フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
初めての方は、ぜひごあいさつをご覧ください。評価の基準については、レビューについてに記してあります。
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2時間前後

こんにちは。今回は現屋さんの「よんひくいちは」のレビューとなります。

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ジャンル:不思議な友情ものノベルゲーム
プレイ時間:2時間
分岐:なし
ツール:吉里吉里
リリース:2014/3


フリゲ2023の審査進行表を見ていて本作の名前を見つけました。プレイしたことはないけれどなんか聞いたことのあるタイトルだなと思ってググってみると、道玄斎さんのレビュー記事がヒットして、ああここで見たことがあったのかと納得(ついでにシートにDL先URLをコメント追加)。せっかくなのでプレイしてみることにしました。すると思いのほか良い作品だったのでここでご紹介しようと思います。


主人公の伊勢部宥太(いせべ・ゆうた)は高校2年生。中学時代に突然「未来予知ができる」という不思議な力を得た彼は、表面的な友人付き合いに意味を見出せなくなっていつも一人で過ごしていました。そんな彼はある日クラスメイトの後先凌太(あとさき・りょうた)が1か月以内に主人公になる、という突拍子もない予言を得て彼に興味を持ち、久しぶりの友人関係が始まります。さらには「伊勢部宥太は世界を救う」というとんでもない未来予知まで登場。愛敬寛(あいきょう・さとる)、門馬黒助(とば・くろすけ)という仲間も加わり、通常の意味での友人もできていく中、突然始まった自分だけの非日常をどのように生き抜いていくのでしょうか…



さて、本作を読了した私は先述の道玄斎さんのレビューを読んでみました。すると私が感じたこととかなり近い感想が書かれておりびっくり。

まず、本作は出だしから物語に引き込む力が強いんです。冒頭に意味深な回想シーンが少しだけあり、その後はすぐに登校シーンとなるのですが、この日常的なシーンだけでプレイヤーに強く興味を引かせる内容になっています。「しばらくは自転車を使わないこと」などの不自然な指示だったりまるで後ろから親戚のおじさんが来るのが分かっていたかのような書きぶりだったり。明言しなくてもこれだけで、「あ、これは何らかの能力があるパターンかな」というように理解できます。
その後もちろん未来予知ができることは明らかにされるのですが、それまでの段階で既に(この物語は面白いぞ)という予感(これは予知ではないでしょう)を強く感じさせてくれるんです。

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そしてこの未来予知という力も万能ではありません。誰が何をするか、というのははっきりと分かるものの、場所や時期は不明な場合もあります。そして冒頭で書いたように「主人公になる」「世界を救う」といった曖昧なものまで。こうした設定によって、予知された未来が回避できるかどうか不明といったドキドキする展開につながっていくのです。

さらには文章力も確かで、予知という能力の開花によってやたら冷めた人物となってしまった宥太にぴったりの、堅めで時には皮肉的な文章にうならされます。メッセージウィンドウではなく全面に文章を表示するシステムを取っているのも文体にマッチしているでしょう。文章がやや難しいなと感じる作品ではありますが、これもゲームというより小説的だと思うと合点がいきます。

こうした要素が重なり合って、もう私は開始5分とか10分とかの段階で「これはすごいからレビューを書こう」という気持ちになっていたんです。このくらい”面白さの初速”が速い作品ってなかなか珍しいと思うんですよね。私が最近読んだ作品でいうと「インビジブル」とか「道徳ビデオ」とかがこのタイプなんですが、本作は開始5分でこれらに負けないようなワクワク感を見せてくれました。


さて、本作にはこの未来予知という大きな設定があるわけなんですが、軸となっているのは予知に関するミステリーだったりサスペンスではなく、宥太の友情なんです。物語開始時点の宥太は私から見ると”嫌なヤツ”です。冷淡だし、予知を元に危機回避をしてくれる時も単に指示を出すだけ。(本人も自覚してますが)あの言い方だと「コイツ、すげ~」ではなく「なんかヤベー奴がいるから逆らわないでおこう」と私だったら感じるでしょう。しかしそれは宥太がもともとそういう性格だったわけではなく、予知能力に目覚めてしまってから身に着けた処世術みたいなものだったのです。

