フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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ホラー

こんにちは。今回は一限はやめさんの「ホラー大好きヒミカさん」をご紹介します。

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ジャンル:ホラーゲームあるあるネタ風コメディ
プレイ時間:45分
分岐:なし(後述)
ツール:RPGツクール(要RTP)
リリース:2020/4

今回ご紹介する作品は、上のタイトル画面のスクリーンショットやそこでのBGMは全力でホラーと主張していますが、中身としては日常ギャグ系となっています。

本作は、ほぼすべてが主人公の陽菜と友達のひみかが部屋でおしゃべりしている場面で構成されています。タイトルから分かる通りひみかはかなりのホラーゲームやオカルト系マニアの大学2年生。ホラーゲームにありがちな状況や台詞の引き出しが異常に多く、超ハイテンポでネタを放出します。対する陽菜は比較的普通の子でツッコミ役。あっちこっちに話が飛ぶひみかを毎回軌道修正して話を進めてくれます。しかしたまにひみかのフリにのっていくことも。そんな2人のやり取りを見ながら、あるある~~といったり、そんなのねーよとツッコんだりするのが本作の楽しみ方の一つになります。


さて、本作には地の文だったり、ナレーション役といったものは存在しませんが、ショートコントのタイトルのような感じで数分くらいの間隔で暗転とタイトルアナウンスが入ります。とはいっても登場人物も場所も変わらないのですが、この仕組みで話の切り替わりがわかりやすくなっています。ずっと同じ2人が話すだけではそのあたりがあいまいになったり、息をつく暇がなくなりますからこれはいい構成だなと感じます。ちなみに、その場面転換の間でのみセーブが可能になっています。

まず最初は「怖い話」。ストレートですが、怪談って人気ですよね。私は怪談やホラーが特別好きというわけではありませんが、ゲームをやっているとよく出会うジャンルということもあり、有名なものは結構知っているつもりです。
しかし本作では当然ながら正面から怪談について語ったりはしません。
「1日3食をすべてお菓子の「じがりこ」で過ごした話」
から始まり、
「田舎に残る怖い風習」
というまさによくある風の怪談が始まるかと思いきや
「女子間の、されるのがわかりきった「サプライズ」のし合いの方が怖い風習」
と一刀両断。この急カーブで笑えるならば本作を最初から最後まで余すところなく楽しめるでしょう。
「何でも田舎のせいにするな」との主張、心得ました。

そんな感じでホラーや怪談を題材にしつつも様々な方向に振れた話題を楽しめる本作ですが、メタな話題も結構含まれます。本作のシナリオがゲームという媒体で紡がれることからもそれは必然かもしれませんね。
先ほどの話で、「地元が田舎って、どの辺?」という振りに対し、「かなりの田舎と言ってしまった以上、傷つく人がいるかもしれないので具体的な地名は出さない」は流石です。「視聴率」発言も笑いました。確かにそうかも。

ひみかはかなりマイペースな性格で、同じお題に対して陽菜があきれるほど多くの例を挙げたり、逆にいつの間にか話題が変わっていたりします。そしてどんどんホラーとは関係ないテーマに進んで行ったりもします。”ホラー大好き"というのはひみかさんの趣味に関する話であって、本作全体のテーマというわけではないのです。軽めの下ネタもけっこうあります。かなり自由にいろいろな話題に飛ぶので、ホラーの話という導入から離れて女子会をのぞき見しているような気分すら味わえるかもしれません。

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さらには突然の水着シーンあり。その後に1度だけある選択肢によっては以後がすべて水着での会話になっており、一気にツッコミどころが倍増して楽しいですよ。立ち絵と一部の会話が変わるくらいで、シナリオに影響はありません。

