フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
初めての方は、ぜひごあいさつをご覧ください。評価の基準については、レビューについてに記してあります。
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恋愛

こんにちは。更新が2週間空いてしまいました。
今回はカビ布団さんの「そしてパンになる」の紹介となります。

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ジャンル:パン作りに燃える部活&恋愛ノベルゲーム…と思いきや…
プレイ時間:1ルート3時間/フルコンプまで8時間程度
分岐:メインはヒロインごとに1つで3ルート+おまけ(真)ルート、実質バッドエンドあり
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2021/4 (R15版ver1)、2021/12(R18版)
備考:ノベコレ版は15禁、エロゲと饗版は18禁。今回は18禁版でプレイ


さて、本作については私がプレイする前からノベコレ版の評判を耳にしておりました。ほかに例を見ないような衝撃的な内容だと。
尖ったものが出しやすいのがフリーゲームの魅力の一つだというのはブログ開設当初にも述べてきた私ですが、ここまで驚きの展開というのを売りにされてしまうと私としてはプレイしないわけにはいかないかなと思っていたところ、たまたま18禁版のリリースを知りその場でダウンロード。どんな意味で衝撃的なのか、というのを確かめるような心持ちでプレイを開始しました。


本作の舞台はパン作りが主要産業で皆パン大好きな八紘町(はっこうちょう。パン作りに欠かせない"発酵"からの命名でしょうか)。主人公の波良嶋亮は御多分に漏れず大のパン好きで、どうしたらおいしいパンが作れるか日々研究を重ねています。幼馴染の八千代心音とともに部員を集めてベーカリー研究同好会を立ち上げ、部活としてもパン作りに取り掛かっていきます。部員になってくれたのは亮と心音のほかには学友会(生徒会のようなもの)も兼任するまじめな小頭(おず)さん、メロンパンの髪留めが目を引く帆那(はんな)さん、一風変わった味のパンを作る粕田(かすた)さんの3人。ギャルゲーらしく、本作はそれぞれのヒロインごとにルート分岐があります。


作者さんがお勧めする攻略順があるようなので、私はそれに従ってプレイしました。まずは帆那さんです。本作の中では最も王道系と言えるルートでしょう。パン作りに熱心な帆那さんとどうやらそれをよく思っていないらしい帆那さんの父親。父親をどう説得して帆那さんにはどんなサポートをするのか、といったあたりが見どころで、本作の中で亮が最も強かな感じがするルートともいえるでしょう。
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問題は次の心音ルートです。ここにきて本作の"衝撃的"の部分が徐々に明らかになっていきます。帆那さんルートでもほんの少しふれられた"八紘町の都市伝説"の話や、亮や心音の両親たちがそれにかかわっていそうなことが次第に明らかになります。このあたりをプレイしているときは、正直に言うと
「フリーゲーム史上類を見ないとまで言うほどか…? 確かに規模が大きいし亮にとって驚愕の事実というのは確かだけど誇大広告では?」
といった感想でした。しかしこの感想は心音ルート終盤で改められることになります。さすがにあの展開は想像できませんでした。その結末を前に亮と同様に呆然とすること3分。ようやく私も状況を飲み込みました。そして様々なことを理解するわけです。都市伝説について誰に聞いても歯切れの悪い答えしか返ってこなかった理由。パン大好きだった兄が突然パン嫌いになってしまった理由。
そして黒幕への怒りに震えるだけの私と違い、亮はもう一つ大切なことに気付いていました。"世界一おいしいパンとは何か"。作内で散々出てくるこの言い回しですが、ここにきてただの部活の目標とかの域を超えて別の意味を帯びてきます。いや、意味というより、もはや呪いでしょうか。
真実を知ることで苦しむという展開を含む作品はたびたび目にします。しかし本作では、そうした苦悩とはまた性質を異にしています。心音ルート最後の選択肢で、片方を選ぶと亮は完全にパン作りへの情熱を失い抜け殻になってしまいます。この展開、私結構好きなんですよね。極めてしまったゆえの絶望と諦観。このあたりが逆に亮の職人魂みたいなものを感じさせてくれました。

