フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
初めての方は、ぜひごあいさつをご覧ください。評価の基準については、レビューについてに記してあります。
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コメディ

こんにちは。今回は時雨屋さんの「1000文字勇者」のご紹介です。

1000yusha1


ジャンル:メタネタ多めのコメディADV
プレイ時間:クリアまで30分程度
分岐:ゲームオーバーあり
ツール:RPGツクール
リリース:2016/12


今回紹介する「1000文字勇者」は、RPGの形式をとりながらRPGのお約束を逆手に取った挑戦的なシステムで謎解きゲームのようなプレイ感を生み出した、RPGと見せかけたADVのような意欲作です。

本作のシナリオというかコンセプトは単純明快。ふりーむに載っている3行の説明で十分です。

この勇者は千文字読むと爆発します。
がんばって魔王を倒しましょう。
千文字喫茶参加中。


通常私たちがRPGをプレイするとき、町で出会った人にはとりあえず話しかけることが多いはずですし、それがセオリーでもあります。ただの村人からでも、戦闘のアドバイスとか、隠しアイテムのありかのヒントとか、イベント進行フラグとかの情報が得られたりしますよね。「装備品はメニューから装備しないと効果を発揮しないよ」と教えてくれる人とかはどのゲームを見ても最初のほうの町に住んでいる気がします。
ところが本作はなんと主人公が1000文字読む(メッセージウィンドウに表示される)と爆発する呪いがかかっていて、強制的にゲームオーバーになってしまいます。当然、全部の村人に話しかけている余裕なんてありません。とりあえず初回プレイでは手当たり次第に話しかけていくしかありませんが、これではクリアできるわけはありません。話しかけて得られた反応からイベント進行に必須な人を判別し、極力無駄を排して話を進める必要がある、まるで謎解きゲームのような内容になっています。


本作はRPGでもあるので、戦闘シーンもあります。しかしまともに戦っては容易に文字数制限をオーバーしてしまうので、なんと勇者はどんな敵でもワンパンで倒せる能力を持っているのです! その代償の呪いは大変きついものですが…
戦闘において厳しいのは、戦闘前に無駄なことばっかり喋ってくるいやがらせのような敵。何とか回避する方法を見出さなくてはいけません。こうした敵に笑わされたり、無駄な文字にイライラしたり、なんとか回避して進めないか探索してみたりと、試行錯誤できるのが面白いですね。
ちなみに厄介なのは敵だけではありません。
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こういった面倒くさい奴をどう処理するか、必須なイベントやフラグをしっかりと見定める必要があります。1000文字という制限には多少の余裕はあるものの、100文字を超えるような長話はしっかりとスキップしていかないとクリアできないバランスです。フラグが立つ箇所を見つけてはセーブ時点に戻りストレートにフラグへ向かう、そんなプレイングが求められるでしょう。必須イベントだけを起こして進んでいけばクリアまで5分程度というシナリオですが、その正解ルートを見つけるために村人に聞き込みをする、怪しい場所を調べる、そうした作業を楽しめる方にはぴったりです。シナリオ進行にかかわる情報は、台詞内で目立つようにオレンジ色に着色されているので、ゲームの難易度としては高くありません。

ちなみに私が考えたところでは、魔王討伐後に姫に会う場面で216文字残しが最高値かなと思うのですがどうでしょうか。まだ削れる文字数があるよっていう方は教えてください。


さて、本作では呪いを解いて文字数制限を撤廃したモードで思う存分人に話しかけることもできます。このモードへの入り方は、一回通常モードでクリアするとわかるので頑張ってクリア目指してください。2回話しかけると台詞が変わっている人も結構います。彼らが何をしゃべるかは、クリア後のお楽しみですね。
また、最後のシーンがちょっと変わる程度ではありますが、本作は一応マルチエンディングになっています。どこで分岐するのかは比較的わかりやすいと思うので、ぜひ全パターン試してみてください。


今回は「1000文字勇者」のご紹介でした。お約束を逆手に取ったメタな話に笑える方、RPGのフラグ管理がいつも気になってしまう方、ダンジョンでは外れの方の分かれ道まで全て探索してしまう方にお勧めです。最後にこのゲームの本質を伝えるスクリーンショットをお見せしますね。
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…ということです。それでは。

