フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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RPG

こんにちは。今回は時雨屋さんの「黄昏が落ちてくる街に」のレビューとなります。

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ジャンル:ループ系短編RPG
プレイ時間:エンディングまで4時間/1周10分~
分岐:なし
ツール:RPGツクール
リリース:2022/10



以前紹介した「1000文字勇者」と同じ作者さんの作品ですが、ほぼコメディだったあの作品とは違ってシリアス系のシナリオとなっています。


本作の開始時点では設定はほとんど明かされず、プレイヤーは何もわからないまま主人公の”天使サマ”を操作していくことになります。
片腕と片方の羽を失っていることは冒頭で分かりますが、それ以上のことは街を調べながら察していくしかありません。どうやら自分が目覚めることはもうないと思われていたらしい、この世界の文字の読み方を忘れてしまったらしい……など。

街を探索しているうちに、本作には時刻という概念があることに気付くでしょう。物語開始時点で朝の7時。時間は常に経過し続け、1時間ごとに時刻を示す時計のイラストが表示されます。リアルタイムで時間が過ぎるのはRPGには珍しい仕掛けかなと思います。

単純に数字が動いていくだけでなく、時間の経過に応じて天気が変わったり、夕方になったら西日が差してきたり、このような部分まできれいに演出されていてとてもいいなと感じました。マップがきれいなんですよね。時間になったらパッと切り替わるのではなく、フェードがかかるように自然に変化していくこの作り込みは本作の魅力の1つと言ってよいでしょう。

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ちなみに町での最初のBGMがRamineさんの「southern cross」で個人的に好きな曲だったのでその点でも良かったです。タイトル画面は同じくRamineさんの「45度だけ開けた世界」ですね。


さて、黄昏が落ちてきた午後7時、町の様子は一変します。町はどこもかしこも大炎上。さらには大量の悪魔が押し寄せ、天使サマは無惨にも死んでしまいます。そこで本作のループが発動します。2周目も同じように朝7時から開始しますが、この周回からは街の人を連れて町の外に出ることができるようになります。目的地は4つの聖堂。戦闘も含まれ、RPGらしくなってきます。

本作の戦闘部分はノンフィールドRPGの要領で各聖堂ごとにザコ敵と6戦、その後にボス戦があります。ボスを倒したら一緒に討伐を行った人物からスキルを教わることができます。このスキルが非常に重要です。中にはエンディング到達に事実上必須なものもあるくらいです。
仲間とともにボスを倒すことでスキルを習得できるというのは、本作の戦闘部分を面白くしているポイントだと思うのでぜひいろいろな仲間を連れて冒険してみてください。

主人公と一緒に戦ってくれるメンバーは街の中から毎回一人選べますが、この世界はループしているため彼らのレベルは次の周回時には戻ってしまいます。しかし主人公のレベルと覚えたスキルは引き継がれます。初期状態ではラスボスはおろか最初の中ボスに立ち向かうのも困難なので、どんどんループを繰り返してスキルを覚えていきましょう。
単純にクリアするだけでは物足りない場合、ループ回数を最小化する縛りプレイなんていう遊び方も可能かなと思いました。

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さて、町を探索したり中ボスを倒したりしていくと”記憶のカケラ”という特殊なアイテムが手に入ることがあります。これを使用すると、主人公の隠された記憶を思い出していき、ストーリーを進めることができます。さらに最大MPが上昇するので、手に入れたら即使いましょう。ストーリーはのちに自宅から鑑賞しなおすこともできます。
天使が人間を守ってきた歴史やそれに対する天使の認識、そして悪魔との闘いといった内容ですが、この内容がRPGの戦闘部分、特にラスボス戦に生きていてすごく良かったです。


