フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
初めての方は、ぜひごあいさつをご覧ください。評価の基準については、レビューについてに記してあります。
記事一覧ページを作りました。記事探しはこちらから。Twitterはこちら。リンク等はご自由にどうぞ。
YouTube始めました。フリーゲーム攻略動画などを投稿してます。

お色気・フェチ

こんにちは。今回はちかげさんの「みちゃダメ! パンチラは絶対阻止せよ」のレビューです。

mityadame1

ジャンル:女装BLアドベンチャー(ほんのりサスペンス)(※readmeより引用)
プレイ時間:1時間弱
分岐:ED2種+ゲームオーバーあり
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2023/8



さて、本作は私がなんとなくおバカで下品なコメディをやりたい気分の時にちょうど見つけた作品です。タイトルだけ見て大体の内容が分かるこの潔さ。しかしちょっと意外な展開もあったりして予想外に面白かった作品でもあるので今回取り上げることにしました。



大まかな内容はこんな感じ。

主人公の白井ユキトはごく普通の男子高校生。ある日ひょんなことから人気若手シンガーソングライター、若王子柊(わかおうじ・しゅう)のMV撮影に雪の妖精役として出演することになります。女性の役と聞いていなかったユキトは大慌て。衣装とメイクで可愛い女の子の見た目になったユキトでしたが、恥ずかしいから他の人に自分が男であることは隠そうと誓います。ところが下着だけは自分の私物の男物を身に着けたままなことに気づいたユキト。撮影中のあらゆるパンチラの危機を乗り越えて、男であることを隠し通せ!



女の子役だと聞いて困惑しながらもセッティングしてもらったユキトの様子がこれです。
mityadame2

全体的に男の子に見えない可愛らしさと背景のキラキラ演出がすごい。
肌の色もかなり白いですし雪の妖精をイメージした衣装と言われたら確かにと納得できますね。

スクリーンショットを見ていただければわかると思いますが、本作の立ち絵はすべて3Dモデルとなっています。以前レビューした「おもいをつたえるプログラム」と同じ手法ですね。本作もこの3Dモデルを活かして登場人物たちの様々なポーズを多様なアングルから見ることができるようになっています。スチル鑑賞モードもあるのでぜひプレイ後に見ていただきたいのですが、1時間に満たないプレイ時間に対して5ページにも及ぶスチルのバリエーションがあります。これは3Dモデルを使ったメリットを大いに活かしているといえるでしょう。


さて、本作のメイン攻略され対象(そんな言葉あるか?)の若王子さんはイケメン芸能人でありながらユキトの女装姿に一目ぼれの様子。こんなかわいい子が自分のMVに出てくれるなんて! となるばかりかプライベートでも近づきたいとユキトとの距離を詰めようと必死です。片やユキトは自分が男であることがばれないか常にひやひや。わかりやすいBLコメディといった感じが続きます。

風でスカートがめくれそうになったり椅子が倒れて転びそうになったりと、なぜか何度も迫るパンチラの危機。ただ笑っていればいいのかと思えば突如として意外な展開が現れました。

mityadame3


全身黒塗りの謎の人物が休憩室に仕掛けをしています。そういえば本作のジャンルは「女装BLアドベンチャー(ほんのりサスペンス)」でした。ここから”ほんのりサスペンス”の部分が意味を持ってきます。

本格的なミステリーのような内容ではありませんが、ユキトを襲うハプニングには犯人の意図や動機があることがしっかり描かれるので意外に思うと同時に感心しました。よくあるラブコメネタとして流していた部分がこういう風にあとから別の意味で回収される展開、好きなんですよね。


この事件(?)の謎に迫るところでは犯人指摘パートがありますが、選択画面でよく観察すればだれが犯人なのかはすぐわかりますし、間違えてもゲームオーバーにはならないので安心です。しかし犯人の身勝手な言い分にはちょっとした怖さを感じました。ユキトたちの身に何もなくてよかったです。

