フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
初めての方は、ぜひごあいさつをご覧ください。評価の基準については、レビューについてに記してあります。
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2時間前後

こんにちは。今回はソロフィリアさんの「PaintPain ~少女はメイドの手をとって~」のレビューとなります。

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ジャンル:芸術家の百合ノベルゲーム
プレイ時間:2時間
分岐:なし
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2024/8


本作は今年の夏のコミケで知った作品になります。一目で百合と分かるインパクトあるイラストを中央に持ってきたチラシ、しかもいい紙に印刷されているものを貰い、後でプレイしようと会場で名前を覚えたサークルさんです。実際にプレイするまで1か月かかってしまいましたが、単に可愛らしい女の子同士がイチャイチャしている作品ではなくしっかりとしたテーマと確かな文章力のある作品でしたのでご紹介します。


まずはいつも通りあらすじをご説明。

主人公の六華嗣治(読みは りっか・つぐはる でいいのかな?)は大金持ちの家系に生まれ、一応投資家を生業としているものの稼ぎを出さなくても問題ないため自由にやっているというなんともうらやましい人物です。祖父が芸術系の高校である六華学園に多額の出資をしており、嗣治は学園祭に招待されていました。そんな彼が学園祭で出会ったのは月崎若葉という生徒。彼女の描く絵に一目ぼれした彼は、経済的支援は惜しまないからぜひ芸大へ進んでほしいと提案。さらに大学へ進んだ彼女を住み込みの家政婦として雇い、屋敷の家事を任せる代わりにアトリエや画材を好きに使ってもらうことにします。
そして3年後、同じく若葉の絵に心を動かされて六華学園に進んだ親戚の茶山モカは嗣治へ金銭支援を依頼しに来た日、彼の屋敷で絵を描く若葉と対面。弟子にしてほしいと頼み込みます。そんなモカを追ってきた彼女の友人の黄原めるも混ざって屋敷は突然の百合入り乱れ。彼女らがこれまで積み重ねてきた経験と信念をもとに芸術論を交わし、そして開花する絵画への熱意と才能。芸術を軸に絡まりあって成長する百合物語が始まるのだった…

こんな感じでしょうか。


本作の序盤はコメディ的雰囲気多めで進行していきます。ヒロイン若葉は機械が苦手でコーヒーメーカーから白湯を出したりしてますし、なぜか趣味でメイド服を着ています。嗣治は悪い人ではないですが何かとからかわれがちなキャラ。お金持ちなのに家電選びが異様に優柔不断ですし、学園祭で初めて若葉にあった時には変態扱いされて(実際かなり奇特な行動でしょう)、モカちゃんには引きこもりとか暇人とか言われたい放題。特にこのモカちゃんはかなり気の強い毒舌キャラなため、彼女との絡みは特に笑えます。まあ、それは言いすぎじゃない?っていうのもありますが…
そんなモカが若葉と出会うシーン。ここから物語が大きく動き始めます。

自身に進路を決意させた若葉を前にして心酔した様子のモカ。対する若葉の方も、強い決意や行動力を秘めたモカの姿に胸を高鳴らせます。出会って早々に百合カップルの誕生か…? と思いきやそう簡単に事は運びません。今度はとにかくモカのことが大好きな少女黄原めるが乱入しまさかの百合三角関係が発生するのでした。
しかも翌朝には、若葉の趣味で女の子は全員メイド服姿に。めるはいいとして若干不満そうな表情ながらもきっちりメイド服を着こなしたモカを見てなんか笑っちゃいました。

これ、その時の立ち絵自体がふざけていて面白いのかというとそうではなくて、モカのキャラクター性と衣装の不一致(あと表情と台詞)が面白いんです。つまり、これは本作において各キャラクターが活き活きと描かれていることの証左だと思うのです。そして、それぞれの人物がどのような背景と考え方を持っているのかという描写は、後半の展開へとつながるカギとなります。


とはいえここまで読んだ私の感想としては、これは可愛い女の子たちがイチャイチャしてるのを眺める萌え系コメディだろうと思っていたのです。実際この後もしばらくは甘々ラブコメが続いていきます。
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作品ページのサムネイルにも使われているこのキスシーン。なんという甘さでしょうか。
モカちゃんの方から勢い余ってしてしまったという、いかにもラブコメでありそうな展開なのですが、このあたりから本作の別の顔が見えてくるのです。