最後に攻略ヒント的なものを少々。

  • 初期状態では文字は全く読めないので張り紙や図書館を調べるのは全くの無駄足。学校で3回授業に出ると読めるようになる。その状態で図書館の魔法書を調べるとスキルを習得できる(時間はかかる)
  • 街にいる人はそれぞれ強さが全く違う。セントクレア、ムラサキあたりはだいぶ強い。
  • 装備品は購入できない。強い装備を持つ人をいったん仲間にして装備を外し、その後本命の仲間を誘って装備しなおすことができる。お勧めはムラサキ(着物)、ホウセンカ(クナイ)など
  • 習得をお勧めするスキルを教えてくれる人
    • 実質必須級なスキル
      • ミッドナイト(聖堂内)…各ボス戦の位置まで瞬間移動できる
      • クラリッサ(病院内)…毒を無効化する
      • テンプル(宿屋内)…1ターンのみ全ての攻撃を無効化できる
      • ネレス(図書館内)…自動回復の強化
      • モリアン(聖堂のそば)…戦闘不能回復
    • ボス戦に有利なスキル
      • セントクレア(門番)…ボス戦時などに攻撃力が上昇する
      • クリス(墓場内)…強力なデバフスキル
      • リッツ(床屋内)…強力なバフスキル
      • シャルル(噴水の隣)…状態異常耐性
    • ザコ戦で有利なスキル
      • マルタ(墓場の北)…戦闘開始前に1撃できる
      • アオギリ(薬屋内)…全体攻撃スキル
シナリオとシステムに一貫性があって効果を上げている作品だと思いますので、気になった方はぜひプレイしてみてください。 それでは。

こんにちは。今回は知内ひろさんの「RPGスクール」をレビューしたいと思います。

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ジャンル:学園ものファンタジーRPG
プレイ時間:1周5~6時間程度
分岐:多数。エンディング30種
ツール:RPGツクール
リリース:2021/2


本作はTwitterでも少しだけ感想書きました。作りこみがすごいなあと感じられる作品だったので、ブログの方でも取り上げます。

タイトルを見ても分かる通り、本作は学校が舞台となっています。冒険者を育成するための学校ですね。後述しますが、この設定がきちんと生かされ学園ものADVの魅力とファンタジーRPGの魅力が上手く融合した楽しさを生み出しています。

主人公の名前はアレリス(名前変更可、性別、ジョブも自由に選べる)。立派な冒険者になるためにRPGスクールに入学します。そんな彼の同級生となるのは属性もジョブもばらばらの6人。卒業までの1年間の間で彼らと授業を受けたりダンジョンに出向いたりして冒険者として成長していきます。

本作のシステムの基本はRPGですが、敵を倒して経験値を得てレベルアップして……というような一般的なRPGとは少し違うシステムとなっています。ダンジョン探索は通常のシンボルエンカウント、戦闘はターン制コマンド選択式のフロントビューでごく王道なのですが、アレリスや学友たちにはレベルという概念はありません。平日にスクールで授業を受けると、受けた授業に対応するステータスが直接アップしていきます。また、ダンジョンで戦闘に勝利すると経験値を得る代わりに一定の確率でステータスがアップします。放課後に学友と訓練をしたりすることでも上昇可能です。本作においてステータスをアップしていく方法は基本的にこの3つのみとなります。

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いまさらっと"平日"と書きました。ファンタジーRPGで厳密にカレンダーに従う作品は珍しいと思いますが、本作には独自の暦が存在しています。1年は10か月、1か月は6日からなり、そのうち4日間が平日で、スクールの授業や課外学習などが行われます。放課後にはちょっとだけ自由行動ができます。残りの2日は休日であり、午前・午後ともに自由に行動できます。道具屋や図書館でアルバイトしてお金を稼いだり、ダンジョンに潜ってステ上げや宝箱漁りをしたり、同級生と公園でデートも可能です。このあたり、完全にカレンダー消化型恋愛ADVなんですよね。