この後に粕田さんルートを読むと大変平和ですね。最もギャルゲーらしく、バランスも良いルートと言えるでしょう。帆那さんルートなどでもそうでしたが、パン作りのための課題は技術的な内容よりも粕田さん自身が自分の力量に自信をもつという精神的な面に帰着します。このあたりが上手かったですね。もしパン作りをする上での壁と打開策が技術的なものだったとしたら、おそらく私には専門的過ぎて理解できなかったでしょう。しかし主眼をメンタルの方に置くことによって、パン作りの経験などなくても理解できるし、そのうえでベーカリー研究同好会という設定がないがしろにされているとも感じないようになっていると思います。さらに、部活での関係を自然に恋愛につなげるのにぴったりです。
気になる点としては、食レポの方はもうちょっと具体的にしてほしいかなと感じたところでしょうか。「私の作ったパンおいしい?」「うん、おいしいよ」といったやり取りばかりになってしまうと、部活とか関係なしにただイチャイチャしてるだけじゃねーか、と思えてしまいます。まあ、ここを専門的で難しい指摘ばかりにしても先ほどと同じ問題がありますから、バランスが大事といったところでしょうか。


さて、これらのルートをすべて読むと、おまけルートに入ることができます。……という情報をもとにプレイしていたら、全然おまけなんかじゃないシナリオの量と内容でした。ここまで読み終えないと本作をプレイしたとは言えないでしょう。私は小頭さんルートと呼んでます。
このルートでは、部員で立ち絵もあるのになぜか攻略できないと思っていた小頭さんとの関係を進めることができ、事件についても心音ルート以上に真実に迫ることになります。というわけで、心音ルートを読んだ方はこのルートまですべて読むことを強く推奨します。


この作品をプレイするうえで気になる点も多かったので少し挙げます。
まずは、部活としての導入だったのにそれが物語後半で完全に忘れ去られていると感じた点です。例えば、小頭さんルートではちょっとだけ触れられますが、学園祭関連の描写が審査会以降全くないところなどは違和感がありました。普通学園祭本番がメインイベントであって、出展団体の審査を行う部分はあくまで通過点、中間目標でしかないでしょう。しかし本作では審査会終了後「目標がなくなってしまった」という空気になるのが理解できませんでした。学園祭の模擬店を成功させることを目標に設定したうえで、各人が技術向上に励む中で課題を見つける(あるいは、事件に迫る必要性を感じる)という展開で良かったのでは?
あとは、シーンごとの繋がりがわかりにくいと感じる回数も多かったです。寝たら日付が翌日に飛んだり、1週間後に飛んだりするので作内の時間がつかみにくかったり、あるいは登校したと思ったのに次のシーンではいつの間にか学園が終わっていたりといった混乱は、回数が重なると確実に読み手の没入感を阻害します。
長編ということを鑑みても誤字が非常に多いところや、バッドエンドはともかく正規のエンディングまでがあまりにも素っ気ないのも気になるところです。


といろいろ書いてきましたが、R15版公開からR18版・R15版ver2の公開までに立ち絵の追加のみならずシステム面の改善などもされているようで、今後に期待できる作者さんかなと思っています。旧verで書かれた他の方のレビューを見ると、文字表示速度の変更ができないといった記述がありましたが、私がDLしたバージョンではできるようになっていました。

最後にどうでもいいことを一つ。
"学園"はエロゲのお約束なんですかね? 商業作だと18歳未満は出せないから高校という名称は使えず、代わりに学園と呼ぶのがお約束といううわさを聞いたことがあるのですが、商業作をやらない私には分かりませんでした。私がいくつかプレイしたR18フリーゲームでは普通に高校生が出てきたような記憶があります。誰か詳しい方いたら教えてください……
本作ではR15版でも学園のようです。


私は以前、衝撃的なシナリオを持つ作品として「まい、ルーム」をレビューしました。本作にはあの時の衝撃とはまた違った驚きが詰まっています。さらにはこのテーマでしか語りえないメッセージ性を含む作品となっているので、気になった方はぜひプレイしてください。
それでは。

こんにちは。今回は変則的に、ハロウィンに関連して時期限定で公開されているHACKMOCKさんの後日談おまけ作品3作を軽く紹介していこうと思います。もうハロウィン終わったよとか言わないで…
時期限定のページにリンク張っていいかわからなかったので、リンクはサークルのサイトトップだけにしておきます。
当然ですが、元ネタになっている方の作品をプレイしていないと意味不明なので、未プレイの方は本編から先にどうぞ。