また、上のような2人の駄弁りだけでなく、本作には時折前触れなしに「なりきりコーナー」が挿入されます。アルバイトの接客ごっこだったり、ゲーム内でよくあるシチュエーションごっこだったり、実在作品のオマージュだったりと様々。私は「探偵」での陽菜のスピード感あるツッコミが好きです。
なりきりコーナー中は、結構シリアスな場面もあったりします。ファンタジー系のゲームやアニメでめちゃくちゃありそうなシーンで、これも結構面白かったです。ひみかの方は相当な変わり者なのでよくわからないですが、陽菜も割とノリノリでこの遊びに付き合っているのを見ると、仲良くていいな~と思いますね。説明なしで寸劇が出来上がっていて、以心伝心している感じがすごい。
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しかし立ち絵の表情と場面の悲壮さがかみ合ってなかったりする。これは、全編を通してコメディ調である本作の味ですね。しかもその直後に(以前の選択によっては)何事もなかったかのように水着で登場するので、シュールさが加速してます。


最後に、私が好きだったネタを3つ挙げましょう。
  • 飲み会の断り方
  • そのやり方は……確かに効果的かもしれないけどいろいろ大事なものを失いそう。少なくとも私はやりたくないなあ。陽菜の感想ももっともだし。
  • テレビをつけたら…
  • 私が実際に友達の家に行ってテレビをつけてそんな感じだったらかなりビビる。しばらくは微妙な空気になりそう。
  • 名前の読みがな
  • レビュー内でルビを振らないようにしましたが、陽菜は"ハルナ"です。作内ではあだ名などから読みを判断できるとはいえ”ヒナ"も一般的な読みだなと思っていたところ、それもネタにされていたのでさすがです。
というわけで「ホラー大好きヒミカさん」のご紹介でした。脱力系とでもいうのか、洗練されたギャグとはまた違った笑いが楽しめる作品です。独特の雰囲気のある作品なので、ぜひプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。
今回はフリーホラーゲーム界の古典的名作と名高い、PIA少尉さんの「1999ChristmasEve」をお送りします。ver. 1が出たのが2000年末なのでなんと20世紀の作品となりますが、今プレイしても十分楽しめました。
ちなみに、私は本作をVectorからダウンロードしておいたような記憶があるのですが、今検索したら見つかりませんでした。もうweb archiveを使うしか入手法はないかもしれません。それもいつまであるかわからないので、興味のある方はお早めにダウンロードしておくことをお勧めします。

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ジャンル:山奥の教会(?)で散々な目に遭う典型的ミステリーホラーノベルゲーム
プレイ時間:攻略情報を参考にストレートでED回収すれば4~5時間? 私の自力プレイでは10時間以上
分岐:無数に存在。大きくAlive EndingとDeath Endingに分かれる。
ツール:吉里吉里
リリース:2000/12



本作はフリーノベルゲーム界においてはかなりの有名作なので、以前から存在は知っていたのですが、「とにかく難しい」「しかも長い」という評判を聞くのでなかなか手が出せませんでした。しかし思い立ってプレイしてみると、確かに有名になるだけの面白さのある作品だなあと感じます。

まずあらすじを簡単に説明しましょう。
主人公の明(名前変更可)はイブの夜に友人の由美香(こちらも変更可)を長野のスキー場に誘う。しかし現地に向かう途中で車が突然故障。電話も通じない山奥だったため、近くにあった教会に電話を借りに行くが、そこはこの世のものと思えぬ怨霊たちの住む恐ろしい場所だった……。そんな教会から何とか生還し由美香との関係を進めることができるのか。そして教会と怨霊たちの正体・真実を見つけて鎮めてやることはできるのか。


本作をプレイして特徴的だと思うのは、無数にある分岐の作りこみです。序章から最終話(第8話)までに分かれている本作ですが、序章のうちからとんでもない量の選択肢が出てきます。突然車のエンジンがかからなくなったトラブルの対処から、ドライブ中の他愛もない会話、ラジオで聞く音楽にまで選択肢が出ます。これらのすべてが物語の進行に関係があるわけではありませんが、その分量に私は圧倒されました。

