フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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恋愛

こんにちは。今回はtwitterでも感想を書いたbbboxxxさんの「いちごみるくとあそぼうよ」のレビューをお送りします。

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ジャンル:ふわふわ*どろどろ*白昼夢系ADV(ReadMeより引用)
プレイ時間:1周目3分、ED全回収まで1時間~1時間半程度
分岐:ED全9種、1周目ルート制限あり
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2020/7
備考:15禁


いやあ、乙女ゲーってギャルゲーに比べて、心に直接刺さってくるというか、すごく切ない気持ちにさせられるような作風のものが多くないですか? 私がプレイしたのが偏ってるだけ?
というわけで本作もまた、誰も悪くないのに(まあ悪くないとまで言うといいすぎか? 同情は十分できる)読んでいて悲しくなってくるシナリオとなっております。


本作の導入はなかなか変わっています。STARTをクリックするとまずは主人公の名前入力。ここではデフォルトの新崎愛香と呼ぶことにします。
そして30秒弱のオープニングムービーが始まります。これがなかなか良かったです。ピンクの単色で描かれたファンタジーっぽいシンプルな映像。そして「目が覚めたらなんだか可愛い制服を着ていた。ああ、私 高校生だったのかな。さぁ部屋のドアを開けて、学校へレッツゴー。」というモノローグが挟み込まれています。この映像がなぜだかたまらなく好きで、多分10回以上は見てます。

しかしこのモノローグを読んで、素直な日常系ほのぼの恋愛ものだと思う方はあまりいないでしょう。ふわふわと夢の中にでもいるかのような釈然としない印象を残していきます。
ムービーが終わって次の場面では、愛香は教室で謎の兄弟イケメン2人に手を取られ、いちごミルクなんか目じゃないほどのいちゃラブ甘々展開です。彼らの名前はいちごとみるく。ところが練乳をそのままなめているかのようなこの雰囲気は、長くは続きません。


開始3分もたたない頃には、いちごとみるくの口からは不穏な会話が。愛香自身も、自らの置かれた状況がどうも普通ではなさそうなことに自覚的になっていきます。いちごから、毎日どんな夢を見るのかと問われる愛香。1周目では、どちらの選択肢を選んでもすぐにエンディングに行ってしまいます。両方のエンディングを見て3週目からが本番です。とはいえ3周目でもまだルート制限があり、たどり着けるエンディングは限られています。しかしこうして様々なエンディングをたどるうちにいちごとみるく、そして愛香自身の過去が描かれ、徐々に事件の輪郭が明らかになってくるつくりが上手いですね。この辺はある種ループものに近いものがあるかもしれません。


5週目くらいになれば、プレイヤーのあなたに関してはもう、愛香が飲まされているホットティーに"良くない"物が入っていて記憶をあいまいにさせているという事実には容易にたどり着けます。しかし愛香本人が気付けるかどうかはまた別。飲み物の影響を受けて正常な判断力もないであろう彼女が、現実の世界で幸せになることができるのか。ここが読んでいて辛く、悲しくなるポイントですね。

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このスクリーンショットが愛香の状態を物語っていますね。白昼夢系ADVの名前に偽りなしです。
愛香がこの状況から脱却できるのかは、プレイヤーの選択にかかっています。ぜひ最良の結果を目指して頑張ってください。


9つあるエンディングをすべて見れば、ようやく事件の全体像があらわになります。途中ただの悪人じゃないかとも思ったみるくも、彼がそれまでに背負ってきた苦労と理不尽を理解すれば彼もまた被害者の一人であったという感想も持てます。家庭の問題ってやっぱりずっと尾を引きますよね。どのエンディングでもすっきり解決とはならないのは仕方のないことかもしれません。


シナリオ以外の点も見てみましょう。まず音楽。ピアノ中心のゆったりとした選曲は、夢の中にいるような本作の世界とマッチしており素敵。効果音もちょうどいい感じがしますが、なぜかたまにBGMがぶつぶつ途切れる時があって気になりました。