まずは「ハロウィンの夜のマージナル」です。
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こちらは「午前0時のマージナル」の後日談、2017年ハロウィン作品です。本編ではたくさんの分身の中から見事に弟子のリオを見つけ出し、アリサとリオは単なる師弟関係よりももっと深い関係になっていきました。本作では2人のほのぼのいちゃいちゃを楽しむことができます。子供のころにもらった魔法書の暗号にチャレンジするアリサとリオ。その魔法の効果とは…? そして師匠にはまさかのあの萌え要素が追加されました。
その魔法の流れから何とも自然にキスまでもっていくリオ、強かになりましたね。本編ではあんなに回りくどいやり方で師匠の愛を確かめようとしてたのがウソみたいです。
暗号の方は難しくありませんし、ヒント機能もついて優しい仕様。しかしハロウィン用のミニゲームに、分岐に対応したスチルとおまけの立ち絵閲覧機能付きとかなり豪華ですね。


次は「嘘つきハロウィーニアス」です。
usohallo

こちらは「嘘つきジーニアス」の後日談で、2016年公開です。本編では嘘をついたり本当のことを言ったりしてすれ違っていたロッテとクラウスですが、エンディングで無事に結ばれました。本作では、おそらく近所にオープンした土産屋(?)の店員になって、彼らの様子を眺めることができます。
スクリーンショットを見ても分かりますが、本作はおそらくスマートフォンでのプレイを意識されたのでしょうか、画面が縦長になっています。そしてもう一つ気付く本作の特徴、かつ素晴らしいところは立ち絵が動くのです! 本編では動かなかった2人が(それでも可愛かったけど)立体的に動いて笑ったり恥ずかしがったり驚いたりするのを見るとそれだけで楽しくなりますね。えもふりというソフトを使っているようです。
ただ、タイトル画面はやっぱり欲しかったでしょうか。

そして最後に、「ハロウィンベルを鳴らして」です。
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以前本ブログでも紹介したことのある「ロイヤルベルを鳴らして」の後日談となっています。詳しくはこちらのレビューを読んでいただくといいのですが、本編ではヴィンボーナの姫である主人公ユーリは選択によって、隣国の王子で公の場ではすごくすましていてカッコいいけど実は俺様的性格のアルト、オタク気質であまり人前に出ないけれど国や兄のことをしっかり考えているアキバル、大臣でありながら子供のころからの遊び相手でもあって優しいセナの3人の誰かと結ばれることになります。本作ではその3人それぞれについての後日談となっています。しっかり全員分のシナリオにスチルも用意されていて豪華!
以前のレビューでも書いた通り私はアルト推しなので真っ先にアルトに王道な選択肢で会いに行きました。

さて、その時の私の心境をここで再現します。

いやあアルト様はやっぱりいじわるだなぁ。こっちまで恥ずかしくなってくるよ……
……ぇぇ、おばけ布の上から丸わかりなほど赤くなるユーリ…可愛いけど爆笑。さすが。
うんうん、ネタばらしね。読んでるこっちも分かってたけどね。

……えええぇえ~
んああああああ!
大胆!大胆!さすがすぎる。うおおおおお
そんな距離の詰め方っっ!ずるいっ!!

(スチルで完全に思考停止。ページが送れない)

(数分悶えた後で読み進める…)
そしてユーリの顔!赤い!もはやリンゴ!
ああああああああ~~~~
っっっってもう一回?!?!?!
アルト様のいじわるっ!!!
っこ、っこれは…………?



久々に自我を失いました。そして尊死という概念を初めて理解しました。


……そんなわけで最後に暴走してしまいましたが、3作ともとても面白いので本編プレイ済みの方はやって損はありません。いずれも吉里吉里製で、プレイ時間にして5分強なのでお手軽にプレイできます。今月いっぱいまで公開の予定ということなので、興味を持った方はお急ぎください。

それでは。

こんにちは。最近コロナがちょっと収まってきて、遠出の予定ができるなどして更新がしばらく空いてしまいました。そんな感じで久々となりましたが今回のレビュー記事は4th clusterさんの「Campus Notes vol.2」です。今回の記事は長めになっています。


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ジャンル:大学生のSF青春恋愛ノベルゲーム
プレイ時間:10時間
分岐:3ルート(後述)
ツール:吉里吉里
リリース:2015/4


