フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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アドベンチャーゲーム

こんにちは。今回は、コトリノスさんのMimicをご紹介します。

mimic1

ジャンル:可愛い系脱出ゲーム
プレイ時間:私の初見ノーヒントプレイで脱出まで1時間半ほど
分岐:なし
ツール:Unity(ブラウザ・iPhone・Android版あり)
リリース:2021/3


今回ご紹介する「Mimic」は本格脱出ゲームです。操作はいたってシンプル。マウスクリックのみです。ドラッグやキーボード操作不要・PCでもスマホでもプレイ可とお手軽ながら、中身はしっかりとボリュームとクオリティを両立させた作品となっています。

脱出ゲームで何より大事なのは、部屋に仕込まれた謎を解いたときの快感ですよね。分からないなあと悩むのも楽しいですが、ずっと分からないままでは次第にイライラしてきて、最後には投げてしまいます。私自身、脱出系の謎解きはそれほど得意ではないので、これまでプレイした数多くの脱出ゲームの中には、途中でにっちもさっちもいかなくなり諦めたり、攻略サイトに手を出したりしたものもいくつもあります。
しかし本作を作られたコトリノスの作品群は、ちょうどよい難易度に収まっていて解けた時の快感を味わいやすいです。「そんなの分かるか!」と言いたくなるような理不尽・意地悪な展開は滅多にないし、やけにクリックポイントが小さいアイテム探しや、画面の見にくさで難易度をあげるような部分も一切なく、プレイしていてほとんどストレスがありません。一度済んだ謎解きが再度要求されるようなこともなく、いろいろな面で直感に沿った構成になっているのです。もちろん簡単すぎるわけではなく、与えられたヒントを十分に観察し、関連しそうなアイテムが無いか部屋中を探索していく必要があります。
本作でうまいなと感じたのは、脱出間際の最後の謎です。実はプレイ中盤くらいでその形に気付いたとき、「こういうデザインなのか~おしゃれだな」などと思っていたのですが、進行上意味のあるデザインだったことに気付かされ感嘆しました。あとは魚の絵ですね。それを見た時、当然ながら似た形や配置のものを探したわけですが全然見つからず、絵とにらめっこしていたらふとひらめいたときの驚きと、検証してその通りだった時のしてやったりという気持ちは脱出ゲームの醍醐味でしょう。


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そして本作の特徴といえば、グラフィックが可愛らしいところでしょう。作者さんの他の作品はどちらかというとスタイリッシュなデザインだったりシンプルな内装だったりというイメージがあるのですが、本作では色鉛筆画のような優しい絵柄がまず目を引きます。そして画面下にいつもいる謎の小動物。今回は彼が脱出の主人公なのです。彼が閉じ込められるとはどういう状況だったのか、またタイトルの意味なんかも脱出すると分かります。
ちなみに脱出に使うアイテムの中にも、ぬいぐるみ(?)があってなかなか癒しを与えてくれます。この猫のぬいぐるみにもまさかの機能があるので、拾ったアイテムはしっかり詳細画面で調べましょう。本作は所持しているアイテムが自動で使用されるシステムではないので、ここに使えそうかなと思ったらどんどん試していくという姿勢も大事です。
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ちなみに私はブラウザでプレイしましたが、スマホアプリ版では高画質な上ヒント機能も使用可能なようです。ノーヒントでは行き詰まりそうという方はスマホで試すといいかもしれません。

というわけで今回はMimicをご紹介しました。しっかりと骨がありながらも気持ちよく解ける脱出ゲーム、ぜひプレイしてみてください。

こんにちは。
今回は、春紫さんの後輩と先輩と時々殺人鬼をご紹介します。

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ジャンル:ゆるふわサスペンス風ADV(公式より引用)
プレイ時間:1プレイ1~10分、フルコンプまで30分程度
分岐:多数、TRUE ENDも複数あり
ツール:WolfRPGエディター
リリース:2013/12
備考:12歳以上対象


本作はちょっとした笑いありホラーありの短編アドベンチャーゲームです。公式ジャンルは上述した通り、ゆるふわサスペンス風ADVとなっていますが、本作のメインは殺人鬼を突き止めるようなサスペンスでは決してなく、後輩と先輩(酔っ払い)の気の抜けるようなやり取りや、突飛な展開を楽しむなんちゃってホラーとでもいうべきものです。

