フリーゲームの森

フリーゲームのレビューブログです。 ノベルゲーム・アドベンチャーゲームを中心にお勧めの作品を紹介します。
初めての方は、ぜひごあいさつをご覧ください。評価の基準については、レビューについてに記してあります。
記事一覧ページを作りました。記事探しはこちらから。Twitterはこちら。リンク等はご自由にどうぞ。
YouTube始めました。フリーゲーム攻略動画などを投稿してます。

2時間前後

こんにちは。今回は再びねこのさんの作品、ありすえすけーぷをご紹介します。前々回のレビューでは最新作、前回は16年前の作品を取り上げましたが、今回はまた最新作。時代の幅を飛び越えてます。

(12/5追記:アツマール版公開・ランキングボード実装を受け、本作RTAの記事を書きました。通常の攻略は終わってタイムアタックを目指しているという方はこちらへどうぞ)

alicee1

ジャンル:ちょっとキワドイ脱出アドベンチャー
プレイ時間:初回15分。フルコンプまで1~2時間
分岐:4つ
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2021/4
備考:12推

本作は、以前紹介したありすすいーぱーのシリーズで、主人公が共通しています。しかしゲームジャンルは結構違っていて、ごりごりのパズルだった前作に対し本作は謎解き脱出ゲームとなっています。
脱出の舞台はなぜか夜の学校。目が覚めたらなぜか出口のなくなった学校にいたありす。5枚のカードを集めて脱出を目指します。夜の学校から脱出といえば、さくらぷりんさんの深夜12時学校でが思い浮かびますが、本作はホラーではありません。この雰囲気はどちらかといえばほりんさんのSheSeeCrisis!が近いでしょう。そう、つまり本作はおしっこ我慢ゲーなのです。


前作の可愛らしさは健在です。またもや相当量のボイスがついて、突飛なシナリオ・可愛らしいイラストと共にその魅力はばっちり。そんなありすがトイレを求め学校内を探索し、謎解きに頭を抱えるシナリオです。フェチがハマる人にとっては神ゲーになること間違いなしです。
露骨に我慢しているイラストはありませんが、謎解き失敗時にはまたしても"聖地"が拝めるスチルが慌てたボイスと共に登場。その他にも探索中のイベントなどでも結構な頻度で下ネタがあり、そうした方面での楽しみ方がメインとなる作品といえるでしょう。前作の時は、タイトルやゲーム説明からそうしたネタが含まれることを想定していなかったので、どちらかというといかがわしいと感じてしまいましたが、本作ではゲーム説明の段階でフェチが詰まった作品だということが明らかですからね。意外とおしっこ我慢に関する性癖は多いのか、なんて思いながら楽しめました。

逆に言うと、本作にはストーリーのようなものは全くありません。校内を探索したりミニゲームをしたり、ちょっぴりアレなイベントを見たりするだけなので、キャラクターの性格とか背景のあたりで物足りなさを感じたのは事実です。特に、主人公のありすが自身を"コミュ障"とか、"陽キャが怖い"みたいに評価していますが、この辺が突飛な設定に映りました。ありすが最初に登場した「ありすとーく」のやり取りを見るとそんなタイプにも見えないんですけどね…

ちなみにエロ系以外にも、ちょっぴり笑えるネタがいろいろ仕込まれています。私が特に好きなのはこちら。
alicee2
あ~、はい、そうですね(棒読)
前作でも本作でも見せまくってるけどな!

エンドロールの"親の声よりも聴いた"もなかなかですね。確かにタイトル画面の時点でちょっと思いましたが、まさか作内でそんな言葉が出てくるとは。メタなネタが多めだなとは思っていましたが、さすがに不意を突かれました。


ゲームの部分についても触れないわけにはいきません。本作はティラノスクリプトで作られた謎解きゲームですが、この謎の部分が思っていたよりよく考えられていて、解けた時はすっきりした気分になりました。結構難しいですが、作内でもよく探索すればヒントをもらえるし、どうしても解けなければ作者さんサイトによりあからさまなヒントも用意されています。解けなくてつまらない、もやもやするといったことにならないようしっかり準備されていて好印象です。
ちなみに私は2つほど作内ヒントを見ました。美術室だけはノーヒントで解けたのですが、その他が見当もつかず理科室のヒントを見たところ、なるほどそういう事かと驚き、その他の部屋の謎を解く方向性にも気が付きました。あとは最後の昇降口もヒントを見てしまいましたが、こうしたお助け機能を使った上でも謎解きの快感が得られるような絶妙なヒントにしてあるあたりも上手いですね。

