フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
初めての方は、ぜひごあいさつをご覧ください。評価の基準については、レビューについてに記してあります。
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2時間前後

こんにちは。今回は虹猫さんの「RトR」をレビューしていきたいと思います。

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ジャンル:百合サスペンスノベルゲーム
プレイ時間:3時間
分岐:なし
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2025/4
注意:15禁

先週ノベコレの作品を漁っていて、「グリーンベルの花言葉」という怪作に出会いました。普通のツンデレ百合ものかと思いきやいきなり谷底まで突き落とされ、いや違う、ここは常識の異なる異世界なのでは?となったり宇宙遊泳のようなふわふわ感が漂ったりと、わけわからないジェットコースターに乗せられた気分になる作品でした。
面白かったは面白かったのでコメント書きつつ作者さんの他の作品を見てみると、あの有名な「1人殺すのも2人殺すのも同じことだと思うから」の作者さんであることにようやく気付きました(まだプレイしてはいないのですが)。

そんな流れで本作を見つけてプレイし始めたのですが、やはり一筋縄ではいかない百合を描いた作品で面白かったのでブログでご紹介します。


主人公の桜小町(さくら・こまち)はキリスト教系の女子高に通う高校2年生。家庭の事情があり、学校へは寮から通っています。所属する漫画・アニメ部では、同級生の紅葉楓(もみじ・かえで)、先輩の瑠璃茉莉(るり・まつり)、そして後輩の八雲アリスと楽しく過ごしています。
そんな彼女の悩みは、女の子に異様にモテること。進級して1か月経ち落ち着いた4月30日には親友だと思っていた楓にキスされてしまいます。寮の自室で困っていた時、なんと楓が刺されてしまったという知らせを受けます。失意の中で迎えた翌朝、彼女の身にはさらなる衝撃の事実が明らかになります。今日も4月30日だというのです!

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というわけで本作はループものになっています。時計と鎖に絡めとられたタイトル画面から察した方もいるかもしれません。本ブログでは「スノードームは夢を見るか?」以来およそ2年ぶりです。ループものというと大抵、なぜ(何の力によって)ループするのか、ループを抜け出すにはどうしたらいいのか、といった要素に焦点が当たります。しかし本作においてはポイントとなる要素は少し違っています。まず「何をトリガーとしてループが発生するのか」すら分からないのです。

本ブログでこれまでに扱ったループものは4つありました。「スノードームは夢を見るか?」でも「クロノスの箱庭」でも、「決戦前のヒトリ」でも「黄昏が落ちてくる街に」でも、ループの発生は主人公や重要人物の死によって発生しているのが明らかでした。しかし本作においては、単純に人が死んだら日付が戻るわけではありません。しかも毎回同じ日に戻るわけではなく、何事もなく日付が進んだかと思いきや2日戻ったり、突然4日も戻ったり。まずこの不可解な仕掛けがかなり珍しく、私の心を釘付けにしました。

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そうしてもう一つ、本作における百合という要素も本筋に大きくかかわってくることになります。ところがこれも王道となる要素からずらしているのです。過去にレビューした「PaintPain ~少女はメイドの手をとって~」「泡沫の花が散る」ではどちらの百合も、お互いにそう望んだ結果でした。しかし本作における主人公の小町は女の子に恋愛的な意味での興味はなく、次々と告白してくる友人たちや部活の仲間に困惑しているのです。

さらにはこの女の子に異常に好かれやすいという小町の”体質”は先述した家庭の問題ともつながってきます。直接の原因である母親の入院、そして妹である吹雪との不仲の原因までもこの体質に求めることができます。
初見だとこの吹雪は小町に対してやたら敵対的で嫌なキャラなのですが、読み進めていくうちに彼女の気持ちも分かってくるし守ってあげたくなるんですよね。なんといっても彼女の言っていることは正しいのですから。


