フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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周回プレイ

こんにちは。今回は時雨屋さんの「1000文字勇者」のご紹介です。

1000yusha1


ジャンル:メタネタ多めのコメディADV
プレイ時間:クリアまで30分程度
分岐:ゲームオーバーあり
ツール:RPGツクール
リリース:2016/12


今回紹介する「1000文字勇者」は、RPGの形式をとりながらRPGのお約束を逆手に取った挑戦的なシステムで謎解きゲームのようなプレイ感を生み出した、RPGと見せかけたADVのような意欲作です。

本作のシナリオというかコンセプトは単純明快。ふりーむに載っている3行の説明で十分です。

この勇者は千文字読むと爆発します。
がんばって魔王を倒しましょう。
千文字喫茶参加中。


通常私たちがRPGをプレイするとき、町で出会った人にはとりあえず話しかけることが多いはずですし、それがセオリーでもあります。ただの村人からでも、戦闘のアドバイスとか、隠しアイテムのありかのヒントとか、イベント進行フラグとかの情報が得られたりしますよね。「装備品はメニューから装備しないと効果を発揮しないよ」と教えてくれる人とかはどのゲームを見ても最初のほうの町に住んでいる気がします。
ところが本作はなんと主人公が1000文字読む(メッセージウィンドウに表示される)と爆発する呪いがかかっていて、強制的にゲームオーバーになってしまいます。当然、全部の村人に話しかけている余裕なんてありません。とりあえず初回プレイでは手当たり次第に話しかけていくしかありませんが、これではクリアできるわけはありません。話しかけて得られた反応からイベント進行に必須な人を判別し、極力無駄を排して話を進める必要がある、まるで謎解きゲームのような内容になっています。


本作はRPGでもあるので、戦闘シーンもあります。しかしまともに戦っては容易に文字数制限をオーバーしてしまうので、なんと勇者はどんな敵でもワンパンで倒せる能力を持っているのです! その代償の呪いは大変きついものですが…
戦闘において厳しいのは、戦闘前に無駄なことばっかり喋ってくるいやがらせのような敵。何とか回避する方法を見出さなくてはいけません。こうした敵に笑わされたり、無駄な文字にイライラしたり、なんとか回避して進めないか探索してみたりと、試行錯誤できるのが面白いですね。
ちなみに厄介なのは敵だけではありません。
1000yusha3

こういった面倒くさい奴をどう処理するか、必須なイベントやフラグをしっかりと見定める必要があります。1000文字という制限には多少の余裕はあるものの、100文字を超えるような長話はしっかりとスキップしていかないとクリアできないバランスです。フラグが立つ箇所を見つけてはセーブ時点に戻りストレートにフラグへ向かう、そんなプレイングが求められるでしょう。必須イベントだけを起こして進んでいけばクリアまで5分程度というシナリオですが、その正解ルートを見つけるために村人に聞き込みをする、怪しい場所を調べる、そうした作業を楽しめる方にはぴったりです。シナリオ進行にかかわる情報は、台詞内で目立つようにオレンジ色に着色されているので、ゲームの難易度としては高くありません。

ちなみに私が考えたところでは、魔王討伐後に姫に会う場面で216文字残しが最高値かなと思うのですがどうでしょうか。まだ削れる文字数があるよっていう方は教えてください。


さて、本作では呪いを解いて文字数制限を撤廃したモードで思う存分人に話しかけることもできます。このモードへの入り方は、一回通常モードでクリアするとわかるので頑張ってクリア目指してください。2回話しかけると台詞が変わっている人も結構います。彼らが何をしゃべるかは、クリア後のお楽しみですね。
また、最後のシーンがちょっと変わる程度ではありますが、本作は一応マルチエンディングになっています。どこで分岐するのかは比較的わかりやすいと思うので、ぜひ全パターン試してみてください。


今回は「1000文字勇者」のご紹介でした。お約束を逆手に取ったメタな話に笑える方、RPGのフラグ管理がいつも気になってしまう方、ダンジョンでは外れの方の分かれ道まで全て探索してしまう方にお勧めです。最後にこのゲームの本質を伝えるスクリーンショットをお見せしますね。
1000yusha4