さらに、学友6人にはそれぞれ"好感度"のようなシステムがあります。メニューから生徒一覧を見ているときにふと右上の方を見ると、"知り合い"とか"友達"とかの状態が表示されていることに気付きました。そして私は察するわけです。なるほど、これは絶対に各キャラクターごとのエンディングが存在しているな、と。
エンディングを一つ見ると、エンディング一覧と到達条件が明かされます。それを見た結果、確かに各キャラクターごとのエンディングは存在していました。しかも私の想像をはるかに上回っていたことに、ゲーム開始時に設定した主人公の性別が攻略対象と同性か否かで友情エンドと恋愛エンドがあるというではないですか! ほかにも特定のアルバイトを極めたエンディングとか、とにかく宝箱を開けまくったエンディングとか、総計30ものエンディングがあると知りめちゃくちゃ驚きました。2周目以降にはボーナスがつくとはいえ流石に全部見るのは厳しいですが、興味がある方はぜひいろんなエンディングを探してみてください。勇者ルートは特におすすめです。

本作がADV的にオイシイのは多彩なエンディングだけではありません。課外学習や資格試験でのチーム戦。一緒に戦闘の経験を積む中で少しずつ親しくなる様であったり、各キャラクターが抱えている悩みであったり因縁の相手であったりが戦闘の合間にきちんと語られます。そして一番は修学旅行です。思い出してみると修学旅行のシーンのあるフリーゲームってやったことなかったかもしれません。5年前に魔王に打ち勝ったといわれる勇者ゆかりの土地をめぐる修学旅行。ADV的にはもちろん、RPG的にも意義の深いイベントです。この修学旅行中にある人物のRPGスクール入学の背景が判明したりもするのですが、ちょっと意外で面白かったです。

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1年の最後にはRPGスクールの卒業試験が待っています。主人公を含め7人を2つのパーティーに分け、それぞれで敵を破っていく必要があります。各キャラクターの職業の特性や装備、属性をしっかり把握し戦闘力が偏らないような組み分けが必須となります。
そして最後の敵。ここでは7人中4人を前線で戦わせ、ターンごとに任意でメンバーを入れ替えることができます。数ターンごとにラスボスの持つ特殊効果が変わるので、それに合わせて力を発揮できるメンバーを選定していきます。全員で協力するという非常にわかりやすくて気持ちいいラスボス戦です。これまで一緒に訓練を積み、ダンジョンを乗り越え、強い武器を集めてきた成果を発揮する最適な場となります。難易度は、育成を怠らずにきちんとしたうえで属性などをしっかり理解しておけば難しくはないという程度です。


というわけで今回は「RPGスクール」でした。
ストーリー性が大変わかりやすく、イベントも良く練られている良作だと思います。登場する学友たちの性格も自信満々だったり控え目だったりツンデレだったりと多彩なので、きっとあなたの気に入るキャラも見つかるはず。

それでは。

こんにちは。今回はGWのあいだひたすらやりこんだので、私がレビューするのも今更と言えるほど有名なカタテマさんの「魔王物語物語」を扱っていきたいと思います。

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オススメ!
ジャンル:エンカウントの独特な高難易度RPG
プレイ時間:裏ボス討伐までで25時間以上(ただし私のプレイ法では無駄に時間がかかっていた可能性あり。後述)
分岐:なし
ツール:RPGツクール
リリース:2007/8



フリーゲーマーならどこかで名前を聞いたことがあるであろう本作ですが、私は実はこれまでやったことがありませんでした。難しいという情報は聞いていたので、DLしてはあったもののなかなか手を出すタイミングがなくて…。しかしいざプレイを始めてみると、見事にハマってしまいました。

本作の目的は、未完に終わった小説「魔王物語」の結末を探すこと、となっています。主人公のヒマリとともにネグラで暮らす仲間たちも、魔王物語に関して何らかの思い入れがある様子。様々な情報の断片は与えられるも1つの解答のようなものは提示されないため、シナリオ解釈の難易度も高いものになっています。初見プレイの私にはなかなか分からない部分も多いので、今回はRPGとしての戦闘やシステム部分の魅力を中心にお話ししましょう。


