フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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アドベンチャーゲーム

こんにちは。今回はどこかの箱庭さんの「螢火の庭」のレビューをお送りします。

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ジャンル:和風ホラーアドベンチャー
プレイ時間:初回3時間程度/フルコンプまで5時間程度
分岐:ED4種
ツール:Wolf RPGエディター
リリース:2017/8
備考:第13回ふりーむゲームコンテスト​探索アドベンチャー部門銀賞受賞作



本作は、主人公の秋月ほたるが盗まれた祖父の遺品を取り返すために彼岸を探索して回る和風のホラーアドベンチャーゲームとなっています。

いきなりですが、ホラーゲームの主人公ってだいたいかわいそうな運命を背負っていたりします。作内で物語を進めているうちにそうした境遇が分かってくるタイプのものが多いように感じるのですが、本作では作品の導入段階でほたるの不遇さが明らかになります。

両親は家族の反対を押し切って結婚し、娘のほたるも誕生し幸せに暮らしていたのですが、交通事故に遭い2人とも亡くなってしまいます。結局結婚に反対していた家族たちに引き取られて生活するようになるのですが、祖父以外の叔父や叔母には疎ましく思われています。
しかし唯一の見方であった祖父の晴臣もその後他界。それまで家族で揃って行っていたお祭りの螢火流しも留守番しているようにと言われてしまいます。そんな留守番中、お祭りに乗じて彼岸からやってきた妖怪たちに大切な祖父の遺品を盗まれ、ほたる自身もさらわれてしまいます。妖怪の手から逃れ、おじいちゃんの遺品を回収して此岸に帰ってくることはできるのでしょうか…。


このような導入になっているので、私は本作をプレイし始めてから早い段階でほたるを応援しながらゲームを進めることができました。別に主人公には酷い目に遭っていて欲しいというわけではないのですが、ほたるがおじいちゃんの思い出の品と約束を守って健気に進んでいくさまを見るとやはり私も前向きな気持ちになることができます。
立ち絵やマップ上のドットも可愛らしいですしね。
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他の登場人物たちも和服を着てますし、マップ上の雰囲気も含めて和風ホラーの演出が上手いなと感じます。

そんな他の人物たちも少し紹介しましょう。
まずはほたるが此岸に帰れるように全体を通して協力してくれる朽名(くちな)さん。なぜか常にお面をかぶっています。人間の子をしっかりと此岸まで送り届けるのが仕事だと言ってほたるを送ってくれるだけでなく、祖父の遺品”螢火のおくりもの”探しも手伝ってくれます。彼の素顔は一体どんなものでしょうか。
異国の薔薇貴族もなかなかインパクトがあります。紳士的だが女好きがひどすぎて周りから距離を置かれるようになり、いまでは屋敷で引きこもっているそうです。彼もまた胸の内に隠した思いがあるようですが一体何なのか、それは物語の後半で明らかになります。
その他にも姉妹の温泉宿の女将さんとか、なぜか動いて喋る人形とかお面とか、いろいろな人物(?)が登場しますが、みな可愛らしくて良いですね。


本作のエンディングはゲームオーバーを除いて4つあります。終焉4については序盤のうちに分岐します。せっかく此岸に帰ってくることができてもこれではあまりにも浮かばれないだろうという結果。ぜひ大切な品は回収してから帰りましょう。
その他のエンディングについては中盤以降に分岐します。初見だとそこで分岐するとは分からない箇所もあると思いますので、セーブはいくつかに分けておくといいでしょう。回収できなければ同梱のヒントが役に立ちます。
終焉2と4についてはほとんど同じ展開になりますが、最後の最後で結末が変わってきます。分岐したシーンは時間にして30秒とかそれくらいだと思いますが、このシーンの有無で後味が全然違いました。やはり物語の締めって大事だなあと思わされます。ぜひベストな結末を目指して探索してください。



