フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
初めての方は、ぜひごあいさつをご覧ください。評価の基準については、レビューについてに記してあります。
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レビュー

こんにちは。前回の予告通り、今回は星くずのお茶会さんの「Lived happily, ever after」のレビューとなります。
実はおよそ1年前にプレイ済みだった作品なのですが、ティラノゲームフェス10の機会に読み返してみたところどんどん好きになりましたのでご紹介します。

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ジャンル:シリアスファンタジー乙女ゲーム
プレイ時間:2時間半
分岐:なし
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2025/3
備考:15推


久々のレビュー記事で若干書き方を忘れてますが、まずはあらすじを簡単にまとめておきましょう。
舞台となるのは魔王や吸血鬼が存在する洋風ファンタジー世界。主人公のメーベルはその生まれ持っての黒い髪の毛が魔王を思わせるという事で幼いころから理不尽な仕打ちに耐えてきました。町はずれにある吸血鬼の屋敷への給仕に向かわされることとなり、そこで出会うのが吸血鬼のシオンです。確かに普通の人間とは違う性質のある彼ですが世間一般に思われているような恐ろしい雰囲気は一切感じさせない親切な彼にメーベルは惹かれていきます。しかし人間と吸血鬼の恋愛が簡単に成就するはずはなく、世間からの差別も強烈です。そのような中で2人は少しずつ絆を深め、味方を増やして愛をはぐくんでいくのでした…


本作の世界観は洋風の童話そのものです。童話の世界ってシンデレラにしても白雪姫にしても非常に不憫な環境だったりしますが、本作も例にもれずメーベルの扱いは散々なものです。ただ髪が黒いだけでいわれのない罵倒を受け、まともな職にも就けず腫れもの扱いされる日々。屋敷での給仕というのも実質的には「吸血鬼のいけにえになって来い」という命令です。
とこのようにシビアな状況なわけですが、本作が童話と違うのは、このひどい扱いが意地悪な継母や嫉妬深い魔女によるものではなく、一般大衆が悪意なく抱えている偏見や差別心によるものだということです。現実世界でも個別には悪意と呼ぶほどでもないものが集積した結果、特定の人物に致命的なダメージを与える現象はたびたび起こります。「指先で世界を見る(tales&Vivid)」などの作品が思い浮かびます。一人の悪者を成敗すれば解決、と行かないところは童話よりも大人向けのシナリオと言えるでしょう。

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そんなメーベルが出会う吸血鬼のシオンは、吸血鬼という恐ろしいイメージとはかけ離れた優しい人物でした。吸血鬼であるという事自体は間違いではないのですが、人を襲う事のないように人里離れた屋敷に住み、動物の血で渇きをしのいで過ごし、メーベルやシオンを差別する人たちよりよほど温かい心を持っているのです。
世間から厄介者扱いされていた彼らはお互いの境遇に共感し、惹かれ合うようになります。これだけの扱いを受けていた中での出会いなら運命的なものに感じられるだろうな、という納得感があります。

このまま2人がデートを重ねて結ばれるストーリーなら、いわゆる「理解のある彼くん」が突然現れて幸せになる話とも分類できそうですが、本作がすごいのはここからです。
他人に迷惑をかけるわけでもなく静かに暮らしている2人ですが、その平穏すら許してくれません。もともとは普通の人間であったシオンが吸血鬼となったのは、両親の魔王討伐の失敗に起因するものでした。討伐自体はあきらめなんとか封印を施すことには成功したのですが、その際にシオンが呪いを受けてしまったのです。そんなシオンにとって、人の血を飲みたい衝動を抑えるのは大変な困難を伴うものでした。