これ以外にも本作では選択肢がいくつかありますが、基本的に間違えると即ゲームオーバー行きになります。コメディはこうでなくちゃ!というシステムですね。本作はさらにゲームオーバー後に直前の選択肢に戻ることができるのでセーブを分けておく必要すらありません。親切ですね。

mityadame4

さて、本作のBL部分ですが、片方が常に女装姿かつ若王子さんもユキトのことを完全に女の子だと思い込んでるんですがこれはBLにカウントされるんですかね…? 普段そんなにはBLをやらないのでその辺の空気感が分かりませんでした。
また、タイトルこそ下世話な内容を想像させる本作ですが、実際にパンツが見えてしまうようなシーンはありませんし、若干の下心は見えつつも登場人物たちは基本的にみな紳士だったので下品さはほとんど感じませんでした。若王子さんがユキトの女装姿にタジタジになっている様子はなかなか笑えますが、初めての撮影に困惑するユキトをしっかりエスコートしているのでいい人なんだなあと思えて応援したくなりました。いや、ユキト側から見たらそういう目で見られるのはごめんなのかもしれませんが…


というわけで今回は「みちゃダメ! パンチラは絶対阻止せよ」でした。
意外なところで伏線が張られていたりして、ただの一発ネタBLコメディ以上の面白さを感じられた作品なので、ぜひプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。今更かよと思われるほどの有名作かもしれませんが、今回はパルソニックさんの「かわいいは壊せる」です。

kawaii1

ジャンル:幼女とおじさんのKENZENアドベンチャーゲーム
プレイ時間:1プレイ5~10分、フルコンプまで1時間強
分岐:エンディング10種
ツール:RPGツクール
リリース:2021/3
備考:12歳以上推奨、ニコニコ自作ゲームフェス2021優秀賞受賞作


以前「決戦前のヒトリ」をレビューしたときに少しだけ触れました。存在は以前から知っている有名作でDL済みでもあったのですが結局プレイしていない状態でした。しかし先日本作がふりーむの累計ランキングで1段目(5位)に入ったという情報を見かけ、やってみるかぁと意を決しました。
噂に聞いていた通りの(タイトル画面を見ても分かりますが…)危ない作品でしたが、単にインパクトがあるだけでもないと感じたので今回取り上げることにしました。


最初にいつも通り簡単に本作の内容を説明しておきましょう。
舞台となるのは労働環境も教育制度も崩壊した世界。週末の休みという概念がなくなり労働者は疲弊する一方。現行で9年ある義務教育は何と1年に短縮され多数の子供がまともな教育を受けられないままです。そんな貧しくなった世界ではたった1年の義務教育を終えたばかりの幼い子供をレンタル商品として貸し出してお金を取る非道な商売が横行しています。
主人公(おじさん呼びで名前は出てきません)は隣の部屋に住む子供(でここ)を1週間レンタルすることになります。毎日でここをなでてかわいがってあげるのもおしおきするのもおじさんの自由。あなたの行動によって物語は10個に分岐します。みんなが幸せになれる未来はあるのでしょうか…?

…と、こんな感じでしょうか。

kawaii2

記事冒頭でインパクトだけの作品ではないと言いましたが、やはりゲーム開始直後に何の説明もなくでここと会話することになり、さらに彼女をベッドの上に連れてきたこの絵面は強烈な破壊力があることをまず言っておきましょう。


とはいえ本作は18禁ではありません(12推です)。この状態から足を動かすというきわどい操作は可能ですが、本編に関連する操作は2つだけです。なでなで、すなわち頭をなでてやること、そしておしおき、すなわちデコピンです。それ以上のことはできません。
ただ、デコピンというと大したことないように思えますが、このおじさんのデコピンは相当痛いらしいです。クリア後のおまけにそういう記載がありましたし、なによりでここの反応が作り込まれていて見るからに痛そうなのです。

登場人物がひどい目に遭う作品は珍しくありません。このブログで扱った作品でいうと「スレガル」(18禁)は代表例でしょうし、18禁まで行かなくとも「いちごみるくとあそぼうよ」や「Strange meeting!」(いずれも15禁)も十分悲惨な展開が待ち受けています。しかし本作は全年齢であるにもかかわらず、これらの作品よりもプレイしながら罪悪感を覚えるような作りになっていました。

