フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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ファンタジー

こんにちは。今回はRtt Projectさんの「プリンキピア・アルケミア」のレビューとなります。

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ジャンル:プログラミング錬金パズルゲーム
プレイ時間:メインストーリークリアまでで1時間程度
分岐:なし
ツール:Wolf RPGエディター
リリース:2021/2


本作は3年前に公開された作品で、私が本作を初めて知ったのは2021年のフリーゲームCMコレクションだったと記憶しています。私が得意そうな雰囲気を読み取れ興味を持ってはいたのですが、DLせずにそのまま3年経過していたようです。先日何のきっかけだったかは忘れたのですがフリーゲーム夢現で本作を発見し、ようやく実際にプレイしてみました。ゲーム説明から期待されるパズル的な面白さはもちろんのこと、コストの最適化に関して考察しがいのある作品だったので今回ご紹介しようと思います。



本作は基本的にはストーリーモードとパズルモードが交互に進行していきます。主人公は19世紀のイギリスで錬金術で商売しています。自分の工房を拡張したり、客からの依頼に応じたりするために錬金術を使っていくことになります。
この錬金を行うパートがパズルの面になっています。このパズルが少々癖のあるものになっていまして、プログラミングの素養のある方ならパッと飲み込めると思いますが、そうでない場合そもそも「入力」「出力」「スタック」などの意味から日常用語と違っていて困惑するかもしれません。この辺りはチュートリアルステージをやりながら覚えていくしかないでしょう。私は以前Wikipediaでなんとなく難解プログラミング言語の一覧を見ていたとき、Befungeという2次元的にソースコードを記述する言語の存在を知っていたので、システムの理解は容易でした。
今このWikipedia記事を読んでみると想像以上に本作の仕様と同じ(その拡張)になってますね。Befungeの言語仕様のうち<>^v#&+%`\$あたりの文字を使えるようにして、元素の結合/分解という操作を付け加えたゲームという感じでしょうか。作者さんもBefungeに影響を受けて作ったゲームであることをあとがきで明言していました。

という背景情報はありつつも、本作のパズル自体は特に前提知識なく解くことができます。
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やることは格子状のフィールドにユニットを配置し下の実行ボタン(右向き三角形)を押すだけ。
スタート地点から順に通った地点にあるユニットに応じて錬金素材の取得と操作、生成物の出力などを行います。その結果出てきたものが目的物と一致すればクリア。上の画像の問題の場合、ガスを2分子取り込んで片方を分解、火の元素を一つ捨てて結合したものを出力すればOK、というのを回路にしたのが正解となります。
このあたりの操作は慣れればすぐできるようになるのですが、条件分岐を使うようになってから難易度が一段階上昇します。

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この問題では入力される素材が一部ランダムとなっています。その中から空気だけを抽出して出力するには、中央にイコールの記号のある制御ユニットを使う必要があります。プログラミングでif文を使うように、スタックに積んだ元素が一致しているかどうかで処理を分けることができるのです。
この画像の場合、取ってきた分子が空気と一致しているならそのまま出力、そうでなければ分解して全部廃棄としています。

これができるようになると格段に回路設計の自由度が増し、様々な問題を解くことができるようになっていきます。

とはいえメインストーリー中の問題はどれもクリアだけを目指す分にはそう難しくありません。私もとりあえずスマートに解くのが難しそうなら力押しの方法でクリアしており、いったん本作はやりつくしたかなと思っていたのです。
しかし作者さんがHPなどで公開している追加問題を見て、本作の秘めた可能性と私のやり残しに気付きました。
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これは作者さん本人のおすすめ問題”金の糸”の私なりの最適解です。金の元素を6個生成してつなぎ合わせる必要があるのですが、ちょうど6個というのが曲者でなかなか苦労しました。これもコストに目をつけずとにかくクリアできればいいというやり方ならさほど難しくはないのですが、追加問題には配布時に目標コストが設定されており、それがこの問題では300Gでした。私のごり押し解法では800Gほどかかっておりコスト削減のし甲斐があるなあと思い3日ほどたった日、6回ループを行う方法の天啓がおりてきました。開始時に出力用金属元素以外にカウンタ変数用の元素をスタックに積んでおき、ループごとに1回変成することによって回路の構造化が可能になると!
これを思いついてしまえばあとは2次元のフィールド上にどうやってこの手順を実現するかを考えるのみ。300Gは多少の試行錯誤で達成することができました。さらに高価なユニットである変成を1か所にまとめて通る向きの縦横で処理を識別するなどの工夫により270Gを達成。Twitter等に上がっている情報を見る限りこれが最適っぽい気がしています。