ホラーや探索アドベンチャーとして見たときの謎解きやアクション要素の難易度は高くはないといったところでしょう。全体を探索していればきちんとヒントとなるものが出てきますし、理不尽な初見殺し要素などもありません。ただし謎解きに関しては公式でヒントが用意されていないので詰まると大変かも。エンディング分岐についてはすぐ上で書いたようにホームページや同梱のテキストに詳しく記載されているので、迷ったら読んでみるとよいでしょう。
ホラー具合についてもゆるめで、ホラーがやや苦手な私でも問題なく最後までプレイできる程度でした。突然怖い画像が表示されるとか大きい音が出るとか、何かに追いかけられるとかはないです。暗いマップを探索したり、予告があっての追いかけられ要素だったり、物が落ちる・窓が割れる程度の表現などはあります。


というわけで今回は「螢火の庭」でした。ホラー要素というよりは雰囲気重視系の作品なので、よっぽど苦手な方じゃなければプレイしやすいと思います。ぜひほたるの物探しを手伝ってあげてください。泣ける!というタイプのシナリオではないですが、じんと心が温かくなるような結末があなたを待っています。

それでは。

こんにちは。今回のレビューはゆきはなさんの「虚ろ町ののばら」です。

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ジャンル:異界探索ホラーゲーム(ReadMeより引用)
プレイ時間:1周3時間/フルコンプまで6時間程度
分岐:ED4種、その他ゲームオーバーあり
ツール:RPGツクール
リリース:2018/10
備考:12推


本作は和と洋の雰囲気の混ざった不思議な異世界からの帰還を描いた作品です。
主人公の境のばらはおばあちゃん大好きな少女。今日もおばあちゃんに会いに行くためにバス停でバスを待っていたのですが……気付いたらバスは壊れているし異常に汚いし、人の形をした亡霊のようなものが出口をふさいでいる始末。この不気味な世界”虚ろ町”で出会った少年、守崎十夜(もりさき・とおや)とともに元の世界への帰還を目指します。


この作品の魅力の1つはそう、圧倒的なビジュアルです。スクリーンショットを見ていただければお分かりでしょう。スチル・立ち絵のみにとどまらず、背景、マップやUI部品に至るまでかわいいというよりは美しいと言える作りこみ。もう何枚かスクリーンショットを貼るのでその美しさを味わってください。
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やっぱり見た目がきれいだと、ゲームを進める原動力にもなりますし、こうして魅力もお伝えしやすいですね。ホラーゲームである以上美しい景色だけでなく、抜け落ちた床や積みあがったゴミ、さびた電車なども登場しますが、それらも単に気持ち悪いだけでなく、どこか綺麗に描かれているのがすごいところです。


さて、それではシナリオの話に入りましょう。
のばらたちが虚ろ町で出会った影のような生物たちはみな、何かに執着している様子。彼らの様子を観察したり、話の通じる者たちにたずねたりしているうちに、どうやらこの”虚ろ町”は現世に心残りのある死者たちのさまよう、彼岸と此岸の境目にある町らしいことが分かってきます。この町を治める”虚ろ様”の所に行って、何とか現世に帰れないかと助けを請うのばらと十夜。
子守唄をねだる子供たちの霊を鎮めるなどの役目をこなして現世への帰り道を教えてもらった2人だったが、虚ろ様によればのばらが無事に帰れるかどうかは微妙なところだという。その原因は現世でののばらの境遇と本人の性格にあった…。

プレイ時間の短くない本作ですが、綺麗なマップを探索していると自然とストーリーが進んで頭に入っていき、長さを感じさせません。そして虚ろ町の探索をする合間に、のばらが現世へと帰れるかの鍵となる過去回想がはいるのが上手いところです。そしてこの過去回想がねぇ、切ないんですよ。「しっかりなんて……できないよ!!」本当にその通りです。本人の性格もあるとはいえ小学生にはつらい境遇でしょう。
その分、ED4での十夜との再会と帰還、そして現世で一歩踏み出したラストシーンは感慨深いものになっているでしょう。