そんな宥太が”主人公の予知”をきっかけとして、最初は打算的なところがありつつも普通の友情を築いていくさまは見ていて気持ちが良いです。普通の人に自分の能力について話したところで気持ち悪がられるだけです。そんな能力について追及するでもなく、また否定するでもなく。そんな適度な距離間で接してくれる凌太たちは本当に良い友達ですね。

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こうした男の子たちの友情を描いた作品って意外と思い当たりません。女の子が出てきて恋愛がらみの描写が含まれていたり、あるいはBL的な展開になったりといった作品が多い中でなかなか新鮮に感じられました。
さらに本作で珍しいと思うのは、主人公の母親がそれに積極的に影響してくることでしょう。
以前、主人公の親ってあんまり出てこないよね~っていう記事を書いたりもしました。ちょっと不自然でも海外出張に行っていることにされちゃったりして物語中に一切登場しないことも多い両親ですが、それだけ思春期真っただ中の中高生からしてみればうっとおしくて、いない方が物語上都合がいいということでしょう。

しかし本作においては母親は結構重要な役割を果たします。宥太は予知能力に関する折り合いの付け方を母親を介して身に着けていったんだろうなと感じられますし、その母親が息子である宥太をなぜ信じているのか、といったところが宥太が友人との間に不要な猜疑心を持たなくてよい、といった学びにつながっていくのです。このように本質的な意味で主人公の成長に影響する作品は貴重だなと思います。これも私がプレイした作品でいうと「あなたの命の価値」以来でしょうか(あの作品においては負の影響でしたが)。


本作は基本的に写真背景と全面に表示されるテキストで画面が構成されていますが、時折重要なシーンで登場する一枚絵がまた印象的です。立ち絵もあるんですが使用回数が控えめなので、大きな動きのあるシーンでいきなり絵が出てくるとなかなかインパクトがあるんですよね。最後の黒助とのシーンなんかは表情もいいなあと思います。

そんな本作ですが、途中で発生した謎がすっきり解決しておしまい、といったタイプの物語ではないです。もちろんふんわりとした答えみたいなものは与えられていて、またこの不思議なタイトル(ググると計算結果を教えてくれます)の意味するところも分かってくるのですが、答えを求めるタイプの人はちょっともやもやの残るエンディングと感じるでしょう(私もどっちかというとこのタイプ)。
”世界を救う”についても、謎が明らかにされるというよりは空から答えが降ってきたという感じの回収方法になっているのでSFみたいにかっちりした設定みたいなものを期待していると肩透かしを食らうかもしれません。
しかし宥太たちの友情関係であったりタイトルの意味からすると一つの物語としてまとまっており、このエンディングも不思議な世界観の演出に一役買っているともいえるでしょう。


気になるのはそのエンディングにてムービーが再生されないことです。ReadMe内では、Windows8ではクリックしないと進まないかも、みたいな表記があったのでいろいろクリックしたり互換モードで起動したりしてみたのですが、私の環境(Windows 10 Home 22H2)では真っ白な状態のまま動かなくなってしまいました。その後ゲーム再起動したらタイトル画面が変わっていたので、エンディングに到達したことは正しく判定されていそうなのですが…。


というわけで今回は「よんひくいちは」でした。
とりあえずDLして読み始めてみれば、きっと5分で本作のすごさに気付くでしょう。ぜひプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。今回はPOPODOTさんの「ゾンビーデ☆バンビーナ」のご紹介になります。

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ジャンル:2Dゾンビアクションゲーム
プレイ時間:難易度ノーマルで2時間程度
分岐:1か所(後述)
ツール:RPGツクール
リリース:2017/8
備考:15禁。流血等グロテスクな表現あり。第13回ふりーむゲームコンテスト萌え部門金賞受賞作


本作品を紹介するうえでジャンルの分類に少し迷いました。
装備や食べ物で自身を強化していくRPG的要素もあり、目的地まで様々なマップを探索して進んでいくADV的要素も強く、ストーリー重視な作品でもあります。しかし私がプレイした感想としては、(特に高難易度では)いかに敵を避けながら進むか、少ない弾で効率的に相手を倒すかというアクション要素が重要になってくる感じがしたので、本ブログではアクションゲームとして分類することにしました。実は初めてのアクションゲームのレビューとなります。



本作の物語は、突然地球に隕石が衝突するところから始まります。地割れなどの被害にとどまらず、なんと隕石に付着していたゾンビウイルスが人々をゾンビ化してしまったのです。そんな阿鼻叫喚の中、主人公のラーラはゾンビウイルスから身を守るためのイエローハッピーワクチンを求め、ゾンビと戦いながら病院を目指すのでした。


