フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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アドベンチャーゲーム

こんにちは。
今回はらふわーかーさんの「かみさまの心臓」のレビューをしていきたいと思います。

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ジャンル:ホラー風謎解き探索型ADV(ReadMeより引用)
プレイ時間:エンド到達まで2時間強。フルコンプまで3~4時間
分岐:エンディング4種。その他GameOver多数
ツール:Wolf RPGエディター
リリース:2015/3



ホラー風と銘打っている本作ですが、脅かし要素はかなり控えめですのであまりホラーが得意でない方でもプレイしやすい作品かと思います。(ただし嫌な気分になるようなギミックは複数あります。後述)
さっそく内容の紹介に移りましょう。


冒頭プロローグの部分が終わると、主人公、目黒誠を操作可能になります。真っ暗な部屋で何も見えませんのでひたすら前進していきましょう。次の部屋から探索ADVらしい謎解きゲームが始まります。
最初のトラックのある部屋では、おそらく多くの方が一度はゲームオーバーになると思います。初見殺しではあるのですが理不尽に感じない内容で良いですね。確かに、アレはそのために存在しているというのが初見でもわかります。
しかしその部屋の扉を開けて次に進むためには、先ほどのゲームオーバーになるギミックを使って特定の操作をする必要があります。進むためにはこうしなきゃいけないだろうというのはすぐに理解できるのですが、実際にやるには心理的抵抗があるような内容ですごくホラーゲームらしいんですよね。

ホラーゲームというのは当然プレイヤーをびっくりさせたり脅かしたりするものですが、私はそういう怖さには弱いのであまりホラーを好き好んでプレイするわけではないんです。しかしホラーゲームにおけるプレイヤーの怖がらせ方というのはそれだけでなく、ふんわりと嫌な雰囲気を漂わせるとか、選びたくない選択肢を選ばせるとか、そういったじんわりとした怖さというのもあると思うんです。
有名な作品でいうと、青鬼的なホラーではなくて魔女の家的、というと伝わるでしょうか? そして私はこちらのタイプの作品を好むのです。

本作においてこれがかなりいい方向に働いているなと思ったのがこのトラックの部屋のギミックでした。

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さて、この部屋を突破すると次は本棚の部屋です。ここに来て初めてストーリーのようなものが明らかになってきます。何でもできる完璧な兄を持って誇らしくも悔しい気持ちで生きてきた弟の誉(ほまれ、でしょうか)の手記のようなものがばらばらに散らばっています。誉の兄は本当に何でもできて人格者でもあったのですが、交通事故に遭った結果介護なしでは生きられない状態になってしまいます。そんな弟の誉の日記を読んでいくと、順番に部屋の鍵が開いていきます。扉の先では兄弟の関係性や過去の出来事を使ったギミックになっていて良く考えられています。


この本棚の部屋を越えた先で、本作のタイトルの意味が次第に明らかになっていきます。なにやら主人公に好意を持っていそうな謎の少女が登場。いったい彼女とはどういう関係なのか、彼女の目的、そして正体は何なのか。そうした謎がストーリーを進めていくうちに解けていくのが気持ちいい作品です。


物語が進行するのと同期して、ゲームを進行していくためのギミックも兄弟の2人を交互に操作して突破していく方式へと変わっていきます。兄である誠が何を考え、それを弟である誉がどう受け止めていたのか、そのすれ違いの様子が伝わってきます。
同時にエカチェリーナと名乗る謎の少女に関することも分かってきます。本作の冒頭で意味深に登場した”かみさま”という単語がどういう文脈で使われていたのか、悲しい真実が明らかになっていきます。

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そんなギミックが上手く作られている本作ですが、謎解きはやや難しめと感じました。いくつかのアイテムを入手できますが、持ち物に入っているだけで自動的に使用されたりしません。怪しい対象の前に立ってメニュー画面から能動的に使用するアイテムを選択する必要があります。詰まったと感じたらいろいろなものを単に調べるだけでなく、アイテムを使用できないかも確かめていくとよいでしょう。
必要な推理や謎解きに関しては理不尽なものもなく、納得できる範囲で作られていると思います。記憶力が必要になるギミックもあるため、不安ならヒントをスクリーンショットに撮っておくと安心です。
また、一部の追いかけっこで(キーボードのせいかもしれませんが)操作性が微妙で難しいかなと感じました。