ここまでくると、単にプログラミングの問題を解いているのとは違った、2次元的に回路を組み上げて最適化するという楽しみ、そしてコスト削減で競い合うという楽しみが加わって本作の魅力を倍にしてくれました。追加問題はまだまだたくさんあるので、やり込みの道は長そうです。

この追加問題を取り込む手順はちょっと面倒かもしれません。問題ファイルをダウンロードし実行ファイルと同階層にUserDataフォルダを作ってそこに配置。ゲームを起動してカスタム問題のフィールド上で右クリック→問題を読込をクリック→ファイル名を入力、としてようやく遊べるようになります。理想的には問題ファイルをゲーム画面上にドラッグ&ドロップしたら上記の手順を勝手にやってくれる、といった機能が欲しいですがウディタの仕様上難しいんでしょうか。手動でUserDataフォルダに配置したら自動的にカスタム問題に並ぶ、という機能でもあったら嬉しいです。

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それ以外のシステムについては不満ありません。ストーリーモード、パズルモードどちらにしても動作は軽快でクリックのレスポンスもいいですし、ストーリーを後から読み返せる機能もついているのがうれしいところです(画像の吹き出しクリックで再生できる)。これができない作品はかなり多いので好印象。
回路の仕様で引っかかった点が1点。条件分岐で、初見の時は結合した分子に対する判定を期待していたので想定していた動作にならず困惑しました。(スタックがA-B A-BならYes, A-A A-BならNoというように分子単位で判定すると思っていたが、実際にはA-Bの部分だけ見てNoと判定されたりA-Aの部分だけ見てYesと判定されたりしているようで、回路の設計を一からやり直す必要が生じてしまった)
あとは初回の名前設定時に最初にEnterを押してしまったらそのまま名前が空で進行してしまったのは微妙かなと思いました。デフォルト名とか欲しいかも。

ちなみに本作のバージョン名がv1.618033と非常に細かい値になっていますが、これは更新ごとに黄金比φ(=(1+√5)/2)の近似値を一桁ずつ増やした結果のようです。Twitter検索では誰も触れてなさそうだったのでちょっとした秘密に気付いた気分でした。


というわけで今回は「プリンキピア・アルケミア」のご紹介でした。
一通りクリアした後はぜひ各ステージのコスト最小化を目指してやり込んでみてください。頭をひねり続けて試行錯誤して、効率的な回路を考え付いた時の達成感は最高です。できればランキングなどあるとさらなるモチベーションになったかも。

それでは。

こんにちは。今回は以前から紹介しようと思っていた作品、Shadow's Silhouetteさんの「勇者はG○○gle翻訳で世界を救うことにした。」のレビューをしていきたいと思います。

(6/30追記:タイムアタックの記事を書きました。動画付き解説記事となります)

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ジャンル:再翻訳おつかいタイムアタックRPG(ReadMeより引用)
プレイ時間:1プレイ3分~、完全初見からエンディングまで5時間くらい
分岐:なし
ツール:RPGツクール
リリース:2020/4初公開


私は以前からShadow's Silhouetteさんの作品はかなり好きで、本作も非常にやりこんだのですが最近は公開停止となっており、今更レビューを書くのもなあ…となっていました。しかし先日再公開されたので迷いなくレビューを書くことができます!


