フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
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1時間前後

こんにちは。今回は、まゆげさんのStrange meeting!をご紹介します。

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ジャンル:現代舞台の爽やか乙女ゲーム
プレイ時間:1時間
分岐:なし
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2021/4
備考:15推、非倫理的・軽度な性的描写あり

先月紹介したまい、ルームの作者の方の新作です。そちらもなかなか刺激的な作品でしたが、本作はそれ以上のように感じました。皆様、くれぐれも注意書きには従うようにしましょう。

さて、注意喚起をしたところで、本作のあらすじの紹介に移りましょう。主人公で花屋店員の百井ハル(名前変更可)は上京して2年。家庭の事情で大学を中退せざるを得なるなど順風満帆とはいかないまでも、職場での人間関係や喫茶店巡りの趣味など充実した生活をしている。最近の悩みは付き合っている彼氏がやたらお金の無心をしてきて関係がぎくしゃくしてきたこと。そんな中、喫茶店でたまたま出会った不思議な男性、順(すなお)に惹かれていく……。

このすなおがまた爽やかでいい人なんですよ。ハルも評したように子供っぽいところもあるんですが、それが欠点に感じない、むしろまっすぐな人で安心できるような感じなんです。そして主人公のハルもまた素直で可愛らしい。自分の分がないことを忘れてお客さんに傘を貸してしまうくらいのお人よし。こんな2人の恋路ならいくらでも応援してやる!という気持ちでプレイしていました。

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特に好きだったのは、ハルが薦めた映画に関するくだりです。やっぱり自分が好きなものについて語って相手の方にも受け取ってもらうのってすごくうれしいじゃないですか。だからこそ私はこうしてレビューを書いているわけです。
そんな映画ですが、実はすなおはもともと映画に何の興味もなかったことが妹によって暴露されます。つまり、ハルと話をしたくてちょっとした噓をついていたのです。このシーン、読んでいるこっちまで恥ずかしくなってしまうようですごく良かったです。

さて、そんなハルとすなおですが、ハルの彼氏、順(じゅん)はなかなかひどい人物です。ホワイトデーのデートの誘いを断るのみならず、その日に借金の依頼をするとは物語冒頭から全力で読者の好感度を下げにかかってます。ハルもお人よしだからそれに応じてしまいます。第三者の視点に立てば、いやそんな彼氏とはさっさと別れろよ、と思うのですが、自分の問題となるとなかなか簡単には割り切れないですよね。彼が優しくて気持ちがハルに向いていた頃のことを思い出しては現状とのズレに落胆する描写はなかなかリアルだと感じました。

しかし、あの「まい、ルーム」を作ったまゆげさんのことだから、これだけのことのためにあんな注意書きは書かないだろうと私は警戒を怠らないようにしてプレイしていました。すると、やはり後半で本当にひどい発言が彼の口から飛び出します。単純にひどいだけでなく、倫理観どうなってるんだと疑うような内容です。
しかしハルは強かった。じゅんのこの発言で吹っ切れた彼女は、ようやく別れを切り出すことができます。イライラや悲しい気持ちから、何の落ち度もないすなおに当たってしまう場面もありますが、すぐに自分の失言に気付いて謝れる。本当にいい子ですね。

この、じゅんがどうして付き合いだした頃から変わってしまったのか、という点に対する描写が全然ないので、そこは物足りなく感じました。クリア後のキャラクター紹介を読むと、結構細かい裏設定があるようなので、そのあたりのエピソードをうまく本編中に組み込んでいけば説得力のある展開になったのではないかなと思います。
キャラクター紹介自体は意外な設定なんかもあって楽しめました。猟師と孫なんか可愛くていいですね。美容師の方は…なかなか壮絶な経験をしてますね。

本作は基本シリアスな展開が続きますが、ところどころ息抜きのようなシーンもあります。特徴的なのは変顔の多さでしょう。びっくりしたときやショックを受けた時の顔は、これ乙女ゲーか?となるほど笑えます。その他にも時々クスリとできる会話があります。「ネカマだと思った」ネタとか好きです。

というわけで、今回はStrange meeting!を紹介しました。だいぶクソな男に嫌なこと言われますが、最後のハルの笑顔を見ると幸せそうでいいなという気分になれますよ。髪を切ってさっぱりしたところで、おっかわいいなんて思ったりしていました。


さて、以下はレビューとは言えない私の感想の羅列です。
ネタバレ全開ですので、おまけまですべてプレイしスチルリストを埋めた方のみ読んでください。

クリックで展開 くれぐれもフルコンプした方のみの閲覧でお願いします。


クリックで展開







騙されたあぁあああぁ゛あああぁぁ

うわぁぁあああん(発狂)

なんだお前!!!
絶っっ対に許さねぇからなァ!
なにがすなおだよ、とんだ嘘つきじぇねえか
どの口で
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こんなこと言ってんだよおおぉォォ!


…………失礼しました。理性がどこかに行ってしまいました。
にしても今回はすごかったです。もうこの胸糞悪さは私がプレイした作品の中では、禁飼育さんの処女失格(18禁)と一二を争うレベルと感じました。

しかし騙された私が悪いです。だっておまけに入る前に作者さんはこんなに
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警告してくれたんですから!

