フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
初めての方は、ぜひごあいさつをご覧ください。評価の基準については、レビューについてに記してあります。
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学園

こんにちは。今回はかげろうさんの「クラスメイズ」のレビューをしていきたいと思います。

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ジャンル:学園ホラーローグライクRPG
プレイ時間:クリアまで2時間、エンディングコンプリートまで10時間~
分岐:エンディング3種、ゲームオーバーあり
ツール:RPGツクール
リリース:2019/12


久しぶりのRPGレビューとなります。フラグの立て方によるエンディングの分岐、ゲーム内時間や隊列編成といった独自のシステムなど見所のある作品でしたのでご紹介します。


まず本作のプレイを開始すると舞台となる学校の名前を入力する必要があります。特に単語になっていたりする必要はないので適当に入力しましょう。本当に何でもいいなら「適当」ボタンを使うとランダムな名前を付けられます。そしてその名前に応じてダンジョン化した学校の構造が決まります。つまりランダム生成的な意味合いがあるのです。
ただし同じ学校名を付ければ同じ構造のダンジョンとなるため、完全にランダムになるわけではありません。高評価でクリアしようと思えば事前に構造を熟知していることが前提となったりするため、この仕様をフル活用していくことになるのです。

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他にも独自のシステムが多数あるので順にご紹介しましょう。
行動可能になってすぐ気付く点に、常に画面右上に時計が表示されていることでしょう。マップ上を歩いたり戦闘中のターン経過で作内時間も過ぎていきます。本作では作内時間が攻略に重要な意味を持っており、レベルや体力といったRPGおなじみのリソースと同等以上の存在感があります。
では時間がどのようにゲームに影響してくるかです。まず分かりやすいものに時限イベントがあります。ゲーム開始が午後9時、そこから午前5時に夜が明けるまでにクリアしなくてはなりません。それだけでなく、特定の時刻までにイベントを発生させると分岐があったり、ボスが移動したり仲間候補が死んでしまったりといった重要な要素を担っています。さらに時間が経過するほどザコ敵が強くなるので攻略のためにはいかに無駄なく行動していくかが大切になってきます。

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仲間は最大6人なのですが固定された主人公は存在せず、ゲーム開始時に1人を選択して初期メンバーとするシステムになっています。キャラごとに異なる特殊能力があるので攻略感も若干変わってくるでしょう。主人公を選んだら順に残りのメンバーを仲間に加えていって戦力増強とイベントのクリアを狙っていくわけですが、既に仲間になっているメンバーや時刻によって特定の仲間を見つける条件が変わったり不可能になったりするのも重要です。加入の有無によって発生する会話イベントが変わったりという部分もよく作りこまれています。


戦闘面においては、「隊列」機能が特徴的です。前衛と後衛それぞれ3人割り振ることができ、後衛は通常攻撃ができない代わりに敵に直接攻撃もされないといった縛りがあります。物理キャラを前衛、遠距離攻撃手段を持つキャラを後衛に置くのが基本になるでしょう。さらにこの隊列によってパーティーの行動順が変わったり回復技の効果範囲が限られたりするため、この隊列も戦略の重要な要素となります。


これまでの説明やスクリーンショットでもある程度察したかもしれませんが本作の雰囲気はかなりシビアです。突然ダンジョン化した学校に閉じ込められた生徒たち、厳しい時限イベントを乗り越えなければ死亡してしまう仲間だったり、襲い掛かってくる謎の怪物などなど。そんな環境の中で主人公たち6人がちゃんと中学生らしいキャラクター性や会話イベントをしているのを見ると対比でなんかほのぼのとして感じられます。

謎の大クモだったり理科室の人体模型だったりが襲ってくるホラー全開の世界観の中で、このように和むイベントが挟まれていくのは作者さんによるうまい調整のように感じています。私はホラー耐性があまり高くないのでずっとホラーが続くと疲れちゃうんですよね。そんな中で主人公が等身大の中学生であるように感じられると頑張れって気持ちになるし、探索やレベル上げのモチベーションもわいてきます。
この部分は非常に凝っているようで、最初に選択した主人公ごとにエンディング後のイベントがあったりクリア実績が得られたりといったコンプ欲を掻き立てるシステムも導入されています。さらにはTrueエンド到達時カップリングイベントもあり。総計で実績数は44もありコンプリートしようとすると相当大変だと思います(私もコンプはまだです)。

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本作の難易度についてですが、全体的に高いといってよいでしょう。まったく構造の壊れた学校内を探索することになり、初見の状態では理不尽な実質即死トラップを踏む可能性も高いので最初のうちはゲームに慣れることを目的にするぐらいでちょうどいいでしょう。
高難易度の代わりに本作はヒント機能が充実しており、実績の解除数に応じてタイトル画面のExtraからヒントを閲覧することができるようになります。初心者向けの内容、Trueエンドを目指す人向けの内容、クリアした人向けの内容など細かく分かれており親切。あとがきや裏話的な内容や音楽モードもあったりとおまけ要素のかなりしっかりとした作品になっていると感じます。