本作の導入はよくある異世界転移ものそのものです。主人公(デフォルト名は鈴木)は突然異世界に勇者として召喚されてしまいます。ここで何か特殊能力が手に入って無双する…というのがお決まりのパターンですが本作は違います。そもそも異世界の言葉を理解することができなかったのです。
そこで役に立つのが機械翻訳。なんと異世界語でも翻訳できてしまうようです。しかし機械翻訳は完璧ではありません。日本語としてこなれていない文面や誤訳なども含まれています。それを何とかプレイヤーの力で元の文章を補完することで召喚者たちと意思疎通したり町の人々から依頼を受けてクエストをこなしていったりするのです。
異世界でレベルアップした主人公が最終的に目指すのは魔王の討伐。このラスボスは主人公が召喚された拠点から直接行けるので、やろうと思えばゲーム開始直後から挑むことができます(当然負けますが)。このシステム、「隣の部屋にラスボスがいる。」を思い出します。ただし本作はラスボスを討伐するというRPG的な要素よりも、道中のADV的要素がメインとなっています。


本作は翻訳部分を除いてしまうと、多数のサブクエストのある短編RPGということができるでしょう。町には多数の住人がおり、その多くが何かしらに困っているようです。彼らに話しかけて依頼を受け、達成することでお金を手に入れてレベルアップや装備購入の原資にすることができます。
人によっては”お使い”と呼ばれてRPGの本筋に関係ない蛇足の部分とみなされる要素こそが本作のメインとなっているわけですが、そんな中途半端ともいえる要素を1つのゲームとして楽しめるような工夫を2つ感じ取りました。

1つは先ほどから出ている再翻訳要素です。いかにG〇〇gle翻訳優秀といえど完璧ではありません。異世界語を日本語に翻訳するときにどうしても脱落してしまうニュアンスがあったり単純な誤訳と思しき語句があったり。そんな微妙な訳文から本来の依頼がどんなものであったかを推測してクエストをこなしていく必要があるのです。
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例えばこちらの依頼。「蝶が欲しい-約5」
語順などが不自然ですが意味は伝わるなあといった依頼文です。しかし次の場合はどうでしょう。
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「同僚がスキップしています。少しscられますか」
はっきり言って意味不明です。この文章から依頼を推測して達成方法を見つけて実行するには試行錯誤が不可欠でしょう。他にも「女性の傑作が見たい!」「友達になる3人について学びましょう!」などの元の依頼からかけ離れた訳文が多数登場し、さながら謎解きゲームのようです。

エンディング到達後の2周目モードでは謎のこんにゃく(どう考えてもドラえもんに出てくる翻訳こんにゃく)を食べることでゲームを原文でプレイすることができるようになります。このモードでは時間制限などもないためゆっくりと町を回りながら住人たちと会話していくことができます。こいつらこんな口調でしゃべってたのかとか、意外と時限会話が豊富に用意されているんだなとかいろいろな気付きに出会えると思いますよ。


さて、工夫の2点目はタイムアタック要素です。G〇〇gle翻訳には主人公の持っているスマホアプリを使用しているのですがなんとバッテリー残量が初期状態で3分しかありません。依頼で得たお金で消耗品の魔法石を買うことによって充電することができるため、探索の1秒1秒にお金が消費されるのと同じ状態なのです。
初見の状態では3分間で依頼を1つか2つこなすのが精一杯でしょう。何度も探索に出ることで次第に効率的な周回ルートを開拓し金策の効率アップを目指しましょう。バッテリー残量に余裕が出てきたら経験値を購入することで主人公をレベルアップし、探索範囲を広げることができます。そしてまた新規の依頼を開拓して依頼文の解読をして…。こうした拡大再生産に似た楽しみも本作のゲーム性の1つでしょう。

本作を普通にクリアするうえではタイムアタックを極める必要まではありません。ゆっくりでも周回を繰り返すことで十分にお金を貯めることができるでしょう。しかし私はそれだけでは満足しませんでした。一体どのような順番で依頼を受け、どんなルートでこなしていくことで最速で依頼コンプリートができるのかを追求します。私のタイムアタックの結果については次回の記事で詳しくご紹介したいと思います。