ストーリーを読み進めていくと、時折小町以外の人物の視点で語られる部分があります。瑠璃先輩だったり、楓や吹雪だったり、そしてアリスだったり。彼女らの主観が描かれることによって、小町がこのループの世界に閉じ込められたのは必然であったというのが徐々に明らかになっていくのです。ここがまたうまいところで、特殊な体質を持つ小町を中心としてみなが次第に狂気に蝕まれていったことに合点が行きます。小町の主観では被害者でしかないわけですが、全体を見ていくとむしろ発端ともいえる。そんな展開となっています。
これまでも何度か言ってきましたが、こうした明らかな悪人がいるわけではない中で皆が狂っていったために起きた悲劇というのは私の好きな展開でもあります。あえて一番悪いのが誰か、と聞かれたら、私は瑠璃先輩と答えるでしょうか。

それでも私は、小町が好きだし一番応援してあげたくなるんです。なぜなら、私と似ていると感じるからです。

以下、核心に繋がるネタバレがあります。OKな方は展開して読んでください。

ネタバレあり(クリックして展開) 吹雪は小町を評してこう言いました。「お姉ちゃんのいい所は優しい所かもしれない。誰にでも優しくて、温かくて。でもね、私はそれが悪いところだとも思ってる」。そう、小町は間違いなく”いい子”であってむやみに人を傷つけることはしないし、よほどのことがなければ人に否定的な言葉をかけることもありません。そんないい子は高い確率で”優しい嘘”という病に侵されているんですね。

本作におけるループのトリガーとなるのは、小町が嘘をつくこと。終盤でそれが明らかになった時、私は文字通り震えました。こんな怖いことがあるかと。
小町がつく嘘はどれも悪意に基づくものではありません。誰かを守ろうとしたり、事態をややこしくしないためであったり。人が良好な社会生活を送るためには、こうした適切な使い方での嘘は必須でしょう。
謎が解けてから改めて前半部分をプレイし直すと、小町が嘘をついた場面がプレイヤーにもしっかりと提示されていたことが分かります。私でもそこは嘘でごまかすだろうというシーンばかりなので本当につらい。

小町は結局このループの謎を解くことができず、4月の間の日付をうろうろしながらただ心を弱らせていくばかりです。弱った心を守るためにも嘘で武装しなくてはならなくなったのでしょう。
バッドエンドのループものは何気に初めて見たかもしれません。あのシュタインズゲートでさえハッピーエンドがあるのに! いや、これはタイトル画面の生気を失った小町のイラストから察するべきだったかもしれません。他の作品を含めて、全く油断ならない作者さんです。



ループ、そして百合。どちらも題材としてはよくあるものでありながら、王道とは少し離れたところを狙っている本作。斬新すぎない程度に目新しさのある良作ですのでぜひプレイしてみてください。
一筋縄ではいかない物語ですので、くれぐれもご用心の上お楽しみください。

それでは。

こんにちは。今回はしろ∽うささんの「ねじまきマキナ」のレビューをお送りします。

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ジャンル:ファンタジーノベルゲーム
プレイ時間:エンディングまで1時間程度。フルコンプまで2~3時間
分岐:ED3種
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2023/8


本作は3部作の完結編として銘打たれている作品となります。同作者の「飛びたいの」「私を人間にしてください」のキャラクターが登場するので、先にこれらの作品をプレイしておくと本作のプレイ中ににやりとできる箇所があるでしょう。どちらもエンディング回収1時間以内の短編です。
本作単体でもストーリーは問題なく楽しめますので、時間がない方やグロテスクなシーンは苦手な方(「私を人間にしてください」はR15相当の描写があります)は本作からプレイしてみるのがいいでしょう。本作単体は全年齢対象となっています。


そんな完結編である本作は、過去作のキャラクターとは全く関係のないシーンから始まります。間抜け面ともいえるような”ポンコツロボ”の様子を喜劇調に描きます。感情(らしきもの)を持つロボットのマキナは、現代の視点から見ると高性能ロボといえそうです。しかし人間のように汎用的な仕事・物理的な仕事をさせようとするとまだまだのようです。マキナを作った科学者がその無能ぶりに頭を抱えるところでこのシーンは終わります。

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一旦タイトル画面に戻ると、今度は大けがを負って地上に墜ちていた天使とそれを拾った人間の話になります。その哀れな姿を見て放っておけない人間ですが、天使には何かやり残した大切な用事がある様子。その目的は果たされるのでしょうか…。

