フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
初めての方は、ぜひごあいさつをご覧ください。評価の基準については、レビューについてに記してあります。
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ファンタジー

こんにちは。今回はamorosoさんの「CHOICE」のレビューです。

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ジャンル:ファンタジー乙女ゲーム
プレイ時間:フルコンプまで6時間程度
分岐:大きく攻略対象2人に分岐。エンディング計11種
ツール:吉里吉里
リリース:2011/4
備考:15禁。攻略対象の増えたシェア版もあり。本記事はフリー版でのレビュー


本作はちょっと変わった経緯で発見した作品です。私が何となくYouTubeを開いてみたら、本作のPVが流れてきたんです(フリーゲーム関連のものを見るアカウントには入っていないときだったのでなんで突然トップに表示されてたかは謎です)。ふりーむ等で公開されていないのでこれまで全く知らなかったのですが、面白い作品でした。


主人公は短大を卒業して派遣社員として働く桜木花梨(名前変更可)。仕事から帰ってきたところ、突然異世界に転移してしまいます。どうやら目の前にいる明らかに王子の格好をした少年が召喚魔法で呼び出したらしいことが分かります。突然召喚されて訳も分からず、とりあえず元の世界に戻すことを要求しますが、王子は何と送還に失敗。花梨は見た目5歳ほどの子供の姿になってしまったうえ、呪文の記された魔法書は焼失してしまいます。帰る術を失った花梨は、旅に出ているという王子の魔法の師匠、セフィさんの帰還まで異世界で過ごすことになるのでした……


今でこそ異世界転生ものラノベやアニメは流行していますが(とはいっても私は全然見たことないけど…)、本作の公開は2011年。10年前にこの概念あったんだな~というのが一つ学びでした。
そしてもう一つ、本作の肝となっている設定が”幼児化”。某体は子供、頭脳は大人な名探偵はもう不自然というかバレバレだろ、みたいな言動が多いですが、本作の花梨はあれよりはうまく子供を演じてます。そのうえで子供ならではの方法で交渉したり、あるいは脅迫したりと大変強かで面白かったです。


異世界の召喚されたその日、王子は喋られると面倒くさいからと花梨に声が出ない魔法をかけたうえ、第三騎士隊の隊長クラウスと副隊長ルカを呼びつけ、セフィが帰って来るまでの間子供になってしまった花梨の世話をするよう言いつけます。ここでクラウスを選択するかルカを選択するかで本作のシナリオは大きく2つに分岐します。私はまずクラウスルートに入ることにしました。


第三騎士隊の隊長を務めるクラウスは常に多忙。そして愛想のいいタイプではない上に不器用なため、花梨は冷たい人という第一印象を抱くことになります。確かに突然異世界に召喚された(見た目)5歳の子供に向こうの寝室で一人で寝ろと要求したりするのは配慮不足かもしれませんね。しかし彼はただ不器用なだけで、実際に冷淡な人というわけではないことが次第にわかってきます。この流れと花梨の心情描写が巧みでとても楽しく読めました。

こうしたシリアスな部分もありつつ、子供になってしまったという設定からコメディ的な部分もあります。お風呂一人で入れる? とか、食堂に行ったらお子様ランチが出てきた! とか。騎士たちが我先にとデザートにイチゴをあげようとしてくる場面とか、もはや花梨よりも騎士たちがかわいい!

