フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
初めての方は、ぜひごあいさつをご覧ください。評価の基準については、レビューについてに記してあります。
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RPG

こんにちは。今回は、かなり古めの懐かしいともいえる作品、太郎2さんの「Knight Night」について書いていこうと思います。

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ジャンル:コメディ系RPG
プレイ時間:一直線でエンディングまで5時間半
分岐:基本一本道
ツール:RPGツクール
リリース:2008/1


本作はかなり有名な部類だと思うのですが、これまでプレイしたことがありませんでした。今週プレイしてみて、やはり面白かったなあと思うのでご紹介します。

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主人公のアドニス(名前変更可)は”ちゃっちい王城”に仕える騎士団長。ある日王様に呼び出され命じられたのは魔王の討伐。超王道なファンタジーRPGのオープニングではありますが本作の雰囲気は一味違います。王様からの伝令で、自らの部下でもある騎士に対して「どちら様ですか」扱い。さらにはアドニスはちゃっちい王城の隣に立てたテントで生活していると言います。すでにツッコミどころ多数。このゲームでは2択の選択肢が大量に出てきますが、どちらを選んでも直後の会話が変わるだけでストーリーの流れは変わりません。それなら俺はせっかくだからカオスな方の選択肢を選ぶぜ! というマインドをお持ちの方なら本作を存分に楽しめるでしょう。

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王様バーンズ。RPGの導入でお馴染みの命令

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これすらも断れます。まあ断っても無理やり"神下ろしの儀"に進まされるのですが…


ちなみにこの神下ろしの儀、めちゃくちゃ危険でアドニスが死んでしまう可能性もあるようですが、本人や王子ゲイル、姫ミカの反対も構わずに儀式を決行してしまいます。その結果アドニスに宿ったのは神の力などではなく…やたらうるさくて自信過剰な別の世界の魔王キーファでした。
こうしたドタバタ劇の中、アドニスは魔王討伐の旅へ出ることを余儀なくされるのでした。



アドニス自発的にしゃべることは全くない(RPG主人公にありがち)のですが、道中では常にキーファが御託を並べまくっているので大変賑やか。プレイヤーに多くのツッコミどころを提供してくれます。

道中で仲間になるメンバーも曲者ぞろい。成り行きでアドニスに助けられた薬売りの娘リュカは、恩を返せていないといって半分無理やりアドニスの旅についていきます。山越えの最中で出会った魔女ナナリーはただ女装してるだけの男(でも魔女を名乗ってる)。寂しいとか言って魔王討伐の旅に同行してきます。最後に仲間になるのは賢者ケイト。アドニスが出会う前から重度の変態であることが明かされています。

こんな濃~いメンバーを抱えて進行していくストーリーですが、終盤に近付くにつれ壮大な設定が見えてきます。
本作のストーリーは主にケイトを仲間にするまで(ここでは1部と呼ぶことにしましょう)、北西諸島をクリアして魔王城を攻略するまで(2部)、エンディングまで(3部)の3つにおおよそ分けることができるでしょう。

1部では先ほど見たようなツッコミどころの嵐。賢者に会うまでに散々寄り道しなくてはならなかったり、途中で立ち寄る村がとんでもない所だったり、別の勇者一行に出会って罵り合ったり。これらのイベントを楽しみながら進めていくことになるでしょう。回復やセーブのために各ダンジョンに先回りしてくれているゲイルやミカが好きで、あの音楽ですでに笑えて来ちゃいます。バーンズはいらない(笑)
2部に入ると物語が少し不穏な雰囲気を帯びてきます。キーファが封印されてしまったり、リュカが呪われてしまったり…。しかし全体的な雰囲気はまだまだコメディ色が強いです。私は、敵の足音だ!と警戒していたらアドニス一行をスルーして走り去ってしまうやつが好きでした。
物語の終盤、私が3部と呼ぶことにした辺りまでくると、この世界に隠された壮大な設定が明らかになってきます。序盤からたびたび登場していたけれど意味深な事しか言わずにきたあの人の正体や目的も明らかに。まさかこんなふざけたイベントばかりのRPGでがっつり設定や世界観が練られているとは思いませんでした。


