フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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アドベンチャーゲーム

こんにちは。今回はアコックソフトさんの「だびぽん」をレビューしていきます。

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ジャンル:デジタルオカルトホラーADV
プレイ時間:1周2時間、フルコンプまで6時間程度
分岐:大きく2つ、1周目ルート制限あり
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2016/10
備考:15推


前回レビューの「絶望の螺旋」に引き続きオカルト系の作品となります。穏やか目ではありますが一応ホラー表現があるので苦手な方は注意。


さて、いつも通り大まかにあらすじを説明しましょう。
主人公継見(つぐみ)ヒロキは大学生。友人の茅野凛太郎(かやの・りんたろう)はオカルトマニアかつコンピュータの技術もあり、大学のある禎尾(さだび)町にある心霊スポットをテーマにしたオンラインゲーム「SADABI怪談オンライン」をほぼ一人で開発している。ヒロキはテストプレイヤーとして開発チームに参加しているところだったが、なんと最終マップのモチーフとなる「禎尾森放送局」へと取材に行った茅野が消息不明に。放送局まで彼を探しに行ったヒロキは頭から血を流して地面に横たわる茅野を発見。幸い息はあるようだったが、少し目を離した隙に茅野の姿を見失ってしまった。自力で遠くに逃げるなど到底不可能そうに見えた茅野はなぜ消えたのか。直後に姿を現し、何か知っていそうな発言をした女子高生の正体は? 禎尾森放送局のマスコットキャラクター、だびぽんに関するオカルトめいた噂との関係は? 誰が味方なのかもわからない中、同じく開発メンバーの橘三鷹(たちばな・みたか)とともに茅野の捜索を続けるヒロキの努力は報われるのか……

といったところでしょう。

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本作におけるオカルトの特徴として、"デジタル"が挙げられるでしょう。だびぽんの持つ力は、携帯電話やパソコンなどを通して現実世界に発現します。オンラインゲームの製作などを行っていた茅野らはまさにいい餌食です。
しかし電子機器に触れたものが全員呪われるわけではありません。いったい何がトリガーとなっているのか、だれがどんな目的で力を行使しているのか、といったあたりの情報は隠されていて、終盤にならないと明らかになりません。この辺の情報の隠し方、提示の仕方が上手い作品だなと感じました。

だびぽんの謎については、かなり複雑な真相になっていると言えます。1周では真実にたどり着くことはできないでしょう。というかシステム上できません。本作のルートはメニュー内のフローチャートに示される通り大きく分けてA,Bの2つ。それぞれにさらに2~3のエンディングと多数の一発ゲームオーバーがありますが、初回ではBルートへの選択肢は出現しません。AのNormalエンドを見ることによって解放されます。若干メタ的な内容も含むので、変則ループものともいえるかもしれません。

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茅野の捜索、そして呪いの解消のためにはノベル形式の選択肢だけでなく、探索や謎解きを成功させなくてはなりません。上の画像のように、部屋内の調査をしてパスワードの手がかりを探してみたり、あるいはほかの開発メンバーとSADABI怪談オンライン上でイベントを進行させたりといった内容があるのですが、難易度的には高くありません。クリックできる範囲でくまなく調査すればヒントはすべて手に入りますし、そこからパスワードを導き出すのも簡単でしょう。壁を調べると出てくる落書きの中にもヒントが隠されていて親切です。
むしろ本作において難しいのはノベルパートで適切な選択肢を選ぶことです。すぐにそれとわかる一発ゲームオーバー選択肢以外にも、どっちが正解か分かりにくいものや、そもそも今後の分岐に影響するようには見えないけれども正解は一つしかない選択肢などもあり、一発で正規のエンディングに行くのすらだいぶ難しいでしょう。また、本作は序章~第9章までの章ごとの構成となっているのですが、分岐は章内だけでなく、過去の章での選択の影響もうけます。第6章あたりでゲームオーバーになっちゃうな~と思ったら、直前ではなくもっと前のセーブデータからやり直してみるとよいでしょう。