そんなヒントを見ていけばひとまずノーマルエンド(Exit no.3)到達は達成できるようになるでしょう。問題なのはそこから先です。Trueエンド(Exit no.1)に行くためにはシビアな時間制限を乗り越え追加でボスを倒して謎解きする必要があるのです。完全自力攻略はかなり難しいと思いますので、本編中の謎解きに詰まったらどんどんヒントを聞きに行くのをお勧めします。私は7つの追加ボス中2個の謎解きがわからずヒントを見ました。そして最後にもうひとひねりあって舞台がこの中学校である意味が明らかになります。ストーリー的にも決着がついてめでたしめでたしという内容になっているのでぜひここまでプレイしてほしいですね。このストーリーの内容についてはネタバレのため細かく触れませんが、なぜ閉じ込められてしまったのかやノーマルエンドの結末を踏まえた内容となっていてすっきりできる内容になっていると思います。

普通ここで終わりかと思うのですが、本作ではさらにその先、裏エンド(Exit no.2)が存在しています。これはめちゃくちゃ難しいです。到達条件は私はすんなり発見できたのですが、それに至る戦闘が非常に難しい。何度も試行錯誤して適切な隊列や装備を見つけたうえで最適な戦略をとっていく必要があります。裏ボス専用のギミックも用意されておりその解明も必要です。私はこれのクリアに丸1日かけました。
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裏ボス完全撃破すると「卒業」の称号がもらえるらしいです。大変だったよ…


というわけで今回は「クラスメイズ」のご紹介でした。
いくつもの凝ったシステムや豊富な会話イベントなど見所たっぷりですのでぜひプレイしてみてください。実績埋めや高評価クリアなどやりこもうと思ったらめちゃくちゃボリュームがあります。オリジナルのサウンドやその解説もうれしいですね。

それでは。

こんにちは。今回は裏束さんの「SHADOW」のレビューをしていこうと思います。

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★favo
ジャンル:学園サスペンスアドベンチャー
プレイ時間:5時間
分岐:なし(ゲームオーバーあり)
ツール:RPGツクール
リリース:2020/3
備考:15禁、暴力描写あり


ティラノゲームフェスの期間中はノベルゲームのプレイがメインだったので、最近は他のジャンルということでアドベンチャーゲームが多めになっています。3回前から連続でホラー作品を扱ってきました。今回ご紹介する「SHADOW」もアドベンチャーゲームではありますが、ホラー要素はありません。ただしストーリーはかなりブラックな面を含むので、人間社会の闇の部分やダークなストーリーは嫌という方は向かないかもしれません。しかし、そんなストーリーだからこその結末とか推理要素がしっかりしているのでドロドロのサスペンスものがお好きという方にはかなり刺さるんじゃないでしょうか。

まずは簡単に作品全体の解説から行きましょう。
主人公の来栖恭也は高校2年生。訳あって転校してきた影峰高校のクラスでは目に見えていじめがあって一般生徒がおびえていたり、セクハラ教師がいたりと問題多数。転校生であろうと容赦なく降りかかってくる災難に来栖はどう立ち向かうのか。普通の「いじめ撃退もの」とは一線を画すダーティな策略と推理力が見もののダーク系世直しストーリーとなっています。

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来栖に降りかかってくる問題は暴力だったり陰湿だったり脅迫だったりと様々で、プレイヤーはうまく来栖の選択を通じてこれらの問題を解決しなくてはなりません。いじめを解消するストーリーの多くは、より強い暴力による権力を得たりうまく周囲の協力を得て道徳的に諭したりといった方向に行きがちです。これらを正攻法というならば本作で来栖がとる道は邪道もいいところです。なるべく自分に火の粉が飛び掛からないようにはどう動くべきか、クラスメートや先生を利用して事態を好転させられないか、といった計略に長けた来栖は、クラスや学校自体を裏から支配して問題に対処していくのです。普通はなかなか見られないこの切り口は本作の大きな魅力といっていいと思います。

クラス内の数人が関与しているにとどまるいじめ問題を、このように大きなスケールから包み込んでしまうように解消するのもまた新鮮でした。普通なら関係者に対して直接働きかけたり立ち向かったりするものですが、本作で周囲の環境ごと誘導して解決につなげる様子はまるで孫悟空が三蔵法師の手のひらで踊らされているのを眺めるような感じすらしました。

こんな斬新な手法でひたすら突き進んでいく主人公の来栖は当然頭が切れるのですが、単に頭がいいというだけでない芯の強さが感じられます。私がいくら頭がよくなって周囲の状況を適切に判断できて度胸もついたとしても、そもそもそんな発想に至らないだろうという気がするのです。
来栖がこのような人物になったのにはもちろん理由があり、それは彼の家庭だったり前の学校だったりといった環境にあるのです。こうしたバックグラウンドが語られることによって、普通考えられない発想から事件に立ち向かう来栖はただのサイコパスではなく個性と行動原理のある主人公として受け止めることができるのでしょう。自分(プレイヤー)と思考が違いすぎる主人公だと物語に入り込めないということがたまにありますが、本作ではその問題は感じられませんでした。


さて、来栖が最初の事件を大きなスケールで解決してしまうと、それに呼応するようにさらに大きな事件が発生していきます。本作はChapter1からChapter4までの4章構成となっておりそれぞれの章で1つ事件が発生するという構造になっているのですが、章が進むにつれて事件のスケールも大きなものになっていきます。最初は普通にいじめと言って想像できる内容のものから、いじめをネタにした脅迫や監禁に移行。クラス全体を巻き込んで不信感を植え付けるような事件が起こったと思えば、最終的には学校全体を巻き込んだとんでもない大事件に。Chapter2の時点でさすがにこれは刑事事件になるだろうという程度だったのですが、最終的に非ファンタジーの学園ものとは思えない規模になってきます。よくこんな話を思いついたものだなと思います。