CHOICE2

ルカルートではちょっと雰囲気が違います。ルカはクラウスとは違って勘もいいし愛想笑いもします。しかしその正体は大のいたずら好きでした。花梨のことを”隊長の隠し子”と言って妙な噂を流させたり、セクハラまがいの行動をして騎士たちをからかったり。そんな様子に花梨は、「子供相手なら分かるけどあたしは中身大人なのに~」みたいな感じで恥ずかしがったりというシーンがクラウスルートよりも目立ちます。私はこの感じよりクラウスみたいに冷たく見えたけどちゃんと愛情を感じる、みたいな展開の方が好きでした。(というか流石にこの行動はどうなの? と思ってしまった)


さて、どちらのルートに進んでも5日目くらいには物語が大きく動きます。ルートによって事件の詳細は違いますが、どちらにせよクラウスとルカがお互いに信頼し合ったうえで解決に動いていくのが良かったです。ルートに入ったキャラ以外がフェードアウトしてしまう作品も多いですが、それ以外のキャラとの交流なども描かれると物語の中で生きた存在として読み手の印象にも残るんじゃないでしょうか。
この事件の対処には花梨自身も重要な役割を果たします。子供の姿を利用して作戦を実行したり、大人の姿に戻ってから動いたりといろいろできるのはこの設定ならではですね。

ちなみに本作には立ち絵はありません。子供と大人の違いをビジュアル面で演出したりといったことも可能だったと思うのでそこはやや寂しく感じました。スチルはあるので余計に…。


というわけで「CHOICE」のレビューでした。異世界転生×幼児化×乙女ゲーというジャンルの可能性を感じる作品でした。全体的に男性キャラがかわいい(見た目じゃなくて行動的に)作品だと感じたので好みの方はぜひ!

それでは。

こんにちは。今回はアクアポラリスさんの「さよなら、リアル」です。

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ジャンル:ボーイミーツガール系ノベルゲーム
分岐:基本1本道
プレイ時間:1時間
ツール:LiveMaker
リリース:2017/9


久々に心を大きく揺り動かされる系の作品に出合いました。まずはあらすじの紹介からまいりましょう。


主人公の柴里孝太郎は幼いころから母親に「あなたには奇跡を起こす力がある」といわれて育ってきた。母親亡き今も奇跡をかなえる相手を探す旅の最中。孝太郎はある田舎町で出会った少女、桂奈月に何となく奇跡の相手であるような予感を抱く。果たして謎多き少女奈月の抱える問題とは何なのか。孝太郎は奇跡を起こすことができるのか…


こんな感じでしょう。
今回は諸事情によりプレイ中の私の心境を青色の文字で示す中継方式でいきます。重要なネタバレのある場所は折りたたむのでネタバレOKな方は展開して読んでください。


~~~~~
まずはreadme.txtを読む。
辿り着いた海の町。
そこで出会った一人の少女。

二人だけの、短くて長い夏が、今、始まる―――
ふむふむ。所謂ボーイミーツガールものだな。

-オープニングテーマ-
『月の雫』
作曲:多夢(TAM)
TAM Music Factory 様
http://www.tam-music.com
お、TAMさんの月の雫じゃん。悲しげだけど優しく落ち着くあの曲、けっこう好きなんだよな~

-エンディングテーマ-
『愛の歌』
作曲:龍崎一
作詞/歌:Mai
龍崎一 様
http://dova-s.jp/_contents/author/profile061.html

「も~し~ 叶うなら~♪
あした~もあ~なた~のとなりで♪」
(唐突に脳内で鳴り響く音楽)

エンディング曲龍崎一さんの愛の歌じゃん!!
この曲好きなんだよね~なんと最近ちょうど目覚ましの音この曲にしてるし!!


確かにこの曲風はアクアポラリスさんの作品に合うかも~


~~~~~
ゲーム起動、開始する。
なにやら主人公は”特別な力”を持っていて、一生に一度奇跡をかなえられるらしい。

あ~冒頭に意味深なシーンを置いとくタイプのやつか。
ファンタジー気味の話なのか、単に思わせぶりなだけなのか…今後に期待。


~~~~~
海辺で奈月と出会う。

いきなりヒロインの登場!
ん~、ちょっと子供っぽ過ぎる?16にしては天然とかいうレベルじゃない気も。いい子な感じはするけどね。

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~~~~~
別れ際。

なるほど。ちゃんと冒頭で提示された”奇跡”が物語に絡んできそう。
期待できるかもな~


~~~~~
奈月と駄菓子屋に行ったり、神社で水鉄砲合戦したり。

楽しそう。でもこの様子見てると孝太郎の方も奈月のことを言えないくらいには非常識なのでは?
奈月自身が何かをあきらめようとしているところを見ると、これをどうにかできるかが奇跡の成否を分けるのかな~


~~~~~
3日目。旅館へ

ええ~ちょっと気が早くない??
サクサク進んで良いという見方ができないこともないけど…これはエロゲか?