こんにちは。今回は、HACKMOCKさんの「ロイヤルベルを鳴らして」のご紹介です。

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★favo
ジャンル:洋風ファンタジー乙女ゲーム
プレイ時間:1ルート30分程度。フルコンプまで1時間半
分岐:3人の攻略対象ごとに複数+ノーマルエンド
ツール:吉里吉里
リリース:2012/2


さて、まずは本作のあらすじを簡単にご紹介しましょう。主人公のユーリ(名前変更可)はヴィンボーナ王国の王女。しかし国が貧しいため贅沢はできず、庶民的な暮らしをしている。緊張すると頭の中が真っ白になってとんでもないことを口走ってしまうというおっちょこちょいな面があり、国民からも親しまれている。父親のヴィンボーナ王は何とか国を豊かにするために、隣国のカネモティアの2人の王子のどちらかと政略結婚させたいと思案し、王子の別荘に忍び込んでアプローチをかけるよう指示するのだが……

いきなりですが本作の魅力は一つ。ユーリが可愛い! そして面白い! これに尽きます。本当にかわいいんですよ。やってみてください。

…これではレビューにならないんでもう少し真面目に話しますね。
本作の冒頭は、ぎっくり腰になった父の代わりにユーリがカネモティア王子の誕生パーティーに出席している場面から始まります。公務の場に慣れていないユーリは緊張しまくり。カネモティア第一王子のアルト様がかっこいいな~と思っていたが、実際に話しかけられるとまともなことは何一つしゃべれず、「ミドリムシの生まれ変わりなので光合成しなきゃいけない」などと意味不明な言い訳を残しその場から逃げてしまいます。この時のユーリの表情がすごい。酔っぱらってもこうはならんだろというくらい真っ赤で可愛いんですよ。そしてころころと表情を変えるので見た目にも楽しい。この表情差分の数も魅力ですね。
創作の世界でよく"アホの子"というのがありますが、ユーリの場合はそれとはちょっと違って、自分のしでかした言動が常識に照らして突拍子もなさすぎるということには気づいているので、そのことについて恥じているシーンが多いんです。だからこそ笑えるだけの作品ではなく、思わずユーリを応援したくなるような、そんな物語に引き込まれる作品に仕上がっているように感じます。

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さて、本作には3人の攻略対象がいます。冒頭のシーンでも登場するカネモティア王子のアルト様、その弟のアキバル様、そして自国の大臣のセナです。それぞれ分類するなら、アルトは乙女ゲームの王道的ルート、アキバルは変わり者・癖のあるルート、セナは幼馴染ルートといえるでしょう。ちなみに個別ルートに入れなかったノーマルエンドもあります。これらのルートがそろって乙女ゲームとしてのバランスという意味でもよくできているでしょう。

これらのルートの中で私が好きなものを挙げるとしたら、なんといってもアルト様ルートでしょう。この王道な感じがたまらない。
アルト様は公の場では品行方正で美しい立ち居振る舞いで多くの女性から大人気なわけですが、会話を重ねるにつれ素の彼は俺様タイプだったことがわかります。そんな彼がどうしてユーリに気を許すのか、そのあたりもきちんと描かれているんですよね。恋愛ゲームに関してこの"なぜお互いが惹かれ合うのか"ってめちゃくちゃ大事な要素ですよね。そこのツボをしっかり押さえています。そしてユーリの行動は相変わらず。恋愛もコメディーもどちらもたっぷり味わえます。ぐいぐいくるアルト様に、ユーリだけでなく私まで心ときめかせてしまいました。そしてEND2のエンディングタイトル。ここまでの流れが本当にうまい。ユーリの「貧乏神」発言を生かしたこの展開にはうならされました。

ちなみにアルト様ルートはもう一つ、END1もあります。END2とはかなり温度差があるのですが、アルトもユーリも先ほどのエンディングと別人な感じはしないんですよね。たまにエンディングによって同一人物なのにキャラ違うだろ! と言いたくなるような作品もあったりするのですが、本作ではアルトとユーリの気持ちの動きがしっかりと表現されているので、どんな結末にも納得感があります。甘さたっぷりで乙女ゲームとしての魅力満点なのはやはりEND2かと思いますが、こちらの分岐も存在することで成就したときの幸せをよりかみしめられるような気がします。
もちろん、アキバルやセナのルートも乙女ゲームとしての魅力、コメディとしての魅力が詰まってます。

