こんにちは。今更かよと思われるほどの有名作かもしれませんが、今回はパルソニックさんの「かわいいは壊せる」です。

ジャンル:幼女とおじさんのKENZENアドベンチャーゲーム
プレイ時間:1プレイ5~10分、フルコンプまで1時間強
分岐:エンディング10種
ツール:RPGツクール
リリース:2021/3
備考:12歳以上推奨、ニコニコ自作ゲームフェス2021優秀賞受賞作
以前「決戦前のヒトリ」をレビューしたときに少しだけ触れました。存在は以前から知っている有名作でDL済みでもあったのですが結局プレイしていない状態でした。しかし先日本作がふりーむの累計ランキングで1段目(5位)に入ったという情報を見かけ、やってみるかぁと意を決しました。
噂に聞いていた通りの(タイトル画面を見ても分かりますが…)危ない作品でしたが、単にインパクトがあるだけでもないと感じたので今回取り上げることにしました。
最初にいつも通り簡単に本作の内容を説明しておきましょう。
舞台となるのは労働環境も教育制度も崩壊した世界。週末の休みという概念がなくなり労働者は疲弊する一方。現行で9年ある義務教育は何と1年に短縮され多数の子供がまともな教育を受けられないままです。そんな貧しくなった世界ではたった1年の義務教育を終えたばかりの幼い子供をレンタル商品として貸し出してお金を取る非道な商売が横行しています。
主人公(おじさん呼びで名前は出てきません)は隣の部屋に住む子供(でここ)を1週間レンタルすることになります。毎日でここをなでてかわいがってあげるのもおしおきするのもおじさんの自由。あなたの行動によって物語は10個に分岐します。みんなが幸せになれる未来はあるのでしょうか…?
…と、こんな感じでしょうか。

記事冒頭でインパクトだけの作品ではないと言いましたが、やはりゲーム開始直後に何の説明もなくでここと会話することになり、さらに彼女をベッドの上に連れてきたこの絵面は強烈な破壊力があることをまず言っておきましょう。
とはいえ本作は18禁ではありません(12推です)。この状態から足を動かすというきわどい操作は可能ですが、本編に関連する操作は2つだけです。なでなで、すなわち頭をなでてやること、そしておしおき、すなわちデコピンです。それ以上のことはできません。
ただ、デコピンというと大したことないように思えますが、このおじさんのデコピンは相当痛いらしいです。クリア後のおまけにそういう記載がありましたし、なによりでここの反応が作り込まれていて見るからに痛そうなのです。
登場人物がひどい目に遭う作品は珍しくありません。このブログで扱った作品でいうと「スレガル」(18禁)は代表例でしょうし、18禁まで行かなくとも「いちごみるくとあそぼうよ」や「Strange meeting!」(いずれも15禁)も十分悲惨な展開が待ち受けています。しかし本作は全年齢であるにもかかわらず、これらの作品よりもプレイしながら罪悪感を覚えるような作りになっていました。
どういうことかというと、上記の作品たちと違って本作は主人公が加虐者なんですね。しかも行動は単なる選択肢式ではありません。毎日でここを寝かしつけるためにベッドに連れていき、カーソルを操作して額付近に持っていき目をつぶらせたうえでようやくおしおきをすることができます。しかもデコピンを構えた後マウスボタン押下または決定キー長押しでパワーを溜めてから解放しないと不発になります。要は徹底的にプレイヤーの自発的操作を要求しているのです。
仮に「おしおきする」という選択肢を1回選ぶのみであったらさほどためらわずにそのボタンを押していたかもしれません。しかしこう何回も、しかも長押しまで要求していると、「お前は今からこのいたいけな子供に強烈なデコピンをお見舞いしてやろうとしてるんだぞ!」という事実を突きつけられているようで私の良心も痛めつけられたのです。
ここが本作がほかの作品と比べて特出している点と言えると思います。
この演出はホラーゲームなどにおいて良く見られると思います。有名なところでいうと「Ib」でアリの絵を橋代わりにして踏みつけるシーンであったり、「魔女の家」でカエルをいけにえにしたり、といったシーンが思い浮かびます。私は単純に驚かせたり怖い絵が出てきたりといった方法で恐怖演出をするタイプの作品より、こうした地味に嫌な展開を重ねておどろおどろしい雰囲気からプレイヤーに継続ダメージを与えてくるタイプの作品の方が好きなのですが、本作はそれに近い怖さというか雰囲気を感じ取りました。
上でフルコンプまで1時間強と書きましたが、これは少し嘘なんですよね。私はこうした演出は好きなのですがMPをかなり消費するので、プレイ中にかなり中断時間をはさんでMPを回復しました(以前Twitterに投稿した通り)。それを除くと大体1時間といった分量という意味です。