イラストについてもかなり綺麗で、スチルにも力が入っています。END5のいちごくんのスチルが好きです。UIやシステムも赤やピンク系で統一されていて世界観の作りこみを感じられます。右上のメニューを開くボタンがいちごなのも好きですが、ちょっと見えにくいのでもう少し目立つ色だったりサイズだったりしてもいいかもしれません。


そうそう、おまけもなかなか面白かったですね。
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プレイ前は綺麗ないちごと瓶牛乳だったこの画面がどうなるのか。そのショックを体験してほしいです。おまけミニストーリーは4パターンあるようなのでぜひコンプリートしてください。


読み終わってすっきりハッピーエンド! とはいかない作品ですが、彼らの今後の幸せを願わずにはいられない作品となっています。15禁ですが、暴力や薬物、性的描写はきつくはないので興味があればぜひトライしてみてください。

それでは。

今回は見た目に分かりやすいネタゲーを持ってきました。nostalgiaさんの「クリーチャーと恋しよっ! ーここのえこころ―」「クリーチャーと恋しよっ!for乙女」の2作です。
どちらもタイトル通り、人外との恋愛ゲームとなっています。

(注:本作および本記事には、人外が全面に描かれたイラストおよびスクリーンショットがあります。苦手な方は閲覧注意。)













まずは、「ここのえこころ」から。
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ジャンル:人外ヒロイン系ギャルゲー
プレイ時間:45分
分岐:実質一本道(即死バッドエンドあり)
ツール:NScripter
リリース:2013/9

上のタイトル画面に大きく映っているのが本作ヒロインの九重こころちゃん(高3)です。この段階でもうすでに、本作が真面目な恋愛ゲームではないことが明らかでしょう。セーラー服を着ており一応人の形にはなっていますが、見えるのはカマキリ(?)の頭部と前脚(?)。まさにクリーチャー。本作のタイトルにふさわしいヒロイン(?)と言えるでしょう。
ちなみにそれ以外の登場人物も例外なく人外となっています。ギャルゲーには付き物の悪友ポジション、正人。彼はこころとはまた違った謎の生物ですが、学ランの下に"にんげんだもの"と書かれたシャツを着用。ここはツッコミどころか?
その他、学校の先生や主人公の妹も人型の謎生物。このこだわり様、半端じゃない!

さて、まだ主人公の話をしていませんでした。主人公の一之瀬一太郎は無気力な高校3年生。幼馴染のこころとは毎日一緒に登校するどころか朝起こしてもらう始末。正人には「夫婦かよ」とからかわれるほどだが、成績のいいこころとは違って大学進学など考えられなかった一太郎は今後の関係について消極的なままだった……

と、ここまで書くと「先週のレビュー(Brass Restoration)と同じこと言ってる!」となります。そう、本作はまさに「外見はネタゲー、シナリオはいたって王道」を体現したかのような作品になっています。その意味ではBrass Restorationよりずっと強烈でしょう。
勉強が得意なこころに教えてもらったり、女子の水泳の授業をのぞきに行ったり、ヒロインの料理下手(今回は殺人料理ではなく、キッチン破壊系です)に驚いたり。一昔前のギャルゲー感満載です。

そして本作をプレイしていてじわじわ来るのが、どう見ても人間ではない姿をしているこころに対して"色っぽい"表現が使用され、正人も一太郎もこころをまるで人間の美少女のように扱うことです。イラストから入ってくる情報は普通の人にとってはかわいらしいとかきれいとかいう感想を持つものではないのに対し、文字ではその姿に対して恋するような描写が多く、プレイヤーの脳がバグります。
最たるものは、グッドエンドラストのあのスチルでしょう。普通の恋愛ゲームなら感動すらあるであろう構図でクリーチャーと人間を描く。シナリオがいたって普通なのとの温度差で私の理解力は完全に破壊されました……


「for乙女」の方も紹介しなくてはなりませんね。
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ジャンル:人外用乙女ゲーム
プレイ時間:1時間半
分岐:2ルート+ノーマル。ルートごとに3つのエンドあり
ツール:吉里吉里
リリース:2014/8