事件の規模が大きいというだけでなく、主人公の来栖だけでなく犯人だったり被害者までもが非常に癖が強い人物であるというのも特徴的かと思います。癖が強いということはつまり一般的な感覚からはかけ離れた言動をとるため共感しにくいという面もありますが、キャラクターとしての芯がしっかりしているというプラスの要素もあります。本作はこの要素を積極的に生かした作品だなと思うのです。
思考の様式や行動原理がはっきりしたキャラクターならある程度行動が読めたりする、それを予測して先手を打って対抗したり、相手のプライドを突いた挑発や説得で都合のいいように扱っていったりといった手段が可能なのは、本作の登場人物のキャラが立っているからでしょう。
4つもの事件が起こるのもあり登場人物数としては相当多い部類に入る作品だと思いますが(先生を含めたら15人以上)、ちゃんとキャラとして死ぬことなく全員活躍するのがすごい。全員に立ち絵もついています。


本作のゲーム要素についてです。
各章で導入と事件の発生後に解決のための行動フェーズがあります。数日間の時間制限があり、その間に解決のための現状調査や作戦立案をしたり、具体的な行動や根回しだったりをしていく必要があります。自分で調査する場合もあれば、信頼できる人を見つけて調査や事前工作を依頼しなければならない場合もあります。
前述のとおり来栖はかなりひねくれた手法でアプローチしていきますので、事前の情報調査部分はともかく推理パートや仲間に適切な依頼をする部分は結構難しいと思います。しかしほとんどの場合は1回間違えたらアウトではなく時間制限(3日~5日程度)の間は何回も試せるシステムになっているので、冴えている人なら初見クリアも可能かといった程度でしょう。選択が間違えていると作中の日付が進みます。またギミックによっては一つの結果を得るために最低2日かかる場合もあります。

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事件解決のためにはイベント発生時の選択肢を正しく選ぶだけでなく、メニュー内の「メモ」から正しい考察をすることを要求される場合があります。間違えても一発アウトにはならないので場合によっては何個かの選択肢を試しつつじっくり考えましょう。正しい考察をすることでストーリーが進んだり、フラグが立ったりします。ここが最も推理っぽいポイントでしょうか。

システム系の話をもう一つしておくと、Altキーで会話の過去ログが読めるのが助かります。プレイしなおしているときにWキーで会話スキップなどをしていると直前の話題を見逃すことがあり、ログ機能は重宝しました。初見時の推理のヒントにも使えるでしょう。


エンディングについてですが、Chapter4で起きる事件がもはや校内で起きる事件というレベルではない大事件なのもありスパッと解決!とはいかない感じになります。この来栖に爪痕を残してくる感じが犯人の執念であり、本作の雰囲気を決定づけている要因の一つともいえるでしょう。ここまでよく裏と先を読んで周到な計画を立てたものだなあと素直に感心してしまいます。
このまま胸糞悪い感じで終わるのかなと思ったところで、エピローグがとても感動的だったのでそこも良かったです。Chapter3までで登場した事件の直接の被害者だけでなく、クラス内の雰囲気による間接的な被害者であったり加害者までもが来栖の推理力や参謀としての能力を認めて団結する展開が気持ちいい。最終章にふさわしい熱い展開だったかなと思います。


今まで散々書いてきたように本作全体を通しては非常にブラックな風味なのですが、章間にはおまけシナリオがいくつか用意されており、ふっと笑って一息つけるような話が入っていたりします。あんな陰湿な事件を起こしていながら恋愛のあれこれでキャッキャしていたり、意外な弱点が明らかになったりとシンプルながらインパクトがあって、暗い気持ちで終わりにならないような工夫なのかなと思います。


また、本作には続編「SHADOWS」があります。こちらはSHADOWのストーリーが前提であるだけでなく、作者さんの他作品(村雨)についても関連しています。一応SHADOWさえプレイ済みなら分かるように適宜解説が入っているので必須ではありませんが、プレイ済みだとより楽しめるかと思います。
「SHADOWS」では来栖たちの編入先となった武蔵道高校でさらなる事件に巻き込まれます。こちらも4章構成となっていますが、Chapter2までがSHADOWの雰囲気に近い校内事件の発生と解決となっており、Chapter3,4については修学旅行からさらにスケールの大きな事件が発生し、物語全体のクライマックスへ向かう部分となります。シリーズ合わせて合計30人は登場人物がいますが、ちゃんと全員役割を果たしているのが驚異的。また、最終章でエンディングが2つに分かれます。初見ではまずANOTHER ENDになると思います。もやもやが残る結末を不満に思ったら、ぜひもう一つのエンディングを探してみてください。難しいですが終盤のフラグを細かく確認すれば道が開けるはずです。過去のエピソードまで回収された納得のエンディングが見られるはずです。



というわけで「SHADOW」のご紹介でした。
一風変わった学園サスペンス、ダークな主人公がお好きな方はプレイして損はありません。

それでは。

こんにちは。今回は妹れっぐぅおーまーさんの「Be alive ~What is your precious~」のレビューをしていこうと思います。
私は好きですが、本作はかなり人を選ぶ作品であることは間違いないので、注意書きなどをよく読んだうえで納得された方のみプレイしてください。