さて、他の演出面について見ていきましょう。
イラストは、綺麗ともてはやされるタイプの絵ではないと思いますが、表情の差が分かりやすく描かれていて好きです。ベッドの上でおじさんを見つめるでここの表情は、前日までにどんな行動をとったかによって大きく変わります。単純に不安そうだったり、怯えていたり、あるいは懐いている様子だったり何かを懇願している風だったりと様々です。「なでなで」をしてあげるときも表情の変化が現れます。ギャルゲーによくある好感度システムを少しだけ見えるようにしてくれたありがたみがあるのと同時に、プレイヤーの行動如何ででここのメンタルを支配できてしまうような怖さも感じられます。
ベッドの上での表情だけでなく、マップ上での移動の様子だったり日付が変わるときのカットインだったりもでここの心境が反映されていて、しっかり考えて作られているなあと感じます。
本作をプレイしていて気になった点も少しあります。
これまで書いてきたように本作はシリアスな展開の割合が多いのですが、時々ギャグ要素が放り込まれているときがあります。シンプルに笑える場合は良いのですが私は鬱陶しいと感じてしまうシーンもありました。具体的には警官の居眠りシーンですね。エンディングで何度も見ることになるのでちょっとしんどいなと。でここが勘違いするシーンなどは面白かったです。
あとはでここのママについて最後まで詳細不明なのは若干もやもやします。その状態でハッピーエンドに行ってしまって何らかの後腐れが残らないのかなという不安につながっているように思います。「レンタル家族」が横行してろくに検挙もされない世の中なのに、主人公の部屋に隣に住む少女がいた程度で任意同行を求められているのも疑問かもしれません(END 02や09ではそうなるのも納得なのですが)。
エンディングについて書きましょう。
本作のエンディングは10種類。ただしおまけ内でいわれている通りEND05~09はほぼ同じなので実質6種類ということです。END 01がハッピーエンドと言えるでしょう。本気で攻略を目指せば初見でも可能だろうという難易度だと思います。でここは親からの愛をあまり受け取れていないようでおじさんに対しても疑心暗鬼のような状態です。ここから警戒心を解きほどいてハッピーエンドに向かうことができるかはプレイヤーの選択にかかっています。単になでなでを続ければいいわけではないのもよく練られています。
エンディングに加えて条件を満たすと、おまけ部屋で七つの大罪になぞらえたクリスタルを輝かせることができます。いわゆる実績に相当する機能です。全開放するととあるモードが解放されます。スクリーンショットは貼りませんが…………こりゃ危険度が増してきたぜ!
というわけで今回は「かわいいは壊せる」でした。
スクリーンショットを見て物怖じしない方はぜひプレイしてみてください。
それでは。

ジャンル:幼女とおじさんのKENZENアドベンチャーゲーム
プレイ時間:1プレイ5~10分、フルコンプまで1時間強
分岐:エンディング10種
ツール:RPGツクール
リリース:2021/3
備考:12歳以上推奨、ニコニコ自作ゲームフェス2021優秀賞受賞作
以前「決戦前のヒトリ」をレビューしたときに少しだけ触れました。存在は以前から知っている有名作でDL済みでもあったのですが結局プレイしていない状態でした。しかし先日本作がふりーむの累計ランキングで1段目(5位)に入ったという情報を見かけ、やってみるかぁと意を決しました。
噂に聞いていた通りの(タイトル画面を見ても分かりますが…)危ない作品でしたが、単にインパクトがあるだけでもないと感じたので今回取り上げることにしました。
最初にいつも通り簡単に本作の内容を説明しておきましょう。
舞台となるのは労働環境も教育制度も崩壊した世界。週末の休みという概念がなくなり労働者は疲弊する一方。現行で9年ある義務教育は何と1年に短縮され多数の子供がまともな教育を受けられないままです。そんな貧しくなった世界ではたった1年の義務教育を終えたばかりの幼い子供をレンタル商品として貸し出してお金を取る非道な商売が横行しています。
主人公(おじさん呼びで名前は出てきません)は隣の部屋に住む子供(でここ)を1週間レンタルすることになります。毎日でここをなでてかわいがってあげるのもおしおきするのもおじさんの自由。あなたの行動によって物語は10個に分岐します。みんなが幸せになれる未来はあるのでしょうか…?
…と、こんな感じでしょうか。