翌日、画材を買いに行く道中で若葉がモカの過去を聞いたり、モカに若葉の新しい絵のモデルになってもらったりといった過程で次第に明らかになってくる皆の絵画への思いと人生観。若葉がなぜメイドにこだわるのか、モカの強気な性格の源泉は何なのか、絵画の作風と表現対象への思い入れ。そういった要素が物語としての展開や人間関係につながってくるところが非常にうまいと感じました。


これについてはあまり書きすぎるとネタバレになるので1つだけ挙げておきましょう。
若葉が幼いころに聞いたおとぎ話には決まってお嬢様とそのお世話をするメイドが登場しました。しかしどんなお話もお嬢様は王子様に見初められ、最後には結婚して幸せに暮らすのです。そこに彼女を支えてきたメイドの姿はありません。そんなお決まりの運命に逆らうために、若葉はメイドとお嬢様だけの物語を紡ぐことを決めたのでした。
なるほどここまで聞くと、彼女がメイドの姿で美少女の絵を描き、嗣治に対してもメイドを演じる理由が分かります。しかしこの設定はそれだけではないのです。

おとぎ話の世界から綺麗なお嬢様を絵画という形で顕現させるのが自分の使命だと思っていた若葉。ファンタジーの世界から形ある絵としてこの世に生み出すという方法でこれまで制作を行っていたため、彼女の絵にもともとモデルは不要だったのです。しかしそこに突然現れたモカはあまりに彼女の理想とするお嬢様に近すぎました。”可憐でありながら、湧き出るマグマのように力強い瞳を持った少女”であるモカに自身の理想を重ねて同一視するようになります。これはモカにとっては残念なことでありました。

初登場時に出てきたように、モカは若葉の描く絵に惚れたのです。そんな彼女が絵を描くことへの興味を失い、モカの存在を見るだけになってしまった。しかも彼女が見ているのはそれまでの人生と人脈と芸術観を持った個性ある人間としてのモカではなく、若葉の脳内に存在する理想のお嬢様の残像でしかないのです。このすれ違いが明らかになりモカはショックを受けて一人自宅へと帰ってしまうのです。


このシーン、私はすごく唸らされたんです。ついさっきまで仲良し百合を見せられていたのに、しかも2人とも美術という同じ業界にいることに意気投合していたのに。こんなことになるとは想像できなかった。しかし同時に納得感のある展開でもあるんです。それぞれの人物の考え方がしっかり伝わるシナリオとなっている故でしょう。このように、人物にまつわる設定が発展してほかの人物と絡まりあって物語を前進させていく、そうしたところに本作の良さが詰まっているように感じるのです。

演出手法についてもよく考えられていて、前半におとぎ話とか映画に関連するエピソードが出てきたのを受けて、終盤でレトロ映画風のシーンが挟まったりといった気持ちよさが随所に感じられます。

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ここまでレビューであまり触れてこなかっためるについても同様です。むしろ終盤は彼女の見せ場。感情が高ぶれば校舎や校門にまで絵を描いて歯止めが利かない問題児のめるでしたが、その独特な芸術観と感情の機微を見逃さない観察眼はすれ違いを起こした若葉とモカを救ってくれました。猪突猛進で多少言葉が悪かったりもしますが、彼女の熱意がなければ若葉とモカはあそこから前に進むことはできなかったでしょう。本当にいいキャラしてるなと思います。

そんな3人がこの件をどのように消化して芸術への糧にするのか、それはぜひ皆さんの手で見届けてあげてください。


話は変わりまして本作のイラストなどシナリオ以外の部分について。
絵を描く少女たちの話なだけあって大変可愛らしい立ち絵がそろっています。メイド服も細かいところまで書き込まれていて凄い。制服立ち絵だけ左右反転時に胸ポケットの位置が矛盾するのが気になる、といったところでしょうか。
背景は写真素材です。お屋敷や美術館の品のある感じが演出されていてピッタリなんじゃないでしょうか。BGMに関してはピアノ曲中心でやや渋めの選曲。これも芸術というテーマにマッチしているように感じます。
システムに関してはもう少し頑張ってほしかったというところでしょうか。レビュー執筆のために特定のシーンを読み返そうと文章スキップしたらフリーズしたとか、背景が真っ黒で動かないとかの状況が多発してしまいました。