TRUEエンドへの道はさらに厳しいものとなります。ゲームオーバー選択肢は当然すべて回避したうえで、全員生存させるための各キャラクターの行動を考えなくてはなりません。正直エンディング回収後も何が必要なフラグだったのかつかめていない状態だったので、もう少しやさしくするなり攻略情報をどこかに書いておくなりしてくれたら親切だったなと思いました。
しかしこれだけ苦労した甲斐あって、気持ちの良いエンディングが見られます。まあ、そんな簡単に許せるん? と思わなくはないですが、このくらいなら十分ありでしょう。


本作をプレイしていて少し気になったのは、時々挿入されるミニゲームです。主人公たちがオンラインゲームの開発とプレイをしていて、それが本筋の謎にかかわってくるからゲームという世界観を表現しておきたいというような意図は分かるのですが、突然謎のすごろくが始まったり終盤の重要なイベントが結局運ゲーだったりすると、これはなんのゲームだったっけ? となってしまった感は否めません。だびぽんが勝手にオンラインゲーム上でのイベントを開いて、ヒロキたちで対処という仕掛けはいいと思うので、そこだけちょっと惜しいかなと思います。
あとは、分岐多数で難易度が高いので、既読スキップは欲しかったというところでしょう(スキップはあるが既読も未読も全部飛ばされてしまう)。



というわけで今回はだびぽんのご紹介でした。
誰が味方かもわからない中、目まぐるしく入れ替わる状況とホラーならではの緊張感。そうしたものが好きな方ならきっと本作を十分楽しめるでしょう。ボイスもついてますよ。
それでは。

こんにちは。今回は窓際ななみさんの「絶望の螺旋」のご紹介です。

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ジャンル:オカルトサスペンス
プレイ時間:2時間
分岐:基本1本道
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2021/5
備考:15推


今回の作品はまた特殊で記事のジャンル分類にも悩みました。基本的にはノベルゲームかなと思いますが、通常のノベルゲームでは絶対に必要のない攻略要素があるため今回はアドベンチャーゲーム扱いとしています。
その特殊な要素ですが……まずはこちらのゲーム画面を見ていただければわかると思います。

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なんとゲーム画面が常に4分割されています。それぞれの画面は普通のノベルゲーム的に動かすことができます。上の状況では、今は右上のターンです。ある程度話が進むとまた全体から話を進める人物を選択しシナリオが進行していくことになります。
4分割されたこの画面構成を見て、私はEYEZMAZEさんのMEET INを思い出しました。
MEET INでは4人家族で協力して謎解きをして集合することを目指すミニゲームでしたが、本作ではある学園で起こった呪いを解消するために試行錯誤して調査するという内容であり、MEET INと比較するとボリュームもかなりあります。

さて、この4つの画面で見られる話は、1つの物語をそれぞれ別の人物の視点で見たものになります。つまりは群像劇の同時進行的なものと思ってもらえるとよいです。
さらに、これらの4つの画面はお互いの進行に影響しています。ある一つの画面の話だけを進めようと思っても、「まだ時間になっていない」というような感じで止まってしまいます。ほかの画面のイベントを見て話が同期していくと再度進行できるようになっていくのです。
それだけでなく、特定の視点でタイミングがそろうとその2人(以上)の話が合流し、5つ目の画面イベントが起こることもあります。これこそが複数画面で物語を同時進行する本作の真骨頂と言えるでしょう。
終盤における呪いの根本原因対処のためには、操作可能なすべての画面で特定のシーンに持ってきたうえで行動を起こす必要があります。割と条件が厳しめなので、最初の数回は見逃してループになる方も多いでしょう。この仕組み、川崎部さんのSCE2のエンディングを思い起こします。
ゲームの作りが特殊なためか若干動作が重いように感じられますが、それに見合うだけの演出効果のある仕掛けとなっているでしょう。

