フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
初めての方は、ぜひごあいさつをご覧ください。評価の基準については、レビューについてに記してあります。
記事一覧ページを作りました。記事探しはこちらから。Twitterはこちら。リンク等はご自由にどうぞ。
YouTube始めました。フリーゲーム攻略動画などを投稿してます。

転生・転移

こんにちは。今回は以前から紹介しようと思っていた作品、Shadow's Silhouetteさんの「勇者はG○○gle翻訳で世界を救うことにした。」のレビューをしていきたいと思います。

(6/30追記:タイムアタックの記事を書きました。動画付き解説記事となります)

google1

ジャンル:再翻訳おつかいタイムアタックRPG(ReadMeより引用)
プレイ時間:1プレイ3分~、完全初見からエンディングまで5時間くらい
分岐:なし
ツール:RPGツクール
リリース:2020/4初公開


私は以前からShadow's Silhouetteさんの作品はかなり好きで、本作も非常にやりこんだのですが最近は公開停止となっており、今更レビューを書くのもなあ…となっていました。しかし先日再公開されたので迷いなくレビューを書くことができます!


本作の導入はよくある異世界転移ものそのものです。主人公(デフォルト名は鈴木)は突然異世界に勇者として召喚されてしまいます。ここで何か特殊能力が手に入って無双する…というのがお決まりのパターンですが本作は違います。そもそも異世界の言葉を理解することができなかったのです。
そこで役に立つのが機械翻訳。なんと異世界語でも翻訳できてしまうようです。しかし機械翻訳は完璧ではありません。日本語としてこなれていない文面や誤訳なども含まれています。それを何とかプレイヤーの力で元の文章を補完することで召喚者たちと意思疎通したり町の人々から依頼を受けてクエストをこなしていったりするのです。
異世界でレベルアップした主人公が最終的に目指すのは魔王の討伐。このラスボスは主人公が召喚された拠点から直接行けるので、やろうと思えばゲーム開始直後から挑むことができます(当然負けますが)。このシステム、「隣の部屋にラスボスがいる。」を思い出します。ただし本作はラスボスを討伐するというRPG的な要素よりも、道中のADV的要素がメインとなっています。


本作は翻訳部分を除いてしまうと、多数のサブクエストのある短編RPGということができるでしょう。町には多数の住人がおり、その多くが何かしらに困っているようです。彼らに話しかけて依頼を受け、達成することでお金を手に入れてレベルアップや装備購入の原資にすることができます。
人によっては”お使い”と呼ばれてRPGの本筋に関係ない蛇足の部分とみなされる要素こそが本作のメインとなっているわけですが、そんな中途半端ともいえる要素を1つのゲームとして楽しめるような工夫を2つ感じ取りました。

1つは先ほどから出ている再翻訳要素です。いかにG〇〇gle翻訳優秀といえど完璧ではありません。異世界語を日本語に翻訳するときにどうしても脱落してしまうニュアンスがあったり単純な誤訳と思しき語句があったり。そんな微妙な訳文から本来の依頼がどんなものであったかを推測してクエストをこなしていく必要があるのです。
google2
例えばこちらの依頼。「蝶が欲しい-約5」
語順などが不自然ですが意味は伝わるなあといった依頼文です。しかし次の場合はどうでしょう。
google3
「同僚がスキップしています。少しscられますか」
はっきり言って意味不明です。この文章から依頼を推測して達成方法を見つけて実行するには試行錯誤が不可欠でしょう。他にも「女性の傑作が見たい!」「友達になる3人について学びましょう!」などの元の依頼からかけ離れた訳文が多数登場し、さながら謎解きゲームのようです。

エンディング到達後の2周目モードでは謎のこんにゃく(どう考えてもドラえもんに出てくる翻訳こんにゃく)を食べることでゲームを原文でプレイすることができるようになります。このモードでは時間制限などもないためゆっくりと町を回りながら住人たちと会話していくことができます。こいつらこんな口調でしゃべってたのかとか、意外と時限会話が豊富に用意されているんだなとかいろいろな気付きに出会えると思いますよ。


さて、工夫の2点目はタイムアタック要素です。G〇〇gle翻訳には主人公の持っているスマホアプリを使用しているのですがなんとバッテリー残量が初期状態で3分しかありません。依頼で得たお金で消耗品の魔法石を買うことによって充電することができるため、探索の1秒1秒にお金が消費されるのと同じ状態なのです。
初見の状態では3分間で依頼を1つか2つこなすのが精一杯でしょう。何度も探索に出ることで次第に効率的な周回ルートを開拓し金策の効率アップを目指しましょう。バッテリー残量に余裕が出てきたら経験値を購入することで主人公をレベルアップし、探索範囲を広げることができます。そしてまた新規の依頼を開拓して依頼文の解読をして…。こうした拡大再生産に似た楽しみも本作のゲーム性の1つでしょう。