相棒となるマークと一緒にゾンビを倒しながら探索していき、たまにボスを倒す必要があるのですが、これが結構難しい!
開始時に難易度を3段階から設定できるので、アクションゲームが得意でないなという方はイージーを選びましょう。私はノーマルから始めたのですが、慣れないうちは弾切れになったりして割と大変でした。難易度ベテランでは入手できる弾の数がかなり少なくなっており、初見の方にはお勧めできません。

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ゾンビの倒し方については、最初に作中作の形式をとって丁寧なチュートリアルがあります。武器を装備した状態でDキー押下で向いている方向(四方に固定)へ発砲します。弾丸は消耗品なのでやたらに乱射しているとすぐに弾切れになってしまうので注意です。きちんと狙いをつけて発砲するようにしましょう。


序盤の敵は体当たりしてくるくらいしか攻撃手段を持っていませんが(とはいっても近づくと突然スピードアップして向かってくるので油断禁物です)、中盤以降の敵は機動力が高かったり飛び道具を持っていたりと厄介なパターンが多いです。特に難易度ベテランでは、それらの敵を相手にしていると一瞬で弾切れとなってしまうので、マップをある程度覚えておき、どうしても倒す必要のある敵以外は走り抜けてかわすような動きを要求されます。このあたりが非常にアクションゲームらしいんですよね。

ボス戦については攻撃をかわし続けても終わらないため、ある程度の弾数を用意しておかなくてはなりません。どのボスも遠距離攻撃の手段を持っており簡単ではありませんが、行動パターンはさほど多くないので何度か挑んでいくうちに上達して勝てるようになっていくでしょう。

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そんなわりとハードなシステムとなっている本作ですが、ストーリーの方も大事です。
前半のうちは、ギャル風でゾンビにも物怖じしない強気のラーラと怖がりで前衛に立っての戦闘を避けてアイテム合成などで協力するマークの対比が面白く、ギャグイベントもよく仕込まれています。

しかし中盤でマークは一人で戦わなければならない状況に陥ります。ビビりながらもゾンビを倒していくマークを見ているとなんだか頼もしく感じていきます。ついさっき出会ったばかりのラーラではあるけれども守ってやりたい、そんな気持ちが表れていてとても応援したい気持ちになりますね。

終盤にはPOPODOTではお馴染みの温泉イベントあり。今回はラーラは温泉には入らないみたいだけれど…?

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さて、ラーラとマークが協力してラスボスを倒し、エンディングイベントに突入する直前、1か所だけ選択肢が登場します。明らかに分岐すると分かる内容で、しかもどちらが正解かもわかりやすいと思います。他の作品をプレイしたことがある方なら分かるかと思いますが、2つのエンディングは結構落差が激しいので覚悟のうえでぜひ両方とも見てください。直前にセーブ画面に入るのが親切ですぐに回収できます。
両方見たらおまけ部屋でエピローグなどが見られるのでそちらもお忘れなく。


ところで私がDLしてプレイしたバージョンは古めで1.6だったのですが、その後バージョンアップが重ねられて現在v3.0が公開されているようです。チャック(ラーラの兄)編や新ボスなども追加されているということなので私もこれからやってみたいなと思います。


というわけで今回は「ゾンビーデ☆バンビーナ」でした。
イラストはかわいらしいけれども世界は世紀末。アクションはハード。
そんな中でラーラはワクチンを手に入れて目的を果たすことができるのか。ぜひあなたの目で確かめてください。

それでは。

こんにちは。今回はぱすてぃぶソフトさんの「魔女をたずねてコンビニバイト」をレビューしていこうと思います。

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ジャンル:魔女っ娘ラブコメノベルゲーム
プレイ時間:1時間半
分岐:1か所。終盤で3つのエンディングへ分岐
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2023/6



はい、今回はぱすてぃぶソフトさんの新作です。
あの強烈なデビュー作をプレイしていた私は、本作をプレイするにあたってもいつ事件が起こるのかと警戒しながらプレイする手を進めていたわけですが、本作は安心安全の全編コメディ仕様で広く皆さんにお勧めできそうな作品でしたのでご紹介します。大事件が起きてプレイヤーの期待を裏切ってくるタイプの作品も好きですが、そればかりだとプレイするのも疲れますからね。幸せな作品でエネルギーを蓄えましょう。


