フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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タイムアタック

こんにちは。今回は再びねこのさんの作品、ありすえすけーぷをご紹介します。前々回のレビューでは最新作、前回は16年前の作品を取り上げましたが、今回はまた最新作。時代の幅を飛び越えてます。

(12/5追記:アツマール版公開・ランキングボード実装を受け、本作RTAの記事を書きました。通常の攻略は終わってタイムアタックを目指しているという方はこちらへどうぞ)

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ジャンル:ちょっとキワドイ脱出アドベンチャー
プレイ時間:初回15分。フルコンプまで1~2時間
分岐:4つ
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2021/4
備考:12推

本作は、以前紹介したありすすいーぱーのシリーズで、主人公が共通しています。しかしゲームジャンルは結構違っていて、ごりごりのパズルだった前作に対し本作は謎解き脱出ゲームとなっています。
脱出の舞台はなぜか夜の学校。目が覚めたらなぜか出口のなくなった学校にいたありす。5枚のカードを集めて脱出を目指します。夜の学校から脱出といえば、さくらぷりんさんの深夜12時学校でが思い浮かびますが、本作はホラーではありません。この雰囲気はどちらかといえばほりんさんのSheSeeCrisis!が近いでしょう。そう、つまり本作はおしっこ我慢ゲーなのです。


前作の可愛らしさは健在です。またもや相当量のボイスがついて、突飛なシナリオ・可愛らしいイラストと共にその魅力はばっちり。そんなありすがトイレを求め学校内を探索し、謎解きに頭を抱えるシナリオです。フェチがハマる人にとっては神ゲーになること間違いなしです。
露骨に我慢しているイラストはありませんが、謎解き失敗時にはまたしても"聖地"が拝めるスチルが慌てたボイスと共に登場。その他にも探索中のイベントなどでも結構な頻度で下ネタがあり、そうした方面での楽しみ方がメインとなる作品といえるでしょう。前作の時は、タイトルやゲーム説明からそうしたネタが含まれることを想定していなかったので、どちらかというといかがわしいと感じてしまいましたが、本作ではゲーム説明の段階でフェチが詰まった作品だということが明らかですからね。意外とおしっこ我慢に関する性癖は多いのか、なんて思いながら楽しめました。

逆に言うと、本作にはストーリーのようなものは全くありません。校内を探索したりミニゲームをしたり、ちょっぴりアレなイベントを見たりするだけなので、キャラクターの性格とか背景のあたりで物足りなさを感じたのは事実です。特に、主人公のありすが自身を"コミュ障"とか、"陽キャが怖い"みたいに評価していますが、この辺が突飛な設定に映りました。ありすが最初に登場した「ありすとーく」のやり取りを見るとそんなタイプにも見えないんですけどね…

ちなみにエロ系以外にも、ちょっぴり笑えるネタがいろいろ仕込まれています。私が特に好きなのはこちら。
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あ~、はい、そうですね(棒読)
前作でも本作でも見せまくってるけどな!

エンドロールの"親の声よりも聴いた"もなかなかですね。確かにタイトル画面の時点でちょっと思いましたが、まさか作内でそんな言葉が出てくるとは。メタなネタが多めだなとは思っていましたが、さすがに不意を突かれました。


ゲームの部分についても触れないわけにはいきません。本作はティラノスクリプトで作られた謎解きゲームですが、この謎の部分が思っていたよりよく考えられていて、解けた時はすっきりした気分になりました。結構難しいですが、作内でもよく探索すればヒントをもらえるし、どうしても解けなければ作者さんサイトによりあからさまなヒントも用意されています。解けなくてつまらない、もやもやするといったことにならないようしっかり準備されていて好印象です。
ちなみに私は2つほど作内ヒントを見ました。美術室だけはノーヒントで解けたのですが、その他が見当もつかず理科室のヒントを見たところ、なるほどそういう事かと驚き、その他の部屋の謎を解く方向性にも気が付きました。あとは最後の昇降口もヒントを見てしまいましたが、こうしたお助け機能を使った上でも謎解きの快感が得られるような絶妙なヒントにしてあるあたりも上手いですね。