…ということです。それでは。

こんにちは。今回はたんしおレモンさんの冒険の時間!です。


bouken1

ジャンル:オート戦闘お手軽RPG
プレイ時間:エンディングまで1時間、図鑑コンプリートまで2時間ほど
分岐:なし
ツール:HTML5(ブラウザゲーム、スマホ可)
リリース:2020/5


本作はスマートフォンでも遊べるように作られたお手軽ブラウザRPGです。シナリオと呼べるような要素はほとんどありません。また、戦闘はフルオートなので実際に戦闘に入ったら見ているだけになります。プレイヤーが介入できる要素は戦闘の順番、仲間にする魔物、周回要素の3つです。それぞれについて見ていきましょう。

戦闘の相手と順番

ゲームはいくつかのフロアからなっています。各フロアには敵が数体。どの敵と戦闘になるかは事前に分かるため、この順番だったら勝てそう、ボスに勝つには回復ポイントの使用回数を温存した状態で経験値稼ぎする必要がありそう、属性の相性を考えるとこの敵と戦うのは得策ではない、などの要素を考えることになります。多くのフロアでは規定回数の戦闘を終えると自動的に次のフロアに進んでしまうため、より多くの経験値を稼げる相手を選んで戦うというのもアリです。

仲間にする魔物

本作では戦闘に勝利すると、敵モンスターのうち1体を必ず仲間にすることができます。したがって、なるべく役に立つ強力な魔物を早い段階で仲間にすることが重要になります。また、味方にできるのは4体までなので、それ以上になると見放す魔物の選択を迫られることになります。この先の戦闘やフロアで何が求められるかを周回プレイを含めてしっかり把握し、適切な味方を増やして育成していくことが魔王城攻略のためには必須でしょう。
また、本作には同じ種類の魔物を数体集めると合体して進化するという特徴があります。当然進化後の魔物は強力なため、なるべく味方は進化させておきたいところです。そのためには、先に述べた味方にする魔物の取捨選択と、戦闘を行う順番の選択が大切になってくるのです。

周回要素

本作の周回要素は2つです。まず一つは図鑑。これまでに仲間にしたことのある魔物が登録されます。2周目以降の開始時には、図鑑登録済みの魔物の中から1体選んで仲間にした状態でゲームに臨むことができます。レベルは1に戻ってしまいますが、早い段階で強い魔物を仲間にできるとそのメリットは絶大です。つまり、ボス攻略ができなそうでも次回のプレイに備えて、魔物を進化させられるような戦闘相手を選ぶなどの戦略もとれるようになります。魔王討伐・エンディング到達には図鑑全種登録は不要ですが、ぜひ図鑑埋めにも挑戦してみてください。まさかのアイツも進化できますよ。
もう一つはアイテムです。本作のアイテムには、店で購入できるものとボス討伐時にもらえる特殊なアイテムの2種類があります。店で購入できるものは、毎回冒険に出る前に購入することができます。各種ステータスアップのほか、属性攻撃やレア魔物を出現させるなどの特殊効果のあるものもあります。ボス討伐でもらえるものは、入手に苦労するだけあって非常に強力です。進化合成用の魔物をキープするアイテム(どう見てもモンスターボール)、全属性に対して耐性を付けられるアイテム、冒険開始時に図鑑から連れて行ける魔物を2体にできるアイテムです。説明するまでもなく強力なので、ぜひ回収してください。

