フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
初めての方は、ぜひごあいさつをご覧ください。評価の基準については、レビューについてに記してあります。
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YouTube始めました。フリーゲーム攻略動画などを投稿してます。

ブラウザ

こんにちは。今回はNeutralさんの「LEVEL」のご紹介となります。

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オススメ!
ジャンル:謎解き脱出ゲーム
プレイ時間:私の初見ノーヒントプレイで2時間半
分岐:なし
ツール:Unity
リリース:2024/12


一昨日公開されたばかりのNeutralさんの最新作です。Neutralさんといえば寿司打をはじめとするタイピングゲームが大変有名かと思いますが、脱出ゲームも作られておりそのクオリティもまた高いのです。
Flash時代の脱出ゲームが好きでフリゲ2023で投票したりもしました。

そんなNeutralさんの新作発表と聞き早速行ってみると、難易度は★3つ(じっくり)とのこと。腰を据えて挑む必要があるなと構えていたのですが、プレイしだすと面白くて一日で一気にクリアしてしまいました。


本作は脱出ゲームのお約束通り、見覚えのない密室で目を覚ますところから始まります。
部屋には回転する動物のイラストや何かがぴったりはまりそうな穴、アルファベットの書かれた引き出しなど、いかにもな仕掛けがありそうです。こういう風に、ここに謎がありますよ~!と主張してくれると解く側としてもそこに集中できていいですね。
難しい脱出ゲームは得てして細かいクリックポイント探しになったり、背景に同化して見つけづらいアイテムを取得しなくてはならなかったりになりがちですが、本作では解くためのヒントが見つからなくてイライラするというような時間がほとんどありませんでした。限られたヒントでしっかり正解を導き出せるような上質な仕掛けになっていると思いました。
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とはいっても本作の難易度はNeutral作品の中でも難しめの★3。簡単だというわけではありません。
ボリュームはかなりありますし、何気なく画面に入り込んでいたあれがヒントだったのか!といった気付きも必要になってきてしっかりと手ごたえと達成感を得られる難易度です。
私は2部屋目の光るアイコンのギミックが一番好きでした。なるほどそこを見るのかといった発想と、それさえ分かってしまえば少し考えるだけで済むシンプルさが良いですね。
ちなみに本作の謎を解くにあたりメモ帳などは必須と言っていいと思います。出てきた図形や文字のヒントを紙に書き起こしてじっくり考察しましょう。計算要素もあるのでよほど記憶力と暗算力に自信のある方以外はメモなしで挑むのは無謀だと思います。


さて、FlashからUnityへと開発ツールが移行されたのに伴い、画面は3Dのグラフィックとなっています。部屋の中の仕掛けが移動したり回転したり、アイテムを自由な向きから観察することができます。
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上のスクリーンショットはアイテムの観察中です。画面をドラッグすることで自由にアイテムを回転させることができます。この機能を使用しないと解けない謎もいくつもあり、3Dのメリットをふんだんに生かしたギミックとなっているのも良いですね。逆に言うと立体図形を頭の中で組み立てたり回転させたりするのが苦手だという方にはかなり難しいギミックもあるかもしれません。パズルの力が試されるものも複数あります。

しかし謎解きが苦手な方もご安心ください。なんとYouTubeに公式のヒント&答え動画があるのです。自力で解けたときの感慨は失われてしまうと思うので、一度じっくり悩んでからにするのがおすすめではありますが、ゲームページの上部にリンクが張られているのでどうしても困った場合はそちらから動画を見てみると良いでしょう。
私は今回はやらなかったですが、謎解き系のゲームで詰まった時はセーブして一晩二晩くらい放置し、別の日にやってみると案外するっと解けたりするのでそれもおすすめです。本作にもセーブ機能はついているのでお試しあれ。


また、アイテムの金属光沢までグラフィックが作り込まれていて素晴らしいです。
今回の記事に出てきた部屋はゲーム開始直後にいる場所ですが、本作クリアまでには雰囲気の違う部屋があと3部屋も残っています。謎解きに頭をひねりながらも、ぜひグラフィックも堪能していただきたいと思います。