物語冒頭で説明される通り、本作にはいくつかのエンディングがあり、青と赤のエフェクトの数が重要になってきます。虚ろ町の住人に寄り添ってその心残りを解消してあげれば物語はいい方向へ。最低限の探索でストーリーを進めたり、住人を傷つければ悪い方向へ進みます。しかしED3やED4を見るためにはそれに加えて特定のイベントをこなしてフラグを立てねばならず、難易度は高いです。というか初見で(特にED4)到達は無理でしょう。これは、まずはバッドエンドを見て欲しいという作者さんの意向なんじゃないかと勘ぐってしまいます。実際、私も先にED1や2を見ていたからこそのばらちゃんの成長に感動できたところがある気がします。
バッドエンドを見たときには悔しい、歯がゆい思いをすると思いますが、その分気持ちの良いハッピーエンドもありますので、ぜひ安心してプレイしてください。

そうそう、攻略情報についてはおまけルーム内や同梱テキストファイルに細かく記載されているので、詰まってしまう心配もありません。親切ですね。


では一応気になった点も書いておきましょう。
1つはコメディ要素が微妙かなという点です。不気味な街の探索だったり、現世の出来事を受け止めたりと基本的にはシリアスなシーンが続く本作ですが、たまに軽い感じのギャグっぽい展開があったりします。のばらと十夜の交流や距離感を描くという意味では良いのかなという気はしつつ、突然そのBGMでギャグ始まったらホラーの雰囲気ぶっ飛んじゃわない? と思う回数の方が私は多かったです。ホラー色の薄い街でのイベント(楽譜が挟まった本のタイトルとか)ならあまり気にならないんですけどね。

もう一つ、本作の操作はマウスを前提にしているとのことですが、ツクールMVのマウスでのマップ移動って使いにくいと思うんですよね……。特に終盤の影をかわしながら進む場面などでは、マウス操作では移動経路が指定できないのが致命的。結局私はセーブ・ロード以外はほぼすべてキーボード操作でプレイしました。


さて、本作のキャラクターには一部ボイスがついています。フルボイスではなく、キャラクターへの呼びかけとか、感嘆詞とか、一部の台詞をしゃべるだけですがキャラクターのイメージに合っていてちょうどいいんじゃないかなと思います。全部に声がついていると聞くのに時間がかかってテンポが悪くなるという面もありますからね。
ちなみにおまけ部屋から何でも許せる方用と称したギャグ一直線のおまけシナリオを見ることができます。私はこのおまけシナリオ冒頭の
「良い子のみんな~~!  本編、はじまるよ~~~~!」
の声を聞いて、脳内には瞬時に「その恋、保留につき、」シリーズの姪浜さんが浮かんでしまいました。のばらと同じ声優さんだったのね…。本編中で思い浮かぶこと全然なかったのに…。そのくらい本編と違った温度感になっていますので、バッドエンドで気が滅入ったぜ、という方はぜひやってみてください。POPOさんがコメディ極振りで作品作ったらこんな感じになりそう。

それでは。

こんにちは。今回はアコックソフトさんの「だびぽん」をレビューしていきます。

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ジャンル:デジタルオカルトホラーADV
プレイ時間:1周2時間、フルコンプまで6時間程度
分岐:大きく2つ、1周目ルート制限あり
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2016/10
備考:15推