bouken2

さて、そんな本作のゲームバランスですが、適当に仲間を増やして進化できるときは進化するのようなやり方では中ボスくらいで壁に当たるけれども、対策を立てれば運に頼らずともクリアできるちょうどいいバランスだと思います。タイトル画面に戻ってくるたびに全員レベル1に戻るため、レベルを上げて物理で殴るといった単純な戦法では突破できません。それなりにしっかりと目的を定めて(進化がまだの仲間を図鑑に登録するとか、ボスに効く属性を確かめるとか、特殊アイテムを回収するとか)戦略を練りましょう。戦闘中は一切の操作ができないので、その進み具合をよく見ておき、余裕で勝ったのか、味方が倒されそうだったのか、属性の相性は良さそうなのかなどを次の戦闘に生かすのが大切になってきます。この戦略を立てる上で一つ面倒だったのが属性の相性の把握です。火・水・風・土の4属性があって、それぞれでじゃんけんのように相性の良し悪しがあるというのが一般的だと思うのですが、本作にはそれらに加え光・闇・痺の3つがあり、かなり複雑になっています。合計7つもの属性があり、各属性にある相性のいい属性と相性の悪い属性が1つというわけでもなく(2つあるものと1つのものがある)、さらに魔物自体も2つの属性を複合して持つことがある、となると相性を考えるのが相当大変でままならなくなってきます。一応ゲーム画面の下に属性相性表が用意され、ステージ開始時に関連する属性の説明が一度でるなど配慮しようという気持ちは感じられるのですが、覚えられないしいちいちこれを参照するのも面倒です。せめて作者さんの過去作の拡張にして欲しかったです(光・闇については過去作と同様なのですが、火・水・風・土については全然違っており、相当混乱しました)。
攻略に困った場合、各フロアにいる老人に話しかけるとちょっとだけヒントをもらえます。大まかな方向性とかしか教えてくれませんが、見落としていた攻略要素に気づけたりするかもしれません。


そして、本作に登場する魔物たちはどれもポリゴンで表現されたかわいらしさのあるものです。一度仲間にすると図鑑に載って名前がわかるようになりますが、ダジャレセンスのある独特のネーミングで笑わされることもあるでしょう。このあたりは作者のくろすけさんお得意のセンスですね。過去作からの登場がほとんどなので、それらをプレイしたことがある方は逆にどれが新しい魔物なのかに注目すると楽しめるでしょう。本作はシナリオのようなものはないため、くろすけさんお得意のおふざけイベントはないのが残念ですが、今まで過去作をプレイした経験がない方には逆に刺激が少なくてちょうどいいかもしれませんね。ネーミングセンスとか、老人との会話のノリとかが気に入った方はぜひ作者さんのほかの作品もプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。今回は、前回ちらっと名前を出したほりんさんのSheSeeCrisis!をご紹介します。

SSC1

ジャンル:おしっこ我慢系短編RPG
プレイ時間:1プレイ10分前後、隠しエンド到達まで1時間半程度、その他やり込み要素あり
分岐:あり(後述)
ツール:RPGツクール(アツマールでもプレイ可)
リリース:2017/4
備考:15推


前回ご紹介したねこのさんのありすえすけーぷも主人公がトイレを我慢して脱出を目指すゲームでしたが、本作も同じくなるべく速く敵を蹴散らしてトイレに駆け込みたいという短編RPGです。かわいい子がもじもじする様子を眺めるという点が共通している両作ですが、そうした趣向以外のゲーム性の面でもしっかり作り込まれているという点でも共によくできていると思います。
フリーゲームをいろいろとプレイしていると、こうした変態チックな作品に度々出会いますが、このようなものにこそ作者の方の好みや熱意が濃縮されている気がして、フリーゲームらしい良作に出会えたように思います。


本作の主人公フララは初期状態でレベル99。適宜回復アイテムを使うなどして安全に戦えば、道中の雑魚敵など相手ではありません。
SSC2
しかしそんな戦闘を面白くしているのが本作のターン制限。おしっこを我慢しているための時間制限は、リアルタイムではなく戦闘中の経過ターン数によって表現されています。つまり、なるべく短いターン数で全ての敵を倒すためには、どの敵にどのスキルを使って、どのタイミングで回復薬を使って……などを考える必要があり、それが本作を面白くしている特長の1つでしょう。ちなみに、回復薬は実質無制限に使用できますが、当然のように全て飲み物なので使用するたびに尿意が加速(=制限ターン数が短縮)します。
難易度には「ふつう」と「きちゅい」の2つがあります。「ふつう」ではそんなにシビアなリソース管理をしなくても魔王を倒して漏らす前に無事に家に帰ってくることができるでしょう(ただしトイレに直行できるとは言ってない)。「きちゅい」は制限ターン数が短いうえ、敵のステータスが高い、クリティカルが出ないなどかなり不利な条件となっており、初見でクリアするのはかなり厳しいかと思います。HPやTPなどの適切な管理と、敵に効率よくダメージを与えるためのスキルの使い方を意識的に行う必要があるのです。次ターンの敵の行動が明示されるのも、そのあたりのことを意識しての仕様でしょう。そうした意味で、本作はRPGでありながらパズル的なゲーム性を持ち合わせているといえるでしょう。