どういうことかというと、上記の作品たちと違って本作は主人公が加虐者なんですね。しかも行動は単なる選択肢式ではありません。毎日でここを寝かしつけるためにベッドに連れていき、カーソルを操作して額付近に持っていき目をつぶらせたうえでようやくおしおきをすることができます。しかもデコピンを構えた後マウスボタン押下または決定キー長押しでパワーを溜めてから解放しないと不発になります。要は徹底的にプレイヤーの自発的操作を要求しているのです。
仮に「おしおきする」という選択肢を1回選ぶのみであったらさほどためらわずにそのボタンを押していたかもしれません。しかしこう何回も、しかも長押しまで要求していると、「お前は今からこのいたいけな子供に強烈なデコピンをお見舞いしてやろうとしてるんだぞ!」という事実を突きつけられているようで私の良心も痛めつけられたのです。
ここが本作がほかの作品と比べて特出している点と言えると思います。

この演出はホラーゲームなどにおいて良く見られると思います。有名なところでいうと「Ib」でアリの絵を橋代わりにして踏みつけるシーンであったり、「魔女の家」でカエルをいけにえにしたり、といったシーンが思い浮かびます。私は単純に驚かせたり怖い絵が出てきたりといった方法で恐怖演出をするタイプの作品より、こうした地味に嫌な展開を重ねておどろおどろしい雰囲気からプレイヤーに継続ダメージを与えてくるタイプの作品の方が好きなのですが、本作はそれに近い怖さというか雰囲気を感じ取りました。

上でフルコンプまで1時間強と書きましたが、これは少し嘘なんですよね。私はこうした演出は好きなのですがMPをかなり消費するので、プレイ中にかなり中断時間をはさんでMPを回復しました(以前Twitterに投稿した通り)。それを除くと大体1時間といった分量という意味です。

kawaii3

さて、他の演出面について見ていきましょう。
イラストは、綺麗ともてはやされるタイプの絵ではないと思いますが、表情の差が分かりやすく描かれていて好きです。ベッドの上でおじさんを見つめるでここの表情は、前日までにどんな行動をとったかによって大きく変わります。単純に不安そうだったり、怯えていたり、あるいは懐いている様子だったり何かを懇願している風だったりと様々です。「なでなで」をしてあげるときも表情の変化が現れます。ギャルゲーによくある好感度システムを少しだけ見えるようにしてくれたありがたみがあるのと同時に、プレイヤーの行動如何ででここのメンタルを支配できてしまうような怖さも感じられます。
ベッドの上での表情だけでなく、マップ上での移動の様子だったり日付が変わるときのカットインだったりもでここの心境が反映されていて、しっかり考えて作られているなあと感じます。



本作をプレイしていて気になった点も少しあります。
これまで書いてきたように本作はシリアスな展開の割合が多いのですが、時々ギャグ要素が放り込まれているときがあります。シンプルに笑える場合は良いのですが私は鬱陶しいと感じてしまうシーンもありました。具体的には警官の居眠りシーンですね。エンディングで何度も見ることになるのでちょっとしんどいなと。でここが勘違いするシーンなどは面白かったです。

あとはでここのママについて最後まで詳細不明なのは若干もやもやします。その状態でハッピーエンドに行ってしまって何らかの後腐れが残らないのかなという不安につながっているように思います。「レンタル家族」が横行してろくに検挙もされない世の中なのに、主人公の部屋に隣に住む少女がいた程度で任意同行を求められているのも疑問かもしれません(END 02や09ではそうなるのも納得なのですが)。


エンディングについて書きましょう。
本作のエンディングは10種類。ただしおまけ内でいわれている通りEND05~09はほぼ同じなので実質6種類ということです。END 01がハッピーエンドと言えるでしょう。本気で攻略を目指せば初見でも可能だろうという難易度だと思います。でここは親からの愛をあまり受け取れていないようでおじさんに対しても疑心暗鬼のような状態です。ここから警戒心を解きほどいてハッピーエンドに向かうことができるかはプレイヤーの選択にかかっています。単になでなでを続ければいいわけではないのもよく練られています。

エンディングに加えて条件を満たすと、おまけ部屋で七つの大罪になぞらえたクリスタルを輝かせることができます。いわゆる実績に相当する機能です。全開放するととあるモードが解放されます。スクリーンショットは貼りませんが…………こりゃ危険度が増してきたぜ!