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↑画面連動イベント中


話の内容にも触れましょう。
舞台となっているのは琴羽(ことはね)学園。2年生の樫山勇治(かしやま・ゆうじ)と若咲千草(わかさき・ちぐさ)は幼馴染。最初のうちはすれ違い系ラブコメか?というような感じで進めていたのですが、なんとゲーム内初日にして超絶修羅場に遭遇してしまいます。……え?これってそういう話だったの?
この事件で大きなショックを受けた千草に、謎の少女が誘惑をかけます。「彼を奪われたくはないだろう…?」と。その誘惑にあらがえなかった千草は”絶望の螺旋”へと引きずり込まれることになります。

それと時を同じくして、学園長から”学校のトキコさん”が出るといううわさの調査を依頼された睦月十歌(むつき・とおか)と天乃川夕美(あまのがわ・ゆみ)。霊能力という力の存在が認められるようになったこの世界で霊能力関係の事件を引き受ける探偵である彼女らは、学園へ調査に乗り込みます。
順調に視察を進める中、一人になった隙を突かれて誘拐されてしまった夕美は、霊能力について熟知している彼女にすら信じがたい話を聞かされるのだった。

ここから先は、先述したように各画面を同期させて攻略しなければ同じ内容をループしてしまいます。ぜひあなたの目で確かめてください。何もかもすっきり解決してハッピーエンドとはいきませんが、勇治と夕美がお互いに干渉できた理由などが夕美の聞かされた謎の話と一緒に説明されたりするのでそのあたりが気持ちいいポイントですね。
この謎をどれだけ早い段階で解けたかで本作のプレイ時間は大きく左右されるでしょう。


さて、本作をプレイして気になった点ですが、まずはこの特殊なシステムのために通常のノベルゲームでは使用可能なシステムが使えない点はやはり痛いです。具体的には、文章のスキップができません。また、セーブは一応できるもののかなり不自由。またバックログも全画面分まとめて少し表示されるだけなので、プレイしにくいと感じたことは否定できません。
もう一つは、やや世界観の説明不足を感じたという点です。冒頭で霊能力の存在が明かされますが、ほとんどの人には使えないし役にも立たない、ごくわずかの人には凄いことができる、という程度の説明で、では一体何ができるのか、都市伝説との関係は?といったあたりが不十分だったのではないでしょうか。なので最後の解決法が若干力業のように感じます。これは本作内における設定がかなりスケールが大きいものを含んでいて回収しきれていないのも関係ありそうです。黒い霧や謎の計画について解決していないので、これは続編で解決とかのパターンかな?という読後感です。


とはいえこれらの点は、4画面を同時進行して話を進め、しかも単に並列で進むのではなく相互に影響して謎解きをするという本作の本質的魅力には関わらない部分ですので、気になった方はぜひプレイしてみることをお勧めします。15推ということで、ゲーム起動時に警告文章があったりしますが、直接的なグラフィックなどはなくそこまでショッキングなシーンもないためプレイしやすいと思います。
また、画面が常に分割されて表示される仕様のため、画面サイズは大きめにしてプレイすることを推奨します。

それでは。

今回はHappy Bad Endさんの「私の名前を呼びなさい!」のご紹介となります。

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★favo
ジャンル:脱出アドベンチャー
プレイ時間:1時間~1時間半程度
分岐:5つ
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2021/8
備考:15推、残虐な描写あり


さて、「そしてパンになる」(R18版)以来となる年齢制限ありの作品のご紹介です。とはいっても本作において制限がある理由はエロ方面ではないです。主人公のシエラちゃんがとにかく酷い目に遭わされる。つまり暴力や残虐描写が制限の主因です。殴打や流血なんて甘い甘い。そんな感じなので、タイトルとスクリーンショットから、「俺様系彼氏とのラブコメっぽい話かな?」みたいなテンションで話を進めると痛い目に遭います。これはガチの警告なので、プレイされる方は十分な覚悟をもってStartボタンを押していただくようお願いします。
ReadMeでは15歳以上推奨となっていますが、正直15禁の「まい、ルーム」よりもずっとキツいと感じます。プレイして最初の感想が、「ノベコレってこれ掲載できるんだ…」となる程度には人を選ぶ作品です。