~~~~~
その後……

なるほど。思いが届けば叶う。予定調和的で意外性がないともいえるけど、この安心感とほんのり心温まる感じがこの作者さんの持ち味だなあ。「五月雨の記憶」とかもそうだもんな~
ちゃんとタイトルにもつながる解決法で良かったなあ。

この後、本作の核心に関わるネタバレがあります。

クリックで展開 ~~~~~
タイトルに戻ると、"Real"編がプレイできるようになっている。

これは本編読了後に別視点からの話を読めるタイプのやつだな。よしよし。
本作でいうと、この話を奈月視点で読めるという事だろうか。
奈月の境遇については若干語られたけど、孝太郎は正直正体不明感が強いしな~その辺も分かってくるのかな。



~~~~~
冒頭の意味深なシーンを終えて…

???
なんだこのBGMは!

そ、そうか"Real"と"Phantasm"ってそういう事だったのか!!(期待値急上昇)
これは……救われるのだろうか。

~~~~~
何事もなかったかのように描かれる孝太郎と奈月の邂逅

ああ、ここから次第に話がずれていくのか。きつい展開になりそう。
ところでこれ既読スキップは効かないみたいだけど文章全く同じなのかな。


~~~~~
駄菓子屋で

確かに1周目に違和感あったけど…。
あの一般常識の無さ。そしてあの発言。
その原因に得心。


~~~~~
その後…

辛すぎる…騙されたぜチクショウ!!
後書きが…悔しいことにその通りだ!
それにしてもさっきまであった立ち絵が消えるだけでもここまでの虚しさ。
この演出効果的だなあ。

しかしさすがに救いがなさ過ぎてなあ。もう少しいい落としどころみたいなところなかったかなあ。
ふわふわしていて理不尽感も強いからなあ。

~~~~~
そして最後にIF編へ

そうそう、これこれ。この安心感。平穏のありがたみ。身にしみて感じるよ…
~~~~~


という感じなんですが、プレイしていてどうしてももったいなく感じたところが1つ。
おまけのIF編で孝太郎のことを「考ちゃん」と呼ぶシーン!!
絶対漢字が間違ってる!! もったいない!



以上、「さよなら、リアル」のご紹介でした。
「田舎の夏で女の子に遭遇」の古き良き展開の魅力を確認できると思います。

それでは。

こんにちは。今回はGigabit Millionさんの「おもいをつたえるプログラム」のレビューです。

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ジャンル:SF風ギャルゲー
プレイ時間:1プレイ3分/フルコンプまで20~30分
分岐:ゲームオーバーあり
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2022/8


最近はやりのAIっぽいタイトルとノベルゲームには珍しい絵柄に目が留まってダウンロードしました。
いつものようにあらすじの紹介からまいりましょう。

主人公の高次宙(たかつぎ・そら)はRPG開発が趣味の高校生。なんとRPGに搭載するAIを開発し、そのAIがRPG世界を作り上げた神となったのです。しかし現実世界の宙は超絶コミュ障。女の子と目を合わせる事すらままならない始末。そんな宙を案じて神が現実世界へAIのピアを送ってくれました。ピアとともに思いを伝えられるよう特訓し、告白を成功させよう!