というわけで今回は「かわいいは壊せる」でした。
スクリーンショットを見て物怖じしない方はぜひプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。今回は先日公開のねこのさんの新作、「ありすすとーりー」です。
(1/21追記:難易度Extremeの攻略記事を書きました。こちらです)

AliceStory1

★favo
ジャンル:アクティブタイムバトルが楽しめる、かわいいアドベンチャーRPG(ReadMeより)
プレイ時間:難易度Normalで5時間~(難易度によって大きく変動します)
分岐:なし
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2023/1


本作に関しては制作過程をTwitterで拝見していました。
ありすシリーズの前作である「ありすえすけーぷ」をめちゃくちゃやり込んだ私は本作の公開も楽しみにしていました。つい昨日ようやく実績コンプリート出来たのでレビューを書いていきたいと思います。



まず前提として本作はノベルゲームコレクションで公開されているフリーゲームです(ふりーむでも公開されています)。ということはティラノスクリプトで制作されているのですが、プレイしてみたら思っていた以上にRPGでびっくりしました。メインシナリオの途中でイベントが挟み込まれ、そこで戦闘があるのかなくらいのイメージだったんですが(「せつなゆ魂」の戦闘イベントが増えたものみたいなイメージ)、本作に関してはツクールやウディタ製のRPGと変わらない感じでした。


ではゲームを開始していきましょう。New Gameをクリック。難易度はまずはNormalかHardが選べます。Hardは結構難しいので自信のある方のみ選ぶとよいでしょう。

導入の部分がシリアス目な感じだったのでやや意外に思いつつも、すぐに「ありすえすけーぷ」「ありすすいーぱー」のようなノリに戻ってきます。今回はまさかの異世界転移を果たした主人公のありす、今作で初めて苗字が明らかになります(有栖まゆがペンネームであり本名ではないというのは確か作者さんTwitter情報で知っていました)。そしてすぐさまスライムに襲われてラッキースケベ(?)イベント発生。そうそう、こんな感じだったよな~という謎の安心感が私の中に広がりました。

異世界で出会った妖精のリリィとともに妖精王を訪ね、元の世界に戻してもらえるよう依頼することにします。冒険の始まりです!

本作の戦闘システムはジャンルにも記載した通り、アクティブタイムバトル方式となっています。私がこれまでレビューした作品の中では、「キミだけのパーリナイト」が最も近いでしょうか。リアルタイムでアクティブゲージが増えていき、満タンになるとコマンドを打つことができます。新しいスキルを習得していると例外も出てきますが、基本はゲージが満たされるたび攻撃コマンドを打ってダメージを与えることの繰り返しです。
このシステムに関して、よくこれをティラノスクリプトで実装したなと思うほどよくできています。私がプレイした中ではバグみたいなものにも当たりませんでしたし、全12種のスキルの組み合わせ方で思っていた以上に戦略性のある戦闘が可能になっています。特に高難易度のボス戦に挑んでいると嫌というほど対策用の戦略を練ることになるのですが、それに関してはまた今度語りましょう。
AliceStory2


探索シーンに関しては前作っぽく探索ポイント選択式となっています。ここでプレイヤーへのやさしさであふれているのは、探索ポイントで起こるイベントの確率がすべて開示されて、さらに見たことのある結果については内容も記録されている点です。5%ならまあ出るまで粘らなくてもいいだろうとかいう判断がしやすいですし、あの敵とエンカウントする可能性が高いのはどこかとかも探しやすくなります。


中ボスを倒して冒険を進めていくと章も進行し、それに合わせて現実世界の物語も進んでいきます。導入部分のシリアスな展開が続き、語り手がありすであることも分かります。しかしこの時点では最終的にどう異世界での物語と結びつくのかが見えず????という感じでした。この繋がりの部分に関してラスボス戦後にきちんと決着するのが気持ち良かったですね。私は初見Hardで挑んだんですが、なかなか難しかったのでようやくラスボスを倒し切った安堵もあってなんだか感動しちゃいました。Extremeではラスボスのギミックなんかもストーリーを意識した名前や効果になっていてニクいですね! (戦闘中はそんなこと味わっている余裕は一切ないんですが)難易度Extremeを攻略した者の特権です。
ちなみにこのエピローグシーンでかかるBGMに私は聞き覚えがあって、なんだっけとしばらく考えていたんですが、音楽の卵さんの「無限大の小部屋(オルゴール)」でした。私が知っていたのは原曲版だったんですが、そちらも主旋律がオルゴールだったので混同して思い出すのに時間がかかったみたいです。そのあと作内でも原曲版も流れてきてやっぱり複数パターンあったんだと納得。今の私は本作のクライマックス効果で無限大の小部屋とシャイニングスター(EDテーマ)聴いたら泣きそうです。