本ブログでこれまで取り上げた中では最長のプレイ時間となる長編ノベルゲームですね。あらすじを簡単に紹介しましょう。

主人公桐葉悠太は高専を卒業し筑波大に3年次編入した新入生。入学式で同じ経歴の風馬と友人になり、何かしらの打ち込めるサークルに入ろうとポスターを見ていると、成り行きで個性的な軽音サークルに入ることに。そこで出会った3人の女の子と次第に仲を深めていく悠太。しかし彼女らはそれぞれなかなかの秘密を抱えているようだった……。


プレイする前から分かる本作の特徴として、具体的な舞台が明言されているというのがあります。ズバリ茨城県の筑波大学です。モデルになった学校などがあるんだろうなと感じられる作品は他にもありますが、本作ではがっつり大学の名前が出るし、周辺の地名などもいろいろ出てきます。そして本作を作った4th clusterさんは筑波大の卒業生によって構成されたサークルのようです。背景写真などもおそらく作者さん自身で撮影したキャンパスの写真なのでしょう。その分登場人物たちにもリアルさを感じさせる生き生きとした描写が多く、いい青春だなあと感じさせてくれます。

そして実際にプレイしようとexeファイルを起動すると、いきなり豪華なPVが始まって驚かされます。もうこの時点で本作のクオリティーがとても高いことを感じられました。音楽も自身で作成しているようですし、UIの作りこみもあって大変プレイしやすくなっており、かなり長いシナリオなのですがその長さを感じさせないような気持ちよさがあります。


話の中身に移りましょう。悠太たちが入ることになった軽音サークルでは5人のメンバーでバンドを組むことになりました。ギターのうまい先輩のアイカさんが中心となりますが、他のメンバーは悠太含め楽器経験すらなかったりなんとカラオケで歌ったこともなかったりとそう簡単にはいきません。読み始めた序盤のうちは、どうやってここから音楽を作り上げていくのかなあと思っていましたが、本作の中心はバンド活動ではありませんでした。

上の書き方ではなんかネガティブに感じるかもしれませんが、バンド活動は本作の幹の部分という感じがしたんです。しっかりとそこに話の軸や土台があって、そこから各攻略対象の3人のルートにあたる枝が元気に伸びて葉を茂らせているイメージです。スタート地点はバンド活動であっても、ルートに入ると悠太と女の子の問題とか秘密みたいなところに焦点が行くんですね。なのでプレイ前に思っていたよりは本作はギャルゲー要素が濃いなあと感じました。もちろん話が進んでもバンド活動は続けていますし、そこから繋がっている秘密だったりするので、軸が忘れ去られてしまうわけではありません。しっかり幹からの流れを汲んだ枝が伸びています。この辺のバランスがうまいなと思うところです。


個別ルートのことをちょっと書きましょう。選択肢はそこそこありますが、本作の分岐は簡単です。まず四駆の告白を断るか否か。断ったら、誰が好きと告げるか。初見でも簡単に狙ったルートに入れるでしょう(ちなみにルートに入った後は選択によりゲームオーバーもあります)。それぞれのルートはこんな感じ。

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まずはポスターを見ていたらいきなり悠太に抱き着いてきた不思議ちゃんの雪丸四駆(ゆきまるよんく。すごい名前ですね)。彼女には重大な秘密があることが、序盤のうちから明らかになります。彼女はなんと筑波大の研究のために作られたロボットだったのです。記事冒頭のジャンルのところにSFと加えておいたのはそういうことです。ロボットである彼女は知能は十分ですが、まだまだ人間社会の常識とか感情が十分に備わっているとは言えません。そんな彼女が悠太と恋仲になって人間として成長し、音楽表現の幅を広げるというのはなるほどです。おそらく本作のメインルートでしょう。クライマックスのアクションシーンも見どころです。

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次に、悪に憧れタバコの代わりにココアシガレットをいつもくわえてるギターのアイカさん。そう、悪に憧れているけど悪になり切れないんです。だってタバコは体に悪いし……。そんな感じなので、最年長なのに周りにいじられたりしているキャラですが、私は結構好きでした。「いい人ですね」と言われるのを嫌う彼女がなんでそうなったのか。正義より悪を目指すのが単に、カッコいいから、ではなくきちんとした理由があったのがよかった。そんな一筋縄ではいかない先輩の心を悠太がどのようにつかむのか、見届けてください。