というわけで今回は「LEVEL」でした。脱出ゲームの定番なギミックからやや型破りな珍しい仕掛け(特に一番最後の暗証番号のところは脱出ゲームの謎として解くのは初めてでした)までボリューム満点でありながら、ありがちなストレスを排したプレイしやすい作品となっていると思いますので、ぜひプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。今回はTwitterで予告した通り、サカモトトマトさんの「ジュエ☆スタ!」のご紹介となります。

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ジャンル:さめがめ系パズルゲーム
プレイ時間:1プレイ2~3分
リリース:2022/10



Twitterで作者さんの宣伝ツイートが流れてきたのでブラウザでちょこっとやってみるか~と始めてみたらいつの間にか1時間経ってました。
落ちもの系に分類されるシンプルなスコアアタックパズルゲームですが、ノルマという要素が含まれることによって運の要素が加わり、次こそはハイスコアをとる! という気持ちにさせられる作品です。


ルールはよく見る”さめがめ”に近い内容です。盤面上にある宝石をクリックすると、同じ色の宝石が隣り合っている部分が丸ごと消え、上から新たな宝石が降ってきます。この時に消した宝石の数に応じてスコアの加算があります。(1度に消した宝石の数-1)の2乗に比例する点数が入るので、一気に多くの宝石を消した方が有利になります。
さらに一気に5つ以上の宝石を消した場合、クリックした地点に通常は出現しない銀色の宝石が登場します。他の宝石と消すルールは一緒ですが、消したときの得点が3倍になります。

そしてもう一つ重要なのがノルマです。
ゲーム中常に画面上部に「赤で300点取ろう」「3連続で5個つなげる」などの目標が表示されています。この目標を達成したときにはスコアボーナスに加え、5秒のタイムボーナスもあります。これが非常に重要なので、本作を攻略するときにはいかにノルマを素早く達成するかという争いになります。
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まだflashが生きていたころ、daina's worldというサイトの「殲滅 斉色乱舞」というゲームを割とやり込んでいたのを思い出しました。残念ながら現在はサイトが消滅してしまっているようですが、web archiveRuffleを使うとなんとプレイできました。今やってみてもレベルMAX到達はできたのでそこまで腕はなまってなさそうです。

さて、本作の攻略感と殲滅 斉色乱舞のそれはちょこっと似ています。どこが似ているかというと、正確な判断よりは素早い判断が求められるという点です。本作ではさめがめ系パズルには珍しく、同じ色の宝石と隣接していない孤立した宝石もクリックで消すことができます(ただし得点は入らない)。そのため少ないクリック数で宝石を消すには……ということを考えるよりも、1つずつでもいいから消したい宝石を素早くクリックしていった方が高得点に結びつきやすいのです。このことから若干ゲーム性が単調な感じはします。


本作にはもう一つ、キャラクターという要素があります。ゲーム開始時にどのキャラクターを選ぶかによって異なる特殊効果を得ることができます。
一番左のシェリーを選ぶと、2つある補助効果を他のキャラより1回ずつ多く使うことができます。ただしクリック時のアニメーションが遅くなり、次の入力受付までの時間が延びるというデメリットがあります。
真ん中のエルミアは初期制限時間が30秒短くなる代わりに、ノルマ達成時のタイムボーナスが3秒長くなり、スコアボーナスも1割増しとなります。
右のセナードは、銀宝石のスコア倍率が3倍から4倍になります。

と、3人のキャラクターがいるわけですが、高得点を目指すならエルミア一択です。タイムボーナス+3秒のメリットが大きすぎて他の効果がかすみます。慣れてくるとノルマ15達成は当たり前。ハイスコアを競う場合はノルマ25達成とかの世界になってくるので、初期制限時間の減少を差し引いても40秒ほどの延長効果が見込めます。
逆にシェリーは待機時間延長が非常に痛い。純粋にクリックできる回数が減ります。補助効果を計4回も使う暇がありません。