見かねたメーベルが自分の血なら吸ってもらっても構わないからと身を差し出すシーンはなかなか印象的です。まだ物語前半の出来事なのですが、この時点では既にメーベルはシオンと運命を共にする覚悟を決めています。シオンはシオンで血を飲み干してしまいたい欲望にあらがって数滴に留め、メーベルを気遣います。これだけお互いのことを思いながら嘘もなく生活しているなら、普通の乙女ゲームならもうゴールと言っていいでしょう。しかし本作はその先。2人の愛と絆を試すかのように差別や呪い、政治的思惑などが彼らを襲う、そうしたシビアな状況の中でどのように幸せを見出していくかという物語なのです。

具体的にどのような困難が彼らを待ち受けているのかはここでは語りませんが、どれもかなり絶望的なものです。それも、過去に魔王がもたらした呪いだったり、近くに吸血鬼が住んでいることに対する政治的判断だったりと本人にはどうしようもないものばかりです。普通の恋愛ものにおいて恋愛成就のハードルになりがちな2人の間のすれ違いだったり身の回りの人間の説得だったりといった事象とは質的に異なるのが特徴的で、もしかしたら受け入れがたく感じる方もいるかもしれません。このひどい運命が物語中で前触れなく明らかになるのも唐突感があるようにも思います。


何度も述べてきたように本作におけるメーベルやシオンの置かれた環境は大変厳しいものですが、登場人物たちはみな優しい心をもちと自分の信念を貫く素敵な人物であることは特筆すべきでしょう。吸血鬼の討伐を目的にやってきたシエラでさえ2人に害をなすことに固執することなく、状況と自らの使命とを照らし合わせながら人道的な判断を下しています。物語後半となり味方が増えてくると、避けがたい巨大な運命を相手にどうやって幸せになるかを協力して考えている感がありなかなか感動的です。

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物語のエンディングでは魔王の呪いを解くために代償をささげるかを決断することになります。大切な人や物を守るために自身の何かしらをささげるという構造はよく見るものですが、本作においてはその結果二人が人類の平和を願うという方向へ決着するのが印象的。幾度とない差別にも平和的な解決を望んできた二人の"らしさ"がよく出ているなと思うのです。そんな"優しい人"である彼らが重い代償を伴う決断をしなくてはならないというのは皮肉的ではあるのですが、だからこそ二人の間で築かれた確固たる愛を強調しているようにも感じられます。


本作はシナリオやイラストだけでなく音楽も自作のようで、特にエンディングテーマは作中の世界で使われている設定の架空言語による歌詞がついている凝りようです。一度エンディングを迎えた後はおまけ画面から日本語版も選択できるようになりますので、ぜひ聴いてみてください。この日本語版はJOYSOUNDでの配信もされていますので、カラオケに行ったら歌えます! フリーゲームで自作主題歌がカラオケ配信されているという例はかなり珍しいでしょう。

さて、実は本作は同作者によるファンタジーRPG作品「canvasぷろじぇくと」のスピンオフとして制作されたノベルゲームとのことです。残念ながら本編はまだ体験版のみの公開のようですが、興味を持たれた方はぜひこちらもチェックしてみてください。

というわけで今回は「Lived happily, ever after」のレビューでした。
とにかく二人に厳しい運命が襲い掛かるシナリオは多少人を選ぶかもしれませんが、この困難を乗り越え無邪気な愛をひたすらに描き続ける物語を見届けたあなたは間違いなく愛という希望を信じて前向きに生きる力をもらえるはずです。

それでは。

こんにちは。今回は陽乃まなつさんの「友達以上、成仏未満」のレビューとなります。

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ジャンル:学園青春ノベルゲーム
プレイ時間:1周30分、フルコンプまで1時間程度
分岐:エンディング4種
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2025/9


先週に引き続き、ノベルゲームコレクションにて見つけた作品です。とはいっても方向性はかなり違っています。「RトR」は15禁かつ尖った展開の作品で人を選ぶかなという印象ですが、本作「友達以上、成仏未満」は丸く優しい雰囲気を感じます。きっと多くの方に楽しんでいただける作品かなと思いますのでご紹介します。