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★favo
ジャンル:王道学園ものエロゲ
プレイ時間:1ルート2~3時間。フルコンプまで5~6時間程度
分岐:攻略対象3人。計8エンド
ツール:NScripter
リリース:2006/12
備考:18禁。特定ルートで凌辱シーンあり。見たくない場合回避パッチを当てる事(後述)


さて、2年半ほど前にこのブログを開設し、週一弱のペースでレビューを書き続けてきましたが、今回で記念すべき100本目となります(コラム等があるため総記事数は128本となっています)。何か思い入れのある作品を取り上げたいなと思って考えていたのですが、私が初めてやり込んだフリーゲーム(カサハラン.COMさんの「漢字迷路三国志」です)はFlash製で既にプレイできなくなっていますし、ノベルゲームとの出会いのきっかけとなったむきりょくかん。さんの「ほしのの。」については過去に取り上げました。他に私に大きな影響を与えた作品と言えば、私が将棋を始めるきっかけとなったペットボトルココアさんの「夏ゆめ彼方」がありますがこれも以前にレビューしています。
色々考えた結果、今回は私が初めてプレイしたアダルトゲームであって大変印象に残っている本作を取り上げることにしました。というわけで1月にTetraScopeさんの「桜哉」の記事を書いた時以来の18禁作品となります。通常のレビューに比べて私の思い出話みたいなものも長くなるかもしれません。


本作は2006年のコミケが初出とかなり古く、現在公式ページのダウンロードリンクはミラーを含めすべて無効になっているため今からの入手はちょっと大変かもしれません。一応Wayback Machineでアーカイブをたどれば今でもダウンロードできることは確認しています。公開当時はエロゲと饗はおろかBOOTH(pixiv)すらなかったので配布場所は相当限られていたはずで、しょうがない面もあるとは思いますが昔の作品がプレイできなくなってしまうのは寂しいですね。


さて、では本作のあらすじ紹介に参りましょう。
主人公の藤原伸一は高校2年生。両親が海外出張中(お約束)のため、同じ高校に通う1年生の妹、千佳と一緒に家事を切り盛りして生活しています。学校では幼馴染の坂野恵理、悪友の北沢明と一緒になんだかんだ上手くやっています。最近では委員長キャラの榊原奏とも親しくなって、5人で楽しく高校生活を送っていました。期末試験のために勉強を教えてもらったり、試験終わりにゲームセンターで遊んだり。しかし時期はもう高校2年生の冬。受験勉強や卒業後のことを考えるとみんなで遊んでいられる時間もそれほど長くはありません。彼女らとの関係を一歩進めることはできるのでしょうか…。


と、こんな感じで基本的な設定を説明すると非常にオーソドックスな内容になっていると思います。
しかしこれまで文字通り健全なゲームしかプレイしていなかった私には、これがエロゲのノリなのか! と思った個所がいくつかありました。(もちろん、エロゲは全部そうだというわけではないのは今は知っているわけですが)

まず画面がピンク色!
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タイトル画面の色味もそうですし、この学校の制服はなぜか男女問わずピンク色のようで、立ち絵やスチルが自然とその色になっていきます。別に肌の露出が多かったりするわけではないのですが、なんか独特だなと思ってました。


そしてなぜか同性の悪友キャラ(明)がキモい。コイツ、何なんだ? というか公式サイトの攻略ページの中で作者にネタにされてるし…
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また、何でもないシーンでのサービスカット(?)が多い。最初の学食でのシーンからモブの女の子が普通にパンチラしているなど、そういった要素のあるスチルが多めです。

正直に言うとプレイしていた時には、これらの要素は良く分からないな、こういうノリなのかなと思って流していました。別にえっちなゲームじゃなくていいかと感じていたのです。しかし最後までプレイしてみると、私に強烈な印象と感動を残していったすごい作品だったのでした。それに関しては後述します。



さて、複数ヒロインである本作は当然、共通ルートと個別ルートに分かれています。クリスマス前までが共通ルート、それ以降が個別ルートとなっていますが、本作の特徴として共通ルートの比重が重めということが言えるでしょう。分岐直前まで5人で集まって遊んでいたりするので、複数ヒロインものでありがちな「後半で他のヒロインの存在感がなくなる」ような流れになりません。ヒロイン同士の掛け合いも描かれるなど、ただの賑やかし要員になっておらず丁寧に作られているんだなと感じられます。
個別ルートに入ってからも、きちんと友人同士の付き合いであった今までの関係性を踏まえた展開になっており好感を持てます。各ルートで恋人エンドと友人エンドにさらに分岐するわけですが、これはどちらに行っても言えるでしょう。

逆に言うと、恋愛ものとして見たときのどきどき感みたいなものはやや物足りないと感じるかもしれません。共通ルートの間の単なる友人としての関係が長く、その間は異性としての意識などは描かれないため終盤で突然恋愛ものになってしまう印象はぬぐえません。
その面で一番良くできていたと感じたのが委員長キャラである榊原ルートでした。幼馴染である恵理や妹である千佳とは違って、榊原だけはゲーム開始時点ではほとんどしゃべったことのない相手です。その状態から、何となく相手のことが気になるとか、少しずつ態度が軟化していくとかいった変化がほかのルートよりも濃く描かれていたように思います。このルートだけヒロイン視点が描かれているのも私の好みに合致するようでした。ご両親が良い人で良かったですね。
そしてルートの最後で18禁シーンがあります。初めて読んだ私は、なるほどそんなもんか(良く分からん)なんて思っていました。