本作をプレイして最初に目につくのは、独特なエンカウントシステムでしょう。マップ上には数種類の敵シンボルがうごめいています。まずはネグラ前にいるネズミと戦闘してみましょう。最弱の敵の割に強くないか? とは思うでしょうが、普通のターン制コマンド選択式RPGと変わらないと感じるでしょう。レベル3くらいまで上げたら次に右のマップに行って、左上の方にある宝箱を回収してきましょう。ネズミが複数いて全部かわすのは難しいですね。戦闘になってしまいました。本作のエンカウントシステムは、複数体と戦闘になるときにその機能が明らかになります。マップ上で主人公と敵シンボルがどの角度で接触したかによって、戦闘時の敵の位置が変わるのです。
敵の位置が変わるとどうなるか。近い範囲にまとめられた場合、巻き込みで一挙に複数体へのダメージを与えることができるのです! 逆にばらばらな向きでエンカウントしてしまった場合、一度に1体しか攻撃できず、序盤でそうなると全滅の憂き目に遭います。というわけで戦闘を有利に進めるためには、マップ上の移動を注意深く繊細に行う必要があるのです。まるでシューティングゲームで敵の放つ弾幕を避け、必要ならなるべくたくさんの弾を集めてボムで消す、みたいな動きが要求されます。maou2maou3
↑左:ネズミ3匹をほぼ同じ方向にまとめた良い例
↑右:左右から挟み撃ちにされ敗色濃厚な悪い例

最初のダンジョンである魔王城の段階から、複数体とエンカウントする際にはこのような注意が必要になってきます。こんな感じで苦労してようやく魔王城を抜け、次のダンジョンである原住民の廃都へ入ります。ここのBGMがね、良かったです。さらに難易度が上がったダンジョンを攻略する気力を保てたのは、BGMのおかげかもしれません。ReadMeを見てクレジットにある音楽配布サイト名をじっと見て、「これはoo39ドットコムの曲っぽい雰囲気を感じるなあ」と思いながら調べるとその通りですごくうれしかったです。

原住民の廃都でどう難易度が上がるかというと、まずは敵の密度です。魔王城では1画面に3~4匹だった敵シンボルは場所によっては倍以上に増えています。そして障害物によって進めない部分が多く、目的地に行くのに遠回りをする必要がある。極めつけは赤いサルです。これまでの敵シンボルはランダムに動き回っているだけですが、この赤サルはエンカウント状態になると移動速度が高速になり、ヒマリに向かってくるようになります。ただでさえ赤サルはステータスが高いのに、複数体同時エンカウントが起きやすいように動くのです! いやらしい!

そしてこのあたりで、初見殺しの多さにも気付きます。神殿のような建物に入った瞬間、ネズミが大量に湧いてきて、見た目は魔王城のザコ敵なのに中身は"殺人ネズミ"で4連攻撃をくらいフルボッコにされる。防具っぽいアイテムが落ちているところに行こうとしたらサソリがいて、どう考えても倒せる強さではないうえに"仲間を呼ぶ"で敵を再召喚されて死んだり…。
というわけなので、セーブは頻繁に!

次のダンジョンである雪花園ではさらにいやらしい敵、ユキガケが登場します。普段は見えない上に、エンカウント状態になると高速で大量に寄ってきます。周りに敵シンボル1つしかないし新ダンジョンの様子見しようかなとエンカウントすると、あっという間に4匹くらいに囲まれて普通に全滅します。

と、こういうことを繰り返すので「いかにエンカウントを避けながら宝箱を開け、強いアイテムを手に入れるか」「効率の良い経験値/熟練度稼ぎのスポットを発見し、どうやって複数の敵を同じ方向にまとめて戦闘に入るか」「エンカウントを避けられなさそうなとき、敵に囲まれるという最悪の事態をどう回避するか」といった技術が自然に磨かれていきます。
これがもはやアクションゲームやシューティングゲーム並みに実感できてハマるポイントです。
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↑追いかけてくる敵シンボルをうまくかわしてダンジョンを駆け抜ける緊張感と達成感にハマります