そして本作のエンディングは計4種類に分かれます。Bad, Normalエンドに関しては難しくありません。普通にシナリオを進行していけばたどり着けます。しかし残りのエンディングについては初見での到達はまず無理でしょう。ハッピーエンド到達条件を満たしているかは最奥の部屋の様子で分かるのですが、それをどこで満たせるかを探すのが難しいです。合計12か所を調べる必要があり、その多くは調べられる時期が限定されています。無理だと感じたら作者さんサイトに攻略が載っているので参考にしましょう。


というわけで今回は「かみさまの心臓」でした。
結局すれ違ったままになってしまったバッドエンドの後でハッピーエンドを見ると幸せも倍増です。おまけ部屋ではやたらコミカルな会話も見られるのでぜひハッピーエンド目指して頑張ってみてください。

それでは。

こんにちは。今回はAZULDROP;さんの「TABOO.」をレビューしていきたいと思います。

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ジャンル:ホラー探索アドベンチャー
プレイ時間:エンディング回収までで4時間前後
分岐:4種。他ゲームオーバー多数
ツール:Wolf RPGエディター
リリース:2015/4
備考:12推、暴力・流血描写あり


さて、本作の作者であるAZULDROP;さんは「神無月の遣い」の作者として知っていました(最近Twitterでも呟きましたね)。しかし作風がかなり異なるように感じられ、作者以外の事前情報なしでプレイした私は驚く場面が多数ありました。

では具体的な中身の話に移りましょう。
とある私立図書館で行方不明者が立て続けに発生したといううわさ話から始まります。噂は事実であり行方不明者の数は3年間で4人。そのことを不気味に思った人たちは噂に尾ひれをつけ、彼らは図書館で死んだ、彼らの幽霊が出る、犯人は図書館の管理人だ、などいろいろな情報が飛び交っています。
主人公のヴィンスはそんな図書館の管理人。閉館時間になったので館内を見回って戸締りをします。その過程で不審なメモ書きや幽霊のような人物を見かけます。
一方この図書館に潜んで行方不明者の調査を行っているティアも怪しい書物や幽霊を目にすることになります。果たしてこの図書館で過去に何があったのか、幽霊の正体は、そして行方不明事件との関係はいかに……


と、このように探索ホラーゲームとして王道の導入と言っていいでしょう。
短編和風乙女ゲームだった「神無月の遣い」と全然雰囲気が違っていてびっくりというところです。この違和感はプレイ開始当初私に悪い方向に作用していました。
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マップはあまりきれいに見えませんし(ただし立ち絵は相変わらず綺麗)、ホラー的な初見殺しの驚かし方がワンパターンです。また探索中に手に入るメモなども意味深なものばかりで謎が解決していく様子が感じられなかったので、これは微妙かな~と思っていました。
しかし最後までプレイしてみるといい作品だったなという感想になったからこそ今こうしてレビューを書いています。どうやって最初の印象が覆されたのかについて順にお話ししていきましょう。

まず私は本作のクリアまでの時間を見誤っていました。他の作品の印象から本作も30分以内程度の短編だと思っていたのです。そのため図書館と行方不明事件の謎がエンディングまでに解決する見通しが立たずに微妙かなと感じていました。
しかし実際には本作はTrue End到達まで迷わずに進めても1時間、実際に攻略しながら他のエンディングも回収して…と進めていくと4時間くらいはかかるボリュームがあったので、終盤ではしっかりと行方不明事件の謎についてもヴィンスとティアの関係についても解決していて良かったです。


さて、本作の前半部分では、図書館の戸締りをするヴィンスのターンになります。この段階では図書館内の鍵を拾って部屋に入って暗証番号のヒントを見つけて…と謎解きとしては一直線で簡単な部類だと感じます。アイテムに触れるとたまに幽霊が追いかけてくるのですぐに違うフロアまで逃げましょう。基本的にマップが切り替わればそれ以上追ってくることはなくなります。ほとんどの場合初見殺し的に追いかけっこイベントが発生するため、セーブは頻繁にしましょう。