前回レビューの「絶望の螺旋」に引き続きオカルト系の作品となります。穏やか目ではありますが一応ホラー表現があるので苦手な方は注意。


さて、いつも通り大まかにあらすじを説明しましょう。
主人公継見(つぐみ)ヒロキは大学生。友人の茅野凛太郎(かやの・りんたろう)はオカルトマニアかつコンピュータの技術もあり、大学のある禎尾(さだび)町にある心霊スポットをテーマにしたオンラインゲーム「SADABI怪談オンライン」をほぼ一人で開発している。ヒロキはテストプレイヤーとして開発チームに参加しているところだったが、なんと最終マップのモチーフとなる「禎尾森放送局」へと取材に行った茅野が消息不明に。放送局まで彼を探しに行ったヒロキは頭から血を流して地面に横たわる茅野を発見。幸い息はあるようだったが、少し目を離した隙に茅野の姿を見失ってしまった。自力で遠くに逃げるなど到底不可能そうに見えた茅野はなぜ消えたのか。直後に姿を現し、何か知っていそうな発言をした女子高生の正体は? 禎尾森放送局のマスコットキャラクター、だびぽんに関するオカルトめいた噂との関係は? 誰が味方なのかもわからない中、同じく開発メンバーの橘三鷹(たちばな・みたか)とともに茅野の捜索を続けるヒロキの努力は報われるのか……

といったところでしょう。

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本作におけるオカルトの特徴として、"デジタル"が挙げられるでしょう。だびぽんの持つ力は、携帯電話やパソコンなどを通して現実世界に発現します。オンラインゲームの製作などを行っていた茅野らはまさにいい餌食です。
しかし電子機器に触れたものが全員呪われるわけではありません。いったい何がトリガーとなっているのか、だれがどんな目的で力を行使しているのか、といったあたりの情報は隠されていて、終盤にならないと明らかになりません。この辺の情報の隠し方、提示の仕方が上手い作品だなと感じました。

だびぽんの謎については、かなり複雑な真相になっていると言えます。1周では真実にたどり着くことはできないでしょう。というかシステム上できません。本作のルートはメニュー内のフローチャートに示される通り大きく分けてA,Bの2つ。それぞれにさらに2~3のエンディングと多数の一発ゲームオーバーがありますが、初回ではBルートへの選択肢は出現しません。AのNormalエンドを見ることによって解放されます。若干メタ的な内容も含むので、変則ループものともいえるかもしれません。

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茅野の捜索、そして呪いの解消のためにはノベル形式の選択肢だけでなく、探索や謎解きを成功させなくてはなりません。上の画像のように、部屋内の調査をしてパスワードの手がかりを探してみたり、あるいはほかの開発メンバーとSADABI怪談オンライン上でイベントを進行させたりといった内容があるのですが、難易度的には高くありません。クリックできる範囲でくまなく調査すればヒントはすべて手に入りますし、そこからパスワードを導き出すのも簡単でしょう。壁を調べると出てくる落書きの中にもヒントが隠されていて親切です。
むしろ本作において難しいのはノベルパートで適切な選択肢を選ぶことです。すぐにそれとわかる一発ゲームオーバー選択肢以外にも、どっちが正解か分かりにくいものや、そもそも今後の分岐に影響するようには見えないけれども正解は一つしかない選択肢などもあり、一発で正規のエンディングに行くのすらだいぶ難しいでしょう。また、本作は序章~第9章までの章ごとの構成となっているのですが、分岐は章内だけでなく、過去の章での選択の影響もうけます。第6章あたりでゲームオーバーになっちゃうな~と思ったら、直前ではなくもっと前のセーブデータからやり直してみるとよいでしょう。

TRUEエンドへの道はさらに厳しいものとなります。ゲームオーバー選択肢は当然すべて回避したうえで、全員生存させるための各キャラクターの行動を考えなくてはなりません。正直エンディング回収後も何が必要なフラグだったのかつかめていない状態だったので、もう少しやさしくするなり攻略情報をどこかに書いておくなりしてくれたら親切だったなと思いました。
しかしこれだけ苦労した甲斐あって、気持ちの良いエンディングが見られます。まあ、そんな簡単に許せるん? と思わなくはないですが、このくらいなら十分ありでしょう。