千佳ルートについてはどちらのエンディングに行っても微笑ましい内容となっており、実の兄弟での近親相姦的な展開はありません。途中何回も伸一のことをシスコン扱いしたネタがありますが、このルートを読むとむしろ千佳の方が重度のブラコンでは? なんて思ったりします。

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ここまででも「良くできた作品」であると思いますが、これだけだとおそらく私にここまで強い印象を与えなかったでしょうし、正直わざわざ18禁の作品をやらなくても良かったかなと感じたでしょう。しかし本作は幼馴染の恵理ルートで本性を現します。

ヒロインが3人いて恵理ルートだけ1周目ルート制限がかかっています。1回目では強制的に友人エンドに。2周目で初めて「ホテルに入る」という選択肢が登場します。当然そこで恵理と行為に及ぶわけですが、問題はその後です。ずっとほのぼのとしていたこの作品の雰囲気はここで一気に反転します。

念のため再度警告しますが、このルートの先ではかなりショッキングな展開が続きます。具体的な暴行が行われるシーンはパッチ適用により飛ばす選択肢を有効化できますが、このルートの主題は事件によって深い心理的なダメージを受けた人物たちがその後どのように生きていくかです。鬱ゲーは受け付けないという方のプレイもお勧めしません。
気にしないという方もシナリオの加筆が若干あるためパッチ適用をお勧めします。公式サイトからver1.01パッチをDL・解凍し、作品フォルダのnscript.datを上書きしてください。パッチ適用後も該当のシーンを飛ばさずに読むこともできます。



このルートでは、伸一と恵理を追っていた千佳が暴漢に襲われてしまいます。それに感付いて現場に向かった伸一も犯人の手にかかって意識不明の大けがをさせられることになります。
幸いにも命に別状はなかった2人ですが、同時に負ったであろう精神的ショックの深さは計り知れません。そんな中で行われる千佳と恵理のあの会話シーン。愛し合っていたからこその行動だったのに、友達を大切に感じていたからこその気遣いだったのに、どうしてこう現実は悪い方向に進んでしまうのでしょうか。あの時こうしていればよかった、自分のせいでこんなことになってしまったという後悔が絶え間なくあふれ出てきて、優しさがあるからこその悲しみを際立たせるシーンです。しかし恵理の悲鳴交じりの決死の説得も届かないほど、千佳の心はずたずたに壊されてしまっていたのです。

そんなシーンの後、無音で始まるモノローグ。そこで事件がもたらした影響の大きさを再度実感させられることになります。伸一・千佳のみならず恵理や明、榊原を巻き込んで、事件から立ち直るための必死のリハビリが始まるのです。
確かに恵理は伸一とちょっと特別な関係になることを望みました。しかしそれは5人の友情を壊してまで望むものではありません。実際恵理は事件の前にも、これからもいつも通りで、と伸一に告げています。ところがそんな希望は事件によって完全に破壊され、悲痛な運命を甘んじて受け入れるしかなくなります。
生半可な友情だったらここで終わりになってしまうかもしれません。私だったらすべてをあきらめて自分の心も壊れてしまうかもしれません。しかし5人の友情はそうではありませんでした。恵理は自分にとって何が一番大事だったかに気付いたのです。まさに本作の副題にあるWhat is your preciousとは5人で遊んで楽しく過ごした日々、皆を思う友情であったのです。ほのぼの系の作品だったら何となく受け流してしまうであろう友情描写であったとしても、どうしようもなく悲しいこの状況だからこそ、こうも心に深く刻まれるものなのか、というのを強く感じたのを覚えています。
序盤のシーンではただの同級生でしかなかった榊原も、彼女がいないことに悪態をついてばっかりだった明も、こうも献身的に恵理や伸一を支えてくれます。こんな健気な友情だからこそ、全員を全力で応援しながら物語を読み進める手は止まりません。

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その後の学校のシーンなどは、今になって冷静に考えてみれば現実的ではないでしょう。しかしそんなことがどうでもよくなるほど私はこの作品に夢中になっていました。愛を越えた先にあるものをこんな形で描くことができるのかということに。そしてこの展開は同人の18禁作品でしか許されないだろうとも感じていました。

最後にクリスマスの日の会話などが伏線となって真実に気付くあの展開も良く作られています。私が最初に読んだときはこれが後で効いてくるなどとは全く思っていなかった何気ないシーンなのですが、そこまで計算されていたことに気付いてまた深く驚くのです。これも、伸一が恵理や千佳を大切に思っていて、しっかり観察していたゆえでしょう。

ラストシーンにはver1.01で加筆されたシナリオが出てきます。やや説明的過ぎるかなという感じもしますが、ここにきてようやくひと段落したと安心できる内容になっていて、全ルートの総まとめとしての終止感をしっかりと纏ったエンディングです。このエンドロールだけ振り返り的にこれまでのスチルがついていたりもしますしね。1つ注文を付けるとしたら、最後に全員で笑っているスチルとかあったらより感動的だな、というところでしょうか。
若干ネタバレ(クリックで展開) まさかタイトル画面の時点で盛大にあの展開を示していたとはね…全然気づきませんでした。