エンディングは、我慢の限界に達してしまうものを含めて4種類。分岐条件は直感的にも分かりやすいので、謎解きさえできればエンディング回収はたやすいでしょう。また、普通の作品なら、エンディングをすべて回収したところで満足するところでしょうが、本作にはアドベンチャーゲームにしてはかなり珍しいやり込み要素が存在しています。なんと、ボイスの回収率や最速脱出記録、ミニゲームのハイスコアなどが記録されるのです。これはすごくいい仕掛けだと思います。目標や成果が目に見えるだけでこんなにやる気になるんですね。シナリオの長さに比して相当量のボイスが収録されている本作ですが、この機能が無ければ全ボイス回収をするモチベーションはなかなかわかなかったでしょう(そもそも未回収ボイスがあることに気付かない可能性が高い)。私が最後まで回収に苦労したボイスは、通常のプレイではまず起きないだろう状況下の教室で聞ける台詞だったのですが、このような状況まで考えてボイスを用意したりデバッグされたりしていることも凄いなと感じました。

ちなみに私のやり込み実績はこんな感じです。
alicee3
SSSランクが存在するのか気になって、相当な回数試行錯誤しました(ミスったらリセットしてやり直したりしたので、記録に残っている回数の倍くらいはプレイしているはずです)。しかし結局バスケットボール1万点×3、アイテム8回収、脱出タイム2分台を同時に達成してもSSランクだったので、これが最高なんじゃないかという結論に至りました。


というわけで「ありすえすけーぷ」のご紹介でした。とってもかわいらしい脱出ゲーム、一度やったら全ボイス回収までやり込みたくなるはず。ぜひプレイしてみてください。
それでは。

今回は、むきりょくかん。さんのごがつのそら。です。

gogatsu1

オススメ!
ジャンル:のんびり日常ちょっぴり恋愛ノベルゲーム
プレイ時間:2時間
分岐:基本一本道
ツール:NScripter
リリース:2005/8(NScripter版)


今回は、5月になったら扱おうと温めていた作品です。むきりょくかん。さんは私がノベルゲームに出会うきっかけとなったサイトで、強い思い出補正のある好きなサイトの1つです。本作も大好きで、もう10回以上は読んでいます。というわけで、レビューというよりは好きなものについて語るだけになってしまった感じがありますが、ご容赦ください。



本作はあまりはっきりしたあらすじはなく、登場人物ののんびりとした会話をずっと眺めているような展開が続きます。主人公の溝口春樹は大学を出たての新社会人。5月病でやる気が出ずにふらふら歩いていると、神社でピアノを弾いていた巫女バイトの高校生神明みのりに出会い、そこから2人の交流が始まります。この出会いの場面では当然ですがみのりはよそよそしく、溝口さんとは距離を感じます。しかし、溝口さんが暇つぶしにみのりのピアノを聞きに来るたびに、次第に距離を縮めていきます。このあたりの描写がとても丁寧なんですよね。いわゆるギャルゲーでは、ヒロインは出会った当初から主人公に好感度MAX、みたいな作品も多いですが(もちろんそういう作品も楽しいです)、本作では主人公もヒロインも割と普通で(みのりはちょっと暴力的な気がしないでもないですが)、心を通わせていく様子がしっかり示されることで感情移入しやすい作品になっていると思います。何か派手な出来事が起きるわけではないけど、日常シーンを通して交流を深めていく、この雰囲気・空気感の演出が抜群なんです。

gogatsu2

この2人が徐々に近づいていく様子が、ビジュアルの面でも同時に表現されているのは素晴らしい仕掛けですね。本作はかなりの部分が、溝口さんとみのりが神社の石段に腰かけてだべるシーンで構成されますが、2人の心理的距離感がそのまま物理的距離に比例して描かれているのです。これはほかの作品ではあまり見ることのない演出ではないでしょうか。本編読了後にはスチル閲覧モードが解放されるので、ぜひみのりの位置が次第に溝口さんに寄っているのを確認してみてください。