ところで私が本作をダウンロードしたときか解凍したときか、はたまたその他のタイミングなのか分かりませんが、どうやらファイルが一部破損していたらしく、なんと戦闘中に回復アイテムや回復魔法を使うとバグが起きてゲーム自体が落ちるという現象が発生していました。途中までこれは仕様だと思っていたため、期せずして最終ダンジョンまでずっと戦闘中回復不可という超絶厳しい縛りプレイをずっと行っていたのです!
というわけで実際には私が感じたよりはもう少し優しめの難易度設定のようです。
流石に戦闘中回復不可でラスボス攻略は無理だったので、フォロワーさんのアドバイスの元再DLして縛りを解除しました。結果、無事に回復できるようになりラスボス討伐も問題なくできました。

しかしそれだけでは終わりません。ネグラ(と雪花園)の大穴から地底大空洞へ行くことができます。ここの敵がさらに強い。しかもセーブポイントや回復ポイントがほとんどありません。さらには反則級に強い裏ボスも居ます。普通に挑んでいても全く勝てないので、普段初見時は攻略サイトを見ない私でもwikiを見ざるを得ませんでした。見ると、"隠しステータス"というものがある模様。知るかよ…
その戦略に従ってみたところ、確かに勝てました。

ところで無駄に経験値稼ぎをしたためwikiに書いていないことで一つ気付いたことがあって、それはレベルは70が上限ということです。しかしそこまで上げても裏ボスは楽勝とはいかなかったので、冗談抜きでめちゃめちゃ強いです。

本作に不満があるとすれば、難易度以外の部分で不親切なところが結構あるところでしょうか。お金で買うアイテムの効果が購入前には全く不明だったり、時限イベントが大量にあったり。攻略サイトを見るか周回プレイをするのが前提であって、故意に不親切なのかもしれません。

というわけで、難しいゲームはダメという方にはお勧めできませんが、挑戦してやるぜという気概のある方はぜひプレイすることをお勧めします。公開から15年近く経ちますが、今遊んでも面白いものだと断言できます。

こんにちは。今回は時雨屋さんの「1000文字勇者」のご紹介です。

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ジャンル:メタネタ多めのコメディADV
プレイ時間:クリアまで30分程度
分岐:ゲームオーバーあり
ツール:RPGツクール
リリース:2016/12


今回紹介する「1000文字勇者」は、RPGの形式をとりながらRPGのお約束を逆手に取った挑戦的なシステムで謎解きゲームのようなプレイ感を生み出した、RPGと見せかけたADVのような意欲作です。

本作のシナリオというかコンセプトは単純明快。ふりーむに載っている3行の説明で十分です。

この勇者は千文字読むと爆発します。
がんばって魔王を倒しましょう。
千文字喫茶参加中。


通常私たちがRPGをプレイするとき、町で出会った人にはとりあえず話しかけることが多いはずですし、それがセオリーでもあります。ただの村人からでも、戦闘のアドバイスとか、隠しアイテムのありかのヒントとか、イベント進行フラグとかの情報が得られたりしますよね。「装備品はメニューから装備しないと効果を発揮しないよ」と教えてくれる人とかはどのゲームを見ても最初のほうの町に住んでいる気がします。
ところが本作はなんと主人公が1000文字読む(メッセージウィンドウに表示される)と爆発する呪いがかかっていて、強制的にゲームオーバーになってしまいます。当然、全部の村人に話しかけている余裕なんてありません。とりあえず初回プレイでは手当たり次第に話しかけていくしかありませんが、これではクリアできるわけはありません。話しかけて得られた反応からイベント進行に必須な人を判別し、極力無駄を排して話を進める必要がある、まるで謎解きゲームのような内容になっています。