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本編をすべて読み終わったら、ぜひEXTRAからおまけを読んでみてください。後日談や人物設定などのおまけがたっぷりあるのもプレイしていて満足感がありますね。ちなみにこの後日談ではセナルートが好きです。おとなしい感じだったセナがあんなに堂々としているのを見ればかっこいいという感想を抱かずにはいられません。また、2人の王子とは違ってセナにはユーリとのこれまでの積み重ねがありますからね。その部分がしっかり感じられてよかったです。


というわけで今回は「ロイヤルベルを鳴らして」のご紹介でした。ユーリの突飛な行動に笑いながらも乙女ゲームならではの甘いどきどきを味わえる作品で、普段乙女ゲームをプレイしない方にもお勧めできると思います。ぜひプレイしてください。

それでは。

こんにちは。今回は、劇団kolmeさんの女子トイレの殺人をご紹介します。

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★favo
ジャンル:ミステリー風コメディノベルゲーム
プレイ時間:1時間
分岐:あり。GoodEnd4、BadEnd4
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2017/8


先週、しゃん子channelというYouTubeチャンネルでフリーゲームCMコレクションという企画があり、私はそこで様々なフリーゲームのPVを見て楽しんでいました。内容盛りだくさんでクオリティの高いPVが勢ぞろいだったので、見てない人はぜひ見てみてくださいね。きっと気になる作品が見つかるはずです。
その配信の中で出た発言「フリゲは性癖博覧会」の印象が強烈でよく覚えています。実際、いろいろなフリーゲームを探していると、一歩引いてみれば変態だなあと思うような作品がかなりあることに気付きます。商業作と違って作者のさじ加減でいくらでも好きなものを詰め込めるのがフリーゲームのいいところの一つだと私も思っているので、こうした作品の中にはフリーゲームらしい良作があるだろうと思い、よくプレイしています。
さて、変態なフリーゲームは数あれど、その方向性は2つに分けられると思っています。一つは登場人物が変態な作品。もう一つは設定が変態な作品です。今回ご紹介する「女子トイレの殺人」は前者の方向性で最強だと思っています。大変強烈なキャラクターが次々登場し、登場人物の変態性という意味でこれを超える作品は見たことがありません。トイレという単語以外の下ネタなしでここまで濃い嗜好を表現することが可能なのかと驚愕させられます。


では、作品内容の紹介に移りましょう。本作のプロローグは次の一文で始まります。
「それは、俺が女子トイレの個室から出た瞬間のことだった。」
お前は男か?と初っ端からツッコみたくなりますが、先に進みましょう。主人公の助士怜人(女子トイレのアナグラムですね。無論男)は女子トイレが大好きという大変特殊な性癖の持ち主。彼曰く、人が用を足しているのを覗いたりすることに興味があるのではなく、純粋に女子トイレという空間を愛しているらしい(理解できない)。彼がいつものように公園の女子トイレから出てくるとそこには頭から血を流した男の死体が! その場に居合わせたトイレ利用客の奥竹葵("ブルーレットおくだけ"かな?)、梨木かおる(りきかおる。消臭力のことでしょう)に殺人の疑いをかけられる。しかし身に覚えのない怜人はひとまず通報はせず、この事件の犯人を当てる推理対決をすることを提案する。どうやらそれぞれ後ろめたい要素のあるらしい2人はそれに同意。かくして社会的な生存を賭けた推理バトルが始まるのであった……

本作のうまいところの一つは、"社会的死を回避せよ"という宣伝文句にもある通り、登場人物にそれぞれ公にしたくない趣味があって、それを隠しておくためには警察からの取り調べを回避したいという利害の一致があるところでしょう。この変わった着眼点にまずなるほどと思わされました。
そしてその隠しておきたい趣味がものすごく濃い! 怜人の女子トイレ(という空間)好きも理解しがたいですが、葵の趣味もそれに負けないくらい理解不能なものです(まあ世界は広いから探せば同じようなことしてる人もいたりするのかな?)。かおるの趣味はそれらに比べたらだいぶ理解しやすいでしょう(それでも公言しにくいという点では同じかと思いますが)。そして怜人に「(キャラが)薄い!」と理不尽にツッコまれる。このあたりのツッコミもスピード感があっていいですね。