さて、本作にはほとんどのシーンで台詞にボイスが付いています。主人公ありすについては前作同様ですが、今回は他にも3人(3体?)のキャラがいて、それぞれにきちんと声が付いています。公式サイトからサンプルボイスが聞けるので私は少し楽しみにしていました。リリィちゃんの「えいっ! ってやってみてください」がなんか可愛いな~と思っていたんですが、あれ本当に魔法の使い方を指示するときの台詞だったんですね…ありすの言う通り教えるの下手すぎる。
AliceStory3

そんな新キャラリリィちゃんも登場する隠しイベントは必見ですよ。(公式攻略ページを参照するのは前提として)2周目をプレイすれば簡単に見ることができます。
1つ浮かんだツッコミは、「湿ってるタイプの人って梵天使うの?」

それ以外にもちょっぴりえっちなイベントは前作にもまして盛りだくさんなのでそちら方面も期待していてください。謎の触手に絡めとられたり、きのこから出る白い液体を飲んだりとやりたい放題。パンチラとかいうレベルじゃないいつものアレももちろんあります。


そして私が見た範囲では指摘している人がいなかったので誰も気づいていないのかもしれませんが、上級クリスタル生成(いわゆるガチャ)のエフェクトが、Aランクが当たった場合のみ豪華になってますね。しかも特殊エフェクトが3種類ほどありそう。シリーズ他作品のレビューでも指摘しましたが、普通にプレイしてたらそこまで見ないだろというところまで細かい差分が用意されているの、凝っていて良いですね。


最後に戦闘部分に関する汎用的なアドバイスをしておきましょう。
  • 作内ヒントやヘルプはきちんと読むべし!
  • スキルは組み合わせ次第で効果が大きく変わるので実戦で学ぶべし!
  • よほどいいPCをお使いの方以外は戦闘エフェクトを中画質以下にすべし!
    (終盤のボス戦は高画質ではかなり重くなります)

Extreme攻略の具体的戦略はまた次回ということで。
それでは。

今回はHappy Bad Endさんの「私の名前を呼びなさい!」のご紹介となります。

watanama1

★favo
ジャンル:脱出アドベンチャー
プレイ時間:1時間~1時間半程度
分岐:5つ
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2021/8
備考:15推、残虐な描写あり


さて、「そしてパンになる」(R18版)以来となる年齢制限ありの作品のご紹介です。とはいっても本作において制限がある理由はエロ方面ではないです。主人公のシエラちゃんがとにかく酷い目に遭わされる。つまり暴力や残虐描写が制限の主因です。殴打や流血なんて甘い甘い。そんな感じなので、タイトルとスクリーンショットから、「俺様系彼氏とのラブコメっぽい話かな?」みたいなテンションで話を進めると痛い目に遭います。これはガチの警告なので、プレイされる方は十分な覚悟をもってStartボタンを押していただくようお願いします。
ReadMeでは15歳以上推奨となっていますが、正直15禁の「まい、ルーム」よりもずっとキツいと感じます。プレイして最初の感想が、「ノベコレってこれ掲載できるんだ…」となる程度には人を選ぶ作品です。


と、十分警告したので作品の中身のお話に移りましょう。
本作の目的は「ヤンデレマッドサイエンティストのリエルに監禁された主人公のシエラが、何とか隙をついて脱走する」と一文で説明できます。毎日12時から17時までの間が探索可能な時間です。その間に何とか必要な情報と玄関の鍵を手に入れ、脱出しなくてはなりません。この探索の緊張感を高めているのは、(入っちゃダメと言われた場所で)リエルに見つかると"お仕置き"されることでしょう。"様子を窺う"でうまくリエルとの距離を探りながら、時にはセーブ&ロードを駆使して監視の目をかいくぐらなくてはなりません。
逆に言うと、アイテム探しや謎解き自体は難しくありません。クリックポイント探しなどはないですし、マップ移動も選択肢でできます。暗証番号入力なんかがちょっとあるくらい。その分、よりリエルとのエンカウントが怖いんです。実際に誰か知らない人に監禁されたとして、出口を見つけるよりは犯人の監視をかわす方がずっと大変でしょうからね、ホラーっぽさの感じられる部分でした。