というわけで今回は「PaintPain ~少女はメイドの手をとって~」でした。
以前ちらっと言った、ノベルゲームの総合芸術的な面が生きた作品となっていますので、ぜひプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。今回はりっとさんの「スノードームは夢を見るか?」のレビューです。

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ジャンル:ファンタジーノベルゲーム
プレイ時間:2時間
分岐:なし
ツール:Live Maker
リリース:2015/3


本作は実は同作者の前作「snow date」の続編となっているので、前作を先にプレイするのが推奨されています。「snow date」は10分から15分程度の短い作品なので手軽に読めるでしょう。

「snow date」では、「この世界はスノードームの中なのよ」という印象的だけれども単体で意味の分からない台詞が出てきます。本作は同じ世界観の中で、この台詞がどういう意味だったのかが次第に明らかとなっていくお話と言えるでしょう。


さて、本作の主人公の少女は非常に癖の強い人物です。ある雪の日、町でこれまた素直じゃなくてややこしい男の子とぶつかり転んでしまいます。お互いに罵り合ってその日は別れた2人でしたが、翌日同じところでまた顔を合わせることに。気まずい沈黙かと思いきやまたも口げんかが始まるのでした。
お互いにうっとおしいと思いながらも先に立ち去るのはなんか負けた気がして意地でもどかない2人。何時間経っても雪が降り積もっても寒さに耐えながら絶対に動かない2人、もはやツンデレとかいう域を超えてバカというか仲良しというかなんというか…

物語の序盤はこんな感じで素直とは正反対の2人がお互いをバカにしたりいたずらしたりしながらも、次第になくてはならない存在へと変化していく様子がじっくりと描かれます。不本意そうにしながらもお礼を言うことを覚えたシーンなんかは偉いね~とほめてあげたくなります。ラブコメのような状態で見ていて楽しいのですが、これは本作の導入部分にすぎません。

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クリスマスの前の日、どうせ一人ぼっちで寂しいんだろなどといつものように突っかかっていく二人。話し相手くらいにならなってやらないこともない、と何とも遠回しに明日も会う約束をします。
そんな翌日、女の子はいつものようにベンチで待っているのですが、男の子はいつになっても現れません。その日は妙な胸騒ぎがするまま帰宅することにしますがやはり不安。翌日、森の方で見たという目撃証言をもとに探しに行くことにします。しかし結局見つけることは叶わず、彼の家に帰った痕跡もなく、完全に行方不明となってしまうのです。

失意の中帰宅した女の子のもとへ、突然「願いを叶えてやってもいいんだぜ」などと言う怪しい男が現れます。怪しいとは思いつつも藁にも縋る思いで彼を返して欲しいと望んだ少女は、クリスマスの2日前、彼と喋っているところに戻ってきます。そう、本作はループものであったことがここで明らかになるのです。



ループものに慣れた皆さんなら大体予想がつくでしょう。何度ループを繰り返そうと、簡単に彼を救うことはできません。森へ行かないよう忠告したり、見張ったりもしますがことごとく失敗してしまいます。そんな彼女がたどり着く真相とは一体どんなものなのでしょうか。


ループという形式をとる作品は他にも多くあります。当然ながら同じ時間を何度も繰り返すことになるため、中にはその繰り返しの描写が単調でダレてきてしまう作品もあるのですが、本作は本筋に必須な描写だけに絞ってテンポよく進んでいくのが長所の1つかなと感じました。

2周目の段階では森へ行くなと忠告し、それ以外はいつものように彼とじゃれ合っていたところまで書かれていますが、再度救出に失敗して以降はもう各周回ごとの様子が細かく出てくることはありません。その分女の子の頭の中には彼を救出することだけしかない様子がプレイヤーにも伝わってくるのです。

その後もメインのストーリーに絡んでくるシーンだけが細かく描写されるので本筋が掴みやすく、また途中で飽きたりすることなく読み進められるのです。
本質でない部分が省かれている分密度が高く、プレイ時間のわりに大作をプレイした気分にもなれます。


そんな感じで結構な分量のある作品なのですが、この間ずっと登場人物に名前がないのはさすがに寂しいなと感じました。レビューでも男の子とか女の子としか書けませんし、作内でも常にお互いのことを「あいつ」「おまえ」のように呼んでいます。15分の短編とかならそれでも十分かもしれませんが、2時間ほどそのままだと名前がないのがかわいそうな気もします。あとはたまにどっちのセリフか分かりにくくて一瞬考えないといけなかったりといった場面も出てきます。

