フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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メタ

こんにちは。今回のレビューは川澄シンヤさんの「リバース・ゲーム」です。

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ジャンル:“死”と向き合い、乗り越えるノベルゲーム(ReadMeより引用)
プレイ時間:Normal Endまで2時間、フルコンプまで5時間程度
分岐:エンディング11種(Ver2.00以降。うちバッドエンド7)
ツール:LiveMaker
リリース:2017/8
備考:15推、暴力・流血表現あり。第13回ふりーむ!ゲームコンテストアドベンチャー部門銀賞受賞作



本作のタイトルを見た私は、はじめその意味を"Reverse game"だと捉えました。何らかのゲームで負けを目指す、あるいは時間を逆行するとかゲームの側からプレイヤーに働きかけてくるメタな内容とか、そういうものをイメージしたんです。しかし本作の”リバース”は違う意味でした。”Rebirth game”、つまり生まれ変わりをかけたゲームだったのです。


というわけで本作の概要はこんな感じです。
主人公の加藤智紀(かとう・ともき)は高校一年生。夏休みの初日に散歩していたところ、なんと車にひかれて死んでしまう。そこに現れたのは天使を名乗る不気味な仮面の男、バース。彼曰く、”リバース・ゲーム”に参加して勝利すれば生き返ることができるという。そのゲームのルールは、時間内に(1人以上の)協力者を見つけ、その人と定期的に意思疎通を続けて無事に5日間過ごすこと。簡単そうに見えるが、まずは最初の協力者探しが最初の関門。果たして智紀は無事にゲームをクリアすることができるのか、そしてバースの目的は一体何なのか。5日間のゲームが幕を開ける…


といったところでしょう。
先週レビューした「終わりの鐘が鳴る前に」も生き返りをかけたゲームでしたが、特に狙ったわけではありません。たまたまです。
そして作品のメインとなるテーマも異なります。恋愛要素の大きかった「終わりの鐘が鳴る前に」に対し、本作「リバース・ゲーム」はよりデスゲーム的要素の強い作品となります。殺し合いをしたり心理戦を仕掛けたりするわけではありませんが、自分の生死がかかっているという緊張感の漂う作品です。ゲームをクリアするためには智紀のこれまで築き上げた人間関係が重要となってくるのですが、これが意外な方向に効いていて面白かったですね。

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さて、ゲームを進めていきましょう。
智紀がリバース・ゲームへの参加を承諾すると、ゲームのサポート役を務める天使の相原はるかが現れます。智紀と同年代の普通の少女にしか見えませんが、間違いなく天使であるというはるかは実体化/霊体化を切り替えることができます。霊体化した場合、ゲームのプレイヤーや協力者以外の普通の人間には見えなくなるのです。デスゲームらしい要素が見えてきましたね。


ところが、序盤においては緊張感はあまり感じられません。ゲームの場は智紀の生活圏内と変わりませんし、はるかはどう見ても普通の少女。さらにゲームの細かいルール説明を聞くために入った喫茶店では、濃いキャラクターのマスターがお出迎えしてくれます。ラブコメかな?と思うような個所もありますが、実際に協力者を探す段になって本作はシリアスさを増していきます。


誰かを協力者とするには、まずは自分の置かれた状況を相手に信じてもらわなくてはなりません。なるほど、これは確かに難しそうです。交通事故に遭って一度死んだが、リバース・ゲームに勝てば生き返らせてくれるんだ、なんて話普通の人は信じません。また、もしこのような状況に立たされたなら、はるかが忠告する通り最も身近にいる人である家族を協力者に立ててクリアを目指すのが常識的な考え方でしょう。しかし智紀は頑なに両親を頼ろうとしません。何らかのすれ違いがあったのでしょうが、ここでその詳細が語られることはありません。この詳細は本作のクライマックスにおいて感動的な形で明らかにされることになります。ここが本作において一番の肝というか、上手い部分と言えるでしょう。