本作はRPGでもあるので、戦闘シーンもあります。しかしまともに戦っては容易に文字数制限をオーバーしてしまうので、なんと勇者はどんな敵でもワンパンで倒せる能力を持っているのです! その代償の呪いは大変きついものですが…
戦闘において厳しいのは、戦闘前に無駄なことばっかり喋ってくるいやがらせのような敵。何とか回避する方法を見出さなくてはいけません。こうした敵に笑わされたり、無駄な文字にイライラしたり、なんとか回避して進めないか探索してみたりと、試行錯誤できるのが面白いですね。
ちなみに厄介なのは敵だけではありません。
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こういった面倒くさい奴をどう処理するか、必須なイベントやフラグをしっかりと見定める必要があります。1000文字という制限には多少の余裕はあるものの、100文字を超えるような長話はしっかりとスキップしていかないとクリアできないバランスです。フラグが立つ箇所を見つけてはセーブ時点に戻りストレートにフラグへ向かう、そんなプレイングが求められるでしょう。必須イベントだけを起こして進んでいけばクリアまで5分程度というシナリオですが、その正解ルートを見つけるために村人に聞き込みをする、怪しい場所を調べる、そうした作業を楽しめる方にはぴったりです。シナリオ進行にかかわる情報は、台詞内で目立つようにオレンジ色に着色されているので、ゲームの難易度としては高くありません。

ちなみに私が考えたところでは、魔王討伐後に姫に会う場面で216文字残しが最高値かなと思うのですがどうでしょうか。まだ削れる文字数があるよっていう方は教えてください。


さて、本作では呪いを解いて文字数制限を撤廃したモードで思う存分人に話しかけることもできます。このモードへの入り方は、一回通常モードでクリアするとわかるので頑張ってクリア目指してください。2回話しかけると台詞が変わっている人も結構います。彼らが何をしゃべるかは、クリア後のお楽しみですね。
また、最後のシーンがちょっと変わる程度ではありますが、本作は一応マルチエンディングになっています。どこで分岐するのかは比較的わかりやすいと思うので、ぜひ全パターン試してみてください。


今回は「1000文字勇者」のご紹介でした。お約束を逆手に取ったメタな話に笑える方、RPGのフラグ管理がいつも気になってしまう方、ダンジョンでは外れの方の分かれ道まで全て探索してしまう方にお勧めです。最後にこのゲームの本質を伝えるスクリーンショットをお見せしますね。
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…ということです。それでは。

こんにちは。今回はたんしおレモンさんの冒険の時間!です。


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ジャンル:オート戦闘お手軽RPG
プレイ時間:エンディングまで1時間、図鑑コンプリートまで2時間ほど
分岐:なし
ツール:HTML5(ブラウザゲーム、スマホ可)
リリース:2020/5


本作はスマートフォンでも遊べるように作られたお手軽ブラウザRPGです。シナリオと呼べるような要素はほとんどありません。また、戦闘はフルオートなので実際に戦闘に入ったら見ているだけになります。プレイヤーが介入できる要素は戦闘の順番、仲間にする魔物、周回要素の3つです。それぞれについて見ていきましょう。

戦闘の相手と順番

ゲームはいくつかのフロアからなっています。各フロアには敵が数体。どの敵と戦闘になるかは事前に分かるため、この順番だったら勝てそう、ボスに勝つには回復ポイントの使用回数を温存した状態で経験値稼ぎする必要がありそう、属性の相性を考えるとこの敵と戦うのは得策ではない、などの要素を考えることになります。多くのフロアでは規定回数の戦闘を終えると自動的に次のフロアに進んでしまうため、より多くの経験値を稼げる相手を選んで戦うというのもアリです。

仲間にする魔物

本作では戦闘に勝利すると、敵モンスターのうち1体を必ず仲間にすることができます。したがって、なるべく役に立つ強力な魔物を早い段階で仲間にすることが重要になります。また、味方にできるのは4体までなので、それ以上になると見放す魔物の選択を迫られることになります。この先の戦闘やフロアで何が求められるかを周回プレイを含めてしっかり把握し、適切な味方を増やして育成していくことが魔王城攻略のためには必須でしょう。
また、本作には同じ種類の魔物を数体集めると合体して進化するという特徴があります。当然進化後の魔物は強力なため、なるべく味方は進化させておきたいところです。そのためには、先に述べた味方にする魔物の取捨選択と、戦闘を行う順番の選択が大切になってくるのです。