こんな感じで1シーン3~5分くらいの短い話が、毎回登場人物が切り替わりながら進んでいくのです。舞台となるのは3つの世界。最初に登場した、ロボット工学の技術は進んでいるが同時にその技術は軍事転用もされ、悲惨な戦争が延々と続くディストピア世界。次に登場する、人間界に墜ちてきた満身創痍の天使と善意の人間が交流するファンタジー世界。もう一つは、一緒に天界に行った天使と少年の、「飛びたいの」に登場した世界です。

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最初のうちはこれらの話の関連性が見えてこず、単体の話としては面白いんだけれどどういう意図なのだろうと疑問でした。しかし中盤以降これらの世界のかかわりが見えてくると、一気に視界が開けてくる快感があります。

あまり詳しくしゃべってしまってもネタバレで興がそがれると思いますので、1つだけ。
3つの世界を横断して最も重要な存在となるのは、タイトルにもあるマキナです。家事・看護用ロボットとして博士の手で生み出された彼女。人間に近い見た目を持ちながら、機能や動力、寿命も大きく異なるロボット。作内でしきりに引用されるアシモフのロボット工学三原則に縛られる存在であり、クラウドコンピューティングの普及によって見た目の個体と論理的な個体が一致しなくなった存在。これらの設定が融合してあの結末にたどり着くのがうまいですね。

マキナに使われている技術が普及するほど科学の発展した世界で、それが軍事に転用されたうえで世界大戦なんて起こってしまった日には、人類の滅亡まで一直線かもしれません。そんな滅亡世界と死を前にして人間は何を望むのか。輪廻転生があったとしたら死者の魂はどう裁かれてどう生まれ変わるのか(この辺りの設定は「私を人間にしてください」プレイ済みだと分かりやすいと思います)。天使は天界でどのような仕事をしているのか。こういったSF要素とファンタジー要素がミックスされ、本作はかなり壮大なテーマに挑んでいるといっていいでしょう。


さて、物語のテーマから離れて演出方面の話をしましょう。
上の説明からも読み取れるかと思いますが、本作は結構重めの問題提起をはらんでいます。しかし全体の雰囲気としては深刻な感じは薄めで楽しく読める調整となっています。これはまずボイスの貢献があるでしょう。フルボイスではなく文章の冒頭や間投詞などが音声付きになる程度ですが、マキナの能天気な声色は、各シーンのコメディ的要素を引き出して場の雰囲気を明るくしてくれます。天使たちの困った声、博士の冷静な声などメリハリが効いて読みやすさの向上にもつながっているように思います。音声は短めなのでプレイヤーの読む速度に縛られないという意味で、これはむしろフルボイスでないからこそかもしれませんね。

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また、タイトルに含まれる通り、本作にはネジをモチーフにした部分が多数見受けられます。タイトル画面にあるロゴもそうですし、文章送り待ちで表示されるアイコンなど細かい部分もあります。物語中盤で、単にロボットに関係した話であるという以外の意味が語られ、なるほどと思いました。
キャラクターの立ち絵についてはやや独特な画風と感じますが、戦争の絶えない人間世界でもファンタジー世界でも、異種族交流をしている感が出ていて良いですね。人によっては一部イラストがグロテスクと感じられそうなので注意が必要かもしれません(先述した通り年齢制限がかかるほどではありません)。

逆に気になる点としてはフラグ管理が甘そうな点が挙げられるでしょう。一つのシーンを読み終わると次のシーンが解放されるという仕組みですが、その解放状況がロードされないのかゲーム起動直後は必ず初期状態になってしまいます。先の章のセーブデータを読み込めば一気にそこまで進むことはできるのですが不便です。また、過去の章をプレイし直した際も次の章にまたNEWマークが出てしまう場合があるので若干の違和感があります。新規に読めるようになったシーンに印をつけておくというのは親切な仕組みだと思うのですがあと一歩という印象。


本作のエンディングは3種類。終盤の選択肢とアクションシーンの結果でEND1とEND2に分岐します。
END3はフラグが特殊なので回収に苦労しました。END1と2の結末を受けての大団円といった内容ですが、私が好きなのはEND2でした。主人公たる人物が報われてる感じがするんですよね。マキナにとっても私の倫理観ではこちらの方が幸せそうに感じます。逆にEND1は無力感に襲われるというか振出しに戻るというか、そんな感じがしてしまいます。