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戸締りを終えて管理人室に帰ったらティアのターンになります。物置に隠れていた彼女は、この図書館で行方不明になったエレナを探して図書館内を探索します。エレナの幽霊に導かれ、小部屋の奥の迷路のような部屋を探索します。ここでも初見殺しトラップは健在なのでこまめにセーブしましょう。


ティアがヴィンスと合流したら後半戦です。2人が目撃した幽霊の正体を探しに行きます。
このフェーズでは謎解きが本格化し、前半のアイテム探しに比べて脱出ゲーム感が強まります。

4つの石を配置して隠し部屋への通路を発見してからは解決編です。この図書館で起きた事件の真実について、探索中にも匂わせるようなヒントは得られますが、この隠し部屋で明らかになる惨状を見たら驚くでしょう。館内の様々な場所に散らばっていた不老不死に関するメモが、このような悲しい事件に結びついているとは思いませんでした。
行方不明4人のうち2人はまあそうなっても仕方がないというか本人たちが望んだ結果でもあるんですが、残り2人に関しては本当にかわいそうです。そんな真実を知ったティアがどう動くのか。ヴィンスはどうするのか。True Endではこれらの要素がきちんと絡み合ってエンディングに行くのが良くできた作品だと思います。

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本作の攻略についてですが、前述した通り初見殺しが多数あるのでセーブは30秒ごとにしてもやりすぎではありません。慣れていたとしてもセーブなしで本作をクリアするのは至難でしょう。ただしその初見殺しパターンはアイテムを調べる・特定の場所に近付いた瞬間に幽霊に追いかけられるという1つのみですので、怖さ的には大したことはないでしょう(だから私も1人で最後までプレイできました)。
また、特に後半の探索については図書館全体を調べる必要が出てくるので、ヒントが示す場所がどこなのかを広い目で探してみましょう。

エンディング回収も難しいです。本作のエンディングはGame Overを除いて4種。攻略情報なしでコンプリートするのは非常に難しいと思います。というのも、特定の行動をしないという進行条件がある・前半での入手アイテムが終盤で分岐に影響するなどといった要素があるからです。
というわけでエンディング回収できないなと思ったら作者さんサイトの攻略情報を見ましょう…と言いたいところなんですがすでに消滅しているんですよね…。Web Archiveを使えばまだ見られるので困ったら参照しましょう。
このヒントを見てもちょっと分岐に迷ったのでここにも少しだけヒントを書いておきます。
END 03とTRUE ENDの分岐点 公式サイトにあったヒントだけでは分かりにくいですが、どちらのエンディングに向かうとしても後半戦開始時点でヴィンスは人形を所持しています(でないとティアがヴィンスにあう前にGame Overになる)。解決編の後の最後の追いかけっこの時、管理人室の2階にある人形を回収していくことでTRUE ENDに、スルーすることでEND 03へ行きます。

というわけで今回はTABOO.でした。
当初の想像よりずっと深いシナリオと攻略要素が絡んだ作品です。TRUE END後に見られるアフターストーリーもきれいなのでぜひプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。今回はまなとマナさんの「死してなお僕は」をご紹介します。

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ジャンル:ファンタジー探索アドベンチャー
プレイ時間:エンディング回収までで1時間以内
分岐:True,Normal,Bad3
ツール:RPGツクール
リリース:2020/8
備考:12推、要RPGツクールVX Ace RTP


今回ご紹介する作品は、主人公のジェンスが”死の世界”から無事に帰還するために探索して進めていくアドベンチャーゲームとなっています。と言ってもグロテスクな絵が出てきたりといったホラー要素はほとんどなく全年齢対象であり、ホラーの苦手な方でも十分楽しめると思います。
一応暴力的なシーンはあるので12歳以上推奨にはなっています。

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こちらがその主人公のジェンス。頭に包帯を巻いて皮膚はつぎはぎ、心臓が飛び出ていていかにもゾンビっぽい造形ですが、絵柄が可愛らしいので怖さはあまり感じませんね。
そんなジェンスが目を覚ますと、案内役をしてくれるクローバーが、ここは”死の世界”であり、長くいすぎてはいけないから隙を見て脱出するといいと教えてくれます。”死の世界”の住人である”魔ビト”たちは攻撃的な態度をとってきたりはしませんが、脱出を企てていることがバレると全力で牙を向けてくるため、何の気なしの散歩を装いながら情報収集し、脱出を目指していくことになります。