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死んだ人が全員リバース・ゲームに参加できるわけではありません。何らかの心残りがある人だけがリバース・ゲームに招待され、そして生き返るに値する人間なのかを”審査”する。バースはそう言いました。智紀にとってはそれが両親との関係をやり直すことだったわけです。だからこそ、True Endにおいて”ルール変更”が正当であったことが分かります。このあたりのロジックがしっかりと描かれていて、気持ちのいいポイントの1つとなっています。
家族と正面から向き合うこと、過去を受け入れて未来へと歩んでいくこと。そういったともすれば説教臭くなってしまうような問題を、デスゲームの形をとることで感動的な演出として組み込む手腕はなかなか大したものでしょう。



上の書き方だと、生き返りをかけたゲームであるというのは形式的なものにすぎないように感じるかもしれませんが、そんなことはありません。
ゲーム初日、智紀はなんとか幼馴染である山内慶一(やまうち・けいいち)に協力者になってもらうことに成功します。5年も会っていなかった智紀の頼みを聞いてくれるなんていい人ですね。
協力者をみつけて意思疎通も果たし、あとは10時間の間を開けないように会話なり電話なりをすればよいということになってクリアできそうという空気になりますが、そう簡単には行きません。最終日である5日目には電話がつながらないというアクシデントが発生します。

……いや、これは本当にアクシデントなのだろうか。もし慶一がリバース・ゲームのことを心から信じているわけではなかったら。あるいは実は智紀のことを恨んでいる理由があるのなら…。こういった疑心暗鬼な展開はデスゲームにおける典型的な見せ場と言えるでしょう。


また、リバース・ゲームの参加者は智紀1人ではありません。ゲームの途中には作業服の男性やまだ小学生に見える少女など他の参加者にも出会います。彼らとの出会いがどう智紀の心情に影響していくのかといったところも見どころの1つです。



さて、本作はいわゆる1周目ルート制限ありの作品です。
初回プレイではどんなに頑張ってもNormal End(かBad End)にしか行くことができません。その後2周目以降でその他のエンディングが解放されていきます。この方針はものによっては面倒くさいだけだったりしますが、本作においてはそうならないような工夫がしっかりと施されているように感じます。
2周目においてはゲーム進行中の天界での出来事などが語られたりしますが、これはまずはNormal Endを見るくらいはプレイしておかないと意味が分からないので、ルート制限をかける必要性もあったでしょう。後書きを読むと分かりますが、作者としての意図もしっかりしており、それゆえの成功例だと感じました。既読スキップは正確で高速ですので、エンディング回収にもそれほど手間がかかりませんしね。

そうして苦労してたどり着いたTrue Endでは悩みを断ち切りしっかりと前を向いている智紀の姿に、私も頑張って良かったなあと感じさせてくれます。バースの目的なども含めてしっかりと回収されるのが良いですね。
バースの正体が明らかになるところは、その瞬間の感動が(プレイヤーにとっては)薄いので、事前に写真を見せておくなどでプレイヤーにもそれと分かるような仕掛けがあった方が良いだろうなあと思います。智紀の感動とプレイヤーの感動のタイミングがずれてしまうのでそこだけ惜しいように感じました。(ネタバレに配慮して書くのが難しい…)


話は本作とは若干ズレますが、私が作者の川澄シンヤさんを知ったのは3年前のティラノゲームフェスで、「女のフリしてゲーム作ったら、女装することになりました」を見たのがきっかけです。タイトルから分かる通りのコメディ作品で、私の好みでもあったのでノベコレにコメントを書いたりもしました。その際過去作とは作風が全然違っているというような紹介文を読んだ記憶があったので、私は「リバース・ゲーム」はシリアスに振った作品で、間違っても女装少年なんて出てこないだろうと思っていたのです。