プロローグを読み終わったら”チュートリアル”へ行きましょう。ここでやや独特な本作のシステムをピアが可愛くノリ良く説明してくれます。
基本は一般的なノベルゲームやシミュレーションゲームと変わらない選択肢形式。各ステージごとに定められた目標を達成すればクリアです。しかし本作では選択肢は事前に選んでおかなくてはなりません。この後何が起こるのかを想像しながら適切な選択をして指示を与えましょう。その行動を起こす具体的なシチュエーションが分からないまま選ぶことになるので、初見だとナンセンスな行動を起こしてしまったりしますがそのあたりがギャグに転化されて面白いところだなと思います。


チュートリアルの目標は”じゃんけんに勝つ”こと。ピアと真剣1本勝負です。しかしその選択肢が

  • 「グー」
  • 「チョキ」
  • 「志村け〇」
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???????

こ、これは私に選べというのか? かの有名なバカ殿を???

というわけで真っ先に選びました。
……結果はもちろんミッション失敗。知ってたけどな! あとじゃんけんのお約束と志村けんに関係があることは知らなかった!


とこんな具合にネタをはさみながら思いを伝えるための特訓は続きます。

さて、スクリーンショットをみて気付いた方もいるかと思いますが、本作で登場する立ち絵はちょっと独特です。おそらく3Dモデルが作られていて、それを2Dのゲーム画面に落とし込んでいるんじゃないでしょうか。動いたりはしないのですがなかなか面白いなと思いました。
この方式のいいところは、ピアに様々なポーズをさせることができるということでしょう。先ほどのじゃんけんミッション失敗時なんか、
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こんなに腰を折って全身で残念な気持ちをアピールしてくれます。
他のステージでもビシッと様々なポーズを決めてくれるピア。そのキレの良さが楽しい。

あの「女教師・美喜」シリーズの影絵を連想するレベルです。本作には影絵だけじゃなくて色も顔もついてますから、そのパワーは強力です。
(「君の瞳はサンダーボルト殺人事件」シリーズはプレイしたことないのです。私が存在を知った時にはすでにDLできない状態でした。リンク先はなぜか2020年に記事が書かれたニコニコ大百科です。)



異世界での特訓を通して成長した宙。果たして憧れの千風瑠(ちふる)さんへの告白を成功させることはできるのか! それはあなたの選択にかかっています。
ちなみにこの最終ステージである学園ラブコメ編、ミッション成功のハッピーエンド以外にも、すごく切なく魅力的な展開を起こすルートが存在してます! むしろこのルートがタイトルにも沿っていて感心でした。私が先に到達したのもこちらのエンディングです。

ピア自身の思いはどうなのか。それはステージ間の小話でも匂わされます。最後にはエピローグでも効いてくるので、私の選択順は作者さんの想定通りなのかな~と思いました。


本作をプレイしていて気になったのはコンフィグ画面です。
本編中いつでもCONFIGボタンから飛べるのですが、なぜかこの画面がピントが合っていないようにぼやけて映る。最初疲れて私の目がおかしくなったのかと思って、1回寝て翌日にプレイしたのですがやっぱりコンフィグ画面だけピンボケのようになってます。なんでですかね?
(10/30追記:10/14付けの更新でこの現象は修正されました。選択肢の履歴も見やすくなるよう改善されてます)
その他についてはUI、システム含めて特に不満はありません。ステージ開始時に前フリから見るのか選択肢選ぶところから行くのか選べて親切ですね。特に学園ラブコメ編ではいくつかのゲームオーバーパターンとイラストがありますから、回収に役立ちます。皆さんもぜひコンプリートまでやってみてください。不良なんかより先生の方がよっぽど怖くなりますよ(笑)


というわけで「おもいをつたえるプログラム」のレビューでした。皆さんも全身で主人公の応援をするピアに癒されつつ、ナンセンスな展開に一緒にツッコミつつ、最後に待っているちょっとだけ感動的な展開を求めて冒険に出ましょう!