さて、本作にはもう一人強烈かつ重要な登場人物がいます。怜人のストーカーという流川乙姫(るかわおとひめ。水音出すやつですね…)です。彼女の変態さも相当なものですが、それに目覚めるきっかけとなった出来事も描かれるのが良いです。変態って、あれだけ堂々として開き直ってると人を救うこともあるんだなという謎の感動(?)に包まれました。

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本作のギャグはとにかく言葉のパワーが強すぎるんです。上の画像での「イノセント変質者」はその筆頭。他人の言い逃れを見破る術(を知っている理由)、「変態のサラブレッド」、「それ以来学校の女子トイレは出禁になってしまった」などなど…。しかも、これらのギャグとして登場したセリフが推理をする際に伏線として再度登場したりするなど、非常に芸が細かいです。

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そんなとんでもないメンバーで繰り広げられる推理バトルですが、推理部分も意外としっかりしているのも高得点です。ただのトンデモコメディーと見せかけながらしっかりとロジックが通っており、笑えるだけでなく印象に残る話になっているように感じます。また、一人の優秀な探偵役が事件の全貌を明らかにする、というタイプのミステリーではなく、その場にいる全員が協力して、時には他の探偵役の証言の不自然さを指摘しながら推理をするという形で進んでいくのですが、こういった作品は珍しいんじゃないでしょうか。
しかしそんな推理を披露するのは常人には理解不能の変態たち。ノリノリで自身の特殊性癖を暴露した人が、次の瞬間には冷静に相手の議論の穴をつく、そんなシュールさも本作の特徴でしょう。

本作がロジックの面で非常に特徴的なのは、一つの真実が用意されているわけではないというところでしょう。作中ではミステリー定番の犯人指摘シーンがあります。ここで4つのエンディングに分岐するのですが、なんと誰を犯人としてもそこそこ筋の通った論理が組み立てられ、違和感のない結論に至るのです。これは他の作品にはない珍しい仕様ではないでしょうか。それぞれのエンディングでは犯人や動機は異なれど同じようなコメディー展開が待ち構えており、まったくブレません。葵ルートだけはちょっと異質でしょうか。
ちなみに私が一番好きなルートは乙姫ルートです。さっきまで決死の犯人あてバトルをしていた変態たちが、共通の敵の出現を見て一致団結する展開と、そのあとで怜人が勝ち誇るシーンにハマりました。

さて、プレイしていて気になった点も少々あります。
一つは人物の名前もわからない段階で現場見取り図に全員の名前が書かれているところです。単純に「誰?(どっち?)」となりますし、この図は誰が書いてるんだろう、とかも気になってしまいます。あと、身長180cmは中肉中背というのだろうかとか、そこは"言及"ではなく"追及"じゃないだろうかとか、そのあたりの言葉遣いや誤字脱字も多めかなと感じます。
UI面でももう少しプレイしやすくなっていたらよかったなと思うところがあります。具体的にはバックログが非常に読みづらいです。また、1ページ分しかさかのぼれません。ボタンがトイレットペーパーになっているなどの工夫は独特で良いと思います。

さて、今回は強烈な作品の紹介でしたが、トイレ以外の下ネタは本当になく、そこまでお下品でないのでコメディー好きの方なら広く楽しめると思います。ちなみに蛇足ですが、ふりーむ!で「トイレ」でゲーム検索したら70件もヒットしてびっくりしました。みんなトイレ大好きですね(笑)

それでは。

今回は、ENTRANCE SOFTさんのおみコン!をご紹介します。タイトルで検索すると、お見合い関連のサービスばっかり出てきますが、本作の"おみ”はお見合いではなくてお見舞いの意味ですね。

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★favo
ジャンル:病院コメディ系(?)ノベルゲーム
プレイ時間:3時間半
分岐:なし
ツール:吉里吉里
リリース:2011/9


本作は、簡単に言うと個性的なキャラクターたちの掛け合いが楽しめる長編コメディです。
主人公の宮下圭吾はこれからの高校生活に夢を膨らませる新入生。しかし下校中になぜか気絶してしまった圭吾は"妹のようなもの"の由菜に「変態だから入院させる」というトンデモな理由で強制的に入院させられ、実質監禁状態になってしまいます。そこで毎日診察(?)に来る医師の希沙やお見舞い(?)に来る由菜たちとの嚙み合わないやりとりや、なんとか脱出しようと画策する圭吾の様子を眺めて楽しむ典型的なコメディになっています。