さて、システム面において工夫されていてプレイしやすいと感じた点がいくつかあるので紹介しましょう。
本作では合計70もの依頼が存在するのですが、この依頼を受けるためには別のこの依頼を片付けていないといけない、というような条件が多数存在します。そうすると同じマップの中でも”今話しかけられる人”と、”フラグ不足で依頼が進行しない人”が混在することになります。多数の依頼を同時進行していると混乱しやすいのですが、本作ではシステム的にこの2種類の人が区別されていて、フラグを進行できる人だけ歩行グラフィックになっているのです。つまり最速でクリアしたいときは歩いている人だけに話しかければよいし、逆にフレーバーテキストを楽しみたい場合は立ち止まっている人に話しかけてみればよいでしょう。
さらに依頼が終了するとその人は透明化してすり抜けられるようになります。これはタイムアタックの意味でも結構大きな変化だったりします。

また、依頼一覧画面もうれしいですね。私はもう全依頼を暗記するほどやりこんでしまったのですが、初見の時は重宝しました。
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さて、これらの仕組みを活用しながら周回して十分お金を稼いだら、レベルアップと装備購入に使ってボス戦に挑みます。一応異世界に召喚された目的がこのボス撃破で最終目標でもあるのですが、これに関しては正直おまけ感が強いです。本作をRPGとして考えるとこの戦闘には物足りなさとか単調さを感じてしまうと思います。
しかし本作の肝(と私が考えるの)は「再翻訳おつかいタイムアタック」の部分です。機械翻訳で遊んだことがあったり、RPGのサブクエストを埋めていくことに喜びを感じる方なら本作もたっぷり楽しめるでしょう。タイムアタックのためのルート構築頑張るぜ!という方はぜひチャレンジしてみてください。私の記録はそう簡単には破れないと思います。次回の記事で挑戦お待ちしています。


それでは。

こんにちは。今回はcomodoさんの「お菓子の国のガトー・ソルシエ」です。

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ジャンル:ファンタジーノベルゲーム
プレイ時間:ボイスを全部聞いて1時間程度
分岐:なし
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2023/8


comodoさんと言えば、私は「コミュ障女子の告白」が好きでフリゲ2023で投票したりもしました。他には「美少年の下僕になりました(?)」や「陽だまりノクターン」など、いずれも乙女ゲームを作っているサークルさんというイメージだったのですが、本作はあまり恋愛要素にフォーカスは当たりません。やや意外に感じましたが本作もいい作品だったのでご紹介します。


まず軽く本作の内容をまとめておきましょう。

物語の舞台となるのはお菓子の王国、アマンディーヌ。美味しいお菓子産業が評判で主要な輸出品でもあり、まさにお菓子の国と言われるだけのことはあります。そんなアマンディーヌには通常の工程でなく、魔法によってお菓子を作り出すことのできる職人たちがいます。ガトー・ソルシエと呼ばれる彼らが作ったお菓子は単においしいだけでなく、食べた人の持つ前向きな感情を後押しするという素敵な効果があるそうです。主人公のマヤはそんな王国での王宮御用達ガトー・ソルシエ。弟のカノンやその他2名の職人と王宮内で洋菓子店を構えています。

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順風満帆かに見えたマヤですが、ある日突然スランプに陥ってしまいます。いつも通りシャルムと呼ばれる液体から魔法でクッキーを生成したのですが、おいしそうな見た目に反して全く味がしません。その日から売り物になるお菓子を全く作れなくなってしまったマヤとカノンはスランプの原因を探すことに。たどり着いた結論は、2人の複雑な過去にありました…

こんな感じでしょうか。
まず本作に関しては気になったところから書こうと思います。

全3章からなる本作ですが、第1章は世界観の説明や人物紹介のようなパートとなり、スランプの発生は第2章に入ってからとなります。ボイスを飛ばして読んだ場合30分程度の短いシナリオなのですが、そのうち最初の10分ほどで物語が動く感じがせず平坦な印象を受けました。美味しいお菓子を作れ、王宮での信頼も厚くお客さんも絶えない、そしてカノンとの関係も良好、といった流れが最初から続くと、理想的な世界でわいわい楽しくやっている様子をただ見ているだけ、というようなある種の疎外感のようなものを私は感じてしまいました。
よんひくいちは」の記事などでゲーム開始の直後の初速から面白かったと書きましたが、本作に関しては逆にスロースターターといった印象を受けました。