こんにちは。今回は禁飼育さんの「スレガル」のご紹介です。

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ジャンル:ファンタジー乙女ゲーム
プレイ時間:4時間
分岐:フリー版はなし(後述)
ツール:NScripter
リリース:2016/7(フリー版)
注意:18禁、(性)暴力、流血、非倫理的描写あり



はい、半年以上ぶりの18禁作品です。1月にご紹介した「そしてパンになる」(18禁)以来ですね。「そしてパンになる」では、終盤衝撃の展開があるとはいえ普通の学園生活を送る普通のギャルゲーで、ヒロインと十分親密になってからエッチなシーンがあります。純愛ものですね。
しかし本作「スレガル」では全く違う展開を覚悟しなくてはなりません。以前紹介した「私の名前を呼びなさい!」(15推)に近い方向性の覚悟です。つまり本作においても主人公は大変に酷い、理不尽な、凄惨と言える展開に見舞われます。本作ではそれに加え、性的暴行があります。セクハラなんてもんじゃありません。そういった展開に拒否感を覚える方は絶対にプレイしないでください。
そして本作の怖いところは、それ以外の所にも。むしろほかの所の方がきついとさえ感じられました。この辺のことは後で詳しく述べます。




それでは本作の内容を紹介していきましょう。
主人公コノリ・モチヅキは魔法使いになることを夢見て魔法学園の回復魔法専攻科に通う女子生徒。日本風の名前ですが、本作の舞台はヨーロッパ風(おそらくドイツ)です。かつて交通事故に遭って亡くなってしまった両親のような人を一人でも助けるべく回復魔法の習得に努めていますが、学園での成績は最下位レベル。回復科教員のジドノ先生には卒業すら危ういと言われてしまう始末。そこでジドノ先生に1か月間特訓をしてもらうことになります。落ちこぼれのコノリにも優しく適切に教えてくれるジドノ先生。勉強の甲斐もあり試験での成績も向上。次第にジドノ先生へ好意を持つようになるコノリであったが……

といったところでしょう。この、コノリがジドノ先生のことを好きになっていく過程。この描写は文句なく純愛乙女ゲーなんですよね。まあ生徒とそこそこ歳いってると思われる教師の関係というところから普通ではないんですが、お互いを思いやる気持ちとか喜んでもらいたいという気持ちとか、そういうのはしっかり感じられます。
主人公はだいぶアホの子なのでギャグ路線多めですが、落ちこぼれの自分に優しく教えてくれ、成功体験をくれた、クラスメートに妙なからかい方をされたときにちゃんとかばってくれた、意外にも甘いものが好きで、ドーナツの話で盛り上がれる……となると、ジドノ先生に惹かれていく描写に説得力があります。

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そんな中でクリスマスの休暇中に普段過ごしている寮から実家に帰省することになったコノリ。しかし駅で電車を待っているところ突然の体調不良によって倒れて意識を失ってしまいます。彼女を学校まで運び様子を見ていてくれたのは学園の校長先生。彼もまた常に仮面を着用していたりと変わった人物ですが優しそう。
友人のキドと妖精たちが帰省ができなくなったコノリを気遣って、数日遅れでクリスマスパーティーを開いてくれたりと彼女の周りにはやさしさがあふれており、体調の方も問題なく回復します。しかしこのあたりから物語は不穏な雰囲気を増していくのです。


たびたび突発的な体の痛みを感じるようになるコノリ。そして校長先生は、「ジドノはやめておけ」と言ってくる。悪い人には見えないけれど……。
そして事件は起こります。体調が悪くジドノ先生の部屋で休んでいたコノリ。しかしトイレに行くために部屋を出たとき、何かをたたきつけるような謎の音が聞こえてきます。妖精さんにそそのかされて様子を見に行くと、蛇のような謎の生物に襲われてしまいます。

ジドノ先生はそんな場面に駆け付け、コノリと妖精を助けてくれます。部屋から出るなという言いつけを守らなかったうえに先生に助けてもらったという負い目から、今後は先生のいうことに従おうと誓うコノリ。しかしその後、ジドノ先生は蛇にかまれた部分の診察と治療を行うと言います。気付けば接触呪術による痣がコノリの全身に広がっています。恥ずかしいのを我慢して先生に診断と治療を任せることにするのですが、、、、、