watanama2

このシステムの面を見ても、よく作りこまれているなと感じました。作者さんの公開作を見るとふりーむにもノベコレにも本作を含めて2作だけ。2作目にしてこの快適なユーザビリティーを実現したのなら、ゲーム制作においてセンスのある作者さんなのでしょう。
探索時、常時現在地が表示され、"見つかってはいけない"エリアなのかがすぐにわかるよう色分けされている、"状態"をクリックすることで現在のシエラの状態と特殊効果を確かめることができる、"考える"機能(実質ヒント機能)が利用可能で分かりやすい位置にあるなど、相当親切なつくりになっています。要望があるとしたら、マップ上ですでに入ったことのある部屋には名前がついてほしい、ということくらいでしょうか。


さて、システムを説明したところでシナリオの話に移ろうと思うのですが、今回は私の初見プレイ時に脱出成功するまでの心境を中継する形式で書きますね。重要なネタバレがある部分は文字色を透明にしていますので、読むときは反転してください。

~~~~~~~~
チュートリアル完了

(なるほど、相手はヤンデレストーカーが悪化して似た他人を誘拐監禁するに至ったのか。何としても脱出させてあげなくては)

~~~~~~~~
1日目探索中

(これやたら緊張感あるな…入っちゃいけない部屋で鉢合わせするのがすごく怖い。"周囲を窺う"で時間経過しないのありがたいな)

~~~~~~~~
2日目探索中

(よし、棚のねじ外しに成功。次は暗証番号か…まだ東の方に入ってない部屋あるし明日はそこ探索かな)

~~~~~~~~
3日目資料室探索中

(あ、この感じ、多分調査強行したらなんか物音立てちゃってバレるやつだ! どうしよう。まあでも説明見る感じやらかしても1発アウトにはならなそうだしセーブ分けたしやっちゃうか!)

バレる。お仕置き部屋へ連れていかれる

(えっっボイスあるの? パートボイスってやつかあ。 お仕置きはう~ん、首輪はめられた…。まあでもこれくらいなら耐えてくれシエラちゃん! 気丈な感じの声だし頑張れ。探索が強制的に終了になっちゃうの痛いな)

~~~~~~~~
4日目資料室探索中

(昨日ノートは手に入れといたから今日は音を出さずに調べられるな…なるほどもう少し資料が必要なのね)

物置探索中

(あ、2日目くらいに調べようとしたら後回しにしよって言われたのお仕置き部屋の入口だったのね…それはそれとしてこれで暗証番号分かったぞ!)

鍵を手に入れ玄関へ…リエルに捕まる。お仕置き2回目
watanama3
(割と早めに脱出の方法が分かった気がするが、隠れながら玄関に行くの難しいな…もしかしたら鍵入手後にまた何らかのイベントを起こさない限り玄関で鉢合わせしちゃうようになってるのか?)
(ああ、お仕置き2回目痛そう…これは…)

~~~~~~~~
5日目再度鍵を手に入れ玄関へ…捕まる

(あ、これやっぱり鍵をとって玄関直行しちゃいけないパターンかな?)
(今回のお仕置きは…跡は残らなそうだし前回よりマシ、なのか? もうここまで来たらいっそ先にバッドエンド回収しようか。お仕置きは何回目まであるんだろう)

~~~~~~~~
6日目、先にバッドエンドを見ることに。お仕置き4回目。
シエラの左腕を切断する旨を伝えられる

(ええええっ!!! 酷い!! なんで! シエラちゃん謝って!
そう、気弱になるのは分かる。もう変なことしないってア"ア"ア"ア"
まじかまじかえ~!! ちょっと待ってまじかこれ辛い うっわ
うそでしょこの展開はR18でしか見たことない…
声優さんの演技凄すぎる。なんでこんなシーンの台詞がこんなにも真に迫ってるんだ!)

(このシチュエーションは、フェチとしては私にはあまりにレベルが高すぎる…)

~~~~~~~~
7日目、【左腕の無い】立ち絵を見る

(つらい…しかも探索めちゃくちゃ不利な条件になってるし…。でもここまで来たらバッドエンドを避けるわけにはいかない。ごめんねシエラちゃん…許せ…)