ところが! 2周目プレイ時はなんとゲーム序盤で智紀のワンピース姿が!!
可愛いじゃないですか! 間瀬くんに負けてませんよ
個人的には1周目で見せて欲しかったな! 特にネタバレとか関係ないシーンだし。
あとはレイナのおしおきシーンも明らかに作者さんの性癖山盛り! 大好きです、ありがとうございました。(注:これらの表現は全年齢向けです。本作が15推なのはあくまでデスゲームに関連する暴力表現のためです)
こうした下品な感じの無い可愛くてほんのちょっとえっちな展開好きなんですよね……ちょうど今開催中のDLsite公式ジャンルリクエストキャンペーンで全年齢向けジャンルをリクエストしてしまったくらいには。

というわけで私はこのスチルにハマってしまいました。ここに画像は貼らないのでぜひ皆さんご自身の目で確かめてみてください。



最後に隠しルートの話を少しだけしておきましょう。
2周目以降、特定の選択肢を選んでいくと5日目の展開に変化が現れます。その他のルートとは明らかに一線を画すこの狂気、怖いです。でも実際に自分がこんな生死をかけたゲームに参加させられたらこのような思考になるのも無理はないかもしれません。
そして(ver2.00以降)、隠しルートコンプ後にとあるエンディングが解放されます。作者の警告やエンディングの分類から察することはできますが、ここだけゲームのジャンルが変わったかのような衝撃の展開…とだけ言っておきましょう。このルートに入るのは難しいですが、同梱のヒントを参考にすれば数回の試行錯誤でたどり着くことができるでしょう。

ただ個人的には隠しルートに入る苦労と、その結果繰り広げられるあのシーンの後味の悪さが釣り合ってないんじゃないか、という気がしてしまいます。



というわけで今回は「リバース・ゲーム」でした。
一見破綻していても確かに存在する家族愛、人はどういう時に前を向いて生きていこうという希望を見出すのか、というあたりが気持ちいい作品です。ぜひプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。今回はKITTENSさんの「マイ・スイート・トマト」をご紹介します。

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★favo
ジャンル:ファンタジーノベルゲーム
プレイ時間:オートプレイで45分ほど
分岐:なし
ツール:吉里吉里
リリース:2004/9
備考:第11回ふりーむ!ゲームコンテスト健闘賞受賞作


本作はノベルゲームという形式になっていますが、その他のノベルゲームとはもはや違うジャンルなのではないかと思わせる特徴があります。言葉で書くとそのすごさがあまり伝わらないのですが、まず第一にグラフィックはすべて一枚絵からなります。つまり背景+立ち絵という構成はありません。そして第二にフルボイス。主人公のエミやその他の人物にも声があるのはもちろんのこと、なんとセリフではない地の文にまでボイスが入っているのです。これは他に見たことのない演出で、ノベルゲームをプレイしているというよりは、紙芝居による読み聞かせを聞いているような気分になります。そうした意味でも本作をプレイするときは、オートモードにすることをお勧めします。アニメーションも豊富についており、眺めるだけで見た目にも楽しい作品となっています。



本作を起動してすぐ、かわいらしいトマトちゃんの生活ぶりが紹介されます。トマトの形をした家でトマトの栽培をしていて、さらに採れたてのトマトを生み出す超能力も使えて、でもベジタブル村にはリンゴさんとパセリくんなどの天敵がいて……。しかし突然、「そんなものはいなーい!」と普通の女子中学生エミによってトマトちゃんのファンタジー世界は崩され、日常世界に戻されます。ふむふむ。どうやらこのエミちゃんがベジタブル村の物語の生みの親であるようだ…ということが分かってきます。
しかしこのエミちゃん、なんとトマトは大の苦手で味もにおいも食感も見た目も嫌い。ケチャップすら無理というので嫌い具合は相当です。

そんなトマト嫌いのエミちゃんがなぜトマトをモチーフにしたキャラクターを作ったのか、昔は好きだったけど何かトラウマができて嫌いになったのかなとか、トマトちゃんを作ったのはエミ本人ではなかったのかなとか気になってきますよね。結論から言うと、昔は好きだったというのが正解なのですが、その事件が問題です。すごく悲しいけど、めちゃくちゃよく起こりそうな出来事なんです。小学生ってこういうこと、すごくあると思うんです。決して、ものすごい悪意があってやっていることじゃない。単なるいたずらのつもりでしょう。しかしそのいたずらは、時にいたずらされた側に対し大きなトラウマを残します。ここのところが悲しすぎて、すごく印象的でした。