私はこのあたりで察します。ああ、ついに禁飼育作品特有のきつい18禁シーンが来るなと。このサークルさんの年齢制限のある作品は「おじさん(15禁版)」「処女失格」(18禁)の2作しか読んでいない私ですが、どちらも非常にショッキングな展開を含むし、男は実は言いようもない悪人であるというパターンは完全に学習済みです。
果たしてその後の治療シーンは私の想像通りでした。治療、解呪と言いながら描写はいやらしく、コノリは恥ずかしさに何とか耐えながらジドノ先生の思うままに身を任せています。
「なんだろう、先生は私を助けてくれている筈なのに、どこか違う、何かちがうのだ。」
とコノリ自身感じつつ、先生のことを心から信用しているからこそ、真面目な除去魔法でえっちな気分になっている自分に嫌悪を覚えます。

おかしいと思いつつも受け入れてしまう。あまつさえ悪いのは自分だと暗示をかけてしまう。これは恋は盲目ってやつでしょうか。それとも、ジドノがあまりに狡猾で、邪悪で、対するコノリが純粋すぎるからでしょうか。



……しかし本作を読了した今から思えば、この時はまだ”幸せな物語”だったのです。ジドノ先生がコノリに借りていたハンカチと、黒猫のぬいぐるみを返したとき、物語は急展開を迎えます。
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以降、さらに輪をかけて胸糞悪く、そして凄惨な展開と、核心に関わるネタバレがあります。一度折りたたみますので、かまわないよという方はクリックして読んでください。
クリックで展開 ここまで読み進めると、現在の物語は暗い影を残した状態で終了となりタイトル画面に戻されます。再度Startボタンをクリックすると、章選択が可能となっています。いかにもな赤字で示されたタイトル"バウルサク"を選択すると、時間をさかのぼってコノリがまだ幼かったころ、魔法にも出会う前の両親と暮らしていたころの物語が始まります。

そこでは、かつて平和に暮らしていた思い出、そして家族で遊園地に遊びに行った帰りに両親が交通事故で亡くなってしまったことなどが語られます。
身寄りをなくしたコノリ。親がいなければ訴える者もいないという自分勝手な考えを持った奴隷商人に誘拐されてしまいます。他の誘拐被害者とともに商品として見世物にされ続ける毎日。そんなコノリに目を付けたのがジドノだったのです。年端もいかないコノリに対して容赦ない性的暴力を振るうだけでなく、助けなんてこないんだ、周りの人間なんて誰も自分のことを気にとめたりしてくれないんだというトラウマを同時に植え付けます。

明日にはコノリを奴隷として買い取ることを契約したジドノ。コノリたち子供はその夜のうちに監禁されていた檻からの脱走を敢行します。
ここまで読んでようやく私は気付きました。タイトルの"スレガル"はslave girl、奴隷の少女を意味しているのだと。
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生意気な様子のコノリを気に入ったジドノは脱走されたからと言ってあきらめたりはしません。魔法を使って脱走した子供たちの居場所を突き止めてしまいます。そしてあっさりと脱走を先導した少年とコノリの目の前にたどり着き、そして少年の脱走行為の効果を完全に否定し、彼を発狂させてしまいます。
そう、物理的な暴力、性的な暴力のみならず言葉の暴力も半端ではありません。この凶悪さ、救われなさが禁飼育作品の真骨頂と言っていいんじゃないでしょうか。

そして時は現在に戻り、コノリはぬいぐるみのマートをトリガーにしてすべての記憶を取り戻します。かつて奴隷市場で自分を買い、犯し、自らのよりどころでもあったマートを無情にも奪い取って絶望させたジドノに、あろうことか恋してしまった。もう私にはコノリの気持ちを想像できません。こんなに不条理で、理不尽で、自身の何もかもを否定されるような壮絶な体験が他にあるでしょうか。