タイトル画面を見て、「今回は人間が描かれてる!」と安心したのもつかの間、本編では(主人公以外)漏れなく人外となっています。衣服と髪の色からしか判断できませんが、左から順に本作の主人公七月奈々美の友人の深優、攻略対象①界斗、攻略対象②淳也、そして右の3人は「ここのえこころ」の登場人物ですね。

本作も「ここのえこころ」のノリをそのまま乙女ゲームに持ってきたという感じになっています。見た目が明らかな化け物であるのに対し、まるでそれが自然であるように、あるいは同じ人間を見ているように接する主人公奈々美。今回は攻略対象が2人となっていますが、毎日どちらに会いに行くのかを決めてデートを重ねる王道そのものなストーリー。このミスマッチ具合に脳がバグるのを楽しむ作品といってよいでしょう。

「for乙女」では攻略対象が増えた分、途中で選択肢を選ぶ機会も多くなりますが、攻略法は簡単です。攻略したい方を毎日選ぶだけでOK。すべて同じ人(?)を選んで事件の日に彼に会いに行くとルートに入れます。ルートに入った後は1回だけ、告白を受けるかどうかの選択肢があります。当然ここで「好き」を選べばグッドエンドに行けるわけですが、「普通」「嫌い」でしか見られないスチルもあるのが凝っているところです。
しかしこれ、「普通」はまだしも「嫌い」を選ぶための心理的ハードルがすごく高かったですね……。私はフィクションの中でもあまり悲しい思いをする人が増えてほしくないなと思っているので、この状況で「嫌い」は人間の心を持っていたら選べないだろ! と他のルートを読み終わった後も本当にこれを選んでみるのか逡巡してました。淳也「嫌い」ルートと界斗「普通」ルートは意外性というかツッコミどころがあって選んでみた甲斐があったといえばあったのですが、私にはちょっと辛すぎました。ホラーゲームとかだと非常に有効な演出だと思うんですけどね。
「ここのえこころ」でも同様の選択肢があるのですが、あれは本人を前にして言う訳ではない(少なくとも一太郎はそう思っている)上に、あの状況なら勢いで「嫌い」と言ってしまうこともありえなくはないかなと思うので心理的抵抗はさほど感じなかったのですが……
私としては、ああいう場面では素直に「好きだよ」と伝えてあげたいものです。
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この後のスチルがまた想定外すぎて破壊力満点なんですがね。

ちなみに「for乙女」では不良軍団の対立という状況になっており、「ここのえこころ」で抱えていた進路に関する悩みとは別の方向で解決の難しい悩みを持つ、ややシリアスよりのストーリーになっています。昔はよかったけど今はそうも言ってられねえぜ! みたいな部分のカッコよさは私にも伝わりました。界斗が部下(?)に慕われてるの良いですね。



というわけで「クリーチャーと恋しよっ!」シリーズのご紹介でした。
ネタとしては私も楽しめましたが、これに萌えを見出すのは人類には早すぎる気がします。
新たな世界への扉を開けたい人はぜひプレイしてください。

こんにちは。今回はTwincle Dropさんの「Brass Restoration」のレビューです。


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★favo
ジャンル:古の正統派学園ギャルゲー(後述)
プレイ時間:各ルート3時間/コンプリートまでで12時間ほど
分岐:攻略対象4人、それぞれでさらに数種類に分岐、計21エンド
ツール:吉里吉里
リリース:2004/7


今回は2004年公開と、この間の「魔王物語物語」よりさらに古い作品のご紹介となります。
ジャンルに古と書きましたが、ギャルゲーの"お約束"のオンパレードかつそれぞれのお約束が大変濃いのである種時代すら感じさせるような気がします。どういうことか一つずつ説明しましょう。