トマトちゃんの場合、事件になったのは漫画でした。しかし、同様のことはフリーゲーム界隈でも、もっと言えば創作関連の趣味全般でも起こりうることです。本作の事件に似た理由で創作をやめてしまったという方もいるでしょう。私はこうしてレビューを書いている程度にはフリーゲームが好きなので、作者さんが筆を折ってしまうのは寂しいことです。

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そして創作活動を停止することに伴って悲しい思いをするのは作者や読者だけではありませんでした。ここがファンタジーである本作の見せどころです。トマトちゃんの創造主たるエミが止まってしまったことに伴い、作品は永遠に完結することがなくなりました。そうなったとき、キャラクターたちに人格があったら何を思うのか。ここもすごく良かったです。
ノベルゲームでもその他の媒体でも、心に残る作品ってすごくキャラクターが生き生きしてるんです。物語の都合で動かされているのではなく、キャラクター自身が自ら動き、感情を表現し、成長していきます。本作におけるエミとトマトちゃんはこの点で素晴らしかったです。ほのぼのとした物語を作ろうとしたが、その世界の人物は意外と大変な苦労をしていることに気付いたエミ。創作の"設定"に悩まされるトマトちゃん。物語の作者と作内の登場人物の邂逅というファンタジーの手法によって、彼女らの悩みが逆にリアルに、説得力をもって感じられ、素晴らしい作品に仕上がっていると思います。

ちょっと暗い感じになってしまいましたが、エンディングついてはしっかりと希望を持てる内容となっていて本当に良かったです。エンディング到達後は、おまけも解放されるのでそちらもぜひ見てみてください。BGM・スチルの鑑賞にとどまらず、なんと没セリフ集というコーナーがあります。すべての文についてボイス付きなのは冒頭でも述べましたが、採用されたセリフ以外にもこんなにたくさん録っているんだなというのが分かり、作者さんの意気込みに感服しました。

それでは。

こんにちは。今回は一限はやめさんの「ホラー大好きヒミカさん」をご紹介します。

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ジャンル:ホラーゲームあるあるネタ風コメディ
プレイ時間:45分
分岐:なし(後述)
ツール:RPGツクール(要RTP)
リリース:2020/4

今回ご紹介する作品は、上のタイトル画面のスクリーンショットやそこでのBGMは全力でホラーと主張していますが、中身としては日常ギャグ系となっています。

本作は、ほぼすべてが主人公の陽菜と友達のひみかが部屋でおしゃべりしている場面で構成されています。タイトルから分かる通りひみかはかなりのホラーゲームやオカルト系マニアの大学2年生。ホラーゲームにありがちな状況や台詞の引き出しが異常に多く、超ハイテンポでネタを放出します。対する陽菜は比較的普通の子でツッコミ役。あっちこっちに話が飛ぶひみかを毎回軌道修正して話を進めてくれます。しかしたまにひみかのフリにのっていくことも。そんな2人のやり取りを見ながら、あるある~~といったり、そんなのねーよとツッコんだりするのが本作の楽しみ方の一つになります。


さて、本作には地の文だったり、ナレーション役といったものは存在しませんが、ショートコントのタイトルのような感じで数分くらいの間隔で暗転とタイトルアナウンスが入ります。とはいっても登場人物も場所も変わらないのですが、この仕組みで話の切り替わりがわかりやすくなっています。ずっと同じ2人が話すだけではそのあたりがあいまいになったり、息をつく暇がなくなりますからこれはいい構成だなと感じます。ちなみに、その場面転換の間でのみセーブが可能になっています。