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最後に運動神経抜群で熱血キャラの天辻陽。大変な負けず嫌いで、悠太のことは出会った当初ライバル視どころか「嫌いです」と宣言するくらい。剣道部にも所属し、高校時代に相当な成績を残したという話ですが、どうやら最近はうまくいっていない様子。体力では全く及ばない悠太ですが、陽のメンタル的な部分でサポートしていきます。また、陽は風馬とは幼馴染で兄妹のような関係。いつも彼女欲しいぜ~みたいなことばかり言ってる風馬が、兄としてかっこよいところを見せるのもこのルートなので、期待してください。


攻略対象3人を紹介しましたが、本作にはほかに脇役が2人います。悠太の姉で完璧超人の理奈と、とにかく主人公らに敵意むき出しの謎の人物、三全音三弦(さんぜのんみつる。これは読めない)。この脇役たちも結構魅力的なんです。特に三弦の方は話の根幹にかかわってきます。なぜそこまでの悪意を秘めているのか。その理由は四駆ルートで明らかになるので、これを最後に読むのが読了後のおさまりがよいのではないでしょうか。最初のシーンが帰ってくる物語の構成となっており、私がこれを大好きなのもあります。
(私は事前情報なしプレイだったので四駆ルートは最初に読みました。だってあんな目で見られたら断れないじゃんっ)



さて、本作全体の特徴として、コメディシーンの中であっても結構インテリというかうんちくが挟まれることが多いのも挙げられると思います。アイカさんの正義の話であったり、ロボットと人間の区別であったり。言い回しもややインテリぶったところがあると感じられるかもしれません。レビュー執筆のために冒頭を読み返して気付いたのですが、アイカさんの四駆への「お前第一条はどこへやった!」は、ロボット三原則のことですね(第二条の方が場面に合っている気もしますが)。こうした話を楽しめる読者なら、本作はさらに面白いものになると思います。
それとは別にことわざをもじったネタも多かったりします。たまに風馬の軽い下ネタも。世間知らずの四駆が、ピロートークは修学旅行でするものと勘違いするあたりとか結構笑いました。


全体的に非常にクオリティーの高い作品だと思うのですが(オススメにしようか迷いました)、気になることも少しだけ。まずは誤字の類がだいぶ多いことです。間隔→感覚や接地→設置などの単純な変換ミスは分かるのですが、「奥面もなく」などは自然に誤変換しないと思いますしどうなっているんでしょう。うんちく系のネタも多い本作ではかなり気になった点です。英語の絡むネタでteachの過去形がtoughtになっていたのも目についてしまいます(正しくはtaught)。
もう一つは投げっぱなしの謎が多かったところです。陽のルートでの三弦の行動の動機とかはフォローしてほしかった感じがします。エンディングのまとまりが微妙なんですよね。私が四駆ルートを最初に読んじゃったせいでしょうか。


最後に、本作の最初の選択肢についての話をしましょう。入学式後に風馬とどうしようかという話になったところで、サークル選びの3択選択肢が出ます。しかし本作では2番目の軽音サークルしか選べないのです。最初にプレイしたときは、これはエンディングを見るごとに選択肢が解放されていくタイプかなと思ったんですがそうではなく、どうあがいても軽音しか選べません。後から調べて知ったのですが、本作は3部作の2作目だったんですね(タイトルにvol.2とあるのも納得)。1作目と3作目がそれぞれ残りの選択肢に対応するようです。3作目についてはSteamで1222円で販売中です。本作に体験版が同梱されているので気になる方はそれを読んでからでもいいでしょう。ちなみに11/2までハロウィンセール中で733円で買えます。私もそれで買いました。無料でサウンドトラックがついてくるのもうれしい。
作者さんがすでに解散しているため、1作目についてはおそらくもう入手手段がないようです。残念。3作は独立したつくりになっているため単独で楽しめ、本作や3作目プレイの妨げにはなりません。


というわけで、今回はCampus Notes vol.2のご紹介でした。生き生きとした大学生の青春を感じられる良作です。ぜひプレイしてください。シリーズの3作目、Campus Notes : forget me not.の購入を検討される方は割引期間がもう少しで終わるのでお急ぎください。

それでは。

こんにちは。今回は、HACKMOCKさんの「ロイヤルベルを鳴らして」のご紹介です。

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★favo
ジャンル:洋風ファンタジー乙女ゲーム
プレイ時間:1ルート30分程度。フルコンプまで1時間半
分岐:3人の攻略対象ごとに複数+ノーマルエンド
ツール:吉里吉里
リリース:2012/2