まずは主人公の瀧口了です。プロの打楽器奏者の父を持ち、自身も高校生ながら将来を嘱望される実力の持ち主。しかし両親を早くに亡くし、物語の冒頭で列車の事故から自身も左腕を失い、以前のような演奏ができなくなってしまいます。ということでお約束ポイント①「高校生ながら一人暮らし」。
そして、②意味不明なギャグ(?)を大量投入。
この時点では、一人暮らしはよくあるけど設定が重いなあという程度の感想でした。

続いて幼馴染の蘭実梨(あららぎ・みのり)です。これがまた強烈でした。お約束ポイント③幼馴染が毎日起こしに来る、④極度の天然ボケ(卵焼きをエッチなものだと思っているなど)、⑤謎の口癖(にゅにゅぅ)、⑥殺人料理(BSE入りはマジでシャレにならんので止めてくれ)、とこんな感じ。
実梨と了は毎日一緒に登校する仲ですが、⑦実梨がそういうそぶりを見せるのに了は全く恋愛対象として見ない。そして扱いがひどい。バカ呼ばわりは当たり前。変なことを言ったときはビシビシ叩きまくる、ことごとく実梨の立てたフラグを折る、しまいには立ち絵がモザイクになる(!)とやりたい放題。
ギャグがほとんど意味不明なのと合わせて、正直このあたりであまりにもひどいなと感じてプレイの継続を断念しかける程度でした。ちなみに意味不明なギャグとはこんな感じ。
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と、本作の序盤の印象はいいとは言えませんでしたが、結局最後までプレイしてよかったなという感想を持つに至りました。ではどこがよかったのかという話をしていきましょう。

上記のような突飛な設定のイメージが先行すると、作品全体がギャグであって、シナリオの出来云々よりも笑いのセンスが合うかどうかが重要という直感が働きます。しかし本作の本質はギャグとは程遠いマジの恋愛ものだったのです。
ギャグの部分を除いてみると、シナリオは実に王道の仕上がり。各攻略対象と恋愛関係になるかどうかという点だけでなく、その後2人の間に問題が発生し、それを乗り越えていくというまさにシリアス系ギャルゲーという内容となっています。私はこのギャップに騙され、そして本作の評価を見直すきっかけとなりました。


まず攻略対象の説明をしておきましょう。幼馴染の実梨は同じクラスでなおかつ部活も同じ吹奏楽部に属しています。美音(よしね)先輩はプロ級の腕前を持つフルート奏者でお嬢様な吹奏楽部の先輩。小瓜(こうり)は打楽器は未経験ながら優れたリズム感をもつ吹奏楽部の後輩。そして歌唱において類まれなる才能を持つ軽音楽部所属のボーイッシュ同級生、唯の4人です。攻略対象の属性もまさにザ・ギャルゲーといった感じですが、各キャラクターごとのルートでは私が前半で受けた印象とは全く違うシリアスさを抱えた内容になっています。

私が最初に入ったのは美音先輩ルートです。このルートでは、了に音楽の道をあきらめてほしくないという思いから美音先輩が義手をプレゼントしてくれます。再び音楽への希望を取り戻す了。しかし義手では演奏に限界があることを感じ、美音先輩の期待にも応えられないという意識を持つようになります。了は音楽や義手のこととは切り離しても美音先輩が好きなのか、といった自問自答や、美音先輩に思いを寄せる人物は了だけではなかったことから生じた昼ドラも真っ青のドロドロ具合。これらは序盤2~3時間のネガティブな印象を覆すのに十分でした。

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全員を攻略してみて一番好きだと感じたのは実梨ノーマルエンドです。
このルート前半での了は本当にクズ丸出しの思考をしています。実梨はどうせバカだから大丈夫、顔は可愛いしクラスでも人気あるみたいだから音楽に打ち込む代わりに恋愛してみるにはちょうどいいかな、みたいな卑劣な内心は実梨に見抜かれ、距離を置かれるようになってしまいます。そんな実梨に何とか認めてもらうため、子供のころの思い出などを頼りにどんな自分なら実梨に好きでいてもらえるかについて考えていきます。それに失敗し完全に愛想をつかされたバッドエンド。先にそれを見てからの、素直な気持ちを伝えてお互いに誤解があったことに気付くノーマルエンド。この差がとてもいいなと思ったのです。お互いに相手のことを想っていながらすれ違いがあったのが分かったあたりで思わずガッツポーズが出てしまったほどです。グッドエンドのように劇的な出来事によって心を持ち直す展開よりノーマルエンドのような展開の方が私は好きのようです。グッドエンド最後で美音先輩に助言をもらうあたりとかもすごくきれいで好きなんですけどね。