エンディングは、我慢の限界に達してしまうものを含めて4種類。分岐条件は直感的にも分かりやすいので、謎解きさえできればエンディング回収はたやすいでしょう。また、普通の作品なら、エンディングをすべて回収したところで満足するところでしょうが、本作にはアドベンチャーゲームにしてはかなり珍しいやり込み要素が存在しています。なんと、ボイスの回収率や最速脱出記録、ミニゲームのハイスコアなどが記録されるのです。これはすごくいい仕掛けだと思います。目標や成果が目に見えるだけでこんなにやる気になるんですね。シナリオの長さに比して相当量のボイスが収録されている本作ですが、この機能が無ければ全ボイス回収をするモチベーションはなかなかわかなかったでしょう(そもそも未回収ボイスがあることに気付かない可能性が高い)。私が最後まで回収に苦労したボイスは、通常のプレイではまず起きないだろう状況下の教室で聞ける台詞だったのですが、このような状況まで考えてボイスを用意したりデバッグされたりしていることも凄いなと感じました。

ちなみに私のやり込み実績はこんな感じです。
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SSSランクが存在するのか気になって、相当な回数試行錯誤しました(ミスったらリセットしてやり直したりしたので、記録に残っている回数の倍くらいはプレイしているはずです)。しかし結局バスケットボール1万点×3、アイテム8回収、脱出タイム2分台を同時に達成してもSSランクだったので、これが最高なんじゃないかという結論に至りました。


というわけで「ありすえすけーぷ」のご紹介でした。とってもかわいらしい脱出ゲーム、一度やったら全ボイス回収までやり込みたくなるはず。ぜひプレイしてみてください。
それでは。

今回は、ねこのさんのありすすいーぱーをご紹介します。

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ジャンル:パズル&ノベルゲーム
プレイ時間:30分
分岐:バッドエンドあり
ツール:ティラノスクリプト(ブラウザ可)
リリース:2020/4
備考:ティラノゲームフェス2020技術部門優秀賞受賞作


前回の記事で少し話題に出した作品です。
本作はパズルパートとノベルパートからなっていて、パズルパートはマインスイーパーそのものです。ステージ1から3があり、それぞれ本家マインスイーパーの初級、中級、上級に対応します。ノベルパートはパズルへの導入といった感じで、はっきりしたシナリオのようなものはありません。しかしとにかくすべてが可愛らしい作りになっていて、それが本作の魅力となっています。

本作の主人公ありすは作者さんの前作(ありすとーく)でも出てきたキャラクターなのですが、ありすとーくの段階ではボイスはおろか立ち絵もなかったので、かわいらしいのイラストにかわいらしい声がついた本作を最初に見たときは結構驚きました。しかも、イラストが本当に多彩なんです。ノベルパートでの立ち絵とは別に、パズルパートでは画面の左側でデフォルメされたありすが見守っていてくれますし、パズルを間違えると泣き顔になるなど芸が細かい。

私が本作をプレイして一番すごいと思ったのは、ステージ間のカットインです。ストーリーモードでステージをクリアするとちょっとしたカット(タイトルコール)が入ります。本編プレイ時には2回しか見ることのないシーンですが、本編クリア後にタイトル画面のおまけ("えくすとら"とは別に"おまけ"があります)からギャラリーを見ると、このカットインがなんと14種類も並んでいたのです。普通にプレイしただけでは到底見る機会のないイラストをよくこれだけ用意したなと感心しました。

ボイスの方も負けてはいません。異なるカットインごとにきちんと表情の違うタイトルコールが設定されていたり、あらゆるボタンをクリックした際にボイスがついていたり、もはや単なるフルボイスというレベルではないくらい声が入っています。本作プレイ後に「ありすとーく」を再プレイしたら、ありすの可愛らしい声が脳内再生されました。特に、本作でよく聞いた口癖なんかは完全に脳内で再現できちゃうんですよ。

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パズルの面では、本当によくマインスイーパーを再現しています。左右同時クリックで周囲のマスを開く機能も実装されており、かなり解きやすくなっています。ただ、最初に開くマスが0のマスとなる本家の仕様はティラノスクリプトでは難しかったのか、再現されていません。代わりにスタート時に地雷でないマスが1つ与えられていますが、特に上級ではこのマスを開いても特に次に開くべきマスのヒントになる情報が無く、最初から運任せになってしまう場面が多かったように思います。スタート時に与えられるマスを非地雷マスではなく、0のマスの中からランダムで選ぶ仕様にするだけでこのあたりの理不尽感はだいぶ軽減されるのではないでしょうか。