私は金曜日に本作をだいぶやり込みまして、ランキング1位になったのですが、現在確認するとその記録は抜かれて私は2位ですね。現在の私の記録が117,424点なのに対しトップが14万点超えなのでだいぶ引き離されてます。
(10/30追記:現在の記録は163,762点となり、トップに返り咲きました。いつまで持つかな…)
ハイスコアを目指そうと思ったらノルマの当たり外れにかなり左右されるため相当の試行回数を要するゲーム性となっています。終盤で4連続5個消しとか難しいのを求められると厳しいですし、黄色20個等の単純にクリック回数が多くなるタイプのもの、同じ色の指示が連続で来るなどは外れのノルマです。逆に盤面に多い色の指示が来ると当たりですね。
もう一度トップ獲りたいなーと思ってプレイしていたんですが、1時間半くらいやったところで指がめっちゃ痛くなってきたので諦めました。マウスクリックを多用するのでガチ勢はやりすぎて腱鞘炎にならないようお気を付けください…リトライボタンですぐに再チャレンジできるのでついついやりすぎちゃうんですよね…

それでは。

こんにちは。今回はしゅんてさん・青木ととさんによるパズルゲーム「Squirrel Board」のレビューをします。リンク先で即プレイ可能なブラウザゲームです。音量注意。
記事後半に攻略情報あります。

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ジャンル:ボードゲーム
プレイ時間:1プレイ3分程度
ツール:Unity(ブラウザゲーム)
リリース:2022/9


今回の作品はたまたまTwitterで流れてきて知りました。サクッとプレイできそうだったのでちょっとやってみるか~と思ってリンク先に飛んでみると、想定以上の楽しさでした。



本作のルールは難しくありません。主人公のリスは冬に備えるため、盤面上の木になっているどんぐりを回収していきます。1ターンの間に動けるマスはサイコロを振って決められます。初期状態では4が出れば4マス、6が出れば6マス進めます。どんぐりは木の生えているところに4ターンごとに再び落ちてきます。
そうして盤面を移動していくとパワーを使います。1ターンごとにげんきが1減少し、0の時に帰宅できないと今貯めていたどんぐりを全ロストしてしまいます。げんきの残りに気を配って、欲張りすぎずに家に帰りましょう。

またターンの間には今ほおぶくろにしまっているどんぐりを食べることができます。種類によって食べることで特殊効果を発揮するものがあるのと、次に述べるスピードを上げるために身軽にする効果があります。

そしてもう一つ重要な概念がスピードです。リスくんはどんぐりを回収していくたびにその重さのためにスピードが低下します。1個回収するたびにスピードは0.1低下し、これは動けるマスの範囲に影響してきます。1ターンで動けるマスは((スピードの基礎値) - (今もっているどんぐりの数) ÷ 10) × (サイコロの目)で表されます。この仕様のため、げんきが余っているからと言って1周で欲張ってたくさん回収しようとすると、スピードが低下して身動きが不自由になってしまいます。やはり定期的に家に帰って蓄えたどんぐりをしまっておき、体の方は身軽にしましょう。

スピードの基礎値は特殊効果のあるどんぐりを食べる、または一定数のどんぐりを蓄えたときのレベルアップボーナスによって上げることができます。これが大きくなると1ターンでマップの端まで移動できたりして行動範囲は広がります。

30ターン経過で冬がやってきます。それまでにできるだけたくさんのどんぐりを回収し、家に蓄えておきましょう。どんぐりのレア度に応じて点数が加算されます。文章で説明するとややこしいですが、チュートリアルが丁寧なのでルールの理解は難しくないでしょう。チュートリアルのスキップはQキーで可能です。

1つ操作性の上での要望があって、マウスのみorキーボードのみで操作が完結するようにしてほしかったです。現状でも右手でマウス、左手でwasdキーでスムーズに操作することはできますが、若干違和感が。マウス移動なども実装されたら片手でも遊べますしね。


さて、ルールを理解したところでプレイしていきましょう。
私の初回プレイは40~50点くらいでした。終了後の評価では、まあちょっと少なめだけど冬を越すのに問題はないかな~みたいな意味のコメントがあったような記憶があります。
しかしやり込んでいくうちにどんどん点数を伸ばせて達成感がありました。運要素が大きい本作、射幸性をあおるのも成功してますね。しかし運だけでは点数にも限界があります。ある程度のセオリーはしっかり押さえた状態で運のいい配置・出目を待つ必要があります。
その後数時間やり込んだところ、昨日なんと614点というハイスコアを達成しランキング1位を獲ったので、攻略情報についても記しておきたいと思います。自力で頑張るという方はここでブラウザバックでお願いします! 見る方は画面下スクロールで!