さて、RPGとしての戦闘部分を見ていきましょう。本作の難易度は易しめに分類されるでしょう。
ザコ戦は物理で殴っているだけでも大体何とかなりますし、敵HPは低めなのでMP消費を辞さなければ1ターンで倒し切ることも可能でしょう。入手経験値やゴールドも高めに設定されているため、新しい村に着いて強い武具が解禁されるたびに最強装備に買い替えることもできます。そこまでのお金が足りない場合は武器を優先することをお勧めします。

ただ最序盤のアドニス一人で冒険しているころは割と死にがちでした。序盤のステータスでは魔法攻撃にめっぽう弱く、回復手段も乏しいため2回くらい食らうと普通に死にます。慎重を期す場合、逃走コマンドなども使っていきましょう。
リュカが仲間になって以降はかなり安定します。どんどん新しい武器を買って先へ進んでいきましょう。

ちなみに敵モンスターの名前やアイテム、技の名称もふざけまくってます。
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↑なぜジブリキャラなのか。

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↑敵というか食材として見てる?

ボス戦においても難易度は高くないでしょう。ステータス変動魔法が永続効果を持つため、最初に数回使っておくだけでかなり楽になります。一部状態異常が厄介な場合があるので、回復アイテムを数個持ち歩いていると安心でしょう。MP回復アイテムもあれば万全です。

ラスボス戦においてはこれまで出会った仲間(?)たちの協力もあったりして熱い展開です。散々ふざけたストーリーを展開してきた本作ですが、こうした王道の感動シーンもしっかり用意してくれています。

ちなみに本作はクリア後のおまけ部屋がかなり豪華です。
一枚絵、BGM鑑賞モードのほか、各キャラクターについての裏話だったり登場する村の設定の話などが盛りだくさん。ここで私は初めて気づいたのですが、メインシナリオに関わらないサブクエストも多数あったようです。そのほとんどは2部の間の時限イベントということで、私はほとんどスルーしていたようでした。気付かなかった…


というわけで今回は「Knight Night」でした。
古い作品ゆえに解像度が粗かったり、親切なシステムはなかったりしますが、それもあまり気にならない大作ですのでぜひプレイしてみてください。

こんにちは。今回はTeam囲碁RPGさんの「囲碁RPG」のご紹介です。

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★favo
ジャンル:オーソドックスなターン制RPG+詰碁問題集
プレイ時間:ラスボス撃破までで10時間程度
分岐:なし
ツール:RPGツクール
リリース:2023/7(ふりーむへのDL版掲載日)
注意:囲碁の棋力が10級以上の方推奨


本作「囲碁RPG」はタイトルから分かる通り、囲碁がテーマとなっているRPGです。単にシナリオに囲碁が使われているというだけでなく、詰碁(部分的な石の死活を問う問題。詰将棋に対応するもの)を解いて進むギミックも多数用意されているなどかなり凝っています。
このギミックのため囲碁未経験者ではクリアはほぼ不可能でしょう。公式の説明欄にもありますが、10級程度の棋力は最低限欲しいところです。私の棋力は碁会所で三段程度、ネット碁では囲碁クエスト(Android版/iOS版)で四段、野狐囲碁で二段程度です。有段者なら本作の囲碁に関するギミックで困ることはないでしょう。
囲碁に関するギミックで詰まってしまう場合、「囲碁RPG 入門編」があるのでそちらのプレイをお勧めします。



本作の世界観では、囲碁の技術である”棋術”(聞いたことがないので本作の造語でしょう)がそのまま(物理的な)戦闘の技術になっています。碁の強い者が通常のRPGの意味でも強いのです。戦闘では打撃(通常物理攻撃)のほかに棋術(魔法攻撃に相当)を使って敵を打ち倒していきます。
そんな本作は主人公の星宙かやが囲碁の養成所を卒業するシーンで始まります。卒業試験をパスしたかやは養成所からのプレゼントとして最新の棋術を教わるため、棋術習得用カプセルに入ります。ところがその棋術習得の最中に”幻庵”と名乗る人物が乱入。養成所は荒らされ、同級生の安否も分からない中かやは何とか魔法陣を起動してワープし見知らぬ村、”アキスミ村”で目を覚まします。どうやら”秘密結社INOUE”が何かを企んで悪さをしている模様。かやは同級生を助けるため、秘密結社INOUEに挑むべく旅を始めるのだった…