ゲームを開始すると、主人公が先輩の家で宅飲みをしているシーンになります。しかも先輩はお酒を飲むと面倒くさいタイプで、後輩はめちゃくちゃ絡まれることになります。先輩に相当振り回されても嫌そうな感じがしなかったり、先輩の体や翌日の仕事を気遣ったりしているので、結構親しい感じですね。こんな2人の関係に興味が持てる方なら、きっと本作をたっぷり楽しめるはずです。

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本作の特徴として、1プレイが短いのに比してエンディングの種類が大変多いことがまず挙げられるでしょう。何らかの理由で死亡してしまうBAD ENDだけで7種類。TRUE ENDは3種類、その他にHAPPY ENDなどもあります。私が知っている中でTRUE ENDが複数ある作品はこれが唯一かもしれません。そのTRUE ENDは3つそれぞれでかなり違った展開を見せてくれます(でも着地点はなんだかんだで似ている)。

短編なのに大量のエンディングがある都合上、フラグが立つ場面が序盤から超高密度で存在します。ReadMeにもある通り、頻繁なセーブをお勧めします。
そんな大量のエンディングがあるわけですが、親切なことに同梱テキストファイルにエンディングの回収ヒント(ほぼ答え)が記載されています。詰まった方はぜひ参照してください。私はTRUE END2,3を見るのに使いました。


さて、そんな本作、くっつきそうでまだくっついていない2人の関係をにやにやして眺めたり、幅広い展開に驚いたりするのも良いですが、私が地味に好きなのはフレーバーテキストです。

ko-hai3

2つの立場と屁理屈という装備品は外せません。そうだよね、大人になったら立場捨てて自由に生きたりはできないよね……と無駄にしんみりしてしまいました(笑)
あとは50メートル走7秒に二重跳び90回とはさっきまで飲んでたくせになかなかの運動神経。セーブをしようとメニューを開くと目に入ってくるこういう画面にネタを仕込んでくるこの心意気、好きです。

話はさらにわき道にそれますが、私は冒頭の2人で宴会をしているシーンを見て、いいなあ、と思ったんですよね。純粋に2人の距離感とか関係性がいいなというのもありますが、最近は新型コロナウイルスの影響で気軽に誰かと一緒に食事したりもしにくい状況ですからね。飲酒を含むのはなおさらです。私は別にお酒が好きだったり強かったりするわけではないのですが、飲み会がなくなってしまうとそれはそれで寂しいものです。


ゲームの話に戻りましょう。主人公である後輩くん、冒頭の場面ではよくできた常識人といった感じですが、実は結構変態です。ゲーム内で変態という称号を得るくらいには。でもその変態ネタが嫌な感じがしないんですよね。私が一番好きなエンディングが新たな旅立ちエンドになるくらいです。殺人鬼も出てこずに平和だしね!
ちなみにホラー要素はほんのちょっとです。殺人鬼が突然現れたりはしますが、ほかにびっくり表現なんかはないので、ちょっと苦手な方でもプレイできる範囲かと思います。


まとまりがない文章になりましたが、本作の面白さは伝えられたでしょうか。
酔っぱらった先輩が可愛いと思った方はぜひプレイを。

それでは。

こんにちは。今回は再びねこのさんの作品、ありすえすけーぷをご紹介します。前々回のレビューでは最新作、前回は16年前の作品を取り上げましたが、今回はまた最新作。時代の幅を飛び越えてます。

(12/5追記:アツマール版公開・ランキングボード実装を受け、本作RTAの記事を書きました。通常の攻略は終わってタイムアタックを目指しているという方はこちらへどうぞ)

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ジャンル:ちょっとキワドイ脱出アドベンチャー
プレイ時間:初回15分。フルコンプまで1~2時間
分岐:4つ
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2021/4
備考:12推

本作は、以前紹介したありすすいーぱーのシリーズで、主人公が共通しています。しかしゲームジャンルは結構違っていて、ごりごりのパズルだった前作に対し本作は謎解き脱出ゲームとなっています。
脱出の舞台はなぜか夜の学校。目が覚めたらなぜか出口のなくなった学校にいたありす。5枚のカードを集めて脱出を目指します。夜の学校から脱出といえば、さくらぷりんさんの深夜12時学校でが思い浮かびますが、本作はホラーではありません。この雰囲気はどちらかといえばほりんさんのSheSeeCrisis!が近いでしょう。そう、つまり本作はおしっこ我慢ゲーなのです。