しかし第2章で物語が動き始めてからは一気に面白くなってきました。
冒頭で、マヤたちはお菓子を普通に作る職人ではなく、魔法で作る魔法使いなのだという説明がありました。魔法で作られたお菓子には前向きな気持ちになれるような効果も付随しているということも。
スランプの原因を調査する中で、次第に魔法の秘密であったりマヤとカノンの過去が現在につながっているのが分かり、そのあたりの設定が上手いなと感じました。

マヤはかなりカノンに依存しているように見えますが、第1章の段階でその理由は明らかにされません。私はその部分をつまらなく、あるいは不自然に感じてしまったわけですが、2人の過去を知るとやむを得ないというかむしろ当然のように思えます。

また、2人が試行錯誤を重ねる間に何回か回想シーンが挿入されます。この使い方が上手かったように感じます。試しにマヤ1人でクッキーを作って失敗したとき。出来上がったのは見た目もおいしそうで甘いクッキー。事情を知らない私が見るとこれがなぜ失敗なのか分かりません。しかしここでマヤの過去が明らかになることによって、ゲーム開始直後のショッキングなシーンの意味を理解することができる構成となっていたのです。もちろん、作ったクッキーが失敗である理由も一緒に。

第1章が平坦だとは先に述べましたが、冒頭にこの一見意味が分からない悲しいシーンを持ってきたのは、作品全体でメリハリをつける意味でも成功なんじゃないかなと思います。

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食べた人の前向きな気持ちを後押しするという設定も良く活きているんですよね。
こんなお菓子だったからこそ勇気を出してスランプの原因追究に臨めたというのもありますし、後押しすべき感情もない状態からは魔法でどうしようもなかったりといった説明が自然です。そしてそもそも魔法でお菓子を作ることの根幹にかかわってくるんですよね。なるほどと思いました。



問題が解決する段になって、私が第1章の頃に感じていたマヤとカノンの不自然な共依存関係にもメスが当てられます。2人で協力してお菓子を作ってきたことは事実だけれど、それゆえに一人では何もできないとか、相手にどこかに行かれてしまうんじゃないかという強迫観念みたいなものは捨てた方が良いんですよね。2人がお互いを見つめ合っているだけでなく、同じ方向を向いて進んでいけるようなエンディングに私の心も温かくなりました。


そしてエンドロール後のエピローグ。上の方で恋愛要素は薄めですなんて書いちゃいましたがここにきての糖度アップ。油断してたのでびっくりしちゃいました。カノンくん意外と積極的なのね。
本作に関してはボイスも付いていますから破壊力は強いです。

ボイスと言えばcomodoさんの作品ではお馴染みですが、クリア後のおまけ画面から短い前日談・後日談のほかにキャストトークが聞けます。やっぱり声優さんってすごいなあと感じられるのでクリアした後はぜひ聞いてみてください。

それでは。

こんにちは。今回はりっとさんの「スノードームは夢を見るか?」のレビューです。

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ジャンル:ファンタジーノベルゲーム
プレイ時間:2時間
分岐:なし
ツール:Live Maker
リリース:2015/3


本作は実は同作者の前作「snow date」の続編となっているので、前作を先にプレイするのが推奨されています。「snow date」は10分から15分程度の短い作品なので手軽に読めるでしょう。

「snow date」では、「この世界はスノードームの中なのよ」という印象的だけれども単体で意味の分からない台詞が出てきます。本作は同じ世界観の中で、この台詞がどういう意味だったのかが次第に明らかとなっていくお話と言えるでしょう。