本作のオープニングはこんな感じなのですが、これまでですでに囲碁にまつわるネタが3つも含まれています。
まず、幻庵というのは戦国時代の武将、北条幻庵のことのようです。今回調べて知ったのですが、幻庵は囲碁にまつわる逸話のある武将ということです。そしてアキスミ村。アキスミというのは文字通り空いている、つまりまだ石が全く置かれていない(碁盤の)隅のことで、たいていの場合初手で着手される地点になります。すなわち”はじまりの村”みたいな意味合いですね。
そして秘密結社INOUEというのは囲碁の家元四家のうちの一つ、井上家のことでしょう。江戸時代、徳川将軍の前で行われた対局、御城碁で争った四家が家元四家で、本因坊家、井上家、安井家、林家の4つです。本因坊だけが実力制となって現代のタイトル戦に名を残していますね。

安井算知

このように、本作内において非常に濃い密度で囲碁に関する分かると面白いネタがちりばめられています。しかもネタの分野が広いです。
例えば主人公かやの仲間になる最初の人物は”秀策”ですが、これは本因坊秀策のことです。ヒカルの碁にも出てきたのでご存じの方も多いかもしれませんね。続いて仲間になるのは”算知”ですが、これは同じく江戸時代の棋士である安井算知のこと。天地明察に登場したことで知っている方もいるかもしれません。
4人パーティーの最後の一人は”リーラ”と名乗ります。これはフリーのコンピュータ囲碁ソフトLeelaのことでしょう。さっきまで江戸時代の話だったのに急に現代のAIの話が出てきてちょっとびっくりしましたが、これも囲碁が分かる人ならではのネタでしょう。

IGORPG2
他にも、敵のキャラクターは全て囲碁用語だったり、囲碁周辺の元ネタがあったりします。
例えばこちらの”アキサンカク”ですが、これは漢字で書けば”空き三角”。自分の石が三角形の形につながった状態のことで、働きの乏しい愚形の代表例です。

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こちらの”モクサン”は目算。自分と相手の陣地の数を脳内で数えることです。これが正確にできるのは高段者でしょう(私はできません)。

その他、装備品名や村人のセリフなどにも大量の囲碁用語が登場。分かる方にはとても納得できる使われ方だと思います。
鉄柱、亀の甲羅、一間高などの囲碁用語のついた装備品。玄玄碁経、官子譜、發陽論などの古典的書物。秀策、算知をはじめ赤星因徹や本因坊丈和などの江戸時代の棋士である登場人物。ノギツネ城(野狐囲碁という中国のネット対局サイト)、絶芸(野狐で対局しているAI)、AyaXbot(囲碁クエストというアプリ内で常駐しているAI)など、現代の囲碁界に関するものまで本当に幅広いです。
ラスボス戦が対AIになるの熱い展開で良いですね。

IGORPG5
(ところで「魔王のメガネ」の魔王って井山裕太さんのことですよね?)

それに加え、先に書いたように本作では詰碁を解いて進んでいくギミックが数多く含まれています。
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上のスクリーンショットのように、いごまるという小さな生き物(タイトル画面の左側にいるやつ)が道をふさいでいる場面にたびたび出合います。近くには詰碁の問題があるので、これに正解すると道を開けてもらえたり、アイテムやお金がもらえたりギミックが進行したりするのです。
ゲームの進行上必須でない隠し要素については詰碁の問題が難しかったりします(とはいえ最難関でも上級程度です。有段レベルの問題はないと思います)

さらにこれらの詰碁を解くと、アイテムの「いごまる詰碁帳」に解いた問題が登録され、何度でも復習可能になります。全部で140問以上あり、解くたびにお金が少しもらえます。たまに「星屑の欠片」という錬金素材アイテムももらえるので積極的に解いていきましょう。(星もれっきとした囲碁用語です)
少し易しめの問題を一目で解けるようになるまで習熟度を上げるというのは囲碁の上達にもかなり役立つ勉強の仕方になると思います。その意味でも詰碁帳を周回するのはおすすめです。