まず最初は「怖い話」。ストレートですが、怪談って人気ですよね。私は怪談やホラーが特別好きというわけではありませんが、ゲームをやっているとよく出会うジャンルということもあり、有名なものは結構知っているつもりです。
しかし本作では当然ながら正面から怪談について語ったりはしません。
「1日3食をすべてお菓子の「じがりこ」で過ごした話」
から始まり、
「田舎に残る怖い風習」
というまさによくある風の怪談が始まるかと思いきや
「女子間の、されるのがわかりきった「サプライズ」のし合いの方が怖い風習」
と一刀両断。この急カーブで笑えるならば本作を最初から最後まで余すところなく楽しめるでしょう。
「何でも田舎のせいにするな」との主張、心得ました。

そんな感じでホラーや怪談を題材にしつつも様々な方向に振れた話題を楽しめる本作ですが、メタな話題も結構含まれます。本作のシナリオがゲームという媒体で紡がれることからもそれは必然かもしれませんね。
先ほどの話で、「地元が田舎って、どの辺?」という振りに対し、「かなりの田舎と言ってしまった以上、傷つく人がいるかもしれないので具体的な地名は出さない」は流石です。「視聴率」発言も笑いました。確かにそうかも。

ひみかはかなりマイペースな性格で、同じお題に対して陽菜があきれるほど多くの例を挙げたり、逆にいつの間にか話題が変わっていたりします。そしてどんどんホラーとは関係ないテーマに進んで行ったりもします。”ホラー大好き"というのはひみかさんの趣味に関する話であって、本作全体のテーマというわけではないのです。軽めの下ネタもけっこうあります。かなり自由にいろいろな話題に飛ぶので、ホラーの話という導入から離れて女子会をのぞき見しているような気分すら味わえるかもしれません。

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さらには突然の水着シーンあり。その後に1度だけある選択肢によっては以後がすべて水着での会話になっており、一気にツッコミどころが倍増して楽しいですよ。立ち絵と一部の会話が変わるくらいで、シナリオに影響はありません。

また、上のような2人の駄弁りだけでなく、本作には時折前触れなしに「なりきりコーナー」が挿入されます。アルバイトの接客ごっこだったり、ゲーム内でよくあるシチュエーションごっこだったり、実在作品のオマージュだったりと様々。私は「探偵」での陽菜のスピード感あるツッコミが好きです。
なりきりコーナー中は、結構シリアスな場面もあったりします。ファンタジー系のゲームやアニメでめちゃくちゃありそうなシーンで、これも結構面白かったです。ひみかの方は相当な変わり者なのでよくわからないですが、陽菜も割とノリノリでこの遊びに付き合っているのを見ると、仲良くていいな~と思いますね。説明なしで寸劇が出来上がっていて、以心伝心している感じがすごい。
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しかし立ち絵の表情と場面の悲壮さがかみ合ってなかったりする。これは、全編を通してコメディ調である本作の味ですね。しかもその直後に(以前の選択によっては)何事もなかったかのように水着で登場するので、シュールさが加速してます。


最後に、私が好きだったネタを3つ挙げましょう。
  • 飲み会の断り方
  • そのやり方は……確かに効果的かもしれないけどいろいろ大事なものを失いそう。少なくとも私はやりたくないなあ。陽菜の感想ももっともだし。
  • テレビをつけたら…
  • 私が実際に友達の家に行ってテレビをつけてそんな感じだったらかなりビビる。しばらくは微妙な空気になりそう。
  • 名前の読みがな
  • レビュー内でルビを振らないようにしましたが、陽菜は"ハルナ"です。作内ではあだ名などから読みを判断できるとはいえ”ヒナ"も一般的な読みだなと思っていたところ、それもネタにされていたのでさすがです。
というわけで「ホラー大好きヒミカさん」のご紹介でした。脱力系とでもいうのか、洗練されたギャグとはまた違った笑いが楽しめる作品です。独特の雰囲気のある作品なので、ぜひプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。今回は時雨屋さんの「1000文字勇者」のご紹介です。