さて、本作の主人公の少女は非常に癖の強い人物です。ある雪の日、町でこれまた素直じゃなくてややこしい男の子とぶつかり転んでしまいます。お互いに罵り合ってその日は別れた2人でしたが、翌日同じところでまた顔を合わせることに。気まずい沈黙かと思いきやまたも口げんかが始まるのでした。
お互いにうっとおしいと思いながらも先に立ち去るのはなんか負けた気がして意地でもどかない2人。何時間経っても雪が降り積もっても寒さに耐えながら絶対に動かない2人、もはやツンデレとかいう域を超えてバカというか仲良しというかなんというか…

物語の序盤はこんな感じで素直とは正反対の2人がお互いをバカにしたりいたずらしたりしながらも、次第になくてはならない存在へと変化していく様子がじっくりと描かれます。不本意そうにしながらもお礼を言うことを覚えたシーンなんかは偉いね~とほめてあげたくなります。ラブコメのような状態で見ていて楽しいのですが、これは本作の導入部分にすぎません。

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クリスマスの前の日、どうせ一人ぼっちで寂しいんだろなどといつものように突っかかっていく二人。話し相手くらいにならなってやらないこともない、と何とも遠回しに明日も会う約束をします。
そんな翌日、女の子はいつものようにベンチで待っているのですが、男の子はいつになっても現れません。その日は妙な胸騒ぎがするまま帰宅することにしますがやはり不安。翌日、森の方で見たという目撃証言をもとに探しに行くことにします。しかし結局見つけることは叶わず、彼の家に帰った痕跡もなく、完全に行方不明となってしまうのです。

失意の中帰宅した女の子のもとへ、突然「願いを叶えてやってもいいんだぜ」などと言う怪しい男が現れます。怪しいとは思いつつも藁にも縋る思いで彼を返して欲しいと望んだ少女は、クリスマスの2日前、彼と喋っているところに戻ってきます。そう、本作はループものであったことがここで明らかになるのです。



ループものに慣れた皆さんなら大体予想がつくでしょう。何度ループを繰り返そうと、簡単に彼を救うことはできません。森へ行かないよう忠告したり、見張ったりもしますがことごとく失敗してしまいます。そんな彼女がたどり着く真相とは一体どんなものなのでしょうか。


ループという形式をとる作品は他にも多くあります。当然ながら同じ時間を何度も繰り返すことになるため、中にはその繰り返しの描写が単調でダレてきてしまう作品もあるのですが、本作は本筋に必須な描写だけに絞ってテンポよく進んでいくのが長所の1つかなと感じました。

2周目の段階では森へ行くなと忠告し、それ以外はいつものように彼とじゃれ合っていたところまで書かれていますが、再度救出に失敗して以降はもう各周回ごとの様子が細かく出てくることはありません。その分女の子の頭の中には彼を救出することだけしかない様子がプレイヤーにも伝わってくるのです。

その後もメインのストーリーに絡んでくるシーンだけが細かく描写されるので本筋が掴みやすく、また途中で飽きたりすることなく読み進められるのです。
本質でない部分が省かれている分密度が高く、プレイ時間のわりに大作をプレイした気分にもなれます。


そんな感じで結構な分量のある作品なのですが、この間ずっと登場人物に名前がないのはさすがに寂しいなと感じました。レビューでも男の子とか女の子としか書けませんし、作内でも常にお互いのことを「あいつ」「おまえ」のように呼んでいます。15分の短編とかならそれでも十分かもしれませんが、2時間ほどそのままだと名前がないのがかわいそうな気もします。あとはたまにどっちのセリフか分かりにくくて一瞬考えないといけなかったりといった場面も出てきます。

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さて、本作をプレイしていいと感じたところの1つとして、優しい雰囲気を挙げておきましょう。
先述したようにこの物語に出てくる人物はきつい性格をしているわけですが、そんな2人の交流からこんなに優しいというか微笑ましい空気感になるとは驚きでした。表面上の冷たい態度だけでなく、内心の友情や良心みたいなところがしっかりと描写されているおかげだと思います。子供って変なところで意地を張ることがあるよね~、と温かく見守りながらプレイしていくことができます。ツンデレ系の恋愛ものなどとはここが決定的に読み心地が異なるかなと感じました。