ちなみに本作の攻略は簡単です。攻略したいヒロインの選択肢を選び続ければよいです。優柔不断な選択をしているとノーマルエンドに行きます。


というわけで今回は「Be alive ~What is your precious~」でした。
本作が私にとって初めての18禁ゲームだったからこそ、単にえっちなシーンがあるだけでなく話のテーマに大きくかかわってくるような内容を含む作品が好きになったのかもしれません。この辺のことは「桜哉」で語りましたね。
あのルートを受け入れられる人はそう多くはないかもしれませんが、私を深く感動させたのもあのルートであることに間違いありません。鬱展開に耐性がある方、ぜひプレイしてみてください。このルートに出会ったからこそ、私はエロゲにもシナリオの良さやテーマ性を求めているといっても良いでしょう。

それでは。

こんにちは。今回はTwitterでもツイートしました(と書いているうちにXとかいう識別性の低すぎる名前になってしまった)、「未来エイゴウ昔のことは」とその元となった「七月革命」をまとめてご紹介しようと思います。

どちらもこのブログでは最多タイの3度目の登場となる晴好雨奇一丁目(静本はる)さんの作品で、「七月革命」は2014年公開です。その後2016年に前日談として「未来エイゴウ昔のことは」が公開されたということですが、当時私はそれを知らず、私が晴好雨奇一丁目さんを知った時にはすでに非公開となっていました。今回それが再公開となったのでプレイしてみたところ、とても良かったのでレビューを書いていこうと思います。


まずは「七月革命」です。
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ジャンル:掌編学園コメディ
プレイ時間:5分
分岐:なし
ツール:吉里吉里
リリース:2014/7

こちらは夏らしく爽やかな短編コメディです。同じ作者さんの「MY HOBBY IS 短編版」も以前レビューした作品で短編のコメディでしたが、本作はあれほどぶっ飛んだギャグなどは出てきません。

教室にエアコンが付いていないことに業を煮やしたミライ川(すごい名前)は、ムカシ田に向かって革命を起こすと宣言。いつの間にか大量の同志を引き連れて職員室へと直訴に向かいます。
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こうやって書いてしまうと話の筋は本当にシンプルなんですが、この作者さんのすごいところは演出法ですね。その他の作品でもそうだったのですが、とにかく軽快に見せる手腕に優れていて、革命を起こそうと燃えるミライ川のエネルギーやそれと対比して冷静なムカシ田の様子が非常に際立っています。
大勢の生徒を引き連れたカットインなどもミライ川の動きとともに右へ左へ動き回ります。こうした見た目の楽しさとお約束のようなギャグがぴったりとかみ合って、笑える作品となっています。
タイトル画面やメッセージウィンドウ右下で回転する扇風機の羽も涼しげでいい感じ。
冷めた目で見ているようなムカシ田も、完全に見捨てているわけじゃなくて最後にちゃんとフォローしてあげる関係性なのも爽やか。



続いて「未来エイゴウ昔のことは」です。
(9/10追記:現在本作品は再度非公開となっています)

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ジャンル:ノスタルジック短編青春物語
プレイ時間:20分
分岐:なし
ツール:吉里吉里
リリース:初公開2016/8、一時非公開後2023/7に再公開


こちらが今週再公開された作品で、私が今回の記事を書くきっかけにもなりました。
主な登場人物は七月革命で出てきたミライ川とムカシ田。それにミライ川のおばあちゃんです。

ミライ川の快活なキャラクターは変わらないのでこちらもコメディなのかと思いきや、本作はノスタルジックでしんみりとした展開が多く含まれています。舞台は2年さかのぼって2人が高校1年の夏休み。

七月革命では全く出てきませんでしたが、ムカシ田は実は野鳥の観察が趣味。オミルリという珍しい青い鳥がミライ川のおばあちゃんの家の近くにいるということで、ミライ川に半ば無理やりおばあちゃんの家に連れてこられます。
北の山にきれいなオミルリがたくさんいると聞いて必死に探すムカシ田。案内をしつつ自分の興味の赴くままに山で遊ぶミライ川。当時はほぼ交友の無かったはずの2人がどのようにしてお互いを理解し、七月革命の時のような確かな信頼を得ていったのかが分かるような描写がうまい。
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そして本作においてもう一人登場する重要な人物がミライ川のおばあちゃんです。
両親不在のミライ川にとっておばあちゃんは唯一の心許せる肉親。しかし村でのおばあちゃんの立場はそんなに良くありません。このあたりは田舎独特の風習がそれっぽく描かれ、単に元気なだけじゃない別の雰囲気を本作に与えてくれます。

このおばあちゃんとのやり取りや関係性を通してミライ川の行動原理や主義が見えてくるのがまた気持ちいい。作中で起こる出来事は決してほほえましいだけではありませんが、後味良好なのはミライ川の明るい性格を行動原理まできっちりと書ききっているからでしょう。

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また、本作は背景が加工なしの写真になっています。「ほしのの。」「かえりみち」や、晴好雨奇一丁目さんの最新作である「永遠と長閑」(現在は体験版のみ)などでも写真背景を使用していますし、田舎である設定を活かした作品って写真が多い気がします。
それでいて本作では晴好雨奇一丁目さんらしい演出も生きています。背景の動かし方や音楽の切り替えなど、すごくノスタルジックな感情を刺激してくるんですよね。短編における演出手法について、この人の右に出る者はいないと感じています。