本作攻略に欠かせない要素はそれだけではありません。攻撃を行うと青いゲージが短時間表示されます。時間切れになる前に指定されたキー(ZX←→↑↓のどれか)を指定回数入力することによって、チェインコマンド(CC)が発動し、連続攻撃をすることができるのです。
SSC3
この機能によって連続攻撃を決めるのが大変爽快なのです。うまく使うと、ラスボスを1ターンキルすることすら可能です。入力時間もそれほど短くはないので、アクションが苦手でもなんとかなる範囲でしょう。CCを使いこなすことが、特に「きちゅい」をクリアするうえでは必須になってきます。
ただ、このゲージの出てくる位置が、敵だったり自分だったりするのでここは統一してほしかったなと思います。パターンはあるので覚えることはできるのですが、ちょっと油断すると思っていたところと別のところにゲージが出てCCに失敗してしまうことがよくありました。

また、戦闘画面での靄のエフェクトやクリティカル時のエフェクトなどが重いのもややマイナスに感じました。マシンの問題かもしれませんが、設定で軽量モードなどが選択できるようになっていたらうれしいです。


さて、裏山マップで時間切れになったりHPが尽きたりするとバッドエンドなのは当然ですが、規定ターン以内にラスボスを倒したとしてもハッピーエンドを迎えられるとは限りません。むしろ、ハッピーエンドを迎えるためには割と頑張って本作をやり込む必要があるのです。そのためにもきちんと実績システムが搭載されています。ノーヒントだと実績コンプはやや難しいでしょうが、きちんとクリア後おまけにてフォローがありますのでご安心ください。
13個の実績だけでなく、ハイスコア記録やクリア後闘技場の実装、そして隠しコマンド(ちょっとかげきモード)も用意されているなど、1プレイ10分程度の短編RPGながら長く遊べる作品に仕上がっています。マップ内の移動速度は高速だし、オープニングやチュートリアルなどはスキップ可など周回プレイしやすい仕様になっているのも良いですね。

というわけで今回はSheSeeCrisis!の紹介でした。スピーディーで爽快感あふれる戦闘に加え、Ver3でフララにボイスまで付いた本作、ぜひプレイしてみてください。ストーリーとしては裏山に薬草を取りに行くだけなのですが、意外とやり込み甲斐がありますよ。

こんにちは。今回は再びねこのさんの作品、ありすえすけーぷをご紹介します。前々回のレビューでは最新作、前回は16年前の作品を取り上げましたが、今回はまた最新作。時代の幅を飛び越えてます。

(12/5追記:アツマール版公開・ランキングボード実装を受け、本作RTAの記事を書きました。通常の攻略は終わってタイムアタックを目指しているという方はこちらへどうぞ)

alicee1

ジャンル:ちょっとキワドイ脱出アドベンチャー
プレイ時間:初回15分。フルコンプまで1~2時間
分岐:4つ
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2021/4
備考:12推

本作は、以前紹介したありすすいーぱーのシリーズで、主人公が共通しています。しかしゲームジャンルは結構違っていて、ごりごりのパズルだった前作に対し本作は謎解き脱出ゲームとなっています。
脱出の舞台はなぜか夜の学校。目が覚めたらなぜか出口のなくなった学校にいたありす。5枚のカードを集めて脱出を目指します。夜の学校から脱出といえば、さくらぷりんさんの深夜12時学校でが思い浮かびますが、本作はホラーではありません。この雰囲気はどちらかといえばほりんさんのSheSeeCrisis!が近いでしょう。そう、つまり本作はおしっこ我慢ゲーなのです。


前作の可愛らしさは健在です。またもや相当量のボイスがついて、突飛なシナリオ・可愛らしいイラストと共にその魅力はばっちり。そんなありすがトイレを求め学校内を探索し、謎解きに頭を抱えるシナリオです。フェチがハマる人にとっては神ゲーになること間違いなしです。
露骨に我慢しているイラストはありませんが、謎解き失敗時にはまたしても"聖地"が拝めるスチルが慌てたボイスと共に登場。その他にも探索中のイベントなどでも結構な頻度で下ネタがあり、そうした方面での楽しみ方がメインとなる作品といえるでしょう。前作の時は、タイトルやゲーム説明からそうしたネタが含まれることを想定していなかったので、どちらかというといかがわしいと感じてしまいましたが、本作ではゲーム説明の段階でフェチが詰まった作品だということが明らかですからね。意外とおしっこ我慢に関する性癖は多いのか、なんて思いながら楽しめました。