小瓜、唯ルートでもそれぞれ了との間に致命的なすれ違いが発生し、それに対して適切なアプローチができたかで分岐するのですが、音楽が生きがいだった了の苦悩や左腕の喪失に関わる問題がメインで扱われ、設定を活かした物語の構成になっているなと感じさせる内容でした。


本作において気になる点はやはり最初に述べたようにギャグが荒唐無稽すぎるのとたまに女の子の扱いがひどすぎることでしょう。いやそんなにバシバシ叩かなくても、とか、そのネタは全く伝わらないよ~とかにいちいちツッコんでしまうと物語に全く入り込めなくなってしまうでしょう。適度にスルーすることをお勧めします。
また、ギャグばかりの文章と後半のシリアスな展開はやはりマッチしません。その辺のバランス感覚ってすごく難しいと思うのですが、本作はあまりにも両者の融合を無視しすぎているように思います。
もう一つ挙げるとすると、キャラクターが全員「濃すぎる」。了と実梨については書きましたが、一番普通と感じられる小瓜でさえ「ぴきゃぅ」などの奇声といったギャルゲーでしか見ない特徴づけがあり、さすがに胃もたれしてきます。しかしこれらの登場人物が全員きちんと活躍するシナリオなのは流石といったところです。吹奏楽部でない唯は他のルートではほとんど絡みがありませんが、実梨や小瓜、美音先輩については他の人物のルートでもかなり重要な役割を果たします。こうした役割がきっちりしているゆえに、奇抜な特徴によるキャラクター付けがより不要に思えたのかもしれません。

また、攻略対象外の脇役キャラクターも脇役とは言えないレベルの活躍を見せてくれます。特に実梨の妹の蕾観(初登場時にどういう関係なのか分かりませんでしたが)や友人の航太郎はどのルートにおいても良い相談相手となり、時には衝突したり、激励を入れてくれたりとなくてはならない人物です。
特定のルートで重要な役割を果たす山口さんや幸乃さんもいい人ですね。


本作は音楽がテーマになっていることもあり、BGMはピアノ曲で固められており良い感じ。愉快な雰囲気の時に流れる、裏拍のリズムが印象的なあの曲が大好きです。
細かい推しポイントをもう一つ付け加えましょう。おまけ立ち絵鑑賞モードで複数人を同時に表示できる機能があるのって珍しくないですか?!

また、最初にあれだけ古い古い言ってきた今回のレビューですが、システム面は吉里吉里で作られており最近の作品と比べても不満がありません。既読スキップも高速ですし、セーブスロット数も十分。"直前の選択肢に戻る"という機能まで実装されており、これは相当珍しいのではないでしょうか。一つ、エンディング一覧画面が見つかりにくいところにあるのは注意です。メニューバーのヘルプ→このソフトについての画面の先にあります。多分これがないと全エンディング回収したかの判断がつきづらいんじゃないでしょうか。
私はエンディング回収はこの画面を頼りにやってきましたが、結構難しく感じたので分岐に関するアドバイスを書いておきましょう。
本作はおそらく好感度が一定以上ならグッドエンドに行けるというタイプのシステムではありません。選択シーンは相当な回数ある本作ですが、それらの大部分はルートには影響しないダミーになっていると思われます。各ルートにつき3~4個くらいの必須選択肢があり、そのフラグを立てたか否かによって分岐するのでしょう。そして、どの選択シーンがダミーなのか、そうでない場合にどの選択肢が正解なのかは初見では全く判断がつかないものが多いです。かなり前半の選択肢が必須となっている場合もあるので、エンディングが見つからないと思ったら思い切って2月上旬のデータからやり直してみるのも良いでしょう。上述したように既読スキップは優秀ですので回収も苦になりません。