本作の主人公は高校2年生の早乙女永一(さおとめ・えいいち)。父親と不仲で実家を出てボロアパートで一人暮らし中なので、生活費のためにコンビニでバイトをしています。ある日バイト仲間の佐藤さんの代わりにヘルプで入ってきたのがヒロインの阿澄莉奈(あすみ・りな)。少し親しくなってきたところ、何と彼女は実は魔女であるという衝撃の告白を受けます。
60年前に魔法の国から人間界へ行ったきり会えていないという妹のニーナを探しに人間界へやってきたというリナ。それを聞いて永一は妹探しを手伝うことを約束します。果たして無事に妹を見つけ出すことはできるのか。なぜリナを置いて人間界へ行ってしまったのか。永一をめぐる恋模様の行方は?
ちょっぴりファンタジーなラブコメ物語が始まる…


本作の物語を簡単にまとめるとこんな感じでしょう。
筋となる部分はもちろんリナがニーナとの再会を目指して調べていく部分なのですが、それ以上に永一をめぐるラブコメシーンや、人間としてはちょっぴり常識知らずなリナのギャグシーンなどが楽しい作品となっています。


というわけでコメディシーンを演じる登場人物たちをご紹介しましょう。
主人公の永一はラブコメのテンプレと言ってもいい激ニブ男。クラスメイトの珠美が明らかにラブラブ光線を送っているにもかかわらず当の本人は「突然の玉泉さんの奇怪な行動にわけがわからない」などと言っています。


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メインヒロインのリナは正真正銘の魔女っ娘。変化魔法が得意だけれども他の魔法はてんでダメ。町で面倒な男に絡まれたときは男をバッタに変えて助けてくれましたが、冷蔵庫の中身を変化させて料理を作った時は大失敗。
また、どうやら魔女たちの住む魔法の国には男は存在しないようで、男女関係についてはほとんど何も知らないようです。見事にギャルゲーメインヒロインの属性を兼ね備えていますね。


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永一の妹麻祐理(まゆり)は小さいころから頭が切れるようで、父親に可愛がられている立場をうまく利用して永一を助けてくれたブラコン気質もあります。
永一が父親を見限って一人暮らしを始めてからは自分も不良ぶっていますが、本性が良い子なのはクラスの子にもバレバレの模様。本作におけるツンデレ担当でしょうか。


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クラスメイトの玉泉珠美(たまいずみ・たまみ)はどう見ても永一が大好き。アルバイトで時間がなかった時にいつも宿題を写させてもらってますが、今日はやってきたから大丈夫だよと伝えるとなぜか少しだけ残念そう。(いや明らかにフラグ立ってるだろ!)


そんな彼らは妹と離れ離れになってしまったリナの事情を聞き、人探し(魔女探し?)を手助けすることを約束します。
しかしどうも全員永一のことを好きなようでちょっとだけ複雑な関係だったりも。
昼休みの教室では、麻祐理と珠美は(頼まれてもいないのに)手作り弁当を持ってきてくれて永一は2食分食べる羽目になったり、リナに”タマタマ”と危ないあだ名をつけられそうになった珠美が全力で拒否したり。
こうした分かりやすくてお約束なギャグ展開が続いて非常に読みやすい作品になっています。


私が好きなのは、使い魔のアルキマによってリナの年齢がバレて慌てるシーンです。
いや、その年齢は(人類の視点では)おばあちゃんとかいう次元を超えてるよ…ロリババアってやつだね…。

あとはリナの無邪気な発言によって珠美が勘違いして倒れちゃうシーンとかも笑いました。
嫉妬に狂うとかじゃなくて、単純にショックを受けて暴走しちゃうのが可愛くて良いですね。チーンという効果音が聞こえるだけでなんか笑っちゃうようになりました。


さて、そんなほのぼのした空気の中で妹探しはつづき、下級生の宮藤静流(みやふじ・しずる)から有力な情報が得られます。彼女の祖父がずっと昔魔女と思われる人物にあったという日記があるというのです。静流の協力を取り付けた永一たちは、皆で魔女の目撃されたという山へ向かいます。