(10/3追記:現在の記録は1715点です。ついに4桁の大台を突破。9/19にゲームが更新され、リセットボタンなど再チャレンジしやすい環境が整ったためハイスコアチャレンジもより効率的にできるようになりました)
squirrel boardランキング1位


















チュートリアルで明らかにされない仕様について


どんぐりの種類と特殊効果・得点

本作では5種類のどんぐりが出現します。レア度の低いものから順に
  • 茶色…1点。食べても特殊効果なし
  • 水色…2点。食べるとげんきを1回復
  • 緑色…3点。食べるとスピード0.1上昇
  • 赤色…4点。食べるとスピード0.2上昇
  • 虹色…5点。食べると制限時間を2ターン延長
となっています。

おうちレベルアップ時のボーナス


一定のどんぐりを集めるとボーナスがもらえる。拾ったタイミングではなく、家に備蓄したタイミングでカウント。必要などんぐりの数は以下(レア度は問わない。多少のずれはあるかも)。Lv2,4になるタイミングで盤面が1段階広くなる。
  • Lv1→2…3個
  • Lv2→3…8個
  • Lv3→4…16個
  • Lv4→5…26個
  • Lv5→6(MAX)…41個

ボーナスは以下のうち3つの選択肢が出現。1つだけ選べる。ただし同じグループから複数の選択肢は同時に登場しない。
  • スピードアップ系
    • 駆け足…ベース値0.1アップ
    • 俊足…ベース値0.2アップ
    • 電光石火…ベース値0.3アップ
  • 最大げんきアップ系
    • 元気もりもり…最大げんき1アップ
    • 頑強…最大げんき2アップ
  • マップ強化系
    • 芽吹く木々…マップに木を2本追加
    • 自然豊か…マップに木を3本追加
  • 時空の超越…制限時間3ターン延長
  • 頑丈ほっぺ…1度だけげんき0になった時のアイテムロストを無効に
  • 恵みの雨…すべての木にどんぐりが即時になる

30ターン経過後の行動について

冬が到来し、それ以上木にどんぐりがならなくなる。すでになっているものを回収するのは可。
一度おうちに帰るとそこでゲーム終了になる。にじどんぐりの時間巻き戻し効果も無効。おとなしく持ち帰って5点にしよう。

なるどんぐりのレア度について

明らかに家からの距離が遠い木ほどレア度の高いどんぐりがなる確率が高い。Lv3以下の盤面だと赤・虹どんぐりはほとんど期待できない。
Lv4以降の盤面の右下・左下のマスに木が生えれば7~8割くらいの確率で虹、そうでなくても赤どんぐりがなるので非常に有利。

移動できるマス数の計算

前述のとおり
(ベース値 - ほおぶくろにあるどんぐりの数÷10) × サイコロの出目
で計算できる。小数点以下は四捨五入。サイコロの出目は4~6で均等だと思われる。

具体的な戦略について

最初の2~3ターンのうちにLv2に上げる。2ターンでできるのが理想。ボーナスはげんきアップ系を選ぶ。これ以降げんきアップ系のボーナスは必要ない(それを選ぶよりもスピードアップの方が恩恵が大きい)。
序盤のうちはスピードが低くどんぐりの重さの影響を受けやすい。目標とするどんぐりを定め、それ以外のどんぐりを避けながら進み、家に帰る途中で行きに避けてきたどんぐりを回収できると理想的。
Lv4に上がるまではレベルアップを優先したい。遠くの水どんぐりを回収するより近くの茶どんぐりをたくさん回収して備蓄しレベルアップしよう。緑は効果が大きいので回収に行って良い。レベルアップボーナスはスピードアップ系かマップ強化系。マップ強化系で新たに生えた木が家から遠いと前述の仕様によりレアなどんぐりができやすく有利。ここは完全に運。