周回要素

本作の周回要素は2つです。まず一つは図鑑。これまでに仲間にしたことのある魔物が登録されます。2周目以降の開始時には、図鑑登録済みの魔物の中から1体選んで仲間にした状態でゲームに臨むことができます。レベルは1に戻ってしまいますが、早い段階で強い魔物を仲間にできるとそのメリットは絶大です。つまり、ボス攻略ができなそうでも次回のプレイに備えて、魔物を進化させられるような戦闘相手を選ぶなどの戦略もとれるようになります。魔王討伐・エンディング到達には図鑑全種登録は不要ですが、ぜひ図鑑埋めにも挑戦してみてください。まさかのアイツも進化できますよ。
もう一つはアイテムです。本作のアイテムには、店で購入できるものとボス討伐時にもらえる特殊なアイテムの2種類があります。店で購入できるものは、毎回冒険に出る前に購入することができます。各種ステータスアップのほか、属性攻撃やレア魔物を出現させるなどの特殊効果のあるものもあります。ボス討伐でもらえるものは、入手に苦労するだけあって非常に強力です。進化合成用の魔物をキープするアイテム(どう見てもモンスターボール)、全属性に対して耐性を付けられるアイテム、冒険開始時に図鑑から連れて行ける魔物を2体にできるアイテムです。説明するまでもなく強力なので、ぜひ回収してください。

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さて、そんな本作のゲームバランスですが、適当に仲間を増やして進化できるときは進化するのようなやり方では中ボスくらいで壁に当たるけれども、対策を立てれば運に頼らずともクリアできるちょうどいいバランスだと思います。タイトル画面に戻ってくるたびに全員レベル1に戻るため、レベルを上げて物理で殴るといった単純な戦法では突破できません。それなりにしっかりと目的を定めて(進化がまだの仲間を図鑑に登録するとか、ボスに効く属性を確かめるとか、特殊アイテムを回収するとか)戦略を練りましょう。戦闘中は一切の操作ができないので、その進み具合をよく見ておき、余裕で勝ったのか、味方が倒されそうだったのか、属性の相性は良さそうなのかなどを次の戦闘に生かすのが大切になってきます。この戦略を立てる上で一つ面倒だったのが属性の相性の把握です。火・水・風・土の4属性があって、それぞれでじゃんけんのように相性の良し悪しがあるというのが一般的だと思うのですが、本作にはそれらに加え光・闇・痺の3つがあり、かなり複雑になっています。合計7つもの属性があり、各属性にある相性のいい属性と相性の悪い属性が1つというわけでもなく(2つあるものと1つのものがある)、さらに魔物自体も2つの属性を複合して持つことがある、となると相性を考えるのが相当大変でままならなくなってきます。一応ゲーム画面の下に属性相性表が用意され、ステージ開始時に関連する属性の説明が一度でるなど配慮しようという気持ちは感じられるのですが、覚えられないしいちいちこれを参照するのも面倒です。せめて作者さんの過去作の拡張にして欲しかったです(光・闇については過去作と同様なのですが、火・水・風・土については全然違っており、相当混乱しました)。
攻略に困った場合、各フロアにいる老人に話しかけるとちょっとだけヒントをもらえます。大まかな方向性とかしか教えてくれませんが、見落としていた攻略要素に気づけたりするかもしれません。


そして、本作に登場する魔物たちはどれもポリゴンで表現されたかわいらしさのあるものです。一度仲間にすると図鑑に載って名前がわかるようになりますが、ダジャレセンスのある独特のネーミングで笑わされることもあるでしょう。このあたりは作者のくろすけさんお得意のセンスですね。過去作からの登場がほとんどなので、それらをプレイしたことがある方は逆にどれが新しい魔物なのかに注目すると楽しめるでしょう。本作はシナリオのようなものはないため、くろすけさんお得意のおふざけイベントはないのが残念ですが、今まで過去作をプレイした経験がない方には逆に刺激が少なくてちょうどいいかもしれませんね。ネーミングセンスとか、老人との会話のノリとかが気に入った方はぜひ作者さんのほかの作品もプレイしてみてください。

それでは。

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