本作を普通にクリアするうえではタイムアタックを極める必要まではありません。ゆっくりでも周回を繰り返すことで十分にお金を貯めることができるでしょう。しかし私はそれだけでは満足しませんでした。一体どのような順番で依頼を受け、どんなルートでこなしていくことで最速で依頼コンプリートができるのかを追求します。私のタイムアタックの結果については次回の記事で詳しくご紹介したいと思います。


さて、システム面において工夫されていてプレイしやすいと感じた点がいくつかあるので紹介しましょう。
本作では合計70もの依頼が存在するのですが、この依頼を受けるためには別のこの依頼を片付けていないといけない、というような条件が多数存在します。そうすると同じマップの中でも”今話しかけられる人”と、”フラグ不足で依頼が進行しない人”が混在することになります。多数の依頼を同時進行していると混乱しやすいのですが、本作ではシステム的にこの2種類の人が区別されていて、フラグを進行できる人だけ歩行グラフィックになっているのです。つまり最速でクリアしたいときは歩いている人だけに話しかければよいし、逆にフレーバーテキストを楽しみたい場合は立ち止まっている人に話しかけてみればよいでしょう。
さらに依頼が終了するとその人は透明化してすり抜けられるようになります。これはタイムアタックの意味でも結構大きな変化だったりします。

また、依頼一覧画面もうれしいですね。私はもう全依頼を暗記するほどやりこんでしまったのですが、初見の時は重宝しました。
google4


さて、これらの仕組みを活用しながら周回して十分お金を稼いだら、レベルアップと装備購入に使ってボス戦に挑みます。一応異世界に召喚された目的がこのボス撃破で最終目標でもあるのですが、これに関しては正直おまけ感が強いです。本作をRPGとして考えるとこの戦闘には物足りなさとか単調さを感じてしまうと思います。
しかし本作の肝(と私が考えるの)は「再翻訳おつかいタイムアタック」の部分です。機械翻訳で遊んだことがあったり、RPGのサブクエストを埋めていくことに喜びを感じる方なら本作もたっぷり楽しめるでしょう。タイムアタックのためのルート構築頑張るぜ!という方はぜひチャレンジしてみてください。私の記録はそう簡単には破れないと思います。次回の記事で挑戦お待ちしています。


それでは。

こんにちは。今回は先日公開のねこのさんの新作、「ありすすとーりー」です。
(1/21追記:難易度Extremeの攻略記事を書きました。こちらです)

AliceStory1

★favo
ジャンル:アクティブタイムバトルが楽しめる、かわいいアドベンチャーRPG(ReadMeより)
プレイ時間:難易度Normalで5時間~(難易度によって大きく変動します)
分岐:なし
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2023/1


本作に関しては制作過程をTwitterで拝見していました。
ありすシリーズの前作である「ありすえすけーぷ」をめちゃくちゃやり込んだ私は本作の公開も楽しみにしていました。つい昨日ようやく実績コンプリート出来たのでレビューを書いていきたいと思います。



まず前提として本作はノベルゲームコレクションで公開されているフリーゲームです(ふりーむでも公開されています)。ということはティラノスクリプトで制作されているのですが、プレイしてみたら思っていた以上にRPGでびっくりしました。メインシナリオの途中でイベントが挟み込まれ、そこで戦闘があるのかなくらいのイメージだったんですが(「せつなゆ魂」の戦闘イベントが増えたものみたいなイメージ)、本作に関してはツクールやウディタ製のRPGと変わらない感じでした。


ではゲームを開始していきましょう。New Gameをクリック。難易度はまずはNormalかHardが選べます。Hardは結構難しいので自信のある方のみ選ぶとよいでしょう。

導入の部分がシリアス目な感じだったのでやや意外に思いつつも、すぐに「ありすえすけーぷ」「ありすすいーぱー」のようなノリに戻ってきます。今回はまさかの異世界転移を果たした主人公のありす、今作で初めて苗字が明らかになります(有栖まゆがペンネームであり本名ではないというのは確か作者さんTwitter情報で知っていました)。そしてすぐさまスライムに襲われてラッキースケベ(?)イベント発生。そうそう、こんな感じだったよな~という謎の安心感が私の中に広がりました。

異世界で出会った妖精のリリィとともに妖精王を訪ね、元の世界に戻してもらえるよう依頼することにします。冒険の始まりです!