そういえばTwitterでも"前作「ヤンデレ的×日常ごっこ」のおまけが大丈夫な方向け"と書いてありました。前作でも確かにおまけはこんな感じだったのですが、ここまでショックは受けなかった。なぜだろうと考えたときに、やはり私は油断していたという結論になりました。上述したように私は、本作の"人を選ぶ要素"とはじゅんが「体を売ってでも金を稼いでよこせ」と言ってくるところだと思ってしまいました。結果、今回のこの警告の"人を選ぶ要素"は、「まい、ルーム」のおまけでそうだったような、シリアスブレイク要素だと思ってしまったんです。
また、前作では本編エンディングがかなり闇なんですよ。だからおまけも胸糞悪いだろうなというのは見当がついたんですが、本作では本編エンディングがあの爽やかさですからね……落差が半端ない。

とかいろいろ書いてきましたが、私はこの作品は騙された点も含めてとても楽しめました。ハルには何とか幸せになってもらいたい。ただ作者さんにうまくしてやられた点だけが悔しい(笑)
にしても乙女ゲーやるつもりだったのにモールス信号とか文字化け解析とかやることになるとは思いませんでしたよ。
次回作も期待しています。次は絶対に最後まで警戒を怠らないぞ!という強い決意を抱えて待ってます。

それでは。


記念すべき初のレビューでは、mint wingsさんのココロ、そらいろ。をご紹介します。kokosora1


ジャンル:ほのぼの日常ノベルゲーム
プレイ時間:1時間弱
分岐:なし
ツール:NScripter
リリース:2015/4


本作は、なんとなく学校に行きたくなくなってしまった小学校6年生の主人公いつきが、保健室登校を続ける中で同じく保健室登校のゆず、もとなりや養護教諭のあおき先生との交流を重ね、成長していくなんとも心温まるシナリオのノベルゲームです。
本作は1話5分以内で読めるような短い話が12話で構成されています。この構成の仕方がうまいです。1話1話がサクッと読めるので負担を感じずにどんどん読み進めていけます。12話で1年間の物語となる都合上、各話の間には1か月ほどのブランクがあるのですが、その間に交流が進んでいるんだろうなと感じられるのもうまい演出だと思います。

いつきたちは保健室登校を続けているということは、彼らの中に何らかの問題を抱えているということです。大人から見たら、小学生なんか無邪気で何の悩みもないように見えますし、子供のころに戻ってのんきに遊びまわりたいと思う気持ちもありますが、まさか本当に悩みがないなんてわけはありません。むしろ子供特有の問題を抱えていたりします。本作では、そんな子供たちの悩みをクローズアップしています。

みんなと同じにするのを拒んだら仲間外れにされてしまったゆず、自分が笑うなんて似合わないと決めつけてしまい笑顔を失ってしまったもとなり。そして"なんとなく"学校に行きたくなくなってしまったいつき。彼らは保健室登校を続ける中で自分の答えを見つけていき、前に進んでいくのですが、それには必ずしも大きな事件は必要ないんですね。日々学校に通う中で、同じく保健室登校の友達や先生と交流を重ねていくと、いつの間にか素直に自分の気持ちを出せるようになったり、悩みなんて大したことなかったなと気付いたりするわけです。その解決の過程を丁寧に描写してくれるので、悩みを解決して笑顔になっていく子供たちを見ていると、まるで自分のことのようにうれしくなり、最後のシーンでは泣きそうになりました。
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グラフィックやBGMも感動の演出に一役買っています。ピアノ曲中心の柔らかい音楽、デフォルメの利いた優しい絵柄はこの作品の雰囲気にぴったりです。クリア後にスチルや音楽の鑑賞モードが解放されるのも良いですね。
システムも必要な機能がそろっていて不満なしです。

いつき、ゆず、もとなりの3人を中心に展開していく本作ですが、あおき先生の悩みが中心となる回が1つあり、そこは物語のテーマと少しずれてしまったんじゃないでしょうか。大人の悩みってそんなに簡単に何とかなる問題でもないことが多いですし……。でも、子供たちが先生を慕っているからこそ答えを出せたという意味ではメインテーマに対しても意味のある話だったようには思います。

さて、ゆずともとなりについては、不登校に至ってしまう原因が割とはっきりしています。問題がはっきりしている分それが解消してしまえば一気に視界が開けるといった感じがあり、2人の立ち直りシーンは微笑ましいだけでなく、納得感もあるものでした。しかし主人公いつきに関しては、そもそもなぜ学校に行きたくなくなってしまったか、自分がダメだと思ってしまったかに関してこれといった理由がありません。同梱のあとがきにも書かれていましたが、"ふつう"の子として描かれているのです。そうした漫然とした悩みや不安って、得てして解決が難しいものです。それが、今までのゆずやもとなりとの交流は前提にあるものの1話で解決してしまっているので、いつきの復活については何となくもやもやが残ってしまいました。それでも最後に中学校の入学式に向かういつきの様子は私にとても勇気を与えてくれるものでしたし、温かい気持ちになれることは間違いありません。

また、物語中で授業参観のシーンがありましたが、自分が小学生の時のことを思い出して懐かしい気分になりました。小学校の授業って、みんな競って手を挙げてたし、めちゃくちゃでも自分の意見を表明してたし、活気ありましたよね。私が眠気を我慢しながら授業を受けるようになったのはいつからだったでしょうか。
この回では、作者さんの過去作(モラトリアム -boys men-:BL。苦手な方は注意)とのつながりが示唆されています。

全体として派手な出来事が起きるわけでもなく、大きな感動を呼ぶ作品でもないですが、子供たちの純真さを見て癒されるような、そして優しい気持ちになれるような素敵な作品ですので、ぜひ読んでみてください。

それでは。

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