さて、囲碁から離れて本作のRPGとしての部分を見ていきましょう。
戦闘は非常にオーソドックスなターン制でコマンド選択式。癖がなくてなじみやすいシステムと言えるでしょう。毎回戦闘終了後にMPが一定量回復するのでMP節約にあまり気を回さなくて済むのが助かります。

戦闘のバランスとしては、状態異常が強めでしょう。パラメータ的には余裕でも状態異常を食らうだけで一気にピンチになったりするので、装備で対策したり回復アイテムを買い込んだりしておくとよいでしょう。(状態異常の名前が囲碁用語になっていて少しわかりにくいので注意です。”味悪”は毒、”長考”・”駄目詰”は麻痺、”頓死”は即死のことです。その他は囲碁を知らない人でも名前からイメージできる効果だと思います)
状態異常以外においても装備の重要性は高いので、新しいダンジョンに挑む際はぜひいい装備を入手してからにしてください。

本作には錬金システムがあり、詰碁を解くと時々もらえる「星屑の欠片」を使って固有武器を強化したり、その他の装備品を作ったりすることができます。固有武器をMAXまで強化するのはかなり手間がかかりますが、強力なことは間違いありません。私はリーラの銃を真っ先に強化して攻撃力の上がる装飾を持たせ、リーラをアタッカーとして運用しました。2回攻撃はやはり強い。

いったことがある街へのワープができるシステムがないので移動がやや面倒ですが、ダンジョンは一度クリアすれば出口まで即移動できるのでそこまで大変ではないでしょう。

なかなか珍しいと思ったシステムは、「IG→経験値変換」です。IG(イゴールド)というのは本作の通貨単位です。つまり余ったお金を経験値に変換できるのです。
通常のザコ敵で経験値を稼いでレベルアップしていくのも良いのですが、本作はザコ戦で得られるIGが少ないのでこの方法ではお金不足になりやすいです。そこで「いごまる詰碁帳」を解くことで大量のIGと星屑の欠片を稼ぎ、余ったIGを経験値に変換するという方法の方が効率がよさそうです。


というわけで今回は「囲碁RPG」でした。
10級の方だとクリアに結構苦労しそうですが、5級~1級くらいの上級者の方は特に詰碁の復習もできて楽しい作品なんじゃないでしょうか。囲碁の歴史についてもちょっとだけ学べます。
囲碁やったことないよという方は入門編のほうをぜひ。

それでは。

こんにちは。今回はアザラシの寝言さんの「その後の世界」のレビューをお送りします。

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ジャンル:ファンタジーRPG
プレイ時間:4~5時間程度
分岐:なし
ツール:RPGツクール
リリース:2020/6
(9/16追記:本作のスマートフォンアプリ版が公開されました。Android版/iOS版)

本作「その後の世界」は、記憶をなくして地面に倒れていた主人公(名前任意)とどうやら同じ境遇らしい少女リトが、自分たちが何者なのか、この世界は何なのかを求めて冒険していくファンタジーRPGとなっています。


まずはシステムについて説明していきましょう。
主人公とリトは一緒に冒険し、敵モンスターと戦闘していくことになるのですが、プレイヤーが操作できるのは主人公だけになります。リトはランダムで敵に攻撃行動をしてくれます。そして敵からの攻撃も受けることもないため、パーティーメンバーというより支援キャラという方が近いかもしれません。
ただしリトについても装備は自由につけ外しすることができます。物理攻撃特化もよし、魔法攻撃特化もよしです。攻撃を受けないため防御系は無意味なことに気を付けましょう。私のお勧めはMPを気にする必要がないためリトを魔法攻撃担当に、主人公を物理攻撃担当にすることです。


マップ上では常に右上に縮小マップが表示されていて、探索の手助けになります。見たことのある範囲は明るく、まだ見たことのない範囲は暗く表示されるうえ、回復ポイントやマップ移動ポイント、話しかけられる対象なども示されるのでかなり探索がしやすくなります。マップは総じて広い(特にアダチ平原などは非常に広大)なため、Shiftダッシュと並んでこの機能には大変お世話になります。