主人公のユウは高校2年生。なんとなく学校帰りに神社に寄ったある日、同じ学校の制服を着たトモリと名乗る少女に出会います。ユウのことを知っている風な彼女は距離感も近く、その日のうちに「だって私たち、友達でしょ」と言い出すありさま。彼女もいなかったユウに突然華やかな笑顔の眩しいトモリという友人が加わり、日常が少し明るくなるのでした…
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本作の冒頭をまとめるとこんな感じでしょうか。いわゆるボーイミーツガールど真ん中といった展開ですが、タイトルが「友達以上、成仏未満」であることを考えれば、彼女は生身の人間ではなさそう、しかも生前にはユウとの間に浅からぬ縁があったという事は容易に想像がつくでしょう。実際、トモリの正体や過去の出来事といった秘密は物語後半で徐々に明らかになっていきます。


この秘密を解き明かすうえで重要な役割を担っているのが、友人キャラであるキョウスケとアイハラです。この2人は最初から事情を把握しているようなのですが、それをユウに押し付けたりせずにタイミングを計りつつ見守ってくれています。ユウが何かを思い出しそうなところでそれを後押ししてくれる、大事な忠告をしてくれる、そんな素晴らしい友人たちも本作の魅力の一つと言っていいでしょう。

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タイトル画面でこちらに微笑むトモリのイラストは大変可愛らしく、立ち絵の表情も眩しいですね。ややマニアックですが、バックログ画面に移った時に後ろでトモリがこちらを見守ってくれている構図が「成仏未満」感があって良いと思います。
背景についてはフリーゲームで見慣れた素材が多数ありますが、淡めの色使いの立ち絵にマッチするように少々加工されている様子で、こういった細かな配慮が嬉しい所です。見慣れた背景であるがゆえに、元画像とのアスペクト比の違いに気付いてしまうので、そこは一つもったいなく感じました。

音楽はオリジナルと素材があるようでどちらも優しい雰囲気に合った曲がセレクトされているように思います。音楽の卵さんの曲は聴いたらなんとなく分かるくらいには好きだし、「届かなかった願い」は過去記事で触れたりもしてますしね。シーンともぴったりです。
曲ごとの音量が合っていないように感じられる部分がありそこは少し気になりました(タイトル画面は無音なのかと思っていたら、よ~く聞いてみるとリストの愛の夢がかかっておりびっくり、といった感じ)


さて、話はシナリオに戻りまして、エンディングへの分岐です。エンディングは計4種あり主に最終章で分岐しますが、それまでの選択肢できちんとフラグを立てておかないといくつかのルートには入れないようになっています。END3へ行くにはユウが自分のことだけでなく周りもきちんと見なくてはならないのが素敵。いい友人はぜひ大切にしたいものですね。

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最終章で明らかになる事実はおおむね私の予想通りではありましたが、その見せ方がうまい。最初は好感度不足かと思ったけれど、結局過去は変えられないんだと分かったあの演出だったり。普通に読み進めていれば「このままトモリと幸せになることはできないんだろうなあ」と容易に予想できるシナリオですが、最後に予想を少しだけ裏切ってくるEND3の展開。衝撃の事実や不可思議な謎を物語の牽引力とするタイプの作品とは違った安心感がそこにあります。なんとなくCreative Blossomsさんのそれと似た雰囲気を感じるんですよね。
また、END3も良いですが、END2に出てくる
「抱きしめても・・・トモリの体はなんの感触もなかった
温かくも冷たくもなく・・・それが今の距離だと言われている気がした」
なんていうセリフも好きです。やっぱりハッピーエンドって、心えぐるバッドエンドとの対比に納得がいったとき十二分の効果を発揮するよなあ。「桜哉」以降私はバッドエンド信者になってしまったのか…?