最後にオチがあって締めくくられる本作ですが、そのオチもまた使い方が上手いです。今度は釣りに興味を持ったムカシ田。そこでタイトル画面に戻ってきて、とても綺麗なまとめ方です。
エンドロールがないのがちょっとだけ寂しいかな。

テキストファイルで後書きも同梱されているのでプレイ後にはぜひ読んでみてくださいね。


というわけで今回は「七月革命」「未来エイゴウ昔のことは」でした。
合計しても30分で読み終わり、すっきりと爽やかな気分になれますよ。この時期にぴったり。

それでは。

こんにちは。今回はCynical Honeyさんの「終わりの鐘が鳴る前に Chapter.1」をご紹介しようと思います。

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※期間限定無料作品
ジャンル:学園ラブコメ
プレイ時間:4時間(ボイスを全て聞くともっと長いと思います)
分岐:基本1本道
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2022/2
備考:Chapter.2公開以降有料化。今年夏予定
(9/10追記:現在本作品の無料公開は終了しています。Chapter.2の販売も開始しています)


昨年の冬に私がTwitterを見ようとしたとき、本作の作者であるCynical Honeyさんのアカウントからフォローされていることに気付きました。プロフィールを確認したところ、公開中というノベルゲーム(本作)が面白そうだったのでとりあえずDLしてプレイしたところ、かなり面白い作品でした。普段だったらレビューを書くかなというところだったのですが、私がこれまで書いてこなかったのは本作が純粋なフリーゲームではないからです。
というのも本作は昨年の2月にChapter.1が公開され、その時から現在までノベコレふりーむBooth等で無料で配布されていますが、Chapter.2の公開と同時に(Chapter.1含め)有料化されることが宣言されていたからです。

一応本ブログではフリーゲームを専門に扱っているので(一部有料のものもありますが、それらもフリー版で十分完結まで楽しめるもののみです)、本作を取り上げることにややためらいがありました。しかし先日Twitterのフォロワーに需要がありそうなことが分かったので、今回こうしてレビューを書くことにしました。普段のフリーゲームに比べるとやや厳しめの評価になっているかとは思いますが、大変いい作品ですのでぜひプレイしてみてください。



さて、本作のあらすじを説明しましょう。
主人公の長谷部涼平は高校2年生。友人の日高進や戸松香澄らと楽しい高校生活を送っています。
しかしある日、涼平の前に死神を自称する少女モトが現れ、同級生の菅野雪乃に年内に心から幸せを感じさせなければ涼平は死ぬと無理難題を押し付けられます。
途方に暮れる涼平は偶然にも雪乃が日高に恋心を抱いているのを知り、条件達成のチャンスと見て雪乃の恋愛をサポートすることを思いつきます。しかし校内で男勝りでワイルドと評判の彼女は恋愛に疎いようでその道は苦難の連続です。さらには何と肝心の日高が実は香澄のことが好きであることも発覚し、涼平は2人の板挟みになりながらもなんとか雪乃が幸せになれるようサポートします。
果たして雪乃の恋は実るのか、幸せにすることはできるのか。そして幸せとは何なのか。文字通り涼平の生死をかけた4か月間が始まる…


とまあこんな感じでしょう。
つまるところ本作は、「雪乃の恋路を応援する」というお話になります。ラブコメによくある展開で、他人の恋愛を応援するというと最近完結したことで話題の「その恋、保留シリーズ」が思い浮かびますね。あの作品では恋愛を応援する理由はお節介によるものが大きかったですが、本作においては恋愛の成否が文字通り生死に関わるという明確な理由があり、物語をよりシリアスな方向にしていると言えるでしょう。

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この無理難題を仕掛けてくるモトはかなり変わった人物(人ですらない?)です。常時涼平の行動を監視しているようで、たまに姿を現しては涼平に話しかけてきます。淡々とした口調でありながら条件達成について厳しく問い詰めてきます。幸せを感じさせるのは一時的でもいいのだから、自分の生死がかかっているのに常に誠実であろうとするのは非効率ではないか。そんな風にささやき涼平をいらだたせる様は死神というより悪魔のようです。

しかしやはりモトがいるからこそ本作の物語は成立しているんですよね。涼平の行動の理由はモトの存在があってこそですし、2人の対話から誠実であろうとする涼平の人柄も見えてきます。
こうしたシリアスめな青春物語というものは、登場人物の関係性であるとか性格であるとか、行動原理などが描けたうえで魅力的になるものだと思うのですが、本作はそのあたりの描写がしっかりしていて面白く感じられるのです。


ちなみに本作はシリアス一辺倒ではなく、時々漫画やアニメのネタが出てきたりといったギャグポイントもあります。
プロローグの時点でもすでにデスノートや北斗の拳と分かる台詞があったりして、相当な密度で組み込まれています。あまり詳しくない私でもたびたび出てくるなと感じたくらいなので、知っている方が見たら本当に多くのネタを拾えるんじゃないでしょうか。

あとは同級生の平野亜希による涼平の毒舌いじりなんかもギャグに分類されるでしょうか。ただあれは私にはちょっとやりすぎに感じました。流石にあそこまでの性格ならば何らかの理由付けとか説明が必要なんじゃないでしょうか。小学生の妹にもひどいことを言わせてますし…。