本作をプレイしていて少し気になったのは、時々挿入されるミニゲームです。主人公たちがオンラインゲームの開発とプレイをしていて、それが本筋の謎にかかわってくるからゲームという世界観を表現しておきたいというような意図は分かるのですが、突然謎のすごろくが始まったり終盤の重要なイベントが結局運ゲーだったりすると、これはなんのゲームだったっけ? となってしまった感は否めません。だびぽんが勝手にオンラインゲーム上でのイベントを開いて、ヒロキたちで対処という仕掛けはいいと思うので、そこだけちょっと惜しいかなと思います。
あとは、分岐多数で難易度が高いので、既読スキップは欲しかったというところでしょう(スキップはあるが既読も未読も全部飛ばされてしまう)。



というわけで今回はだびぽんのご紹介でした。
誰が味方かもわからない中、目まぐるしく入れ替わる状況とホラーならではの緊張感。そうしたものが好きな方ならきっと本作を十分楽しめるでしょう。ボイスもついてますよ。
それでは。

こんにちは。今回は窓際ななみさんの「絶望の螺旋」のご紹介です。

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ジャンル:オカルトサスペンス
プレイ時間:2時間
分岐:基本1本道
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2021/5
備考:15推


今回の作品はまた特殊で記事のジャンル分類にも悩みました。基本的にはノベルゲームかなと思いますが、通常のノベルゲームでは絶対に必要のない攻略要素があるため今回はアドベンチャーゲーム扱いとしています。
その特殊な要素ですが……まずはこちらのゲーム画面を見ていただければわかると思います。

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なんとゲーム画面が常に4分割されています。それぞれの画面は普通のノベルゲーム的に動かすことができます。上の状況では、今は右上のターンです。ある程度話が進むとまた全体から話を進める人物を選択しシナリオが進行していくことになります。
4分割されたこの画面構成を見て、私はEYEZMAZEさんのMEET INを思い出しました。
MEET INでは4人家族で協力して謎解きをして集合することを目指すミニゲームでしたが、本作ではある学園で起こった呪いを解消するために試行錯誤して調査するという内容であり、MEET INと比較するとボリュームもかなりあります。

さて、この4つの画面で見られる話は、1つの物語をそれぞれ別の人物の視点で見たものになります。つまりは群像劇の同時進行的なものと思ってもらえるとよいです。
さらに、これらの4つの画面はお互いの進行に影響しています。ある一つの画面の話だけを進めようと思っても、「まだ時間になっていない」というような感じで止まってしまいます。ほかの画面のイベントを見て話が同期していくと再度進行できるようになっていくのです。
それだけでなく、特定の視点でタイミングがそろうとその2人(以上)の話が合流し、5つ目の画面イベントが起こることもあります。これこそが複数画面で物語を同時進行する本作の真骨頂と言えるでしょう。
終盤における呪いの根本原因対処のためには、操作可能なすべての画面で特定のシーンに持ってきたうえで行動を起こす必要があります。割と条件が厳しめなので、最初の数回は見逃してループになる方も多いでしょう。この仕組み、川崎部さんのSCE2のエンディングを思い起こします。
ゲームの作りが特殊なためか若干動作が重いように感じられますが、それに見合うだけの演出効果のある仕掛けとなっているでしょう。

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↑画面連動イベント中


話の内容にも触れましょう。
舞台となっているのは琴羽(ことはね)学園。2年生の樫山勇治(かしやま・ゆうじ)と若咲千草(わかさき・ちぐさ)は幼馴染。最初のうちはすれ違い系ラブコメか?というような感じで進めていたのですが、なんとゲーム内初日にして超絶修羅場に遭遇してしまいます。……え?これってそういう話だったの?
この事件で大きなショックを受けた千草に、謎の少女が誘惑をかけます。「彼を奪われたくはないだろう…?」と。その誘惑にあらがえなかった千草は”絶望の螺旋”へと引きずり込まれることになります。

それと時を同じくして、学園長から”学校のトキコさん”が出るといううわさの調査を依頼された睦月十歌(むつき・とおか)と天乃川夕美(あまのがわ・ゆみ)。霊能力という力の存在が認められるようになったこの世界で霊能力関係の事件を引き受ける探偵である彼女らは、学園へ調査に乗り込みます。
順調に視察を進める中、一人になった隙を突かれて誘拐されてしまった夕美は、霊能力について熟知している彼女にすら信じがたい話を聞かされるのだった。