最後に一つ。

私に蕾観ちゃんを攻略させろ~~!
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あ、航太郎さんとイチャイチャしてるシーンでもいいです。生き生きしてる蕾観ちゃんが見たい。

こんにちは。今回はくまのこ道さんの「いちばん星の願いごと」をご紹介します。


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★favo
ジャンル:アイドルが路線変更を目指して特訓する短編ノベルゲーム
プレイ時間:1周10~15分/フルコンプまで1時間半程度
分岐:エンディング12種
ツール:LiveMaker
リリース:2015/5
備考:ミニゲームあり


いい作品を見つけました。いつも通り本作のオープニングの流れをご紹介します。
主人公の綺羅星ピピカ(名前変更可)は今を時めくスーパーアイドル。子役時代から築き上げたおバカ系キャラが広く受け入れられ、ライブをやれば常に熱狂。しかしそんな路線でずっと押していくのも何か違うと思い始めたピピカ。マネージャーに相談してみるも、キャラ変更は厳しいぞと言われてしまう。
しかし翌日、子役時代からすっかり路線変更しファッションモデルとなったIORIを見て、努力して自分を変えることを誓うのだった。


さて、本作は主人公が現役アイドルです。芸能界が出てくる作品というと、「気になるあの子は声優さんを目指しています♪」(主人公は同級生)や「CHANGE!!」(主人公がマネージャー)などが思い浮かびますが、アイドル本人が主人公な作品は本作が初めてだったかもしれません。しかも売れないアイドルではなく、スターアイドルです。しかしそんな彼女にも悩みはあって、売り出しているキャラと実際の自分との乖離を感じているというのです。私は全く芸能界について知りませんが、最初のマネージャーさんとの会話とかを見る感じでも大変そうだなと感じました。

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そんなピピカは「おんがく」「ファッション」「早口言葉」の3つの修業をしていくことになります。ここがミニゲーム要素になっており、変化があって面白いところでしたね。
簡単に言うと「おんがく」は記憶ゲーム、「ファッション」はクイズ、「早口言葉」は間違い探しです。いずれも初見で全問正解は少し難しいかなくらいの難易度です。私は早口言葉が苦手でした…。
この修行を一度行ったらイベントパートがあり、再度修行、というのを3回行ってエンディングに行きます。エンディングが12個もあってめちゃくちゃ多いので、うまく何の修業を行うかを選択してエンディングを回収しましょう。私は初回プレイ時訳も分からずそれぞれ1回ずつ修行したら、何も極められなかったノーマルエンドみたいなのに行きました。

このミニゲームを含めてですが、本作はエンディング回収や周回プレイにすごく親切なつくりになっているのが好印象なポイントの一つです。何でもいいから1つエンディングを見た後は、難易度調整が解放され、制限時間をなくしたり動きをゆっくりにしたりできます。問題は毎回同じなので、最悪覚えてしまうという攻略も取れます。そうして1度でもある項目を極めると、次回以降同じ修行をしたときに"前世の感覚を利用"することができるようになり、ミニゲームをスキップしてステータスを上げることができるようになります。言葉の選び方のセンスも面白いですね。

修行が終わるとイベントパートです。その日に何の修業をしたか、その出来栄えはどうだったかで違ったシーンになるため、1周15分程度のプレイ時間に比して相当多い展開が広がっています。それを3回行った後のエンディングでは、それまでのフラグを活かすような展開が多くすごく気持ちいいですね。