少し気になる点はあって、ウェイトをかける演出がやや過剰に感じました。特にエンディング回収しようと思って周回することになるとその度に長い演出を見ることになるので余計にそう感じます。スキップ時はウェイトを飛ばせたり、2回目以降クリックで飛ばせたりすると嬉しいです。
あとはタイトル画面でCG閲覧後にタイトルに戻ってはじめからをクリックするとゲームが進行不能になるのは直してほしい所です。


というわけで今回は「友達以上、成仏未満」のレビューでした。
作者の陽乃まなつさんのプロフィールを見ると本作が初作品という事だったのですが、そうとは思えない充実したプレイ体験を得られる作品だと思いますので、ぜひプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。今回は虹猫さんの「RトR」をレビューしていきたいと思います。

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ジャンル:百合サスペンスノベルゲーム
プレイ時間:3時間
分岐:なし
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2025/4
注意:15禁

先週ノベコレの作品を漁っていて、「グリーンベルの花言葉」という怪作に出会いました。普通のツンデレ百合ものかと思いきやいきなり谷底まで突き落とされ、いや違う、ここは常識の異なる異世界なのでは?となったり宇宙遊泳のようなふわふわ感が漂ったりと、わけわからないジェットコースターに乗せられた気分になる作品でした。
面白かったは面白かったのでコメント書きつつ作者さんの他の作品を見てみると、あの有名な「1人殺すのも2人殺すのも同じことだと思うから」の作者さんであることにようやく気付きました(まだプレイしてはいないのですが)。

そんな流れで本作を見つけてプレイし始めたのですが、やはり一筋縄ではいかない百合を描いた作品で面白かったのでブログでご紹介します。


主人公の桜小町(さくら・こまち)はキリスト教系の女子高に通う高校2年生。家庭の事情があり、学校へは寮から通っています。所属する漫画・アニメ部では、同級生の紅葉楓(もみじ・かえで)、先輩の瑠璃茉莉(るり・まつり)、そして後輩の八雲アリスと楽しく過ごしています。
そんな彼女の悩みは、女の子に異様にモテること。進級して1か月経ち落ち着いた4月30日には親友だと思っていた楓にキスされてしまいます。寮の自室で困っていた時、なんと楓が刺されてしまったという知らせを受けます。失意の中で迎えた翌朝、彼女の身にはさらなる衝撃の事実が明らかになります。今日も4月30日だというのです!

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というわけで本作はループものになっています。時計と鎖に絡めとられたタイトル画面から察した方もいるかもしれません。本ブログでは「スノードームは夢を見るか?」以来およそ2年ぶりです。ループものというと大抵、なぜ(何の力によって)ループするのか、ループを抜け出すにはどうしたらいいのか、といった要素に焦点が当たります。しかし本作においてはポイントとなる要素は少し違っています。まず「何をトリガーとしてループが発生するのか」すら分からないのです。

本ブログでこれまでに扱ったループものは4つありました。「スノードームは夢を見るか?」でも「クロノスの箱庭」でも、「決戦前のヒトリ」でも「黄昏が落ちてくる街に」でも、ループの発生は主人公や重要人物の死によって発生しているのが明らかでした。しかし本作においては、単純に人が死んだら日付が戻るわけではありません。しかも毎回同じ日に戻るわけではなく、何事もなく日付が進んだかと思いきや2日戻ったり、突然4日も戻ったり。まずこの不可解な仕掛けがかなり珍しく、私の心を釘付けにしました。

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そうしてもう一つ、本作における百合という要素も本筋に大きくかかわってくることになります。ところがこれも王道となる要素からずらしているのです。過去にレビューした「PaintPain ~少女はメイドの手をとって~」「泡沫の花が散る」ではどちらの百合も、お互いにそう望んだ結果でした。しかし本作における主人公の小町は女の子に恋愛的な意味での興味はなく、次々と告白してくる友人たちや部活の仲間に困惑しているのです。