と、十分警告したので作品の中身のお話に移りましょう。
本作の目的は「ヤンデレマッドサイエンティストのリエルに監禁された主人公のシエラが、何とか隙をついて脱走する」と一文で説明できます。毎日12時から17時までの間が探索可能な時間です。その間に何とか必要な情報と玄関の鍵を手に入れ、脱出しなくてはなりません。この探索の緊張感を高めているのは、(入っちゃダメと言われた場所で)リエルに見つかると"お仕置き"されることでしょう。"様子を窺う"でうまくリエルとの距離を探りながら、時にはセーブ&ロードを駆使して監視の目をかいくぐらなくてはなりません。
逆に言うと、アイテム探しや謎解き自体は難しくありません。クリックポイント探しなどはないですし、マップ移動も選択肢でできます。暗証番号入力なんかがちょっとあるくらい。その分、よりリエルとのエンカウントが怖いんです。実際に誰か知らない人に監禁されたとして、出口を見つけるよりは犯人の監視をかわす方がずっと大変でしょうからね、ホラーっぽさの感じられる部分でした。

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このシステムの面を見ても、よく作りこまれているなと感じました。作者さんの公開作を見るとふりーむにもノベコレにも本作を含めて2作だけ。2作目にしてこの快適なユーザビリティーを実現したのなら、ゲーム制作においてセンスのある作者さんなのでしょう。
探索時、常時現在地が表示され、"見つかってはいけない"エリアなのかがすぐにわかるよう色分けされている、"状態"をクリックすることで現在のシエラの状態と特殊効果を確かめることができる、"考える"機能(実質ヒント機能)が利用可能で分かりやすい位置にあるなど、相当親切なつくりになっています。要望があるとしたら、マップ上ですでに入ったことのある部屋には名前がついてほしい、ということくらいでしょうか。


さて、システムを説明したところでシナリオの話に移ろうと思うのですが、今回は私の初見プレイ時に脱出成功するまでの心境を中継する形式で書きますね。重要なネタバレがある部分は文字色を透明にしていますので、読むときは反転してください。

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チュートリアル完了

(なるほど、相手はヤンデレストーカーが悪化して似た他人を誘拐監禁するに至ったのか。何としても脱出させてあげなくては)

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1日目探索中

(これやたら緊張感あるな…入っちゃいけない部屋で鉢合わせするのがすごく怖い。"周囲を窺う"で時間経過しないのありがたいな)

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2日目探索中

(よし、棚のねじ外しに成功。次は暗証番号か…まだ東の方に入ってない部屋あるし明日はそこ探索かな)

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3日目資料室探索中

(あ、この感じ、多分調査強行したらなんか物音立てちゃってバレるやつだ! どうしよう。まあでも説明見る感じやらかしても1発アウトにはならなそうだしセーブ分けたしやっちゃうか!)

バレる。お仕置き部屋へ連れていかれる

(えっっボイスあるの? パートボイスってやつかあ。 お仕置きはう~ん、首輪はめられた…。まあでもこれくらいなら耐えてくれシエラちゃん! 気丈な感じの声だし頑張れ。探索が強制的に終了になっちゃうの痛いな)

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4日目資料室探索中

(昨日ノートは手に入れといたから今日は音を出さずに調べられるな…なるほどもう少し資料が必要なのね)

物置探索中

(あ、2日目くらいに調べようとしたら後回しにしよって言われたのお仕置き部屋の入口だったのね…それはそれとしてこれで暗証番号分かったぞ!)