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さて、本作をプレイしていいと感じたところの1つとして、優しい雰囲気を挙げておきましょう。
先述したようにこの物語に出てくる人物はきつい性格をしているわけですが、そんな2人の交流からこんなに優しいというか微笑ましい空気感になるとは驚きでした。表面上の冷たい態度だけでなく、内心の友情や良心みたいなところがしっかりと描写されているおかげだと思います。子供って変なところで意地を張ることがあるよね~、と温かく見守りながらプレイしていくことができます。ツンデレ系の恋愛ものなどとはここが決定的に読み心地が異なるかなと感じました。

また、世界観もそれに合わせて優しく、程よくファンタジックに作られています。私は以前、同じ作者さんの作品で「わたしの愛する、壊れたせかい」や「空っぽたまごは泥を見る」などをプレイしているのですが、本作もこれらに近い雰囲気で進行します。本作には悪役っぽい人物(?)も登場するわけですが、それ以外の町の人なんかは皆優しく良識のある大人たちといった感じで安心して読み進められますね。童話風の世界観とスノードームというアイテムの相性もばっちりだと思います。


逆に少し気になる点は、結局この世界で2人がどうなるのか、謎の男の正体は何なのか、といったところにはっきりした答えが与えられないまま終わってしまうところでしょうか。意味深なセリフによってプレイヤーの興味を引いたり、「男の言う対価とは何だろう」みたいな疑問を引っ張って物語の推進力にしたりといったあたりは上手いなあと感じるのですが、最終的に疑問の解消に向かわない印象を受けました。
私はどちらかというと「プレイヤーの想像にお任せします」タイプの作品よりははっきりした結論が提示されるものの方が好きなんですよね。

ついでにもう一つ、序盤の特定のBGMがひどい音割れを起こしているのはさすがに気になりました。テストプレイしたら気付かないはずはないだろうというレベルだったのでもしかしたら私の環境の問題なんでしょうか?
選曲などの意味では雰囲気に合っているなと思ったので少しもったいなく感じました。

ちなみに本作には立ち絵はありません。しかし大変想像力をかき立ててくれる文章ですので寂しさを感じたりすることもなく、物語に合っているように思います。


こんなところでしょうか。強情ツンデレ少年少女が心を開いていくさまを見たければ本作以上の適任はいないと思います。おまけで男の子視点の方も読める仕掛けも良いですよ! ぜひプレイしてください。

それでは。

こんにちは。今回は現屋さんの「よんひくいちは」のレビューとなります。

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ジャンル:不思議な友情ものノベルゲーム
プレイ時間:2時間
分岐:なし
ツール:吉里吉里
リリース:2014/3


フリゲ2023の審査進行表を見ていて本作の名前を見つけました。プレイしたことはないけれどなんか聞いたことのあるタイトルだなと思ってググってみると、道玄斎さんのレビュー記事がヒットして、ああここで見たことがあったのかと納得(ついでにシートにDL先URLをコメント追加)。せっかくなのでプレイしてみることにしました。すると思いのほか良い作品だったのでここでご紹介しようと思います。


主人公の伊勢部宥太(いせべ・ゆうた)は高校2年生。中学時代に突然「未来予知ができる」という不思議な力を得た彼は、表面的な友人付き合いに意味を見出せなくなっていつも一人で過ごしていました。そんな彼はある日クラスメイトの後先凌太(あとさき・りょうた)が1か月以内に主人公になる、という突拍子もない予言を得て彼に興味を持ち、久しぶりの友人関係が始まります。さらには「伊勢部宥太は世界を救う」というとんでもない未来予知まで登場。愛敬寛(あいきょう・さとる)、門馬黒助(とば・くろすけ)という仲間も加わり、通常の意味での友人もできていく中、突然始まった自分だけの非日常をどのように生き抜いていくのでしょうか…



さて、本作を読了した私は先述の道玄斎さんのレビューを読んでみました。すると私が感じたこととかなり近い感想が書かれておりびっくり。

まず、本作は出だしから物語に引き込む力が強いんです。冒頭に意味深な回想シーンが少しだけあり、その後はすぐに登校シーンとなるのですが、この日常的なシーンだけでプレイヤーに強く興味を引かせる内容になっています。「しばらくは自転車を使わないこと」などの不自然な指示だったりまるで後ろから親戚のおじさんが来るのが分かっていたかのような書きぶりだったり。明言しなくてもこれだけで、「あ、これは何らかの能力があるパターンかな」というように理解できます。
その後もちろん未来予知ができることは明らかにされるのですが、それまでの段階で既に(この物語は面白いぞ)という予感(これは予知ではないでしょう)を強く感じさせてくれるんです。