本作でまず特徴的なのは、登場人物たちのキャラの濃さです。やっぱりインパクトがある人物だと、その日常も楽しくなりますね。主人公の圭吾はかわいそうなツッコミ役(この手のシナリオの作品では主人公がツッコミになるのはお約束ですね)。そして変態(と由菜に宣言される)。由菜は圭吾の"妹のようなもの"で、同居もしている。最初は意味が分かりませんでしたが、途中で挿入される回想でその経緯が明らかになります。こういう演出、いいですよね。圭吾を身体的に拘束して入院させることからも分かる通りいわゆるジコチューな性格。メイドの伊織は極度の人見知り。しかし明らかに圭吾へ好意を持っていて、ラブコメ的展開もあります。友人の凛は中二病で不登校。だが成績は良い。学校には行きたがらないが健気なところがあり、圭吾のことは「お兄ちゃん」と慕っている。医師の希沙は自身のことを「天才美人女医」と称する自信満々な人物。その割にティーバッグの使い方を知らないなど、常識に偏りがあるが自信は全く崩れない。
そして先輩にあたる千晶ですが、彼女だけちょっと浮いているというか、周りの濃さに比べてちょっとキャラが薄いかなと感じました。もちろん、漫才が好きで自分でもネタを考えるなど挑戦している(けど下手くそ)など、特徴はあるのですが、中盤まであまり登場しないせいもあってやはり影の薄さは否定できないかなと感じます。その中盤の登場シーンでも若干唐突感があったので、なんとか前半部分でも絡みが欲しかったかなと思います。後半で登場することで物語の重要なカギを握る人物でもあるので、前半に出てこない理由があると言えばあるのですが、圭吾のモノローグで時々思い出すなどがあったら良かったかなとは思います。また、比較的常識人キャラとして圭吾と若干キャラがかぶっているのもその原因でしょうか。圭吾とほかの人物との会話もコントじみたところがあるので、漫才が千晶の特徴づけとして弱いということもあるかもしれませんね。

さて、本作はプロローグ、1~7章、エピローグからなっています。2章までは導入に近いです。3章では凛、4章では伊織にクローズアップして、彼女らとのコントのような会話を楽しみながら、抱えている問題を解決していき距離を縮めていきます。ただ笑えるだけではなく、きちんと彼女らの抱える問題を解決するという目的があって、その過程で彼女らとの距離が縮まっていくというのがとても気持ちよく感じました。1つ1つのエピソードが良くできているんですよね。一応ネタバレにならないようにぼかしますが、特に凛がただ中二病な妄想に浸っているだけでなく、しっかりと圭吾との関係を築いているんだなと感じさせるエピソードが好きです。

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人物へのクローズアップが続いたので、5章もそうかなと思っていたら、5章以降は思いもよらなかった展開を見せます。ずっと圭吾が準備していた脱出作戦が成功するのです。ここから一転、物語はシリアスな展開を迎えます。由菜による監禁の真意、圭吾の過去などが次々と明らかになっていきます。この、笑える展開でキャラクターへの理解を深めてからのシリアス転換は私の大好物ではあるのですが、本作ではこの転換がいささか突然すぎるように思えました。前半部分で伏線を張っておくなりしたらまた印象は違ったでしょうか。シリアスな展開でありながら、会話は今まで通りのコント風だったり、由菜のわがまま全開なのも違和感の原因かもしれません。コメディの雰囲気なら多少無茶な展開でも気にせずに笑えるし、現実にこんなことはできないだろうなどと考えたりはしないのですが、やはりシリアスな話になるとそこは大切ですからね。ご都合主義だなあと一歩引いた感想が出てきてしまいました。具体的には7章で由菜がわがままを通したところが感動的に演出されるのは、ちょっと違うんじゃないかと感じました。単純に清二がとばっちりを食らっただけでかわいそうというのもありますね。

それでもコメディとして見たら十分面白いし、意外性があるという点では効果を上げているように思います。先述しましたが、圭吾とほかの人物との会話が本当に漫才やコントのように勢いがあり、ギャグも高密度で織り込まれていて、会話を眺めているだけでたくさん笑えるんですよ。アニメネタが多いので、よくアニメを見る方ならより楽しめるんじゃないでしょうか(私はアニメには明るくないので、私が気付いていないネタもあるかもしれません)。あとは、この各シーンで笑えるだけでなく、シリアスな展開まで含めて物語のつながりが良くできていれば完璧だったように思います。