エンディングでは様々な展開がありますが、私が好きなのはやっぱりEND01でしょう。このエンディングではおんがく修行の成果に加え、ほんのりと恋愛要素が絡んできます。運転手の牧野さんですね。この展開では音楽を極めているので、ライブ用の歌を書きます。そしてなんと動機ごとに作詞ができます。まあ本当に自由に作詞できるわけではなく、選択肢から選ぶだけですがこれは効果抜群でした。そうして完成した歌は、作内でボーカロイドが歌ってくれます。なるほどこうした使い方があるのかとびっくりです。私はボーカロイドはあまり好きではないのですが、本作の使い方にはうならされました。演出として有効にはたらいていると思います。

他の展開でも、なるほどと思わせる方向で特訓の成果を生かしてくれます。笑いのネタが含まれていることもしばしば。
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私が不意を突かれたのはこちら。"チョイ悪ポッチャリ系ダンスユニット『XL』"は完全に狙ってるでしょ。ファンになります。
この人物も一発ネタ用ではなく、きちんとピピカの成長に寄与してくれますし、絡ませ方が上手いんですよ。

こんな感じでいろいろな展開があるので、ぜひコンプリートまでやってみてください。私はEND02,03が見つからないな~と思って探していました。どうやら作詞の時の遊び心が足りなかったみたいです。

そしてもう一つ驚いたことに、本作の作者さんは音楽素材サイトを運営されているんですね。本作のBGMもサイト上で公開している素材を使っているようでなるほどといった感じです。素材サイトはそこそこ知っているつもりですが、音楽素材とフリーゲームを同時にたくさん公開されている方がいるのは知らなかった……。


という感じで私をいろいろな意味で驚かせてくれた作品でした。欲を言うとEND01の歌がもう少し尺が欲しい(贅沢ですみません)。現状、主題が1度だけ登場して終わりって感じでちょっと寂しいので…
しかし本作がいい作品だったという感想は変わりませんので、ぜひ皆さんもプレイしてみてください。私は本作の印象が強くて、職場で危うく≪きらんほー☆≫とかいう独り言が出そうになってしまいました(爆)
ちなみにタイトル画面右下の鍵のアイコンからおまけへ進めますのでそちらもお忘れなく!

いつも以上にとっちらかった内容な気がしますが、今回はここまでです。それでは。

こんにちは。今回はばするぅむさんの「かえりみち」です。今回についてはいつものレビュー回というよりコラム回のノリに近くなると思いますがご了承ください。

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★favo
ジャンル:ノスタルジー系恋愛ノベルゲーム
プレイ時間:1時間
分岐:なし
ツール:吉里吉里
リリース:2012/4


まずはいつも通り大まかなあらすじをご紹介しましょう。
主人公の高木圭一は鹿児島県の霧島町(現・霧島市)に住む高校3年生。同学年で家の近い小湊ほのかとは小学生のころからの縁で、田舎特有の長い通学路をずっと一緒に通ってきた。しかし進路のことを考えなくてはならない年齢になり、この関係ももう長くは続かないことを寂しく感じていた……。

という感じでしょう。まさにタイトルの通り"かえりみち"にほのかと会話しながら帰ってくるというのが物語の大部分を占めるテーマでもあります。
さて本作ですが、プレイしていて大変驚いたところがあるので最初にそれについて書きましょう。

作風が完全に「むきりょくかん。」の作品のそれ!!!

はい、プレイ開始前にReadMeを読んだときに、背景画像提供としてむきりょくかん。のクレジットがあり、さらに本作のメッセージウィンドウが「ごがつのそら。」「ほしのの。」のそれと似ていたので気にはしていたんですが(ただしゲームエンジンは異なる)、そんな表面的なところにとどまらないほどにそっくりです。特定の目的なく緩やかなおしゃべりをするシーンが根底にある、文章は1人称で時折ノスタルジックな発言やその他の感想のような文が入る、ピアノ曲中心のBGM選曲、舞台となった実在の地名が明らかにされる、シーンの切り替わりで情景描写が入る、などなど何をとってもむきりょくかん。を連想する要素のオンパレード。中盤で"「ほしのの。」という映画"の感想の話が出てきたところで、本当にこれ別人だよな、むきりょくかん。の吉村さんの別名義とかじゃないよなと途中でサークルのHPを確認に行ってしまったほどです。