もう一つ本作の特徴的なシステムとして、クエストが挙げられます。QUESTマークがついた対象に話しかけると、ちょっとした依頼を受けることができます。特定のボスの討伐だったり、アイテムの収集だったりと様々ですが、どれも達成すると強めの報酬がもらえます。依頼は同時にいくつでも受けられますし、時間制限などもないので見つけたらとりあえず話を聞いて受けちゃいましょう。
全体攻撃魔法だったり強力な装備だったりと、実質クリアに必須級の報酬も多いうえ、最大HPやMPが少しアップするという効果もあるのでどしどし解決していきましょう。
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時々このクエスト系の要素がだるい作品もありますが、本作では報酬が豪華・クエスト中に世界観への理解につながるイベントがあるなどのため、やらされている感がなく最後まで楽しめました。
経験値稼ぎにもちょうどいいです。クエストを受けるおおよその場所が開示されているのも親切ですね。


戦闘バランス的な面でいうと、本作は回復が自由にできないため細かなセーブなどが要求されてくるタイプだと思います。回復は焚き火の地点でしかできませんが、セーブはマップ上どこでも可能なのでこまめにやりましょう。ショップで回復アイテムを買いためておくのも重要です。
また、魔法は全6種類覚えられますが、強力な魔法などはなく全て属性・攻撃範囲違いのものなので、戦闘中の行動戦略よりは装備・ステータスの方が重要になってきます。武器・指輪・お札の相性をしっかり考えて装備していくとよいです。その分戦闘自体は単調かなあという印象を受けました。
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さて、本作のシナリオですが、ボスを倒していくのはもちろん、様々なところに散らばっている"記憶石の欠片"を拾うことで進んでいったりもします。この世界に生きた誰かの記憶をのぞき見することで、過去に何があったのか、魔王の正体は何だったのかなどについて知っていくことができます。
この作りが上手くて、記憶石を集めるために探索したりボスに挑んでいくモチベーションにもなりました。上述した戦闘システムになっている理由付けもシナリオの中にきっちりあって納得感もあります。
ただ記憶を1回見ると石が飛び散ってしまうため再度見ることができないのは何とかならないかなと思いました。続けてみるなら覚えているかもしれませんが、本作ではマップ探索中に断片的な情報が手に入るというシステムなので全部覚えておくのは不可能に近いんじゃないかなと思います。記憶回想モードが切実に欲しいところです。

このシナリオの内容はほのぼのとした全体の雰囲気に比してショッキングというか、暗めの内容になっています。世界が壊れてしまったいきさつなどもなかなか悲しいですが、後味悪い系の展開ではないのでそこはご安心ください。ラスボス倒した後の最後のシーンもこれまでの要素を活かした上手い作りになっていて感動的になっていると思います。



そんな本作には続編がありまして、「かえりみち~続・その後の世界」というタイトルになっています。基本システムは本作と同じですが、主人公たちがケモノ少女になっています。前作の主人公たちも登場し、舞台となる場所も重複していますが一体その後何があったのか、またしても記憶の無い主人公たちが帰るべき場所を見つけられるのかに注目です。メッセージウィンドウが追加されるなどの進化も見られますよ。
ちなみに、前作の知識がないと話が分からないと思うので、おとなしく順番にプレイしてください。プレイ時間は5時間前後、2作合わせて10時間といったところでしょう。
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というわけで「その後の世界」のご紹介でした。
自作の音楽によるBGMも魅力的で、細やかな配慮が嬉しい作品です。ぜひプレイしてみてください。

こんにちは。今回は五目さんの「たまごがえり」のレビューをお送りします。

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ジャンル:ほのぼの系SRPG
プレイ時間:第1部で4時間弱、総計10時間くらい
分岐:なし
ツール:SRPG Studio
リリース:2019/2~(記事執筆時点で最終更新は2023/2)



今回紹介する「たまごがえり」はかなり多くの要素がある作りこまれたシミュレーションRPGとなっています。
まず本作のシナリオについてですが、「ハンプティ編」と「たまごがえり編」の2本から構成されています。どちらからでも開始できますが、チュートリアルが丁寧で物語も完結しているハンプティ編から始めることをお勧めします。