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そしてこの未来予知という力も万能ではありません。誰が何をするか、というのははっきりと分かるものの、場所や時期は不明な場合もあります。そして冒頭で書いたように「主人公になる」「世界を救う」といった曖昧なものまで。こうした設定によって、予知された未来が回避できるかどうか不明といったドキドキする展開につながっていくのです。

さらには文章力も確かで、予知という能力の開花によってやたら冷めた人物となってしまった宥太にぴったりの、堅めで時には皮肉的な文章にうならされます。メッセージウィンドウではなく全面に文章を表示するシステムを取っているのも文体にマッチしているでしょう。文章がやや難しいなと感じる作品ではありますが、これもゲームというより小説的だと思うと合点がいきます。

こうした要素が重なり合って、もう私は開始5分とか10分とかの段階で「これはすごいからレビューを書こう」という気持ちになっていたんです。このくらい”面白さの初速”が速い作品ってなかなか珍しいと思うんですよね。私が最近読んだ作品でいうと「インビジブル」とか「道徳ビデオ」とかがこのタイプなんですが、本作は開始5分でこれらに負けないようなワクワク感を見せてくれました。


さて、本作にはこの未来予知という大きな設定があるわけなんですが、軸となっているのは予知に関するミステリーだったりサスペンスではなく、宥太の友情なんです。物語開始時点の宥太は私から見ると”嫌なヤツ”です。冷淡だし、予知を元に危機回避をしてくれる時も単に指示を出すだけ。(本人も自覚してますが)あの言い方だと「コイツ、すげ~」ではなく「なんかヤベー奴がいるから逆らわないでおこう」と私だったら感じるでしょう。しかしそれは宥太がもともとそういう性格だったわけではなく、予知能力に目覚めてしまってから身に着けた処世術みたいなものだったのです。

そんな宥太が”主人公の予知”をきっかけとして、最初は打算的なところがありつつも普通の友情を築いていくさまは見ていて気持ちが良いです。普通の人に自分の能力について話したところで気持ち悪がられるだけです。そんな能力について追及するでもなく、また否定するでもなく。そんな適度な距離間で接してくれる凌太たちは本当に良い友達ですね。

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こうした男の子たちの友情を描いた作品って意外と思い当たりません。女の子が出てきて恋愛がらみの描写が含まれていたり、あるいはBL的な展開になったりといった作品が多い中でなかなか新鮮に感じられました。
さらに本作で珍しいと思うのは、主人公の母親がそれに積極的に影響してくることでしょう。
以前、主人公の親ってあんまり出てこないよね~っていう記事を書いたりもしました。ちょっと不自然でも海外出張に行っていることにされちゃったりして物語中に一切登場しないことも多い両親ですが、それだけ思春期真っただ中の中高生からしてみればうっとおしくて、いない方が物語上都合がいいということでしょう。

しかし本作においては母親は結構重要な役割を果たします。宥太は予知能力に関する折り合いの付け方を母親を介して身に着けていったんだろうなと感じられますし、その母親が息子である宥太をなぜ信じているのか、といったところが宥太が友人との間に不要な猜疑心を持たなくてよい、といった学びにつながっていくのです。このように本質的な意味で主人公の成長に影響する作品は貴重だなと思います。これも私がプレイした作品でいうと「あなたの命の価値」以来でしょうか(あの作品においては負の影響でしたが)。


本作は基本的に写真背景と全面に表示されるテキストで画面が構成されていますが、時折重要なシーンで登場する一枚絵がまた印象的です。立ち絵もあるんですが使用回数が控えめなので、大きな動きのあるシーンでいきなり絵が出てくるとなかなかインパクトがあるんですよね。最後の黒助とのシーンなんかは表情もいいなあと思います。