その結果、ばするぅむさんのサイトトップにはあの懐かしのツッコミフォーム(by むきりょくかん。)が! (注:コメント送信用CGI)
さらにハンドルネームで検索すると、作者の成井芳織さんはむきりょくかん。の日記へのコメント常連であったことが分かって、ファンが高じて自作にこんなに明確な影響を受けることもあるんだなと感じました。

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本作の話に戻ります。そんなことがあって雰囲気が似ているのもあり、私は本作の雰囲気がかなり好きなんですよ。何らの目的もなく続くような日常の描写って、往々にして飽きてしまうようなことがありますが本作はそんなこともなく、圭一とほのかの距離感だったり、受験や進路に向けて何となく考えていることだったり、そう言ったシーンを微笑ましく眺めることができました。


というようなことばっかり言っていると、他者の作品の劣化コピーなのかと思われるかもしれませんが、そのようなことはありません。本作の場合、独自の魅力としてまず幼馴染ものという要素がありますね。子供のころは帰り道でこんな寄り道をした、とか、中学校のスクールバスが懐かしいとかの表現によって、キャラクターに立体感が生まれるのです。当然ですがプレイヤーは登場人物について、作内で描写される情報しか持っていません。単純にシーンを順に脚本のように紡いでいっても、キャラクターの平面的な部分しか見ることができませんが、思い出のシーンなどが入ることによってキャラクターに過去からの流れという新たな次元が交わり、より多角的に魅力を受け取ることができるように感じます。

また、本作は帰り道にだらだらと喋りながら歩いていくという、誰にでも経験のあるシーンがテーマとなっています。物語は基本的に何でも主人公の立場になって読むタイプの私にとって、これは非常に感情移入しやすい内容でした。私の場合残念ながら、毎日一緒に通った幼馴染がいたわけではないのですが、それでも部活の後で友人と歩いて帰り、受験のこととかも考えなきゃな~とか思っていたのは今となっては貴重な出来事だったと思い出させてくれました。
舞台となった地域の描写がしっかりしているのも、2人の空間を想像しやすくなってよかったと思います。本作内の時間は2005年(公開は2012年です)。調べたところこれは旧霧島町が実際に市町村合併で霧島市となった年でした。作内でその描写もあるなど、現実に忠実であることによって舞台のリアルさが増し、私をより深く圭一とほのかの世界へと連れて行ってくれたのではないでしょうか。

そして、文章力も確かですね。比喩を用いた表現などが多用され、どちらかというとゲームというか小説寄りのテキストかもしれません。私が好きなのは、受験が終わって帰るときの「色のない街の中を帰っていた。」ですね。私も大学入学を機に地元を離れた経験があるので、あの時の希望と不安と緊張が綯い交ぜになったような気持ちを思い出したりしました。

さて、本作をプレイしていて気になった点もあります。まずは、シーン同士の繋がりがあまり感じられなかったように思います。例えばお祭りの場面。圭一はほのかを怒らせてしまいますが、その前ぶれだったりフォローだったりという部分が十分でなかったのではないでしょうか。一応なぜそんなに怒っていたのかは判明しますし、翌日謝って許してもらったというような描写はありますが、その後の展開に結びついていないように感じてしまいました。ここだけ孤立していて、なかったとしても成立してしまいそうな感じです。ほかにもところどころ、話の流れから独立してしまっていると感じる場面がありました。
しかしそれらのシーンも個別の場面としてみれば、圭一とほのかの関係性が浮かんでくる良いシーンだなとも思えるので惜しいところです。

そしてエンディングも、確かにまとまってはいるんですが、そこはオーソドックスに1年後の話をして欲しかった。これは単に私の好みというレベルではありますが……。


というわけで、脱線も多くなりましたが今回は「かえりみち」でした。
田舎で幼馴染ものというワードに惹かれる方、地元にノスタルジーを覚える方、むきりょくかん。(特に「ごがつのそら。」)のファンの方は読んで損のない作品だと思います。

それでは。

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