さて、まずは本作のあらすじを簡単にご紹介しましょう。主人公のユーリ(名前変更可)はヴィンボーナ王国の王女。しかし国が貧しいため贅沢はできず、庶民的な暮らしをしている。緊張すると頭の中が真っ白になってとんでもないことを口走ってしまうというおっちょこちょいな面があり、国民からも親しまれている。父親のヴィンボーナ王は何とか国を豊かにするために、隣国のカネモティアの2人の王子のどちらかと政略結婚させたいと思案し、王子の別荘に忍び込んでアプローチをかけるよう指示するのだが……

いきなりですが本作の魅力は一つ。ユーリが可愛い! そして面白い! これに尽きます。本当にかわいいんですよ。やってみてください。

…これではレビューにならないんでもう少し真面目に話しますね。
本作の冒頭は、ぎっくり腰になった父の代わりにユーリがカネモティア王子の誕生パーティーに出席している場面から始まります。公務の場に慣れていないユーリは緊張しまくり。カネモティア第一王子のアルト様がかっこいいな~と思っていたが、実際に話しかけられるとまともなことは何一つしゃべれず、「ミドリムシの生まれ変わりなので光合成しなきゃいけない」などと意味不明な言い訳を残しその場から逃げてしまいます。この時のユーリの表情がすごい。酔っぱらってもこうはならんだろというくらい真っ赤で可愛いんですよ。そしてころころと表情を変えるので見た目にも楽しい。この表情差分の数も魅力ですね。
創作の世界でよく"アホの子"というのがありますが、ユーリの場合はそれとはちょっと違って、自分のしでかした言動が常識に照らして突拍子もなさすぎるということには気づいているので、そのことについて恥じているシーンが多いんです。だからこそ笑えるだけの作品ではなく、思わずユーリを応援したくなるような、そんな物語に引き込まれる作品に仕上がっているように感じます。

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さて、本作には3人の攻略対象がいます。冒頭のシーンでも登場するカネモティア王子のアルト様、その弟のアキバル様、そして自国の大臣のセナです。それぞれ分類するなら、アルトは乙女ゲームの王道的ルート、アキバルは変わり者・癖のあるルート、セナは幼馴染ルートといえるでしょう。ちなみに個別ルートに入れなかったノーマルエンドもあります。これらのルートがそろって乙女ゲームとしてのバランスという意味でもよくできているでしょう。

これらのルートの中で私が好きなものを挙げるとしたら、なんといってもアルト様ルートでしょう。この王道な感じがたまらない。
アルト様は公の場では品行方正で美しい立ち居振る舞いで多くの女性から大人気なわけですが、会話を重ねるにつれ素の彼は俺様タイプだったことがわかります。そんな彼がどうしてユーリに気を許すのか、そのあたりもきちんと描かれているんですよね。恋愛ゲームに関してこの"なぜお互いが惹かれ合うのか"ってめちゃくちゃ大事な要素ですよね。そこのツボをしっかり押さえています。そしてユーリの行動は相変わらず。恋愛もコメディーもどちらもたっぷり味わえます。ぐいぐいくるアルト様に、ユーリだけでなく私まで心ときめかせてしまいました。そしてEND2のエンディングタイトル。ここまでの流れが本当にうまい。ユーリの「貧乏神」発言を生かしたこの展開にはうならされました。

ちなみにアルト様ルートはもう一つ、END1もあります。END2とはかなり温度差があるのですが、アルトもユーリも先ほどのエンディングと別人な感じはしないんですよね。たまにエンディングによって同一人物なのにキャラ違うだろ! と言いたくなるような作品もあったりするのですが、本作ではアルトとユーリの気持ちの動きがしっかりと表現されているので、どんな結末にも納得感があります。甘さたっぷりで乙女ゲームとしての魅力満点なのはやはりEND2かと思いますが、こちらの分岐も存在することで成就したときの幸せをよりかみしめられるような気がします。
もちろん、アキバルやセナのルートも乙女ゲームとしての魅力、コメディとしての魅力が詰まってます。