旅館ではみんなで兄弟のフリをしたりイナゴを食べたりと楽しいシーンが続きますが、翌日はちょっぴりシリアス。リナは突然姉である自分を置いて人間界へ行ってしまったニーナが果たして突然会いに来た自分を受け入れてくれるのか悩んでいます。実はリナに不満があって魔法の国を飛び出してしまったのではないかと。
そんなナーバスなリナに対し、永一は自分の経験をもとにリナを励ましていきます。実家で父親とうまくいかず家を飛び出した永一。麻祐理はその影響で不良ぶるように。それでも麻祐理はよく会いに来てくれるし、家族の繋がりが消えたわけじゃない。兄弟とはいっても言葉を交わさなければ伝わらないから変に悪い想像をして悲観することはない。
確かにその通りで、永一本人の経験に基づく分説得力があります。私は以前恋愛ものの高校生主人公はどれくらい一人暮らしをしているのか調べてネタにした記事を書いたりもしましたが、本作では高校生の一人暮らしに単なる物語の都合以上の理由があって、そのためにリナや麻祐理とのやり取りにリアルさが生じているんですよね。


ずっと探していたニーナとの対面シーンでは、リナにとってショッキングな事実と物語の設定が明らかになります。60年もの間ニーナは一体何をしていたのか。なぜリナとのコンタクトを絶っていたのか。それはぜひあなたの目で確かめてください。
驚くような真実ではあるものの、決して後味の悪いタイプではない優しい結論です。最後の最後でこうロマンチックな雰囲気を出してくるのが上手いですね。


そして最後の最後に分岐があります。なんと物語序盤にあった1か所の選択肢で分岐するようです。
どのエンディングも永一が再び希望を見出せるような内容で良かったなとは思いますが、なぜそうなったかの途中経過が抜け落ちていて説明不足な感は否めません。もう少しフォローが欲しかったなという気がします。

しかし分岐の回収のために既読シーンを丸ごと飛ばす機能が実装されていて非常に回収しやすかったです。エンディング以外の部分は変わらないようなので、大変ありがたい機能だなと思いました。



というわけで今回は「魔女をたずねてコンビニバイト」でした。
微妙と書いた部分もありましたが、最後のリナの笑顔が眩しくて素晴らしいのでそんなことはどうでもよくなると思います。ぜひプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。今回はパルソニックさんの「決戦前のヒトリ~主人公以外全員『カップル』がいるアドベンチャー~」のレビューをお送りします。

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ジャンル:ラブコメ推理パズル?
プレイ時間:私の初見プレイでTRUE ENDまで1時間半
分岐:エンディング2種
ツール:RPGツクール
リリース:2022/9


さて、本作の作者であるパルソニックさんと言えば、有名作「かわいいは壊せる」でお馴染みです。(私もそのうちプレイしなきゃな~と思っていつつ実はまだプレイしていないのです)
ある日ふりーむをいろいろと探索しているとき、たまたま本作が目に入りました。論理パズルは割と好き(得意分野でもある)ので興味を惹かれ、作者名を見ると見覚えのある方だったのでびっくり。早速ダウンロードしてプレイしてみたところ、バカゲーに見えてかなりよく練られた作品だったので今回ご紹介しようと思います。



いつものように本作の大まかな内容を最初にお話ししましょう。

主人公であるヒトリは最強の勇者。姫であるヒロを救うための冒険を続け、ついに魔王との対決に挑みます。ところが最強であるヒトリの力もわずかに及ばず、捨て身の攻撃でも魔王をしとめるには至らずに負けてしまいます。
そんなときに突然現れたのは神を名乗る人物。”世界の真実”を解き明かせばヒトリを生き返らせてくれると言います。当然その条件をのんだヒトリでしたが、要求されていたことはなんと、この世界において誰と誰がカップルであるかを全て突き止めることだったのです。
誰と誰が付き合っているのか、怪しいところを調べて証拠をつかみ、世界の真実を見つけ出せるのか、ヒトリの第2の冒険が始まる……

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というわけで本作は推理ゲームとなっています。
魔王との決戦前夜、パーティーを組む仲間たちや村に住む人々の家を探っていく勇者のヒトリ。勇者というよりは泥棒みたいです(普通のRPGでも割とよくある光景ですが…)。そして翌朝には村人たちも起きて活気のある村を再度探索、会話などからヒントを探っていきます。一見ラブラブに見える2人が本当にカップルであるのか、あの家に住んでいるのは誰なのか、誓いのアイテムを持っているのは誰なのか……、いろいろ考えることがあってこの推理部分が良くできている作品だと思いました。