このエンディング分岐は少し変わっていて、END1とEND2に至るルートが複数あるのです。1つの選択肢だけでなく、この方法を試してみたけどやっぱダメだったとか、逆に負けそうなときにそんな手があるのか!みたいなルートもあったりして、それぞれでエンディングに至る過程が少し違うため、エンディングの読み味も辿ったルートによって少し変わってくるかもしれません。


というわけで今回は「ねじまきマキナ」のレビューでした。
バラバラな点から始まったそれぞれの物語が交差し、1本の筋になっていく様子はそれこそねじ止めすることで組み立て作業が完了し製品として完成するような気持ちよさです。あなたは最後の最後、どのような形で物語を組み上げるでしょうか。ぜひご自分の目で確かめていただきたいなと思います。

それでは。

こんにちは。今回は伏見のヒナタはんさんの「立ち絵が変なポーズの恋愛アドベンチャー あるいはオリジナリティの無い卒業までの日々」です。

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ジャンル:立ち絵が変なポーズの恋愛アドベンチャー
プレイ時間:2時間半
分岐:基本一本道。最後に3つに分岐
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2024/2


伏見のヒナタはんさんと言えば、「まったく証拠は無いですが、あなたが犯人です。」などのミステリーギャグ作品を作っていらっしゃる方です。私は本作の発表を目にしたとき、今度はギャルゲーを作ったのかと思うと同時に、出オチネタかあるいは「クリーチャーと恋しよっ!」シリーズのようなごく普通のシナリオ+ナンセンスな立ち絵といったスタイルを想像しました。しかし実際にプレイしてみるとそれらとは全く異なるスタイルで、最初から最後までボケまくりの超ハイテンポコントのような内容となっており私の予想を大きく上回る作品でしたので是非紹介しようと思いました。


本作の主人公の八倉仁之(はちくら・にの)は高校3年生。通学路で出会った羽撃きらり(はばたき・きらり)や、席が隣同士だった大阪言葉(おおさか・ことは)、担任の観月橋小桃(みづきばし・こもも)らとあれやこれやあってラブコメを展開していきます。

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そのヒロインたちの立ち絵はタイトルの期待を裏切らない姿勢。通学路とか公園のシーンのみならず、授業中でさえこの姿勢を崩しません。とにかくインパクトがあるのは間違いないでしょう。
そのほかは普通のラブコメ…かと思いきや、それは私が本作をナメてただけでした。もはやこの立ち絵が些細なことに感じられるくらいのボケまくり展開で本当にすごい。

私がキャラクター的に好きなのは言葉でした。大阪言葉という名前でこのギャグ系シナリオなら、間違いなく関西弁のお調子者キャラを思い浮かべるでしょうが、必ず予想の斜め上を行ってくれる本作、彼女は名前と実際の性格のギャップに悩めるシャイガールだったのです。(それにしては髪飾りの攻め方すごいけどな!)

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「学年ビリの陰キャが1年で歌舞伎町の四天王と言われるまでになった話」というどこかで聞いたことあるような怪しげな本を信じて陽キャになる努力を続ける彼女、可愛いですね。もちろんあまりに意味不明なので現実ではお近づきになりたくないタイプですが…

そんな彼女にはモノマネという特技がある様子。有名アニメキャラの台詞っぽいネタがたくさん登場。アニメを見ない人でも名前くらいは聞いたことがあるくらいの有名どころからとってきているようで、分かりやすくてよかったです。普段あんなにおどおどしてる人が堂々とモノマネを始めるものですからそのギャップがまた印象的。
途中いろいろなキャラが入り乱れるところがあって、そこはアニメに詳しくない私はどこが何の作品の誰の台詞のパロディなのか全然分からなかったりしたので、キャラごとにフォントが変わったりすると伝わりやすいかなと思いました。


さて、本作で狂っているのは登場人物だけではありません。初見の時私はギャグを通り越してバグかと思った要素がありました。
それは学校のチャイム。普通キンコンカンコンとなるあれを思い浮かべると思いますが、本作のあれはなんなんだ(汗)。直後のテキストであの変な効果音が学校のチャイムだったことを知り、完全に作者さんの手のひらの上で踊らされてたんだなと気付きました。みなさんも一回体験してみてください。本作のおすすめポイントを3つ挙げろと言われたらこれは絶対入ると思います。
ほかのBGMとかの選曲は普通な中にぶち込まれてるのが変態を極めてる感じがします。