鍵を手に入れ玄関へ…リエルに捕まる。お仕置き2回目
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(割と早めに脱出の方法が分かった気がするが、隠れながら玄関に行くの難しいな…もしかしたら鍵入手後にまた何らかのイベントを起こさない限り玄関で鉢合わせしちゃうようになってるのか?)
(ああ、お仕置き2回目痛そう…これは…)

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5日目再度鍵を手に入れ玄関へ…捕まる

(あ、これやっぱり鍵をとって玄関直行しちゃいけないパターンかな?)
(今回のお仕置きは…跡は残らなそうだし前回よりマシ、なのか? もうここまで来たらいっそ先にバッドエンド回収しようか。お仕置きは何回目まであるんだろう)

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6日目、先にバッドエンドを見ることに。お仕置き4回目。
シエラの左腕を切断する旨を伝えられる

(ええええっ!!! 酷い!! なんで! シエラちゃん謝って!
そう、気弱になるのは分かる。もう変なことしないってア"ア"ア"ア"
まじかまじかえ~!! ちょっと待ってまじかこれ辛い うっわ
うそでしょこの展開はR18でしか見たことない…
声優さんの演技凄すぎる。なんでこんなシーンの台詞がこんなにも真に迫ってるんだ!)

(このシチュエーションは、フェチとしては私にはあまりにレベルが高すぎる…)

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7日目、【左腕の無い】立ち絵を見る

(つらい…しかも探索めちゃくちゃ不利な条件になってるし…。でもここまで来たらバッドエンドを避けるわけにはいかない。ごめんねシエラちゃん…許せ…)

お仕置き5回目

(やっぱりそうなるか……。私だったら発狂間違いなしだな…。)

ここで選択肢

(ここで分岐するのは明らかだなあ。まずはとことんバッドエンドな方を見てみるか。…………
時間を巻き戻して脱出させてあげるぜ。絶対に。)

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4日目のデータをロード。再度脱出を試みる

(よし、鍵の回収に成功。あとは廊下を通って玄関に向かうだけ)

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玄関前で待ち伏せされる。再度お仕置き2回目

(何回かタイミング測ったけど捕まるなあ。今回はまだ日数に余裕があるけどどうすれば逃げられるんだろう。あ、北側の部屋に鍵かかってて入れなかったところあったなあ。今鍵束持ってるわけだしそこで何かしらのイベントを起こせば脱出できるのかな)

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5日目、リエルの日記を読む。脱出成功

(ようやく脱出できた! 素敵な笑顔ありがとうシエラちゃん! しかし鍵を持って移動するとき見つからないか緊張したなあ。さて、エンディング回収しますか)

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はい、というわけで探索中にはホラーゲーム並みの緊張感、お仕置き中にはグロ展開への恐怖感とシエラへの憐憫を味わうことができる内容になっております。

しかしここまでの内容のみでは終わらないのが本作。エンディングのコンプリートを目指します。
上のプレイ内容で回収できたエンドは1と5の2つ。お仕置き5回目の時の選択肢でもう一つ、時間切れでもう一つ見られるだろうことは容易に推測できたのでエンド2,4に関しても難なく回収できました。

さて問題はエンド3です。いろいろ思いつくことを試してみてもなかなかたどり着けません。その過程でエンド1や2のスチルにはお仕置きの回数による差分が存在していることに気付くなど、細かい部分の整合性まで感じ取ることができました。

30分くらいは試行錯誤してもダメだったので、同梱の攻略情報を見ることに。
ああ~なるほど。その発想は一応あったけど、先に自分の部屋で調べてないとダメなのね! では回収に行きますか!

そしてエンド3を見た私はこの作品の魔力に取り付かれてしまいました。
ダントツでこのエンディングが好きですね。あの強気で希望を持っていたシエラの姿は遠い過去のものに。このダークさが私のツボにはまったようです。物理的には可哀そうなことになってないしね!