そんな本作ですが、途中で発生した謎がすっきり解決しておしまい、といったタイプの物語ではないです。もちろんふんわりとした答えみたいなものは与えられていて、またこの不思議なタイトル(ググると計算結果を教えてくれます)の意味するところも分かってくるのですが、答えを求めるタイプの人はちょっともやもやの残るエンディングと感じるでしょう(私もどっちかというとこのタイプ)。
”世界を救う”についても、謎が明らかにされるというよりは空から答えが降ってきたという感じの回収方法になっているのでSFみたいにかっちりした設定みたいなものを期待していると肩透かしを食らうかもしれません。
しかし宥太たちの友情関係であったりタイトルの意味からすると一つの物語としてまとまっており、このエンディングも不思議な世界観の演出に一役買っているともいえるでしょう。


気になるのはそのエンディングにてムービーが再生されないことです。ReadMe内では、Windows8ではクリックしないと進まないかも、みたいな表記があったのでいろいろクリックしたり互換モードで起動したりしてみたのですが、私の環境(Windows 10 Home 22H2)では真っ白な状態のまま動かなくなってしまいました。その後ゲーム再起動したらタイトル画面が変わっていたので、エンディングに到達したことは正しく判定されていそうなのですが…。


というわけで今回は「よんひくいちは」でした。
とりあえずDLして読み始めてみれば、きっと5分で本作のすごさに気付くでしょう。ぜひプレイしてみてください。

それでは。

こんにちは。今回はPOPODOTさんの「ゾンビーデ☆バンビーナ」のご紹介になります。

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ジャンル:2Dゾンビアクションゲーム
プレイ時間:難易度ノーマルで2時間程度
分岐:1か所(後述)
ツール:RPGツクール
リリース:2017/8
備考:15禁。流血等グロテスクな表現あり。第13回ふりーむゲームコンテスト萌え部門金賞受賞作


本作品を紹介するうえでジャンルの分類に少し迷いました。
装備や食べ物で自身を強化していくRPG的要素もあり、目的地まで様々なマップを探索して進んでいくADV的要素も強く、ストーリー重視な作品でもあります。しかし私がプレイした感想としては、(特に高難易度では)いかに敵を避けながら進むか、少ない弾で効率的に相手を倒すかというアクション要素が重要になってくる感じがしたので、本ブログではアクションゲームとして分類することにしました。実は初めてのアクションゲームのレビューとなります。



本作の物語は、突然地球に隕石が衝突するところから始まります。地割れなどの被害にとどまらず、なんと隕石に付着していたゾンビウイルスが人々をゾンビ化してしまったのです。そんな阿鼻叫喚の中、主人公のラーラはゾンビウイルスから身を守るためのイエローハッピーワクチンを求め、ゾンビと戦いながら病院を目指すのでした。


相棒となるマークと一緒にゾンビを倒しながら探索していき、たまにボスを倒す必要があるのですが、これが結構難しい!
開始時に難易度を3段階から設定できるので、アクションゲームが得意でないなという方はイージーを選びましょう。私はノーマルから始めたのですが、慣れないうちは弾切れになったりして割と大変でした。難易度ベテランでは入手できる弾の数がかなり少なくなっており、初見の方にはお勧めできません。

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ゾンビの倒し方については、最初に作中作の形式をとって丁寧なチュートリアルがあります。武器を装備した状態でDキー押下で向いている方向(四方に固定)へ発砲します。弾丸は消耗品なのでやたらに乱射しているとすぐに弾切れになってしまうので注意です。きちんと狙いをつけて発砲するようにしましょう。


序盤の敵は体当たりしてくるくらいしか攻撃手段を持っていませんが(とはいっても近づくと突然スピードアップして向かってくるので油断禁物です)、中盤以降の敵は機動力が高かったり飛び道具を持っていたりと厄介なパターンが多いです。特に難易度ベテランでは、それらの敵を相手にしていると一瞬で弾切れとなってしまうので、マップをある程度覚えておき、どうしても倒す必要のある敵以外は走り抜けてかわすような動きを要求されます。このあたりが非常にアクションゲームらしいんですよね。

ボス戦については攻撃をかわし続けても終わらないため、ある程度の弾数を用意しておかなくてはなりません。どのボスも遠距離攻撃の手段を持っており簡単ではありませんが、行動パターンはさほど多くないので何度か挑んでいくうちに上達して勝てるようになっていくでしょう。

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そんなわりとハードなシステムとなっている本作ですが、ストーリーの方も大事です。
前半のうちは、ギャル風でゾンビにも物怖じしない強気のラーラと怖がりで前衛に立っての戦闘を避けてアイテム合成などで協力するマークの対比が面白く、ギャグイベントもよく仕込まれています。

しかし中盤でマークは一人で戦わなければならない状況に陥ります。ビビりながらもゾンビを倒していくマークを見ているとなんだか頼もしく感じていきます。ついさっき出会ったばかりのラーラではあるけれども守ってやりたい、そんな気持ちが表れていてとても応援したい気持ちになりますね。

終盤にはPOPODOTではお馴染みの温泉イベントあり。今回はラーラは温泉には入らないみたいだけれど…?