さらにはこの女の子に異常に好かれやすいという小町の”体質”は先述した家庭の問題ともつながってきます。直接の原因である母親の入院、そして妹である吹雪との不仲の原因までもこの体質に求めることができます。
初見だとこの吹雪は小町に対してやたら敵対的で嫌なキャラなのですが、読み進めていくうちに彼女の気持ちも分かってくるし守ってあげたくなるんですよね。なんといっても彼女の言っていることは正しいのですから。


ストーリーを読み進めていくと、時折小町以外の人物の視点で語られる部分があります。瑠璃先輩だったり、楓や吹雪だったり、そしてアリスだったり。彼女らの主観が描かれることによって、小町がこのループの世界に閉じ込められたのは必然であったというのが徐々に明らかになっていくのです。ここがまたうまいところで、特殊な体質を持つ小町を中心としてみなが次第に狂気に蝕まれていったことに合点が行きます。小町の主観では被害者でしかないわけですが、全体を見ていくとむしろ発端ともいえる。そんな展開となっています。
これまでも何度か言ってきましたが、こうした明らかな悪人がいるわけではない中で皆が狂っていったために起きた悲劇というのは私の好きな展開でもあります。あえて一番悪いのが誰か、と聞かれたら、私は瑠璃先輩と答えるでしょうか。

それでも私は、小町が好きだし一番応援してあげたくなるんです。なぜなら、私と似ていると感じるからです。

以下、核心に繋がるネタバレがあります。OKな方は展開して読んでください。

ネタバレあり(クリックして展開) 吹雪は小町を評してこう言いました。「お姉ちゃんのいい所は優しい所かもしれない。誰にでも優しくて、温かくて。でもね、私はそれが悪いところだとも思ってる」。そう、小町は間違いなく”いい子”であってむやみに人を傷つけることはしないし、よほどのことがなければ人に否定的な言葉をかけることもありません。そんないい子は高い確率で”優しい嘘”という病に侵されているんですね。

本作におけるループのトリガーとなるのは、小町が嘘をつくこと。終盤でそれが明らかになった時、私は文字通り震えました。こんな怖いことがあるかと。
小町がつく嘘はどれも悪意に基づくものではありません。誰かを守ろうとしたり、事態をややこしくしないためであったり。人が良好な社会生活を送るためには、こうした適切な使い方での嘘は必須でしょう。
謎が解けてから改めて前半部分をプレイし直すと、小町が嘘をついた場面がプレイヤーにもしっかりと提示されていたことが分かります。私でもそこは嘘でごまかすだろうというシーンばかりなので本当につらい。

小町は結局このループの謎を解くことができず、4月の間の日付をうろうろしながらただ心を弱らせていくばかりです。弱った心を守るためにも嘘で武装しなくてはならなくなったのでしょう。
バッドエンドのループものは何気に初めて見たかもしれません。あのシュタインズゲートでさえハッピーエンドがあるのに! いや、これはタイトル画面の生気を失った小町のイラストから察するべきだったかもしれません。他の作品を含めて、全く油断ならない作者さんです。



ループ、そして百合。どちらも題材としてはよくあるものでありながら、王道とは少し離れたところを狙っている本作。斬新すぎない程度に目新しさのある良作ですのでぜひプレイしてみてください。
一筋縄ではいかない物語ですので、くれぐれもご用心の上お楽しみください。

それでは。

こんにちは。今回はナナメさんの「ドキドキかかとフレンズ」です。

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ジャンル:不条理系ラブコメ(?)
プレイ時間:エンディングまで3分、フルコンプまで1時間半程度
分岐:攻略対象5人(?)、エンディング33種
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2025/11