それにしても本作の声優さんがすごすぎてびっくりしました。特にエンド3とお仕置き4の演技が本当に迫力と説得力を持って本作の物語の悲惨さを伝えてきます。冒頭では気丈な態度を見せていたシエラが見る影もなくなるくらいのボイス、それと対照的に作中通してずっと気だるそうな喋りを続けるリエル。気になったのでクレジットにある声優さんの名前を検索してみると、シエラのCV担当の方は完全にエロ方面で活躍している方のようで、なんだか納得。リエル担当の方もフリーのナレーター業の方ということで、上手いのも頷けます。
(念のため繰り返しますが、本作には性交シーンなどはありませんし、それを連想させる要素もありません)

ちなみに同梱の攻略情報はめちゃくちゃ親切、逆に言えば完全に答えが載っているので、自力で頑張りたいという方は見ない方がいいかもしれません。
これによると私が1周目に脱出できなかったのは単に運が悪かっただけで、日記を読むのは脱出に無関係だった模様


とても万人に薦めるわけにはいかない本作ですが、可哀そうな目に遭う女の子にグッとくるという方にとってはドはまりするでしょう。逆にそういう状況は悲しくなっちゃうという方は大やけどする前に退散してください。


それでは。

こんにちは。今回は月の側面さんの「夕暮れ叙事詩」のご紹介です。


ジャンル:現代探索ホラーアドベンチャー
プレイ時間:1時間半
分岐:なし(ゲームオーバーあり)
ツール:RPGツクール
リリース:2017/8

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本作は、一人の小説家にかかわる物語を追うアドベンチャーゲームとなっています。最近はホラー系の作品の記事が続いています。本作はその中でも割としっかりホラー要素がありますが、そんなに得意でもない私でも十分クリアできたので、苦手な方でも物語を楽しめる範囲でしょう。


本作の物語は、主人公の高月秋乃が謎の少女から「近くの石碑に来て」という電話を受けるところから始まります。不審に思ったもののその声にどこか聞き覚えがあるようにも感じた秋乃は、指示通り石碑に向かいます。そこで何かを埋めた跡を発見した秋乃は掘り返してみると、なんと先ほど電話をかけてきたと思しい少女の遺体が埋まっているのだった…。
さらに電話で謎の男から、少女の名前は帷(とばり)ということを聞き、また帷の遺体を持って家に来いと要求される秋乃。困惑しながらも指示に従って男の家に行くと、なんと目を離した隙に帷が動き出した。さらには家の中に散在していた帷の日記らしきメモ。男に監禁されていたと読めるそのメモの内容に、秋乃は帷を救うことを決意する。

このあたりまでが本作の導入部分と言えるでしょう。帷はなぜ男の家にいたのか、そもそも何者なのかといったあたりは物語の大切なテーマとなります。
本作ではそれ以外に、"戸隠桂馬"という作家の人物像や、その作品たちも非常に大きな役割を果たします。彼はどうやって作品を書いていたのか、帷とはどういう関係なのかというあたりが物語中盤以降の肝となってくるでしょう。


概要の説明はこのあたりにしておいて、本作をプレイした感想としてまず思うのは、雰囲気などの演出が優れているなというところです。冒頭の、秋乃が石碑のところに向かう場面。山道を歩いていくのがオープニングムービーを兼ねるような演出となっており、単純ながら面白い手法だなと感じました。イラストもすごくかわいらしいですね。土の中に埋まっていたはずの帷ですが、どこか美しいと感じられるスチル。動き出してからの寡黙なキャラクター性も謎に包まれた感じを出していてストーリーに合っていたと思います。
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その他でいうと、メモの中で足音が迫ってくる場面。帷のメモがそのまま秋乃たちの世界に影響してコツ、コツと得体の知れない足音が迫ってくるのが上手かったと思います。その後はそのまま探索ホラー定番の追いかけっことなるのですが、狭い場所で切り返して脱出する必要があり結構難しいです。その他にも何度か追いかけっこのシーンがありますが、当然どれも一発ミスれば死亡の上追手の速度も速いので、そこに来るまでの探索中にしっかりとマップの通路を把握しておかないと逃げきれないでしょう。頻繁なセーブで自衛しましょう。
また、終盤の病院で患者たちを避けるところもかなり難しかったです。ちょっと観察すれば、簡単な行動パターンをしていることがわかるので、落ち着いて安全なルートを考察し出口に向かいましょう。