Lv4以降はなるべく家から遠くの赤・虹どんぐりを真っ先に回収してその場で即食べることを繰り返す。4ターンごとになるのでなったターンですぐに採取するのが理想。スピードは2.5~3.0くらいまで上げたら十分なのであとは食べずに備蓄に回す。虹どんぐりはなるべく食べる。この時他の必要ないどんぐりを食べなくていいように回収順に気を付ける。どんぐりがなるまであと1ターンのマスに止まると、その瞬間にどんぐりがなって問答無用で回収してしまうので次に虹・赤を回収するつもりの場合は気を付ける。
ボーナスは時空の超越(3ターン延長)か自然豊か(木が3本生える)を選びたい。特に遠くに木が生えた状態でなるべく長くターンを回すのがハイスコアへの王道。右下、左下の両方のマスに木が生えているような状態では高確率で4ターンで2個の虹どんぐりを回収でき、実質ターン経過しないような状態を作り出すことができる。

squirrel board途中経過
↑私が600点overの記録を出したときの盤面です。虹どんぐり出現の可能性の高いところに木が3本も生えているので時間制限を延長しまくります。


相当な幸運だったと思うので、この記録はなかなか破られないんじゃないでしょうか。
ランキング抜いたぜって方はぜひ教えてください。それでは。

こんにちは。今回は、コトリノスさんのMimicをご紹介します。

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ジャンル:可愛い系脱出ゲーム
プレイ時間:私の初見ノーヒントプレイで脱出まで1時間半ほど
分岐:なし
ツール:Unity(ブラウザ・iPhone・Android版あり)
リリース:2021/3


今回ご紹介する「Mimic」は本格脱出ゲームです。操作はいたってシンプル。マウスクリックのみです。ドラッグやキーボード操作不要・PCでもスマホでもプレイ可とお手軽ながら、中身はしっかりとボリュームとクオリティを両立させた作品となっています。

脱出ゲームで何より大事なのは、部屋に仕込まれた謎を解いたときの快感ですよね。分からないなあと悩むのも楽しいですが、ずっと分からないままでは次第にイライラしてきて、最後には投げてしまいます。私自身、脱出系の謎解きはそれほど得意ではないので、これまでプレイした数多くの脱出ゲームの中には、途中でにっちもさっちもいかなくなり諦めたり、攻略サイトに手を出したりしたものもいくつもあります。
しかし本作を作られたコトリノスの作品群は、ちょうどよい難易度に収まっていて解けた時の快感を味わいやすいです。「そんなの分かるか!」と言いたくなるような理不尽・意地悪な展開は滅多にないし、やけにクリックポイントが小さいアイテム探しや、画面の見にくさで難易度をあげるような部分も一切なく、プレイしていてほとんどストレスがありません。一度済んだ謎解きが再度要求されるようなこともなく、いろいろな面で直感に沿った構成になっているのです。もちろん簡単すぎるわけではなく、与えられたヒントを十分に観察し、関連しそうなアイテムが無いか部屋中を探索していく必要があります。
本作でうまいなと感じたのは、脱出間際の最後の謎です。実はプレイ中盤くらいでその形に気付いたとき、「こういうデザインなのか~おしゃれだな」などと思っていたのですが、進行上意味のあるデザインだったことに気付かされ感嘆しました。あとは魚の絵ですね。それを見た時、当然ながら似た形や配置のものを探したわけですが全然見つからず、絵とにらめっこしていたらふとひらめいたときの驚きと、検証してその通りだった時のしてやったりという気持ちは脱出ゲームの醍醐味でしょう。


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そして本作の特徴といえば、グラフィックが可愛らしいところでしょう。作者さんの他の作品はどちらかというとスタイリッシュなデザインだったりシンプルな内装だったりというイメージがあるのですが、本作では色鉛筆画のような優しい絵柄がまず目を引きます。そして画面下にいつもいる謎の小動物。今回は彼が脱出の主人公なのです。彼が閉じ込められるとはどういう状況だったのか、またタイトルの意味なんかも脱出すると分かります。
ちなみに脱出に使うアイテムの中にも、ぬいぐるみ(?)があってなかなか癒しを与えてくれます。この猫のぬいぐるみにもまさかの機能があるので、拾ったアイテムはしっかり詳細画面で調べましょう。本作は所持しているアイテムが自動で使用されるシステムではないので、ここに使えそうかなと思ったらどんどん試していくという姿勢も大事です。
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ちなみに私はブラウザでプレイしましたが、スマホアプリ版では高画質な上ヒント機能も使用可能なようです。ノーヒントでは行き詰まりそうという方はスマホで試すといいかもしれません。