お仕置き5回目

(やっぱりそうなるか……。私だったら発狂間違いなしだな…。)

ここで選択肢

(ここで分岐するのは明らかだなあ。まずはとことんバッドエンドな方を見てみるか。…………
時間を巻き戻して脱出させてあげるぜ。絶対に。)

~~~~~~~~
4日目のデータをロード。再度脱出を試みる

(よし、鍵の回収に成功。あとは廊下を通って玄関に向かうだけ)

~~~~~~~~
玄関前で待ち伏せされる。再度お仕置き2回目

(何回かタイミング測ったけど捕まるなあ。今回はまだ日数に余裕があるけどどうすれば逃げられるんだろう。あ、北側の部屋に鍵かかってて入れなかったところあったなあ。今鍵束持ってるわけだしそこで何かしらのイベントを起こせば脱出できるのかな)

~~~~~~~~
5日目、リエルの日記を読む。脱出成功

(ようやく脱出できた! 素敵な笑顔ありがとうシエラちゃん! しかし鍵を持って移動するとき見つからないか緊張したなあ。さて、エンディング回収しますか)

~~~~~~~~
はい、というわけで探索中にはホラーゲーム並みの緊張感、お仕置き中にはグロ展開への恐怖感とシエラへの憐憫を味わうことができる内容になっております。

しかしここまでの内容のみでは終わらないのが本作。エンディングのコンプリートを目指します。
上のプレイ内容で回収できたエンドは1と5の2つ。お仕置き5回目の時の選択肢でもう一つ、時間切れでもう一つ見られるだろうことは容易に推測できたのでエンド2,4に関しても難なく回収できました。

さて問題はエンド3です。いろいろ思いつくことを試してみてもなかなかたどり着けません。その過程でエンド1や2のスチルにはお仕置きの回数による差分が存在していることに気付くなど、細かい部分の整合性まで感じ取ることができました。

30分くらいは試行錯誤してもダメだったので、同梱の攻略情報を見ることに。
ああ~なるほど。その発想は一応あったけど、先に自分の部屋で調べてないとダメなのね! では回収に行きますか!

そしてエンド3を見た私はこの作品の魔力に取り付かれてしまいました。
ダントツでこのエンディングが好きですね。あの強気で希望を持っていたシエラの姿は遠い過去のものに。このダークさが私のツボにはまったようです。物理的には可哀そうなことになってないしね!

それにしても本作の声優さんがすごすぎてびっくりしました。特にエンド3とお仕置き4の演技が本当に迫力と説得力を持って本作の物語の悲惨さを伝えてきます。冒頭では気丈な態度を見せていたシエラが見る影もなくなるくらいのボイス、それと対照的に作中通してずっと気だるそうな喋りを続けるリエル。気になったのでクレジットにある声優さんの名前を検索してみると、シエラのCV担当の方は完全にエロ方面で活躍している方のようで、なんだか納得。リエル担当の方もフリーのナレーター業の方ということで、上手いのも頷けます。
(念のため繰り返しますが、本作には性交シーンなどはありませんし、それを連想させる要素もありません)

ちなみに同梱の攻略情報はめちゃくちゃ親切、逆に言えば完全に答えが載っているので、自力で頑張りたいという方は見ない方がいいかもしれません。
これによると私が1周目に脱出できなかったのは単に運が悪かっただけで、日記を読むのは脱出に無関係だった模様


とても万人に薦めるわけにはいかない本作ですが、可哀そうな目に遭う女の子にグッとくるという方にとってはドはまりするでしょう。逆にそういう状況は悲しくなっちゃうという方は大やけどする前に退散してください。


それでは。

こんにちは。今回は、前回ちらっと名前を出したほりんさんのSheSeeCrisis!をご紹介します。

SSC1

ジャンル:おしっこ我慢系短編RPG
プレイ時間:1プレイ10分前後、隠しエンド到達まで1時間半程度、その他やり込み要素あり
分岐:あり(後述)
ツール:RPGツクール(アツマールでもプレイ可)
リリース:2017/4
備考:15推