本作の戦闘システムはジャンルにも記載した通り、アクティブタイムバトル方式となっています。私がこれまでレビューした作品の中では、「キミだけのパーリナイト」が最も近いでしょうか。リアルタイムでアクティブゲージが増えていき、満タンになるとコマンドを打つことができます。新しいスキルを習得していると例外も出てきますが、基本はゲージが満たされるたび攻撃コマンドを打ってダメージを与えることの繰り返しです。
このシステムに関して、よくこれをティラノスクリプトで実装したなと思うほどよくできています。私がプレイした中ではバグみたいなものにも当たりませんでしたし、全12種のスキルの組み合わせ方で思っていた以上に戦略性のある戦闘が可能になっています。特に高難易度のボス戦に挑んでいると嫌というほど対策用の戦略を練ることになるのですが、それに関してはまた今度語りましょう。
AliceStory2


探索シーンに関しては前作っぽく探索ポイント選択式となっています。ここでプレイヤーへのやさしさであふれているのは、探索ポイントで起こるイベントの確率がすべて開示されて、さらに見たことのある結果については内容も記録されている点です。5%ならまあ出るまで粘らなくてもいいだろうとかいう判断がしやすいですし、あの敵とエンカウントする可能性が高いのはどこかとかも探しやすくなります。


中ボスを倒して冒険を進めていくと章も進行し、それに合わせて現実世界の物語も進んでいきます。導入部分のシリアスな展開が続き、語り手がありすであることも分かります。しかしこの時点では最終的にどう異世界での物語と結びつくのかが見えず????という感じでした。この繋がりの部分に関してラスボス戦後にきちんと決着するのが気持ち良かったですね。私は初見Hardで挑んだんですが、なかなか難しかったのでようやくラスボスを倒し切った安堵もあってなんだか感動しちゃいました。Extremeではラスボスのギミックなんかもストーリーを意識した名前や効果になっていてニクいですね! (戦闘中はそんなこと味わっている余裕は一切ないんですが)難易度Extremeを攻略した者の特権です。
ちなみにこのエピローグシーンでかかるBGMに私は聞き覚えがあって、なんだっけとしばらく考えていたんですが、音楽の卵さんの「無限大の小部屋(オルゴール)」でした。私が知っていたのは原曲版だったんですが、そちらも主旋律がオルゴールだったので混同して思い出すのに時間がかかったみたいです。そのあと作内でも原曲版も流れてきてやっぱり複数パターンあったんだと納得。今の私は本作のクライマックス効果で無限大の小部屋とシャイニングスター(EDテーマ)聴いたら泣きそうです。


さて、本作にはほとんどのシーンで台詞にボイスが付いています。主人公ありすについては前作同様ですが、今回は他にも3人(3体?)のキャラがいて、それぞれにきちんと声が付いています。公式サイトからサンプルボイスが聞けるので私は少し楽しみにしていました。リリィちゃんの「えいっ! ってやってみてください」がなんか可愛いな~と思っていたんですが、あれ本当に魔法の使い方を指示するときの台詞だったんですね…ありすの言う通り教えるの下手すぎる。
AliceStory3

そんな新キャラリリィちゃんも登場する隠しイベントは必見ですよ。(公式攻略ページを参照するのは前提として)2周目をプレイすれば簡単に見ることができます。
1つ浮かんだツッコミは、「湿ってるタイプの人って梵天使うの?」

それ以外にもちょっぴりえっちなイベントは前作にもまして盛りだくさんなのでそちら方面も期待していてください。謎の触手に絡めとられたり、きのこから出る白い液体を飲んだりとやりたい放題。パンチラとかいうレベルじゃないいつものアレももちろんあります。


そして私が見た範囲では指摘している人がいなかったので誰も気づいていないのかもしれませんが、上級クリスタル生成(いわゆるガチャ)のエフェクトが、Aランクが当たった場合のみ豪華になってますね。しかも特殊エフェクトが3種類ほどありそう。シリーズ他作品のレビューでも指摘しましたが、普通にプレイしてたらそこまで見ないだろというところまで細かい差分が用意されているの、凝っていて良いですね。


最後に戦闘部分に関する汎用的なアドバイスをしておきましょう。
  • 作内ヒントやヘルプはきちんと読むべし!
  • スキルは組み合わせ次第で効果が大きく変わるので実戦で学ぶべし!
  • よほどいいPCをお使いの方以外は戦闘エフェクトを中画質以下にすべし!
    (終盤のボス戦は高画質ではかなり重くなります)

Extreme攻略の具体的戦略はまた次回ということで。
それでは。

こんにちは。今回はamorosoさんの「CHOICE」のレビューです。

CHOICE1


ジャンル:ファンタジー乙女ゲーム
プレイ時間:フルコンプまで6時間程度
分岐:大きく攻略対象2人に分岐。エンディング計11種
ツール:吉里吉里
リリース:2011/4
備考:15禁。攻略対象の増えたシェア版もあり。本記事はフリー版でのレビュー