ここから先は、先述したように各画面を同期させて攻略しなければ同じ内容をループしてしまいます。ぜひあなたの目で確かめてください。何もかもすっきり解決してハッピーエンドとはいきませんが、勇治と夕美がお互いに干渉できた理由などが夕美の聞かされた謎の話と一緒に説明されたりするのでそのあたりが気持ちいいポイントですね。
この謎をどれだけ早い段階で解けたかで本作のプレイ時間は大きく左右されるでしょう。


さて、本作をプレイして気になった点ですが、まずはこの特殊なシステムのために通常のノベルゲームでは使用可能なシステムが使えない点はやはり痛いです。具体的には、文章のスキップができません。また、セーブは一応できるもののかなり不自由。またバックログも全画面分まとめて少し表示されるだけなので、プレイしにくいと感じたことは否定できません。
もう一つは、やや世界観の説明不足を感じたという点です。冒頭で霊能力の存在が明かされますが、ほとんどの人には使えないし役にも立たない、ごくわずかの人には凄いことができる、という程度の説明で、では一体何ができるのか、都市伝説との関係は?といったあたりが不十分だったのではないでしょうか。なので最後の解決法が若干力業のように感じます。これは本作内における設定がかなりスケールが大きいものを含んでいて回収しきれていないのも関係ありそうです。黒い霧や謎の計画について解決していないので、これは続編で解決とかのパターンかな?という読後感です。


とはいえこれらの点は、4画面を同時進行して話を進め、しかも単に並列で進むのではなく相互に影響して謎解きをするという本作の本質的魅力には関わらない部分ですので、気になった方はぜひプレイしてみることをお勧めします。15推ということで、ゲーム起動時に警告文章があったりしますが、直接的なグラフィックなどはなくそこまでショッキングなシーンもないためプレイしやすいと思います。
また、画面が常に分割されて表示される仕様のため、画面サイズは大きめにしてプレイすることを推奨します。

それでは。

今回はHappy Bad Endさんの「私の名前を呼びなさい!」のご紹介となります。

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★favo
ジャンル:脱出アドベンチャー
プレイ時間:1時間~1時間半程度
分岐:5つ
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2021/8
備考:15推、残虐な描写あり


さて、「そしてパンになる」(R18版)以来となる年齢制限ありの作品のご紹介です。とはいっても本作において制限がある理由はエロ方面ではないです。主人公のシエラちゃんがとにかく酷い目に遭わされる。つまり暴力や残虐描写が制限の主因です。殴打や流血なんて甘い甘い。そんな感じなので、タイトルとスクリーンショットから、「俺様系彼氏とのラブコメっぽい話かな?」みたいなテンションで話を進めると痛い目に遭います。これはガチの警告なので、プレイされる方は十分な覚悟をもってStartボタンを押していただくようお願いします。
ReadMeでは15歳以上推奨となっていますが、正直15禁の「まい、ルーム」よりもずっとキツいと感じます。プレイして最初の感想が、「ノベコレってこれ掲載できるんだ…」となる程度には人を選ぶ作品です。


と、十分警告したので作品の中身のお話に移りましょう。
本作の目的は「ヤンデレマッドサイエンティストのリエルに監禁された主人公のシエラが、何とか隙をついて脱走する」と一文で説明できます。毎日12時から17時までの間が探索可能な時間です。その間に何とか必要な情報と玄関の鍵を手に入れ、脱出しなくてはなりません。この探索の緊張感を高めているのは、(入っちゃダメと言われた場所で)リエルに見つかると"お仕置き"されることでしょう。"様子を窺う"でうまくリエルとの距離を探りながら、時にはセーブ&ロードを駆使して監視の目をかいくぐらなくてはなりません。
逆に言うと、アイテム探しや謎解き自体は難しくありません。クリックポイント探しなどはないですし、マップ移動も選択肢でできます。暗証番号入力なんかがちょっとあるくらい。その分、よりリエルとのエンカウントが怖いんです。実際に誰か知らない人に監禁されたとして、出口を見つけるよりは犯人の監視をかわす方がずっと大変でしょうからね、ホラーっぽさの感じられる部分でした。