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教会にたどり着いてからが第1話。ここからが本番です。鐘が鳴っているし人はいるはずなのに姿が見えない、この不気味な教会を探索していくことになります。どんな順番で探索するか、突然現れた怨霊や謎の殺人鬼にどう対処するか、動転してしまった由美香になんと声をかけるのかなどあらゆる選択の連続で、普通のノベルゲームからは一線を画すゲーム性がある作品となっています。選択肢を選ぶだけでなく、後半には自分でテキストを入力しないと進めない部分まであります(一字一句同じでないと通過できないわけではなく、複数の単語や表記ゆれにも対応していてすごい)。理不尽な点もありますが、自分の行動を変えることでストーリーが180度変わってくることもあるので、ゲーム世界に没入して自分が主人公になったかのような緊張感と恐怖を味わうことができます。

この、自分が物語の主人公として動いているという感覚、ゲームを楽しむうえで非常に大切だと思うのですが、本作はその点が非常によくできていたと思います。立ち絵や分かりやすい背景画像のない本作ですが、その分テキストで周囲の状況や自分の心理状態などもしっかり描写され、教会の内部を想像しながら読み進めることができます。
この感じ、私はとてもTRPGに似ていると感じました。TRPGをご存じない方のために一応説明しておくと、通常RPGと言えばコンピューターゲームを指すのに対し、TRPG(テーブルトークRPG)とは、シナリオとゲームマスター(GM)を用意し数人で集まって、プレイヤー自身がキャラクターの役割を演じながら進めていくゲームのことです。プレイヤーの想像力とGMの裁定次第でコンピュータRPGではできない柔軟性のあるゲームになるのが魅力なのですが、本作はこれに迫る"当事者感"といいますか、自分が探検しているんだという感覚が得られたのですね。多くのノベルゲームをプレイしてきた私ですが、これは初めての体験でした。
そう思うと、グラフィックや演出が簡素なのは、プレイヤーに想像を促すという点で非常に効果的であるように感じました。かわいらしい立ち絵がついて、さらにはボイスまでついて、といった大変に作りこまれた作品が最近は多いですが、そうするとどうしても"物語を傍観している"というような意識になってしまうんですね。ドラマとかアニメを見ている感じです。もちろんそれも素晴らしいのですが、それとは別の種類の魅力が本作には詰まっていると思いました。

簡単に分類すると本作のシナリオは第5話くらいまでで謎と情報がそろってきて、第7話以降が解決編といった形になっています(第6話は特殊)。途中までは次々に押し寄せてくる恐ろしい現象に恐怖しつつ、正直こんなに謎ばっかり提示しちゃって回収できるのかなとも思っていたのですが、7話で救われました。もうね、この展開を見ただけで、これまで頑張って攻略してきてよかったなと思ったんですよ。讃美歌の話とか、うまいですね。5話までの出来事がしっかりと解決されて大変気持ち良かったです。難易度の高い本作ですが、ぜひ謎が解決し、怨霊を鎮めるところまでプレイしてほしいと思います。


攻略についても少し述べましょう。作内でAlive Endingを迎えるたび、支配人のメッセージとして真エンディングへのヒントが少しだけ表示されます。これはこれで参考になるのですが、これだけで攻略するのは相当大変です。実際私は攻略に10時間近くかけたと思います。自力で解くことにこだわらない方は、攻略情報を探したほうがいいなと思う難易度です。公式サイトはすでに消滅しているのですが(一応web archiveを使えば見れます)、有名作なので検索すれば今でも非公式の攻略サイトが出てきます。
そこでは完全に答えが書いてあるので、私の方で自分が詰まったポイントをいくつかヒントとして書いておきます。以下、クリックで必要な部分を展開してください。

森の迷路が越えられない 迷路を抜ける方法は、大樹か教会にたどり着くしかありません。第3話に進めるのは教会の方です。作内ヒントでいわれる通り4話に進むには最短ルートでたどり着く必要がありますが、一見同じ距離に見えるルートでもかかる時間が違うことがあるので注意です。5分間に進める距離が倍になっている箇所があります。また第2話のAlive Ending回収には、大樹にたどり着く前にあるアイテムを回収しておく必要があります。

第5話に進めない 第4話序盤の選択肢で旅行者カップルを助けに行くわけですが、ここで由美香から課される6連4択が難関。作内ヒントでは、信頼が得られる選択をせよと言われますが、これは分かりやすく言えば「カッコつけるな」です。