さて、本作の特徴的な要素として、ストーリー中の多くの場面で見ることのできる"フェイスチャット"があります。進行フラグを進めるとよく左下に、その場面のタイトルっぽかったり、人物の感想っぽかったりするテキストが表示されます。私は初回プレイでは、フラグが進行したことを示したり、行動指針のための親切な設計なのかなと思っていたのですが、後からそこをクリックできることに気付きました。吹き出しアイコンをクリック、あるいはキーボードのC押下でちょっとした会話を見ることができます。なかなか面白い仕掛けですが、いかんせん気付きにくい。readmeにもこの機能の紹介は一応あるのですが、イベントの発生のさせ方が書いていなかったのでスルーしちゃってました。というわけで皆さんは見逃さないようにしてくださいね。


本作において様々な怪奇現象やホラー的要素が現れる原因としては、"小説を書く者の恨み"のような部分があります。ファンレターはたくさん来るが、その中にはどれ一つとっても作家である自分を理解してくれる内容はない。こうした状況がまた孤独感を強めたとも読めます。なるほどと思いますし、本作における帷の悲劇性をよく表しているなとも感じるのですが、同時にゲームの作者もこうした感情を持つことがあるのだろうかと少しだけ気になりました。私は小説ではありませんが、ゲームについてこうして感想やレビューを書いているのであまり他人事ともいえないですね。もし私が書いた内容が作者の意図からして的外れだったとしても、そう感じる人もいるんだなあくらいに思ってもらえたらうれしいです。


脱線はこのくらいにしておいて、本作の重要な登場人物は他にも、秋乃の親戚(はとこ)の朱莉と、その友人の千歳がいます。彼女らもキャラクターが立っていて、フェイスチャットの会話の幅が広がり良いですね。さらに終盤では彼女らの友情、過去といったところに帷が干渉していきます。この展開については、なぜ帷は朱莉にも手を加えるのだろうという疑問が先立ってしまいます。帷が秋乃にこだわる理由については納得感もあったし、良い話だなと思えたのですが朱莉と千歳の過去も知っているとなるとこれは単なる超能力ではないかと感じてしまいます。秋乃については(中盤くらいで見当がつくと思いますが)プレイヤーにしっかりと因果関係が見えて気持ち良いです。私はやっぱり、ゲームの中といえどなんでそうなるか全くわからない理不尽な部分はあまり好きになれないみたいです(そのシュールさが逆に笑えるコメディなら別なのですが)。


といろいろ書きましたが、エンディングがとても綺麗で、冒頭部分の秋乃の行動が回収されていたので(私はそれまですっかり忘れていました)、読後感もすっきり良好な作品です。きちんと理解者に出会えてよかったですね。

それでは。

こんにちは。今回は皐月の夢さんの新作「ミライカガミ」をご紹介します。

(2023/6/20追記:現在、本作品のフリー版は公開を終了しています。追加シナリオ、スチルの入った製品版が公開中です)


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ジャンル:サスペンスアドベンチャーゲーム(ちょっぴり陰鬱)
プレイ時間:1時間半、フルコンプで2時間強
分岐:Bad3、Happy1
ツール:WOLF RPGエディター
リリース:2022/1


まずは本作のあらすじを軽くまとめておきましょう。
柊イツキと有明アカネは高校2年生。ともに吹奏楽部へ入っており親友でもある彼女らは、進路に関する雑談をしたりする中で、10年後の夢を見られるというおまじないを試すという話になる。信じてはいなかったイツキだが、夢の中で本当に自分が10年後の自分になっていることに気付く。しかしなぜか見知らぬ男と手錠につながれ、燃え盛る倉庫の中に倒れているという恐ろしい状況。もう2度とおまじないを試すことはないと思うイツキであったが、なんとアカネの見た10年後は棺桶の中だったという。アカネの死を阻止するべく、イツキは再び10年後の世界へ行って事件の真相を突き止めることを誓うのだった…。