そんな言葉で言い表せないほど惨い人物ジドノですが、より高度な魔法使いである校長先生にはかなわないらしい。ついに年貢の納め時がやってきます。
ところが彼はいつ何時でも冷酷で執念深く、そして狡猾なのでした。物語は全く救われない方向で結末を迎えてしまいます。



私は本作を読了し、もう怒りに震えることしかできませんでした。ここまで負の感情のエネルギーを活用した作品にはなかなか巡り合えるものじゃありません。強烈でした…。


…と、ここまでは”フリー版”のお話。フリー版をプレイし終えた私は”おにロリver”にハッピーエンドがあると聞いて救いを求めるように購入しました。DLsiteにて販売中です。フリー版の内容も含んだうえで、コノリが脱走する前にジドノと暮らすことになったifバージョンへの分岐が追加されています。プレイ時間はフリー版含めて7時間くらいでしょうか。

フリーゲームではないのでここでは軽く感想を述べる程度にとどめます。
確かに完全にダークなエンディングだったフリー版に比べると相当マイルドかつ感動的展開となっています。しかしジドノが成敗されるエンディングはないのでそれを求めている方は残念ながらすっきりはしません。それをのぞけばおにロリverではほとんどの人がフリー版よりも幸せな結末を得ることができます。コノリとジドノが長い間を一緒に過ごす描写があるので、信頼関係を持つようになる理由もしっかりあります。
フリー版をプレイして興味が出たらぜひ購入してみてください。


今回は広く勧めるには全く向かない作品ですが、その分独特の魅力というか中毒性があります。禁飼育作品っていつもこうなんだよなあ。1作読んだらしばらくはお腹いっぱいになるんですが、そのうちまたプレイしたくなってきます。
18歳以上で注意書きの内容に同意できるという方はプレイしてみてください。あなたの脳裏に強烈に焼き付くことは間違いありません。

それでは。

こんにちは。今回のレビューはゆきはなさんの「虚ろ町ののばら」です。

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ジャンル:異界探索ホラーゲーム(ReadMeより引用)
プレイ時間:1周3時間/フルコンプまで6時間程度
分岐:ED4種、その他ゲームオーバーあり
ツール:RPGツクール
リリース:2018/10
備考:12推


本作は和と洋の雰囲気の混ざった不思議な異世界からの帰還を描いた作品です。
主人公の境のばらはおばあちゃん大好きな少女。今日もおばあちゃんに会いに行くためにバス停でバスを待っていたのですが……気付いたらバスは壊れているし異常に汚いし、人の形をした亡霊のようなものが出口をふさいでいる始末。この不気味な世界”虚ろ町”で出会った少年、守崎十夜(もりさき・とおや)とともに元の世界への帰還を目指します。


この作品の魅力の1つはそう、圧倒的なビジュアルです。スクリーンショットを見ていただければお分かりでしょう。スチル・立ち絵のみにとどまらず、背景、マップやUI部品に至るまでかわいいというよりは美しいと言える作りこみ。もう何枚かスクリーンショットを貼るのでその美しさを味わってください。
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やっぱり見た目がきれいだと、ゲームを進める原動力にもなりますし、こうして魅力もお伝えしやすいですね。ホラーゲームである以上美しい景色だけでなく、抜け落ちた床や積みあがったゴミ、さびた電車なども登場しますが、それらも単に気持ち悪いだけでなく、どこか綺麗に描かれているのがすごいところです。


さて、それではシナリオの話に入りましょう。
のばらたちが虚ろ町で出会った影のような生物たちはみな、何かに執着している様子。彼らの様子を観察したり、話の通じる者たちにたずねたりしているうちに、どうやらこの”虚ろ町”は現世に心残りのある死者たちのさまよう、彼岸と此岸の境目にある町らしいことが分かってきます。この町を治める”虚ろ様”の所に行って、何とか現世に帰れないかと助けを請うのばらと十夜。
子守唄をねだる子供たちの霊を鎮めるなどの役目をこなして現世への帰り道を教えてもらった2人だったが、虚ろ様によればのばらが無事に帰れるかどうかは微妙なところだという。その原因は現世でののばらの境遇と本人の性格にあった…。