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本編をすべて読み終わったら、ぜひEXTRAからおまけを読んでみてください。後日談や人物設定などのおまけがたっぷりあるのもプレイしていて満足感がありますね。ちなみにこの後日談ではセナルートが好きです。おとなしい感じだったセナがあんなに堂々としているのを見ればかっこいいという感想を抱かずにはいられません。また、2人の王子とは違ってセナにはユーリとのこれまでの積み重ねがありますからね。その部分がしっかり感じられてよかったです。


というわけで今回は「ロイヤルベルを鳴らして」のご紹介でした。ユーリの突飛な行動に笑いながらも乙女ゲームならではの甘いどきどきを味わえる作品で、普段乙女ゲームをプレイしない方にもお勧めできると思います。ぜひプレイしてください。

それでは。

こんにちは。今回は、「ほしのの。」のご紹介です。

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オススメ!
ジャンル:田舎でお姉ちゃんと仲良くなる恋愛ゲーム
プレイ時間:2時間
分岐:なし
ツール:Flash/スマホアプリ
リリース:2007/7(原作Flash版)


今回はついに、私にとって思い出の作品「ほしのの。」を取り上げます。それまでRPGなどを中心にプレイしていてノベルゲームは存在すら知らなかった私は、前回の記事で紹介したたんしおレモンのゲーム紹介掲示板のようなコーナーから本作を知りました。そして見事にはまってしまったわけです。
本作は最初にむきりょくかん。さんによる原作のFlash版が公開され、その後株式会社テンクロスによるスマホアプリ版が公開されています。Flashのサポートは終わってしまいましたが、現在でもスマホアプリ版はダウンロードすることができます。スマホアプリにしては珍しい完全無料&広告なしなので、フリーゲームの枠内に十分入っているなと判断してのご紹介です。また、原作も一応まだプレイ可能です(詳細は後述します)。


本作のストーリーを単純化すると、両親のが亡くなってしまったため田舎の親戚に預けられることになった主人公の川島結城が、最初は鬱陶しく感じていた従姉の榛奈との距離を次第に縮めていくという内容です。よくあるギャルゲーのパターンとして、主人公がひょんなことから女の子を自身の家に住まわせることになる、いわゆるボーイミーツガール系がありますが、それとは関係が逆なわけです。しかしそれ以外の点においては典型的なギャルゲーと変わらず、上のあらすじを読んだだけでは何がそんなに良い作品なのかというのがあまり伝わらないと思います。そこで、私がよいと感じた点をいくつか順に紹介していきます。


まずは何といっても、シナリオの丁寧な作りです。物語開始時点の結城は、和泉家での田舎暮らしに強い抵抗感を抱いています。中学生で反抗期の最中ということもあり、1つ年上で世話焼きな従姉の榛奈に対しても邪険にするシーンが多く登場します。両親との死別という導入がこれらの"受け入れられなさ"と結びついて描かれ、ただの同居のきっかけ以上にシナリオの方向性を示しています。
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最初はこんな感じだった結城も、当然話が進むごとに和泉家になじんでいくわけですが、その過程にしっかりとした説得力があるんですよ。都会では触れることのなかったことを"ダサい"ではなく"新鮮"と捉える描写だったり、榛奈との"雨降って地固まる"的な出来事だったり。こうした一つ一つのエピソードが点ではなく線でつながり、榛奈と距離を縮めていくというまとまった物語の流れとして感じられるのです。
そうそう、田舎の描写や農作業に関する記述なんかも嘘っぽくなくていいですね。作者さんの実体験に基づいているようで、このシナリオの質にもうなずけます。


そして登場人物が魅力的です。ヒロインの榛奈はもちろん大変にかわいいです。私は4話での浴衣を着た榛奈の笑顔に心奪われました。
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また、立秋さんや委員長といったサブのキャラクターも単に登場しましたというだけの人物ではなく、しっかりと結城の思いに影響を与えています。委員長に関してはその個性的なキャラクター性から、気持ちの良いコメディー展開ももたらしてくれます。
あと忘れられないのは「ごがつのそら。」にも登場した神明みのり。1話と2話の間に引っ越してしまう彼女ですが、その後にも榛奈からの話題に出てきたり、結城と榛奈の間を仲介する役割を持ったりする重要人物になっています。