…と書いてきましたが、本作は”魔ビト”に脱出を悟られないように真相を探るサスペンス的要素は薄めです。ジェンスがあからさまな発言をしたりしなければ脱出の企てが露見することはありませんし、推理要素などもなくストーリーが進行していくので気軽にプレイしていくことができます。

代わりに、というわけではありませんが、探索を進めていくと次第に本作の世界観や生前のジェンスのことが明らかになっていきます。ジェンスが目覚めた建物はどうやら病院のようです。”死の世界”に来る前は医者であったらしいジェンスですが、どうも今の彼はその過去を忘れている、あるいは思い出すのを拒否しているように思えます。
さらには病院内の所々から見つかる不穏な文書やメモ書き、ジェンスの断片的な記憶。そしてなぜかジェンスのことを”天使”と呼ぶ魔ビトたち。これらの謎を解明するための手がかりとモチベーションをくれるのがジェンスの元患者・アンジェです。

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アンジェはジェンスに信頼を寄せているようですが、生前の彼らの関係はどのようなものだったのでしょうか。彼女は脱出のためのヒントをくれつつ、ジェンスを見守っていてくれます。

玄関のカギを入手したらここが分岐点。すぐに脱出するか、見かけた怪しい人影を追うかです。ゲームに慣れた方なら大方想像がつくでしょう。即脱出すればノーマルエンド、人影を追って地下に行くとトゥルーエンドへ向かいます。


地下に入るとそれまでの普通の病院の待合室のような雰囲気とは打って変わり、暗い部屋と廊下に粗暴な魔ビト、怪しい薬品類など一気に不穏さを増しホラー味を帯びてきます。とはいっても冒頭で述べた通り怖い絵もプレイヤーを驚かしてくるような演出もないためホラー苦手な方でも安心。
”魔ビト”が言っていた”天使”とはいったい何のことを指すのか、この病院で行われていた怪しい出来事は何だったのか、そしてそれとジェンスやアンジェの関係はあったのか、といった物語の核心に迫っていきます。


ここで明らかになる真実はやはりショッキングなものですが、地上を含めたこれまでの探索時にうすうす察することができる内容なので、私自身あまり辛い気持ちにならずに済みました。むしろジェンスとアンジェが短い時間で築き上げた確かな信頼関係を感じ取ることができ、感動的なエンディングに仕上がっていると思います。今度の”約束”は守れるといいですね。


難易度について。本作の攻略は易しい部類に入るでしょう。探索時にヒントが得られる地点にはほとんど光るマークがついていますし、アクション要素が求められるシーンもありません。謎解きも同じフロア内で完結するように作られているため、さほど迷わずに進められるでしょう。
前半(2階)のイベントは本筋にあまり絡んでこない(アンジェの登場は重要だが)のでややお遣い感があると言えるでしょうか。


というわけで今回は「死してなお僕は」でした。
死んでもまだ叶えたい願いとは何だったのか。なぜそのような願いを持つに至ったのか。あなたの目で確かめてください。

それでは。

こんにちは。今回はくろいのうとさんの「Sample087」のご紹介をしようと思います。

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ジャンル:短編脱出ホラー
プレイ時間:30分以内
分岐:なし(ゲームオーバーあり)
ツール:Wolf RPGエディター
リリース:2015/8


今回の作品は王道な脱出ホラーものとなります。
主人公の黄瀬花香は怪しげな実験施設のような場所で目を覚まします。ベッドと机と小さな箱が1つしかない殺風景な部屋に閉じ込められている花香は、机の上にあった不穏な置き書きのようなものを発見します。そんな置き書きから目を離してみると、部屋の隅から謎のスライムが侵入してくるではありませんか。
命の危険を察知した花香はこの施設からの脱出を試みます。果たして無事に帰ることはできるのでしょうか…


このように本作の筋はいたってシンプルです。
敵キャラ(?)であるスライムは一瞬触れただけで即ゲームオーバーなので、操作を誤らないよう慎重に進みましょう。初見殺しの箇所もいくつかあるのでセーブは細かく分けておきましょう。