特に、本作においては魔王戦後の答え合わせで間違えると再度神に決戦前夜まで戻されるループシステムを採用しています。このシステムがなければ解けないような謎が仕掛けられているのが上手いなと思ったポイントでした。翌朝手に入るはずの情報をもって夜のうちに行動を起こすとどうなるのか、夜と朝で会話内容の整合性をとるにはどういった前提が必要なのかなど考えながら進めていきましょう。
RPGツクールのシステムもうまく生かしていて良いですね。

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という感じで、推理部分がなかなか難しめに作られています。ミスリードを誘う展開もあったりして、1度や2度では正解にたどり着けないでしょう。(私は5答目で正解しました)

しかしこのあたりの推理の苦手な方でも安心な要素として、神からのヒントがあります。2度目以降誤答するごとに1つヒントがもらえます。そのまま答えがもらえるわけではありませんが、ヒントの通りに行動してみれば決定的な場面に立ち会うことができるでしょう。



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さて、本作のゲーム部分は今まで書いてきたように結構真面目に作られており、解きごたえがあるのですが、全体的な雰囲気を見るとかなりふざけています。神様の俗っぽい言葉遣いだったり、自分一人だけ相手のいないヒトリが嫉妬に狂ったり、分かりやすすぎるすれ違いカップルだったりには苦笑させられたりも。ループものにおいて主人公が過去の周回の経験をもとに現在の状況についてツッコむというパターンは多いですが、それがこんなに笑える作品は珍しいと思います。

さらになんとおしがまイベントあり(特にそれがメインとかじゃないです)。こんなクレジット表記初めて見ましたよ…(笑)
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ちょっと気になる点について。内容というか宣伝文句についてなんですが、「論理パズル」というのとはちょっと違うかなと思いました。私が最初に見たときはそのように紹介されていて、論理パズルだったら得意分野だなと思って手を出したのですが、本作はサスペンス・探偵もの寄りなので期待していたものとちょっと違いました。論理パズルというと、Dominion's Restさんの「魔女っこと封印の石版」ですとか、にほへさんの「ミミックロジック」などを思い浮かべます。こうしたゴリゴリのパズルとは違った作品でしたが、別の意味での面白さは十分にあったので結果オーライです。

あと、解答画面の操作方法がやや直感的じゃないかなと感じました。男性キャラの位置はデフォルトのまま変更できず、女性キャラの位置だけ変更できるようです。つまり画面上で右半分だけしか操作できないのです。慣れるまで全然思い通りに動いてくれませんでした。

そういえば、本作でいう”カップル”は男女の組み合わせのみです。同性の組み合わせがあったら難易度が爆上がりしていたと思うので助かりました。
ゲーム内でいう”カップル”の定義もしっかり提示されるのでそこに悩むことはありません。ゲームとして楽しみやすくなっていると思います。



本作のエンディングは2種類あります。
1周目はTRUE ENDは無理なので普通に頑張ってエンディングまで行きましょう。クリアデータを使えばTRUE END回収は難なくできるはずです。ある真実が明らかになるTRUE ENDでは、ヒトリの最後の行動が180度変わります。ヒトリの苦労が報われるのか、ぜひいろいろ試して頑張ってみてくださいね。
どちらのエンディングでもラブコメの王道的な展開で楽しい気分で終えられる後味の良い作品となっています。

それでは。

こんにちは。今回はんんんんほりごたつさんの「つきのさきで きみときす!」のレビューをお送りします。

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オススメ!
ジャンル:ほのぼの日常系推理ノベルゲーム
プレイ時間:1周目20分、フルコンプまで2時間程度
分岐:エンディング2種
ツール:吉里吉里
リリース:2020/3



本作の存在はしばらく前から知っていてDL済みでもあったのですが、プレイするのが遅くなってました。
実際にプレイしてみたところ、予想を大きく上回るいい作品だったので今回ご紹介しようと思います。


主人公の月下羽衣(つきした・はごろも、下の名前のみ変更可)は中学2年生。同級生で幼馴染の灯木洩日(あかし・こもれび)は何と中学生にして祖父の代から続く探偵業を継いで立派に活躍しています。羽衣はそんな木洩日のことが大好きな様子。(勝手に?)助手を名乗って事務所に入り浸っています。
そんな羽衣、どうやら木洩日が隠し事をしている気配を感じ取ったようです。調査の名目で木洩日と一緒に色々なところを探索していく羽衣。隠し事の正体を見抜いて名探偵助手としての地位を確立することはできるのか…?


