合はサウンドトラックまで用意されているような作品もあり、その場合はかならずチェックします。必ず買うとは限らないのですが、BGMから場面が思い起こせるような印象的なものがあったら買うようにしています。ちなみにサウンドトラックまで無料で提供されている作品も数は少ないですがありました。私がプレイした中で知っている範囲では、妹れっぐぅおーまーさんの「風のように、花のように。」(ただし現在ではサウンドトラック配信は終了している模様? ニコニコ動画で試聴は可能。作品自体はまだ公開されているがダウンロードリンクがリンク切れになっているところも多い。また、作品は全年齢だがサイトは18禁作品を含むので注意)とFour Leaf Studiosさんの「かたわ少女」(注:18禁)です。みやのさんは、ニコニコ動画でBGM集を投稿されていますね。

さて、プレイした作品内の素材BGMすべてを収集しているわけでは当然ないのですが、それでもこれまでに集めた素材は100曲を優に超え、曲を集める際のコツみたいなものも少し掴んできました。この、フリーゲーム内に使われているBGM素材を探すコツについては需要がありそうな感じがしたので、いくつか書いてみますね。
  • 当然ですが、まずは作品ReadMeやクレジット表記を読む。曲名まで書いてあれば特定は簡単。
  • クレジットに楽曲提供者や配布サイト名のみしか書いていない場合
    • 探したい曲を分かる範囲で良く調べます。
    • 楽曲の長さは有効な絞り込みの条件になることが多いです。作品内でそのBGMがかかる場面でプレイの手を止め、ストップウォッチで大体何分何秒の長さがあるか調べましょう。ループ素材の場合はどこまでが1周なのかわかりにくい場合がありますが、何週かすれば大体分かります。ゲーム作者によって素材の一部をカットするなどの加工がされ、素材楽曲の長さとゲーム内で計測される時間が異なる場合もあることに注意。
      • DOVA-SYNDROMEなどの膨大な数の曲が登録されていて、曲の長さによる検索機能が充実しているサイトで特に有効。
      • 他のサイトでは、Senses Circuitなどでも時間による絞り込み機能あり。甘茶の音楽工房では、演奏時間順ソート機能あり。
    • 曲に使われている楽器や、拍子などを聴き取る。
    • 曲の雰囲気を表すのに使われそうな単語をイメージする。楽しい、幻想的、壮大、和風など。音楽素材サイトでは色や季節によって雰囲気ごとに曲を探せる機能があることも多いので、あてはまりそうな分類を重点的に探す。
  • 配布サイト名表記すらない場合
    • 特定はかなり困難です。素材配布サイトのうち規約でクレジット表記を必須にしているサイトは除いて考えられるくらいでしょうか。
      • ただしoo39ドットコムのように、クレジット表記しなくてもよいライセンスを販売しているサイトもある。
    • 同じ作者の他の作品にはクレジット表記がある/何の曲かわかる場合には、同じ方の曲を使っている可能性が高いので重点的に調べるといいでしょう。
  • その他のテクニック
    • 当然ながら、作品の公開日より後に公開された素材は利用されていない。配布サイトで公開年月日が分かる場合は絞り込むことができる。そうでない場合でもたいていの場合は公開日順に並んでいるので参考にはなる。
    • 作者が自身のサイトやSNSでBGMに関する話をしていないかチェックする。
いま思いついたのはこんな感じです。また、古い作品の方が探すのは苦労します。サイト移転などによりクレジット表記がリンク切れになっていたり、楽曲製作者がサイトを閉鎖していたりする確率も上がってしまいます。サイトが閉鎖されていた場合は入手は絶望的なので、欲しい素材がある場合はすぐに調べるに限ります。

さて、私はフリーゲームのBGMを集めることは何度もやってきたわけですが、それらの経験の中でも印象的だった時のことをいくつかお話します。

Ramineさんの「southern cross」

これは、むきりょくかん。さんの「ごがつのそら。(Nscripter版)」のおまけシナリオ終盤で、2人が洞窟を抜け"はちがつのゆき"の地点に到着した時に流れるBGMでした。このソフトで穏やかな曲調なのに壮大な感じがするような曲が大好きで、DLしてじっくり鑑賞したい!となったのですがそう簡単にはいきませんでした。作内の音楽鑑賞モードでほとんどのBGMはクレジット付きで鑑賞できるのですが、なんとこの曲だけはリストになかったのです(作者さんのミス?)。それでもあきらめられない私。いろいろさがしましたが結局分かりませんでした。そんな私が何の曲か突き止めるきっかけになったのはなんと本作の英語版「May Sky」をプレイした時のことでした。なんとDLしたフォルダの中に暗号化されていないNScripterのスクリプトファイルの一部が紛れ込んでいたのです。本来見えちゃいけない情報だろうなあと思いつつ中身を確認すると、BGMを指定するタグなども記入されていることを発見。該当部分を探し出し、曲名が”southerncross"(あるいはそれに類する名前)らしい、というところまでたどり着きました。しかしsouthern crossは一般名詞(南十字星)なので正確な曲名や作曲者を特定するには至らず。そこで当時存在していたインディーズ音楽配信サイト「muzie」で検索して2ページ目くらいに出てきたのがこの曲でした。見つけるのに相当苦労したのでこの時の喜びはかなり大きかったです。ちなみに、このときmuzie検索でトップだった403さんの「Southern Cross」も後にSparebeatというゲームで再会し好きになることになります。arika-projectさんの「こころのアリカ」(Flash作品のため現在はプレイ困難)でも使われていた曲だと気付くのもまだ先の話です。