その昔、Flashゲームが流行っていたころ。私的似非ベジタリアンというサイトのゲームが一部界隈の間で話題となっていました。一切脈絡のない意味不明な展開と謎の造語やキャラクター(?)。読者を完全に置き去りにするあのクレイジーさは私の脳裏にもはっきりと焼き付いています。
その代表格が「おいしいコロッケをつくろう!」だったわけですが、Flashのサポート終了後プレイできない状態になっていました(Ruffleとかで頑張ればできた気はしますが)。ところが先月、突然ティラノスクリプト版が発表されるとノベコレにも投稿されていて、大変驚きました。しかもあれから2か月の間にさらに3本の新作が発表されているではありませんか!
本作「ドキドキかかとフレンズ」はそんな新作の1番手。おそらくナナメさんの15年以上ぶりの新作ゲームになるのではないでしょうか。
というわけでナンセンス系の展開に面白みを感じないという方には本作はお勧めできません。逆にあらゆる理不尽な運命を受け入れて心の中でツッコんだり笑い飛ばせる方なら神ゲーとなり得るでしょう。
ちなみに私は旧作Flashの中では「なぜなにどうぶつらんど」とか「大日本昔話」がかなり好きだったりします。YouTubeで動画として公開されているので興味のある方はぜひ見てみてください。
大きな一寸法師が流れてきました。プリンターからみそしるがー


さて、本作のあらすじですが、私の手に余るので公式の紹介文を引用しておきましょう。
少子高齢化で一夜にして
人口が1億人から3人になった
日本でオレのハチャメチャな学園生活が始まる

多様性・学園・恋愛シミュレーションゲーム
ということです。とりあえずギャルゲーであることは分かりました。
それだけ頭に入れて「はじめから」をクリックしていきますと、設定は頭おかしいものの真っ当に学園ラブコメが始まって驚きました(プレイ済みの方の中には、これのどこが真っ当なんだとお思いの方もいるでしょうが、あの本当に意味不明だったFlash作品群と比べたら話の筋が存在している分まともなんです!)。

しかも今回はOPムービー付き! ギャルゲーにありがちなヒロインの紹介とかを含むムービーが流れていくのですが
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はい、来ました! こちらが今回のメインヒロイン、デスかかとちゃんです!
。。。???なんですかこれは?

まあ、これまでに攻略対象がクリーチャーだったり幾何学図形だったりする作品のレビューを書いてきたし、ブログでは扱っていないけれども眼球相手に恋愛したこともあるしこの程度想定範囲だぜ!

しかしナナメさんはこんなもんでは許してくれません。デスかかとと全く同じ見た目の「ひじ」「ひざ」の2人、さらに「くつした」「アメリカ合衆国」の5人とヒロイン多数の賑やかなギャルゲーが始まるのです!
体の部位のようにレイヤーがそろっているならともかく、衣類とか国家が攻略対象として並列されているセンスは並の作者さんには出せないでしょう。


そんなヒロインごとの分岐ルートや即死バッドエンド系、特殊な展開があるルートなど合わせて全33個ものエンディングがあります。ゲーム起動してタイトル画面のエンディングリストを見た時はその個数に圧倒されました。エンディングタイトルだけ見ても一切展開が予測できない、対ネタバレ最強性能を誇る本作なのでエンディングフルオープンした私のスクリーンショットを載せちゃいます。
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圧巻の24エンディング、しかも次のページにも9つあります。
これを回収するのは見た目の印象より苦労すると思います。コメディでのバッドエンドは一発分岐が基本ですが、本作では特定のフラグを立てておかないと進行しないルートが複数存在しているのです。
私が最後まで回収に迷ったルートでは、アメリカ合衆国が分岐の鍵を握っていました。

さらに上のスクリーンショットをよく見ると24あるサムネイルのうち3つだけにヒロイン立ち絵がついていることに気づくでしょう。そう、本作にはハッピーエンドが存在しているのです!
いくらコロッケを作ろうと頑張っても、メンチができたりカレー談義をしたりしかできなかったあの頃と違い、ヒロインと結ばれることができるというのがかなり衝撃的でした。