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本作をプレイしてまず目についたのは素敵なイラストでした。
淡い色で描かれた2人の立ち絵はとてもかわいらしいですし、加工写真風の背景にも溶け込んでいます。メッセージウィンドウやUIなんかも統一感のある配色や雰囲気になっていてとてもいいと思います。終盤の一枚絵に入る流れもスムーズですね。


さて、本作の主人公である羽衣は頭が切れる探偵キャラというよりは、ちょっぴり天然だけれど愛想がよくて世話焼きなタイプのキャラクターです。したがって私は本作を1周プレイした辺りでは、(言い方は悪いですが)ほのぼの日常系でラブコメ要素を楽しみつつ進める、推理とは名ばかりの雰囲気ゲーだと思っていたのです。もちろんそうした作品が悪いわけではなく、何となく雰囲気が好きという作品は私もいくつかありますが、本作ではそれだけではありませんでした。推理をする部分についても、また彼らの過去や現在の状況についてもしっかりと筋の通った作品だったのです。そうした意外性という意味でも私を驚かせてくれた作品でした。



木洩日くんの"カクシゴト"を見つけ出すために捜査に乗り出す羽衣は、(なぜか)木洩日を引き連れて事務所や家、町内の様々な場所を回ります。例えば事務所の応接室を調べると、どうも写真に違和感があるということに気付きます。これらのヒントは各調査場所に1つずつあり、調査で必ず手に入れることができます。この際の2人の会話がまたほほえましい内容でいいですね。ちょっと登場するだけのサブキャラにも立ち絵が用意されていてすごいです。

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過去に調査したことがある地点は右の虫眼鏡をクリックでどんなヒントが手に入るか分かったり、現状の持ち物も確認可能、攻略のヒントだって見られるという親切設計。ヒントは3段階になっていて、最終的には完全な答えまで見ることができます。ちなみに私はヒントなしプレイで3周目におおよその仕組みに気付いて(ヒント1段階目の内容)、それ以降は多少の試行錯誤でほぼ迷わずトゥルーエンドまで行けました。

1日の終わりにはこれまでの調査で得たヒントを元にカクシゴトの正体を指摘するパートがあります。使用するヒントを選んで決定ボタンを押すのですが、外れの場合でも選んだヒントに応じた展開が用意されていて芸が細かいです。かなりたくさんあるようなので私も未回収の会話があるかもしれません。
ここで正解すると、ヒントに応じたイベントを見ることができます。私の意図(?)どおり推理してくれて嬉しいルートもあれば、それ推理関係ある?という可愛いイベントもあります。イベントごとに鍵が1つ入手でき、それらを5つ集めたとき、トゥルーエンドへの道が開けます。


このトゥルーエンドですが、木洩日くんが本当に羽衣のことを思って行動していてくれたんだなというのが分かってとても心温まる内容となっています。調査パートではちょっと羽衣のことをバカにしているようなシーンがあったりもしますが、それらが2人の間でしっかりとした信頼関係が存在していたからこそであるのが理解できます。木洩日のお父さんはなぜいなくなったのかを含め、5つの鍵を入手するまでの段階での情報もしっかり最後に生きてくる構成。そして木洩日くん自身の口から好きだよと言ってもらえるのが嬉しいですね。いや、調査パート見ていれば羽衣だけでなく木洩日も羽衣のことを大切に思っているのは分かるんですが、直接聞くのとは違いますからね。そして告白に至るまでに彼らが抱えていた背景も明らかになりますから、そのパワーは強力です。

これ以上詳しく語るのはネタバレになるのでやめておきましょう。ぜひあなたの目でこの感動を確かめてください。
そしてエンディングを迎えた後のタイトル画面への戻り方もうまい。なるほどそういう意味が込められていたんですね。


というわけで今回は「つきのさきで きみときす!」でした。
ほのぼのとした雰囲気だがそれだけじゃない、この作品の魅力をぜひ味わってみてください。プレイし終わって優しい気持ちになれる事間違いありません。BGMもまた穏やかで気持ちいい統一感があって素敵です。久しぶりにDOVA-SYNDROMEに行ってタイトル画面BGMを探す旅をやりました。

それでは。

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