脱出のヒントとなる謎解き部分もオーソドックスなもので、この手のゲームに慣れた方なら迷わずに解くことができるでしょう。難しいわけでもないので不慣れな方でも安心です。

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こんな感じで、本作はいたって普通な脱出ホラーといった作品なのですが、それだけだったらレビューを書こうとは思わなかったと思います。プレイ時間にして20~30分の中で、いいなと感じた点が2つありました。順に説明していきましょう。


まず1つ目。本作には体力・思考力というパラメーターが存在しています。初期状態では両方とも40です。そして探索中に水やカンパンなどの食料を発見することがあります。それらをアイテム一覧から使用することによって、体力・思考力を回復することができるのです。

本作には戦闘要素は一切ありません。敵に何らかの攻撃をして退治する場面などはありませんし、敵に一瞬でも接触されたら即ゲームオーバーです。ではこのパラメーターは何に使われるのかというと、探索なのです。
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脱出のためにはいくつかの謎を解いていかなくてはなりません。置き書きを読んだり、謎のポスターを観察したり、室内のアイテムを見つけていったりするわけですが、その際に得られる情報量が思考力の影響を受けるのです。思考力40の初期状態では見たままの情報しか得られなかったのが、カンパンを使ってすこし思考力が増した状態だと、隅に書かれた小さい文字まで読めたりといった細かい設定がされているのです。これは非常に珍しい仕掛けだなと思いました。
基本的にパラメーターが高くて損をすることはないので、見つけた食料は有効活用していきましょう。

体力も同様で、体力が低い状態では解決に手間がかかった仕掛けをパワーで解決するといったことが可能な場面があります。なかなか面白いですね。



そしてもう1点。これは本作の最後の最後で明らかになります。

突然このような危険な施設に監禁され、この世界の理不尽を呪っていた花香ですが、最後の部屋で脱出へのかすかな希望でさえ打ち砕かれて絶望に染まってしまいます。結局どんなに手を尽くしても脱出は叶わないのか。そんな悲しいエンディングを迎える本作……しかし、本作には実は脱出エンドが存在しています。この際花香が希望を取り戻す演出がとても気持ち良かったです。BGMも切り替わり、花香の生きのびるという決意が感じられます。その場面でふつう選ばないだろうという選択肢を試したりもしたのですが、そういう時のメッセージもしっかり設定されていて良かったです。

おそらく初見で脱出成功させるのは難しいと思います。最後の部屋にたどり着いた段階で戻ることはできなくなってしまうので、詰んだと思ったら少し前のセーブデータからやり直してみましょう。

脱出成功後にTo be continued...の表示が出るのに(しかも続編で意味を持ってくると思われるロッカーのパスワードまで入手できるのに)結局続編にあたる作品が出てなさそうなのだけ残念です。



今回は短めですがここまでです。
短い中に面白いギミックを仕込んだ作品だと思うので、ぜひプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。今回はパルソニックさんの「決戦前のヒトリ~主人公以外全員『カップル』がいるアドベンチャー~」のレビューをお送りします。

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ジャンル:ラブコメ推理パズル?
プレイ時間:私の初見プレイでTRUE ENDまで1時間半
分岐:エンディング2種
ツール:RPGツクール
リリース:2022/9


さて、本作の作者であるパルソニックさんと言えば、有名作「かわいいは壊せる」でお馴染みです。(私もそのうちプレイしなきゃな~と思っていつつ実はまだプレイしていないのです)
ある日ふりーむをいろいろと探索しているとき、たまたま本作が目に入りました。論理パズルは割と好き(得意分野でもある)ので興味を惹かれ、作者名を見ると見覚えのある方だったのでびっくり。早速ダウンロードしてプレイしてみたところ、バカゲーに見えてかなりよく練られた作品だったので今回ご紹介しようと思います。



いつものように本作の大まかな内容を最初にお話ししましょう。

主人公であるヒトリは最強の勇者。姫であるヒロを救うための冒険を続け、ついに魔王との対決に挑みます。ところが最強であるヒトリの力もわずかに及ばず、捨て身の攻撃でも魔王をしとめるには至らずに負けてしまいます。
そんなときに突然現れたのは神を名乗る人物。”世界の真実”を解き明かせばヒトリを生き返らせてくれると言います。当然その条件をのんだヒトリでしたが、要求されていたことはなんと、この世界において誰と誰がカップルであるかを全て突き止めることだったのです。
誰と誰が付き合っているのか、怪しいところを調べて証拠をつかみ、世界の真実を見つけ出せるのか、ヒトリの第2の冒険が始まる……