第7話で隠し通路が見つからない 自分ばかり探索するのではなく、少し遠慮して由美香にお任せするのもありかもしれません。

こんにちは。
今回は、春紫さんの後輩と先輩と時々殺人鬼をご紹介します。

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ジャンル:ゆるふわサスペンス風ADV(公式より引用)
プレイ時間:1プレイ1~10分、フルコンプまで30分程度
分岐:多数、TRUE ENDも複数あり
ツール:WolfRPGエディター
リリース:2013/12
備考:12歳以上対象


本作はちょっとした笑いありホラーありの短編アドベンチャーゲームです。公式ジャンルは上述した通り、ゆるふわサスペンス風ADVとなっていますが、本作のメインは殺人鬼を突き止めるようなサスペンスでは決してなく、後輩と先輩(酔っ払い)の気の抜けるようなやり取りや、突飛な展開を楽しむなんちゃってホラーとでもいうべきものです。

ゲームを開始すると、主人公が先輩の家で宅飲みをしているシーンになります。しかも先輩はお酒を飲むと面倒くさいタイプで、後輩はめちゃくちゃ絡まれることになります。先輩に相当振り回されても嫌そうな感じがしなかったり、先輩の体や翌日の仕事を気遣ったりしているので、結構親しい感じですね。こんな2人の関係に興味が持てる方なら、きっと本作をたっぷり楽しめるはずです。

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本作の特徴として、1プレイが短いのに比してエンディングの種類が大変多いことがまず挙げられるでしょう。何らかの理由で死亡してしまうBAD ENDだけで7種類。TRUE ENDは3種類、その他にHAPPY ENDなどもあります。私が知っている中でTRUE ENDが複数ある作品はこれが唯一かもしれません。そのTRUE ENDは3つそれぞれでかなり違った展開を見せてくれます(でも着地点はなんだかんだで似ている)。

短編なのに大量のエンディングがある都合上、フラグが立つ場面が序盤から超高密度で存在します。ReadMeにもある通り、頻繁なセーブをお勧めします。
そんな大量のエンディングがあるわけですが、親切なことに同梱テキストファイルにエンディングの回収ヒント(ほぼ答え)が記載されています。詰まった方はぜひ参照してください。私はTRUE END2,3を見るのに使いました。


さて、そんな本作、くっつきそうでまだくっついていない2人の関係をにやにやして眺めたり、幅広い展開に驚いたりするのも良いですが、私が地味に好きなのはフレーバーテキストです。

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2つの立場と屁理屈という装備品は外せません。そうだよね、大人になったら立場捨てて自由に生きたりはできないよね……と無駄にしんみりしてしまいました(笑)
あとは50メートル走7秒に二重跳び90回とはさっきまで飲んでたくせになかなかの運動神経。セーブをしようとメニューを開くと目に入ってくるこういう画面にネタを仕込んでくるこの心意気、好きです。

話はさらにわき道にそれますが、私は冒頭の2人で宴会をしているシーンを見て、いいなあ、と思ったんですよね。純粋に2人の距離感とか関係性がいいなというのもありますが、最近は新型コロナウイルスの影響で気軽に誰かと一緒に食事したりもしにくい状況ですからね。飲酒を含むのはなおさらです。私は別にお酒が好きだったり強かったりするわけではないのですが、飲み会がなくなってしまうとそれはそれで寂しいものです。


ゲームの話に戻りましょう。主人公である後輩くん、冒頭の場面ではよくできた常識人といった感じですが、実は結構変態です。ゲーム内で変態という称号を得るくらいには。でもその変態ネタが嫌な感じがしないんですよね。私が一番好きなエンディングが新たな旅立ちエンドになるくらいです。殺人鬼も出てこずに平和だしね!
ちなみにホラー要素はほんのちょっとです。殺人鬼が突然現れたりはしますが、ほかにびっくり表現なんかはないので、ちょっと苦手な方でもプレイできる範囲かと思います。


まとまりがない文章になりましたが、本作の面白さは伝えられたでしょうか。
酔っぱらった先輩が可愛いと思った方はぜひプレイを。

それでは。

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