前回ご紹介したねこのさんのありすえすけーぷも主人公がトイレを我慢して脱出を目指すゲームでしたが、本作も同じくなるべく速く敵を蹴散らしてトイレに駆け込みたいという短編RPGです。かわいい子がもじもじする様子を眺めるという点が共通している両作ですが、そうした趣向以外のゲーム性の面でもしっかり作り込まれているという点でも共によくできていると思います。
フリーゲームをいろいろとプレイしていると、こうした変態チックな作品に度々出会いますが、このようなものにこそ作者の方の好みや熱意が濃縮されている気がして、フリーゲームらしい良作に出会えたように思います。


本作の主人公フララは初期状態でレベル99。適宜回復アイテムを使うなどして安全に戦えば、道中の雑魚敵など相手ではありません。
SSC2
しかしそんな戦闘を面白くしているのが本作のターン制限。おしっこを我慢しているための時間制限は、リアルタイムではなく戦闘中の経過ターン数によって表現されています。つまり、なるべく短いターン数で全ての敵を倒すためには、どの敵にどのスキルを使って、どのタイミングで回復薬を使って……などを考える必要があり、それが本作を面白くしている特長の1つでしょう。ちなみに、回復薬は実質無制限に使用できますが、当然のように全て飲み物なので使用するたびに尿意が加速(=制限ターン数が短縮)します。
難易度には「ふつう」と「きちゅい」の2つがあります。「ふつう」ではそんなにシビアなリソース管理をしなくても魔王を倒して漏らす前に無事に家に帰ってくることができるでしょう(ただしトイレに直行できるとは言ってない)。「きちゅい」は制限ターン数が短いうえ、敵のステータスが高い、クリティカルが出ないなどかなり不利な条件となっており、初見でクリアするのはかなり厳しいかと思います。HPやTPなどの適切な管理と、敵に効率よくダメージを与えるためのスキルの使い方を意識的に行う必要があるのです。次ターンの敵の行動が明示されるのも、そのあたりのことを意識しての仕様でしょう。そうした意味で、本作はRPGでありながらパズル的なゲーム性を持ち合わせているといえるでしょう。

本作攻略に欠かせない要素はそれだけではありません。攻撃を行うと青いゲージが短時間表示されます。時間切れになる前に指定されたキー(ZX←→↑↓のどれか)を指定回数入力することによって、チェインコマンド(CC)が発動し、連続攻撃をすることができるのです。
SSC3
この機能によって連続攻撃を決めるのが大変爽快なのです。うまく使うと、ラスボスを1ターンキルすることすら可能です。入力時間もそれほど短くはないので、アクションが苦手でもなんとかなる範囲でしょう。CCを使いこなすことが、特に「きちゅい」をクリアするうえでは必須になってきます。
ただ、このゲージの出てくる位置が、敵だったり自分だったりするのでここは統一してほしかったなと思います。パターンはあるので覚えることはできるのですが、ちょっと油断すると思っていたところと別のところにゲージが出てCCに失敗してしまうことがよくありました。

また、戦闘画面での靄のエフェクトやクリティカル時のエフェクトなどが重いのもややマイナスに感じました。マシンの問題かもしれませんが、設定で軽量モードなどが選択できるようになっていたらうれしいです。


さて、裏山マップで時間切れになったりHPが尽きたりするとバッドエンドなのは当然ですが、規定ターン以内にラスボスを倒したとしてもハッピーエンドを迎えられるとは限りません。むしろ、ハッピーエンドを迎えるためには割と頑張って本作をやり込む必要があるのです。そのためにもきちんと実績システムが搭載されています。ノーヒントだと実績コンプはやや難しいでしょうが、きちんとクリア後おまけにてフォローがありますのでご安心ください。
13個の実績だけでなく、ハイスコア記録やクリア後闘技場の実装、そして隠しコマンド(ちょっとかげきモード)も用意されているなど、1プレイ10分程度の短編RPGながら長く遊べる作品に仕上がっています。マップ内の移動速度は高速だし、オープニングやチュートリアルなどはスキップ可など周回プレイしやすい仕様になっているのも良いですね。

というわけで今回はSheSeeCrisis!の紹介でした。スピーディーで爽快感あふれる戦闘に加え、Ver3でフララにボイスまで付いた本作、ぜひプレイしてみてください。ストーリーとしては裏山に薬草を取りに行くだけなのですが、意外とやり込み甲斐がありますよ。

↑このページのトップヘ