私はパズルには相当慣れているので、マインスイーパーの解き方に困ることはなかったのですが、本作では初心者のための親切な救済システムとして"お願い☆目星"という機能も実装されています。使うとまだチェックを付けていない地雷マスをランダムで一つ教えてくれるという機能で、解き方が分からなくなった時には活躍してくれるでしょう。この機能を使わずにステージ3をクリアすると得られる実績がありますが、初心者だとちょっと厳しい、上級者でも運に左右されるレベルです。

ちなみに、ステージを失敗するとありすは転んでしまい、バッドエンド行きとなります。この時に本作につけられたとあるタグの意味が分かる展開が待ってます。作者さんの過去作「ヒトナツの夢」をプレイされた方なら、聖地ゲーといえば通じるでしょうか。瑞菜ちゃんよりは大分大胆な姿勢・構図のスチルが待ってます。個人的にはちょっと大胆過ぎるような気が……。変な転び方してけがを悪化させなくて良かったですね。
あと気になったのは、時々挟まれる下ネタっぽいのはいらなかったんじゃないか、ということくらいでしょうか。

これらの失敗展開やその他のスチルの回想モードがある、クリア後はタイムアタックモードとしてパズルだけのモードがプレイできるなどシステム面は痒い所に手が届く仕様で不満ありません。もちろんノベルパートも、スキップやオート、バックログはもちろんボイスリプレイやテキスト速度変更なども可能で大変プレイしやすいです。ノベルゲーム用ツールでパズルを作る技術力はさすがだなと感じました。


普段パズルはやらない方も、逆にガチ勢の方も、息抜きにちょうど良い作品ではないでしょうか。ぜひありすの可愛らしさに癒されていってください。

それでは。

今回はHojamaka Gamesさんのマモノスイーパーをご紹介します。
これまではノベルゲームを続けてご紹介してきましたが、今回はパズルです。mamono1


★favo
ジャンル:マインスイーパー系パズルゲーム
プレイ時間:1プレイ1分~
ツール:HTML5(ブラウザゲーム、スマホ可ただし相当プレイしにくい(後述))、Androidアプリ版もあり
リリース:2016/8(HTML5版。Flash版は2010年)


マインスイーパーというパズルゲームをご存じでしょうか。盤面を地雷原に見立て、マスに書かれた数字を基に地雷の位置を推理して地雷以外のマスを全て開くとクリアとなるゲームで、Windows7までのPCに標準搭載されていました。先日閉幕したティラノフェスでも、ティラノスクリプトでこのゲームを再現してしまったという作品(ありすすいーぱー、レビューはこちら)が話題になりました。
そんなマインスイーパーですが、オリジナルのルールでは残機のような概念はなく、一度でも地雷を踏むとゲームオーバー、最初からやり直しでした。また、地雷の種類のようなものもありませんでした。このマモノスイーパーは端的に説明すると、マインスイーパーに敵の強さと自身のレベル・体力というRPG的な要素を加えたパズルゲームです。
すなわち、盤面に潜んでいる魔物たちには1~5のレベルがあります。そしてマスの数字は、周囲8マスに潜む魔物のレベルの合計を表すのです。普通のマインスイーパーでは、5という数字を引いたら周囲8マスのうち5マスは地雷が埋まっていることが確定します。しかしマモノスイーパーでは、レベル1のスライムが5匹隠れているかもしれませんし、レベル5のドラゴン1体かもしれません。こんな感じで、単調だったマインスイーパーにより可能性と戦略性が増して面白いゲームになっているのです。誰でも思いつきそうだけど今まで見たことなかった、そんなアイデアを実現した作品です。