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というわけで本作は推理ゲームとなっています。
魔王との決戦前夜、パーティーを組む仲間たちや村に住む人々の家を探っていく勇者のヒトリ。勇者というよりは泥棒みたいです(普通のRPGでも割とよくある光景ですが…)。そして翌朝には村人たちも起きて活気のある村を再度探索、会話などからヒントを探っていきます。一見ラブラブに見える2人が本当にカップルであるのか、あの家に住んでいるのは誰なのか、誓いのアイテムを持っているのは誰なのか……、いろいろ考えることがあってこの推理部分が良くできている作品だと思いました。

特に、本作においては魔王戦後の答え合わせで間違えると再度神に決戦前夜まで戻されるループシステムを採用しています。このシステムがなければ解けないような謎が仕掛けられているのが上手いなと思ったポイントでした。翌朝手に入るはずの情報をもって夜のうちに行動を起こすとどうなるのか、夜と朝で会話内容の整合性をとるにはどういった前提が必要なのかなど考えながら進めていきましょう。
RPGツクールのシステムもうまく生かしていて良いですね。

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という感じで、推理部分がなかなか難しめに作られています。ミスリードを誘う展開もあったりして、1度や2度では正解にたどり着けないでしょう。(私は5答目で正解しました)

しかしこのあたりの推理の苦手な方でも安心な要素として、神からのヒントがあります。2度目以降誤答するごとに1つヒントがもらえます。そのまま答えがもらえるわけではありませんが、ヒントの通りに行動してみれば決定的な場面に立ち会うことができるでしょう。



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さて、本作のゲーム部分は今まで書いてきたように結構真面目に作られており、解きごたえがあるのですが、全体的な雰囲気を見るとかなりふざけています。神様の俗っぽい言葉遣いだったり、自分一人だけ相手のいないヒトリが嫉妬に狂ったり、分かりやすすぎるすれ違いカップルだったりには苦笑させられたりも。ループものにおいて主人公が過去の周回の経験をもとに現在の状況についてツッコむというパターンは多いですが、それがこんなに笑える作品は珍しいと思います。

さらになんとおしがまイベントあり(特にそれがメインとかじゃないです)。こんなクレジット表記初めて見ましたよ…(笑)
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ちょっと気になる点について。内容というか宣伝文句についてなんですが、「論理パズル」というのとはちょっと違うかなと思いました。私が最初に見たときはそのように紹介されていて、論理パズルだったら得意分野だなと思って手を出したのですが、本作はサスペンス・探偵もの寄りなので期待していたものとちょっと違いました。論理パズルというと、Dominion's Restさんの「魔女っこと封印の石版」ですとか、にほへさんの「ミミックロジック」などを思い浮かべます。こうしたゴリゴリのパズルとは違った作品でしたが、別の意味での面白さは十分にあったので結果オーライです。

あと、解答画面の操作方法がやや直感的じゃないかなと感じました。男性キャラの位置はデフォルトのまま変更できず、女性キャラの位置だけ変更できるようです。つまり画面上で右半分だけしか操作できないのです。慣れるまで全然思い通りに動いてくれませんでした。

そういえば、本作でいう”カップル”は男女の組み合わせのみです。同性の組み合わせがあったら難易度が爆上がりしていたと思うので助かりました。
ゲーム内でいう”カップル”の定義もしっかり提示されるのでそこに悩むことはありません。ゲームとして楽しみやすくなっていると思います。



本作のエンディングは2種類あります。
1周目はTRUE ENDは無理なので普通に頑張ってエンディングまで行きましょう。クリアデータを使えばTRUE END回収は難なくできるはずです。ある真実が明らかになるTRUE ENDでは、ヒトリの最後の行動が180度変わります。ヒトリの苦労が報われるのか、ぜひいろいろ試して頑張ってみてくださいね。
どちらのエンディングでもラブコメの王道的な展開で楽しい気分で終えられる後味の良い作品となっています。

それでは。

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