レビューを書いていて気付いたのですが、この演出などのシナリオ以外の部分を含めた総合力で笑わせに来る感じはインコさんの「フリーソフト制作過程」シリーズに近いかもしれません。フリーソフトシリーズは主に演出でボケるスタイルでしたが、本作はそれにギャグテキストとイラストによるボケが追加され、よりキャッチーになったというイメージでしょうか。


そんな本作には、エンディングに影響しない選択肢が多数あります。
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直後の展開が変わるだけなのでお好みで狂った選択肢を選んでみてください。結構な頻度で登場するので、選択肢コンプリートするのは大変かもしれません。

メインのヒロイン以外も数人登場しますが、彼らもまた癖が強い。
蹴車先生や百合前さん、本田先生。1回こういう方向で変な人なんだろうな~と思わされてから絶対にその期待を上回る濃いキャラを出してくるので、サブキャラにも注目してプレイしていただきたいです。
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ティラノ製ですがUIは軽快でいい感じ。右上の踊っている人のようなマークがメニューボタンです。レトロな電子レンジのようなチンッという効果音がまた独特のセンスですね。あとは固有名詞にかならず振り仮名がついているのもうれしいところ。これまで見てきたように誰も彼も名前から一味違っているので、読み方に迷わなくて済むのは快適です。
あと少し変わっているのは、教室の窓から見える雲がすこしずつアニメーションしているところでしょうか。スクリーンショットでは分かりませんので是非皆さんの手でプレイしてみてください。


本作のエンディングは大きく3種類。それまでのFree Optionで何を選んだかに関係なく、最後の選択肢のみで誰とのエンディングに行くか決定します。
そしてここでもボケが挟まるのは流石。油断してると最後の最後で刺されちゃいますよ!
ちなみにこの選択肢画面ではメニューボタンは消えてしまうので、セーブするならマウスホイールクリックでメニューを呼び出す必要があります。


レビューには全く書き切れないほど多種多様で高密度なギャグが360度から降ってくるこの体験をぜひ皆さんも味わってみてください。
それでは。

こんにちは。今回は作っちゃうおじさんの「行方不明の彼女を探しています」をご紹介していきたいと思います。

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ジャンル:カードゲーム+謎解き
プレイ時間:1ゲーム5~10分、エンディングまで2時間程度
分岐:フリー版はなし(後述)
ツール:JavaScript(ブラウザゲーム)
リリース:2025/4


本作は先週の東京ゲームダンジョン8にて作っちゃうおじさんご本人にお会いしてお話しした際に自信作と紹介された作品になります。帰宅後にプレイしてみたところ、ひらめきに頼らない謎解き要素といくつかのカードゲームをクリアしていくことでゲーム本編が進行する仕組みが珍しく、それでいて、ウェブサイト内を回ることでシナリオが進むという形式がまるで20年前の個人サイトに置かれていたゲームのようで懐かしさも感じるような作品だなと思いましたのでご紹介します。


本作の最終目的はタイトルからも分かる通り、行方をくらませてしまったゲーム制作者の彼女の居場所を突き止めて連れ帰ることです。一体どこへ姿を消してしまったのか、過去の思い出から手掛かりを探るために一緒に制作したゲームをクリアしていきます。

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まず最初にプレイすることになるのは、サイコロを振ってお金を増やしていくゲームです。最初はただの運ゲーでプレイヤーの介入の余地がないですが、次第に得たお金を使ってボーナスを得たりサイコロの目を操作したり、ボーナスを選んだりしていくことで効率的に稼ぐことができるようになっていきます。単にゲーム内のシナリオを読んでいるという流れだけでなく、実際にプレイすることになるので作者さんがゲームを開発したり新作の構想を練る流れはこんな感じなんだろうなというのが感じられました。

このミニゲーム自体はさほど難しくなく、有効そうなボーナスが出現したら適宜取得していくくらいでもクリアできるでしょう。
しかしこの次あたりからミニゲームが少しずつ難しくなっていきます。失踪のきっかけを思い出した主人公は、彼女の制作ブログにあった4つのゲームから行き先の手がかりを得る必要があるのです。