逆に言うと、本作にはストーリーのようなものは全くありません。校内を探索したりミニゲームをしたり、ちょっぴりアレなイベントを見たりするだけなので、キャラクターの性格とか背景のあたりで物足りなさを感じたのは事実です。特に、主人公のありすが自身を"コミュ障"とか、"陽キャが怖い"みたいに評価していますが、この辺が突飛な設定に映りました。ありすが最初に登場した「ありすとーく」のやり取りを見るとそんなタイプにも見えないんですけどね…

ちなみにエロ系以外にも、ちょっぴり笑えるネタがいろいろ仕込まれています。私が特に好きなのはこちら。
alicee2
あ~、はい、そうですね(棒読)
前作でも本作でも見せまくってるけどな!

エンドロールの"親の声よりも聴いた"もなかなかですね。確かにタイトル画面の時点でちょっと思いましたが、まさか作内でそんな言葉が出てくるとは。メタなネタが多めだなとは思っていましたが、さすがに不意を突かれました。


ゲームの部分についても触れないわけにはいきません。本作はティラノスクリプトで作られた謎解きゲームですが、この謎の部分が思っていたよりよく考えられていて、解けた時はすっきりした気分になりました。結構難しいですが、作内でもよく探索すればヒントをもらえるし、どうしても解けなければ作者さんサイトによりあからさまなヒントも用意されています。解けなくてつまらない、もやもやするといったことにならないようしっかり準備されていて好印象です。
ちなみに私は2つほど作内ヒントを見ました。美術室だけはノーヒントで解けたのですが、その他が見当もつかず理科室のヒントを見たところ、なるほどそういう事かと驚き、その他の部屋の謎を解く方向性にも気が付きました。あとは最後の昇降口もヒントを見てしまいましたが、こうしたお助け機能を使った上でも謎解きの快感が得られるような絶妙なヒントにしてあるあたりも上手いですね。

エンディングは、我慢の限界に達してしまうものを含めて4種類。分岐条件は直感的にも分かりやすいので、謎解きさえできればエンディング回収はたやすいでしょう。また、普通の作品なら、エンディングをすべて回収したところで満足するところでしょうが、本作にはアドベンチャーゲームにしてはかなり珍しいやり込み要素が存在しています。なんと、ボイスの回収率や最速脱出記録、ミニゲームのハイスコアなどが記録されるのです。これはすごくいい仕掛けだと思います。目標や成果が目に見えるだけでこんなにやる気になるんですね。シナリオの長さに比して相当量のボイスが収録されている本作ですが、この機能が無ければ全ボイス回収をするモチベーションはなかなかわかなかったでしょう(そもそも未回収ボイスがあることに気付かない可能性が高い)。私が最後まで回収に苦労したボイスは、通常のプレイではまず起きないだろう状況下の教室で聞ける台詞だったのですが、このような状況まで考えてボイスを用意したりデバッグされたりしていることも凄いなと感じました。

ちなみに私のやり込み実績はこんな感じです。
alicee3
SSSランクが存在するのか気になって、相当な回数試行錯誤しました(ミスったらリセットしてやり直したりしたので、記録に残っている回数の倍くらいはプレイしているはずです)。しかし結局バスケットボール1万点×3、アイテム8回収、脱出タイム2分台を同時に達成してもSSランクだったので、これが最高なんじゃないかという結論に至りました。


というわけで「ありすえすけーぷ」のご紹介でした。とってもかわいらしい脱出ゲーム、一度やったら全ボイス回収までやり込みたくなるはず。ぜひプレイしてみてください。
それでは。

今回は、ねこのさんのありすすいーぱーをご紹介します。

alices2


ジャンル:パズル&ノベルゲーム
プレイ時間:30分
分岐:バッドエンドあり
ツール:ティラノスクリプト(ブラウザ可)
リリース:2020/4
備考:ティラノゲームフェス2020技術部門優秀賞受賞作