ハンプティ編は計13章からなる完結した物語で、自分に自信がなかった主人公のハンプティが”勇気のたまご”を手に入れるために冒険しながら成長していくというストーリーになっています。

作品タイトルにもなっている「たまごがえり」とは、この地域に伝わるお祭りの名前です。地域の子供たちが”愛のたまご”や"知恵のたまご"などの感情のもとになるたまごを集めて大人になっていく、という通過儀礼のような意味があるそうです。

しかしお祭りのために用意されていた”勇気のたまご”が山賊に盗まれてしまいます。村長である父親に「お前には勇気が足りない」と言われているのを気にしていたハンプティは、メイドのリーベの助言もあって山賊に奪われた勇気のたまごを取り戻す旅に出るのでした。
子供のころの出来事から自分は臆病者だと思い込んでいて、父親から村長を継ぐのに必要な決断力も持ち合わせていなかったハンプティがリーベの助言を受けながら成長し、自らの意思で村を守り無法者には制裁を行うと判断していくのは気持ちいいところですね。

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「たまごがえり編」では、ハンプティ編では概要しか触れられなかったお祭り、”たまごがえり”について、参加する子供たちの立場で物語を進めていくことになります。主人公のリナは両親にたまごがえりに行ってくるように言われ、友達のパピー・ルーシーとともに武器を持って冒険に出かけます。
アルジャンテ先生のいう通り、しっかりとたまごを集めていく良い子たちだった彼女らですが、次第にお祭りそのものの意義について疑問を持つようになります。通過儀礼のためのもの、というふんわりした理解だけで進むには危険が多すぎる旅だったのです。なにやら知っている風の怪しげな少女ソウラスの謎の忠告も手伝い、リナはアルジャンテ先生にたまごがえりの真の目的を尋ねます。帰ってきた答えは大変にショッキングなものでした…

以降、物語はリナだけのものからソウラスやその母親、たまごがえりに関する宗教などかなり大きな内容となってきますが、このシナリオは現在更新中となっていてまだ完結していません。今年2月の最新版では21章までプレイできます。リナとソウラスが再会する感動的な部分ですが、この先が気になりますね。全てのたまごが揃ったので物語は最終盤なのは確かですが、あとはアルジャンテ先生との関係がどうなるのか、更新を待ちたいところです。


戦闘部分を見ていきましょう。
基本的なシステムは一般的なSRPGと一緒で、ユニットに武器を装備させてマップ上で敵ユニットと戦っていきます。敵ユニットに接近し、武器固有の間合いまで詰めたら攻撃できます。本作は遠距離攻撃が少ないのが特徴的ですね。物理武器はほぼ射程1、投てき可能だったり弓矢だと射程1~2になります。魔法武器もほぼ全て射程1~2で、極まれにそれ以上の遠距離攻撃が可能な魔法があります。
射程が短い攻撃ばかりだとマップ上の移動に時間がかかってじれったいことがありますが、本作では移動力が高めの設定なのでそこは気にならないでしょう。

この基本的な要素以外にも本作はかなり多くの要素が詰め込まれています。
例えば武器の相性。剣・斧・槍はいわゆる3すくみとなっており、弱点を突くと攻撃力や命中率にボーナスが乗ります。ボーナス値は小さめなので、特に序盤で気にするべき要素でしょう。

武器の種類はかなり豊富です。剣だけとっても最弱のショートソードから鋼の剣、金の剣のような特殊効果を持たないものだけで数種類。特定の属性の相手に特効があったり、2回攻撃だったり投てき可能だったりと軽く10を超える種類があります。レベルアップによるステータス上昇より武器の能力値の方が大きいバランスとなっているため、強い武器を手に入れたら忘れずに装備しておきましょう。
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戦闘アニメーションもきちんと武器ごとに変わるなど、相当手が込んでいると感じられます。

各ユニットは5つまでしかアイテムを所持できません。あふれたものはストックに送ることになります。SRPGでは割と一般的な所持数かと思いますが、本作では武器の耐久力の概念があるため所持枠のやりくりにやや苦労しました。