この4つのゲームはいずれもカードゲームとなっていて、ある程度の慣れがなければなかなかクリアできないと思います。

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例えばこちらはその4つのゲームのうちの一つで、海難事故で漂流してしまった猫がなんとか本州まで帰ってくるというストーリーのゲームです。毎ターン手札を一枚使用し、満腹度を回復したりいかだを漕ぎ進めたりといったアクションを繰り返すことで飢える前に帰ってこれればクリアとなります。
先ほどのサイコロのゲームもそうでしたが、非常にシンプルなところから初めて少し味付けしたという感じのミニゲームとなっており、正直これ自体に爆発的な中毒性があるというタイプのゲームではないのですが、なめてかかったらクリアできない悔しさに加えてこれが本編のストーリーを進めるためのキーとなっているという点もあって攻略のモチベーションは高かったです。

そのほか、「武装猫ちゃんのモンスター討伐ゲーム」「ゴシック猫ちゃんと宝石の塔ゲーム」「勇者ネコのデッキダンジョンゲーム」があります。デッキを成長させながら目標を達成するという大枠としては同じシステムでありながら、コストの仕組みを変えたり管理リソースを増やしてみたりすることで違った攻略感になっているのが面白いところです。私が好きなのは武装猫ちゃんのモンスター討伐ゲームですね。育成に成功すると一撃で500ダメージ与えたりHPが4桁に乗ったりします。

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これらのミニゲームを攻略したのち、ようやく行方不明の彼女のもとにたどり着くことになりますが、そこでもまた最終決着をつけるためにサイコロゲームをすることになります。
これが最初のものとルールは同じながら達成目標が大幅に厳しくなっており攻略に苦労しました。行き当たりばったりではなくある程度計画的にボーナスを取得していく必要があると思います。
その分狙った形にはまって一気に稼げた時の気持ちよさも倍増していますので、ぜひ皆さんは自分の力で攻略し、彼女を救ってあげてください。

以下は攻略情報になります。


攻略のヒント(クリックで展開) あくまで私がノーマルモードを攻略したときの指針であり、最適な考え方であるかの保証はありませんのでそこはよろしくお願いします。
カードゲーム攻略のヒント 4種のゲームともにデッキ内のカードを使用していきその効果を発動させ目標達成を目指すゲームです。カード使用の制限はゲームごとに異なりますが(例えば漂流猫ちゃんの場合、1ターンに1枚だけ、勇者猫の場合は行動コストの合計が最大エネルギー以下)、いずれも一度使用したカードは基本的にはデッキに残り続け、その後のゲームに永久に影響を及ぼす点は共通です。私は初見で注意書きのないカードの数値アップ系のものは使い捨てかと思っていたのですがどうもそうではないようです。
となるとこれは完全にデッキ構築系カードゲームの攻略法が通用します。同じ作者さんの作品なら「黄泉からの帰還」など、有名どころでいえばドミニオンなどのカードゲームの経験者ならご存じだと思いますが、「弱いカードをデッキから除外する」が非常に重要な行動になってきます。基本的にデッキ総枚数ま少なければ少ないほど強いです。特に漂流猫や武装猫の場合、1ターンに1枚しかカードを使えないため、弱いカードに交じってたまに強いカードが入っているデッキよりはカード枚数が少なくて弱いカードがないデッキの方が圧倒的に強いです。そのため序盤の体力や満腹度に余裕があるうちは弱いカードの廃棄を進めましょう。具体的には2枚のカードの合成を行う行動がめちゃくちゃ強いです。これで漂流猫はクリアできるはずです。武装猫の場合は合成カード自体にカード強化を使えるので、1~2回強化しておくといちいち宝箱をとらずに済みます。慣れないうちは宝箱は必ず取るのが強いと思いがちですが、余計なカードをデッキに増やすのはむしろマイナスなので、デッキの圧縮とカードの強化に必要な分だけ取りましょう。