また、世界観もそれに合わせて優しく、程よくファンタジックに作られています。私は以前、同じ作者さんの作品で「わたしの愛する、壊れたせかい」や「空っぽたまごは泥を見る」などをプレイしているのですが、本作もこれらに近い雰囲気で進行します。本作には悪役っぽい人物(?)も登場するわけですが、それ以外の町の人なんかは皆優しく良識のある大人たちといった感じで安心して読み進められますね。童話風の世界観とスノードームというアイテムの相性もばっちりだと思います。


逆に少し気になる点は、結局この世界で2人がどうなるのか、謎の男の正体は何なのか、といったところにはっきりした答えが与えられないまま終わってしまうところでしょうか。意味深なセリフによってプレイヤーの興味を引いたり、「男の言う対価とは何だろう」みたいな疑問を引っ張って物語の推進力にしたりといったあたりは上手いなあと感じるのですが、最終的に疑問の解消に向かわない印象を受けました。
私はどちらかというと「プレイヤーの想像にお任せします」タイプの作品よりははっきりした結論が提示されるものの方が好きなんですよね。

ついでにもう一つ、序盤の特定のBGMがひどい音割れを起こしているのはさすがに気になりました。テストプレイしたら気付かないはずはないだろうというレベルだったのでもしかしたら私の環境の問題なんでしょうか?
選曲などの意味では雰囲気に合っているなと思ったので少しもったいなく感じました。

ちなみに本作には立ち絵はありません。しかし大変想像力をかき立ててくれる文章ですので寂しさを感じたりすることもなく、物語に合っているように思います。


こんなところでしょうか。強情ツンデレ少年少女が心を開いていくさまを見たければ本作以上の適任はいないと思います。おまけで男の子視点の方も読める仕掛けも良いですよ! ぜひプレイしてください。

それでは。

こんにちは。今回は、かなり古めの懐かしいともいえる作品、太郎2さんの「Knight Night」について書いていこうと思います。

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ジャンル:コメディ系RPG
プレイ時間:一直線でエンディングまで5時間半
分岐:基本一本道
ツール:RPGツクール
リリース:2008/1


本作はかなり有名な部類だと思うのですが、これまでプレイしたことがありませんでした。今週プレイしてみて、やはり面白かったなあと思うのでご紹介します。

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主人公のアドニス(名前変更可)は”ちゃっちい王城”に仕える騎士団長。ある日王様に呼び出され命じられたのは魔王の討伐。超王道なファンタジーRPGのオープニングではありますが本作の雰囲気は一味違います。王様からの伝令で、自らの部下でもある騎士に対して「どちら様ですか」扱い。さらにはアドニスはちゃっちい王城の隣に立てたテントで生活していると言います。すでにツッコミどころ多数。このゲームでは2択の選択肢が大量に出てきますが、どちらを選んでも直後の会話が変わるだけでストーリーの流れは変わりません。それなら俺はせっかくだからカオスな方の選択肢を選ぶぜ! というマインドをお持ちの方なら本作を存分に楽しめるでしょう。

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王様バーンズ。RPGの導入でお馴染みの命令

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これすらも断れます。まあ断っても無理やり"神下ろしの儀"に進まされるのですが…


ちなみにこの神下ろしの儀、めちゃくちゃ危険でアドニスが死んでしまう可能性もあるようですが、本人や王子ゲイル、姫ミカの反対も構わずに儀式を決行してしまいます。その結果アドニスに宿ったのは神の力などではなく…やたらうるさくて自信過剰な別の世界の魔王キーファでした。
こうしたドタバタ劇の中、アドニスは魔王討伐の旅へ出ることを余儀なくされるのでした。



アドニス自発的にしゃべることは全くない(RPG主人公にありがち)のですが、道中では常にキーファが御託を並べまくっているので大変賑やか。プレイヤーに多くのツッコミどころを提供してくれます。