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このシステムの面を見ても、よく作りこまれているなと感じました。作者さんの公開作を見るとふりーむにもノベコレにも本作を含めて2作だけ。2作目にしてこの快適なユーザビリティーを実現したのなら、ゲーム制作においてセンスのある作者さんなのでしょう。
探索時、常時現在地が表示され、"見つかってはいけない"エリアなのかがすぐにわかるよう色分けされている、"状態"をクリックすることで現在のシエラの状態と特殊効果を確かめることができる、"考える"機能(実質ヒント機能)が利用可能で分かりやすい位置にあるなど、相当親切なつくりになっています。要望があるとしたら、マップ上ですでに入ったことのある部屋には名前がついてほしい、ということくらいでしょうか。


さて、システムを説明したところでシナリオの話に移ろうと思うのですが、今回は私の初見プレイ時に脱出成功するまでの心境を中継する形式で書きますね。重要なネタバレがある部分は文字色を透明にしていますので、読むときは反転してください。

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チュートリアル完了

(なるほど、相手はヤンデレストーカーが悪化して似た他人を誘拐監禁するに至ったのか。何としても脱出させてあげなくては)

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1日目探索中

(これやたら緊張感あるな…入っちゃいけない部屋で鉢合わせするのがすごく怖い。"周囲を窺う"で時間経過しないのありがたいな)

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2日目探索中

(よし、棚のねじ外しに成功。次は暗証番号か…まだ東の方に入ってない部屋あるし明日はそこ探索かな)

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3日目資料室探索中

(あ、この感じ、多分調査強行したらなんか物音立てちゃってバレるやつだ! どうしよう。まあでも説明見る感じやらかしても1発アウトにはならなそうだしセーブ分けたしやっちゃうか!)

バレる。お仕置き部屋へ連れていかれる

(えっっボイスあるの? パートボイスってやつかあ。 お仕置きはう~ん、首輪はめられた…。まあでもこれくらいなら耐えてくれシエラちゃん! 気丈な感じの声だし頑張れ。探索が強制的に終了になっちゃうの痛いな)

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4日目資料室探索中

(昨日ノートは手に入れといたから今日は音を出さずに調べられるな…なるほどもう少し資料が必要なのね)

物置探索中

(あ、2日目くらいに調べようとしたら後回しにしよって言われたのお仕置き部屋の入口だったのね…それはそれとしてこれで暗証番号分かったぞ!)

鍵を手に入れ玄関へ…リエルに捕まる。お仕置き2回目
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(割と早めに脱出の方法が分かった気がするが、隠れながら玄関に行くの難しいな…もしかしたら鍵入手後にまた何らかのイベントを起こさない限り玄関で鉢合わせしちゃうようになってるのか?)
(ああ、お仕置き2回目痛そう…これは…)

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5日目再度鍵を手に入れ玄関へ…捕まる

(あ、これやっぱり鍵をとって玄関直行しちゃいけないパターンかな?)
(今回のお仕置きは…跡は残らなそうだし前回よりマシ、なのか? もうここまで来たらいっそ先にバッドエンド回収しようか。お仕置きは何回目まであるんだろう)

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6日目、先にバッドエンドを見ることに。お仕置き4回目。
【シエラの左腕を切断する旨を伝えられる】

(ええええっ!!! 酷い!! なんで! シエラちゃん謝って!
そう、気弱になるのは分かる。もう変なことしないってア"ア"ア"ア"
まじかまじかえ~!! ちょっと待ってまじかこれ辛い うっわ
うそでしょこの展開はR18でしか見たことない…
声優さんの演技凄すぎる。なんでこんなシーンの台詞がこんなにも真に迫ってるんだ!)