とこのように、ギャルゲーとしての形を保っているという意味で真っ当であるというのが先述した真っ当という評価の意図です。
しかしナナメさんらしいぶっ飛び具合の分量も決して減っていません。むしろ尺と分岐が増えた分「コロッケ」よりもトンチキな展開はボリュームを増しています。トンデモ展開8割+ギャルゲーとしてのフォーマット2割(謎にしっかりしている分岐フラグ含む)という形で本作はできているといっていいでしょう。
トンデモ展開についてはここで説明できるものではないし直接ご覧いただくのが一番かと思いますが、例はいくつか挙げておきましょう。ノーベル賞を1000個獲ったり地球の中心にテレポートしたりアラスカを食べたり人権を失ったりヒント機能の代償に片腕を失ったり池の水を飲み干したり……もう十分でしょうか?


というわけで本作のレビューは以上になります。正直令和の時代になってナナメさんの新作を楽しむことができるとは大変びっくりです。こうしてブログに記事も書いてしまいました。
エンディング回収度の確認やセーブ可能などFlashに比べてプレイしやすさも向上していますので、ぜひこの「何も分からなさ」を気軽に体感してみてください。
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それでは。

こんにちは。今回はしろ∽うささんの「ねじまきマキナ」のレビューをお送りします。

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ジャンル:ファンタジーノベルゲーム
プレイ時間:エンディングまで1時間程度。フルコンプまで2~3時間
分岐:ED3種
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2023/8


本作は3部作の完結編として銘打たれている作品となります。同作者の「飛びたいの」「私を人間にしてください」のキャラクターが登場するので、先にこれらの作品をプレイしておくと本作のプレイ中ににやりとできる箇所があるでしょう。どちらもエンディング回収1時間以内の短編です。
本作単体でもストーリーは問題なく楽しめますので、時間がない方やグロテスクなシーンは苦手な方(「私を人間にしてください」はR15相当の描写があります)は本作からプレイしてみるのがいいでしょう。本作単体は全年齢対象となっています。


そんな完結編である本作は、過去作のキャラクターとは全く関係のないシーンから始まります。間抜け面ともいえるような”ポンコツロボ”の様子を喜劇調に描きます。感情(らしきもの)を持つロボットのマキナは、現代の視点から見ると高性能ロボといえそうです。しかし人間のように汎用的な仕事・物理的な仕事をさせようとするとまだまだのようです。マキナを作った科学者がその無能ぶりに頭を抱えるところでこのシーンは終わります。

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一旦タイトル画面に戻ると、今度は大けがを負って地上に墜ちていた天使とそれを拾った人間の話になります。その哀れな姿を見て放っておけない人間ですが、天使には何かやり残した大切な用事がある様子。その目的は果たされるのでしょうか…。

こんな感じで1シーン3~5分くらいの短い話が、毎回登場人物が切り替わりながら進んでいくのです。舞台となるのは3つの世界。最初に登場した、ロボット工学の技術は進んでいるが同時にその技術は軍事転用もされ、悲惨な戦争が延々と続くディストピア世界。次に登場する、人間界に墜ちてきた満身創痍の天使と善意の人間が交流するファンタジー世界。もう一つは、一緒に天界に行った天使と少年の、「飛びたいの」に登場した世界です。

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最初のうちはこれらの話の関連性が見えてこず、単体の話としては面白いんだけれどどういう意図なのだろうと疑問でした。しかし中盤以降これらの世界のかかわりが見えてくると、一気に視界が開けてくる快感があります。

あまり詳しくしゃべってしまってもネタバレで興がそがれると思いますので、1つだけ。
3つの世界を横断して最も重要な存在となるのは、タイトルにもあるマキナです。家事・看護用ロボットとして博士の手で生み出された彼女。人間に近い見た目を持ちながら、機能や動力、寿命も大きく異なるロボット。作内でしきりに引用されるアシモフのロボット工学三原則に縛られる存在であり、クラウドコンピューティングの普及によって見た目の個体と論理的な個体が一致しなくなった存在。これらの設定が融合してあの結末にたどり着くのがうまいですね。