本作はちょっと変わった経緯で発見した作品です。私が何となくYouTubeを開いてみたら、本作のPVが流れてきたんです(フリーゲーム関連のものを見るアカウントには入っていないときだったのでなんで突然トップに表示されてたかは謎です)。ふりーむ等で公開されていないのでこれまで全く知らなかったのですが、面白い作品でした。


主人公は短大を卒業して派遣社員として働く桜木花梨(名前変更可)。仕事から帰ってきたところ、突然異世界に転移してしまいます。どうやら目の前にいる明らかに王子の格好をした少年が召喚魔法で呼び出したらしいことが分かります。突然召喚されて訳も分からず、とりあえず元の世界に戻すことを要求しますが、王子は何と送還に失敗。花梨は見た目5歳ほどの子供の姿になってしまったうえ、呪文の記された魔法書は焼失してしまいます。帰る術を失った花梨は、旅に出ているという王子の魔法の師匠、セフィさんの帰還まで異世界で過ごすことになるのでした……


今でこそ異世界転生ものラノベやアニメは流行していますが(とはいっても私は全然見たことないけど…)、本作の公開は2011年。10年前にこの概念あったんだな~というのが一つ学びでした。
そしてもう一つ、本作の肝となっている設定が”幼児化”。某体は子供、頭脳は大人な名探偵はもう不自然というかバレバレだろ、みたいな言動が多いですが、本作の花梨はあれよりはうまく子供を演じてます。そのうえで子供ならではの方法で交渉したり、あるいは脅迫したりと大変強かで面白かったです。


異世界の召喚されたその日、王子は喋られると面倒くさいからと花梨に声が出ない魔法をかけたうえ、第三騎士隊の隊長クラウスと副隊長ルカを呼びつけ、セフィが帰って来るまでの間子供になってしまった花梨の世話をするよう言いつけます。ここでクラウスを選択するかルカを選択するかで本作のシナリオは大きく2つに分岐します。私はまずクラウスルートに入ることにしました。


第三騎士隊の隊長を務めるクラウスは常に多忙。そして愛想のいいタイプではない上に不器用なため、花梨は冷たい人という第一印象を抱くことになります。確かに突然異世界に召喚された(見た目)5歳の子供に向こうの寝室で一人で寝ろと要求したりするのは配慮不足かもしれませんね。しかし彼はただ不器用なだけで、実際に冷淡な人というわけではないことが次第にわかってきます。この流れと花梨の心情描写が巧みでとても楽しく読めました。

こうしたシリアスな部分もありつつ、子供になってしまったという設定からコメディ的な部分もあります。お風呂一人で入れる? とか、食堂に行ったらお子様ランチが出てきた! とか。騎士たちが我先にとデザートにイチゴをあげようとしてくる場面とか、もはや花梨よりも騎士たちがかわいい!

CHOICE2

ルカルートではちょっと雰囲気が違います。ルカはクラウスとは違って勘もいいし愛想笑いもします。しかしその正体は大のいたずら好きでした。花梨のことを”隊長の隠し子”と言って妙な噂を流させたり、セクハラまがいの行動をして騎士たちをからかったり。そんな様子に花梨は、「子供相手なら分かるけどあたしは中身大人なのに~」みたいな感じで恥ずかしがったりというシーンがクラウスルートよりも目立ちます。私はこの感じよりクラウスみたいに冷たく見えたけどちゃんと愛情を感じる、みたいな展開の方が好きでした。(というか流石にこの行動はどうなの? と思ってしまった)


さて、どちらのルートに進んでも5日目くらいには物語が大きく動きます。ルートによって事件の詳細は違いますが、どちらにせよクラウスとルカがお互いに信頼し合ったうえで解決に動いていくのが良かったです。ルートに入ったキャラ以外がフェードアウトしてしまう作品も多いですが、それ以外のキャラとの交流なども描かれると物語の中で生きた存在として読み手の印象にも残るんじゃないでしょうか。
この事件の対処には花梨自身も重要な役割を果たします。子供の姿を利用して作戦を実行したり、大人の姿に戻ってから動いたりといろいろできるのはこの設定ならではですね。

ちなみに本作には立ち絵はありません。子供と大人の違いをビジュアル面で演出したりといったことも可能だったと思うのでそこはやや寂しく感じました。スチルはあるので余計に…。


というわけで「CHOICE」のレビューでした。異世界転生×幼児化×乙女ゲーというジャンルの可能性を感じる作品でした。全体的に男性キャラがかわいい(見た目じゃなくて行動的に)作品だと感じたので好みの方はぜひ!

それでは。

↑このページのトップヘ