前作の可愛らしさは健在です。またもや相当量のボイスがついて、突飛なシナリオ・可愛らしいイラストと共にその魅力はばっちり。そんなありすがトイレを求め学校内を探索し、謎解きに頭を抱えるシナリオです。フェチがハマる人にとっては神ゲーになること間違いなしです。
露骨に我慢しているイラストはありませんが、謎解き失敗時にはまたしても"聖地"が拝めるスチルが慌てたボイスと共に登場。その他にも探索中のイベントなどでも結構な頻度で下ネタがあり、そうした方面での楽しみ方がメインとなる作品といえるでしょう。前作の時は、タイトルやゲーム説明からそうしたネタが含まれることを想定していなかったので、どちらかというといかがわしいと感じてしまいましたが、本作ではゲーム説明の段階でフェチが詰まった作品だということが明らかですからね。意外とおしっこ我慢に関する性癖は多いのか、なんて思いながら楽しめました。

逆に言うと、本作にはストーリーのようなものは全くありません。校内を探索したりミニゲームをしたり、ちょっぴりアレなイベントを見たりするだけなので、キャラクターの性格とか背景のあたりで物足りなさを感じたのは事実です。特に、主人公のありすが自身を"コミュ障"とか、"陽キャが怖い"みたいに評価していますが、この辺が突飛な設定に映りました。ありすが最初に登場した「ありすとーく」のやり取りを見るとそんなタイプにも見えないんですけどね…

ちなみにエロ系以外にも、ちょっぴり笑えるネタがいろいろ仕込まれています。私が特に好きなのはこちら。
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あ~、はい、そうですね(棒読)
前作でも本作でも見せまくってるけどな!

エンドロールの"親の声よりも聴いた"もなかなかですね。確かにタイトル画面の時点でちょっと思いましたが、まさか作内でそんな言葉が出てくるとは。メタなネタが多めだなとは思っていましたが、さすがに不意を突かれました。


ゲームの部分についても触れないわけにはいきません。本作はティラノスクリプトで作られた謎解きゲームですが、この謎の部分が思っていたよりよく考えられていて、解けた時はすっきりした気分になりました。結構難しいですが、作内でもよく探索すればヒントをもらえるし、どうしても解けなければ作者さんサイトによりあからさまなヒントも用意されています。解けなくてつまらない、もやもやするといったことにならないようしっかり準備されていて好印象です。
ちなみに私は2つほど作内ヒントを見ました。美術室だけはノーヒントで解けたのですが、その他が見当もつかず理科室のヒントを見たところ、なるほどそういう事かと驚き、その他の部屋の謎を解く方向性にも気が付きました。あとは最後の昇降口もヒントを見てしまいましたが、こうしたお助け機能を使った上でも謎解きの快感が得られるような絶妙なヒントにしてあるあたりも上手いですね。

エンディングは、我慢の限界に達してしまうものを含めて4種類。分岐条件は直感的にも分かりやすいので、謎解きさえできればエンディング回収はたやすいでしょう。また、普通の作品なら、エンディングをすべて回収したところで満足するところでしょうが、本作にはアドベンチャーゲームにしてはかなり珍しいやり込み要素が存在しています。なんと、ボイスの回収率や最速脱出記録、ミニゲームのハイスコアなどが記録されるのです。これはすごくいい仕掛けだと思います。目標や成果が目に見えるだけでこんなにやる気になるんですね。シナリオの長さに比して相当量のボイスが収録されている本作ですが、この機能が無ければ全ボイス回収をするモチベーションはなかなかわかなかったでしょう(そもそも未回収ボイスがあることに気付かない可能性が高い)。私が最後まで回収に苦労したボイスは、通常のプレイではまず起きないだろう状況下の教室で聞ける台詞だったのですが、このような状況まで考えてボイスを用意したりデバッグされたりしていることも凄いなと感じました。

ちなみに私のやり込み実績はこんな感じです。
alicee3
SSSランクが存在するのか気になって、相当な回数試行錯誤しました(ミスったらリセットしてやり直したりしたので、記録に残っている回数の倍くらいはプレイしているはずです)。しかし結局バスケットボール1万点×3、アイテム8回収、脱出タイム2分台を同時に達成してもSSランクだったので、これが最高なんじゃないかという結論に至りました。


というわけで「ありすえすけーぷ」のご紹介でした。とってもかわいらしい脱出ゲーム、一度やったら全ボイス回収までやり込みたくなるはず。ぜひプレイしてみてください。
それでは。

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