前回の記事で少し話題に出した作品です。
本作はパズルパートとノベルパートからなっていて、パズルパートはマインスイーパーそのものです。ステージ1から3があり、それぞれ本家マインスイーパーの初級、中級、上級に対応します。ノベルパートはパズルへの導入といった感じで、はっきりしたシナリオのようなものはありません。しかしとにかくすべてが可愛らしい作りになっていて、それが本作の魅力となっています。

本作の主人公ありすは作者さんの前作(ありすとーく)でも出てきたキャラクターなのですが、ありすとーくの段階ではボイスはおろか立ち絵もなかったので、かわいらしいのイラストにかわいらしい声がついた本作を最初に見たときは結構驚きました。しかも、イラストが本当に多彩なんです。ノベルパートでの立ち絵とは別に、パズルパートでは画面の左側でデフォルメされたありすが見守っていてくれますし、パズルを間違えると泣き顔になるなど芸が細かい。

私が本作をプレイして一番すごいと思ったのは、ステージ間のカットインです。ストーリーモードでステージをクリアするとちょっとしたカット(タイトルコール)が入ります。本編プレイ時には2回しか見ることのないシーンですが、本編クリア後にタイトル画面のおまけ("えくすとら"とは別に"おまけ"があります)からギャラリーを見ると、このカットインがなんと14種類も並んでいたのです。普通にプレイしただけでは到底見る機会のないイラストをよくこれだけ用意したなと感心しました。

ボイスの方も負けてはいません。異なるカットインごとにきちんと表情の違うタイトルコールが設定されていたり、あらゆるボタンをクリックした際にボイスがついていたり、もはや単なるフルボイスというレベルではないくらい声が入っています。本作プレイ後に「ありすとーく」を再プレイしたら、ありすの可愛らしい声が脳内再生されました。特に、本作でよく聞いた口癖なんかは完全に脳内で再現できちゃうんですよ。

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パズルの面では、本当によくマインスイーパーを再現しています。左右同時クリックで周囲のマスを開く機能も実装されており、かなり解きやすくなっています。ただ、最初に開くマスが0のマスとなる本家の仕様はティラノスクリプトでは難しかったのか、再現されていません。代わりにスタート時に地雷でないマスが1つ与えられていますが、特に上級ではこのマスを開いても特に次に開くべきマスのヒントになる情報が無く、最初から運任せになってしまう場面が多かったように思います。スタート時に与えられるマスを非地雷マスではなく、0のマスの中からランダムで選ぶ仕様にするだけでこのあたりの理不尽感はだいぶ軽減されるのではないでしょうか。

私はパズルには相当慣れているので、マインスイーパーの解き方に困ることはなかったのですが、本作では初心者のための親切な救済システムとして"お願い☆目星"という機能も実装されています。使うとまだチェックを付けていない地雷マスをランダムで一つ教えてくれるという機能で、解き方が分からなくなった時には活躍してくれるでしょう。この機能を使わずにステージ3をクリアすると得られる実績がありますが、初心者だとちょっと厳しい、上級者でも運に左右されるレベルです。

ちなみに、ステージを失敗するとありすは転んでしまい、バッドエンド行きとなります。この時に本作につけられたとあるタグの意味が分かる展開が待ってます。作者さんの過去作「ヒトナツの夢」をプレイされた方なら、聖地ゲーといえば通じるでしょうか。瑞菜ちゃんよりは大分大胆な姿勢・構図のスチルが待ってます。個人的にはちょっと大胆過ぎるような気が……。変な転び方してけがを悪化させなくて良かったですね。
あと気になったのは、時々挟まれる下ネタっぽいのはいらなかったんじゃないか、ということくらいでしょうか。

これらの失敗展開やその他のスチルの回想モードがある、クリア後はタイムアタックモードとしてパズルだけのモードがプレイできるなどシステム面は痒い所に手が届く仕様で不満ありません。もちろんノベルパートも、スキップやオート、バックログはもちろんボイスリプレイやテキスト速度変更なども可能で大変プレイしやすいです。ノベルゲーム用ツールでパズルを作る技術力はさすがだなと感じました。


普段パズルはやらない方も、逆にガチ勢の方も、息抜きにちょうど良い作品ではないでしょうか。ぜひありすの可愛らしさに癒されていってください。

それでは。

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