これらの人物の立ち絵については、原作版とアプリ版で全く違うので、両方で味わってみるのもいいでしょう。アプリ版には、原作ではなかった立秋さんと委員長の立ち絵もついています。あれだけふざけた発言をしていた委員長がまさかのイケメン(笑)
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作品を通して雰囲気だったり季節感といったものがはっきりと感じられるのも本作の良いところでしょう。例えば、夏の暑さにうんざりするシーンでは、文章で描写するだけでなく、セミが鳴く環境音が入ってくる。青い空と白い雲のコントラストのきいた背景写真が使われている、など作品全体から夏を感じられるんです。また、半年経ったことを表現するのに単にそう書くのではなく、「年が明け、桜の花が咲き、散り、紫陽花の季節になった。」とすることでよりイメージしやすく物語に入り込みやすかったり、何が起きたかだけを伝える脚本のような文章ではなく、味わいのある小説としての魅力を帯びてきているように感じます。ちなみに好きな文というと、1話終わりの「返って来た「おかえり」の声を聞いて初めて、僕は"家"に帰ったのだと。そう思った。」がかなり好きです。これから和泉家になじんでいくきっかけというか、予感みたいなものを感じさせられますよね。
また、効果音について少しだけ触れましたが、BGMについても大変雰囲気に合った選曲で、曲まで好きになってしまいます。原作版の話になりますが、エンディングテーマの「あたりまえ かわりばえ」が作品世界にぴったりマッチしているということに関しては、音楽素材について書いたこちらの記事でも触れています。この記事に書かなかった曲で好きなものというと、1話プロローグ直後のシーンのBGMでしょうか。両親を失ったという大きな喪失感を抱えた状態で榛奈と寝る前の会話をするシーンですが、ここで使われているこの物悲しいピアノ曲がすごく好きです。しかも曲名が"good night"だと知った時には、うますぎるだろ…と思いました。サウンド全体に関しての評価がすごく高いです。

このサウンドだったり背景だったりといった部分については、アプリ版では全く違うので原作ファンの私としてはやや残念なところではあります。
ちなみに以前はスマホアプリ版でなくガラケーアプリ版も存在していました。数年ぶりに起動してみたところ、タイトル画面のBGMがTAM Music Factoryの「秋の野」であることに気付き、ゲームのタイトルに合わせてきたとすると面白いなと思いました。


本作の好きなところについていろいろと語ってみました。原作のプレイはやや厳しいですが、興味を持った方はぜひアプリ版からプレイしてみてください。繰り返しますが、スマホアプリも広告なし完全無料ですのでぜひ。
ちなみにFlashのサポート終了に伴い現在ではそのままでは原作をプレイすることはできない状態ですが、一応プレイ可能な方法が2通りあります。1つはブラウザにRuffleを導入すること。私が普段使っているブラウザはGoogle Chromeですが、拡張機能としてRuffleを入れることで問題なくプレイ可能であることは確認しました。(確認した環境:Windows 10 Home 20H2, Chrome 92.0.4515.159, Ruffle nightly 2021-07-03)
もう一つは、原作ページで用意されているDL版のswfファイルをDLしてきてローカルで再生する方法です。flash playerのexeファイルが必要ですが、このサイトなどから持ってくることができます。DL版のほうが画質が良いようなので、こちらをお勧めします。
同じFlash版でも、ブラウザ版とDL版ではエンドロールでの手紙の内容にほんの少しだけ違いがあります。気になった方は注目してみるといいでしょう。このエンドロールの演出もすごく好きですね。エンディングテーマのリズムに合わせて文面が表示されるのも気持ちがよいところでしょう。ただし、DL版の"看護士"は"看護師"が正しいでしょう。同じ手紙内で"看護婦"という表現も残っていて統一されていなかったのもあり、少し気になりました。ちなみに一応調べたのですが、法改正により看護婦という呼称を使用しなくなったのは2002年のようですね。2021年現在の感覚では看護師という呼び方はかなり定着しているように思いますが、作品公開時点(2007年)でどうだったかは覚えていないのでそんなに厳しく突っ込むところではないでしょうか。


長くなってきたので、今回はここまでにします。私はこの作品をプレイするまで、本格的なノベルゲームをやったことがなく、1話プレイ開始時点では適当な選択肢を選ぶミニゲーム的なものだと思っていました。それが1話を読み終えるころには純粋に物語に夢中になっていました。物語が終盤に近付くにつれ、まだ終わってほしくない、もっと読んでいたい、と強く思ったのを昨日のことのように思い出すことができます。ぜひ皆さんにもこの気持ちを味わっていただきたいと思っているところです。

それでは。

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