また、マップ上で隣り合うユニットとアイテムを交換できるシステムはなかなか面白いでしょう。
宝箱から出てきたけど装備できない武器を、それを使える人に渡すなどの行動が可能になります。


本作の難しいところの1つに、面をクリアしたら自動的に次の章に進んでしまうため、既にクリアしたステージで経験値稼ぎをすることができない点があります。なるべく効率的に経験値を取得できるように敵を残さず倒しながら進めていくと、後々が楽になります。
勝利条件や敗北条件が特殊なステージもあるので、その辺も確認しながら進めていきましょう。


マップ上の各地点で特殊効果がある場合があるのも面白いですね。チュートリアルで触れられていなかったので気付くのに時間がかかりましたが、例えば森林地帯では回避率に20ポイント、高山では30ポイントの補正がかかります。むやみに進軍せず敵より有利なポジションで戦闘するなどの戦略が選択肢に入ります。

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戦闘バランスにおいて一つ不満があるのはクリティカルヒットの仕様です。何と本作のクリティカルは通常の3倍ダメージと非常に強力。自分が出す分にはいいのですが、敵から食らう時も容赦なく3倍ダメージになるため、運悪くクリティカルを食らって主要ユニットが1撃KOなんてことが多発します。1.5~2倍くらいが適正じゃないですかね。
武器によってクリティカル率にも補正があるのは差別化のために良い要素だと思います。



というわけで、本ブログでは初のSRPGレビューとなりました。
是非プレイして、細かいグラフィックや戦闘アニメーションまでの作り込みようを感じてください。そしてたまごがえり編の完結を待ちましょう。

それでは。

こんにちは。今回は先日公開のねこのさんの新作、「ありすすとーりー」です。
(1/21追記:難易度Extremeの攻略記事を書きました。こちらです)

AliceStory1

★favo
ジャンル:アクティブタイムバトルが楽しめる、かわいいアドベンチャーRPG(ReadMeより)
プレイ時間:難易度Normalで5時間~(難易度によって大きく変動します)
分岐:なし
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2023/1


本作に関しては制作過程をTwitterで拝見していました。
ありすシリーズの前作である「ありすえすけーぷ」をめちゃくちゃやり込んだ私は本作の公開も楽しみにしていました。つい昨日ようやく実績コンプリート出来たのでレビューを書いていきたいと思います。



まず前提として本作はノベルゲームコレクションで公開されているフリーゲームです(ふりーむでも公開されています)。ということはティラノスクリプトで制作されているのですが、プレイしてみたら思っていた以上にRPGでびっくりしました。メインシナリオの途中でイベントが挟み込まれ、そこで戦闘があるのかなくらいのイメージだったんですが(「せつなゆ魂」の戦闘イベントが増えたものみたいなイメージ)、本作に関してはツクールやウディタ製のRPGと変わらない感じでした。


ではゲームを開始していきましょう。New Gameをクリック。難易度はまずはNormalかHardが選べます。Hardは結構難しいので自信のある方のみ選ぶとよいでしょう。

導入の部分がシリアス目な感じだったのでやや意外に思いつつも、すぐに「ありすえすけーぷ」「ありすすいーぱー」のようなノリに戻ってきます。今回はまさかの異世界転移を果たした主人公のありす、今作で初めて苗字が明らかになります(有栖まゆがペンネームであり本名ではないというのは確か作者さんTwitter情報で知っていました)。そしてすぐさまスライムに襲われてラッキースケベ(?)イベント発生。そうそう、こんな感じだったよな~という謎の安心感が私の中に広がりました。

異世界で出会った妖精のリリィとともに妖精王を訪ね、元の世界に戻してもらえるよう依頼することにします。冒険の始まりです!