というわけで今回はMimicをご紹介しました。しっかりと骨がありながらも気持ちよく解ける脱出ゲーム、ぜひプレイしてみてください。

こんにちは。今回は、「ほしのの。」のご紹介です。

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オススメ!
ジャンル:田舎でお姉ちゃんと仲良くなる恋愛ゲーム
プレイ時間:2時間
分岐:なし
ツール:Flash/スマホアプリ
リリース:2007/7(原作Flash版)


今回はついに、私にとって思い出の作品「ほしのの。」を取り上げます。それまでRPGなどを中心にプレイしていてノベルゲームは存在すら知らなかった私は、前回の記事で紹介したたんしおレモンのゲーム紹介掲示板のようなコーナーから本作を知りました。そして見事にはまってしまったわけです。
本作は最初にむきりょくかん。さんによる原作のFlash版が公開され、その後株式会社テンクロスによるスマホアプリ版が公開されています。Flashのサポートは終わってしまいましたが、現在でもスマホアプリ版はダウンロードすることができます。スマホアプリにしては珍しい完全無料&広告なしなので、フリーゲームの枠内に十分入っているなと判断してのご紹介です。また、原作も一応まだプレイ可能です(詳細は後述します)。


本作のストーリーを単純化すると、両親のが亡くなってしまったため田舎の親戚に預けられることになった主人公の川島結城が、最初は鬱陶しく感じていた従姉の榛奈との距離を次第に縮めていくという内容です。よくあるギャルゲーのパターンとして、主人公がひょんなことから女の子を自身の家に住まわせることになる、いわゆるボーイミーツガール系がありますが、それとは関係が逆なわけです。しかしそれ以外の点においては典型的なギャルゲーと変わらず、上のあらすじを読んだだけでは何がそんなに良い作品なのかというのがあまり伝わらないと思います。そこで、私がよいと感じた点をいくつか順に紹介していきます。


まずは何といっても、シナリオの丁寧な作りです。物語開始時点の結城は、和泉家での田舎暮らしに強い抵抗感を抱いています。中学生で反抗期の最中ということもあり、1つ年上で世話焼きな従姉の榛奈に対しても邪険にするシーンが多く登場します。両親との死別という導入がこれらの"受け入れられなさ"と結びついて描かれ、ただの同居のきっかけ以上にシナリオの方向性を示しています。
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最初はこんな感じだった結城も、当然話が進むごとに和泉家になじんでいくわけですが、その過程にしっかりとした説得力があるんですよ。都会では触れることのなかったことを"ダサい"ではなく"新鮮"と捉える描写だったり、榛奈との"雨降って地固まる"的な出来事だったり。こうした一つ一つのエピソードが点ではなく線でつながり、榛奈と距離を縮めていくというまとまった物語の流れとして感じられるのです。
そうそう、田舎の描写や農作業に関する記述なんかも嘘っぽくなくていいですね。作者さんの実体験に基づいているようで、このシナリオの質にもうなずけます。


そして登場人物が魅力的です。ヒロインの榛奈はもちろん大変にかわいいです。私は4話での浴衣を着た榛奈の笑顔に心奪われました。
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また、立秋さんや委員長といったサブのキャラクターも単に登場しましたというだけの人物ではなく、しっかりと結城の思いに影響を与えています。委員長に関してはその個性的なキャラクター性から、気持ちの良いコメディー展開ももたらしてくれます。
あと忘れられないのは「ごがつのそら。」にも登場した神明みのり。1話と2話の間に引っ越してしまう彼女ですが、その後にも榛奈からの話題に出てきたり、結城と榛奈の間を仲介する役割を持ったりする重要人物になっています。