自分のレベルは最初は1です。この状態ではスライムならノーダメージで倒せますが、レベル2以上の魔物に当たるとダメージを食らいます。体力に多少余裕はあるものの、何度も当たると死んでしまうので、スライムを一定数倒してレベルアップしておく必要があります。すると今度はレベル2のゴブリンもノーダメージで倒せるようになるのです。これを繰り返して、最終的にすべての魔物を倒せばクリアです。
と、長々文章で説明してきましたが、実際にやってみれば一発で分かるのでとりあえずやってみてください。

本家では旗を立てることによって地雷の目印をつけることができましたが、本作では右クリックでマスに数字を書いて敵のレベルをマークしておくことができます。スクリーンショットで黄緑色の数字として表示されているものがそれです。マーキングしたい数字と同じ回数右クリックしなくてはいけないのが若干面倒ですが、クリアには実質必須(特に難易度の高いモード)なので確定したマスには必ず印をつけましょう。

記事冒頭の画像はEASYモードのものですが、それよりサイズの大きいものもあります。HUGEモードだとこんな感じです。
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単に盤面が大きいだけでなく、魔物の最大レベルも9となっており、より足し算も大変になっています。その他、魔物の密度が増したEXTREMEモード、自身のレベルが0のため魔物を一切倒せないBLINDモードもあり、さらにHUGE×BLINDモードなどの超高難易度モードも用意され、上級者も満足の内容でしょう。BLINDモードはオリジナルのマインスイーパーに近い仕様ですね(本作の方が難しいですが)。

さて、ある程度マインスイーパーをやったことがある方なら、次のような場面に見覚えがあるはずです(本家の画像です)
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地雷が右上と左下にある可能性と、左上と右下にある場合の2通りがあって論理的に絞れないパターンですね。上級盤面の最後にこれが残って、
あああ!2択を外してクリア逃したチクショー!!!
となった経験のある方も多いでしょう。しかし本作ではこの現象は起こりにくくなっています。なぜなら、地雷(魔物)の強さの差によって判別できる可能性があるからです。
また、こんな状態もよくありますよね。
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空きマスの右か左にレベル7の魔物がいる可能性のある状態です。自身のレベルが6以下のときは安全にマスを開く方法が無いように思えます。実際、オリジナルのマインスイーパーではこの状態は運を天に任せるしかありません。しかし本作では、すでに倒した魔物をクリックすることで、数字マスと同じようなヒントを得ることができるのです。

ゴブリンをクリックするとこんな感じになります。
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すると、上のドラゴン(レベル5)と新たに得られた6の情報から、空きマスの右側にはスライム(レベル1)がいることが分かり、安全に開くことができるのです。この6のマスをもう一度クリックすれば、元に戻すこともできます。

こんな風に、マインスイーパーでは頻繁に現れる論理的に解けない状況を、このマモノスイーパーではかなりの割合で回避して解ききることができます。パズル好きの方にとってはたまらないのではないでしょうか。

UIについては、少々改善の余地があるでしょうか。ズーム機能があるだけで相当プレイしやすくなると思います(ブラウザのズームで代用はできる)。また、画面下に表示される残り魔物数カウントを、倒したものだけでなくマーキングしたものも減らしてくれるとより終盤に悩むことが減るように思います。BLINDモードではこの仕様なのになぜほかのモードでは違う仕様になっているのでしょうか。本家では実装されている、マウスの左右両方のボタンを同時に押すことで周囲のマスをまとめて開く機能もあると嬉しいところです。マーキングした数字未満のレベルのときはそのマスを開けないのは、誤クリックの危険性を緩和してくれる良い仕様ですね。

このゲームはもともとFlashで制作されており、そのままだと遊べなくなってしまう所でしたが、HTML5移植版が制作され、現在も遊べるようになっています。作者の方に感謝です。
ちなみにブラウザゲームなのでスマートフォンのブラウザ上でもプレイできますが、右クリックがしづらい、マスが小さく誤タップが多発するなどの理由であまりお勧めしません。スマートフォンから遊びたい場合は、UIがスマホ向けとなったAndroidアプリ版をDLしましょう(残念ながらiPhone版は現在はなさそうです)。

また、効果音やBGMなどはないので、好みに応じて音楽などを聴きながらプレイするといいでしょう(Android版は効果音のみあり)。いつの間にか時間を忘れて夢中になっていること間違いなしです。

それでは。

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