本作の戦闘システムはジャンルにも記載した通り、アクティブタイムバトル方式となっています。私がこれまでレビューした作品の中では、「キミだけのパーリナイト」が最も近いでしょうか。リアルタイムでアクティブゲージが増えていき、満タンになるとコマンドを打つことができます。新しいスキルを習得していると例外も出てきますが、基本はゲージが満たされるたび攻撃コマンドを打ってダメージを与えることの繰り返しです。
このシステムに関して、よくこれをティラノスクリプトで実装したなと思うほどよくできています。私がプレイした中ではバグみたいなものにも当たりませんでしたし、全12種のスキルの組み合わせ方で思っていた以上に戦略性のある戦闘が可能になっています。特に高難易度のボス戦に挑んでいると嫌というほど対策用の戦略を練ることになるのですが、それに関してはまた今度語りましょう。
AliceStory2


探索シーンに関しては前作っぽく探索ポイント選択式となっています。ここでプレイヤーへのやさしさであふれているのは、探索ポイントで起こるイベントの確率がすべて開示されて、さらに見たことのある結果については内容も記録されている点です。5%ならまあ出るまで粘らなくてもいいだろうとかいう判断がしやすいですし、あの敵とエンカウントする可能性が高いのはどこかとかも探しやすくなります。


中ボスを倒して冒険を進めていくと章も進行し、それに合わせて現実世界の物語も進んでいきます。導入部分のシリアスな展開が続き、語り手がありすであることも分かります。しかしこの時点では最終的にどう異世界での物語と結びつくのかが見えず????という感じでした。この繋がりの部分に関してラスボス戦後にきちんと決着するのが気持ち良かったですね。私は初見Hardで挑んだんですが、なかなか難しかったのでようやくラスボスを倒し切った安堵もあってなんだか感動しちゃいました。Extremeではラスボスのギミックなんかもストーリーを意識した名前や効果になっていてニクいですね! (戦闘中はそんなこと味わっている余裕は一切ないんですが)難易度Extremeを攻略した者の特権です。
ちなみにこのエピローグシーンでかかるBGMに私は聞き覚えがあって、なんだっけとしばらく考えていたんですが、音楽の卵さんの「無限大の小部屋(オルゴール)」でした。私が知っていたのは原曲版だったんですが、そちらも主旋律がオルゴールだったので混同して思い出すのに時間がかかったみたいです。そのあと作内でも原曲版も流れてきてやっぱり複数パターンあったんだと納得。今の私は本作のクライマックス効果で無限大の小部屋とシャイニングスター(EDテーマ)聴いたら泣きそうです。


さて、本作にはほとんどのシーンで台詞にボイスが付いています。主人公ありすについては前作同様ですが、今回は他にも3人(3体?)のキャラがいて、それぞれにきちんと声が付いています。公式サイトからサンプルボイスが聞けるので私は少し楽しみにしていました。リリィちゃんの「えいっ! ってやってみてください」がなんか可愛いな~と思っていたんですが、あれ本当に魔法の使い方を指示するときの台詞だったんですね…ありすの言う通り教えるの下手すぎる。
AliceStory3

そんな新キャラリリィちゃんも登場する隠しイベントは必見ですよ。(公式攻略ページを参照するのは前提として)2周目をプレイすれば簡単に見ることができます。
1つ浮かんだツッコミは、「湿ってるタイプの人って梵天使うの?」

それ以外にもちょっぴりえっちなイベントは前作にもまして盛りだくさんなのでそちら方面も期待していてください。謎の触手に絡めとられたり、きのこから出る白い液体を飲んだりとやりたい放題。パンチラとかいうレベルじゃないいつものアレももちろんあります。


そして私が見た範囲では指摘している人がいなかったので誰も気づいていないのかもしれませんが、上級クリスタル生成(いわゆるガチャ)のエフェクトが、Aランクが当たった場合のみ豪華になってますね。しかも特殊エフェクトが3種類ほどありそう。シリーズ他作品のレビューでも指摘しましたが、普通にプレイしてたらそこまで見ないだろというところまで細かい差分が用意されているの、凝っていて良いですね。


最後に戦闘部分に関する汎用的なアドバイスをしておきましょう。
  • 作内ヒントやヘルプはきちんと読むべし!
  • スキルは組み合わせ次第で効果が大きく変わるので実戦で学ぶべし!
  • よほどいいPCをお使いの方以外は戦闘エフェクトを中画質以下にすべし!
    (終盤のボス戦は高画質ではかなり重くなります)

Extreme攻略の具体的戦略はまた次回ということで。
それでは。

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