DOVA-SYNDROME/yukiさんの「いちごホイップ

この記事を書くきっかけにもなったツイートでも例に出した曲です。私がこの曲に出会ったのは、SNさんの「僕が魔法使いに捕まって女の子にされたワケ」のタイトル画面です。この作品は私のツボにドはまりしまして、とにかく爆笑しました。お色気要素の程度もちょうどよく、さらにはキャラクターの設定がしっかりしていてギャグだけでなくシリアスな展開もあり最高だったのですが、残念ながら現在は公開停止になっています。本作をプレイし終わった私は、大満足し、タイトル画面で使われていた可愛らしい曲を探すことにしました。しかし本作のReadMeには配布サイトの名前しかありません。曲名が分からないため探すのに苦労しました。2つ書かれていた配布サイトの中ではDOVA-SYNDROMEが配信曲数で圧倒的に多いため、ここの可能性が高いだろうと踏んでとにかく探しました。ここで役に立ったのがツイートでも紹介した曲の再生時間による絞り込み検索です。タイトル画面でストップウォッチをもって計測し、約1分だったため30秒~1分と1分~1分30秒の2つで検索。さらに、楽しい、可愛い、4拍子、シンセなど条件を変えていろいろ絞り込みます。膨大な数の候補がありましたが、公開年の2016年3月の曲から気合でさかのぼって調べ、およそ2時間かけてyukiさんの「いちごホイップ」にたどり着きました。この時の興奮はなかなかでした。ちなみに、この曲は後にmisosioさんの「お前のスパチャで世界を救え」などの作品にも使われることになるほか、広告動画やYouTuberもよく使う楽曲であるとは当時の私は知りませんでした。

DOVA-SYNDROME/田中芳典さんの「Catharina(カタリナ)/Agnus Dei~Kyrie

この曲は、CHARONさんの「ほろびのゆりかご」という作品をプレイしていて出会った曲です。一日が終わった場面で暗転し、夢の中に入るような感じでこの曲が始まるのですが、合唱経験者の私は即座にこの曲の歌詞が「Agnus Dei. Gloria. Kyrie.」だということに気付きました(ほとんど子音が無いようなコーラスのみなので、そのまま発音してはいないです)。Agnus Dei(アニュス・デイと読みます)というのはラテン語で神の子羊、つまりキリストを指す言葉です(キリスト教徒でもないのに何でこんなこと知っているかというと、合唱の題材として扱われることが多いからです。声楽は教会音楽から発展してきた面が大きいですが、Agnus Deiはまさに教会で歌われるミサの讃歌(平和の讃歌)です。西洋音楽に大きく影響を与えているので合唱経験者はミサ曲について知っている人が多いです)。いきなり神秘的な音色でかつ宗教色が出てきたので、プレイ中の私は「ああ、さっきの選択肢を間違えてこれは主人公が死ぬバッドエンドなんだな」というのを、テキストを送る前に悟りました。
大変印象的だったのでプレイした後、クレジットにDOVA-SYNDROMEの名前があるのを見て「Agnus Dei」で検索すると一発でこの曲が出てきました。ちなみに、Kyrie、Gloriaもそれぞれ日本語では憐れみの讃歌、栄光の讃歌と言われ、ミサ曲を構成する要素です。


さて、このマニアックな記事をここまで読んでくださった方にお勧めの遊びがあります。まずDOVA-SYNDROMEのYouTube公式チャンネルに行って、先月の再生数トップ100などの適当な再生リストをランダム再生します。するとたまに聞き覚えのある曲が流れてくると思いますので、それが一体どのフリーゲームに使われていた曲なのかを当てるという遊びです。YouTubeで上がっているだけあって、フリーゲームよりはYouTuberによる使用例などのほうが多いようで、知っている曲の割合は低かったですが、たまにわかる曲に出会うとテンションが上がります。私の場合、稿屋隆さんの「so sweet」を聞いた瞬間に頭の中がおばけさんの「コメット☆キャンディ」になりました。
ほかの音楽素材配布サイトでもこんな遊びができたらいいんですが、ランダム再生機能があるサイトは全然ないんですよね……。フリーゲームによく使われている印象のあるサイトでこの機能あったらたぶん1日中聴いていられる気がします。


かなり長くなったので今回はこの辺にしておきます。いろいろと語り散らしましたが、まだまだ思い出の曲などあるので、気が向いたら第2弾の記事も書くかもしれません。この記事内で名前を出した作品もそのうち紹介したいですね。

それでは。