マキナに使われている技術が普及するほど科学の発展した世界で、それが軍事に転用されたうえで世界大戦なんて起こってしまった日には、人類の滅亡まで一直線かもしれません。そんな滅亡世界と死を前にして人間は何を望むのか。輪廻転生があったとしたら死者の魂はどう裁かれてどう生まれ変わるのか(この辺りの設定は「私を人間にしてください」プレイ済みだと分かりやすいと思います)。天使は天界でどのような仕事をしているのか。こういったSF要素とファンタジー要素がミックスされ、本作はかなり壮大なテーマに挑んでいるといっていいでしょう。


さて、物語のテーマから離れて演出方面の話をしましょう。
上の説明からも読み取れるかと思いますが、本作は結構重めの問題提起をはらんでいます。しかし全体の雰囲気としては深刻な感じは薄めで楽しく読める調整となっています。これはまずボイスの貢献があるでしょう。フルボイスではなく文章の冒頭や間投詞などが音声付きになる程度ですが、マキナの能天気な声色は、各シーンのコメディ的要素を引き出して場の雰囲気を明るくしてくれます。天使たちの困った声、博士の冷静な声などメリハリが効いて読みやすさの向上にもつながっているように思います。音声は短めなのでプレイヤーの読む速度に縛られないという意味で、これはむしろフルボイスでないからこそかもしれませんね。

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また、タイトルに含まれる通り、本作にはネジをモチーフにした部分が多数見受けられます。タイトル画面にあるロゴもそうですし、文章送り待ちで表示されるアイコンなど細かい部分もあります。物語中盤で、単にロボットに関係した話であるという以外の意味が語られ、なるほどと思いました。
キャラクターの立ち絵についてはやや独特な画風と感じますが、戦争の絶えない人間世界でもファンタジー世界でも、異種族交流をしている感が出ていて良いですね。人によっては一部イラストがグロテスクと感じられそうなので注意が必要かもしれません(先述した通り年齢制限がかかるほどではありません)。

逆に気になる点としてはフラグ管理が甘そうな点が挙げられるでしょう。一つのシーンを読み終わると次のシーンが解放されるという仕組みですが、その解放状況がロードされないのかゲーム起動直後は必ず初期状態になってしまいます。先の章のセーブデータを読み込めば一気にそこまで進むことはできるのですが不便です。また、過去の章をプレイし直した際も次の章にまたNEWマークが出てしまう場合があるので若干の違和感があります。新規に読めるようになったシーンに印をつけておくというのは親切な仕組みだと思うのですがあと一歩という印象。


本作のエンディングは3種類。終盤の選択肢とアクションシーンの結果でEND1とEND2に分岐します。
END3はフラグが特殊なので回収に苦労しました。END1と2の結末を受けての大団円といった内容ですが、私が好きなのはEND2でした。主人公たる人物が報われてる感じがするんですよね。マキナにとっても私の倫理観ではこちらの方が幸せそうに感じます。逆にEND1は無力感に襲われるというか振出しに戻るというか、そんな感じがしてしまいます。

このエンディング分岐は少し変わっていて、END1とEND2に至るルートが複数あるのです。1つの選択肢だけでなく、この方法を試してみたけどやっぱダメだったとか、逆に負けそうなときにそんな手があるのか!みたいなルートもあったりして、それぞれでエンディングに至る過程が少し違うため、エンディングの読み味も辿ったルートによって少し変わってくるかもしれません。


というわけで今回は「ねじまきマキナ」のレビューでした。
バラバラな点から始まったそれぞれの物語が交差し、1本の筋になっていく様子はそれこそねじ止めすることで組み立て作業が完了し製品として完成するような気持ちよさです。あなたは最後の最後、どのような形で物語を組み上げるでしょうか。ぜひご自分の目で確かめていただきたいなと思います。

それでは。

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