さて、こうした丁寧な文章描写とビジュアルの演出に加え、音楽もかなりいい仕事をしています。みのりがピアノを弾くという設定もあってか、本作のBGMはほぼすべてピアノ曲で構成されています。特に、2人が出会った時にみのりが弾いていた「世界が色づき始めるとき」は本作のテーマでもあり、なかなか印象的です。私は趣味でピアノを弾くので、作曲者のfokaさんのサイトに楽譜が公開されているのを見つけると、自分でも練習して弾けるようになりました。同じく本作のBGMに使われている「緑の小道」と、「これまでも これからも」(こちらは本作には使われていませんが)もあわせて、今でも時々弾いています。

こうしたテキスト・ビジュアル・音楽の合わせ技が最も有効に働いたのは、なんといっても4話ラストのシーンでしょう。作者さん自身が"とどめの一枚"と呼んだスチルと、ずいぶん柔らかくなったみのりの態度、そして幻想的で暖かな音楽。これらの織り成す雰囲気に呑まれ、"他人以上、友達未満で……恋人"な2人の関係で交わされる言葉を大変切なく感じました。

本編読了後には、おまけシナリオである「はちがつのゆき」がプレイ可能になります。こちらは本編よりずっと甘々な恋愛ものとなっているので、本編じゃあちょっと淡泊だと感じた方も、晴れて恋人同士となった溝口さんとみのりのやり取りににやにやできるでしょう。神社の外の話なので当然みのりの服装が普段と違ったり、背景写真が加工なしになっているなどといった意味でも本編と違いがあります。

さて、本作をプレイして唯一気になった点は、雲の話です。2人が空を見上げて、あれは巻層雲っていうんだよ、というようなシーンがあるのですが、巻層雲は別名をうす雲とも言うように薄く層状に広がる雲で、あまりきれいな雲というイメージが無かったので、物語中のイメージとあまり合わなかったかな、という。一般的にイメージされる雲といえばだいたい積雲(わた雲)ですし、巻層雲と同じく高い位置にできるという意味なら巻雲(すじ雲)の方がきれいかな、と思っています。該当シーンの背景写真もどちらかというと巻雲っぽいですし。まあ、非常にマニアックな話ですが、ちょうど私が高校で地学を習って出てきた範囲だったりしたので、そこは印象に残っています。


また、本作は株式会社テンクロスによってスマートフォンアプリ版が開発されました(かつてはガラケーアプリ版もありました)。こちらは前編無料、後編有料という形なのでフリーゲームとは言えませんが、"スタンプ集め"をすることで後編も無料でプレイ可能なので、気になった方はぜひプレイしてみてください(要は広告に出てくるアプリをいくつかインストールすればよい)。プレイ中にバナー広告や動画広告を見せられることが無いので、結構快適にプレイできますよ。
シナリオはほとんど原作と変更がありませんが、ビジュアルと音楽は一新されています。また、おまけシナリオにはほしのの。の2人がゲスト出演しているので、ほしのの。好きの方はプレイして損はないと思います。

gogatsus1

スマートフォンアプリ版のお話をしましたが、本作には実はinsaniさんによる英語版もあります。この英語版は完全無料です。高校時代にダウンロードして日本語版と同時に起動し、英語の勉強を兼ねて読んだのは良い思い出です。教科書で見るような正確な英語ばかりでなく、砕けた表現なども多く結構大変でした。
ちなみに、日本語版で終盤に「この格子戸を開けると、私の恋は終了する」というみのりの台詞があります。この台詞自体も綺麗だなと思ったのですが、その英訳が”When I rise and open that door, I ... close the door on my love.”でなかなか美しいなと感動した覚えがあります。


というわけで、蛇足も多かったですが今回はごがつのそら。のご紹介でした。私がこの作品に出合った時にはみのりより年下だったのに、いつの間にか溝口さんよりも年上になってしまいました。それだけ時間が経っても、最初に読んだ時の感動はよく覚えています。皆さんもぜひその感動を味わってください。

こんにちは。
今回は、まゆげさんのまい、ルームをご紹介です。
mroom1


★favo
ジャンル:ファンタジーノベルゲーム
プレイ時間:1周目15分以内。フルコンプまで1時間半
分岐:5つ。1周目ルート制限あり
ツール:ティラノスクリプト
リリース:2016/12
備考:15禁、猟奇的描写あり、ティラノゲームフェス2017準グランプリ作品