プレイ時間の短くない本作ですが、綺麗なマップを探索していると自然とストーリーが進んで頭に入っていき、長さを感じさせません。そして虚ろ町の探索をする合間に、のばらが現世へと帰れるかの鍵となる過去回想がはいるのが上手いところです。そしてこの過去回想がねぇ、切ないんですよ。「しっかりなんて……できないよ!!」本当にその通りです。本人の性格もあるとはいえ小学生にはつらい境遇でしょう。
その分、ED4での十夜との再会と帰還、そして現世で一歩踏み出したラストシーンは感慨深いものになっているでしょう。


物語冒頭で説明される通り、本作にはいくつかのエンディングがあり、青と赤のエフェクトの数が重要になってきます。虚ろ町の住人に寄り添ってその心残りを解消してあげれば物語はいい方向へ。最低限の探索でストーリーを進めたり、住人を傷つければ悪い方向へ進みます。しかしED3やED4を見るためにはそれに加えて特定のイベントをこなしてフラグを立てねばならず、難易度は高いです。というか初見で(特にED4)到達は無理でしょう。これは、まずはバッドエンドを見て欲しいという作者さんの意向なんじゃないかと勘ぐってしまいます。実際、私も先にED1や2を見ていたからこそのばらちゃんの成長に感動できたところがある気がします。
バッドエンドを見たときには悔しい、歯がゆい思いをすると思いますが、その分気持ちの良いハッピーエンドもありますので、ぜひ安心してプレイしてください。

そうそう、攻略情報についてはおまけルーム内や同梱テキストファイルに細かく記載されているので、詰まってしまう心配もありません。親切ですね。


では一応気になった点も書いておきましょう。
1つはコメディ要素が微妙かなという点です。不気味な街の探索だったり、現世の出来事を受け止めたりと基本的にはシリアスなシーンが続く本作ですが、たまに軽い感じのギャグっぽい展開があったりします。のばらと十夜の交流や距離感を描くという意味では良いのかなという気はしつつ、突然そのBGMでギャグ始まったらホラーの雰囲気ぶっ飛んじゃわない? と思う回数の方が私は多かったです。ホラー色の薄い街でのイベント(楽譜が挟まった本のタイトルとか)ならあまり気にならないんですけどね。

もう一つ、本作の操作はマウスを前提にしているとのことですが、ツクールMVのマウスでのマップ移動って使いにくいと思うんですよね……。特に終盤の影をかわしながら進む場面などでは、マウス操作では移動経路が指定できないのが致命的。結局私はセーブ・ロード以外はほぼすべてキーボード操作でプレイしました。


さて、本作のキャラクターには一部ボイスがついています。フルボイスではなく、キャラクターへの呼びかけとか、感嘆詞とか、一部の台詞をしゃべるだけですがキャラクターのイメージに合っていてちょうどいいんじゃないかなと思います。全部に声がついていると聞くのに時間がかかってテンポが悪くなるという面もありますからね。
ちなみにおまけ部屋から何でも許せる方用と称したギャグ一直線のおまけシナリオを見ることができます。私はこのおまけシナリオ冒頭の
「良い子のみんな~~!  本編、はじまるよ~~~~!」
の声を聞いて、脳内には瞬時に「その恋、保留につき、」シリーズの姪浜さんが浮かんでしまいました。のばらと同じ声優さんだったのね…。本編中で思い浮かぶこと全然なかったのに…。そのくらい本編と違った温度感になっていますので、バッドエンドで気が滅入ったぜ、という方はぜひやってみてください。POPOさんがコメディ極振りで作品作ったらこんな感じになりそう。

それでは。

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