道中で仲間になるメンバーも曲者ぞろい。成り行きでアドニスに助けられた薬売りの娘リュカは、恩を返せていないといって半分無理やりアドニスの旅についていきます。山越えの最中で出会った魔女ナナリーはただ女装してるだけの男(でも魔女を名乗ってる)。寂しいとか言って魔王討伐の旅に同行してきます。最後に仲間になるのは賢者ケイト。アドニスが出会う前から重度の変態であることが明かされています。

こんな濃~いメンバーを抱えて進行していくストーリーですが、終盤に近付くにつれ壮大な設定が見えてきます。
本作のストーリーは主にケイトを仲間にするまで(ここでは1部と呼ぶことにしましょう)、北西諸島をクリアして魔王城を攻略するまで(2部)、エンディングまで(3部)の3つにおおよそ分けることができるでしょう。

1部では先ほど見たようなツッコミどころの嵐。賢者に会うまでに散々寄り道しなくてはならなかったり、途中で立ち寄る村がとんでもない所だったり、別の勇者一行に出会って罵り合ったり。これらのイベントを楽しみながら進めていくことになるでしょう。回復やセーブのために各ダンジョンに先回りしてくれているゲイルやミカが好きで、あの音楽ですでに笑えて来ちゃいます。バーンズはいらない(笑)
2部に入ると物語が少し不穏な雰囲気を帯びてきます。キーファが封印されてしまったり、リュカが呪われてしまったり…。しかし全体的な雰囲気はまだまだコメディ色が強いです。私は、敵の足音だ!と警戒していたらアドニス一行をスルーして走り去ってしまうやつが好きでした。
物語の終盤、私が3部と呼ぶことにした辺りまでくると、この世界に隠された壮大な設定が明らかになってきます。序盤からたびたび登場していたけれど意味深な事しか言わずにきたあの人の正体や目的も明らかに。まさかこんなふざけたイベントばかりのRPGでがっつり設定や世界観が練られているとは思いませんでした。


さて、RPGとしての戦闘部分を見ていきましょう。本作の難易度は易しめに分類されるでしょう。
ザコ戦は物理で殴っているだけでも大体何とかなりますし、敵HPは低めなのでMP消費を辞さなければ1ターンで倒し切ることも可能でしょう。入手経験値やゴールドも高めに設定されているため、新しい村に着いて強い武具が解禁されるたびに最強装備に買い替えることもできます。そこまでのお金が足りない場合は武器を優先することをお勧めします。

ただ最序盤のアドニス一人で冒険しているころは割と死にがちでした。序盤のステータスでは魔法攻撃にめっぽう弱く、回復手段も乏しいため2回くらい食らうと普通に死にます。慎重を期す場合、逃走コマンドなども使っていきましょう。
リュカが仲間になって以降はかなり安定します。どんどん新しい武器を買って先へ進んでいきましょう。

ちなみに敵モンスターの名前やアイテム、技の名称もふざけまくってます。
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↑なぜジブリキャラなのか。

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↑敵というか食材として見てる?

ボス戦においても難易度は高くないでしょう。ステータス変動魔法が永続効果を持つため、最初に数回使っておくだけでかなり楽になります。一部状態異常が厄介な場合があるので、回復アイテムを数個持ち歩いていると安心でしょう。MP回復アイテムもあれば万全です。

ラスボス戦においてはこれまで出会った仲間(?)たちの協力もあったりして熱い展開です。散々ふざけたストーリーを展開してきた本作ですが、こうした王道の感動シーンもしっかり用意してくれています。

ちなみに本作はクリア後のおまけ部屋がかなり豪華です。
一枚絵、BGM鑑賞モードのほか、各キャラクターについての裏話だったり登場する村の設定の話などが盛りだくさん。ここで私は初めて気づいたのですが、メインシナリオに関わらないサブクエストも多数あったようです。そのほとんどは2部の間の時限イベントということで、私はほとんどスルーしていたようでした。気付かなかった…


というわけで今回は「Knight Night」でした。
古い作品ゆえに解像度が粗かったり、親切なシステムはなかったりしますが、それもあまり気にならない大作ですのでぜひプレイしてみてください。

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