(このシチュエーションは、フェチとしては私にはあまりにレベルが高すぎる…)

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7日目、【左腕の無い】立ち絵を見る

(つらい…しかも探索めちゃくちゃ不利な条件になってるし…。でもここまで来たらバッドエンドを避けるわけにはいかない。ごめんねシエラちゃん…許せ…)

お仕置き5回目

(やっぱりそうなるか……。私だったら発狂間違いなしだな…。)

ここで選択肢

(ここで分岐するのは明らかだなあ。まずはとことんバッドエンドな方を見てみるか。…………
時間を巻き戻して脱出させてあげるぜ。絶対に。)

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4日目のデータをロード。再度脱出を試みる

(よし、鍵の回収に成功。あとは廊下を通って玄関に向かうだけ)

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玄関前で待ち伏せされる。再度お仕置き2回目

(何回かタイミング測ったけど捕まるなあ。今回はまだ日数に余裕があるけどどうすれば逃げられるんだろう。あ、北側の部屋に鍵かかってて入れなかったところあったなあ。今鍵束持ってるわけだしそこで何かしらのイベントを起こせば脱出できるのかな)

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5日目、リエルの日記を読む。脱出成功

(ようやく脱出できた! 素敵な笑顔ありがとうシエラちゃん! しかし鍵を持って移動するとき見つからないか緊張したなあ。さて、エンディング回収しますか)

~~~~~~~~
はい、というわけで探索中にはホラーゲーム並みの緊張感、お仕置き中にはグロ展開への恐怖感とシエラへの憐憫を味わうことができる内容になっております。

しかしここまでの内容のみでは終わらないのが本作。エンディングのコンプリートを目指します。
上のプレイ内容で回収できたエンドは1と5の2つ。お仕置き5回目の時の選択肢でもう一つ、時間切れでもう一つ見られるだろうことは容易に推測できたのでエンド2,4に関しても難なく回収できました。

さて問題はエンド3です。いろいろ思いつくことを試してみてもなかなかたどり着けません。その過程でエンド1や2のスチルにはお仕置きの回数による差分が存在していることに気付くなど、細かい部分の整合性まで感じ取ることができました。

30分くらいは試行錯誤してもダメだったので、同梱の攻略情報を見ることに。
ああ~なるほど。その発想は一応あったけど、先に自分の部屋で調べてないとダメなのね! では回収に行きますか!

そしてエンド3を見た私はこの作品の魔力に取り付かれてしまいました。
ダントツでこのエンディングが好きですね。あの強気で希望を持っていたシエラの姿は遠い過去のものに。このダークさが私のツボにはまったようです。物理的には可哀そうなことになってないしね!

それにしても本作の声優さんがすごすぎてびっくりしました。特にエンド3とお仕置き4の演技が本当に迫力と説得力を持って本作の物語の悲惨さを伝えてきます。冒頭では気丈な態度を見せていたシエラが見る影もなくなるくらいのボイス、それと対照的に作中通してずっと気だるそうな喋りを続けるリエル。気になったのでクレジットにある声優さんの名前を検索してみると、シエラのCV担当の方は完全にエロ方面で活躍している方のようで、なんだか納得。リエル担当の方もフリーのナレーター業の方ということで、上手いのも頷けます。
(念のため繰り返しますが、本作には性交シーンなどはありませんし、それを連想させる要素もありません)

ちなみに同梱の攻略情報はめちゃくちゃ親切、逆に言えば完全に答えが載っているので、自力で頑張りたいという方は見ない方がいいかもしれません。
【これによると私が1周目に脱出できなかったのは単に運が悪かっただけで、日記を読むのは脱出に無関係だった模様】


とても万人に薦めるわけにはいかない本作ですが、可哀そうな目に遭う女の子にグッとくるという方にとってはドはまりするでしょう。逆にそういう状況は悲しくなっちゃうという方は大やけどする前に退散してください。


それでは。

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