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ちょっと長くなりましたがこんなところでしょう。本作のタイトルとなっている「ミライカガミ」は、この10年後の夢を見られるというおまじないのことです。手鏡に口紅で名前を書いて枕の下に入れておくと、自分の10年後の夢が見られるという都市伝説風のおまじないです。ホラーの導入としてもすごくよくありそうな内容ですが、本作はホラー要素はほとんどありません。しかし、"ホラー風"の演出は所々に仕掛けられており、本作の面白いところの1つでしょう。タクシーの運転手の話とか、めちゃくちゃホラーっぽいのに直後に脱力系のオチがあってめちゃくちゃ意外でした。
また、調査の最終局面では暗い室内を探索する場面があります。ここではホラー的ギミックもありますが、これも苦手な人にも問題なくプレイできる範囲でしょう。しかもこのギミックが物語の進行にかかわっており良いですね。

また、本作では登場人物のキャラクター性や背景などがきちんと描かれているのも良いですね。最初の夢の時点ではさっぱり正体の分からない謎の人物であった灰谷ムツミ。イツキのことを知っている風だけれども別に未来の友人とは思えない態度には、最初のうちはコイツ誰だよと感じますが、居酒屋調査でのいたずらだったり、メロンパンのエピソードだったりといったものが挟まっていくうちに親近感の持てるキャラクターになっていきます。イツキの依頼を受けて調査に付き合ってくれる理由が語られるシーンなどはおおっと思いました。
その他にも、被害者であるアカネ、吹奏楽部の先輩でアカネと付き合っているイオリ先輩、先輩と以前に付き合っていたらしいミナコ先輩なども魅力的に描けており、イツキが現在時間での彼らとの交流から10年後の世界で調査を頑張るエネルギーをもらう様子も納得感のあるものでした。

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さて、無視するわけにはいかない事件の捜査パートのお話です。
現在と10年後を行き来しながら情報を仕入れ、真相解明に向かうというのは先に述べたとおりです。この捜査パート、難易度という面では高くありません。特定の場所を調べたり、簡単な暗号を解いて鍵を開けたりすることでフラグが進行します。Bad End1、Bad End2の分岐に関しても、かなりわかりやすいと思います。詰まった場合でもreadmeに攻略ページへのリンクがあるので安心です。
また、夢(10年後)の世界と現在の世界の2つを交互に探索し調査するという仕組みのため、情報が次第に手に入ってきて真相に次第に近づいていくという演出に関して、とてもよくできていると感じました。
そしてBad End3とHappy Endの分岐ですが、ここはきちんと探索をしておかなくてはなりません(とはいっても難しくはありませんが)。主にムツミさんに指示を受けて調査する夢の世界ではなく、イツキ自身が動いて立てるフラグがHappy Endへのカギを握っているため、自らの手で未来を切り開いたという達成感を得ることができるでしょう。ちなみにその反面、3つのBad Endはどれも救いのない内容です。特にBad End3は落差があるのでわりとショックでした。


というわけで今回は「ミライカガミ」でした。最後のシーンのムツミさんがかっこいいのとアカネの貢献が素晴らしかった(時差をうまく活用してますね)のでぜひHappy End回収までプレイしてみてください。ちなみに、作者さんの前作「親愛なる○○へ」がプレイ済みだとにやりとできる場面多数です。陸と陽介が仲良さそうなのを見ると、良かったな~という気持ちになります。また、現在と10年後と言いながら、生年月日の設定を見る限り2022年なのは10年後の世界のようです。でないと"事故物件"も時効ですね。

それでは。

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