細かいですがあと一つ気になったのは、立ち絵の統一感がないことです。担当された方が違ったのでしょうか。
エンドロールは大変珍しい形式で、印象に残りました。面白い試みで、とてもいいと思います。


いろいろと偉そうなことも書いてしまいましたが、favoの印をつけた通り私としてはとても楽しめた作品でした。わりと高頻度で出てくる変態ネタを楽しめる方なら、プレイして損をしない作品だと思います(とはいっても、全年齢対象だしガチの下ネタはないですよ!)。まずは作者さんサイトの作品紹介ページにあるQ&Aを読んでみてください。各キャラクターの紹介を兼ねながら小ネタもぶち込んでくる秀逸な内容だと思います。本編も大体このノリなので、ここで笑えた方なら本作にはドハマりするでしょう。

それでは。

今回は、静本はるさんのMY HOBBY IS 短編版のレビューをお送りします。


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オススメ!
ジャンル:掌編ドタバタコメディノベルゲーム
プレイ時間:5分
分岐:なし
ツール:吉里吉里
リリース:2016/7


初めてオススメの印をつけてご紹介するのは、爆笑必至の短編コメディ、「MY HOBBY IS 短編版」です。
本作を最初に見た時、まずはタイトル画面の勢いに驚かされました。上のスクリーンショットはクリア後のものなので若干違うのですが、読む前からワクワクさせてくれるような勢いのある点は変わりません。スクリーンショットだと動きが伝わらないのがもどかしい!

STARTボタンをクリックしてすぐに、これまた躍動感のあるイラストがテロップと共にバシッと登場。もうこの時点で私の期待と興奮は相当なレベルまで高まっていました。そしてその期待を裏切らない密度で次々に飛んでくるギャグとぶっ飛んだ展開。短編版と名前にもある通り実際にもかなり短いゲームなのですが、体感としてはほんの一瞬の間にすべてを詰め込まれて笑い転げるような感じがしました。

基本的には文字を読ませるものというノベルゲームの枠組みとドタバタアクションというジャンルはもともとあまり相性が良いものとは思えません。しかしそんなことを感じさせる間もないほど立ち絵もカットインも動くこと動くこと、まるでギャグ漫画を眺めているかのような気分になります。漫画風のコマ割りとかオノマトペの配置とかもありますし、作者さんは相当に漫画を意識されたのではないでしょうか。通常のノベルゲームではあまり見ないこの演出が、本作では非常に効果を上げています。キレのある音楽や効果音もさらに勢いを盛り上げてくれます。文章ではなくグラフィックや効果音で状況を伝えるような手法も取られ、とにかく勢いを殺さずに徹底的にテンポよく進んでいくのが本作の魅力を高めているのは間違いありません。

MHI2

本作のシナリオも、人殺しが趣味(!)というジャックが絶対に死なないし怪我もしない体質(!)のリサと出会い、殺そうと執着するというギャグ漫画にぴったりのぶっ飛び具合。後半にリサの通う高校で事件が起こるのですが、そこからの怒涛の展開とアクションシーンからはあのトムとジェリーを思い起こしました。不審者がドン引きしているシーンがお気に入りです。表情の変化も細かくて、いったいこの作品を作るのにどれだけの絵を描いたのだろうと思ってしまうほどです。かっこいい音楽と共に大量のラフ画が見られるエンドロールも魅力たっぷりです。


さて、普通に本作をプレイするだけでは気付かないかもしれない隠し要素(?)を3つご紹介しましょう。
①セリフ内に時々含まれる赤い単語をクリックすると、ちょっとしたネタが見られます(以前チェス殺人事件で紹介したのと同じシステムです)。
②背景に時々作者さんの過去作ネタが挟まってます。
③おまけはスチル閲覧とキャラ紹介だけではありませんよ。

そんな感じで大変面白く欠点も見当たらないような本作ですが、一つあげるとしたら、最後にリサが掴むバットの向き逆じゃないか?、という所でしょうか。その向きだとうまく掴めずにすっぽ抜けてしまう気が…。


ギャグ漫画なんてくだらない!という方でなければ本作を読んで損した気分になることはないでしょう。オートモードでプレイするのもお薦めです。気に入った方はぜひ作者さんサイトで公開されている2話3話(仮)をダウンロードしてプレイしながら私と一緒に完全版の公開を待ちましょう。

それでは。

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