これらの人物の立ち絵については、原作版とアプリ版で全く違うので、両方で味わってみるのもいいでしょう。アプリ版には、原作ではなかった立秋さんと委員長の立ち絵もついています。あれだけふざけた発言をしていた委員長がまさかのイケメン(笑)
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作品を通して雰囲気だったり季節感といったものがはっきりと感じられるのも本作の良いところでしょう。例えば、夏の暑さにうんざりするシーンでは、文章で描写するだけでなく、セミが鳴く環境音が入ってくる。青い空と白い雲のコントラストのきいた背景写真が使われている、など作品全体から夏を感じられるんです。また、半年経ったことを表現するのに単にそう書くのではなく、「年が明け、桜の花が咲き、散り、紫陽花の季節になった。」とすることでよりイメージしやすく物語に入り込みやすかったり、何が起きたかだけを伝える脚本のような文章ではなく、味わいのある小説としての魅力を帯びてきているように感じます。ちなみに好きな文というと、1話終わりの「返って来た「おかえり」の声を聞いて初めて、僕は"家"に帰ったのだと。そう思った。」がかなり好きです。これから和泉家になじんでいくきっかけというか、予感みたいなものを感じさせられますよね。
また、効果音について少しだけ触れましたが、BGMについても大変雰囲気に合った選曲で、曲まで好きになってしまいます。原作版の話になりますが、エンディングテーマの「あたりまえ かわりばえ」が作品世界にぴったりマッチしているということに関しては、音楽素材について書いたこちらの記事でも触れています。この記事に書かなかった曲で好きなものというと、1話プロローグ直後のシーンのBGMでしょうか。両親を失ったという大きな喪失感を抱えた状態で榛奈と寝る前の会話をするシーンですが、ここで使われているこの物悲しいピアノ曲がすごく好きです。しかも曲名が"good night"だと知った時には、うますぎるだろ…と思いました。サウンド全体に関しての評価がすごく高いです。

このサウンドだったり背景だったりといった部分については、アプリ版では全く違うので原作ファンの私としてはやや残念なところではあります。
ちなみに以前はスマホアプリ版でなくガラケーアプリ版も存在していました。数年ぶりに起動してみたところ、タイトル画面のBGMがTAM Music Factoryの「秋の野」であることに気付き、ゲームのタイトルに合わせてきたとすると面白いなと思いました。


本作の好きなところについていろいろと語ってみました。原作のプレイはやや厳しいですが、興味を持った方はぜひアプリ版からプレイしてみてください。繰り返しますが、スマホアプリも広告なし完全無料ですのでぜひ。
ちなみにFlashのサポート終了に伴い現在ではそのままでは原作をプレイすることはできない状態ですが、一応プレイ可能な方法が2通りあります。1つはブラウザにRuffleを導入すること。私が普段使っているブラウザはGoogle Chromeですが、拡張機能としてRuffleを入れることで問題なくプレイ可能であることは確認しました。(確認した環境:Windows 10 Home 20H2, Chrome 92.0.4515.159, Ruffle nightly 2021-07-03)
もう一つは、原作ページで用意されているDL版のswfファイルをDLしてきてローカルで再生する方法です。flash playerのexeファイルが必要ですが、このサイトなどから持ってくることができます。DL版のほうが画質が良いようなので、こちらをお勧めします。
同じFlash版でも、ブラウザ版とDL版ではエンドロールでの手紙の内容にほんの少しだけ違いがあります。気になった方は注目してみるといいでしょう。このエンドロールの演出もすごく好きですね。エンディングテーマのリズムに合わせて文面が表示されるのも気持ちがよいところでしょう。ただし、DL版の"看護士"は"看護師"が正しいでしょう。同じ手紙内で"看護婦"という表現も残っていて統一されていなかったのもあり、少し気になりました。ちなみに一応調べたのですが、法改正により看護婦という呼称を使用しなくなったのは2002年のようですね。2021年現在の感覚では看護師という呼び方はかなり定着しているように思いますが、作品公開時点(2007年)でどうだったかは覚えていないのでそんなに厳しく突っ込むところではないでしょうか。


長くなってきたので、今回はここまでにします。私はこの作品をプレイするまで、本格的なノベルゲームをやったことがなく、1話プレイ開始時点では適当な選択肢を選ぶミニゲーム的なものだと思っていました。それが1話を読み終えるころには純粋に物語に夢中になっていました。物語が終盤に近付くにつれ、まだ終わってほしくない、もっと読んでいたい、と強く思ったのを昨日のことのように思い出すことができます。ぜひ皆さんにもこの気持ちを味わっていただきたいと思っているところです。

それでは。

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