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さて、いったん本作のシナリオから離れてみます。
するとやはり目に付くのは、タイトル画面などからも分かるイラストの綺麗さです。ここに描かれたキャラクター以外にも多数の人物が登場する本作ですが、みな可愛らしくきれいに描かれていて製作者の気合を感じます。
イラスト面において私が特に良いなと感じたのは背景です。学校、自宅、喫茶店に遊園地といくつもの場所が登場しますが、それぞれ本作の立ち絵に合ったテイストで描かれていてとても綺麗。教室の画像なんかはモブの人物まで書き込まれていたりします。これは私が今までプレイしてきた作品の中でも珍しいんじゃないかと感じました。

また、本作では主人公以外の台詞にはすべて声が付いています。みなさん演技もうまいですし、普通のフリーの作品の範囲を超えているなあと思わされます。
そのキャラクターごとのボイス音量調整などシステム面においても機能は整っています。ただしメニュー画面の呼び出しが遅いのはストレスを感じるポイントでした。私の環境(OS: Win10Home 22H2, CPU: AMD Ryzen 7 4700U, メモリ: 16GB)ではメニュー呼び出しに平均6秒以上かかっています。特にクイックセーブ以外の通常セーブはメニューを経由しなければならないのでさすがにしんどかったです。メニュー呼び出しに時間がかかるなら、通常のメッセージウィンドウから直接セーブ/ロードできるだけでかなり違ったでしょう。欲を言えばセーブスロットも現状の6よりは多い方が良いかなと思います。
このあたりはChapter.2以降でUIの刷新も計画されているようですし今後に期待といったところでしょう。


さて、話は本作のシナリオに戻ります。
私が本作を気持ちよくプレイできた理由の一つとして、1つ1つのシーンが全体のストーリーに活きていて、キャラクターの心情や関係性を掴みやすかったというのがあるでしょう。
例えば本作の中盤くらいで涼平が雪乃を傷つけてしまうシーンがあります。事情を知っている私(プレイヤー)の目から見ればある程度仕方のないことでしたが、雪乃から見たらショックでしょう。涼平としては当然雪乃との関係を修復していかなくてはならないのですが、その時にきちんと過去の出来事などが前提としてあって、だからこそ雪乃と仲直りできたんだなと感じられる展開になっています。詳細は述べませんが、お悩みボックスに関する話とか、(雪乃の友人である)悠木さんとの信頼とか。そのあたりのことが意味を持ってくる分読んでいて気持ちがいいし、話にご都合主義というか作為的なものを感じないのです。
このように物語が1つの線につながり、因果もはっきりすることで人物の心の揺れ動きがより鮮明に見えてくるのでしょう。

これは物語冒頭のモノローグの部分もそうです。意味深な語り出しから始まる物語は多いですが、本作では冒頭で語られた「人は大切なものを失うことに怯える」というような内容の言葉の意味するところを涼平はしっかりと痛感させられます。やはり丁寧に作られた作品だなと思いました。
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ストーリー自体の話とはちょっと違いますが、本作の文章表現もなかなか面白いでしょう。ちょっとした比喩表現などが多用され、情景を思い描きやすくなっています。私が好きなのは、「バイブ機能が付いた携帯電話みたいに、菅野は小刻みに震えだした。」などでしょうか。

しかし文章表現は本作において気になった点の1つでもありました。やたらと複雑だったり、一文が非常に長かったり、前提が省略されていたりといった場面がしばしばみられます。
例えば、雪乃が涼平に対して何らかの手助けを申し出た場面の「彼女自身からしてみればフェアではないが、どちらかというと俺からしてみれば利用している形になっているので、後ろめたさもあった。」は「(涼平が見返りなしで雪乃の手助けをするという状況は)彼女自身からしてみればフェアではないが、(実は死神の条件達成のためにむしろ涼平が雪乃を)利用している形になっているので、(涼平は)後ろめたさもあった。」などと主語を補完しないといけない箇所が大分多いように感じます。おそらく読点の前後で主語が変わっているのに両方とも省略されているからややこしく感じるのでしょう。

また、誤字・誤変換・助詞の間違いなどが非常に多いです。文章が複雑な件と合わさり、意味の理解に時間がかかる文がたびたび出てきてゲーム体験を阻害していると言えるでしょう。


ちょっと厳しめの意見が続きましたが、印象的なセリフなどもあって文章も全体的には上手いのも確かです。「私の友達のためにあんなに怒ってくれてありがとう」とか、意外なところでスッといい台詞が出てくる印象があるんですよね。



そんな本作は雪乃が遊園地で日高に告白してクライマックスを迎えます。涼平は当事者ではないのでまさにそのシーンが描かれることはないのですが、私までドキドキしてしまうような描写にびっくりです。周囲の人の状況や台詞の描写だけであれだけ印象的なシーンになるんだなというのが驚きでした。

そしてその後、雪乃はどうするのか。Chapter.2に期待といった展開になっています。
雪乃の件だけでなく、涼平の過去についてなども意図的に隠された情報があるのでそれも合わせて楽しみにしておきましょう。沢城先生がなぜ涼平の進路にうるさいのか。涼平自身が恋愛をする気にならないというのはどういうことか。今後明らかになっていくのでしょう。



繰り返しますが本作の無償提供は期間限定なので興味のある方はお早目のプレイをお勧めします。
にぎやかだけどどこか切ない青春物語を楽しみたい方に。これが無料でプレイできるのか、と驚くこと間違いなしです。そしてChapter.2の公開を楽しみにしましょう。

それでは。

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