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さて、ラーラとマークが協力してラスボスを倒し、エンディングイベントに突入する直前、1か所だけ選択肢が登場します。明らかに分岐すると分かる内容で、しかもどちらが正解かもわかりやすいと思います。他の作品をプレイしたことがある方なら分かるかと思いますが、2つのエンディングは結構落差が激しいので覚悟のうえでぜひ両方とも見てください。直前にセーブ画面に入るのが親切ですぐに回収できます。
両方見たらおまけ部屋でエピローグなどが見られるのでそちらもお忘れなく。


ところで私がDLしてプレイしたバージョンは古めで1.6だったのですが、その後バージョンアップが重ねられて現在v3.0が公開されているようです。チャック(ラーラの兄)編や新ボスなども追加されているということなので私もこれからやってみたいなと思います。


というわけで今回は「ゾンビーデ☆バンビーナ」でした。
イラストはかわいらしいけれども世界は世紀末。アクションはハード。
そんな中でラーラはワクチンを手に入れて目的を果たすことができるのか。ぜひあなたの目で確かめてください。

それでは。

こんにちは。今回はぱすてぃぶソフトさんの「魔女をたずねてコンビニバイト」をレビューしていこうと思います。

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ジャンル:魔女っ娘ラブコメノベルゲーム
プレイ時間:1時間半
分岐:1か所。終盤で3つのエンディングへ分岐
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2023/6



はい、今回はぱすてぃぶソフトさんの新作です。
あの強烈なデビュー作をプレイしていた私は、本作をプレイするにあたってもいつ事件が起こるのかと警戒しながらプレイする手を進めていたわけですが、本作は安心安全の全編コメディ仕様で広く皆さんにお勧めできそうな作品でしたのでご紹介します。大事件が起きてプレイヤーの期待を裏切ってくるタイプの作品も好きですが、そればかりだとプレイするのも疲れますからね。幸せな作品でエネルギーを蓄えましょう。


本作の主人公は高校2年生の早乙女永一(さおとめ・えいいち)。父親と不仲で実家を出てボロアパートで一人暮らし中なので、生活費のためにコンビニでバイトをしています。ある日バイト仲間の佐藤さんの代わりにヘルプで入ってきたのがヒロインの阿澄莉奈(あすみ・りな)。少し親しくなってきたところ、何と彼女は実は魔女であるという衝撃の告白を受けます。
60年前に魔法の国から人間界へ行ったきり会えていないという妹のニーナを探しに人間界へやってきたというリナ。それを聞いて永一は妹探しを手伝うことを約束します。果たして無事に妹を見つけ出すことはできるのか。なぜリナを置いて人間界へ行ってしまったのか。永一をめぐる恋模様の行方は?
ちょっぴりファンタジーなラブコメ物語が始まる…


本作の物語を簡単にまとめるとこんな感じでしょう。
筋となる部分はもちろんリナがニーナとの再会を目指して調べていく部分なのですが、それ以上に永一をめぐるラブコメシーンや、人間としてはちょっぴり常識知らずなリナのギャグシーンなどが楽しい作品となっています。


というわけでコメディシーンを演じる登場人物たちをご紹介しましょう。
主人公の永一はラブコメのテンプレと言ってもいい激ニブ男。クラスメイトの珠美が明らかにラブラブ光線を送っているにもかかわらず当の本人は「突然の玉泉さんの奇怪な行動にわけがわからない」などと言っています。


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メインヒロインのリナは正真正銘の魔女っ娘。変化魔法が得意だけれども他の魔法はてんでダメ。町で面倒な男に絡まれたときは男をバッタに変えて助けてくれましたが、冷蔵庫の中身を変化させて料理を作った時は大失敗。
また、どうやら魔女たちの住む魔法の国には男は存在しないようで、男女関係についてはほとんど何も知らないようです。見事にギャルゲーメインヒロインの属性を兼ね備えていますね。


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永一の妹麻祐理(まゆり)は小さいころから頭が切れるようで、父親に可愛がられている立場をうまく利用して永一を助けてくれたブラコン気質もあります。
永一が父親を見限って一人暮らしを始めてからは自分も不良ぶっていますが、本性が良い子なのはクラスの子にもバレバレの模様。本作におけるツンデレ担当でしょうか。


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クラスメイトの玉泉珠美(たまいずみ・たまみ)はどう見ても永一が大好き。アルバイトで時間がなかった時にいつも宿題を写させてもらってますが、今日はやってきたから大丈夫だよと伝えるとなぜか少しだけ残念そう。(いや明らかにフラグ立ってるだろ!)