これまでは比較的おとなしめの作品の紹介でしたが、今回のはちょっと刺激的です。一見そうは見えないんですけどね……。
まずは、公式からあらすじを引用してみましょう。
マイとメルは仲の良い双子。
最近体調が悪く、部屋に篭りきりのマイのために今日もメルは部屋を訪れる。
これだけです。とりあえず双子が出てきて片方がもう片方のお見舞いに行くのかな、というのは分かります。これだけ頭に入れてゲームを起動してみましょう。

シナリオはマイの視点で、夜にメルがお見舞いに来てくれて嬉しいという場面から始まります。ここでの2人のやり取りは非常に微笑ましく、お互いのことを想い合っている良い双子だなと感じられます。他愛もない日常会話を退屈させずに読ませるというのは力量がいることだと思うのですが、本作はその点ばっちりです。信頼関係があるからこそのちょっとした意地悪や、メルヘンチックな想像シーンなどで読者を引っ張ってくれます。病気になってしまい思うように活動できない中で、子供の頃の思い出を振り返り、無邪気な想像をするシーンもなかなか胸にくるものがあります。
mroom2

さて、本作には途中何度か選択肢があります。勘が鋭い人や、素直じゃない人ならこの小さな幸せの物語に違和感を抱くはずです(私は気づかないタイプの人間でした)。どちらの方も2周目を始めてみてください。
どんなに鈍い方でもこれは単純な物語ではないことに気付くはずです。冒頭のアレは何なんだ、とか、そもそもそこでそんな選択肢不自然じゃないか?、とか。
ここで、先ほど選ばなかった選択肢を選び、END1,2,3をすべて見ておいてください。私と同じタイプの方は初見ではEND1に行くと思うのですが、END2,3は衝撃的でしょう。しかしこれだけでは単に理不尽なだけ。ここからが本番です。

再びタイトル画面からスタートすると、メルの視点での話が読めるようになります。ここにきてようやくプレイヤーにこの物語の舞台設定と双子の置かれた状況が明かされるのです。この手の、読者に重要な情報を隠して驚かせるという手法は、やり方によっては下品に感じられることがあるのですが、本作ではそんなことはありませんでした。きちんと前兆を与えて読者に心構えと期待をさせる。一度に情報を明かし過ぎずに順を追って物語の核心に迫る。そして何より、だれか一人の悪人によってもたらされた悲劇ではなく、登場人物皆が少しずつ歪んでいたがために生じる人間関係の問題があったという点。
ファンタジーが前提でありながら人間ドラマとして非常に興味深いです。まさに本作の、"身勝手な人達の物語"というコピーが本質であったことに、この時初めて気付くのです。本編では悪役に近いあの人も、マイやメルと大差ないことはside storyまで読めば分かります。そうしてすべてを理解したうえで冒頭の場面に戻ってきたとき、あらゆる感情で私の体は震えていました。もう2人の言葉の重みが桁違いです。
ただし、さすがに(ネタバレの為反転)マイが病死する展開は急すぎるのではないでしょうか。なにかもうワンクッション欲しかった。

グラフィックや音楽も私の好みでした。立ち絵はファンタジーな雰囲気に合っていると思いますし、音楽ではフルコンプ後タイトル画面BGMの「おそろい」は私に強烈な印象を残し、3年後にプレイした別の作品で再び聴いたとき、即座に本作を連想したほどです。

ツールはティラノスクリプトですが、必要な機能はしっかりそろっており、EDリストから回想可、2度目以降エンドロールスキップ可など随所にプレイしやすい工夫が施されています。起動が重いことが玉に瑕でしょうか。
エンディングを迎えるごとにタイトル画面が変わっていく仕掛けも良いですね。

べた褒めしてきた本作ですが、人を選ぶ作品であることは間違いありません。ショッキングなシーンはありますし、人間の汚い部分まで怖いほどに描き出されたシナリオです。視覚的にもインパクトのあるスチルはありますが、そこまでグロテスクな絵はありません(ただし流血描写は多数)。

15歳以上でレビューを読んで興味を持った方はぜひプレイしてください。強烈な印象を残すことを保証します。

↑このページのトップヘ