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ジャンル:メタネタ多めのコメディADV
プレイ時間:クリアまで30分程度
分岐:ゲームオーバーあり
ツール:RPGツクール
リリース:2016/12


今回紹介する「1000文字勇者」は、RPGの形式をとりながらRPGのお約束を逆手に取った挑戦的なシステムで謎解きゲームのようなプレイ感を生み出した、RPGと見せかけたADVのような意欲作です。

本作のシナリオというかコンセプトは単純明快。ふりーむに載っている3行の説明で十分です。

この勇者は千文字読むと爆発します。
がんばって魔王を倒しましょう。
千文字喫茶参加中。


通常私たちがRPGをプレイするとき、町で出会った人にはとりあえず話しかけることが多いはずですし、それがセオリーでもあります。ただの村人からでも、戦闘のアドバイスとか、隠しアイテムのありかのヒントとか、イベント進行フラグとかの情報が得られたりしますよね。「装備品はメニューから装備しないと効果を発揮しないよ」と教えてくれる人とかはどのゲームを見ても最初のほうの町に住んでいる気がします。
ところが本作はなんと主人公が1000文字読む(メッセージウィンドウに表示される)と爆発する呪いがかかっていて、強制的にゲームオーバーになってしまいます。当然、全部の村人に話しかけている余裕なんてありません。とりあえず初回プレイでは手当たり次第に話しかけていくしかありませんが、これではクリアできるわけはありません。話しかけて得られた反応からイベント進行に必須な人を判別し、極力無駄を排して話を進める必要がある、まるで謎解きゲームのような内容になっています。


本作はRPGでもあるので、戦闘シーンもあります。しかしまともに戦っては容易に文字数制限をオーバーしてしまうので、なんと勇者はどんな敵でもワンパンで倒せる能力を持っているのです! その代償の呪いは大変きついものですが…
戦闘において厳しいのは、戦闘前に無駄なことばっかり喋ってくるいやがらせのような敵。何とか回避する方法を見出さなくてはいけません。こうした敵に笑わされたり、無駄な文字にイライラしたり、なんとか回避して進めないか探索してみたりと、試行錯誤できるのが面白いですね。
ちなみに厄介なのは敵だけではありません。
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こういった面倒くさい奴をどう処理するか、必須なイベントやフラグをしっかりと見定める必要があります。1000文字という制限には多少の余裕はあるものの、100文字を超えるような長話はしっかりとスキップしていかないとクリアできないバランスです。フラグが立つ箇所を見つけてはセーブ時点に戻りストレートにフラグへ向かう、そんなプレイングが求められるでしょう。必須イベントだけを起こして進んでいけばクリアまで5分程度というシナリオですが、その正解ルートを見つけるために村人に聞き込みをする、怪しい場所を調べる、そうした作業を楽しめる方にはぴったりです。シナリオ進行にかかわる情報は、台詞内で目立つようにオレンジ色に着色されているので、ゲームの難易度としては高くありません。

ちなみに私が考えたところでは、魔王討伐後に姫に会う場面で216文字残しが最高値かなと思うのですがどうでしょうか。まだ削れる文字数があるよっていう方は教えてください。


さて、本作では呪いを解いて文字数制限を撤廃したモードで思う存分人に話しかけることもできます。このモードへの入り方は、一回通常モードでクリアするとわかるので頑張ってクリア目指してください。2回話しかけると台詞が変わっている人も結構います。彼らが何をしゃべるかは、クリア後のお楽しみですね。
また、最後のシーンがちょっと変わる程度ではありますが、本作は一応マルチエンディングになっています。どこで分岐するのかは比較的わかりやすいと思うので、ぜひ全パターン試してみてください。


今回は「1000文字勇者」のご紹介でした。お約束を逆手に取ったメタな話に笑える方、RPGのフラグ管理がいつも気になってしまう方、ダンジョンでは外れの方の分かれ道まで全て探索してしまう方にお勧めです。最後にこのゲームの本質を伝えるスクリーンショットをお見せしますね。
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…ということです。それでは。

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