ゴシック猫はコストの仕組みが異なるため全く同じようには行きませんが、不要なカードを廃棄することの重要性は変わりません。報酬にカードの廃棄が可能なカードが出た場合最優先で取得しましょう。廃棄時に体力全回復のおまけもあるので使わない手はありません。また、使用時に即座に宝石を取得するカードも強いので是非とっていきましょう。これを有効活用するために、戦闘開始時に金塊を得るボーナスもあると心強いです。

勇者猫の場合、いくつかの特殊攻撃カードがあるのでどの種類を採用するかをあらかじめ決めておくと良いです。コンボ系、杖系、暗黒系、強化系などです。私の場合は杖をひたすら強化するルートを採用しました。うまく行くと杖攻撃一回で20ダメージほど入るので、カード廃棄カードを使って不要なカードを捨てていき1ターンに1回使えるレベルまで圧縮すればらくらくクリアできます。
サイコロゲーム攻略のヒント 1回目は普通にサイコロの目を大きくしてゾロ目や連番の倍率をあげていって…とプレイすればクリアできます。
2回目は1回目より目標金額が高いうえにターン数が少なくなるので、より効率的に稼いでいく必要があります。最終ラウンドの20ターンで20000Gは鬼門です。
このゲーム内では、作った役(ボーナス発生条件のことを便宜上そう呼びます)の倍率がすべて掛け算されることに注目し、なるべく多くの役を作る方向でサイコロの目を育てるのが良いです。例えば目が33445の時、2ゾロが2回、3連番が1回発生するのでそれまでの強化状況によっては倍率が合計100倍以上となり、5000Gなどの膨大な額を一気に稼ぐことも可能になります。最序盤はサイコロの数が少なくそこまで考慮することができないので、2ゾロ強化や出ている目を5や6にする強化を使って稼いでいきますが、ラウンド3あたりからはサンサン強化(3の目が丁度3つ出た場合すべてのゾロ目のボーナス倍率を恒久的に上昇する)や4連番強化(4つ連続する目を出したら連番系ボーナス倍率を恒久的に上昇する)を取得したうえで、すべての目を-1したり出ている目を3にしたりして条件達成を待つのが良いでしょう。
また、追加点系や特定の目の強化(偶数が出たら+2Gなど)はその後のボーナス倍率も乗るので見た目以上に強いです。適宜とっていきましょう。

というわけで今回は「行方不明の彼女を探しています」でした。シンプルながらちゃんと考えないと詰む戦略バランスとなっており攻略のし甲斐があると思います。また本筋は謎解きでありながら謎要素をすべてミニゲームとしたために閃き不要となっており、普通の謎解き系ゲームが苦手な方でもプレイしやすい作品になっているのではないかと思います。
ちなみに本作には有料版があります。追加エンディングとより高い難易度のゲームが解放されるとのことです。私はまだプレイしていませんが、もう少し無料版で戦略を洗練させたら挑戦してみようかなと思っています。ランキングとか実装されたらアツいですね!

それでは。

こんにちは。今回は禁飼育さんの「家畜おじさん」のレビューをしていきたいと思います。

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ジャンル:道端でおじさんを拾うガールミーツボーイ系(?)ノベルゲーム
プレイ時間:2時間弱
分岐:基本一本道。ゲームオーバーあり
ツール:NScripter
リリース:2012/1
注意:暴力的な描写あり


禁飼育さんの作品と言えば、以前本ブログで「スレガル」(18禁)を扱いました。尋常でないねちっこさの偏愛とその裏返しの悪意、直接的な性暴力描写など非常に刺激的で取扱注意な作品でした。本作はその禁飼育らしさは失われることなく全年齢相当のマイルドな表現となった作品でなかなか唸らされましたのでぜひご紹介しようと思います。

ただしReadMeにも
【対象年齢】みんなプレイできるけど、不安ならプレイしない方がよいぜ
【ジャンル】まったりほのぼのはんざいぎりぎりあうつさくひん
と書かれる程度には人を選ぶと思いますので、その点承知の上プレイしてみてください。(禁飼育作品の中で随一のマイルドさであることは間違いありません)