記事冒頭でインパクトだけの作品ではないと言いましたが、やはりゲーム開始直後に何の説明もなくでここと会話することになり、さらに彼女をベッドの上に連れてきたこの絵面は強烈な破壊力があることをまず言っておきましょう。
とはいえ本作は18禁ではありません(12推です)。この状態から足を動かすというきわどい操作は可能ですが、本編に関連する操作は2つだけです。なでなで、すなわち頭をなでてやること、そしておしおき、すなわちデコピンです。それ以上のことはできません。
ただ、デコピンというと大したことないように思えますが、このおじさんのデコピンは相当痛いらしいです。クリア後のおまけにそういう記載がありましたし、なによりでここの反応が作り込まれていて見るからに痛そうなのです。
登場人物がひどい目に遭う作品は珍しくありません。このブログで扱った作品でいうと「スレガル」(18禁)は代表例でしょうし、18禁まで行かなくとも「いちごみるくとあそぼうよ」や「Strange meeting!」(いずれも15禁)も十分悲惨な展開が待ち受けています。しかし本作は全年齢であるにもかかわらず、これらの作品よりもプレイしながら罪悪感を覚えるような作りになっていました。
どういうことかというと、上記の作品たちと違って本作は主人公が加虐者なんですね。しかも行動は単なる選択肢式ではありません。毎日でここを寝かしつけるためにベッドに連れていき、カーソルを操作して額付近に持っていき目をつぶらせたうえでようやくおしおきをすることができます。しかもデコピンを構えた後マウスボタン押下または決定キー長押しでパワーを溜めてから解放しないと不発になります。要は徹底的にプレイヤーの自発的操作を要求しているのです。
仮に「おしおきする」という選択肢を1回選ぶのみであったらさほどためらわずにそのボタンを押していたかもしれません。しかしこう何回も、しかも長押しまで要求していると、「お前は今からこのいたいけな子供に強烈なデコピンをお見舞いしてやろうとしてるんだぞ!」という事実を突きつけられているようで私の良心も痛めつけられたのです。
ここが本作がほかの作品と比べて特出している点と言えると思います。
この演出はホラーゲームなどにおいて良く見られると思います。有名なところでいうと「Ib」でアリの絵を橋代わりにして踏みつけるシーンであったり、「魔女の家」でカエルをいけにえにしたり、といったシーンが思い浮かびます。私は単純に驚かせたり怖い絵が出てきたりといった方法で恐怖演出をするタイプの作品より、こうした地味に嫌な展開を重ねておどろおどろしい雰囲気からプレイヤーに継続ダメージを与えてくるタイプの作品の方が好きなのですが、本作はそれに近い怖さというか雰囲気を感じ取りました。
上でフルコンプまで1時間強と書きましたが、これは少し嘘なんですよね。私はこうした演出は好きなのですがMPをかなり消費するので、プレイ中にかなり中断時間をはさんでMPを回復しました(以前Twitterに投稿した通り)。それを除くと大体1時間といった分量という意味です。

さて、他の演出面について見ていきましょう。
イラストは、綺麗ともてはやされるタイプの絵ではないと思いますが、表情の差が分かりやすく描かれていて好きです。ベッドの上でおじさんを見つめるでここの表情は、前日までにどんな行動をとったかによって大きく変わります。単純に不安そうだったり、怯えていたり、あるいは懐いている様子だったり何かを懇願している風だったりと様々です。「なでなで」をしてあげるときも表情の変化が現れます。ギャルゲーによくある好感度システムを少しだけ見えるようにしてくれたありがたみがあるのと同時に、プレイヤーの行動如何ででここのメンタルを支配できてしまうような怖さも感じられます。
ベッドの上での表情だけでなく、マップ上での移動の様子だったり日付が変わるときのカットインだったりもでここの心境が反映されていて、しっかり考えて作られているなあと感じます。
本作をプレイしていて気になった点も少しあります。
これまで書いてきたように本作はシリアスな展開の割合が多いのですが、時々ギャグ要素が放り込まれているときがあります。シンプルに笑える場合は良いのですが私は鬱陶しいと感じてしまうシーンもありました。具体的には警官の居眠りシーンですね。エンディングで何度も見ることになるのでちょっとしんどいなと。でここが勘違いするシーンなどは面白かったです。
あとはでここのママについて最後まで詳細不明なのは若干もやもやします。その状態でハッピーエンドに行ってしまって何らかの後腐れが残らないのかなという不安につながっているように思います。「レンタル家族」が横行してろくに検挙もされない世の中なのに、主人公の部屋に隣に住む少女がいた程度で任意同行を求められているのも疑問かもしれません(END 02や09ではそうなるのも納得なのですが)。
エンディングについて書きましょう。
本作のエンディングは10種類。ただしおまけ内でいわれている通りEND05~09はほぼ同じなので実質6種類ということです。END 01がハッピーエンドと言えるでしょう。本気で攻略を目指せば初見でも可能だろうという難易度だと思います。でここは親からの愛をあまり受け取れていないようでおじさんに対しても疑心暗鬼のような状態です。ここから警戒心を解きほどいてハッピーエンドに向かうことができるかはプレイヤーの選択にかかっています。単になでなでを続ければいいわけではないのもよく練られています。
エンディングに加えて条件を満たすと、おまけ部屋で七つの大罪になぞらえたクリスタルを輝かせることができます。いわゆる実績に相当する機能です。全開放するととあるモードが解放されます。スクリーンショットは貼りませんが…………こりゃ危険度が増してきたぜ!
というわけで今回は「かわいいは壊せる」でした。
スクリーンショットを見て物怖じしない方はぜひプレイしてみてください。
それでは。