そんな彼らは妹と離れ離れになってしまったリナの事情を聞き、人探し(魔女探し?)を手助けすることを約束します。
しかしどうも全員永一のことを好きなようでちょっとだけ複雑な関係だったりも。
昼休みの教室では、麻祐理と珠美は(頼まれてもいないのに)手作り弁当を持ってきてくれて永一は2食分食べる羽目になったり、リナに”タマタマ”と危ないあだ名をつけられそうになった珠美が全力で拒否したり。
こうした分かりやすくてお約束なギャグ展開が続いて非常に読みやすい作品になっています。


私が好きなのは、使い魔のアルキマによってリナの年齢がバレて慌てるシーンです。
いや、その年齢は(人類の視点では)おばあちゃんとかいう次元を超えてるよ…ロリババアってやつだね…。

あとはリナの無邪気な発言によって珠美が勘違いして倒れちゃうシーンとかも笑いました。
嫉妬に狂うとかじゃなくて、単純にショックを受けて暴走しちゃうのが可愛くて良いですね。チーンという効果音が聞こえるだけでなんか笑っちゃうようになりました。


さて、そんなほのぼのした空気の中で妹探しはつづき、下級生の宮藤静流(みやふじ・しずる)から有力な情報が得られます。彼女の祖父がずっと昔魔女と思われる人物にあったという日記があるというのです。静流の協力を取り付けた永一たちは、皆で魔女の目撃されたという山へ向かいます。

旅館ではみんなで兄弟のフリをしたりイナゴを食べたりと楽しいシーンが続きますが、翌日はちょっぴりシリアス。リナは突然姉である自分を置いて人間界へ行ってしまったニーナが果たして突然会いに来た自分を受け入れてくれるのか悩んでいます。実はリナに不満があって魔法の国を飛び出してしまったのではないかと。
そんなナーバスなリナに対し、永一は自分の経験をもとにリナを励ましていきます。実家で父親とうまくいかず家を飛び出した永一。麻祐理はその影響で不良ぶるように。それでも麻祐理はよく会いに来てくれるし、家族の繋がりが消えたわけじゃない。兄弟とはいっても言葉を交わさなければ伝わらないから変に悪い想像をして悲観することはない。
確かにその通りで、永一本人の経験に基づく分説得力があります。私は以前恋愛ものの高校生主人公はどれくらい一人暮らしをしているのか調べてネタにした記事を書いたりもしましたが、本作では高校生の一人暮らしに単なる物語の都合以上の理由があって、そのためにリナや麻祐理とのやり取りにリアルさが生じているんですよね。


ずっと探していたニーナとの対面シーンでは、リナにとってショッキングな事実と物語の設定が明らかになります。60年もの間ニーナは一体何をしていたのか。なぜリナとのコンタクトを絶っていたのか。それはぜひあなたの目で確かめてください。
驚くような真実ではあるものの、決して後味の悪いタイプではない優しい結論です。最後の最後でこうロマンチックな雰囲気を出してくるのが上手いですね。


そして最後の最後に分岐があります。なんと物語序盤にあった1か所の選択肢で分岐するようです。
どのエンディングも永一が再び希望を見出せるような内容で良かったなとは思いますが、なぜそうなったかの途中経過が抜け落ちていて説明不足な感は否めません。もう少しフォローが欲しかったなという気がします。

しかし分岐の回収のために既読シーンを丸ごと飛ばす機能が実装されていて非常に回収しやすかったです。エンディング以外の部分は変わらないようなので、大変ありがたい機能だなと思いました。



というわけで今回は「魔女をたずねてコンビニバイト」でした。
微妙と書いた部分もありましたが、最後のリナの笑顔が眩しくて素晴らしいのでそんなことはどうでもよくなると思います。ぜひプレイしてみてください。

それでは。

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