いつも通りまずはあらすじ紹介から。
本作の主人公は(多分)小学生の晴々くもり(はればれ・くもり。この作者さんの登場人物は変わった名前が定番ですね)。2か月前に交通事故で両親を亡くしてしまったため、現在はほぼ一人暮らし。お金の管理や食べ物の用意は近所に住む伯父さん(おっちゃん)にやってもらっていますがあまり仲が良くないためほとんど必要最低限の事務的な会話しかしていません。ちょっと帰りが遅くなっただけで怒ってくるし、自分の言い分を聞いてもくれないおっちゃんにイライラする毎日。そんなくもりはある雨の日、家の前の塀に見知らぬおじさんがぐったりともたれかかっているのを目にします。帰るところもないというおじさんを放っておけないと感じたくもりはとりあえず家で雨宿りしつつ一泊してもらうことに。こっちの言う事を聞く気もないおっちゃんと違い、遠慮がちにもお礼を言ってくれたし意思疎通もできたおじさんに少しだけ心を許したくもり。おじさんの正体は何者なのか、おっちゃんとの関係は改善できるのか。くもり自身は大人と触れ合うことを通して成長していくことができるのでしょうか……

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本作の良かったところとしてまず、家族愛というテーマがしっかり描かれていて感動的なエンディングにつながっているところをあげたいと思います。あらすじのところでも書いたように、くもりは実の両親を亡くし、親権者であるおっちゃんとはうまく行っていません。だから必要な時以外は別れて暮らしているけれど、寂しさは埋まることはない。その状況でおじさんを拾って家に上げ、何気ない会話(おじさんは喋れないので筆談だけれど)や家事のやり取りをする中で、家に家族がいて誰かのためにご飯を用意したり、ちょっとした出来事を報告したりといったささやかな幸せの良さを再発見していく流れがいい。さっき知り合ったばかりのおじさんだからこそ日ごろの不満を吐き出したり、ちょっと素直にしゃべってみたりができたんですね。
それに、おっちゃんだってくもりに意地悪をしようとしているわけではありません。あんまり懐いてくれないくもりとの距離感がうまくつかめなくてすれ違いを起こしちゃってるだけなんですよね。おじさんを最初は敵視していたおっちゃんも、町内会のやり取りなどをしていく中でくもりとの関係を見つめなおす機会をおじさんにもらうことになる。この化学反応が気持ちいいんです。


本作はそんな心温まるシーンだけでなく、禁飼育作品らしいどす黒い感情やややこしい出来事もあったりします。その担当が学校で出会うがびょう先生と、明らかに変な宗教か怪しいオカルトチックな格好に身を包んだきもいおっさんです。がびょう先生は初登場時は爽やかな感じだけれどふたを開けてみればどうしようもないロリコン。「スレガル」のジドノ先生ほどとは言いませんが危険な男です。
きもいおっさんは(本当に作内でそうとしか呼ばれない。ちょっとかわいそう)いかにも怪しい風貌ですが、くもりに注意喚起と数珠をくれます。この辺少しごちゃごちゃしてるんですが、それぞれのキャラが立っていて読むのに退屈しません。

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そして最終的にそのごちゃごちゃした人物たちや出来事が収束してあのエンディングに向かうのはびっくりです。途中がびょう先生のあたりで不穏な雰囲気が強まったりはしたけど、万事解決のこのラストシーンは読後感もよく、心からよかったねと言えるような内容でした。
しかもそれらが、きちんと家族愛の形というテーマに結び付いているんですよね。おじさんは結局何者だったのかとか、きもいおっさんの警告は何だったのかとか、途中で出てきてただのギャグ要因だと思っていた変な猫までがごまかされずに一つの真実に収斂していく様は見ていて気持ちのいいものでした。


またタイトル画面にもちょっとした仕掛けがあります。物語の進行に応じて変化するタイトル画面でキャラクターをクリックすると、その時点でのキャラ紹介が読めるのです。どのタイミングでどう変化するのかまで私は全部追えていないので、その辺を注意しながらプレイしてみるのも楽しいと思います。

攻略について、単純にやると引っかかるかもしれないのでそこは注意です。詰まったらReadMeをちゃんと読めばヒントがあります。

不穏なシーンだけでなく、独特なギャグセンスなどももしかしたら人を選ぶかもしれませんが、エンディングの綺麗さ、家族っていいものだよなと思わせてくれる温かいテーマはきっと多くの方に刺さると思いますので、作品紹介を見て面白そうと思った方はぜひプレイしてみてください。

それでは。

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